Compression coil spring and a method of manufacturing the same

申请号 JP2012202416 申请日 2012-09-14 公开(公告)号 JP5361098B1 公开(公告)日 2013-12-04
申请人 日本発條株式会社; 发明人 裕一朗 小野; 透 白石; 芳樹 小野; 啓太 高橋;
摘要 【課題】高耐久性の圧縮コイルばねおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】重量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応 力 方向において、無負荷時の線材の表面から0.2mm深さでの圧縮残留応力が200MPa以上であると共に表面から0.4mm深さでの圧縮残留応力が60MPa以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
【選択図】図6
权利要求
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の前記線材の表面から0.2mm深さでの圧縮残留応力が200MPa以上であると共に表面から0.4mm深さでの圧縮残留応力が60MPa以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる前記線材の表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸を残留応力、横軸を素線半径とした残留応力分布曲線において表面からクロッシングポイントまでの積分値をI −σRと表したとき、I −σRが160MPa・mm以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5mm以上3mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の前記線材の表面から0.15mm深さでの圧縮残留応力が300MPa以上であると共に表面から0.3mm深さでの圧縮残留応力が50MPa以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5mm以上3mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる前記線材の表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸を残留応力、横軸を素線半径とした残留応力分布曲線において表面からクロッシングポイントまでの積分値をI −σRと表したとき、I −σRが130MPa・mm以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%、Cr、Ni、V、Mo、Wのうち1種または2種以上を0.005〜1.34%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の前記線材の表面から0.2mm深さでの圧縮残留応力が200MPa以上であると共に表面から0.4mm深さでの圧縮残留応力が60MPa以上であり、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる前記線材の表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸を残留応力、横軸を素線半径とした残留応力分布曲線において表面からクロッシングポイントまでの積分値をI −σRと表したとき、I −σRが160MPa・mm以上であり、JIS G0551に規定される旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号が10番以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%、Cr、Ni、V、Mo、Wのうち1種または2種以上を0.005〜1.34%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5mm以上3mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の前記線材の表面から0.15mm深さでの圧縮残留応力が300MPa以上であると共に表面から0.3mm深さでの圧縮残留応力が50MPa以上であり、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる前記線材の表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸を残留応力、横軸を素線半径とした残留応力分布曲線において表面からクロッシングポイントまでの積分値をI −σRと表したとき、I −σRが130MPa・mm以上であり、JIS G0551に規定される旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号が10番以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%、Crを0.5〜2.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の前記線材の表面から0.2mm深さでの圧縮残留応力が200MPa以上であると共に表面から0.4mm深さでの圧縮残留応力が60MPa以上であり、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる前記線材の表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸を残留応力、横軸を素線半径とした残留応力分布曲線において表面からクロッシングポイントまでの積分値をI −σRと表したとき、I −σRが160MPa・mm以上であり、JIS G0551に規定される旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号が10番以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • 質量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%、Crを0.5〜2.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5mm以上3mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に前記鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の前記線材の表面から0.15mm深さでの圧縮残留応力が300MPa以上であると共に表面から0.3mm深さでの圧縮残留応力が50MPa以上であり、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる前記線材の表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸を残留応力、横軸を素線半径とした残留応力分布曲線において表面からクロッシングポイントまでの積分値をI −σRと表したとき、I −σRが130MPa・mm以上であり、JIS G0551に規定される旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号が10番以上であることを特徴とする圧縮コイルばね。
  • SEM/EBSD法を用いて測定した平均結晶粒径(方位角度差5°以上の境界を粒界とする)が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • 前記C濃化層の硬さが内部硬さよりも50HV以上高いことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • 前記C濃化層における最大C濃度が0.7〜0.9質量%であり、前記C濃化層の厚さが0.01〜0.1mmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • 表面粗さRz(最大高さ)が20μm以下であることを特徴とする請求項1〜 11のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • 前記圧縮残留応力がショットピーニング処理により付与されていることを特徴とする請求項1〜 12のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • 前記ショットピーニング処理が、粒径0.6〜1.2mmのショットによる第1のショットピーニング処理と、粒径0.2〜0.8mmのショットによる第2のショットピーニング処理と、粒径0.02〜0.30mmのショットによる第3のショットピーニング処理からなる多段ショットピーニング処理であることを特徴とする請求項 13に記載の圧縮コイルばね。
  • ばね形状が、円筒形、または、円錐形、釣鐘形、鼓形、樽形等の異形であることを特徴とする請求項1〜 14のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • コイルばね成形機により鋼線材を熱間成形するコイリング工程と、コイリングした後に切離され温度が未だオーステナイト域にあるコイルをそのまま焼入れする焼入れ工程と、コイルを調質する焼戻し工程と、線材表面に圧縮残留応力を付与するショットピーニング工程と、セッチング工程とを順に行う圧縮コイルばねの製造方法において、
    前記コイルばね成形機は、連続的に鋼線材を供給するためのフィードローラと、鋼線材をコイル状に成形するコイリング部と、鋼線材を所定巻数コイリングした後に後方より連続して供給されてくる鋼線材とを切断するための切断手段とを有し、
    前記コイリング部は、前記フィードローラにより供給された鋼線材を加工部の適切な位置へ誘導するためのワイヤガイドと、前記ワイヤガイドを経由して供給された鋼線材をコイル形状に加工するためのコイリングピンもしくはコイリングローラからなるコイリングツールと、ピッチを付けるためのピッチツールとを備えており、
    前記コイルばね成形機は、さらに、前記フィードローラの出口から前記コイリングツールの間に鋼線材を2.5秒以内でオーステナイト域まで昇温する加熱手段を有し、
    加熱中から焼入れまでの間に鋼線材表面に炭化水素系ガスを前記加熱手段から前記コイリングツールに至る前記鋼線材の曲げ軌跡に沿って前記鋼線材に近接して配置したノズルから直接吹付ける浸炭工程を行うことを特徴とする圧縮コイルばねの製造方法。
  • 前記加熱手段が高周波加熱であり、前記ワイヤガイド内における鋼線材の通過経路上若しくは前記ワイヤガイドにおける鋼線材出口側末端と前記コイリングツールとの空間における鋼線材の通路経路上に鋼線材と同心となるように高周波加熱コイルが配置されていることを特徴とする請求項 16に記載の圧縮コイルばねの製造方法。
  • 鋼線材の表層部にC濃化層を形成する浸炭工程と、コイルばね成形機により鋼線材を熱間成形するコイリング工程と、コイリングした後に切離され温度が未だオーステナイト域にあるコイルをそのまま焼入れする焼入れ工程と、コイルを調質する焼戻し工程と、線材表面に圧縮残留応力を付与するショットピーニング工程と、セッチング工程とを順に行う圧縮コイルばねの製造方法において、
    前記浸炭工程におけるC濃化層を形成する手段が、第1の加熱手段により加熱した鋼線材表面に炭化水素系ガスを前記鋼線材に近接して配置したノズルから直接吹付ける方法であり、
    前記コイリング工程に用いる前記コイルばね成形機が、連続的に鋼線材を供給するためのフィードローラと、鋼線材をコイル状に成形するコイリング部と、鋼線材を所定巻数コイリングした後に後方より連続して供給されてくる鋼線材とを切断するための切断手段とを有し、
    前記コイリング部は、前記フィードローラにより供給された鋼線材を加工部の適切な位置へ誘導するためのワイヤガイドと、前記ワイヤガイドを経由して供給された鋼線材をコイル形状に加工するためのコイリングピンもしくはコイリングローラからなるコイリングツールと、ピッチを付けるためのピッチツールとを備え、
    前記ノズルは、前記第1の加熱手段から前記フィードローラに至る鋼線材の軌跡に沿った位置に配置され、
    前記コイルばね成形機は、さらに、前記フィードローラの出口から前記コイリングツールの間に鋼線材を2.5秒以内でオーステナイト域まで昇温する第2の加熱手段を有し、
    前記第2の加熱手段は高周波加熱であり、前記ワイヤガイド内における鋼線材の通過経路上若しくは前記ワイヤガイドにおける鋼線材出口側末端と前記コイリングツールとの空間における鋼線材の通過経路上に鋼線材と同心となるように高周波加熱コイルが配置されており、
    前記浸炭工程と前記コイリング工程が途中で鋼線材の切離がない連続した工程であることを特徴とする圧縮コイルばねの製造方法。
  • コイルばね成形機により鋼線材を成形するコイリング工程と、コイルを20秒以内でオーステナイト域まで昇温し焼入れを行う加熱焼入れ工程と、コイルを調質する焼戻し工程と、線材表面に圧縮残留応力を付与するショットピーニング工程と、セッチング工程とを順に行う圧縮コイルばねの製造方法において、
    前記加熱焼入れ工程における加熱手段が高周波加熱であり、
    加熱中から焼入れまでの間に鋼線材表面に炭化水素系ガスを前記コイルの内周側において前記鋼線材に近接して配置したノズルから直接吹付ける浸炭工程を行うことを特徴とする圧縮コイルばねの製造方法。
  • 前記炭化水素系ガスを吹付ける時点の鋼線材表面温度が850〜1150℃であり、且つ、鋼線材表面部における前記炭化水素系ガスの動圧が0.1〜5.0kPaであることを特徴とする請求項 1619のいずれかに記載の圧縮コイルばねの製造方法。
  • 前記高周波加熱のための高周波加熱コイルの内側に前記炭化水素系ガスを吹き出すノズルを配置したことを特徴とする請求項 19に記載の圧縮コイルばねの製造方法。
  • 前記線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の最大圧縮残留応力が900MPa以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧縮コイルばね。
  • 说明书全文

    本発明は、たとえば自動車のエンジンやクラッチ内で使用される圧縮コイルばねに関し、特に、高応下の使用環境においても優れた耐疲労性を有する圧縮コイルばねおよびその製造方法に関する。

    近年、環境問題を背景に自動車への低燃費化の要求が年々厳しくなっており、自動車部品に対する小型軽量化がこれまで以上に強く求められている。 この小型軽量化の要求に対し、たとえばエンジン内で使用されるバルブスプリングや、クラッチ内で使用されるクラッチトーションスプリングをはじめとする圧縮コイルばね部品においては、材料の高強度化や、表面処理による表面強化の研究が盛んであり、その結果をもってコイルばねの特性として重要な耐疲労性の向上や、耐へたり性の向上を図ってきている。

    一般に、コイルばねの製造方法は、熱間成形法と冷間成形法に大別される。 熱間成形法は、線径dが太い、そしてコイル平均径Dと線径dとの比であるばね指数D/dが小さいなど、その加工性の悪さから冷間成形が困難であるコイルばねの成形に用いられ、コイルばね線材としては炭素鋼やばね鋼が用いられている。 熱間成形法では、図1(F)に示すように、線材を加工し易いように高温に加熱して芯金に巻き付けてコイルばね形状にコイリングし、焼入れ・焼戻し後に、さらにショットピーニングやセッチングを施して、コイルばねの性能として主要となる耐疲労性や耐へたり性を得ている。 なお、熱間成形法においては、無芯金でのコイリングは技術的に非常に困難であるためこれまで実用化には至っていない。 よって、熱間成形法は芯金を用いることが従来の技術では必須であり、成形できるコイルばねとしては、無芯金でコイリング可能な冷間成形法と比べ形状の自由度が低い。

    一方、バルブスプリングやクラッチトーションスプリングクラスの圧縮コイルばねについては、比較的線径が細いために冷間成形が可能である。 そして、加熱による変態や熱膨張収縮を伴わないことから高い寸法精度が得やすく、更に、加工速度や設備費等による量産性(タクト、コスト)も高いことから、このクラスの圧縮コイルばねの製造については従来から冷間成形法が採用されている。 また、この冷間成形法については無芯金での成形技術が確立されており、コイルばねの形状自由度が高いことも、冷間成形法が用いられる大きな一因であり、熱間成形法によるバルブスプリングやクラッチトーションスプリングクラスの圧縮コイルばねの製造技術はこれまでに実在しない。 なお、冷間成形法においては、コイルばね線材としては、炭素鋼線、硬鋼線、ピアノ線、ばね鋼線といった硬引線が従来用いられてきた。 しかしながら、近年、軽量化の観点から材料の高強度化が求められており、高価なオイルテンパー線が広く用いられるようになってきている。

    冷間成形法では、図1(D)および(E)に示すように、線材を冷間でコイルばね形状にコイリングし、焼鈍後、ショットピーニングおよびセッチングを必要に応じて施す。 ここで、焼鈍は、コイルばねの耐疲労性向上の阻害要因となる加工によって生じた残留応力を除去することを目的としており、ショットピーニングによる表面への圧縮残留応力の付与と合わせ、コイルばねの耐疲労性向上に寄与する。 なお、バルブスプリングやクラッチトーションスプリングのような高負荷応力で使用されるコイルばねについては、窒化処理による表面硬化処理がショットピーニング前に必要に応じて施される。

    さらなる耐疲労性の向上を目指した研究が盛んに行われている。 たとえば、特許文献1には、冷間成形用のオイルテンパー線が記載されており、残留オーステナイトの加工誘起変態を利用して耐疲労性を向上させる技術が開示されている。 特許文献2には、窒化処理を施した線材の表面に、異なる投射速度での多段ショットピーニングを施すことで大きな圧縮残留応力を付与し、耐疲労性の向上を図る技術が開示されている。

    特許文献1においてコイリング後のコイルばねには残留応力が生じる。 この残留応力、特にコイル内径側表面に発生する線軸方向の引張残留応力は、コイルばねとしての耐疲労性向上の阻害要因である。 そして、通常はこの加工による残留応力を除去するために焼鈍を施すが、焼戻し軟化抵抗が高い特許文献1にある線材をもってしても、所望の線材の強度を維持したうえでこの残留応力を完全に除去することが困難なことは容易に推定でき、当業者にとっては周知である。 したがって、その後ショットピーニングを施したところで、加工によってコイル内径側に残留した引張残留応力の影響により線材表面に十分な圧縮残留応力を付与することは困難であり、コイルばねとしての十分な耐疲労性を得ることができない。 また、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与するV、Moといった元素は高価である。 よって、線材が非常に高価となり、当然、製品としてのコイルばねも高価なものとなる。

    また、特許文献2では、コイルばねの線材表面近傍(以下、「表面」と称す)の圧縮残留応力は1400MPa程度あり、バルブスプリングやクラッチトーションスプリングクラスの高負荷応力下で使用するコイルばねとして、表面における亀裂発生抑制に対しその圧縮残留応力は十分である。 しかしながら、表面の圧縮残留応力を向上させた結果、線材内部での圧縮残留応力は小さくなり、介在物などを起点とする線材内部での亀裂発生に対しては、その圧縮残留応力の効果が乏しくなる。 つまり、特許文献2による手段では、ショットピーニングにより与えられるエネルギーに限りがあるため、すなわち圧縮残留応力分布の変化は与えられるものの圧縮残留応力の総和を大きく向上させることは困難である。 先述した加工による残留応力の影響を解消することなどは考慮されておらず、よって、同じ強度の線材に対してその耐疲労性の向上効果は乏しい。

    なお、表面圧縮残留応力を向上させる手段は様々実用化されているが、その結果、たとえば線径1.5〜10mm程度のコイルばねにおいては、線材表面からの深さ(以下、「深さ」と称す)0.1〜0.4mmの範囲に外部負荷による作用応力と残留応力との和である合成応力の最大値が存在し、その合成応力の最も高い部分が破壊起点となっているのが実情である。 したがって、深さ0.1〜0.4mmの範囲において大きな圧縮残留応力を確保することが、耐疲労性に対し重要である。

    特許第3595901号

    特開2009−226523号公報

    上記のように、従来の製造方法や特許文献1、2等では、近年の高応力下での耐疲労性の更なる向上とコスト低減の両立を求めた要求に対し、その対応は困難を来す。 また、冷間成形用として現在主流となっているオイルテンパー線は高価であり、中でも性能向上のためにNi、V、Moといった高級元素を添加したオイルテンパー線は非常に高価である。 さらに、成形後の焼鈍処理で加工による残留応力を完全に解消できていないことから、線材の性能を十分に活用できていない。

    本発明は、このような背景の下、コイリング加工による引張残留応力を解消すると共に線材表面にC濃化層を形成し、成形後の線材に適切な圧縮残留応力分布を付与することにより、安価な線材を用いて、高耐久性の圧縮コイルばねおよびその製造方法を提供することを目的とする。

    本発明者らは、コイルばねの耐疲労性について鋭意研究を行った。 そして、上記の深さ0.1〜0.4mmの範囲において大きな圧縮残留応力を得るには、コイリング加工時の引張残留応力を解消し、後に行うショットピーニングやセッチングの効果を効果的に得ることが重要であるとの考えに至った。 そこで、ショットピーニング工程前までにばね線材の引張残留応力を解消する方法について検討を行った。 その結果、コイルばね線材をオーステナイト域まで加熱することにより残留応力を解消できることに着目し、コイルばね線材をオーステナイト域まで加熱した状態でコイリング加工を行い、加工に起因した残留応力の発生を解消して、後に行うショットピーニングやセッチングの効果を効率的に得ることができることを見出した。

    オーステナイト域までの加熱段階において、その加熱をより短時間で行うことは、旧オーステナイト結晶粒径(以下、「結晶粒径」と称す)の粗大化抑制、或いは、微細化に繋がる。 そしてこの結晶粒径は耐疲労性と密接な関係にあり、結晶粒径の微細化は耐疲労性の向上に有効である。 よって、コイルばね線材を短時間で加熱して熱間加工することで、加工に起因する残留応力を解消することと相まって、より耐疲労性に優れたばねの製作が可能となる。

    さらに、コイルばねに対して浸炭処理を行い表面にC濃化層を形成することにより、表面近傍を高硬度として降伏応力を向上させ、後に行うショットピーニングの効果を効率的に得ることができる。 ここで、浸炭処理を熱間コイリング加工時に行うと、浸炭処理を効率的に行うことが可能である。

    また、冷間コイリング加工後にコイルばね線材をオーステナイト域まで加熱して加工による残留応力を解消することによって、後に行うショットピーニングやセッチングの効果を効率的に得ることができる。 冷間コイリング加工の場合では、コイリング後の加熱時に浸炭処理を同時に行うと浸炭処理を効率的に行うことが可能である。

    すなわち、本発明の圧縮コイルばねは、 質量 %で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の線材の表面から0.2mm深さでの圧縮残留応力が200MPa以上であると共に表面から0.4mm深さでの圧縮残留応力が60MPa以上であることを特徴とする。 ここで、ばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向とは、線材の軸方向に対し略+45°方向を示す。 そして、この最大主応力方向はコイルばね形状(特にピッチとの関係)により変化するものであり、その方向は軸方向に対し+45°〜+60°の範囲に存在する。

    また、本発明の圧縮コイルばねは、 質量 %で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が2.5mm以上10mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、線材のコイルばね内径側において、I −σRが160MPa・mm以上であることを特徴とする。 ここで、I −σRとは、ばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の圧縮残留応力の値がゼロとなる線材表面からの深さをクロッシングポイントとし、縦軸が残留応力、横軸が素線半径である残留応力分布曲線における表面からクロッシングポイントまでの積分値である。 クロッシングポイントが大きいことは、圧縮残留応力が表面から深くまで入っていることを示唆している。

    また、本発明の圧縮コイルばねは、 質量 %で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5mm以上3mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、線材のコイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の線材の表面から0.15mm深さでの圧縮残留応力が300MPa以上であると共に表面から0.3mm深さでの圧縮残留応力が50MPa以上であることを特徴とする。

    さらに、本発明の圧縮コイルばねは、 質量 %で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5mm以上3mm以下である鋼線材を用いた圧縮コイルばねにおいて、任意の線材横断面における内部硬さが570〜700HVであり、表層部に鋼線材に含まれるCの平均濃度を超えるC濃化層を有し、線材のコイルばね内径側において、I −σRが130MPa・mm以上であることを特徴とする。

    以下に、本発明で規定する数値範囲の限定理由を説明する。 まず、本発明で用いる鋼線材の化学成分の限定理由について説明する。 本発明においては、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼線材を用いる。 なお、以下の説明において「%」は「 質量 %」を意味する。

    (1)材料成分C:0.45〜0.80%
    Cは、強度向上に寄与する。 Cの含有量が0.45%未満では、強度向上の効果が十分に得られないため、耐疲労性、耐へたり性が不十分となる。 一方、Cの含有量が0.80%を超えると、靭性が低下して割れが発生し易くなる。 このため、Cの含有量は0.45〜0.80%とする。

    Si:0.15〜2.50%
    Siは、鋼の脱酸に有効であると共に、強度向上や焼戻し軟化抵抗向上に寄与する。 Siの含有量が0.15%未満では、これらの効果が十分に得られない。 一方、Siの含有量が2.50%を超えると靭性が低下して割れが発生し易くなると共に、脱炭を助長し線材表面強度の低下を招く。 このため、Siの含有量は0.15〜2.50%とする。

    Mn:0.3〜1.0%
    Mnは焼入れ性の向上に寄与する。 Mnの含有量が0.3%未満では、十分な焼入れ性を確保し難くなり、また、延靭性に有害となるSの固着(MnS生成)の効果も乏しくなる。 一方、Mnの含有量が1.0%を超えると、延性が低下し、割れや表面キズが発生し易くなる。 このため、Mnの含有量は0.3〜1.0%とする。

    なお、これらの添加元素は本発明を構成するうえで最低限必要な元素であって、他の元素をさらに添加しても良い。 すなわち、本発明においては、ばね鋼の成分組成として一般的に用いられているCr、B、Ni、Ti、Cu、Nb、V、Mo、W等の元素のうち1種または2種以上を0.005〜 1.34 %、その目的に応じて適宜添加することが可能であり、その結果、より高性能、若しくは、用途により適したコイルばねの製造も可能である。 たとえば、Crを添加する場合について以下に述べる。

    Cr:0.5〜2.0%
    Crは脱炭を防止するのに有効であると共に、強度向上や焼戻し軟化抵抗向上に寄与し、耐疲労性の向上に有効である。 また、温間での耐へたり性向上にも有効である。 このため、本発明においてはさらに、Crを0.5〜2.0%含有することが好ましい。 Crの含有量が0.5%未満では、これらの効果を十分に得られない。 一方、Crの含有量が2.0%を超えると、靭性が低下し、割れや表面キズが発生し易くなる。

    (2)硬さ分布 高負荷応力下で使用されるバルブスプリングやクラッチトーションスプリング等としては、要求される耐疲労性と耐へたり性を満足するために、コイルばねとしては後述の圧縮残留応力分布と共に線材自体の強度も重要である。 すなわち、任意の横断面における線材内部硬さが、570〜700HVの範囲であることが必要であり、570HV未満の場合は、その材料強度の低さから十分な耐疲労性と耐へたり性が得られない。 また、700HVを超えた場合は、靭性の低下に伴う切欠き感受性の高まりから、コイリング時にツール類との擦れにより発生した表面キズや、ショットピーニングで形成される線材表面粗さの谷部を起点とした亀裂発生による早期折損の危険性が増大し、信頼性が重要な自動車部品として用いるには不適となる。

    (3)C濃化層 線材表面の硬度を高めて降伏応力を向上させるため、線材の表層部に浸炭処理によってC濃化層を形成する。 降伏応力を向上させることにより、後に行うショットピーニングによって大きな表面圧縮残留応力を付与することができる。 また、線材の表面粗さを改善することができる。 このため、耐疲労性をさらに向上させる効果がある。 このC濃化層には線材に含有されるCの平均濃度を超える濃度のCを含有させる。 また、これらの効果を十分に得るため、C濃化層における最大C濃度が0.7〜0.9重量%であり、C濃化層(浸炭深さ)は線材表面から0.01〜0.1mmの深さまで形成されていることが好ましい。 C濃化層の最大C濃度が0.9重量%を超える場合やC濃化層の厚さが0.1mmを超える場合は、浸炭反応を効率的に行うために高温で処理を行わなければならないため、結晶粒度が悪化し、耐疲労性の低下を招き易い。 また、C濃度が0.9重量%を超えた場合は、母相に固溶できないCが炭化物として結晶粒界に多く析出することで靭性が低下し、この場合も耐疲労性の低下を招き易い。

    また、C濃化層の硬さが線材の内部硬さよりも50HV以上高いことが好ましい。 これは、線材表面のC濃化層が内部硬さよりも高いことにより、表面近傍でさらに高い圧縮残留応力を得ることができ、表面近傍(最表面を含む)を起点とする疲労亀裂の発生を防止できるからである。 上記数値が50HV未満であると、これらの効果が顕著に現れない。

    (4)残留応力分布 本発明者等は、バルブスプリングやクラッチトーションスプリングとして要求される作用応力と、疲労折損起点と成りうる様々な要因(延靭性、非金属系介在物、不完全焼入れ組織等の異常組織、表面粗さ、表面キズ等々)との関係における破壊力学的計算、及び、実際の耐久試験等による検証から、コイルばねの線材表面近傍に必要な圧縮残留応力について次の結論を得た。 なお、本発明における圧縮残留応力は、ばねに圧縮荷重を負荷した場合の略最大主応力方向、すなわち、線材の軸方向に対し+45°方向におけるものである。

    ばねにおける線材表面から内部に亘る圧縮残留応力分布は、ショットピーニングおよびセッチングにより与えられる。 上述のように、ばねとしての耐疲労性向上に対しては、線材表面の圧縮残留応力向上はもとより、内部における圧縮残留応力をより大きく深く導入することが必要であり、特に、実質的に破壊起点となっている深さ0.1〜0.4mm程度の範囲の圧縮残留応力をさらに大きくすることが重要である。 そして、その線材内部での圧縮残留応力分布を示す指標としては、円相当直径が2.5mm以上10mm以下の鋼線材の場合は、ばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の深さ0.2mmにおける圧縮残留応力を200MPa以上かつ深さ0.4mmにおける圧縮残留応力を60MPa以上、円相当直径が1.5mm以上3mm以下の鋼線材の場合は、深さ0.15mmにおける圧縮残留応力を300MPa以上かつ深さ0.3mmにおける圧縮残留応力を50MPa以上とする。 これらの数値に満たない場合、内部起点の疲労破壊を抑制するには不十分である。

    また、圧縮残留応力の内部における大きさ、あるいは深さを示す他の指標であるI −σRについては、円相当直径が2.5mm以上10mm以下の鋼線材の場合は、ばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時のI −σRが160MPa・mm以上、円相当直径が1.5mm以上3mm以下の鋼線材の場合は、130MPa・mm以上とする。 ばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、表面の無負荷時の最大圧縮残留応力としては、高負荷応力が作用するバルブスプリングやクラッチトーションスプリングを対象とした場合は、900MPa以上であることが好ましい。 このように圧縮残留応力分布を設定することにより、耐疲労性に優れた圧縮コイルばねを得ることができる。

    本発明における圧縮残留応力分布は、ショットピーニング処理により形成されることが好ましい。 ショットピーニング処理において多段ショットピーニングを施す場合は、後に実施するショットピーニングに用いるショットの球相当直径は、先に実施するショットピーニングに用いるショットの球相当直径より小さいことが好ましい。 具体的には、ショットピーニング処理は、粒径0.6〜1.2mmのショットによる第1のショットピーニング処理と、粒径0.2〜0.8mmのショットによる第2のショットピーニング処理と、粒径0.02〜0.30mmのショットによる第3のショットピーニング処理からなる多段ショットピーニング処理であることが好ましい。 これにより、先に実施したショットピーニングにより増加した表面粗さを後に実施するショットピーニングによって低減することができる。

    なお、ショットピーニング処理におけるショット径や段数は上記に限らず、要求性能に応じて、必要とする残留応力分布や表面粗さ等が得られれば良い。 したがって、ショット径や材質、段数等は適宜選択する。 また、投射速度や投射時間によっても導入される圧縮残留応力分布は異なってくるため、これらも必要に応じて適宜設定する。

    (5)コイルばね形状 本発明は、コイリング時の加工度が大きく、高い耐疲労性が必要とされる、次に挙げる仕様の圧縮コイルばねに好適である。 本発明は、線材の円相当直径(線材横断面積から算出した真円とした場合の直径、角形や卵形をはじめとした非円形断面も含む)が1.5〜10mm、ばね指数が3〜20である、一般的に冷間成形されている圧縮コイルばねに利用できる。

    中でも、コイリング時の加工度が大きく(すなわち、冷間成形ではコイリング加工により発生するコイル内径側の引張残留応力が大きい)、かつ、高い耐疲労性が必要とされるバルブスプリングやクラッチトーションスプリング等で使用される円相当直径が1.5〜9.0mm、ばね指数が3〜8である圧縮コイルばねに対し好適である。

    また、本発明の圧縮コイルばねは熱間成形法または冷間成形法により得ることができる。 熱間成形法で作製する場合でも、従来の熱間成形法とは異なり、後述するコイルばね成形機を用いるため、コイリング加工時に芯金が不要である。 したがって、成形できるばね形状の自由度が高い。 すなわち本発明におけるコイルばね形状としては、コイルばねとして代表的な全巻目でコイル外径にほぼ変化がない円筒形をはじめ、これ以外の形状のコイルばねにも適用できる。 たとえば、円錐形、釣鐘形、鼓形、樽形等の異形ばねの成形も可能である。

    (6)結晶粒径 粒度測定方法はJIS G0551に規定されており、耐疲労性向上には旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号Gが10番以上であることが好ましい。 この場合、旧オーステナイト結晶粒が微細であることから疲労亀裂先端の応力集中部におけるすべりの移動を防ぐことができるため、亀裂進展を抑制する効果が大きく、所望の耐疲労性を得ることができる。 一方、10番未満の場合には、亀裂進展抑制効果が乏しく、十分な耐疲労性を得難くなる。

    また、SEM/EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)法を用いて測定した平均結晶粒径(方位角度差5°以上の境界を粒界とする)が2.0μm以下であることが好ましい。 平均結晶粒径が2.0μmを超えた場合には、十分な耐疲労性を得難くなる。 そして、平均結晶粒径が小さいこと、すなわち、旧オーステナイト粒内のブロックやラスが微細であることは、亀裂進展に対する抵抗が大きいため、耐疲労性の向上に対し好適である。

    (7)表面粗さ 高負荷応力下で使用されるバルブスプリングやクラッチトーションスプリング等としては、要求される耐疲労性を満足するために、上述の圧縮残留応力分布と共に表面粗さも重要である。 本発明者らが破壊力学的計算とその検証実験を行った結果、表面起点による亀裂の発生・進展に対しては、表面キズの深さ(すなわち、表面粗さRz(最大高さ))を20μm以下とすることで、その影響を無害化できることが判明している。 このため、表面粗さRzが、20μm以下であることが好ましい。 Rzが20μmを超える場合、表面の谷部が応力集中源となり、その谷部を起点とした亀裂の発生・進展が起こり易くなるため、早期折損を招き易い。

    次に、本発明の圧縮コイルばねの製造方法について述べる。 本発明の圧縮コイルばねの第1の製造方法では、コイルばね成形機により鋼線材を熱間成形するコイリング工程と、コイリングした後に切離され温度が未だオーステナイト域にあるコイルをそのまま焼入れする焼入れ工程と、コイルを調質する焼戻し工程と、線材表面に圧縮残留応力を付与するショットピーニング工程と、セッチング工程とを順に行う。 ここで、コイルばね成形機は、連続的に鋼線材を供給するためのフィードローラと、鋼線材をコイル状に成形するコイリング部と、鋼線材を所定巻数コイリングした後に後方より連続して供給されてくる鋼線材とを切断するための切断手段とを有する。 そしてコイリング部は、フィードローラにより供給された鋼線材を加工部の適切な位置へ誘導するためのワイヤガイドと、ワイヤガイドを経由して供給された鋼線材をコイル形状に加工するためのコイリングピンもしくはコイリングローラからなるコイリングツールと、ピッチを付けるためのピッチツールとを備えている。 さらに、コイルばね成形機はフィードローラの出口からコイリングツールの間に鋼線材を2.5秒以内でオーステナイト域まで昇温する加熱手段を有する。 そして、本発明の圧縮コイルばねの第1の製造方法では、加熱中から焼入れまでの間に鋼線材表面に炭化素系ガスを加熱手段からコイリングツールに至る鋼線材の曲げ軌跡に沿って鋼線材に近接して配置したノズルから直接吹付ける浸炭工程を行うことを特徴とする。

    上記加熱手段が高周波加熱であり、ワイヤガイド内における鋼線材の通過経路上若しくはワイヤガイドにおける鋼線材出口側末端とコイリングツールとの空間における鋼線材の通路経路上に鋼線材と同心となるように高周波加熱コイルが配置されていることが好ましい。 なお、鋼線材を短時間でオーステナイト域まで昇温できれば良いため、高周波加熱以外の通電加熱やレーザ加熱によって加熱を行っても良い。

    また、本発明の圧縮コイルばねの第2の製造方法は、鋼線材の表層部にC濃化層を形成する浸炭工程と、コイルばね成形機により鋼線材を熱間成形するコイリング工程と、コイリングした後に切離され温度が未だオーステナイト域にあるコイルをそのまま焼入れする焼入れ工程と、コイルを調質する焼戻し工程と、線材表面に圧縮残留応力を付与するショットピーニング工程と、セッチング工程とを順に行う圧縮コイルばねの製造方法において、浸炭工程におけるC濃化層を形成する手段が、 第1の加熱手段により加熱した鋼線材表面に炭化水素系ガスを鋼線材に近接して配置したノズルから直接吹付ける方法により行う。 コイリング工程に用いるコイルばね成形機は、 連続的に鋼線材を供給するためのフィードローラと、鋼線材をコイル状に成形するコイリング部と、鋼線材を所定巻数コイリングした後に後方より連続して供給されてくる鋼線材とを切断するための切断手段とを有し、コイリング部は、フィードローラにより供給された鋼線材を加工部の適切な位置へ誘導するためのワイヤガイドと、ワイヤガイドを経由して供給された鋼線材をコイル形状に加工するためのコイリングピンもしくはコイリングローラからなるコイリングツールと、ピッチを付けるためのピッチツールとを備え、ノズルは、第1の加熱手段からフィードローラに至る鋼線材の軌跡に沿った位置に配置され、コイルばね成形機は、さらに、フィードローラの出口からコイリングツールの間に鋼線材を2.5秒以内でオーステナイト域まで昇温する第2の加熱手段を有し、第2の加熱手段は高周波加熱であり 、ワイヤガイド内における鋼線材の通過経路上若しくはワイヤガイドにおける鋼線材出口側末端とコイリングツールとの空間における鋼線材の通過経路上に鋼線材と同心となるように高周波加熱コイルが配置されている。 そして、本発明の圧縮コイルばねの第2の製造方法は、浸炭工程とコイリング工程が途中で鋼線材の切離がない連続した工程であることを特徴とする。

    さらに、本発明の圧縮コイルばねの第3の製造方法では、コイルばね成形機により鋼線材を成形するコイリング工程と、コイルを20秒以内でオーステナイト域まで昇温し焼入れを行う加熱焼入れ工程と、コイルを調質する焼戻し工程と、線材表面に圧縮残留応力を付与するショットピーニング工程と、セッチング工程とを順に行う。 ここで、加熱焼入れ工程での加熱手段が高周波加熱であると共に、加熱中から焼入れまでの間に鋼線材表面に炭化水素系ガスをコイルの内周側において鋼線材に近接して配置したノズルから直接吹付ける浸炭工程を行うことを特徴とする。

    本発明の圧縮コイルばねの第1〜第3の製造方法では、炭化水素系ガスを吹付ける時点の鋼線材表面温度が850〜1150℃であり、且つ、線材表面部における炭化水素系ガスの動圧が0.1〜5.0kPaであることが好ましい。 この浸炭条件によれば、線材の結晶粒度の著しい低下を防ぎながら浸炭を短時間で効率的に行うことができる。 また、本発明の圧縮コイルばねの第1〜第3の製造方法では、炭化水素系ガスの主成分が、メタン、ブタン、プロパン、アセチレンのいずれかであることが好ましい。

    上記製造方法において、焼戻し工程は、焼入れ工程によって硬化されたコイルを適切な硬さと靭性を有するコイルに調質するために行う。 よって、焼入れままで所望の硬さと靭性とが得られる場合には、焼戻し工程は省略しても良い。 そして、ショットピーニング工程では、多段ショットピーニングを行っても良く、さらに、表面弾性限の回復を目的とした低温時効処理を必要に応じ組み合わせても良い。 ここで、低温時効処理はショットピーニング工程後、あるいは多段ショットピーニングの各段の間にて行うことができ、多段ショットピーニングにおける最終段として粒径0.02〜0.30mmのショットによるショットピーニングを施す場合には、その前処理として行うことが、最表面の圧縮残留応力をより高める上で好適である。 なお、セッチング工程においてへたり防止処理としてコイルに施すセッチングとしては、コールドセッチング、ホットセッチング等種々方法はあるが、所望する特性により適宜選択する。

    本発明の圧縮コイルばねの第1および第2の製造方法によれば、上記コイルばね成形機で熱間コイリングを行うため、加工による残留応力の発生を防止することができる。 そして、鋼線材を2.5秒以内でオーステナイト域まで昇温するため、結晶粒の粗大化を防ぐことができ、優れた耐疲労性を得ることができる。 また、浸炭処理を施すため、鋼線材表面を高硬度とすることができ、後に行うショットピーニングによって効果的に圧縮残留応力を付与することができる。 特に、本発明の圧縮コイルばねの第1の製造方法では、熱間コイリング時の熱を利用して浸炭処理を行うため、効率的に浸炭処理を行うことが可能である。

    また、本発明の圧縮コイルばねの第3の製造方法によれば、コイルを20秒以内でオーステナイト域まで昇温し焼入れを行うため、結晶粒の粗大化を防ぎながら冷間コイリングにより発生した引張残留応力を解消することができる。 また、加熱焼入れ時の熱を利用して浸炭処理を施すため、効率的に浸炭処理を行うことが可能である。 これらのことから、後に行うショットピーニングによって効果的に圧縮残留応力を付与することができ、優れた耐疲労性を得ることができる。

    本発明は、ばねとして使用される炭素鋼線、硬鋼線、ピアノ線、ばね鋼線、炭素鋼オイルテンパー線、クロムバナジウム鋼オイルテンパー線、シリコンクロム鋼オイルテンパー線、シリコンクロムバナジウム鋼オイルテンパー線に対して適用が可能である。 特に、安価な炭素鋼線、硬鋼線、ピアノ線、ばね鋼線に適用することが好適である。 これは、上記製造方法により、安価な線材を利用しても高級元素が添加された高価なオイルテンパー線を使用した従来の冷間成形ばねよりも優れた耐疲労性のばねを得ることができるためである。

    本発明によれば、コイリング加工による引張残留応力を解消すると共に、成形後の線材に適切な圧縮残留応力分布を付与することにより、安価な線材を用いて、高耐久性の圧縮コイルばねを得ることができる。

    コイルばねの製造工程の一例を示す図である。

    本発明の実施形態におけるコイリングマシンの成形部の概略図である。

    本発明の第1実施形態における高周波加熱コイル設置位置を示す概略図である。

    本発明の第2実施形態における高周波加熱コイル設置位置を示す概略図である。

    本発明の第3実施形態における高周波加熱コイル設置位置を示す概略図である。

    実施例で用いたコイルばねの残留応力分布を示すグラフである。

    以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。 図1に各製造工程を示す。 図1(A)〜(C)は、本発明の圧縮コイルばねを得る製造工程であり、図1(D)、(E)は従来例である。 図1(A)および(B)に示される製造工程は、以下のコイリングマシンによる熱間成形法であり、図1(C)に示される製造工程は、任意のコイリングマシンによる冷間成形法である。

    図1(A)および(B)に示される製造工程で用いるコイリングマシンの成形部の概略を図2に示す。 図2に示すように、コイリングマシン成形部1は、連続的に鋼線材Mを供給するためのフィードローラ10と、鋼線材Mをコイル状に成形するコイリング部20と、所定巻数コイリングした後に後方より連続して供給されてくる鋼線材Mとを切り離すための切断刃30aおよび内型30bを備えた切断手段30と、フィードローラ10の出口からコイリングツール22の間において鋼線材Mを加熱する高周波加熱コイル40とを有する。 コイリング部20は、フィードローラ10により供給された鋼線材Mを適切な位置へ誘導するためのワイヤガイド21と、ワイヤガイド21を経由して供給された鋼線材Mをコイル形状に加工するためのコイリングピン(もしくはコイリングローラ)22aからなるコイリングツール22と、ピッチを付けるためのピッチツール23とを備えている。

    コイリングマシンでの急速加熱は、高周波加熱コイル40によって行い、鋼線材を2.5秒以内でオーステナイト域に昇温させる。 高周波加熱コイル40の設置位置は図2に示す通りである。 高周波加熱コイル40はワイヤガイド21の近傍に設置されており、鋼線材Mを加熱後、直ぐに成形出来るようにコイリング部20が設けられている。 なお、高周波加熱コイルの設置位置は、鋼線材Mを加熱後、直ぐに成形できれば良いので、本実施形態で示した位置以外でも良い。

    コイリング部20では、ワイヤガイド21を抜けた鋼線材Mをコイリングピン22aに当接させて所定の曲率で曲げ、さらに下流のコイリングピン22aに当接させて所定の曲率で曲げる。 そして、ピッチツール23に鋼線材Mを当接させて、所望のコイル形状となるようにピッチを付与する。 所望の巻数となったところで、切断手段30の切断刃30aによって内型30bの直線部分との間でせん断によって切断して、後方より供給される鋼線材Mとばね形状の鋼線材Mとを切り離す。

    (1)第1実施形態 図1(A)に第1実施形態の製造工程を示す。 まず、重量%で、Cを0.45〜0.80%、Siを0.15〜2.50%、Mnを0.3〜1.0%含み、残部が鉄および不可避不純物からなる円相当直径が1.5〜10mmの鋼線材Mを用意する。 この鋼線材Mを線出機(図示省略)によりフィードローラ10へ供給し、高周波加熱コイル40によって鋼線材Mを2.5秒以内でオーステナイト域に加熱後、コイリング部20においてコイリングを行う(コイリング工程)。

    このとき、加熱中から焼入れまでの間に鋼線材Mの表面に炭化水素系ガスを直接吹付けて浸炭処理を同時に行う(浸炭工程)。 たとえば、図3に示すようなガス吹付けノズル50を用いる。 ノズルの位置は高周波加熱コイル40より下流であれば良く、図3に示した位置以外でも良い。 浸炭は、ガス吹付圧(鋼線材M表面での動圧)0.1〜5.0kPa、線材温度850〜1150℃において行い、鋼線材Mの表面に最大C濃度が0.7〜0.9重量%であり、厚さが0.01〜0.1mmのC濃化層を形成する。 これにより、線材内部硬さよりも50HV以上高い表層部を得ることができる。

    次に、コイリング後に切離され温度が未だオーステナイト域にあるコイルをそのまま焼入れ槽(図示省略)において焼入れ(焼入れ溶媒としては、たとえば60℃程度の油)を行い(焼入れ工程)、さらに焼戻し(たとえば150〜450℃)を行う(焼戻し工程)。 焼入れを行うことにより、マルテンサイト組織からなる高硬さ組織となり、さらに焼戻しを行うことにより、靭性に優れた焼戻しマルテンサイト組織とすることができる。 ここで、焼入れ・焼戻し処理は一般的な方法を用いればよく、その焼入れ前の線材の加熱温度や焼入れ溶媒の種類・温度、そして焼戻しの温度や時間は、鋼線材Mの材質によって適宜設定する。

    さらに、鋼線材Mにショットピーニング処理(ショットピーニング工程)およびセッチング処理(セッチング工程)を施すことにより、所望の耐疲労性を得ることができる。 オーステナイト域に加熱した状態でコイリングを行うため、加工による残留応力の発生を防ぐことができる。 このため、ショットピーニングによって圧縮残留応力を付与し易く、ばねの内径側において表面から深くかつ大きい圧縮残留応力を効果的に付与することができる。 さらに、セッチング処理を行うことにより、ばねとして使用した場合の最大主応力方向により深い圧縮残留応力分布が形成され、耐疲労性を向上することができる。

    本実施形態においては、粒径0.6〜1.2mmのショットによる第1のショットピーニング処理と、粒径0.2〜0.8mmのショットによる第2のショットピーニング処理と、粒径0.02〜0.30mmのショットによる第3のショットピーニング処理からなる多段ショットピーニング処理を行う。 後に実施するショットピーニング処理において、先に実施するショットピーニング処理よりも小さいショットを用いるため、線材の表面粗さを平滑にすることができる。

    ショットピーニングで使用するショットは、スチールカットワイヤやスチ−ルビーズ、FeCrB系をはじめとした高硬度粒子等を用いることができる。 また、圧縮残留応力は、ショットの球相当直径や投射速度、投射時間、および多段階の投射方式で調整することができる。

    また、本実施形態では、セッチング処理としてホットセッチングを行い、100〜300℃に加熱し、かつ線材表面に作用するせん断ひずみ量がばねとして実際に使用する場合の作用応力でのせん断ひずみ量以上となるようにばね形状の鋼材に対して塑性ひずみを与える。

    以上のような工程によって作製した本発明の圧縮コイルばねは、ばね素線の任意の横断面において内部硬さが570〜700HVであり、表層部にC濃化層を有する。 円相当直径が2.5mm以上10mm以下の鋼線材の場合、ばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時の表面から0.2mm深さにおける圧縮残留応力が200MPa以上であるとともに表面から0.4mm深さにおける圧縮残留応力が60MPa以上である。 また、円相当直径が1.5mm以上3mm以下の鋼線材の場合、表面から0.15mm深さにおける圧縮残留応力が300MPa以上であるとともに表面から0.3mm深さにおける圧縮残留応力が50MPa以上である。

    さらに、以上の工程によって作製した本発明の圧縮コイルばねは、ばね素線の任意の横断面において内部硬さが570〜700HVであり、表層部にC濃化層を有する。 コイルばね内径側のばねに圧縮荷重を負荷した場合に生じる略最大主応力方向において、無負荷時のI −σRが円相当直径が2.5mm以上10mm以下の鋼線材の場合は、160MPa・mm以上、円相当直径が1.5mm以上3mm以下の鋼線材の場合は、130MPa・mm以上である。 なお、C濃化層は、最大C濃度が0.7〜0.9重量%であり、厚さが0.01〜0.1mmであり、内部硬さよりも50HV以上高い硬さを有する。 したがって、本発明の圧縮コイルばねは、圧縮残留応力が深くかつ大きく付与されているため、耐疲労性に優れている。

    (2)第2実施形態 第1実施形態においては熱間コイリング時に浸炭処理を施したが、図1(B)に示すように、熱間コイリング前に浸炭工程を行っても本発明の圧縮コイルばねを得ることができる。 たとえば、図4に示すように、フィードローラ10の手前にガス吹付けノズル50を設置して浸炭処理を行う。 ノズルの位置はフィードローラ10よりも上流であれば良く、図4に示した位置以外でも良い。 浸炭条件は第1実施形態と同様である。 浸炭工程後は、鋼線材Mを切離さずにそのままコイリング工程に供する。 なお、コイリング工程、焼入れ工程、焼戻し工程、ショットピーニング工程、およびセッチング工程は第1実施形態と同様に行う。

    第2実施形態によれば、第1実施形態と同等の圧縮コイルばねを得ることができる。 また、第2実施形態では、コイリング前に浸炭工程を行うため、第1実施形態に比べて浸炭時間を自由に設定することができる。

    (3)第3実施形態 また、図1(C)に示すような冷間成形法を用いて本発明の圧縮コイルばねを得ることもできる。 第1実施形態において用いた鋼線材Mを任意のコイリングマシンによって冷間コイリングを行う(コイリング工程)。 そして、コイリング後の鋼線材Mを20秒以内でオーステナイト域まで昇温し焼入れを行う(加熱焼入れ工程)。 このとき、加熱は高周波加熱手段を用い、加熱中から焼入れまでの間に鋼線材Mの表面に炭化水素系ガスを直接吹付けて浸炭処理(浸炭工程)を同時に行う。 たとえば、図5に示すように、鋼線材Mを回転可能な冶具60に固定し、鋼線材Mの周囲に高周波加熱コイル40、ばねの内側にガス供給穴を備えたノズル50を設置する。 そして、冶具60を回転させることにより鋼線材Mを回転させながら、ノズル50を通してガスを供給して、コイルばねの表面が均一に焼入れおよび浸炭されるように行う。 浸炭条件は第1実施形態と同様である。

    次に、第1実施形態と同様に焼入れ工程、焼戻し工程、ショットピーニング工程、およびセッチング工程を順に行う。 加熱焼入れ工程においてオーステナイト域まで加熱を行うため、冷間成形によって発生した引張残留応力を解消することができ、ショットピーニングおよびセッチングの効果を効果的に得ることができる。 このようにして、第1実施形態と同等の性能の圧縮コイルばねを得ることができる。

    第1および第2実施形態と比べ、第3実施形態ではコイル形状の鋼線材Mに対して高周波加熱を行うため、均熱化等を考慮する必要がある。 また、加熱時間が比較的長くなるため、結晶粒微細化の効果については、第1および第2実施形態に劣る。 そして、冷間成形法では、成形後のコイルばねには大きな加工歪みが残留しており、その加工歪みは個体内で一様ではない。 このため、加熱焼入れ工程において、加工歪みを解放させた際に、形状が歪になり易い。 さらに、第3実施形態では、複雑な形状のコイルばね(円錐形、釣鐘形、鼓形、樽形等の異形ばね)を加熱する際に、均熱化を目的に一品一様の加熱コイルが必要となり、その加熱コイルの設計と加熱条件出しに多大な労力を必要とする。 また、より複雑な形状のコイルばねに対しては、均熱化に困難を来す場合もある。 したがって、いずれの観点からも、第3実施形態と比較して、第1および第2実施形態における製造方法のほうが好ましい。

    1. サンプル作製方法 各製造工程によってコイルばねのサンプルを作製し、耐疲労性の評価を行った。 まず、表1に記載の化学成分を有し、残部が鉄および不可避不純物からなる硬引線およびオイルテンパー線を用意した。 各線材の線径は表2に示す通りである。 そして、硬引線またはオイルテンパー線に対して、図1(A)〜(E)に示す製造工程(それぞれ、製造工程A〜Eと表す)にしたがって、熱間成形法または冷間成形法によりばね指数6、有効部ピッチ角9°、有効部巻数4.25巻のコイルばねを作製した。

    製造工程Aでは、高周波加熱コイルおよびガス吹付ノズルを備えたコイリングマシン(図3参照)により鋼線を加熱してコイリングを行い、表2に示す条件で浸炭処理を行った後、60℃の油によって焼入れした。 表2において、浸炭処理温度は、鋼線の表面温度であり、動圧は、鋼線表面におけるプロパンガスの動圧を表す。 その後、表2に記載の条件で焼戻し処理を行った(発明例1〜23、26〜29、比較例9、10)。 また、製造工程Bでは、図4に示すコイリングマシンを用いて表2に示す浸炭処理条件において浸炭処理を施した後、鋼線を900℃に加熱してコイリングを行い、60℃の油によって焼入れした。 その後、350℃において焼戻し処理を行った(発明例24)。

    製造工程Cでは、任意のコイリングマシンによる冷間コイリング後、図5に示すような装置を用いて表2に記載の条件で加熱浸炭処理を行い、60℃の油によって焼入れを行った後、350℃において焼戻し処理を行った(発明例25)。 また、比較のため、製造工程DおよびEによりコイルばねのサンプルを作製した。 製造工程Dでは、冷間コイリング後、表2に示す温度において焼鈍処理を行った(比較例2、3、5、7、11、12)。 製造工程Eでは冷間コイリング後、400℃において焼鈍処理を行い、次いで窒化処理を行った。 窒化処理では線材表面に深さ0.04mmの硬質層を形成した(比較例4、6、8、13)。

    次に、各サンプルに対してショットピーニング処理およびセッチング処理を施した。 ショットピーニング処理では、球相当直径1.0mmのスチール製ラウンドカットワイヤによる第1のショットピーニング処理と、球相当直径0.5mmのスチール製ラウンドカットワイヤによる第2のショットピーニング処理と、球相当直径0.1mmのスチールビーズによる第3のショットピーニング処理とを順に行った。 セッチングはホットセッチングとし、コイルばねの加熱温度200℃、負荷応力1500MPaで行った。

    2. 評価方法 このようにして得たサンプルに対し、以下の通り諸性質を調査した。 その結果を表3に示す。 なお、比較例1については、コイリングは可能であったが、コイリング中に線材の座屈が生じ所定のばね形状が得られなかったため、評価を行わなかった。

    (1)硬さ(HV)
    ビッカース硬さ試験機(フューチャテック FM−600)を用いてコイルばねの線材横断面におけるコイル内径側で測定を行った。 測定荷重は表面から深さ0.05mmまでは10gf、深さ0.05〜0.1mmまでは25gf、深さ0.2mm以上の位置では200gfとした。

    (2)深さ0.15、0.2、0.3、0.4mmの圧縮残留応力(−σ R0.15 、−σ R0.2 、−σ R0.3 、−σ R0.4 )、最大圧縮残留応力(−σ Rmax )、圧縮残留応力積分値(I −σR )、クロッシングポイント(CP)
    コイルばねの内径側表面において、線材の線軸方向に対し+45°方向(ばねに圧縮荷重を負荷した場合の略最大主応力方向)の圧縮残留応力を、X線回折型残留応力測定装置(リガク製)を用いて測定した。 測定は、管球:Cr、コリメータ径:0.5mmとして行った。 また、コイルばねに対して塩酸を用いて線材表面の全面化学研磨後上記測定を行い、これを繰返すことで深さ方向の残留応力分布を求め、その結果から表面から0.15、0.2、0.3、0.4mmの深さにおける無負荷時の圧縮残留応力、最大圧縮残留応力、クロッシングポイントを求めた。 また、圧縮残留応力積分値は、深さと残留応力の関係図における、表面からクロッシングポイントまでの圧縮残留応力を積分することにより算出した。 なお、一例として発明例12の残留応力分布を図6に示す。

    (3)表面C濃度(C )、C濃化層厚さ(C
    コイルばねの線材横断面における内径側において表面C濃度およびC濃化層の厚さを測定した。 測定にはEPMA(島津製作所 EPMA−1600)を用い、ビーム径1μm、測定ピッチ1μmとしてライン分析を行った。 C濃化層厚さは、線材内部と同じC濃度となるまでの表面からの深さとした。 なお、比較例9ではC濃化層を得られなかったため、表3にこれらの数値を記載していない。

    (4)旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号(G)
    前処理として、コイルばねのサンプルを500℃で1時間加熱した。 そして、コイルばねの横断面の深さd/4の位置において、視野数を10箇所として、光学顕微鏡(NiKON ME600)を用いて倍率:1000倍でJIS
    G0551に準拠して測定を行い、旧オーステナイト粒平均結晶粒度番号Gを算出した。

    (5)表面粗さ(Rz(最大高さ))
    接触三次元形状測定装置(MITAKA NH−3)を用いてJIS B0601に準拠して表面粗さの測定を行った。 測定条件は、測定倍率:100倍、測定距離:4mm、測定ピッチ:0.002mm、カットオフ値:0.8mmとした。

    (6)平均結晶粒径(d GS
    FE−SEM/EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)法により、JEOL JSM−7000F(TSLソリューションズOIM−Analysys Ver.4.6)を用いて、平均結晶粒径を測定した。 ここで、測定はコイルばねの横断面の深さd/4の位置において行い、観察倍率10000倍で行い、方位角度差5°以上の境界を粒界として平均結晶粒径を算出した。

    (7)耐疲労性(折損率)
    油圧サーボ型疲労試験機(鷺宮製作所)を用いて室温(大気中)において疲労試験を行った。 試験応力:735±662MPa、周波数:20Hz、試験数:各8本であり、2千万回加振時の折損率(折損数/試験本数)で耐疲労性を評価した。

    3. 評価結果(1)硬さ 表3から分かるように、本発明では、内部硬さが570〜700HVであると、高い耐疲労性を得ることができる。 また、570〜690HVであるとより好ましい。 硬さがこのような範囲であると、破壊起点となる0.1〜0.4mmの深さにおける圧縮残留応力を十分に得ることができる。 このため、内部起点の破壊が防止され、高い耐疲労性が得られたと考えられる。 また、比較例10の結果から、熱間成形法によって作製したコイルばねでも、硬さが570HV未満の場合は耐力が乏しく、十分な耐疲労性が得られない。 したがって、本発明においては、硬さは570〜700HVが好ましく、570〜690HVがより好ましい。

    また、発明例では浸炭処理によって表面の硬さが内部硬さよりも50HV以上高くなっている。 これによって表面近傍で高い圧縮残留応力を得ることができ、最表面を含む表面近傍を起点とする疲労亀裂の発生を防止することができる。 したがって耐疲労性を向上させることができる。

    (2)残留応力分布 同様の組成の線材を用い製造工程Aにより作製した発明例12、製造工程Bにより作製した発明例24、および製造工程Cにより作製した発明例25は、製造工程Dで作製し、焼鈍処理を行った比較例12と比べて、表面から深い位置での圧縮残留応力(−σ R0.4 )が大きい。 これは、製造工程AまたはBによって作製した発明例では、冷間コイリングにおいて発生する引張残留応力(コイル内径側に残存)が、熱間コイリングにおいてはほとんど発生しないためである。 また、製造工程Cにより作製した発明例25では、冷間コイリングにおいて発生した引張残留応力が、その後オーステナイト域まで加熱することで完全に解消するためである。 つまり、冷間コイリングによる引張残留応力が残存したままの比較例12と比べ、発明例12、24、25では、ショットピーニングによって圧縮残留応力が表面から深くまで入り易い。 このため、破壊起点となり易い0.1〜0.4mm深さにおける圧縮残留応力が大きいため、耐疲労性を向上させることができる。

    発明例1〜29については、全て、−σ Rmaxは900MPa以上と大きな最大圧縮残留応力が得られている。 これは、浸炭による表面近傍の降伏応力向上に起因した、ショットピーニングによる圧縮残留応力の向上が図られていると考えられる。 また、線径が2.5mm以上10mm以下の場合は、I −σRは160MPa・mm以上、CPは0.43mm以上、線径が1.5mm以上3mm以下の場合は、I −σRは130MPa・mm以上、CPは0.38mm以上であり、深く大きな圧縮残留応力が得られ、耐疲労性が良好であった。 なお、比較例2〜5の折損品について破面観察を行った結果、その破壊起点は表面から深さ0.15〜0.35mmの範囲であり、非金属系介在物を起点とする内部起点であった。 この深さは、合成応力(作用応力−残留応力)の最大値が現れる領域近傍に相当し、その領域での圧縮残留応力が大きいことが、耐疲労性に対し重要であると分かる。 このため、−σ R0.15が300MPa以上かつ−σ R0.3が50MPa以上である発明例3では、高価な線材を用い、かつ窒化処理が施された比較例3よりも高い耐疲労性を得ることができた。 また、−σ R0.2が200MPa以上かつ−σ R0.4が60MPa以上である発明例1、2、7〜19、24、25では、高級元素が添加された高価な線材を用い、かつ窒化処理が施された比較例13以上の高い耐疲労性を得ることができた。

    (4)旧オーステナイト粒平均結晶粒度 単純組成の材質A、B、C、またはDからなる、製造工程Aによる発明例1、2、12および26では、Gは10番以上であり、結晶粒微細化効果のあるV量が多い高級鋼の材質Eを用いた比較例12、13と同等程度の微細結晶粒が得られている。 単純組成からなる材質を用いてこのような微細結晶粒が得られたのは、高周波加熱による急速加熱によるものである。 すなわち、高周波加熱によって短時間で加熱を行うことで旧オーステナイト粒の粗大化抑制、或いは微細化効果が得られた。 このため、単純組成からなる発明例1、2、12および26において微細結晶粒を得ることができ、耐疲労性が良好である。

    製造工程Cによる発明例25でも同様に高周波加熱によって加熱を短時間とした結果、Gが10.1と微細結晶粒を得ることができている。 製造工程Aの発明例12と比較して製造工程Cで結晶粒度が若干悪化しているのは、製造工程Aのような線材を加熱する場合と比較して、製造工程Cではコイル形状のものに対して高周波加熱を行うため、均一に加熱するために加熱時間が長くなるためである。 したがって、コイルばねの線径や形状によっては、製造工程Aは製造工程Cよりも結晶粒微細化の観点からより好ましい。

    (5)表面粗さ 高い耐疲労性の得られた発明例1〜29について、表面粗さRz(最大高さ)は9.0μm以下であり、所望する表面粗さRz20μm以下を十分に満足している。 この表面粗さは、コイリング時におけるツール類との擦れや、ショットピーニング処理により形成されるものである。 そしてショットピーニング処理により形成される表面粗さについては、線材の硬さと、ショットの粒径・硬さ・投射速度といった条件との組み合わせによりその大きさが決まる。 よって、Rzが20μmを超えないようにショットピーニングの条件は適宜設定する必要がある。

    (6)平均結晶粒径 単純組成の材質A、B、C、またはDからなる発明例1、2、12および26では、d GSは0.73〜0.95μmであり、高級鋼である材質Eを用いた比較例12、13と同程度の平均結晶粒径であった。 これは、前述のように、高周波加熱によって短時間で加熱を行うことが組織の粗大化抑制、あるいは微細化に繋がったためであり、その結果、発明例1、2、12および26では微細な平均結晶粒径が得られ耐疲労性が向上している。

    製造工程Cによる発明例25でも同様に高周波加熱による短時間加熱の結果、d GS =0.95μmと微細結晶粒を得ることが出来ている。 しかしながら、前述のように、製造工程Cでは製造工程Aと比較して加熱が長時間化するため、コイルばねの線径や形状によっては、製造工程Aでは製造工程Cよりも結晶粒微細化の観点からより好ましい。

    (7)線径 線径を1.5〜10mmの範囲で変えた発明例3〜6、12、20〜22では、製造工程Aでの熱間成形に際し異常変形等が無く、略円形のコイルばねを製作できた。 線径を1.2mmとした比較例1ではコイリング中に線材が座屈し、コイリングツールから脱離し、コイルの製作が不可能であった。 なお、線径を10mmとした発明例22では、線材中心近傍(具体的には、中心から2mm程度の範囲)において、完全なマルテンサイト組織が得られず、不完全焼入れ組織となっていた。 これは、コイリング中に浸炭処理を行うため、高周波加熱の時間が短くなり、線材の径方向の均熱化に十分な加熱時間が得られなかったためである。 ただし、中心近傍はコイルばねとしての使用上、ほとんど応力が掛らない範囲であり、その結果、発明例22においても高い耐久性が得られている。 このことから、線径が10mmを超えると、前述した不完全焼入れ組織がコイルばねとしての使用上問題となる領域に達してしまうと分かる。 したがって、本発明においては、線径は1.5〜9.0mmがより好ましい。

    (8)浸炭条件 線材表面での浸炭反応を効率的に行うためには、一定以上のガス吹付圧(線材表面での動圧)が必要であり、ガス吹付圧が低すぎるとC濃化層を得ることが出来ない。 一方、ガス吹付圧が高すぎても線材表面温度が低下することによる浸炭反応性の低下を招くため好ましくない。 また、線材温度が800℃である比較例9ではC濃化層が生成しなかった。 したがって、浸炭反応の速度の観点から短時間での浸炭には線材温度は850℃以上が必要である。 なお、線材温度が1150℃を超えると、加熱温度が高いため結晶粒度が悪化し、耐疲労性が低化し易くなる。 これらのことから、ガス吹付圧は0.1kPa〜5.0kPa、ガス吹付け時の線材温度は850〜1150℃であることが好ましい。 この条件によれば、発明例7〜19が示す通りいずれも表面C濃度0.7重量%以上、かつC濃化層厚さ10μm以上が得られる。

    これらのことから、従来のコイルばねの製造方法と比べ、本発明の圧縮コイルばねの製造方法によれば、コイリングによる引張残留応力を解消し、浸炭処理によって所定の表面硬さを得ることにより、表面から深くまでかつ大きな圧縮残留応力を得られ、耐疲労性を向上できることを確認できた。

    なお、製造工程AおよびBと、製造工程Cにおける寸法精度の違いについて、焼入れ後のコイルばね50個で評価を行った。 ここでは、材質C、線径4mmの線材を用いて発明例12、24、25の場合と同様の条件でコイルばねを作製した。 その結果、コイル径について、製造工程Cで作製したコイルの標準偏差が0.047mmであったのに対し、製造工程AおよびBで作製したコイルではそれぞれ0.020mm、0.023mmであった。 冷間成形法では、冷間成形後のコイルばねにおいては大きな加工歪みが残留しており、その加工歪みは個体内で一様ではない。 このため、焼入れ工程においてオーステナイト領域まで加熱を行って加工ひずみを解放させた際に、不均一な変形(形状が歪になる、そのばらつきが大きい)を招き易い。 一方、熱間成形法では、コイルばねに加工歪みが残留しない。 このため、高い寸法精度が要求される場合は、熱間成形法を用いる製造工程AまたはBを用いることが好ましい。 製造工程Cでは、耐久性は良好なものの、冷間成形法であるため寸法精度の点で製造工程AおよびBに劣る。

    以上より、本発明の圧縮コイルばねの製造方法によれば、安価な線材を用いても、高級鋼を使用した従来の冷間成形ばねよりも耐疲労性に優れた圧縮コイルばねを得ることができる。

    1…コイリングマシン成形部、10…フィードローラ、20…コイリング部、21…ワイヤガイド、22…コイリングツール、22a…コイリングピン、23…ピッチツール、30…切断手段、30a…切断刃、30b…内型、40…高周波加熱コイル、50…ノズル、60…冶具、M…鋼線材。

    QQ群二维码
    意见反馈