乳酸菌含有油脂組成物およびその製造方法 |
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申请号 | JP2016543748 | 申请日 | 2016-05-31 | 公开(公告)号 | JPWO2016194366A1 | 公开(公告)日 | 2018-03-22 |
申请人 | 株式会社ロッテ; 日東薬品工業株式会社; | 发明人 | 芦谷 浩明; 小山 寿之; 宇佐美クランク 陽子; 石塚 智和; 田所 啓次; 蕪木 祐介; 米島 靖記; 久 景子; | ||||
摘要 | 生きた状態の乳酸菌を油脂組成物に添加することにより、乳酸菌の生存率および耐酸性の高い、優れた乳酸菌含有油脂組成物を製造することに成功した。また、テンパリングの後であって、成型前のチョコレート生地に、乳酸菌末もしくは乳酸菌高濃度含有チョコレートを加えることにより、簡便な製造方法でありながらも生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有チョコレートの製造に成功し、生きた状態の乳酸菌を含有する嗜好性の高い乳酸菌含有チョコレートの提供に至った。 | ||||||
权利要求 | 生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有油脂組成物。乳酸菌が、ラクトバチルス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、あるいはペディオコッカス属からなる群から選ばれるいずれか1種以上である、請求項1に記載の乳酸菌含有油脂組成物。乳酸菌が、ラクトバチルス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、あるいはロイコノストック属からなる群から選ばれるいずれか1種以上である、請求項1または2のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物。乳酸菌を1×104個/グラム以上1×1012個/グラム以下で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物。乳酸菌を1×106個/グラム以上1×1012個/グラム以下で含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物。油脂組成物がチョコレートである請求項1から5のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物。さらにセンター材を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物。センター材がアーモンドであることを特徴とする請求項7に記載の乳酸菌含有油脂組成物。生菌状態の乳酸菌を腸に届けることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物。請求項1から8のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物を含む食品。請求項1から8のいずれか1項に記載の乳酸菌含有油脂組成物を含む、生菌状態の乳酸菌を腸に届けるための食品。テンパリングの後であって、成型前のチョコレート生地に、乳酸菌末を加えることを特徴とする乳酸菌含有チョコレートの製造方法。乳酸菌末を加える際、チョコレート生地の温度が27℃以上31℃以下であることを特徴とする請求項12に記載の乳酸菌含有チョコレートの製造方法。乳酸菌末を加える際、チョコレート生地の温度が28℃以上30℃以下であることを特徴とする請求項13に記載の乳酸菌含有チョコレートの製造方法。乳酸菌末を高濃度にチョコレートと混合した乳酸菌高濃度含有チョコレートを製造し、乳酸菌高濃度含有チョコレートを、テンパリングの後であって、成型前のチョコレート生地に加えることを特徴とする乳酸菌含有チョコレートの製造方法。乳酸菌高濃度含有チョコレートを加える際、テンパリングの後であって成型前のチョコレート生地の温度が27℃以上31℃以下であることを特徴とする請求項15に記載の乳酸菌含有チョコレートの製造方法。乳酸菌高濃度含有チョコレートを加える際、テンパリングの後であって成型前のチョコレート生地の温度が28℃以上30℃以下であることを特徴とする請求項16に記載の乳酸菌含有チョコレートの製造方法。35℃以上40℃以下に調温されたチョコレート生地に乳酸菌末を加え、乳酸菌末を加えたチョコレート生地でセンター材を被覆することを特徴とするセンター材被覆乳酸菌含有チョコレートの製造方法。 |
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说明书全文 | 本発明は生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有油脂組成物およびその製造方法に関する。 乳酸菌は糖から乳酸を生産する細菌である。糖を乳酸発酵させる細菌として、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)などの属が知られる。また、糖を分解して乳酸と酢酸をつくる細菌として、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)が知られている。ビフィドバクテリウム属の細菌はビフィズス菌として乳酸菌と別に分類される場合もあるが、本明細書中では、ビフィドバクテリウム属の細菌も乳酸菌に含むものとする。 ヒトの腸内には多種の微生物が生息し、ほぼすべてのヒトの腸内からは、ラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属の乳酸菌が検出される。 プロバイオティクスは、英国の微生物学者Fullerにより「腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な効果をもたらす生きた微生物」と定義されており、生きて腸まで届き、腸内環境で増殖可能であることが好ましい。乳酸菌は、腸内の菌叢を整える他、免疫系、内分泌系、神経系などを調節するものもあり、プロバイオティクスとして注目されている。 健康増進、維持のために、乳酸菌を摂取することが望ましく、乳酸菌を含有する食品としては、ヨーグルト、乳酸菌飲料などが一般的である。また、これらに加え、より、手軽で、嗜好性の高いプロバイオティクスとしての乳酸菌含有食品は、健康、利便性、嗜好性の全てを求める現代人のニーズに合致するものである。 特許文献1は、生菌状態のビフィズス菌を含む乳酸菌を含有するチョコレートを開示するが、製造時からの安定性改善についての技術を開示するものであり、製造工程における乳酸菌の生存率や、摂取後の消化吸収における乳酸菌の生存率を改善するものではない。 乳酸菌は、一般的に、口から摂取すると胃酸によるダメージをうけることで、腸に生きて届く菌数は摂取したときに比べて激減する。そのため、医薬品では食後に服用するよう設定したり、腸溶性の製剤に加工したりすることにより、生きて腸に届くよう工夫し、プロバイオティクスとしての効果を高めている。しかし、食品においては、医薬品のような用法用量は設定できず、より嗜好性が求められる。 特許文献2は、整腸作用を有する生菌を含有する乾燥粉末を油脂中に懸濁させることを特徴とする安定な生菌製剤の製造方法を開示する。しかし、得られた生菌製剤はビン、チューブ等に詰めて用いるか、軟カプセルに充填して用いる必要があり、また室温下で長期保存した後の生菌数の減少が大きい。また特許文献3には、乳酸菌の生菌粉末と、特定種類の添加剤を混合し、ヒドロキシメチルセルロースなどの腸溶性物質でコーティングした乳酸菌錠剤が、特許文献4には、乳酸菌を含む被造粒物が油脂および賦形剤含有層、ツェイン等の含水アルコール可溶性蛋白質含有層、並びに糖類含有層で被覆されてなる腸溶性造粒物が、特許文献5には、乳酸菌菌体を、ゼラチンにペクチンやアルギン酸、セルロース類等を組み合わせた腸溶性カプセルの中に封入することを特徴とする免疫賦活剤が、特許文献6には、乳酸菌を含有するシードをアルギン酸ナトリウムなどの水混和性コーティング基剤などでコーティングして製造される腸溶性コーティング顆粒が開示されるものの、いずれも製造工程が煩雑であり手軽さに欠ける。特許文献7には、乳酸菌菌体粉末およびポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする腸溶性乳酸菌組成物が開示されるが、人工消化液を用いた試験の結果、乳酸菌生菌数が低い結果となっている。 乳酸菌の中でもヨーグルトなどの乳製品の製造に用いられ、健康増進効果の期待できるものとして、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス アシドフィルス (Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ガッセリ (Lactobacillus gasseri)、エンテロコッカス フェカリス (Enterococcus faecalis)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)あるいはロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)などが知られる。 ラクトバチルス属 ブレビス種においては、Lactobacillus brevis subsp.coagulans(通称「ラブレ菌」)等が知られている。また、ラクトバチルス属ブレビス種は、免疫賦活作用や、抗インフルエンザウイルス活性を有し、体重増加の抑制、肝脂肪重量増加の抑制、血中コレステロール増加の抑制などにも効果があると言われ、様々な健康効果を期待することのできる乳酸菌である。ロイコノストック メセンテロイデスは免疫賦活作用を有し、健康効果を期待することのできる乳酸菌である。ラクトバチルス アシドフィルス、ラクトバチルス ガッセリ、エンテロコッカス フェカリスあるいはビフィドバクテリウム ロンガムは、いずれもヨーグルトなどの乳製品の製造に用いられており、健康増進効果が期待されるものである。 特開平08−126473号公報 特開昭56−002908号公報 特開平04−041434号公報 特開平05−186335号公報 特開平11−199494号公報 特表2002−505251号公報 特開2001−064189号公報
Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi 48(9) pp.656−663 (2001)
本発明の課題は生きた状態の乳酸菌を手軽に美味しく摂取でき、健康増進に役立つ食品およびその製造方法を提供することである。 生きた状態の乳酸菌を油脂組成物に添加することにより、乳酸菌の生存率および耐酸性の高い、優れた乳酸菌含有油脂組成物を製造することに成功した。 また、テンパリングの後であって、成型前のチョコレート生地に、乳酸菌末を加えることにより、生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有チョコレートの製造に成功し、生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有チョコレートの提供に至った。 本発明においてはじめて乳酸菌の生存率が極めて高い乳酸菌含有油脂組成物の製造に成功した。おどろくべきことに、本発明の乳酸菌含有油脂組成物は、ヨーグルト等で乳酸菌を摂取するよりも、乳酸菌の生存率が高く、乳酸菌が生きたまま腸に届き易い。乳酸菌は通常胃酸中に30分存在すると死滅するため、ヨーグルトなどを摂取しても、胃でほとんどの乳酸菌が死滅してしまうが、本発明の乳酸菌含有油脂組成物中の乳酸菌は、胃酸中でも生存することができるため、本発明の乳酸菌含有油脂組成物を摂取すると、乳酸菌の多くが生きたまま腸に到達することができる。 さらに、おどろくべきことに、本発明の乳酸菌含有油脂組成物は、常温で賞味期限が1年間と非常に長く、しかも、1年後でも、乳酸菌の70%以上が生存していることが分かった。一方、ヨーグルトや乳酸菌飲料などは冷蔵で賞味期限が2週間程度である。従って、本発明の乳酸菌含有油脂組成物は保存、輸送、店舗の陳列といった物流においても有利であり、また、年間を通じて嗜好されやすい。 乳酸菌含有チョコレートの製法を説明する図である。 乳酸菌含有アーモンドチョコレートの製法を説明する図である。 乳酸菌含有油脂組成物の製法を説明する図である。 (a)(b)(c)のいずれも乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験の結果を示す図である。 乳酸菌含有チョコレートと乳酸菌末の人工胃液耐性の試験結果を示す図である。
本発明の一実施形態は、生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有油脂組成物である。乳酸菌含有油脂組成物は、生きた状態の乳酸菌は1×104個/グラム以上含有することが望ましく、さらには、1×104個/グラム以上1×1012個/グラム以下で含有することが望ましく、さらには、1×106個/グラム以上1×1012個/グラム以下、さらには1×107個/グラム以上1×1012個/グラム以下、よりさらには4×107個/グラム以上1×1012個/グラム以下含有することが好ましい。 乳酸菌の例として、ラクトバチルス ブレビス、ラクトバチルス カゼイ シロタ、ラクトバチルス アシドフィルス L-92、ラクトバチルス クレモリス、ラクトバチルス ヘルベティカス、ラクトバチルス サリバリウス、ラクトバチルス ガッセリ OLL2716、ラクトバチルス ガッセリ PA-3、ラクトバチルス ガッセリ SBT2055、ラクトバチルス ブルガリカス OLL1073R-1、ラクトバチルス ファーメンタム、ラクトバチルス ロイテリ、ラクトバチルス クリスパータス、ラクトバチルス ユーグルティ、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリカス 2038、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ デルブルッキー、ラクトバチルス ジョンソニー、ラクトバチルス プランタラム、などのラクトバチルス属菌、ストレプトコッカス サーモフィルス 1131などのストレプトコッカス属菌、ビフィドバクテリウム ロンガム BB536、ビフィドバクテリウム ロンガム SBT2928、ビフィドバクテリウム ラクティス GCL2505、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム インファンティス、ビフィドバクテリウム アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム ビフィダム、ビフィドバクテリウム カテヌラータム、ビフィドバクテリウム シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム アングラータム、ビフィドバクテリウム ガリカム、ビフィドバクテリウム アニマリス、などのビフィドバクテリウム属菌、エンテロコッカス フェカリス、エンテロコッカス フェシウム、エンテロコッカス ヒラエ、などのエンテロコッカス属菌、 ラクトコッカス ラクチス サブスピーシーズ ラクチス、ラクトコッカス ラクチス サブスピーシーズ クレモリス、ラクトコッカス プランタラム、ラクトコッカス ラフィノラクチス、などのラクトコッカス属菌、 ペディオコッカス ペントサセウス、ペディオコッカス ダムノサス、などのペディオコッカス属菌、ロイコノストック デキストラニウム、ロイコノストック シトロボラム、ロイコノストック メセンテロイデス、ロイコノストック ラクティスなどのロイコノストック属菌、などを挙げることができる。 中でも、本発明における乳酸菌として好ましくは、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属であり、さらに好ましくは、ラクトバチルス ブレビス、ラクトバチルス アシドフィルス、ラクトバチルス ガッセリ、エンテロコッカス フェカリス、ビフィドバクテリウム ロンガム、 ロイコノストック メセンテロイデス であるが、乳酸を生産する細菌であればこれに限定されない。 本発明における油脂組成物とは、主に油脂からなる組成物を指し、油脂が組成物全体の20−99%、より好ましくは30−60%含まれる。油脂組成物は、油脂の他に、必要に応じて糖類、カカオ由来原料、乳由来原料、香料、乳化剤等を原料として、これらを、必要に応じて粉砕、混合、固化などを行うことで生産される。 本発明の乳酸菌含有油脂組成物の例として、チョコレート、グレーズ、ホイップクリーム、サンドクリーム、バタークリーム、フィリング等を挙げることができ、特に好ましくはチョコレートを挙げることができる。本明細書中でチョコレートとは、規約(チョコレート類の表示に関する公正競争規約)または法規上の規定に限定するものではなく、主にカカオ由来の原料からなり、必要により糖類、乳製品、他の食用油脂、香料、乳化剤等を加えたものをいう。本明細書においてチョコレート、あるいはチョコレート菓子とは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、さらにホワイトチョコレートをベースに所望の色をつけたカラーチョコレート等、さらには、これらを含むチョコレート菓子など、チョコレート風味の菓子全般を含む。 また、本発明の一実施形態は、本発明の乳酸菌含有油脂組成物を含む食品である。その例として、フルーツ、ナッツ、穀類、グミ、キャンディなどを加えた乳酸菌含有チョコレート菓子、乳酸菌含有油脂組成物を含む焼き菓子、スナック菓子、クッキー、ケーキ、アイスクリーム、飲料などを挙げることができる。 また、本発明の一実施形態は、センター材を含むことを特徴とする乳酸菌含有油脂組成物である。本実施形態においては、センター材は、乳酸菌含有油脂組成物で被覆される。センター材としては、フルーツ、ナッツ、穀類、グミ、キャンディ等を用いることができる。 また、本発明の一実施形態は、乳酸菌含有チョコレートの製造方法であって、テンパリングの後であって、成型前のチョコレート生地に、乳酸菌末を加えることを特徴とする乳酸菌含有チョコレートの製造方法である。 乳酸菌含有チョコレートの製造方法においては、乳酸菌末を加える際、チョコレート生地の温度が27℃以上31℃以下が好適であり、より好ましくは28℃以上30℃以下である。 本実施形態においては、乳酸菌末を高濃度でチョコレートと混合した乳酸菌高濃度含有チョコレートを製造し、乳酸菌高濃度含有チョコレートを、テンパリングの後であって、成型前のチョコレート生地に加えることができる。この場合、乳酸菌高濃度含有チョコレートを加える際、成型前のチョコレート生地の温度は27℃以上31℃以下が好適であり、より好ましくは28℃以上30℃以下である。27℃未満だと、チョコレート生地が固まってしまい、31℃を超える温度だと、テンパリングによる結晶構造が壊れてしまい、品質を維持できないためである。 ただし、前記実施形態の方法は成型するタイプの乳酸菌含有チョコレートの製造にふさわしい。本発明のさらなる実施形態として、センター材を被覆する乳酸菌含有チョコレートの製造方法を提供する。センター材被覆チョコレートの製造ではテンパリングを行わないため、本実施形態においては、35℃以上40℃以下に調温されたチョコレート生地に乳酸菌末を加え、これでセンター材を被覆することを特徴とするセンター材被覆乳酸菌含有チョコレートの製造方法を提供する。 実施例1 乳酸菌含有チョコレート(ラブレ菌) 1.乳酸菌末の調製 乳酸菌末はラクトバチルス属 ブレビス種のLactobacillus brevis subsp.coagulans(ラブレ菌)を使用した。一般的な乳酸菌培養培地(MRS培地等)を用いてラブレ菌を培養し、遠心分離等により集菌したものを凍結乾燥し粉砕する等して粉末にしたものにデンプンを加え、乳酸菌末とした。なお、この乳酸菌末は、生きた状態の乳酸菌を、1×105個/グラム以上1×1013個/グラム以下で含有することが望ましく、さらには、1×107個/グラム以上1×1013個/グラム以下、さらには1×108個/グラム以上1×1013個/グラム以下含有することが好ましい。 2.乳酸菌含有チョコレートの製造 一般的にチョコレートは、原料であるカカオ豆を、選別、分離、焙炒、磨砕してカカオマスとし、カカオマスと、砂糖、粉乳、植物油脂、ココアバターおよび乳化剤の一部を原料混合機で混合し、レファイナーにより微粒化し、精練(コンチング)し、精練の後半の段階で、香料、乳酸菌末と、残りのココアバターおよび乳化剤を添加してチョコレート生地を調製する。このチョコレート生地は場合により、45〜50℃程度で、平均4日程度タンクに貯蔵される。この貯蔵は、製造ラインの稼動の都合により生じる、いわば待ち時間である。その後、28〜30℃程度に調温しテンパリングされ、その後に、成型用の型に充填し、冷却・固化させ、型抜し、得られたチョコレートを包装・検査し、熟成を経て出荷される。 この製造方法を元に、従来製法(香料などの添加と同じタイミングで乳酸菌末を添加する)、製法1、製法2により、乳酸菌末を添加して、乳酸菌含有チョコレートを製造した。それぞれの製法について、図1に概略を示す。 従来製法 精練ののち45〜50℃になったチョコレート生地に乳酸菌末を加え、その後、4日間の貯蔵を経て、テンパリング、成型などを行った。 製法1 テンパリングが終了したチョコレート生地(27〜31℃)に、乳酸菌末を加えた。 製法2 あらかじめ、チョコレート生地を40℃で溶解して、乳酸菌末を高濃度に加えた、乳酸菌高濃度含有チョコレートを製造した。なお、この乳酸菌高濃度含有チョコレート中には、生きた状態の乳酸菌を、1×105個/グラム以上1×1012個/グラム以下含有させることが好ましく、さらには1×107個/グラム以上1×1012個/グラム以下、さらには1×108個/グラム以上1×1012個/グラム以下含有させることが好ましい。テンパリングが終了したチョコレート生地を27〜31℃にし、乳酸菌高濃度含有チョコレートを加えて混合した。 上記のいずれの製法においても、表1のミルクチョコレートの配合に従って製造を行った。
上記いずれの製法でも、乳酸菌含有チョコレートを製造することができた。なお、製法2を用いた場合、製造ラインにおいて乳酸菌が飛散し汚染されてしまうのを防ぐことができるため、製造管理の観点からは製法2はより好ましい。また、製法2の方法によれば、乳酸菌をより短時間で均一にチョコレート生地に混合することができる。 なお、乳酸菌含有チョコレートの配合は、乳酸菌末に加え、カカオマス:0〜70重量%、全粉乳:0〜20重量%、ココアバター:0〜25重量%、植物油脂:0〜20重量%、砂糖:0〜45重量%の範囲内で適宜変更することができる。また、乳化剤、香料などの副原料も適宜追加することができ、それらの配合量も適宜調整することができる。さらに、食物繊維:0〜15重量%、オリゴ糖0〜10重量%を配合することもできる。 3.乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験 製法2に基づいて乳酸菌末が0.25重量%となるように乳酸菌含有チョコレートを作製した。すなわち、配合は表1に従い、乳酸菌末の含有割合のみ変更した。これを試料として、以下の手順に基づいて人工胃液耐性試験を行った。 (1)所定のpHに調整し、0.04%ペプシンを添加したMRS培地を人工胃液とした(非特許文献1に従った)。培地は300mlとした。上記の人工胃液を希塩酸でpH2.5に調整した。胃酸の主成分は塩酸のため、それ以外の酸は使用していない。 (2)チョコレート1粒(2グラム)を37℃に保温した人工胃液に浸し、液面が軽くゆれる程度に振盪し、30分、1時間、2時間後に、人工胃液1mlを取り、含まれる生菌数を測定した。生菌数の測定方法は、乳酸菌生菌数の経時試験と同様である。なお、最大で2時間としたのは、通常、胃内の消化物が完全に十二指腸に移送されるのにかかる時間が約2時間であるためである。また、対照として、ラブレ菌を含有する乳酸菌含有飲料についても、人工胃液内添加時の生菌数が乳酸菌含有チョコレートと同程度になるように添加量を適宜調整し、同様に実験を行った。 (3)結果 異なる日時に、3回同様の実験を行ったので、それらの結果を表2に示す。これらをグラフで示した結果を図4に示す。なお、第3回目の実験においては、ラブレ菌を含有する乳酸菌含有飲料を2種類用いて比較対照とした。
乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験の結果から、おどろくべきことに、製法2により作製した乳酸菌含有チョコレートは、人工胃液中での乳酸菌の生存率が非常に高く、その生存率は、対照としている乳酸菌飲料よりもはるかに高いことが分かった。 4.乳酸菌含有チョコレートと乳酸菌末の人工胃液耐性の比較試験 乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験と同様に、製法2に基づいて乳酸菌末が0.25重量%となるように作製された乳酸菌含有チョコレートと、乳酸菌末そのものを用いて、乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験と同様に、人工胃液耐性試験を行った。 ただし、対照として、乳酸菌末を用い、人工胃液内添加時の生菌数が乳酸菌含有チョコレートと同程度になるように適宜調整し、同様に実験を行った。 結果を表3に示す。グラフで示した結果を図5に示す。
本実施例の人工胃液耐性試験においては、本発明の乳酸菌含有チョコレートにおける、30分、1時間、2時間経過時の乳酸菌の生存率、すなわち人工胃液耐性が、乳酸菌末よりも、はるかに高いことが分かった。 5.乳酸菌含有チョコレート中の乳酸菌生菌数の経時試験 乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験と同様に、製法2に基づいて、チョコレート中に乳酸菌末が0.25重量%となるような乳酸菌含有チョコレートを作製した。 この乳酸菌含有チョコレートの製造直後、あるいは、室温(約18℃)で1ヶ月から14ヶ月保存した試料中の乳酸菌生菌の数を以下の方法により調べた。対照として、乳酸菌を含有したソフトキャンディについても同様の実験を行った。 (1)試料を1欠片もしくは約1gをとり、質量を精密に量り、希釈液100mlに入れて強く振り混ぜ、均一に懸濁したものを試料原液とした。試料原液1mlを別に分注した希釈液9ml中に加えて10倍希釈した。同様の操作を繰り返し、試料溶液とした。 (2)試料溶液1ml以下の適量を2枚のペトリ皿に分注し、50℃に保ったMRS寒天培地を加えて混和し、固化させた。 (3)固化後、35〜37℃で48〜72時間嫌気培養して、出現した集落数を数え、平均集落数を求めた。 (4)試料1g中の生菌数(CFU)を下記の計算式より求めた。 生菌数(CFU/g)=平均集落数(CFU)×希釈倍率×試料原液(ml)/試料溶液添加量(ml)/試料採取量(g) (5)結果 実験は室温(約18℃)で行われた。結果を表4に示す。
なお、乳酸菌含有ソフトキャンディについて、同様に乳酸菌数の経時試験を行ったところ、表5の通りであった。
ソフトキャンディでは、製造後1ヶ月後で大部分の乳酸菌が死滅しており、2ヵ月後には生菌がほとんどいなかった。残存率は製造から1ヶ月、2ヵ月後いずれも、ほぼ0%といえる。それと比較し、乳酸菌を含有するチョコレートでは、極めて安定的に乳酸菌の生菌状態を維持することができた。また、室温(約18℃)下で製造14ヶ月後のサンプルの結果を見ると、乳酸菌の安定性が良好なことから、室温下にて、1年間は、乳酸菌の生菌状態を保証できる。 6.各製法で作製された乳酸菌含有チョコレートに含まれる乳酸菌数の比較 従来製法、製法1、製法2でそれぞれ製造された、乳酸菌含有チョコレートの1グラム当たりの乳酸菌数を測定した。添加した乳酸菌末に含まれる乳酸菌数から算出される乳酸菌理論値と、実測値を表6に示す。
従来製法の菌数は製造工程による菌の失活により乳酸菌数が低下した。製法1および製法2では、工程における失活を防ぐことができ、従来製法と比較すると約5倍の乳酸菌数の差が出ることから、生きて腸に届く菌数を増加させる優れた製法であると言える。なお、製法2の製造過程で製造された、乳酸菌末を約1.4×109個/グラム含有する乳酸菌高濃度含有チョコレートについて、45℃下で2日間放置した後の乳酸菌の生菌数を、同様の方法にて測定した結果、約1.3×109個/グラム、とほとんど変化していなかった。このことから、従来製法における乳酸菌数の減少は、単に熱によるものとは言えず、貯蔵時における長時間の撹拌や、テンパリング操作などが菌数の減少に影響していることが考えられる。 7.各製法で作製された乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験 従来製法、製法1、製法2に基づき作製した乳酸菌含有チョコレートを用いて、乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験と同じ手順で人工胃液耐性試験を行った。 結果 各製法により、製造時菌数が異なることから、各製法の製造時菌数を100%とし、残存率として表した結果を表7に示す。
以上の結果より、おどろくべきことに、製法1、製法2で作られた乳酸菌含有チョコレートは人工胃液耐性試験において、従来製法よりも乳酸菌の残存率が高い結果が得られた。従って、製法1、製法2は胃酸に対する耐性においても、優れた製造方法であることが分かった。 以上、本実施例における結果から、おどろくべきことに、本発明による乳酸菌含有チョコレートの製造方法は、簡便な方法でありながらも製造時における菌数を高く維持することに非常に優位な方法であり、乳酸菌飲料等よりも胃酸に対する耐性が高く、さらに従来の製法により製造される乳酸菌含有チョコレートよりも耐酸性が高い非常に優れた製造方法であることが分かった。また、その製造方法によりつくられる乳酸菌含有チョコレートは、プロバイオティクスの効果をより高めたチョコレートであり、嗜好性が高く、かつ健康を維持する有用性の高い食品になることが分かった。 実施例2 乳酸菌含有チョコレート(ラブレ菌以外の乳酸菌) 1.乳酸菌含有チョコレートの製造 表1の配合で製法2に基づいて、ラブレ菌を、その他の乳酸菌、すなわち、ラクトバチルス アシドフィルス (Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ガッセリ (Lactobacillus gasseri)、エンテロコッカス フェカリス (Enterococcus faecalis)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)あるいはロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に変えて、乳酸菌末がロイコノストック メセンロイデスは0.5重量%、その他の4種の菌は0.25重量%となるように乳酸菌含有チョコレートを製造した。 2.乳酸菌含有チョコレート中の乳酸菌生菌数の経時試験 製造された乳酸菌含有チョコレートについて、実施例1の乳酸菌含有チョコレート中の乳酸菌生菌数の経時試験と同様に、乳酸菌含有チョコレートの製造直後、あるいは、室温約18℃〜約25℃で1ヶ月から3ヶ月保存した試料中の乳酸菌生菌の数を調べた。結果は次の表8のとおりであった。各種菌を含有するチョコレートにおける製造後3ヶ月後の各種菌について、極めて安定的に生菌状態を維持できることが分かった。
3.乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験 製造された乳酸菌含有チョコレートについて、実施例1と同様に乳酸菌含有チョコレートの人工胃液耐性試験を行った。また、対照として、それぞれの菌末についても、同様に実験を行った。結果は次の表9のとおりであった。乳酸菌末と比較して、各種菌含有チョコレートにおける乳酸菌の人工胃液耐性がはるかに高いことが分かった。
実施例3 乳酸菌含有アーモンドチョコレート 1.乳酸菌含有アーモンドチョコレートの製造 乳酸菌としてラブレ菌を使用し、ラブレ菌末は実施例1と同様に調製した。配合割合は以下の表10のとおりである。製法の概略は図2に示すとおり、42℃から43℃で貯蔵されたチョコレート生地を37℃から38℃に調温したところに、乳酸菌末を加え、アーモンドのチョコ掛けに用いた。なお、乳酸菌含有アーモンドチョコレートの配合は、乳酸菌末に加え、砂糖:0〜45重量%、全粉乳:0〜20重量%、カカオマス:0〜70重量%、ココアバター:0〜25重量%、植物油脂:0〜20重量%の範囲内で適宜変更することができる。また、乳化剤、香料などの副原料も適宜追加することができ、それらの配合量も適宜調整することができる。さらに、食物繊維:0〜15重量%、オリゴ糖0〜10重量%を配合することもできる。センター材の種類はアーモンドに限られず適宜変更でき、またセンター材の配合量も適宜調整することができる。
2.乳酸菌含有アーモンドチョコレート中の乳酸菌生菌数の経時試験 製造された乳酸菌含有アーモンドチョコレートについて、実施例1の乳酸菌含有チョコレート中の乳酸菌生菌数の経時試験と同様に、乳酸菌含有アーモンドチョコレートの製造直後、あるいは、室温(約18℃)で3ヶ月から7ヶ月保存した試料中の乳酸菌生菌の数を調べた。結果は次の表11のとおりであり、極めて安定的に生菌状態を維持できることが分かった。
3.乳酸菌含有アーモンドチョコレートの人工胃液耐性試験 製造された乳酸菌含有アーモンドチョコレートについて、実施例1と同様に乳酸菌含有アーモンドチョコレートの人工胃液耐性試験を行った。結果は次の表12のとおりである。対照として、乳酸菌末についても、同様に実験を行った。乳酸菌末と比較して、乳酸菌含有アーモンドチョコレートにおける乳酸菌の人工胃液耐性がはるかに高いことが分かった。
実施例4 乳酸菌含有シュガーレスチョコレート 本実施例では、製法2に基づいて、次の表13の配合で、乳酸菌含有シュガーレスチョコレートを製造した。
乳酸菌含有シュガーレスチョコレートにおいても、乳酸菌の経時変化試験、人工胃液耐性試験において、実施例1とほぼ同様の経時安定性および人工胃液耐性を示した。 なお、乳酸菌含有シュガーレスチョコレートの配合は、乳酸菌末に加え、糖アルコール:0〜50重量%、カカオマス:0〜70重量%、粉乳:0〜25重量%、植物油脂:0〜25重量%、ココアバター:0〜25重量%の範囲内で適宜変更できる。また、高甘味度甘味料、乳化剤、香料などの副原料も適宜追加することができ、それらの配合量も適宜調整することができる。さらに、食物繊維:0〜15重量%、オリゴ糖:0〜10重量%を配合することができる。なお、使用できるオリゴ糖は、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖などがあるが、これらに限られない。 実施例5 乳酸菌含有油脂組成物 1.乳酸菌含有油脂組成物の製造 実施例1と同様に調製されたラブレ菌末を用い、乳酸菌含有油脂組成物を製造した。配合量は以下の表14のとおりである。製法の概略は図3に示す。この乳酸菌含有油脂組成物は、常温(25℃)付近では固体であるが、ヒトの体温付近(35℃〜40℃)では液状になり、ハンドクリームのような物性をもつ。 なお、乳酸菌含有油脂組成物の配合は、乳酸菌末に加え、砂糖:0〜80重量%、植物油脂:20〜99重量%、全粉乳:0〜40重量%、乳糖:0〜20重量%の範囲内で適宜変更できる。また、高甘味度甘味料、乳化剤、香料などの副原料も適宜追加することができ、それらの配合量も適宜調整することができる。さらに、食物繊維:0〜15重量%、オリゴ糖:0〜10重量%を配合することができる。なお、この乳酸菌含有油脂組成物は、ホワイトチョコレート、もしくはホワイトチョコレートに類似した組成物であり、焼き菓子やチョコレートなどの食品へのコーティングやトッピング、デコレーション用材料などとして使用することができるが、これに限らない。
2.乳酸菌含有油脂組成物中の乳酸菌生菌数の経時試験 製造された乳酸菌含有油脂組成物について、実施例1の乳酸菌含有チョコレート中の乳酸菌生菌数の経時試験と同様に、乳酸菌含有油脂組成物の製造直後、あるいは、室温(約25℃)で1ヶ月から2ヶ月保存した試料中の乳酸菌生菌の数を調べた。結果は次の表15のとおりであり、極めて安定的に生菌状態を維持できることが分かった。
3.乳酸菌含有油脂組成物の人工胃液耐性試験 製造された乳酸菌含有油脂組成物について、実施例1と同様に乳酸菌含有油脂組成物の人工胃液耐性試験を行った。結果は次の表16のとおりであった。対照として、乳酸菌末についても、同様に実験を行った。乳酸菌末と比較して、乳酸菌含有油脂組成物における乳酸菌の人工胃液耐性がはるかに高いことが分かった。
この出願は2015年6月1日に出願された日本国特許出願第2015−111706号からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。 |