油性食品

申请号 JP2017501052 申请日 2016-06-22 公开(公告)号 JPWO2016208638A1 公开(公告)日 2017-06-29
申请人 日清オイリオグループ株式会社; 发明人 清美 大西; 清美 大西; 典子 村山; 典子 村山; 知洋 粟飯原; 知洋 粟飯原; 稚子 畑中; 稚子 畑中;
摘要 本発明の課題は、構成 脂肪酸 全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が高い油脂を使用しても、保形性が良好で、口どけが良く、油脂の滲み出しが抑制された、油性食品及びその製造方法を提供することである。本発明は、 水 の含有量が0.8〜3質量%であり、かつ、油脂および糖類を含む油性食品であって、前記油脂が中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む、油性食品である。本発明は、また、前記油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が、20質量%以上である、油性食品である。本発明は、また、前記油脂の構成脂肪酸全量に占めるベヘン酸の含有量が、4質量%以下である、油性食品である。
权利要求
  • 水の含有量が0.8〜3質量%であり、かつ、油脂および糖類を含む油性食品であって、前記油脂が中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む、油性食品。
  • 前記油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が、20質量%以上である、請求項1に記載の油性食品。
  • 前記油脂の構成脂肪酸全量に占めるベヘン酸の含有量が、4質量%以下である、請求項1または2に記載の油性食品。
  • 前記油脂に占める、炭素数16以上の飽和脂肪酸のみを構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量が、10質量%以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の油性食品。
  • 請求項1〜4の何れか1項に記載の油性食品が焼成された、焼成油性食品。
  • 中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む油脂および糖類、を含む油性食品の、水の含有量を0.8〜3質量%に調整する、請求項1〜4に記載の油性食品の製造方法。
  • 請求項1〜4の何れか1項に記載の油性食品を焼成する、焼成油性食品の製造方法。
  • 油脂および糖類を含む油性食品の、水の含有量を0.8〜3質量%に調整する、油性食品の保形性向上方法。
  • 说明书全文

    本発明は、中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む油性食品に関する。

    主にヤシ油に含まれている中鎖脂肪酸は、食用油の主成分である長鎖脂肪酸に比べ、体内に摂取されると速やかに吸収される。 そして、肝臓ですぐに燃やされ、エネルギーとなる。 このような中鎖脂肪酸の栄養特性を利用して、従来、中鎖脂肪酸はエネルギー補給に活用されてきた。 また、中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸摂取時に比べ体脂肪の蓄積が少ないことも報告されている(例えば、J.Lipid Res.37、708−726(1996))。

    このような栄養特性を持つ中鎖脂肪酸を含有する食品は種々提案されている。 例えば、特開平2−131557号公報には、油相が少なくとも約10%の中鎖脂肪酸類を含有したトリグリセリド類を含む低カロリーピーナツバターが提案されている。 特許第4932716号公報には、中鎖脂肪酸トリグリセリドと、パーム油由来の固体脂およびハイエルシン菜種油の極度硬化油と、を含有する油脂組成物を使用したきな粉スプレッドが提案されている。

    しかしながら、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールは粘度が低く、長鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールと比較して、食品から滲み出しやすい。 このような難点を克服するために、上記特開平2−131557号公報および特許第4932716号公報では、高融点油脂が併用されている。 しかし、このような高融点油脂の利用は、口どけを損ないやすい。

    また、特開平2−1799号公報には、中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸とを含有するトリグセリドから製造される低カロリー脂肪および該低カロリー脂肪を使用したチョコレートなどが提案されている。 中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸とを構成脂肪酸とすることで、粘度の低さはある程度改善される。 しかしながら、長鎖脂肪酸を構成脂肪酸として導入することにより、単位量あたりの中鎖脂肪酸の含有量が減少する。 そのため、中鎖脂肪酸を効率的に摂取するという面では不都合である。

    特開平2−131557号公報

    特許第4932716号公報

    特開平2−1799号公報

    J. Lipid Res. 37、708−726(1996)

    本発明の課題は、構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が高い油脂を使用しても、保形性が良好で、口どけが良く、油脂の滲み出しが抑制された、油性食品及びその製造方法を提供することである。

    本発明者らは鋭意研究を重ねた。 その結果、油性食品のの含有量が特定の範囲に調整されることにより、保形性の良好な、中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む油性食品が得られることが見いだされた。 これにより、本発明が完成するに至った。

    より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
    (1)水の含有量が0.8〜3質量%であり、かつ、油脂および糖類を含む油性食品であって、前記油脂が中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む、油性食品。
    (2)前記油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が、20質量%以上である、(1)の油性食品。
    (3)前記油脂の構成脂肪酸全量に占めるベヘン酸の含有量が、4質量%以下である、(1)または(2)の油性食品。
    (4)前記油脂に占める、炭素数16以上の飽和脂肪酸のみを構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量が、10質量%以下である、(1)〜(3)の何れか1つの油性食品。
    (5)(1)〜(4)の何れか1つの油性食品が焼成された、焼成油性食品。
    (6)中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む油脂および糖類、を含む油性食品の、水の含有量を0.8〜3質量%に調整する、(1)〜(4)の何れか1つの油性食品の製造方法。
    (7)(1)〜(4)の何れか1つの油性食品を焼成する、焼成油性食品の製造方法。
    (8)油脂および糖類を含む油性食品の、水の含有量を0.8〜3質量%に調整する、油性食品の保形性向上方法。

    本発明によれば、中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含有する油脂、特に、構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が高い油脂を使用しても、保形性が良好で、口どけが良く、油脂の滲み出しが抑制された、油性食品が提供される。 本発明によれば、また、当該油性食品を製造する、製造方法が提供される。 本発明によれば、また、当該油性食品を焼成する、焼き崩れが抑制された焼成油性食品の製造方法が提供される。

    以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。

    本発明の油性食品は、油脂が連続相をなす食品である。 具体例として、チョコレート、ファットクリーム、バタークリーム、スプレッドなどが挙げられる。 本発明の油性食品の好ましい態様の1つはチョコレートである。 本発明においてチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではない。 食用油脂および糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダーなど)、乳製品、香料、乳化剤などを加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、冷却工程など)の一部または全部を経て製造される。 また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートの他に、カラーチョコレート、チョコレートクリーム、ソフトチョコレートなどのチョコレート様食品も含む。

    本発明の油性食品は、水を0.8〜3質量%含有する。 油性食品は、少量の水を含むことにより、融液状態における粘度が上昇する。 融液状態における粘度が上昇することにより、冷却した油性食品は保形性を有する。 本発明の油性食品は、水の含有量が、好ましくは0.9〜2.5質量%であり、より好ましくは1.0〜2.0質量%である。 なお、ここで融液状態とは、油性食品中の油脂が融解した状態を意味する。

    本発明の油性食品は、油脂を好ましくは26〜52質量%含有する。 ここで油脂とは、ココアバター等の油脂のみだけではなく、カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等の油性食品の原料中に含まれる油脂をも含む。 例えば、カカオマスの油脂(ココアバター)含有量は55質量%(含油率0.55)であり、ココアパウダーの油脂(ココアバター)含有量は11質量%(含油率0.11)であり、全脂粉乳の油脂(乳脂)含有量は25質量%(含油率0.25)である。 油性食品中の油脂含有量は、各原料の油性食品中の配合量(質量%)に含油率を掛け合わせた値の合計値である。 本発明の油性食品の油脂含有量は、良好な保形性を維持する点から、より好ましくは28〜44質量%であり、さらに好ましくは30〜40質量%であり、最も好ましくは32〜38質量%である。

    本発明の油性食品は、油脂中に中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含む。 本発明における中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(以下、MTGとも表す)は、トリアシルグリセロールを構成する3個の脂肪酸のうち、少なくとも1個が中鎖脂肪酸であるトリアシルグリセロールである。 3個の構成脂肪酸の全てが中鎖脂肪酸であるトリアシルグリセロールは、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、MCTとも表す)であり、MTGに含まれる。 本発明における中鎖脂肪酸は、炭素数6〜10の脂肪酸であり、飽和の直鎖脂肪酸であることが好ましい。 中鎖脂肪酸は、好ましくはn−ヘキサン酸、n−オクタン酸およびn−デカン酸から選ばれる1種以上であり、より好ましくはn−オクタン酸およびn−デカン酸から選ばれる1種以上である。

    本発明の油性食品の油脂に含まれる中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)は、全てのMTGに含まれる中鎖脂肪酸に占めるn−デカン酸の含有量が、好ましくは、20質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは60〜100質量%である。 また、全てのMTGに含まれる中鎖脂肪酸に占めるn−ヘキサン酸の含有量が、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは0〜10質量%である。 全てのMTGに含まれる中鎖脂肪酸に占めるn−デカン酸の含有量およびn−ヘキサン酸の含有量が上記範囲内にあると、本発明の油性食品を多く摂食した場合の胃への負担が好適に軽減できる。

    本発明における中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)の中鎖脂肪酸以外の脂肪酸は、長鎖脂肪酸であることが好ましい。 長鎖脂肪酸とは炭素数が12以上、好ましくは12〜22の飽和及び不飽和脂肪酸を言う。 例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。 長鎖脂肪酸は、炭素数16〜22であることがより好ましい。

    本発明における中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)が長鎖脂肪酸を含む場合(以下、MLCTとも表す)、中鎖脂肪酸をM、長鎖脂肪酸をLとすると、そのトリアシルグリセロール(MLCT)が、MLL、LML、LLM、MML、MLM、LMMの構造を有するものを意味する。 なお、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT)の構造は、MMMである。 中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)の分析及び計算方法は、当技術分野に周知の方法を用いることができる。 詳しくは、R. J. VANDER WALの総説(Jarnal of American Oil Chemists' Society 40, 242−247 (1963))等が参照できる。

    本発明における中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)は、油脂加工において通常行われるエステル交換および/またはエステル化により得られる。 例えば、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT)の場合、常法に従って、中鎖脂肪酸とグリセロールとを、触媒下、好ましくは無触媒下で、また、好ましくは減圧下で、120〜180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。 反応後必要に応じて、触媒の除去、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を適用できる。

    本発明における中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)が長鎖脂肪酸を含む場合、例えば、MTGは以下のように製造できる。 菜種油、パーム油等の構成脂肪酸の全量に占める炭素数16以上の脂肪酸が90質量%以上の油脂とMCTとを混合する。 混合比は質量比で、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20である。 混合油脂をエステル交換することによりMTGが得られる。 エステル交換の方法は、特に制限されない。 化学的エステル交換、酵素的エステル交換のどちらの方法でもよい。 なお、化学的エステル交換は、触媒としてナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる。 その反応は位置選択性の低い非選択的エステル交換である。
    なお、天然油脂には、ヤシ油やパーム核油等のようにMTGを含有する油脂がある。 それら及びそれらを混合、硬化、分別、エステル交換処理等から選ばれる一種もしくは二種以上の加工を行った油脂も、本発明のMTGの全部乃至一部として利用できる。

    化学的エステル交換は、例えば、常法に従って、以下の操作により実施できる。 十分に乾燥させた原料油脂に対して、触媒を0.1〜1質量%添加する。 触媒を含有した原料油脂を、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌することにより、エステル交換反応を行うことができる。 エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流す。 その後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を適用できる。

    酵素的エステル交換は、触媒としてリパーゼ製剤を用いて行われる。 リパーゼ製剤の有する選択的な触媒作用により、1,3位選択性のあるエステル交換が可能である。 酵素的エステル交換は、例えば、常法に従って、以下の操作により実施できる。 原料油脂に対して、0.01〜5質量%のリパーゼ製剤を添加する。 リパーゼ製剤を含有した原料油脂を、30〜70℃で、1〜40時間攪拌することにより、エステル交換反応を行う。 エステル交換反応終了後は、ろ過により反応生成物からリパーゼ製剤が除去される。 その後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を適用できる。

    本発明の油性食品における、油性食品中の油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量は、好ましくは20質量%以上である。 本発明の油性食品中の油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量は、より好ましくは41〜92質量%であり、さらに好ましくは51〜92質量%であり、さらにより好ましくは61〜86質量%であり、最も好ましくは70〜82質量%である。 本発明の油性食品中の油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が、上記範囲内にあると、少量の油性食品を摂食することで、効率よく中鎖脂肪酸を摂取できる。

    本発明の油性食品は、中鎖脂肪酸を効率良く摂取するという意味において、油脂中に中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT)を好ましくは20質量%以上含有する。 本発明の油性食品の油脂中のMCT含有量は、より好ましくは41〜92質量%であり、さらに好ましくは61〜86質量%であり、最も好ましくは70〜82質量%である。

    本発明の油性食品は、油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が高くても、保形性を有する。 また、本発明の油性食品は、好ましくは、外部からの応により変形する可塑性を有する。 本発明の油性食品の好ましい態様の1つは、可塑性を有するクリームである。 具体的には、例えば、ソフトチョコレート、ファットクリームおよびスプレッドなどの油性クリームが挙げられる。

    本発明の油性食品は、少量の水を含有することにより、良好な保形性を維持できる。 したがって、油脂を構造化するために構成脂肪酸として用いられるベヘン酸や、炭素数16以上の飽和脂肪酸のみを構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール(以下、HHHとも表す)などの含有量を、低く抑えることができる。 そのために油性食品の口どけがよい。 本発明の油性食品は、油脂の構成脂肪酸全量に占めるベヘン酸の含有量が、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは0〜2質量%であり、さらに好ましくは0〜1質量%である。 本発明の油性食品は、また、油脂に占める、炭素数16以上の飽和脂肪酸のみを構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量が、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは0〜3質量%であり、さらにより好ましくは0〜2質量%であり、最も好ましくは0〜1質量%である。

    本発明の油性食品には、本発明の特徴を損なわない限りにおいて、必要に応じてMTGを含まない食用油脂を使用できる。 例えば、パーム油、カカオ脂(ココアバター)、サル脂、シア脂、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米油、ゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、落花生油、亜麻仁油、ラード、脂、魚油等の油脂、これら油脂を、混合、分別、水素添加、エステル交換等から選ばれる一種もしくは二種以上の加工を行った油脂が挙げられる。

    本発明の油性食品は、糖類を含有する。 本発明の油性食品が含有する糖類としては、例として、砂糖(ショ糖)、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、還元糖ポリデキストロース、ラフィノース、ラクチュロース、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロースなどが挙げられる。 糖類は、糖アルコールであってもよい。 本発明の油性食品の糖類の含有量は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜65質量%、さらに好ましくは30〜60質量%である。

    本発明の油性食品は、また、糖類の1つとしてショ糖を含んでいてもよい。 ショ糖は、実質的にショ糖の結晶であるグラニュー糖を粉にした粉糖を使用するのが適当である。 本発明の油性食品のショ糖含有量は、好ましくは30〜58質量%であり、より好ましくは32〜54質量%であり、さらに好ましくは34〜50質量%である。 油性食品のショ糖含有量が上記範囲内にあると、油性食品は少量の水が糖に作用することにより、良好な保形性を維持できる。

    本発明の油性食品は、また、糖類の1つとして乳糖を含んでいてもよい。 乳糖は好ましくは結晶質であり、より好ましくは結晶として配合される。 市販の乳糖であればほとんどが結晶質である。 乳糖の結晶は、α−乳糖であってもβ−乳糖であってもよい。 α−乳糖は、無水物でも一水和物であってもよい。 本発明の油性食品の乳糖含有量は、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは2〜18質量%であり、さらに好ましくは3〜16質量%である。 油性食品の乳糖含有量が上記範囲内にあると、油性食品は少量の水が糖に作用することにより、良好な保形性を維持できる。

    本発明の油性食品は、油脂および糖類のほかに、一般的に油性食品に使用される、カカオマス、ココアパウダー、乳製品(乳固形類等)、乳化剤、香料、色素等のほか、澱粉類、ガム類、熱凝固性タンパク、いちご粉末や抹茶粉末などの各種粉末類などの、各種食材や各種改質材が含まれていてもよい。

    本発明の油性食品は、また、粉乳を含んでいてもよい。 本発明に使用する粉乳は、乳由来の粉末であれば特に制限はない。 例として、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、クリームパウダー、バターミルクパウダーが挙げられる。 粉乳は1種または2種以上を選択して使用できる。 本発明の油性食品は、好ましくは全脂粉乳、脱脂粉乳およびホエイパウダーから選ばれる1種以上を含み、より好ましくは全脂粉乳および脱脂粉乳から選ばれる1種以上を含む。 本発明の油性食品に使用される粉乳は、また、上記例示した粉乳のように、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥により、製造されたものが好ましい。 本発明の油性食品の粉乳含有量は、好ましくは4〜32質量%であり、より好ましくは8〜28質量%であり、さらに好ましくは12〜24質量%である。 油性食品の粉乳含有量が上記範囲内にあると、油性食品の風味がマイルドになる。

    本発明の油性食品は、常法に従い製造できる。 例えば、チョコレートの場合、常法に従い、油脂、糖類および粉乳などの原材料の混合、ロールリファイニングなどによる微粒化、必要に応じてコンチング処理等を行なう。 コンチング処理を行う場合、コンチング処理時の加熱温度は、チョコレートの風味を損なわないように、40〜60℃が好ましい。 なお、本発明の製造方法において、工程と処理とは、同じ意味として使用している。

    本発明の油性食品の製造方法においては、油性食品の水分(水含有量)を調整するために、原材料として、水を有する含水素材や吸湿性の高い素材などを使用してもよい。 また、融液状態にある油性食品に、水を添加分散させる工程(以下の[水添加工程])を有してもよい。 ここで融液状態とは、油性食品中の油脂が融解された状態を指す。 なお、本発明の油性食品は、既製の油性食品を加熱融解させ、融液状態とした上で、以下の、[水添加工程]およびそれに続く工程を経て、製造されてもよい。 以下、チョコレート(チョコレートクリーム、ソフトチョコレートなどを含む)の製造方法を例に説明する。

    [水添加工程]
    本発明の製造方法においては、水添加工程における融液状態にあるチョコレートの温度は、好ましくは30〜70℃であり、より好ましくは35〜60℃であり、さらに好ましくは35〜55℃である。 水添加工程における融液状態にあるチョコレートの温度が上記範囲内にあると、チョコレートの風味を損なわずに、水を好適に添加分散できる。 添加される水の量は、チョコレートの水の含有量が0.8〜3質量%となるように適宜設定されればよい。 目安としては、融液状態のチョコレート100質量部に対して、0.5〜2質量部である。 なお、チョコレートの水含有量は、常法に従って、常圧乾燥減量法や、カールフィッシャー水分計を用いて測定できる。

    水添加工程において添加される水は、水のみであってもよいが、水と共に水以外の成分を含む組成物(以下、このような組成物を「含水材」という)であってもよい。 水添加工程において添加する水は、添加量が同じであっても、水と共に添加する成分によって、融液状態のチョコレートの粘度上昇速度が変化し得る。 具体的には、水のみ、又は、水分含有量の高い含水材(果汁、牛乳等)を添加すると、チョコレートの粘度は急激に上昇する。 他方、糖液やタンパク液などの含水材を添加すると、比較的緩やかに粘度が上昇する。 急激に粘度が上昇すると、融液状態のチョコレート中に水が十分に分散できないため、水添加工程における水は、含水材、特に糖液やタンパク液であることが好ましい。

    糖液としては、果糖、ブドウ糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖などの糖と水とを含む、還元水飴や果糖ブドウ糖液糖、ソルビトール液などの溶液が挙げられる。 タンパク液としてはタンパク質と水とを含む、卵白メレンゲ、濃縮乳、生クリームなどが挙げられる。 糖液やタンパク液に含まれる水の含有量は、溶液全体に対して好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。 水添加工程において水を含水材の形態で添加する場合、その添加量は融液状態のチョコレートに対する正味の水の量が上記目安の範囲となるように添加すればよい。 なお、チョコレートの水含有量を調整するために添加される水乃至含水材は、その添加量がチョコレート100質量部に対して5質量部以下である場合、本発明の油性食品の組成には含めない。

    水添加工程において使用する水や含水材の温度は、水や含水材を添加する融液状態のチョコレートの温度と同程度であることが好ましい。 融液状態のチョコレートの温度が一定に保たれ、水や含水材は均一に分散しやすい。 水を融液状態のチョコレートに添加した後は、撹拌などにより水をチョコレート中に均一に分散させてもよい。

    [冷却固化工程]
    水添加工程を経た融液状態のチョコレートは、冷却固化してもよい。 この工程により、融液状態から固形のチョコレートを効率的に製造できる。

    冷却固化の方法は特に限定されない。 モールド成形チョコレートや食品へのコーティングチョコレートといったチョコレート製品に応じて、適宜選択すればよい。 例えば、冷却トンネル(クーリングトンネル)での冷風吹付、冷却プレートとの接触などにより冷却固化できる。

    冷却固化の条件は、融液状態のチョコレートが固化する限り特に限定されない。 冷却温度は好ましくは0〜20℃であり、より好ましくは0〜10℃である。 冷却時間は、好ましくはで5〜90分間であり、より好ましくは10〜60分間である。

    [保温工程]
    本発明の製造方法においては、上記冷却固化後のチョコレートを、さらに特定の温度に保管する「保温工程」を適用してもよい。 保温工程は、冷却固化後のチョコレートを、好ましくは18〜36℃、より好ましくは20〜34℃、更に好ましくは20〜32℃において、好ましくは1〜240時間、より好ましくは6〜144時間、更に好ましくは12〜96時間、保温する工程である。 保温工程により、チョコレートの保形性を向上させることができる。 また、保温工程を行なう冷却固化後のチョコレートは、冷却固化後、保温工程の前に、好ましくは16〜24℃、より好ましくは18〜22℃において、好ましくは6〜240時間、より好ましくは12〜192時間プレエージング処理されてもよい。

    本発明の製造方法においては、チョコレートは、上記保温工程の後、プレエージング処理と同様のエージング処理をしてもよい。 エージング処理は、好ましくは16〜24℃、より好ましくは18〜22℃において、好ましくは6〜240時間、より好ましくは12〜192時間静置する処理である。

    チョコレートがテンパータイプのチョコレートである場合、上記水添加工程の前後のどちらかで、テンパリング処理もしくはシーディング処理を行ってもよい。

    上記テンパリング処理は、融液状態にあるチョコレートに安定結晶の結晶核を生じさせる操作である。 具体的には、例えば、40〜50℃で融解しているチョコレートを、品温を27〜28℃程度まで下げた後に、再度29〜31℃程度まで加温する操作として知られる。 テンパリング処理は、水添加工程の前に行うことが好ましい。

    上記シーディング処理は、テンパリング処理の替りに、安定結晶の結晶核として機能するシーディング剤を使用して、融液状態にあるチョコレート中に安定結晶の結晶核を生じさせる処理である。 シーディング処理はテンパリング処理と同様に、チョコレート中の油脂をV型の安定結晶として固化させるために行う。 なお、シーディング処理で使用するシーディング剤は微量であるため、本発明の油性食品の組成には含めない。

    シーディング処理は水添加工程の前後のいずれであってもよい。 また、シーディング剤添加および水添加工程を同時に行ってもよい(つまり、シーディング剤および水を融液状態のチョコレートに同時に添加してもよい)。

    上記チョコレートは、さらに、焼成されてもよい。 本発明のチョコレートは、焼成されても焼き崩れが著しく抑制される。 本発明において焼成とは、120℃以上での加熱を意味する。 チョコレートの焼成温度は、好ましくは130〜250℃であり、より好ましくは、140〜220℃である。 チョコレートの焼成には、オーブン、マイクロ波、過加熱蒸気、バーナーなどが使用できる。 焼成は、部分的であってもよい。 チョコレートの焼成時間は、焼成温度、焼成装置の能力および焼成されるチョコレートの量などにより、適宜調整してもよい。 例えば、オーブンでの焼成時間は、好ましくは0.5〜8分間であり、より好ましくは0.5〜5分間であり、さらに好ましくは、1〜3分間である。 チョコレートの焼成温度および焼成時間が上記範囲内にあると、チョコレート表面が固化した焼成チョコレートが製造できる。

    本発明の油性食品は、中鎖脂肪酸を豊富に含み、油脂の滲み出しが抑制された、保形性が良好で、口どけの良い、食品素材である。 本発明の油性食品は、例えば、チョコレート、ファットクリーム、およびスプレッドなどである。 これらはそのまま食することができる。 また、製菓製パン製品(例えば、パン、ケーキ、洋菓子、焼き菓子、ドーナツ、シュー菓子等)のコーティングや、フィリングに使用できる。 さらに、生地へ混ぜ込む素材にも使用できる。 本発明の油性食品の使用により、多彩な複合食品が得られる。

    以下に、実施例を提示し、本発明をさらに具体的に説明する。 本実施例では、油性食品としてチョコレート(チョコレートクリーム)を製造し、評価を行った。

    [分析方法]
    (1)融液状態にあるチョコレートの粘度 融液状態にあるチョコレートの粘度(単位:cps)は、BH型粘度計(東機産業社製)を使用して測定した。 つまり、No. 6のローターを回転数4rpmに設定した。 次いで、測定温度に調温したチョコレートの中で、ローターを3回転させて数値を読み取る。 読み取り数値に装置係数(2500)を乗じて粘度が求められる。
    (2)チョコレートの水分 チョコレートの水分(水含有量)は、常法に従い、常圧乾燥減量法により測定した。
    (3)油脂のトリアシルグリセロールの分析 トリアシルグリセロールは、AOCS Ce5−86に準じて測定した。
    (4)油脂の構成脂肪酸の分析 油脂の構成脂肪酸は、AOCS Ce1f−96に準じて測定した。

    [チョコレートの原材料]
    チョコレートの主原材料として、以下のものを使用した。
    ・ココアバター(大東カカオ株式会社製、商品名:TCココアバター)
    ・カカオマス(大東カカオ株式会社製、商品名:カカオマスQM−P、油脂含有量25質量%)
    ・ココアパウダー(大東カカオ株式会社製、商品名:ココアパウダーJA、油脂含有量11質量%)
    ・砂糖(株式会社徳倉製、商品名:POWDER SUGAR)
    ・乳糖(LIPRINO FOODS製、商品名:Lactose)
    ・全脂粉乳(よつ葉乳業株式会社製、商品名:全脂粉乳、油脂含有量25質量%)
    ・脱脂粉乳(森永乳業株式会社製、商品名:脱脂粉乳)
    ・レシチン(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:レシチンDX)
    ・PGPR(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、太陽化学株式会社製)
    ・ハイエルシン酸菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)
    ・中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(MTG)を含む油脂(以下に記載の方法により調製した)

    [MTGを含む油脂の調製]
    (MCT−1)
    トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が30:70である中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT、日清オイリオグループ株式会社社内製)をMCT−1とした。
    (MCT−2)
    トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が60:40である中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT、日清オイリオグループ株式会社社内製)をMCT−2とした。
    (MLCT−1)
    50質量部のMCT−1と50質量部の菜種極度硬化油を混合する。 得られた混合油脂を80℃で攪拌しながら、混合油脂100質量部に対して0.1質量部のナトリウムメチラートを触媒として添加した。 さらに、80℃で30分間撹拌することにより、ランダムエステル交換反応を行った。 得られたエステル交換反応油脂を、常法に従って精製した。 これをMLCT−1とした。

    [含水材]
    含水材として、以下のものを使用した。
    ・液糖(水分25質量%、昭和産業株式会社製果糖ブドウ糖液糖)

    [チョコレートの調製1]
    比較例1〜2および実施例1〜2のチョコレート配合は表1に従った。 常法により、混合、微粒化、精練し、融液状態のチョコレートを得た。 35℃で融液状態のチョコレートに対して、表中で水の添加「有り」のものは、4質量部の液糖(水分25質量%、果糖ブドウ糖液糖)を、チョコレート100質量部に対して、添加分散させた。 引き続き35℃での粘度を測定した。 その後カップに40g充填し、8℃で20分間冷却固化した。 冷却固化後、比較例1〜2および実施例1〜2の各チョコレートを、20℃と30℃の2種類の温度で6日間保持した。

    [チョコレートの評価1]
    上記で調製した各チョコレートの、保形性および付着(滲み出しやすさ)を、以下の基準に従って評価した。 結果を表1に示した。

    (保形性の評価)
    レオメーターCR−500DX(株式会社サン科学製)を使用した。 テーブル移動速度60mm/minおよび定深度3.0mmの条件で、楔型プランジャー(小)を用いて、予め各温度で調温されたチョコレートの耐荷重応力(単位:g)を測定した。 数値が大きいほど、保形性に優れている。

    (付着の評価)
    予め各温度で調温されたチョコレートの表面を指で触れた際の付着具合を、以下の基準に従って評価した。 付着がないほど、油脂の滲み出しが少ないと判断できる。

    ◎:全く指に付着しない。
    〇:ほとんど指に付着しない。
    △:やや指に付着する。
    ×:指に付着する。

    [チョコレートの調製2]
    比較例3および実施例3〜4のチョコレート配合は表2に従った。 常法により、混合、微粒化、精練し、融液状態のチョコレートを得た。 40℃で融液状態のチョコレートに対して、表中で水の添加「有り」のものは、4質量部の液糖(水分25質量%、果糖ブドウ糖液糖)を、チョコレート100質量部に対して、添加分散させた。 その後カップに充填し、10℃で15分間冷却固化した。 冷却固化後、比較例3および実施例3〜4のチョコレートを、縦15mm、横15mm、高さ10mmの直方体に成形した。 得られた各チョコレートを20℃で3日間保持した。 その後、比較例3および実施例3〜4のチョコレートを、180℃のオーブンで1.5分間焼成した。

    [チョコレートの評価2]
    上記で調製した各チョコレートの20℃での付着(滲み出しやすさ)および焼成後の焼き崩れの状態を、以下の基準に従って評価した。 結果を表2に示した。

    (付着の評価)
    20℃で調温されたチョコレートの表面を指で触れた際の付着具合を、以下の基準に従って評価した。 付着がないほど、油脂の滲み出しが少ないと判断できる。

    ◎:全く指に付着しない。
    〇:ほとんど指に付着しない。
    △:やや指に付着する。
    ×:指に付着する。

    (焼き崩れの評価)
    焼成後のチョコレートの底面積を焼成前のチョコレートの底面積で除したスコア(焼成後のチョコレートの底面積/焼成前のチョコレートの底面積)を求め、以下のように評価した。

    ◎:スコア1〜1.2未満、型崩れがほとんどなく非常に良好 ○:スコア1.2〜2未満、型崩れが少なく良好 △:スコア2〜3未満、型崩れがみられる ×:スコア3以上、型崩れが著しい

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