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Excellent drawability high strength spring steel wire rod and a manufacturing method thereof, as well as high-strength spring

申请号 JP2011187661 申请日 2011-08-30 公开(公告)号 JP5595358B2 公开(公告)日 2014-09-24
申请人 株式会社神戸製鋼所; 发明人 友信 石田; 直 吉原; 周平 北村;
摘要
权利要求
  • 熱間圧延後の鋼線材であり、C:0.4〜0.8%(「質量%」の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.5〜2.5%、Mn:0.3〜2.0%およびCr:0.4〜3.0%を夫々含有すると共に、V:0.05〜0.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ni:0.1〜2.0%およびMo:0.1〜0.5%よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、パーライトを主体とする組織であり、且つパーライトノジュールの粒度番号の平均値Paveおよびその標準偏差Pσが、夫々下記(1)式、(2)式を満足することを特徴とする伸線性に優れた高強度ばね用鋼線材。
    9.5≦Pave≦12.0 …(1)
    0.2≦Pσ≦0.7 …(2)
  • 線材長手方向におけるビッカース硬度の平均値HVaveが360以下である請求項1に記載の高強度ばね用鋼線材。
  • 更に、Cu:0.7%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の高強度ばね用鋼線材。
  • 更に、Ti:0.5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度ばね用鋼線材。
  • 更に、B:0.01%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高強度ばね用鋼線材。
  • 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度ばね用鋼線材を製造する方法であって、熱間圧延後の鋼線材を載置温度:750〜950℃としてコイル状に巻き取った後、冷却コンベヤ上にて1℃/秒以上の冷却速度で750℃以下の温度まで急速且つ均一に線材を冷却し、引き続き行う徐冷の開始温度を、コイルの密部と疎部のいずれも650〜750℃の範囲内となるようにすることを特徴とする高強度ばね用鋼線材の製造方法。
  • 前記徐冷する領域において、下記(3)式で規定される冷却速度Vを1℃/秒未満とする請求項6に記載の製造方法。
    V(℃/秒)=(Tin−Tout)/t …(3)
    但し、Tin:徐冷領域入り側における鋼線材温度(℃)、Tout:徐冷領域出側における鋼線材温度(℃)、t:鋼線材の徐冷領域滞在時間(秒)
  • 前記鋼線材の徐冷領域滞在時間tを30秒以上とする請求項7に記載の製造方法。
  • 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度ばね用鋼線材を用いて、下記(a)〜(c)の工程のいずれか、または(a)と(b)若しくは(a)と(c)を組み合わせた工程を経てばねに成形加工することを特徴とする高強度ばねの製造方法。
    (a)熱処理を施すことなく皮削り工程を実施する。
    (b)皮削り工程後、パテンティング処理を施すことなく引き抜き加工を加える。
    (c)皮削り工程後、軟化焼鈍若しくは高周波加熱を施して引き抜き加工を加える。
  • 請求項9に記載の方法で得られた高強度ばね。
  • 说明书全文

    本発明は、内燃機関の弁ばねや自動車の懸架ばね等に使用される高い加工性(伸線性、更には後述するSV性)を持った高強度ばね用鋼線材、およびその製造方法、並びにこの高強度ばね用鋼線材から得られる高強度ばね等に関するものである。 本発明に係る高強度ばね用鋼線材は、熱間圧延後の線材(鋼線材)で、引張強度が1050MPa以上の強度を有するにも拘わらず、高い伸線性(伸線加工性)等を有しており、線材の二次加工において加工性向上のための熱処理を省略可能とする技術に関するものである。

    近年の環境問題に起因する自動車の燃費規制は厳しさを増しており、自動車の低燃費化の実現が急務となっている。 自動車に使用される鋼材の開発においても、鋼材の高強度化による車体の軽量化ニーズが強く、今後の燃費規制の強化に応じて更なる高強度鋼材が求められている。 その一方で、新興国の台頭もあって市場競争は激化の一途をたどっており、高強度で且つ低価格の鋼材の開発が必要とされている。

    自動車に使用されるばねには、主にエンジンに使用される弁ばねや、タイヤからの振動をやわらげる懸架ばね等が知られているが、一例として弁ばねの製造方法は以下の通りである。 まず所定の化学成分組成で精練・分塊された鋼塊を、熱間圧延で直径:5.5〜8.0mmφ程度の丸線に加工し、コイル状に巻き取って冷却する。 その後、700℃前後で焼鈍を加えて軟化し、表層の脱炭部を除去する皮削り工程(以下、「SV工程」と呼ぶことがある)を実施する。 その後、加工性向上のために、線材を900℃以上に加熱して一旦オーステナイト化した後、600℃程度の温度に保った鉛浴若しくは塩浴等の冷媒に浸漬して恒温変態させる熱処理(「パテンティング」と呼ばれる)を実施し、組織を緻密なパーライトに整えてから所望の線径(弁ばねの場合は3〜4mmφ程度)まで伸線加工する。 その後、ばね特性を向上させるための焼入れ−焼戻し処理を実施してからばね形状に加工する。

    上記の恒温変態させるための熱処理は、主に加工中の断線等の製造トラブルを防ぐために必要とされている。 しかしながら、これらの熱処理は生産のボトルネックとなって生産性を悪化させる原因となっている。 鋼材の高強度化に伴って加工性が悪化するために熱処理も長時間化する傾向があり、高強度ばね用鋼の価格を押し上げる大きな要因となっている。 特に、前述のパテンティング処理は、2tonコイル1束を処理するのに数十時間を要する場合があり、もっと短時間の熱処理への簡略化、または完全な省略を実現できれば生産上のメリットは極めて大きい。

    また、上記のような熱処理は、当然ながらCO 2排出源になっている他、特に有害物質である鉛を使用する鉛パテンティング処理は、環境負荷が大きいものとなっている。 即ち、上記のような熱処理の省略または簡略化を可能にすれば大幅な生産性改善、コストダウン、環境負荷軽減が見込めるため、熱処理を省略または簡略化しても良好な加工性を有する高強度ばね用鋼線材の実現が望まれているのが実情である。

    これまでにも、熱間圧延の条件を工夫してばね用鋼線材の加工性を向上させる技術がいくつか提案されている。 ここでの加工性とは、圧延から焼入れ−焼戻し処理までに行われる加工工程である皮削り工程(SV工程)および伸線工程での断線率やダイス寿命等をも含むものである(以下、SV工程時の加工性を、特に「SV性」ということがある)。

    こうした技術に関連するものとして、例えば特許文献1には、熱間圧延における加熱温度を1000℃以下とし、1000℃以下で仕上げ圧延を行った後、650〜750℃まで強制冷却してからコイル状に巻き取り、次いで1〜10℃/秒の冷却速度で600℃まで冷却することによって、絞り値が40%以上を実現すると共に、熱処理を省略しても良好な伸線性を発揮する線材が製造できることが開示されている。

    しかしながら、この方法は、過冷組織の発生を抑え、微細なパーライト組織を得ることを目的としており、引張強度が1050MPa以上の高強度鋼線材を加工するためには単純に微細なパーライト組織を得るのみでは不十分であり、逆に微細化に伴う硬さの上昇によって伸線性が低下し、断線が発生するという問題がある。 また、製造プロセスにおいても、コイルへの載置前に650〜750℃まで強制冷却を行うため、こうした工程を高強度ばね用鋼線材に適用しても変形抵抗が増大して載置不良を生じることが十分予想される。

    一方、特許文献2には、仕上げ圧延後、コイル状に載置したときのリングピッチをリング径の1/10以下と密に巻き取って徐冷することで圧延材の硬さを低減し、圧延ままでSV工程の実施を可能にする技術が提案されている。 この方法では、組織の硬さは低減するものの、徐冷中の結晶粒の粗大化が進行し、結晶粒度のばらつきも大きくなるために加工性が低下し、高強度ばね鋼の加工としては適さない。 また、徐冷中の脱炭も大きくなり、製品であるばねの品質を低下させる。

    特許第2761046号公報

    特開平5−7812号公報

    本発明はこうした従来技術における課題を解決する為になされたものであって、その目的は、硬さの上昇に伴う変形抵抗の増大を防止し、生産性を阻害する熱処理を省略、若しくは短時間への熱処理へと簡略化しても良好な伸線性(更にはSV性)を発揮することのできる高強度ばね用鋼線材、およびこのような高強度ばね用鋼線材を製造するための有用な方法、並びに高強度ばね用鋼線材を素材として得られる高強度ばね等を提供することにある。 ここで、簡略化とは現行の熱処理より短時間で低コストの処理で代替することを指す。 一例を挙げれば、パテンティング処理を焼鈍若しくは高周波加熱等を利用した高速の連続処理で代替することである。

    上記課題を解決することのできた本発明の高強度ばね用鋼線材とは、熱間圧延後の鋼線材であり、C:0.4〜0.8%(「質量%」の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.5〜2.5%、Mn:0.3〜2.0%およびCr:0.4〜3.0%を夫々含有すると共に、V:0.05〜0.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ni:0.1〜2.0%およびMo:0.1〜0.5%よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、パーライトを主体とする組織であり、且つパーライトノジュールの粒度番号の平均値Paveおよびその標準偏差Pσが、夫々下記(1)式、(2)式を満足する点に要旨を有するものである。 本発明の高強度ばね用鋼線材は、ビッカース硬度の平均値HVaveが360以下であることが好ましい。
    9.5≦Pave≦12.0 …(1)
    0.2≦Pσ≦0.7 …(2)

    本発明の高強度ばね用鋼線材には、必要によって更に(a)Cu:0.7%以下(0%を含まない)、(b)Ti:0.5%以下(0%を含まない)、(c)B:0.01%以下(0%を含まない)等を含有させることも有効であり、含有される成分に応じて高強度ばね用鋼線材の特性が更に改善される。

    上記のような高強度ばね用鋼線材を製造するに当たっては、熱間圧延後の鋼線材を載置温度:750〜950℃としてコイル状に巻き取った後、冷却コンベヤ上にて1℃/秒以上の冷却速度で750℃以下の温度まで急速且つ均一に線材を冷却し、引き続き行う徐冷の開始温度を、コイルの密部と疎部のいずれも650〜750℃の範囲内となるようにすれば良い。

    上記本発明方法では、前記徐冷する領域において、下記(3)式で規定される冷却速度Vを1℃/秒未満とすることが好ましい。 また、前記線材の徐冷領域滞在時間tは30秒以上とすることが好ましい。
    V(℃/秒)=(Tin−Tout)/t …(3)
    但し、Tin:徐冷領域入り側における鋼線材温度(℃)、Tout:徐冷領域出側における鋼線材温度(℃)、t:鋼線材の徐冷領域滞在時間(秒)

    上記のような本発明の高強度ばね用鋼線材を用いて、下記(a)〜(c)の工程のいずれか、または(a)と(b)若しくは(a)と(c)を組み合わせた工程を経てばねに成形加工することによって、希望する特性を発揮する高強度ばねが得られる。
    (a)熱処理を施すことなく皮削り工程を実施する。
    (b)皮削り工程後、パテンティング処理を施すことなく引き抜き加工を加える。
    (c)皮削り工程後、軟化焼鈍若しくは高周波加熱を施して引き抜き加工を加える。

    本発明では、化学成分組成を適切に調整すると共に、製造条件を適切にすることによって、パーライトを主体とする組織とすると共に、このパーライトノジュール粒度番号の平均値Paveおよびその標準偏差Pσが所定の関係式を満足するようにしたので、硬さの上昇に伴う変形抵抗の増大を防止し、生産性を阻害する熱処理を省略、若しくは短時間への熱処理へと簡略化しても良好な伸線性やSV性を発揮することのできる高強度ばね用鋼線材が実現でき、このような高強度ばね用鋼線材は高強度ばねを製造するための素材として極めて有用である。

    冷却コンベア上のコイルの状態を示す概略説明図である。

    評価用試料のサンプリング方法を説明するための図である。

    パーライトノジュールの粒度番号の平均値Paveと標準偏差Pσとの関係を示すグラフである。

    パーライトノジュールの粒度番号の平均値Paveとビッカース硬さの平均値HVaveとの関係を示すグラフである。

    パーライトノジュールの粒度番号の標準偏差Pσとビッカース硬さの平均値HVaveとの関係を示すグラフである。

    SV後の熱処理の有無が断線頻度に及ぼす影響を示したグラフである。

    一般にばね用鋼線材の製造にあたっては、熱間圧延後の鋼線材をコイル状に巻き取り、冷却コンベヤ上に載置し、風冷等を行って冷却する。 冷却コンベア上のコイルの状態を図1(概略説明図)に示す。 このような状態で冷却を行なうと、鋼線材の比較的密に重なった部分(この部分を「密部」と呼ぶ)と、比較的まばらな部分(この部分を「疎部」と呼ぶ)によって冷却速度に差異が生じ、冷却後の組織に差異が生じることになる。 特に、理想臨界直径DI(後述する)が240mm以上となるような、焼入性が高い高強度ばね用鋼においてはこうした傾向は顕著である。

    本発明者らは、高強度ばね用鋼の圧延材組織と加工性(伸線加工性、SV性)の関係について検討した。 その結果、圧延材組織を微細且つ均一なパーライト主体組織に制御することで加工性が向上することを見出した。 ここで、組織の粒度ばらつきに関しては、線材断面内のばらつきよりも、長手方向、即ちコイル疎部・密部に起因するばらつきの方が大きくなり、加工性に与える影響も大きくなるため、長手方向の組織ばらつきを低減することが重要となる。

    また、過剰に微細化・均一化を進めてしまうと、組織の硬さが却って上昇してしまい、逆に加工性が劣化することも判明した。 高強度ばね用鋼線材において、熱処理を省略、若しくは短時間への熱処理へと簡略化しても十分な加工性を確保するためには、線材長手方向のビッカース硬度の平均値HVaveが360以下であることが好ましい。 本発明者らは、こうした要件を満足させるための条件について、更に検討した。 その結果、パーライトを主体とする組織とすると共に、パーライトノジュール粒度番号の平均値Paveおよびその標準偏差Pσが、夫々下記(1)式、(2)式を満足するようにすれば、上記目的に適う高強度ばね用鋼線材が実現できることを見出し、本発明を完成した。
    9.5≦Pave≦12.0 …(1)
    0.2≦Pσ≦0.7 …(2)

    標準偏差Pσが0.7を超えている場合、鋼線材の製造工程において大きな冷却ムラが生じていた可能性がある。 この様に冷却ムラが大きいと、後述する実施例の試験No. 15の様に、ベイナイト(他に、マルテンサイト)といった過冷組織や粗パーライトが生じる場合があり、加工性が低下するため好ましくない。 一方、標準偏差Pσが0.2を下回る場合(例えば後述する実施例の試験No.13等)も、過冷組織が局所的に生じる場合があり、硬度(HVave)が上昇しやすくなるため好ましくない。

    尚、パーライトノジュール粒度番号の平均値Paveおよびその標準偏差Pσは、好ましくは10.0≦Pave≦11.5、0.3≦Pσ≦0.6である。 また、パーライトを主体とする組織とは、パーライトを60面積%以上含むような組織を意味し、一部フェライトを含んでいても本発明の目的が達成される。

    上記のような高強度ばね用鋼線材を製造するに当たっては、その製造条件も適切に制御する必要がある。 高強度ばね用鋼線材を製造するための手順は次の通りである。 まず、所定の化学成分組成を有する鋼ビレットを熱間圧延し、所望の線径に加工する。 この圧延時の加熱温度については、特に限定しないが、組織微細化の観点からはできるだけ低温での加工が好ましい。 しかしながら、低温化すると鋼材の変形抵抗が増大して設備負荷が大きくなるため、保有する設備に応じて適宜設定することになる。 通常、熱間圧延時の加熱温度(鋼ビレット加熱温度)は、950〜1000℃程度である。

    続いて、熱間圧延後の鋼線材をコイル状にして冷却コンベア上に載置するが、このときの温度(載置温度)が950℃を超えると組織が粗大化し、また750℃未満となると変形抵抗が増大して荷姿不良を引き起こすため、載置温度は750〜950℃とする。 この載置温度は、好ましくは775℃以上、925℃以下である。

    冷却コンベヤ上に載置後、パーライト変態の開始する温度域(750℃以下の温度)まで冷却するが、圧延後の組織を所定の範囲内に制御するためにはコイル状に折り重なった線材を急速且つ均一に冷却する必要がある。 即ち、コイルの密部・疎部をそれぞれ1℃/秒以上の冷却速度で冷却し、徐冷を開始するときの線材温度を、疎部・密部のいずれも650〜750℃の範囲内となるように制御する。 徐冷を開始するときの領域は、その領域に徐冷カバーを設置することによって行なわれるのが通常であるので、以下では徐冷領域を「徐冷カバー内」、徐冷開始位置を「徐冷カバー入口」と呼ぶことがある。

    徐冷カバー入口での線材温度を疎部・密部のいずれも650〜750℃の範囲内となるように制御するには、載置された線材(コイル)の重なり具合やリング各部にかかる風量を総合的に制御することで可能になる。 この後、徐冷カバー内で徐冷して変態を行なうことになる。 徐冷カバー内での冷却速度Vは、下記(3)式で規定されることになるが、この冷却速度Vは1℃/秒未満とすることが好ましい。
    V(℃/秒)=(Tin−Tout)/t …(3)
    但し、Tin:徐冷領域入り側における鋼線材温度(℃)、Tout:徐冷領域出側における鋼線材温度(℃)、t:鋼線材の徐冷領域滞在時間(秒)

    上記のような徐冷カバーの設置は、線材の温度ばらつきを抑制し、局所的な組織ばらつきを防ぐためにも有用である。 但し、徐冷カバー内での滞在時間(徐冷領域滞在時間、徐冷時間)が短すぎると変態が完了する前に徐冷が終わってしまい、その後の冷却(通常、冷)によってベイナイトやマルテンサイト等の過冷組織を生じる恐れがあるので、上記滞在時間は30秒以上を確保することが好ましい。 また、ヒーターや誘導加熱装置等を設置して、より徐冷を促進することは、本発明の好ましい実施形態である。

    本発明の高強度ばね用鋼線材は、その化学成分組成については、最終製品(高強度ばね)としての特性を発揮させるために、その化学成分組成を適切に調整する必要がある。 その化学成分組成における各成分(元素)による範囲限定理由は次の通りである。

    [C:0.4〜0.8%]
    Cは、ばね加工後の強度・耐へたり性の上昇に有効な元素であり、そのためには0.4%以上含有させる必要がある。 C含有量の増加に伴ってばねの強度・耐へたり性は向上するが、過剰になると延性・靱性が低下するため、0.8%以下とする必要がある。 C含有量の好ましい下限は0.5%以上であり、好ましい上限は0.7%以下である。

    [Si:0.5〜2.5%]
    Siは、鋼の脱酸のために必要な元素であり、またフェライト中に固溶してその強度を高める効果も発揮する。 これらの効果を発揮させるためには、0.5%以上含有させる必要がある。 しかしながら、Si含有量が過剰になると、延性・靱性を低下させる他、表面の脱炭や傷が増加して疲労特性を低下させるため、2.5%以下とする必要がある。 Si含有量の好ましい下限は0.7%以上(より好ましくは0.8%以上)であり、好ましい上限は2.3%以下(より好ましくは2.1%以下)である。

    [Mn:0.3〜2.0%]
    MnもSiと同様に、鋼の脱酸のために必要な元素であり、また焼入れ性を高めてばね強度の向上に貢献する。 これらの効果を発揮させるためには、0.3%以上含有させる必要がある。 しかしながら、Mn含有量が過剰になると、変態時間が長時間化して熱間圧延での組織制御を困難にするため、2.0%以下とする必要がある。 Mn含有量の好ましい下限は0.35%以上(より好ましくは0.40%以上)であり、好ましい上限は1.8%以下(より好ましくは1.6%以下)である。

    [Cr:0.4〜3.0%]
    Crは、ばね強度を向上させる他、Cの活量を低下させて圧延時や熱処理時の脱炭を防止すると共に炭化物の黒鉛化を抑制する効果がある。 こうした効果を発揮させるためにはCrは0.4%以上含有させる必要がある。 しかしながら、Crの含有量が過剰になると延性・靱性の低下を招くため、その含有量は3.0%以下とする必要がある。 Cr含有量の好ましい下限は0.45%以上(より好ましくは0.50%以上)であり、好ましい上限は2.8%以下(より好ましくは2.6%以下)である。

    [V:0.05〜0.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ni:0.1〜2.0%およびMo:0.1〜0.5%よりなる群から選ばれる1種以上]
    V、Nb、NiおよびMoは、いずれもばねや線材の延性・靱性を向上する効果があり、これらの1種以上を所定量含有させることによって、その効果が発揮される。

    このうち、Vは熱間圧延および焼き入れ−焼き戻し処理において結晶粒を微細化する作用があり、また圧延後の加工性の増大とばねの延性・靱性を向上する効果がある。 また、ばね成形後の歪取焼鈍時に二次析出硬化を起こしてばね強度の向上に寄与する。 しかしながら、過剰に含有させると鋼材の鋳造時に大きな炭化物・窒化物を生成し、介在物を起点とした疲労折損の増加につながる。 そのため、その範囲を0.05〜0.5%とした。 V含有量の好ましい下限は0.06%以上(より好ましくは0.07%以上)であり、好ましい上限は0.4%以下(より好ましくは0.35%以下)である。

    Nbも熱間圧延および焼き入れ−焼き戻し処理において結晶粒を微細化する作用があり、圧延後の加工性の増大とばねの延性・靱性を向上する効果がある。 しかしながら、過剰に含有させてもその効果が飽和し、鋼材価格を圧迫する弊害の方が大きくなる。 そのため、その範囲を0.05〜0.5%とした。 Nb含有量の好ましい下限は0.06%以上(より好ましくは0.07%以上)であり、好ましい上限は0.4%以下(より好ましくは0.35%以下)である。

    Niは、焼き入れ−焼き戻し処理後の延性・靱性を高める効果がある。 また、耐腐食性を向上させる。 しかしながら、過剰に含有させると焼入れ性が増大し、変態時間が長時間化して熱間圧延での組織制御を困難にする。 そのため、その範囲を0.1〜2.0%とした。 Ni含有量の好ましい下限は0.12%以上(より好ましくは0.15%以上)であり、好ましい上限は1.9%以下(より好ましくは1.8%以下)である。

    Moは、焼き入れ−焼戻し処理後の延性・靱性を高める効果がある。 しかも、焼入性を高めてばねの高強度化に寄与する。 しかしながら、過剰に含有させると焼入れ性が増大して組織制御を困難にする他、鋼材価格を押し上げる。 そのため、その範囲を0.1〜0.5%とした。 Mo含有量の好ましい下限は0.15%以上であり、好ましい上限は0.4%以下である。

    本発明に係る高強度ばね用鋼線材における基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物(例えば、P,S等)である。 本発明に係る高強度ばね用鋼線材には、必要によって(a)Cu:0.7%以下(0%を含まない)、(b)Ti:0.5%以下(0%を含まない)、(c)B:0.01%以下(0%を含まない)等を含有させてもよく、含有させる元素の種類に応じて、鋼線材の特性が更に改善される。 これらの元素の好ましい範囲設定理由は下記の通りである。

    [Cu:0.7%以下(0%を含まない)]
    Cuは脱炭を抑制する効果がある。 また、耐腐食性の向上にも寄与する。 しかしながら、過剰に含有させると熱間延性を低下させ、熱間圧延時に割れを生じる危険があるため、0.7%以下とすることが好ましい。 尚、Cuを含有させるときの好ましい下限は0.05%以上であり、より好ましい上限は0.6%以下である。

    [Ti:0.5%以下(0%を含まない)]
    Tiは、炭化物や窒化物を生成して組織を微細化する作用がある。 しかしながら、過剰に含有させると粗大な介在物を形成して早期疲労折損の原因となるため、0.5%以下とすることが好ましい。 尚、Tiを含有させるときの好ましい下限は0.01%以上であり、より好ましい上限は0.4%以下である。

    [B:0.01%以下(0%を含まない)]
    Bは延性・靱性を向上する作用がある。 しかしながら、過剰に含有させるとFeとBの複合化合物が析出し、熱間圧延時の割れを引き起こすため、0.01%以下とすることが好ましい。 尚、Bを含有させるときの好ましい下限は0.0005%以上であり、より好ましい上限は0.008%以下である。

    本発明の高強度ばね用鋼線材は、熱間圧延後のものを想定したものであるが、この高強度ばね用鋼線材はその後基本的に熱処理を施すことなく加工されることによって、高強度ばねに成形されるものであるが、一部高速熱処理(例えば、高周波加熱)を行なっても良い。 即ち、本発明の高強度ばね用鋼線材は、その後下記(a)〜(c)のいずれか、または(a)と(b)若しくは(a)と(c)を組み合わせた工程を経てばねに成形加工されることによって、良好な特性を発揮するばねが得られる。
    (a)熱処理を施すことなく皮削り工程を実施する。
    (b)皮削り工程後、パテンティング処理を施すことなく引き抜き加工を加える。
    (c)皮削り工程後、軟化焼鈍若しくは高周波加熱を施して引き抜き加工を加える。

    本発明で得られる線材は、上記(a)工程や(b)工程、またはその両方を経て加工を行っても良好な加工性を示す。 しかし、皮削り工程の際に切削加工を受けた線材表層部に硬化層が生成し、引き抜き加工の際の障害になる場合があり、その場合は(b)工程に替えて(c)工程を実施することが好ましい。 (c)工程では表層部硬化層を軟化する目的で皮削り後に熱処理を加えており、生産上の断線等のトラブルを減少させる効果がある。 このときの熱処理方法は、焼鈍や高周波加熱等によるものが考えられるが、特に高周波加熱を利用した処理は生産性が高いため好ましい。

    以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

    実施例1
    下記表1に示す化学成分組成の鋼塊を転炉で溶製した後、この鋼塊を分塊圧延して断面が155mm×155mmの鋼ビレットを作製し、1000℃に加熱した後、線径:5.5〜8.0mmφの丸線に加工(熱間圧延)した。 尚、表1には、理想臨界直径DIについても示したが、これは圧延前の鋼片から切り出した試験片を用いてJIS G0561に記載の方法で測定したジョミニーカーブから、ASTM A 255−02に記載の下記(4)式に基づいて測定したものである。 尚、鋼材の化学成分組成がASTM規格の適用範囲から外れている場合については(例えば、鋼種E、G等)参考値として記載した。
    22.974+6.214[C]+356.364[C] 2 −1091.488[C] 3 +1464.88[C] 4 −750.441[C] 5 …(4)
    但し、[C]は鋼材のC含有量(質量%)を示す。

    次いで、下記表2に示した製造条件で単重2tonのコイルを製造し(試験No.1〜21)、それらの組織・機械特性・加工性(SV性、伸線性)を調査した。

    機械特性の評価では、各コイルの良品部端末から1リングずつ切り出し、図2に示すように円周方向に8分割(線材長手方向に8分割に相当)して得たサンプルを直線矯正して引張試験し、最大引張強度TS、絞り値RAを測定した。 各試験において、1回の測定を行ない(n=1)、その平均値(8箇所の平均)を求めた。

    組織評価では、それらの8分割サンプルの横断面組織をそれぞれ光学顕微鏡にて観察し、各断面の表層、D/4、D/2の位置(Dは線材の直径)でのパーライトノジュール(Pノジュール)粒度番号を測定し、その平均値をその断面でのPノジュール粒度番号Pi(i=1〜8)とし、更にP1〜P8の平均値Pave、標準偏差Pσを算出した。

    ここで、Pノジュールとは、パーライト組織中のフェライト結晶粒が同一方位を示す領域を示し、その測定方法は以下の通りである。 ます樹脂等に埋め込み、研磨して断面を露出させた試料(線材)を濃硝酸(62%):アルコール=1:100(体積比)の溶液を用いて腐食する。 すると、フェライト粒の結晶面に対する腐食量の差からPノジュール粒が浮かび上がって観察されるため、光学顕微鏡を用いて観察し、JIS G 0551に記載の「オーステナイト結晶粒度の測定」に準じてその粒度番号を測定する。 また、フェライト、パーライトの混相組織であっても同様の腐食で初析フェライト粒を判別することが可能であるので、フェライト面積率が40%以下であれば初析フェライトの面積を除外することでPノジュールを測定することができる。

    また、各断面のビッカース硬度HVについては、JIS Z 2244に記載の方法を用いて、8分割サンプルの横断面D/4位置(Dは線材の直径)で90°ずつ離した4箇所、D/2位置の1箇所のビッカース硬度HVを測定し、その平均値をとって各断面の硬度HVi(i=1〜8)とし、更にその平均値HVaveを算出した。

    加工性のうち、SV性は、コイルに熱処理を加えることなく皮削り工程(SV工程)を実施し、このSV工程での断線の有無と皮削り後の線径の寸法公差、および外観検査で評価した。 また、伸線性は、SV工程後の2tonコイルを伸線していき、断線が発生する限界の減面率(伸線限界減面率)を求めて評価した。

    また、試験No. 1〜12については、断線頻度も求めて伸線性を評価した(考察は、後述する実施例2に示す)。 詳細には、試験No. 1〜12のそれぞれにおいて、得られた2tonコイルを5つ用い、皮削り(SV)後に熱処理を加えることなく、直径4.5〜2.5mmまで伸線を行って、伸線時の断線発生回数(断線頻度)を求めた。

    これらの評価結果を、圧延材組織と共に、下記表3に示す。

    表3において、試験No. 1〜12のものは、本発明で規定する要件を満足する例、試験No. 13〜20のものは、化学成分組成は満足する(鋼種L)が、製造条件が本発明で規定する要件を満足しない例、試験No. 21のものは、化学成分組成が本発明で規定する範囲を外れるものである。

    これらの結果から、次のように考察できる。 まず試験No. 1〜12は、いずれもPノジュールが前記(1)式および(2)式で規定する要件を満足する微細パーライト組織となっており、且つビッカース硬度の平均値HVaveも360以下と軟らかいため、これらの鋼線材は、全て伸線性およびSV性のいずれも良好な結果が得られている。

    試験No. 13は、徐冷カバーを設置していないため(徐冷を行なっていないため)、変態中の徐冷が不十分であり、P組織が過剰に微細化(ベイナイトも生成)して硬度が上昇し、SV工程後の切削が不十分で線太りが起こり、また伸線限界減面率も低いものとなっている。

    試験No. 14は、化学成分組成は満足する(鋼種L)が、製造条件が本発明で規定する要件を外れるため(載置温度が700℃)、載置時に巻き取り不良が起こってコイルの製造が不可能であった。

    試験No. 15は、化学成分組成は満足する(鋼種L)が、徐冷カバーまでの急冷が不十分であり、組織が粗大化すると共に組織ばらつきが大きくなり、表層部に一部ベイナイトが生成するなど、局所的に硬い部分が生じたために、SV工程において均一な切削ができずに表層部スケールが一部残留する「黒皮残り」が見られ、また伸線限界減面率も低い(10%未満)ものとなっている。

    試験No. 16は、化学成分組成は満足する(鋼種L)が、徐冷カバー入口温度が低くなっており、組織が過剰に微細化(ベイナイトも生成)して硬度が上昇し、SV工程時に断線が発生する他、伸線加工でも早期断線を引き起こしている(伸線限界減面率:10%未満)。

    試験No. 17は、化学成分組成は満足する(鋼種L)が、徐冷カバー内での徐冷が不十分であるため(冷却速度が速い)、Pノジュールが過度に微細化して硬度が上昇し、SV工程時に切削が不十分で線太りが起こり、また伸線限界減面率も低い(36%)ものとなっている。

    試験No. 18は、Paveは規定範囲内にあるが、Pσが小さすぎるため、硬度が高くなり、SV工程時に切削が不十分で線太りが生じたり、伸線限界減面率が低く(41%)なっている。

    試験No. 19は、徐冷カバー入り口での密部温度が高く、密部で粗いパーライト組織が生じて組織ばらつきが大きくなり、SV工程時に断線が発生する他、伸線加工でも早期断線を引き起こしている(伸線限界減面率:10%未満)。

    試験No. 20は、徐冷カバーまでの急冷がコイルの密部・疎部共に不十分であるため、組織が粗大化し、粗いパーライト組織が生じたためにSV工程において均一な切削ができずに「黒皮残り」が見られた。 また、伸線限界減面率も低く(21%)なっている。

    試験No. 21は、C含有量が0.90%と高い鋼種(表1の鋼種M)を用いているため、ビッカース硬度の平均値HVaveが高くなっており、SV工程時に断線が発生し、伸線限界減面率も低い(10%未満)ものとなっている。

    これらの結果に基づき、Pノジュールの粒度番号の平均値Paveと標準偏差Pσとの関係を図3に、Pノジュールの粒度番号の平均値Paveとビッカース硬さの平均値HVaveとの関係を図4に、Pノジュールの粒度番号の標準偏差Pσとビッカース硬さの平均値HVaveとの関係を図5に、夫々示す。 尚、図中、「◆」で示したものは伸線性が良好であるもの、「×」で示したものは伸線性が不良であることを意味する。 この結果から明らかなように、Pノジュールの粒度番号の平均値Paveと標準偏差Pσを所定の関係式を満足するように制御することによって、伸線性が良好なばね用鋼線材が得られていることが分かる。

    実施例2
    上記実施例1で得られた試験No. 1〜12のコイルを用い、上記SV工程後に下記の焼鈍を行ってから伸線を行った場合の、伸線性(伸線限界減面率、断線頻度)を評価した(試験No.22〜33)。

    詳細には、SV工程後、焼鈍(軟化焼鈍、700〜900℃で1〜2時間)を行ってから、2tonコイルを伸線して、上記伸線限界減面率(断線が発生する限界の減面率)を求めた。 また、試験No. 22〜33のそれぞれにおいて、2tonコイルを5つ用い、皮削り(SV)後に上記焼鈍を行ってから、直径4.5〜2.5mmまで伸線を行い、この伸線時の断線発生回数(断線頻度)を測定した。 これらの評価結果を下記表4に示す。

    表4より、試験No. 22〜33のいずれも伸線限界減面率が高いことがわかる。 また図6は、鋼種(A〜L)別に、SV工程後の熱処理の有無が断線頻度に及ぼす影響を示したグラフであり、上記表4の試験No. 22〜33の断線頻度と、上記表3の試験No. 1〜12の断線頻度の結果を用いて整理したものである。 この図6から、試験No. 1〜12の断線頻度は十分低いが、試験No. 22〜33の通り、SV工程後に熱処理を施してから伸線を行うようにすれば、断線頻度を更に低減でき、伸線性をより高め得ることがわかる。

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