【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はバネ製造装置に関し、特に圧縮コイルバネ、引張りコイルバネ、ねじりコイルバネ等の製造装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来のバネ製造装置は、バネとなる線材を所定の位置に導くためのクイルと呼ばれるツールを必要とし、このクイルは、線材の供給位置からバネ成形位置まで導くための線材を挿通する孔を有するライナ部と、線材を先端から送り出し、その送り出された線材を屈折、湾曲あるいは切断するためのツールを用いて所望のバネ形状に成形する線材ガイドから構成されていた。 【0003】また、このクイルを用いた従来のバネ製造装置として、例えば、特公昭56−12379号公報に開示されるように、線材ガイドの外部に支持体を取付け、この支持体を線材ガイドの孔の中心を中心として回転可能とし、且つ、線材を屈折、湾曲あるいは切断するツールの線材ガイドの先端方向への出没と連動させて出没するツールが支持体に衝突しないように回転させるように構成することにより、出来上がったコイルスプリングの始端に残る直線部や出口部分に存在する急激に屈折された屈折部等を無くすようにしたものが知られている。 【0004】また、特公昭56−12378号公報に開示されるように、ツール抑えを線材ガイドに対して回転し得るようにした支持体に取付け、この支持体をツールの出没と連動させて回転させ、支持体にツールが衝突しないように構成することにより、良品率を向上させ、製品のバラツキを抑えるようにしたものが知られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように構成される各従来例においては、線材ガイドとしてのクイルはライナ部とガイド部とが一体化されており、ライナ部は線材を導くためある程度の長さを有しているので、クイル自体が大型化すると共に、支持体を含む装置全体が大型化してしまうという問題がある。 また、仮に、クイルを回転可能なように装置を構成した場合、そのライナ長が長いほど、回転によりライナ部に挿通された線材により大きなねじり応力が負荷されることになり、完成品にバラツキが発生するなどの悪影響を及ぼすことになるという問題があった。 【0006】また、従来のクイルは、所望のバネ形状に応じて夫々先端ガイド部の形状が異なるため、例えば、 多種類のバネを製造する場合、オペレータによるクイルの交換作業が非常な手間となると共に、ユーザ側で様々な形状のクイルを用意し、在庫しておく必要があり、製造コストが高くなるという問題があった。 また、従来のクイルでは、線材がライナ部の内部で詰まった場合、詰まった線材を取り出すことができずに再使用できなくなることがあった。 【0007】従って、本発明のバネ製造装置は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、線材を送り出すガイドを回動可能にし、従来のクイルのように所望のバネの形状に合わせて先端の形状を加工する手間を省き、更に、様々な形状のクイルを在庫するためのコストを低減し、あらゆる形状のバネに共通に用いることが可能なバネ製造装置を提供しようとするものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明のバネ製造装置は以下に示す構成を備える。 即ち、線材ガイドの先端からバネとなる線材を送り出し、該線材ガイドの先端付近のバネ成形空間に向けて摺動自在に放射状に配置され、該線材を折曲、湾曲あるいは切断するためのツールを該線材に当接させることにより強制的に折曲あるいは湾曲させて径を生ぜしめることでバネを製造する装置であって、前記線材ガイドを支持すると共に、該ガイドの前記線材を送り出すための孔を中心として回動自在に設けられた回動手段と、前記回動手段に駆動力を伝達するための第1の駆動手段と、前記線材を折曲、湾曲あるいは切断するためのツールを摺動させるための第2の駆動手段と、前記第1、第2の駆動手段を互いに所定のタイミングで制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記バネの形状に基づいて、前記回動手段により前記ガイドの先端付近のバネ成形空間の位置を変化させることを特徴としている。 【0009】また、好ましくは、前記線材ガイドは、互いに所定の傾斜面を有する左右対称な2つの部材からなることを特徴としている。 また、好ましくは、前記線材ガイドは、超硬合金から構成されることを特徴としている。 また、好ましくは、前記制御手段は、前記回動手段により前記ガイドを所定角度回転させることにより前記バネ成形空間を変化させることを特徴としている。 【0010】また、好ましくは、前記バネ成形空間は、 前記線材ガイドの傾斜面側であることを特徴としている。 また、好ましくは、前記線材を切断するための切断手段を更に備え、該切断手段による線材の切断は、前記ガイドの前記線材を送り出す孔から斜め下方に向けて、 該ガイドの強度の高い部位に向かって行うように前記第1の駆動手段を制御することを特徴としている。 【0011】 【作用】以上のように、この発明に係わるバネ製造装置は構成されているので、線材を送り出すガイドを回動可能にしてバネ成形空間の位置を変化させるだけで、従来のクイルのように所望のバネの形状に合わせて先端の形状を加工する手間を省き、更に、様々な形状のクイルを在庫するためのコストを低減し、あらゆる形状のバネに共通に用いることが可能となる。 【0012】また、線材を切断する際には、ガイドの線材を送り出す孔から斜め下方に向けて、ガイドの強度の高い部位に向かって切断するので、ガイドの延命を図ることが可能となる。 【0013】 【実施例】以下に本発明の実施例につき、添付図面を参照して詳細に説明する。 <バネ製造装置>先ず、バネ製造装置について説明する。 図1は、本発明に基づく実施例のバネ製造装置の外観を示す正面図であり、図2は、図1のバネ製造装置の側面図である。 図1、図2において、バネ製造装置1 は、基台20上にベース10と操作部支持アーム15とが固定されており、それらが一体的な構造を有している。 ベース10は、ロータリ式線材ガイドユニット40 と、線材2をバネとして成形するための各種のツール群30を有する。 基台10上のツール群30は、ロータリ式線材ガイドユニット40の線材送出孔を中心として放射状に多数設けられる。 このツール群30は、例えば、 線材折曲用ツール、線材湾曲用ツール、線材切断用ツール等のように用途に応じて各種用意されており、線材の径やバネの形状に応じて、その取付け位置が設定されている。 各種のツール群30のロータリ式線材ガイドユニット側とは反対側の先端部には、夫々に偏心したカム4 が当接するように設けられ、ベース10に設けられたツール駆動用モータ(不図示)及びギヤ(不図示)から駆動力が伝達されて回動する。 各ツール群30は、夫々のカムによって、ロータリ式線材ガイドユニット40の中心に向かって摺動自在に取付けられている。 即ち、各ツール30は、夫々のカム4の形状及び位相差に基づいて、設定された速度及び順序で、所定の時間あるいは位置まで移動、停止すると共に、各ツール同士が衝突しないように摺動するものである。 【0014】ロータリ式線材ガイドユニット40には、 その回転軸を同一としてガイドギヤ47が軸支されており、ベース10の下部に設けられたガイド駆動モータ6 に軸着されたモータギヤ90、及び所定のギヤ比に設定されたアイドルギヤ70、80を介して駆動力が伝達され、上述の各ツール30の動きに連動して所定のタイミングで回転する。 【0015】線材2は、図2に示すように、ベース10 の後方に設けられた送りロール3から供給される。 フィードローラ7、8によって上下方向から抑えられるように搬送され、ロータリ式線材ガイドユニット40の内部に挿通される。 フィードローラ7、8は、ベース10後方に設けられ、線材2を挟持している。 また、これらフィードローラ7、8は、モータやギヤからなるローラ駆動ユニット9により所定のタイミングで回転駆動され、 線材2を搬送する。 【0016】操作部101は、基台20に設けられる操作部支持アーム15に支持されており、オペレータが操作部101に設けられた表示部102a及び入力キー1 02bを操作する。 この操作部101では、製造するバネの種類、サイズ(径、長さ等)、個数等を設定する。 以上、図1、図2では、本実施例のバネ製造装置1の概略的な構成を説明した。 【0017】<ロータリ式線材ガイドユニットの回転> 次に、図1及び図2で説明したロータリ式線材ガイドユニット40の回転駆動方法について説明する。 図3は、 本実施例のロータリ式線材ガイドユニットの駆動力伝達システムを示す外観斜視図であり、図4は、図3のシステムの正面図である。 図3、図4において、ガイド駆動モータ6の回転に伴ってその回転軸を同一として軸着されたモータギヤ90から駆動力が出力され、モータギヤ90に歯合するアイドルギヤ80に伝達される。 アイドルギヤ80は、もう1つのアイドルギヤ70に歯合しており、アイドルギヤ70が、ロータリ式線材ガイドユニット40の回動ギヤ47aにモータ6からの駆動力を伝達する。 尚、モータギヤ90とアイドルギヤ80とは、 共にギヤ軸支部材85に軸支され、アイドルギヤ70、 80は夫々所定のギヤ比に設定されている。 また、ガイド駆動モータ6は、図1、図2で説明したように、各ツール30の動きに連動してロータリ式線材ガイドユニット40を回動するよう制御される。 【0018】<ロータリ式線材ガイドユニットの構成> 次に、図1及び図2で説明したロータリ式線材ガイドユニット40の構成について説明する。 図5は、本実施例のロータリ式線材ガイドユニットの全体構成を示す外観斜視図であり、図6は、図5の正面図である。 また、図7は、図5のA−A矢視断面図である。 図5〜図7において、ロータリ式線材ガイドユニット40は、基体部4 1、カバー部43及び回動部47とを備える。 図5に示すように、基体部41は、取付けボルト42でベース1 0に4箇所で固定される。 また、図7にその断面を示すように、基体部41は、略四角形のフランジの両面に円筒状の突出部41a、41bを突出させた形状を有し、 その内部の略中心部付近を貫通するように、フィードローラ7、8から搬送される線材2をガイド200に送り出すためのライナ300を配設するためのライナ孔が形成されている。 また、円筒状の突出部41b側の先端部分46は、フィードローラ7、8の径に適合するように、先端に向かうに従ってテーパードした形状を有している。 更に、円筒状の突出部41aの先端には、円盤部材45が取付けられている。 【0019】カバー部43は、後述する回動部47に設けられたガイドギヤ47aを外部から保護するように、 回動部47の外郭形状に対応して中心が開口した形状を有し、基体部41に取付けボルト44で固定されている。 また、基体部41の下部には、回動部47に駆動力を伝達するアイドルギヤ70を保護するカバー51が、 ボルト52によって2箇所で固定されている。 【0020】回動部47は、両端を開口させたカップを横にした形状を呈し、その一端の開口部の外周縁部には、ガイド200を回動させるためのガイドギヤ47a が形成され、他端の開口部には、ガイド200を固定するための半円状の板材48がボルト49で固定されている。 この回動部47は、その他端から軸方向に沿って途中まで一部切り取られた形状をしている。 この回動部4 7が、一端の開口部から基体部41の円筒状の突出部4 1bに軸受け54、55を介して嵌合することによって、回動自在になされる。 尚、軸受け54、55は共にラジアル軸受けであるが、このように2つ組み合わせることによって、スラスト方向に対してもある程度の軸受けの働きを負荷させている。 【0021】板材48は、線材2の送り出される方向に突出した凹状の突出部50が設けられ、その凹部に位置決めピン53で位置決めされて、ガイド200が取付けられる。 <ガイドの形状>次に、ガイドの構成について説明する。 【0022】図8は、本実施例のガイドの分解した状態の斜視図であり、図9は、図8の夫々のガイドを組み立てた状態を示す斜視図である。 また、図10は、図8のガイドの先端部の詳細図である。 図8〜図10において、ガイド200は、左右に対称な形状の左ガイド及び右ガイド200a、200bとから構成されている。 これらのガイド200a、200bは、夫々断面半円状の溝部230a、230bが長手方向の断面に形成されていると共に、位置決め穴210a、210bがその低部に設けられている。 また、ガイド200a、200bの夫々の上面は、所定角度の傾斜を有する傾斜面240 a、240bを形成している。 また、図9のように左右のガイドを合わせることによって、夫々に形成された溝部が断面円形の線材挿通穴となる。 また、図10に示すように、夫々のガイド200a、200bの上面に形成された傾斜部240a、240bは、外側に向かって下方に所定角の傾斜を有しており、その傾斜角θは、略1 0度に設定されている。 即ち、図5の回動部47を回させ、傾斜面240a、240bのバネ成形空間における位置を変化させることで、後述するバネ成形面として機能するのである。 尚、ガイドは、耐磨耗の超硬合金等の材料から構成される。 【0023】このように、線材2を送り出すためのガイド200を左右対称な2つの部材から構成することによって、線材がガイドの挿通穴内部で詰まった場合、詰まった線材を容易に取り出すことができ、仮に、ガイドの先端部が欠けたとしても、再加工を施し、ガイドを今までよりも前方に配置することで、再使用が可能となる。 また、ガイドを小型化することができ、従来のクイルと比較して、コストを格段に抑えることが可能となる。 【0024】<ライナの形状>次に、ライナの構成について説明する。 図11は、本実施例のライナの断面図であり、図12(a)は、図11のライナの平面図、図1 2(b)は、図11のライナの側面図である。 図11、 図12において、ライナ300は、フィードローラ7、 8から送り出される線材2を挿通し、ガイド200に送り出す線材2の搬送路的な役割を果すもので、棒状の部材であり、中心部に線材2を挿通するための挿通孔30 1が形成されている。 また、図12(a)に示すように、ライナの長手方向の一端部分302は、その先に行くに従ってテーパードした形状を有しており、図5で説明した基体部41の内部に貫通するように組み込まれた状態で、そのテーパードした一端部分302は、基体部41の先端部46に略一致し、他端部分303は、基体部41の円筒状の突出部41aから突出し、円盤部材4 5の中心部付近を通ってガイド200と僅かな隙間を有するように配設される。 即ち、このライナ300の線材の挿通孔301とガイド200の線材挿通穴230とが、ロータリ式線材ガイドユニットに組み込まれた状態で、互いに一致するように設けられるのである。 尚、ライナも、線材との摩擦を考慮して耐磨耗の超硬合金等の材料から構成される。 【0025】<バネ製造装置の制御系のブロック構成> 次に、本実施例のバネ製造装置の制御系のブロック構成について説明する。 図13は、本実施例のバネ製造装置の制御系のブロック図である。 図13において、100 は本装置全体の制御を司るCPU、101はバネ製造におけるツールの移動等の各種パラメータの設定や動作或いは停止指示を与えるための操作部であり、その操作内容や装置の状態を示すための表示部102aと入力部1 02bとが設けられている。 尚、CPU100には、その動作処理手順を記憶しているROM、及びワークエリアとして使用するRAMが設けられている。 105〜1 10は以下に説明する各モータ(いずれもサーボモータ)のドライバである。 111は、ロータリ式線材ガイド回動モータであって、ガイドを所定のタイミングで回動させる。 112は線材送りモータであって、フィードローラ7,8の回転駆動源である。 113は巻回ツール駆動モータであって、巻回ツール31の上下運動を行うためのモータである。 114、115は夫々折曲用内側ツール及び折曲用外側ツール駆動モータであって、図1 4における折曲用ツール32、33の移動を行わせるためのものである。 そして、116は切断ツール駆動モータであって、切断ツール34の移動を行わせるためのものである。 即ち、これら全てのツール31〜34はCP U100の制御の下で駆動されるように、図示の如くドライバ105〜110を介してCPU100と接続されている。 尚、本実施例では、便宜的に巻回ツール、折曲用ツール及び切断ツールの夫々に駆動モータを設けたものを説明したが、1つの共通モータでこれら各ツールを全て駆動できるように、夫々のカムでタイミングを合わせて各ツールを駆動するように構成してもよい。 【0026】<バネ製造の原理>次に、図14〜図21 を参照して、バネ製造の原理について説明する。 尚、以下では、代表的な2つのバネとして、引張りバネ及び2 重ねじりバネの製造原理について説明する。 (引張りバネの製造工程)図14は、本実施例におけるバネ製造空間近傍の構成を示す図である。 また、図15 〜図17は、引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 尚、図15(a)〜図17(a)は、バネ製造空間を上方から見た様子を示し、図15(b)〜図1 7(b)は、バネ製造空間を正面から見た様子を示している。 図14〜図17において、不図示の線材供給源からの線材2は、先に示したフィードローラ7、8からロータリ式線材ガイドユニット40に組み込まれたライナを介して線材ガイド200の先端部から送り出される。 送り出された線材2は、巻回用ツール31に当接させることにより、先ず、バネの第1の先端部として、例えば、フックとなる部分を形成する(図15参照)。 その後、所定のツールを駆動させることで、フック部分の根元の部位で、略90度に折曲げる。 そして、巻回用ツール35を当接させ、更に線材2を送り出すことにより、 ガイドの斜面部に垂直にコイル部分が成長していき、所定のコイル長になったところで線材の送り出しを停止する(図16参照)。 尚、ガイドの先端部と巻回用ツールとの距離がバネのコイル径を決定する。 その後、もう1 つの第2の先端部としてのフック部分を形成するためにガイド200(図5に示す回動部47)を略180度回転させ、ガイド200の傾斜面を先程とは反対方向に回動させる(図15と図17に示すガイド200の位置関係参照)。 この状態で、折曲用ツール36をスライドさせ、線材2を傾斜面側に所定量折曲げ、湾曲させることにより、フック部を形成させ、切断ツール34を用いて切断することにより(図14参照)、両端にフック部を有する引張りバネが成形される(図17参照)。 【0027】(2重ねじりバネの製造工程)次に、2重ねじりバネの製造工程について説明する。 図18〜図2 1は、2重ねじりバネのバネの製造工程を簡略化して示した図である。 尚、図18(a)〜図21(a)は、バネ製造空間を上方から見た様子を示し、図18(b)〜 図21(b)は、バネ製造空間を正面から見た様子を示している。 また、図18(c)は、図21(c)は、バネ製造空間を側面から見た様子を示している。 図14及び図18〜図21において、引張りバネと同様に、不図示の線材供給源からの線材2は、不図示のフィードローラ7、8からロータリ式線材ガイドユニット40に組み込まれたライナを介して線材ガイド200の先端部から送り出される。 送り出された線材2は、所定量送り出して第1の先端の直線部を形成した後、巻回用ツール31 に当接させることにより、先ず、バネの第1のコイル部を成長させる(図18参照)。 その後、巻回用ツール3 1を引き込めて、線材2を所定量送り出すことにより直線部を形成させ、その後、折曲用ツール32、33を当接させることにより、所定量折曲げられる。 次に折曲用ツールを引き込めて、更に折曲げるためにガイド200 (図5に示す回動部47)を略180度回転させ、ガイド200の傾斜面を先程とは反対方向に回動させる(図19と図20に示すガイド200の位置関係参照)。 ガイド200を回動させた後、所定量線材を送り出して折曲用ツール32、33を当接させることにより、中間係止部を形成する(図20参照)。 その後、再び巻回用ツール31を当接させ、更に線材2を送り出すことにより、ガイドの斜面部に垂直に第2のコイル部分が成長していき、所定のコイル長になったところで線材の送り出しを停止する(図21参照)。 尚、ガイドの先端部と巻回用ツールとの距離がバネのコイル径を決定する。 その後、もう1つの第2の先端の直線部を形成するために所定量線材2を送り出して切断ツール34を用いて切断することにより(図14参照)、2つのコイル部を有する2重ねじりバネが成形される(図21参照)。 【0028】<バネの切断原理>上記動作によってバネが一個製造されると、そのバネを切断する。 以下には、 その切断処理の原理を説明する。 図22は、その線材切断処理の原理を説明する図である。 図22において、仮に切断ツールがガイド200に対して、図示の34aに位置している場合を考える。 この場合、ガイド200の線材送り出し孔から突出している線材は、図示A方向に応力を受ける。 すると、線材送り出し孔を支えるにしてもガイドの肉厚が極端に薄い部分で、線材の切断力を受けることになる。 最悪の場合、ガイド200の線材送り出し孔付近に歯こぼれを起こしてしまう。 従って、切断ツールは、図示のθaの範囲から線材に向かって移動させたり、配置させてはいけないことになる。 【0029】また、図示の34bの方向に切断ツールがある場合には、先の34aの位置にある切断ツールに比較すると効果はあるが、最良の状態とは言えない。 なぜならば、2つのガイド200a、200bを当接させている図示Y断面方向に割り入るように切断力が作用するからである。 従って、本実施例では、線材2を切断する場合、切断ツールの進入方向が図示θb、θcのいずれかの範囲になるようにした。 このようにすることによって、小さなガイドでありながら、切断力に十分に耐えるようにできる。 尚、切断ツールの進入方向は、予め決定されており、切断のタイミングになったときにガイドを回動させ、図示の範囲θb、θcのいずれかに切断ツールを配置させる。 また、範囲θb、θcは、ガイドの大きさ、形状、線材の径などによって変化するものである。 【0030】<バネ製造手順>次に、図示の構成における実施例のバネ製造手順を図23〜図27のフローチャートに従って説明する。 但し、以下では、説明を簡単にするため、図15〜図21で説明した引張りバネ及び2 重ねじりバネの製造手順について説明する。 (引張りバネの製造手順)図23、図24のフローチャートを参照して引張りバネの製造手順を説明する。 【0031】先ず、ステップS2における初期設定において、これから成形するバネの形状に基づいて、線材の太さ(外径)やバネの自由長等の各種パラメータを設定する。 そして、ステップS4に処理が進むと、与えられたパラメータに基づいて、線材送りモータ112、巻回ツール駆動モータ113を駆動制御し、ステップS6において、バネの第1のフック部を成形するために線材の湾曲処理を行う。 【0032】ステップS8では、第1のフック部が形成されたか否かを判断する。 この判断は、与えられたバネのフック形成分の線材を送り出したかどうかで判断できる。 いずれにしても、フックが形成されたと判断されるまで、線材送りモータ112及び巻回ツール駆動モータ113をプログラムされた通りに継続動作させる。 さて、ステップS8において、第1のフック部が形成されたと判断したら(ステップS8での判断YES)、処理はステップS10に進み、巻回ツール駆動モータ113 を駆動し、ステップS12において、コイル部を形成する。 その後、ステップS14において、所定のコイル長になったか否かを判断する。 この判断は、レーザセンサ等を設けることにより判断できる。 【0033】さて、ステップS14において、所定のコイル長になったと判断したら(ステップS14での判断YES)、処理はステップS16に進み、線材送りモータ112を一時停止させる。 そして、次のステップS1 8において、ガイドモータ111を駆動し、ガイドを所定位置に回動させる。 その後、ステップS20、S22 において線材送りモータ112、巻回ツール駆動モータ113を駆動制御し、バネの第2のフック部を成形するために線材の湾曲処理を行う。 次に、ステップS24では、第2のフック部が形成されたか否かを判断する。 この判断はステップS8の場合と同様に、与えられたバネのフック形成分の線材を送り出したかどうかで判断できる。 【0034】さて、ステップS24において、第2のフック部が形成されたと判断したら(ステップS24での判断YES)、ステップS25でガイド回動モータ11 1を駆動し、ガイドを所定の切断位置に回動する。 その後、処理はステップS26に進み、切断ツール駆動モータ116を駆動し線材2の切断を行う。 その後、ステップS28において、線材2の切断が終了したか否かを判断する。 この判断も、レーザセンサ等を設けることにより判断できる。 【0035】ステップS28で、線材の切断が終了したと判断されると(ステップS28での判断がNO)、ステップS30に進み、各ツールを初期設定された位置に戻し、しかる後にステップS4にリターンする。 以上説明した手順により、1つの引張りバネが成形される。 (2重ねじりバネの製造手順)次に、図25〜図27のフローチャートを参照して2重ねじりバネの製造手順を説明する。 【0036】先ず、ステップS40における初期設定において、これから成形するバネの形状に基づいて、線材の太さ(外径)やバネの自由長等の各種パラメータを設定する。 そして、ステップS42に処理が進むと、与えられたパラメータに基づいて、線材送りモータ112、 巻回ツール駆動モータ113を駆動制御し、ステップS 44において、バネの第1の先端部を成形するために線材の湾曲処理を行う。 【0037】ステップS46では、第1の先端部が形成されたか否かを判断する。 この判断は、与えられたバネの先端形成分の線材を送り出したかどうかで判断できる。 いずれにしても、先端部が形成されたと判断されるまで、線材送りモータ112及び巻回ツール駆動モータ113をプログラムされた通りに継続動作させる。 さて、ステップS46において、第1の先端部が形成されたと判断したら(ステップS46での判断YES)、処理はステップS48に進み、巻回ツール駆動モータ11 3を駆動し、続いてステップS50において、第1のコイル部を形成する。 その後、ステップS52において、 所定のコイル長になったか否かを判断する。 この判断は、レーザセンサ等を設けることにより判断できる。 【0038】さて、ステップS52において、所定のコイル長になったと判断したら(ステップS52での判断YES)、処理はステップS54に進み、線材送りモータ112を一時停止させ、折曲ツール駆動モータ11 4、115を駆動して、線材を所定角度に折曲げる。 そして、次のステップS56において、第1回目の折曲げが完了したか否かを判断する。 この判断は、レーザセンサ等を設けることにより判断できる。 【0039】さて、ステップS56において、第1回目の折曲げ処理が完了したと判断したら(ステップS56 での判断YES)、処理はステップS58に進み、線材送りモータ112を停止させた状態で、ガイドモータ1 11を駆動し、ガイドを所定位置に回動させる。 その後、ステップS60において線材送りモータ112、折曲ツール駆動モータ114、115を駆動制御し、第2 回目の折曲げ処理を行う。 次に、ステップS62では、 第2回目の折曲げ処理が完了したか否かを判断する。 この判断はステップS56の場合と同様である。 【0040】さて、ステップS62において、第2回目の折曲げ処理が完了したと判断したら(ステップS62 での判断YES)、処理はステップS64に進み、線材送りモータ112及び巻回ツール駆動モータ113を駆動し、ステップS66において、第2のコイル部を形成する。 その後、ステップS68において、所定のコイル長になったか否かを判断する。 この判断は、レーザセンサ等を設けることにより判断できる。 【0041】さて、ステップS68において、所定のコイル長になったと判断したら(ステップS68での判断YES)、処理はステップS70に進み、線材送りモータ112、巻回ツール駆動モータ113を駆動制御し、 バネの第2の先端部を成形するために線材の湾曲処理を行う。 その後、ステップS72では、第2の先端部が形成されたか否かを判断する。 この判断は、与えられたバネの先端形成分の線材を送り出したかどうかで判断できる。 いずれにしても、先端部が形成されたと判断されるまで、線材送りモータ112及び巻回ツール駆動モータ113をプログラムされた通りに継続動作させる。 【0042】さて、ステップS72において、第2の先端部が形成されたと判断したら(ステップS72での判断YES)、ステップS73でガイド回動モータ111 を駆動し、ガイドを所定の切断位置に回動する。 その後、処理はステップS74に進み、切断ツール駆動モータ116を駆動し線材2の切断を行う。 その後、ステップS76において、線材2の切断が終了したか否かを判断する。 この判断も、レーザセンサ等を設けることにより判断できる。 【0043】ステップS76で、線材の切断が終了したと判断されると(ステップS76での判断がNO)、ステップS78に進み、各ツールを初期設定された位置に戻し、しかる後にステップS42にリターンする。 以上説明した手順により、1つの2重ねじりバネが成形される。 <従来技術との比較>次に、図28〜図34を参照して、従来技術に基づくバネ製造の原理と本実施例に基づくバネ製造原理とを比較する。 尚、以下では、上述の代表的な2つのバネとして、引張りバネ及び2重ねじりバネの製造原理について説明する。 【0044】(従来技術による引張りバネの製造工程) 図28〜図30は、引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 尚、図28(a)〜図30(a)は、 従来のバネ製造空間を上方から見た様子を示し、図28 (b)〜図30(b)は、従来のバネ製造空間を正面から見た様子を示している。 図28〜図30において、不図示の線材供給源からの線材2'は、不図示のフィードローラからクイル200'の先端部から送り出される。 尚、クイル200'は、引張りバネ専用に形成されたもので、断面円形の棒状部材の先端部を一部削り取り、削り取られた面をコイル成形面240'として用いる。 送り出された線材2は、巻回用ツール31に当接させることにより、先ず、バネの第1の先端部として、例えば、 フックとなる部分を形成する(図28参照)。 そして、 再び巻回用ツール31とは直交する方向から巻回用ツール35を当接させ、更に線材2を送り出すことにより、 クイルのコイル成形面240'に垂直にコイル部分が成長していき、所定のコイル長になったところで線材の送り出しを停止する(図29参照)。 その後、もう1つの第2の先端部としてのフック部分を形成するために、コイル部がクイル200'のコイル成形面240'とは反対方向に向くように、巻回用ツール36を押し当て、所定量折曲げ、湾曲させることにより、フック部を形成させ、切断ツール34を用いて切断することにより、両端にフック部を有する引張りバネが成形される(図30参照)。 【0045】(従来技術による2重ねじりバネの製造工程)次に、従来技術による2重ねじりバネの製造工程について説明する。 図31〜図34は、2重ねじりバネのバネの製造工程を簡略化して示した図である。 尚、図3 1(a)〜図34(a)は、従来のバネ製造空間を上方から見た様子を示し、図31(b)〜図34(b)は、 従来のバネ製造空間を正面から見た様子を示している。 また、図31(c)は、図34(c)は、従来のバネ製造空間を側面から見た様子を示している。 図31〜図3 4において、引張りバネと同様に、不図示の線材供給源からの線材2'は、不図示のフィードローラからクイル200”の先端部から送り出される。尚、クイル20 0”は、2重ねじりバネ専用に形成されたもので、クイル200'のコイル成形面240'を裏面にも設け、両面をコイル成形面240”、241”として使用できるものを用いる。送り出された線材2は、所定量送り出して第1の先端の直線部を形成した後、巻回用ツール31 に当接させることにより、先ず、コイル成形面の一方2 40”を用いて、バネの第1のコイル部を成長させる(図31参照)。その後、巻回用ツール31を引き込めて、線材2を所定量送り出すことにより直線部を形成させ、その後、折曲用ツール32、33を当接させることにより、所定量折曲げられる(図32参照)。更に折曲げるために、所定量の線材を送り出して、折曲用ツール32、33を当接させることにより、中間係止部を形成する(図33参照)。その後、再び巻回用ツール31を当接させ、更に線材2を送り出すことにより、クイルのコイル成形面の他方241”に垂直に第2のコイル部分が成長していき、所定のコイル長になったところで線材の送り出しを停止する。 その後、もう1つの第2の先端の直線部を形成するために所定量線材2を送り出して切断ツール34を用いて切断することにより、2つのコイル部を有する2重ねじりバネが成形される(図34参照)。 【0046】以上のように、本実施例と従来例との製造法を比較すると、従来では、所望のバネ形状に応じて先端の形状が異なるクイルを用いるのに対し、本実施例では、同じガイドを回動させるだけで、異なる形状のバネを製造することができる。 また、ガイドの角度を所定位置に設定するだけで、バネのコイル部のピッチを自由に設定することも可能になる。 【0047】以上説明したように本実施例によれば、線材ガイドを小型化できると共に、ガイドを回転させることにより発生する線材のねじり応力を低減できる。 また、多種類のバネを製造する場合でも、ガイドの交換が不要になる。 尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施例を修正又は変形したものに適用可能である。 例えば、実施例では、ガイドは、耐磨耗の超硬合金等の材料から構成されるが、強度を保持できるものであれば、その一部を超硬合金として他の部分には異なる材料を用いて構成してもよい。 【0048】 【発明の効果】以上のように、本発明に係わるバネ製造装置によれば、線材を送り出すガイドを回動可能にしてバネ成形空間を変化させるだけで、従来のクイルのように所望のバネの形状に合わせて先端の形状を加工する手間を省き、更に、様々な形状のクイルを在庫するためのコストを低減し、あらゆる形状のバネに共通に用いることが可能となる。 【0049】また、線材を切断する際には、ガイドの線材を送り出す孔から斜め下方に向けて、ガイドの強度の高い部位に向かって切断するので、ガイドの寿命を延長することが可能となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に基づく実施例のバネ製造装置の外観を示す正面図である。 【図2】図1のバネ製造装置の側面図である。 【図3】本実施例のロータリ式線材ガイドユニットの駆動力伝達システムを示す外観斜視図である。 【図4】図3のシステムの正面図である。 【図5】本実施例のロータリ式線材ガイドユニットの全体構成を示す外観斜視図である。 【図6】図5の正面図である。 【図7】図5のA−A矢視断面図である。 【図8】本実施例のガイドの分解した状態の斜視図である。 【図9】図8の夫々のガイドを組み立てた状態を示す斜視図である。 【図10】図8のガイドの先端部の詳細図である。 【図11】本実施例のライナの断面図である。 【図12】図11のライナの平面図及び側面図である。 【図13】本実施例のバネ製造装置の制御系のブロック図である。 【図14】本実施例におけるバネ製造空間近傍の構成を示す図である。 【図15】引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図16】引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図17】引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図18】2重ねじりバネのバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図19】2重ねじりバネのバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図20】2重ねじりバネのバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図21】2重ねじりバネのバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図22】本実施例の線材切断処理の原理を説明する図である。 【図23】本実施例の引張りバネの製造手順を説明するフローチャートである。 【図24】本実施例の引張りバネの製造手順を説明するフローチャートである。 【図25】本実施例の2重ねじりバネの製造手順を説明するフローチャートである。 【図26】本実施例の2重ねじりバネの製造手順を説明するフローチャートである。 【図27】本実施例の2重ねじりバネの製造手順を説明するフローチャートである。 【図28】従来技術による引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図29】従来技術による引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図30】従来技術による引張りバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図31】従来技術による2重ねじりバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図32】従来技術による2重ねじりバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図33】従来技術による2重ねじりバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【図34】従来技術による2重ねじりバネの製造工程を簡略化して示した図である。 【符号の説明】 1…バネ製造装置、2…線材、3…送りロール、4…カム、6…ガイド駆動モータ、7、8…フィードローラ、 10…ベース、20…基台、30…各種ツール、40… ロータリ式線材ガイドユニット、100…制御部、20 0…ガイド、300…ライナ |