焼成チョコレート

申请号 JP2017526005 申请日 2017-01-24 公开(公告)号 JP6225296B1 公开(公告)日 2017-11-01
申请人 日清オイリオグループ株式会社; 发明人 大西 清美; 村山 典子; 畑中 稚子; 上原 秀隆;
摘要 本発明における課題は、焼成による焼きダレが抑制され、焼成チョコレート独特の表面のさっくりとした食感を有する、焼成チョコレートを提供することにある。好ましくは、原料由来の不快味が抑制された、上記焼成チョコレートを提供することにある。 本発明は、以下の焼きダレ指数が1〜1.3である、焼成チョコレートである。 焼きダレ指数=焼成後のチョコレートの底面積/焼成前のチョコレートの底面積 本発明はまた、焼成前のチョコレートが、50℃で保形性を有する焼成チョコレートである。本発明はさらに、焼成前のチョコレートの 水 の含有量が、0.8〜3質量%である焼成チョコレートである。
权利要求

融液状態にあるチョコレートにを添加分散する工程(水添加工程)、融液状態のチョコレートを冷却固化する工程(冷却工程)、および、冷却固化後のチョコレートを保温処理する工程(保温工程)を有し、前記の3工程を経た50℃で保形性を有するチョコレートを焼成することにより、以下の焼きダレ指数が1〜1.2である焼成チョコレートを得る、焼成チョコレートの製造方法。 焼きダレ指数=焼成後のチョコレートの底面積/焼成前のチョコレートの底面積焼成前のチョコレートの水の含有量が、0.8〜3質量%である、請求項1に記載の焼成チョコレートの製造方法。焼成前のチョコレートに占める糖アルコールの含有量が10質量%未満である、請求項1または2に記載の焼成チョコレートの製造方法。焼成前のチョコレートに含まれる糖質および糖類に占める、蔗糖および乳糖の合計含有量が70質量%以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の焼成チョコレートの製造方法。焼成前のチョコレートに含まれる油脂の固体脂含有量が、40℃で0〜6%である、請求項1〜4の何れか1項に記載の焼成チョコレートの製造方法。焼成前のチョコレートに含まれる油脂が、L2MおよびLM2を含有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の焼成チョコレートの製造方法。 ただし、L、M、L2MおよびLM2は、以下を意味する。 L:炭素数16〜24の飽和脂肪酸 M:炭素数6〜10の脂肪酸 L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール焼成前のチョコレートが、ノンテンパー型である、請求項1〜6の何れか1項に記載の焼成チョコレートの製造方法。焼成前のチョコレートに含まれる油脂のSFCが、10℃で5〜45%、20℃で3〜18%、30℃で2〜10%である、請求項1〜7の何れか1項に記載の焼成チョコレートの製造方法。

说明书全文

本発明は、焼成による形崩れ(焼きダレ)が抑制された焼成チョコレートに関する。

一般的にチョコレートは、構成成分の1/3〜1/2が油脂である。そのため、チョコレートの食感や口どけは、油脂の特性に大きく依存することが知られている。チョコレート中の油脂の構成を変えることで、ソフトな食感および良好な口どけのチョコレートを作ることができる。こうしたチョコレートは、板チョコのような固体でスナップ性のあるチョコレートとともに好まれている。

また、チョコレートの食感は、チョコレートを焼成することでも変えることができる。さらに、焼成されたチョコレートは、耐熱性が向上することも知られている(例えば、特開昭52−148662号公報)。焼成により、典型的には、表面が硬く、中が比較的軟らかい食感を有する焼成(ベイクド)チョコレートが得られる。そのような特性を活かし、さまざまな工夫が凝らされた焼成(ベイクド)チョコレートが開発されている。

例えば、特開2000−189058号公報には、澱粉性原料を使用した、サクサクとした焼菓子様の食感を有する焼成チョコレートが開示されている。また、特開2010−207197号公報には、糖質としてトレハロース及び/又はマルトースが使用されている。上記公報には快い歯触りの表面を有し、且つ、チョコレート内部は本来の風味や滑らかさが維持されている焼成チョコレートが開示されている。

上記澱粉性原料や糖アルコールなど、焼成によって固化する原材料を配合すると、焼成による形崩れ、いわゆる焼きダレが抑制できる。しかしながら、原材料由来の不快味があり、チョコレート本来の持つカカオの風味が損なわれてしまう難点がある。焼きダレを防止する方法としては、金属の型に流し込まれたチョコレートを、そのまま焼成する方法がある。しかしながら、この方法では、焼成チョコレート独特のチョコレート表面のさっくりした食感が乏しい。したがって、焼成による焼きダレが抑制され、原材料由来の不快味が抑制された、焼成チョコレート独特のさっくりとした食感を有する、焼成チョコレートが望まれていた。

特開昭52−148662号公報

特開2000−189058号公報

特開2010−207197号公報

本発明における課題は、焼成による焼きダレが抑制され、焼成チョコレート独特の表面のさっくりとした食感を有する、焼成チョコレートを提供することにある。好ましくは、原料由来の不快味が抑制された、上記焼成チョコレートを提供することにある。

本発明は以下を提供する。 (1)以下の焼きダレ指数が1〜1.3である、焼成チョコレート。 焼きダレ指数=焼成後のチョコレートの底面積/焼成前のチョコレートの底面積 (2)焼成前のチョコレートが、50℃で保形性を有する、(1)の焼成チョコレート。 (3)焼成前のチョコレートのの含有量が、0.8〜3質量%である、(1)または(2)の焼成チョコレート。 (4)焼成前のチョコレートに占める糖アルコールの含有量が10質量%未満である、(1)〜(3)の何れか1つの焼成チョコレート。 (5)焼成前のチョコレートに含まれる糖質および糖類に占める、蔗糖および乳糖の合計含有量が70質量%以上である、(1)〜(4)の何れか1つの焼成チョコレート。 (6)焼成前のチョコレートに含まれる油脂の固体脂含有量が、40℃で0〜6%である、(1)〜(5)の何れか1つの焼成チョコレート。 (7)焼成前のチョコレートに含まれる油脂が、L2MおよびLM2を含有する、(1)〜(6)の何れか1つの焼成チョコレート。 ただし、L、M、L2MおよびLM2は、以下を意味する。 L:炭素数16〜24の飽和脂肪酸 M:炭素数6〜10の脂肪酸 L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール (8)焼成前のチョコレートが、ノンテンパー型である、(1)〜(7)の何れか1つの焼成チョコレート。 (9)チョコレートを焼成することにより、焼きダレ指数が1〜1.3である、(1)〜(8)の何れか1つの焼成チョコレートを得る、焼成チョコレートの製造方法。 (10)チョコレートに対して0.1〜5質量%水を添加する工程を経て得られるチョコレートである、(9)の焼成チョコレートの製造方法 (11)チョコレートが、さらに、18〜36℃で保温される、保温工程を経て得られるチョコレートである、(9)または(10)に記載の焼成チョコレートの製造方法。

本発明によれば、焼成による焼きダレが抑制され、焼成チョコレート独特の表面のさっくりとした食感とを有する、焼成チョコレートおよびその製造方法が提供される。好ましくは、原料由来の不快味が抑制された、上記焼成チョコレートおよびその製造方法が提供される。

以下、本発明の焼成チョコレートについて順を追って記述する。 本発明においてチョコレートとは、チョコレート類の表示に関する公正競争規約(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規に規定されているチョコレートに限定されない。本発明におけるチョコレートは、食用油脂、並びに、糖質および糖類を主原料とする。主原料には、必要に応じてカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、または乳化剤等を加える。かかるチョコレートは、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、成形工程、及び、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造される。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート及びミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート及びカラーチョコレートも含む。本発明の焼成チョコレートは、焼成済みのチョコレートである。以下、特別な記載がない限り、チョコレートは、焼成前のチョコレートを指し、焼成チョコレートは、焼成済みのチョコレートを指す。

本発明において焼成とは、120℃以上の温度での加熱を意味する。チョコレートの焼成温度は、好ましくは120〜250℃であり、より好ましくは、140〜220℃である。チョコレートの焼成には、オーブン、マイクロ波、過加熱蒸気などが使用できる。チョコレートの焼成時間は、焼成温度、焼成装置の能および焼成されるチョコレートの量などにより、適宜調整してもよい。例えば、オーブンでは、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは0.5〜8分間であり、さらに好ましくは、0.5〜5分間であり、最も好ましくは1〜3分間である。チョコレートの焼成温度および焼成時間が上記範囲にあると、チョコレートの表面が、焼成チョコレート独特のさっくりとした食感に仕上がる。また、本発明のチョコレートに含まれる油脂が、後述の10℃で流動性を有する液体油(以下、FLOとも表す)を豊富に含む場合、チョコレートの焼成温度は、好ましくは120〜170℃であり、より好ましくは130〜150℃である。焼成時間は、好ましくは1〜11分間であり、より好ましくは2〜5分間である。

本発明の焼成チョコレートは、焼きダレ指数が1〜1.3である。ここで、焼きダレ指数とは、焼成後のチョコレートの底面積を焼成前のチョコレートの底面積で除した値(焼成後のチョコレートの底面積/焼成前のチョコレートの底面積)である。焼きダレ指数は、焼成によるチョコレートの形崩れの状態を示す。焼きダレ指数は焼き崩れ指数と言い換えてもよい。焼きダレ指数は、好ましくは1〜1.2であり、より好ましくは1〜1.1である。焼きダレ指数を求めるために、焼きダレ指数を求める焼成前のチョコレートは、好ましくは底面積が1〜12cm2、より好ましくは2〜10cm2あり、高さが好ましくは0.3〜1.5cm、より好ましくは0.5〜1.0cmの直方体ないし円柱形のチョコレート塊である。前記チョコレート塊は、好ましくは底面積(cm2)を高さ(cm)で除した値(底面積/高さ)が、1〜15であり、より好ましくは2〜11である。前記チョコレート塊の容積は、好ましくは1〜10cm3、より好ましくは1〜7cm3である。前記チョコレート塊は、例えば、底面積8.15cm2、高さ0.77cmの直方体であってもよい。前記チョコレート塊は、また、例えば、底面積2.3cm2、高さ0.8cmの直方体であってもよい。これらのチョコレート塊の焼成温度は、好ましくは130〜250℃であり、より好ましくは180℃である。焼成時間は、好ましくは0.5〜5分間であり、より好ましくは1.5分間である。

本発明の焼成チョコレートは、50℃で保形性を有するチョコレートを焼成することにより、上記焼きダレ指数を1〜1.3に調整してもよい。ここで、50℃で保形性を有するとは、50℃で24時間静置しても元の形状を保持することを意味する。上記焼きダレ指数を求めるチョコレート塊を使用した場合、目安は、50℃保持24時間後のチョコレートの底面積を50℃保持前のチョコレートの底面積で除した値(保形指数:50℃24時間保持後のチョコレートの底面積/50℃保持前のチョコレートの底面積)が1〜1.3であり、好ましくは1〜1.2であり、より好ましくは1〜1.1である。50℃で保形性を有するチョコレートを焼成することにより、焼きダレ指数は、容易に1〜1.3に調整され得る。

本発明の焼成チョコレートは、好ましくは、焼成前のチョコレートの水の含有量が0.8〜3質量%である。チョコレートは、少量の水を含有することで、チョコレートに含まれる糖がネットワーク構造を形成し易い。糖がネットワーク構造を形成したチョコレートは、耐熱性が向上する。耐熱性が向上したチョコレートは、例えば、50℃で保形性を有する。焼成前のチョコレートは、好ましくは水を1.0〜2.5質量%含有し、より好ましくは水を1.1〜2.2質量%含有し、さらに好ましくは1.2〜2.0質量%含有する。なお、チョコレートの水含有量は、常法に従って、常圧乾熱乾燥法やカールフィッシャー法により測定できる。

本発明の焼成チョコレートは、糖質および糖類を含有する。焼成前のチョコレートに含まれる糖質および糖類の含有量は、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜55質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。なお、焼成前のチョコレートに含まれる糖質および糖類は、蔗糖、乳糖、ソルビトールなど、糖質および糖類として原材料として配合されるものを意味し、他の原材料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳など)由来の糖質および糖類は除いたものである。

焼成前のチョコレートに使用できる糖質および糖類は、例として、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、及び、デキストリンなどを挙げることができる。糖質および糖類は、炭水化物から食物繊維を除いたものとして定義できる。

焼成前のチョコレートは、糖質および糖類の一部として糖アルコールを使用してもよい。チョコレートに占める糖アルコールの含有量は、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは6質量%未満であり、さらに好ましくは0〜3質量%であり、最も好ましくは0質量%である。焼成前のチョコレートは、糖アルコールの含有量が低くても良好な焼成耐性を有するので、風味が良好な焼成チョコレートが得られる。

焼成前のチョコレートは、糖質および糖類の一部として澱粉を使用してもよい。澱粉は、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉などの天然の澱粉だけではなく、α化澱粉、リン酸架橋澱粉、エーテル架橋澱粉などの化工澱粉であってもよい。チョコレートに占める澱粉の含有量は、好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは2質量%未満であり、さらに好ましくは0.1質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。焼成前のチョコレートは、澱粉の含有量が低くても良好な焼成耐性を有するので、食感が良好な焼成チョコレートが得られる。

焼成前のチョコレートは、好ましくは、チョコレートに含まれる糖質および糖類に占める、蔗糖および乳糖の合計含有量(蔗糖+乳糖)が70質量%以上である。チョコレートに含まれる糖質および糖類に占める、蔗糖および乳糖の合計含有量は、より好ましくは、80質量%以上であり、さらに好ましくは、90質量%以上である。チョコレートに含まれる糖質および糖類に占める、蔗糖+乳糖が上記範囲内にあると、焼成チョコレートの風味から、澱粉、デキストリンおよび糖アルコールなどに由来する雑味(不快味)を低減できる。

焼成前のチョコレートは、セルロース、パルプなどの食物繊維を含んでもよい。本発明のチョコレートに含まれる食物繊維の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0〜2質量%であり、さらに好ましくは0質量%である。なお、本発明におけるチョコレートに含まれる食物繊維は、セルロースパウダー、パルプ、ポリデキストロースなど、食物繊維として原材料に配合されるものを意味し、他の原材料(カカオマス、ココアパウダーなど)由来の食物繊維は除いたものである。

焼成前のチョコレートは、油脂を25〜65質量%含有する。チョコレートに含まれる油脂含有量は、好ましくは28〜60質量%であり、より好ましくは30〜55質量%である。なお、焼成前のチョコレートに含まれる油脂は、配合される油脂以外に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳など)由来の油脂(ココアバター、乳脂等)も含む。例えば、一般的に、カカオマスに含まれる油脂(ココアバター)の含有量は55質量%(含油率0.55)であり、ココアパウダーに含まれる油脂(ココアバター)の含有量は11質量%(含油率0.11)であり、全脂粉乳に含まれる油脂(乳脂)含有量は25質量%(含油率0.25)である。よって、チョコレートに含まれる油脂の含有量は、チョコレート中の各原料の配合量(質量%)に含油率を掛け合わせた値を合計した値となる。

焼成前のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中に、好ましくはL2MおよびLM2を含有する。以下、L、M、L2MおよびLM2は、次を意味する。Lは、炭素数16〜24の飽和脂肪酸である。Mは、炭素数6〜10の脂肪酸であり、飽和脂肪酸であることが好ましい。L2Mは、グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロールである。LM2は、グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロールである。Lは、炭素数16〜20の飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数16〜18の飽和脂肪酸であることがより好ましい。

焼成前のチョコレートに含まれる油脂は、好ましくは、上記のL2MおよびLM2を合計で0.01〜40質量%含有する。焼成前のチョコレートに含まれる油脂は、L2MおよびLM2を合計で、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%含有する。チョコレートに含まれる油脂に占める、L2MおよびLM2の合計含有量(以下、L2M+LM2とも表す)が上記範囲内にあると、焼成チョコレートの表面における、ブルームの生成が抑制される。

上記のL2MおよびLM2は、チョコレートに含まれる油脂に占める、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、好ましくは0.05〜4.5である。L2M/LM2は、より好ましくは0.3〜3であり、さらに好ましくは0.55〜2.5である。L2M/LM2が上記範囲内にあると、焼成チョコレートの表面における、ブルームの生成がより効果的に抑制される。

上記のL2MおよびLM2が有する構成脂肪酸中のMの全量のうち、炭素数6の構成脂肪酸の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。また、上記のL2MおよびLM2が有する構成脂肪酸中のMの全量のうち、炭素数10の構成脂肪酸の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは40〜100質量%であり、さらに好ましくは60〜100質量%である。

焼成前のチョコレートに含まれる油脂に、L2M+LM2が40質量%以上(好ましくは60〜100質量%)である油脂(以下、L2M+LM2油脂とも表す)を使用してもよい。L2M+LM2油脂は、従来公知の方法を用いて製造できる。L2M+LM2油脂は、例えば、トリアシルグリセロールの構成脂肪酸がMのみからなる中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、MMMとも表す)10〜65質量部(より好ましくは20〜55質量部)と、ヨウ素価が5以下であり、かつ、構成脂肪酸全量に占める炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量が90質量%以上である油脂(例えば、菜種油、大豆油、パーム油などを原料とする、極度硬化油)35〜90質量部(より好ましくは45〜80質量部)との混合油脂を、エステル交換した油脂であってもよい。当該エステル交換油脂は、必要に応じて分別されてもよい。

上記L2M+LM2油脂は、また、MMM10〜65質量部と、構成脂肪酸全量に占める炭素数16以上の脂肪酸の含有量が90質量%以上の油脂(例えば、菜種油、大豆油、パーム油など)35〜90質量部との混合油脂を、エステル交換した後、極度硬化した油脂であってもよい。当該油脂は、必要に応じて分別されてもよい。なお、L2M+LM2油脂は、後述のノンテンパー型チョコレートにおいては、エステル交換油脂(ノンテンパー型ハードバター)として扱われる。

上記硬化(水素添加)反応およびエステル交換反応は、従来公知の方法で行うことができる。エステル交換反応は、ナトリウムメトキシドなどの合成触媒を使用した化学的エステル交換、ならびに、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。上記分別は、従来公知の、ドライ分別(自然分別)、乳化分別(界面活性剤分別)、ならびに、溶剤分別などの通常の方法により行うことができる。

焼成前のチョコレートに含まれる油脂は、その固体脂含有量(以下、SFCとも表す)が、好ましくは40℃で0〜6%であり、より好ましくは0〜5%である。焼成前のチョコレートは、油脂が50℃で完全に融解していてもよい。チョコレートは、特に、10℃で流動性を有する液体油(以下、FLOとも表す)を豊富に含む場合であっても、焼成できる。チョコレートに含まれる油脂中に液体油が40〜95質量%(好ましくは50〜85質量%、より好ましくは60〜80質量%)含まれる場合、チョコレートに含まれる油脂のSFCは、好ましくは10℃で5〜45%、20℃で3〜30%、30℃で2〜15%であり、より好ましくは10℃で5〜34%、20℃で3〜18%、30℃で2〜10%である。チョコレートに含まれる油脂のSFCが上記範囲内であると、焼成チョコレートの内部の食感を、より軟らかく滑らかに維持できる。なお、チョコレートに含まれる油脂のSFC(%)は、製菓油脂ハンドブック(Confectionary Fat Handbook、THE OILY PRESS出版、ISBN 0-9531949-4-9)の72頁表3.1に記載の方法3(Method 3)に準じて、測定できる。

焼成前のチョコレートに含まれる油脂は、特に制限されない。チョコレートに含まれる油脂は、通常の食用油脂を使用できる。例えば、ココアバター、パーム油、パーム分別油、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、コクム脂、マンゴー脂、マンゴー分別油、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、脂、豚脂および乳脂などの動植物油脂、あるいはこれらに混合、分別、エステル交換、水素添加等の1種以上の処理が適用されることにより得られる加工油脂の中から1種以上を選択して使用できる。

焼成前のチョコレートは、テンパー型チョコレートとノンテンパー型チョコレートどちらであってもよい。テンパー型チョコレートは、チョコレートを構成する油脂が、カカオ脂もしくはカカオ脂とよく似た対称型トリアシルグリセロールの構造を持つ類似脂からなる。テンパー型チョコレートにおける、対称型トリアシルグリセロールの結晶構造は、V型に調整される必要がある。そのため、テンパー型チョコレートの製造においては、テンパリングという煩雑な工程がとられる。

焼成前のチョコレートがテンパー型チョコレートである場合、本発明のチョコレートに含まれる油脂は、好ましくは、LOLを含有する。以下、OおよびLOLは、次を意味する。Oは、オレイン酸である。LOLは、2位にオレイン酸(O)、ならびに、1位および3位に炭素数16〜24の飽和脂肪酸(L)が結合したトリアシルグリセロールである。チョコレートに含まれる油脂の、LOLの含有量は、好ましくは45〜95質量%であり、より好ましくは50〜90質量%であり、さらに好ましくは55〜85質量%である。LOLの1位および3位に結合している炭素数16〜24の飽和脂肪酸は、必ずしも同じ飽和脂肪酸でなくともよい。さらに、LOLの有する構成脂肪酸中のLの全量のうち、炭素数16〜18の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。チョコレートに含まれる油脂のLOL含有量が上記範囲にあると、チョコレートの油脂結晶をV型に調整しやすい(テンパリングがとりやすい)。

焼成前のチョコレートがテンパー型チョコレートである場合、チョコレートに含まれる油脂が上記LOLを含有するように、チョコレートに含まれる油脂として、LOLを豊富に含む油脂(40質量%以上、好ましくは60質量%以上のLOLを含む油脂)を使用してもよい。LOLを豊富に含む油脂(以下、LOL油脂とも表す)の例として、ココアバター、パーム油、シア脂、サル脂、アランブラッキア脂、モーラー脂、イリッペ脂、およびマンゴー核油、ならびに、それらの分別油が挙げられる。さらに、すでに知られているように、パルミチン酸、ステアリン酸、あるいは、それらの低級アルコールエステルと、ハイオレイックヒマワリ油などの高オレイン酸油脂との間で、1,3位選択性リパーゼ製剤を用いて、エステル交換反応をさせた後、必要に応じて分別することにより得られる油脂を使用してもよい。なお、油脂のトリアシルグリセロールは、例えば、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)に準じて測定できる。トリアシルグリセロールの対称性は、例えば、J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準じた方法で測定できる。

焼成前のチョコレートがテンパー型チョコレートである場合、テンパリング処理が必要である。テンパリング処理は、融液状(油脂結晶が完全に融けた状態)のチョコレートにおいて、油脂の安定結晶の結晶核を生じさせる操作である。この操作により、チョコレートに含まれる油脂に含有されたLOLを、安定な結晶として、固化させることができる。例えば、40〜50℃で融解しているチョコレートを、品温が26〜29℃程度になるまで下げた後に、再度28〜31℃程度まで加温する操作が挙げられる。あるいは、テンパリング処理に替えて、シーディング処理を行ってもよい。例えば、SOS(1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロール)あるいはBOB(1,3−ジベヘノイル−2−オレオイルグリセロール)のようなLOLの安定結晶であるシード剤を用いて、シーディング処理を行ってもよい。すなわち、上記シード剤としての安定結晶が完全に融けてしまわない温度において、チョコレート中の油脂に対して、0.05〜5質量%のシード剤を添加(シーディング処理)することでテンパリング処理に替えてもよい。

焼成前のチョコレートがノンテンパー型チョコレートである場合、チョコレートに含まれる油脂は、ノンテンパー型ハードバター(以下、NTHBとも表す)を含有することが好ましい。ノンテンパー型ハードバターは、カカオ脂と似た融解性状を有するが、全く異なる油脂構造を有する。ノンテンパー型ハードバターは、ラウリン酸型と非ラウリン酸型とに大きく分けられる。ラウリン酸型および非ラウリン酸型の何れも、カカオ脂との相溶性は低いが、カカオ脂と比べて価格が安い。また、ノンテンパー型チョコレートは、煩雑なテンパリングが不要で作業性が良いため、製菓・製パン領域にて広く使用されている。

焼成前のチョコレートがノンテンパー型チョコレートである場合、チョコレートには、NTHBとしてエステル交換油脂を使用してもよい。エステル交換油脂を使用することで、チョコレートに含まれるココアバターの含有量を高められるので、風味の良いチョコレートが得られる。ノンテンパー型チョコレートに含まれる油脂に占めるココアバターの含有量は、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。上記エステル交換油脂は、エステル交換油脂の構成脂肪酸の全量に占める炭素数6〜10の脂肪酸(M)の含有量が10質量%以下(好ましくは0〜5質量%)であれば、ラウリン系エステル交換油脂であってもよいし、非ラウリン系エステル交換油脂であってもよい。

上記ラウリン系エステル交換油脂とは、エステル交換油脂の構成脂肪酸の全量に占めるラウリン酸の含有量が10質量%以上(好ましくは、15〜60質量%)であるエステル交換油脂である。ラウリン系エステル交換油脂は、エステル交換の原料油脂として、ラウリン系油脂を含有することが好ましい。ラウリン系油脂とは、油脂を構成する全脂肪酸に占めるラウリン酸の含有量が30質量%以上の油脂である。ラウリン系油脂としては、例として、ヤシ油、パーム核油、これらを分別して得られるパーム核オレイン、パーム核ステアリンなどの分別油、これらをエステル交換した油脂、およびこれらの硬化油を挙げることができる。ラウリン系油脂は、エステル交換の原料油脂中に、これらから選ばれる1種又は2種以上が用いられてもよい。

ラウリン系エステル交換油脂は、ラウリン系油脂のみをエステル交換したものでもよいし、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とを含む混合油脂をエステル交換したものでもよい。非ラウリン系油脂とは、油脂を構成する脂肪酸全量に占める炭素数16以上の脂肪酸含有量が90質量%を超える油脂であり、例として、菜種油、高エルシン酸菜種油、大豆油、コーン油、紅花油、綿実油、ヒマワリ油、カカオ脂、シア脂、サル脂、パーム油など、並びにこれらに水素添加した油脂が挙げられる。非ラウリン系油脂は、エステル交換の原料油脂中に、これらから選ばれる1種又は2種以上が用いられてもよい。

ラウリン系エステル交換油脂が、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とを含む混合油脂をエステル交換したものである場合、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂との混合比は、好ましくは質量比で30:70〜60:40であり、より好ましくは質量比で35:65〜55:45であり、さらに好ましくは質量比で40:60〜50:50である。

ラウリン系エステル交換油脂は、エステル交換油脂の構成脂肪酸の全量に占めるラウリン酸の含有量が10質量%以上(好ましくは、15〜60質量%)であり、エステル交換処理されたものであれば、エステル交換処理の前後で、分別、水素添加などの、その他の加工処理が単回、もしくは複数回繰り返されたものであってもよい。ラウリン系エステル交換油脂は、ヨウ素価が、好ましくは0〜40であり、より好ましくは5〜30であり、さらに好ましくは10〜25である。

上記非ラウリン系エステル交換油脂とは、エステル交換油脂の構成脂肪酸の全量に占めるラウリン酸の含有量が10質量%未満(好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%)であるエステル交換油脂である。非ラウリン系エステル交換油脂は、エステル交換の原料油脂として、非ラウリン系油脂を含有することが好ましい。非ラウリン系油脂は、上述のとおりである。非ラウリン系油脂は、エステル交換の原料油脂中に、1種又は2種以上が用いられてもよい。

非ラウリン系エステル交換油脂は、その原料油脂として、パーム系油脂を含有することが好ましい。ここでパーム系油脂とは、パーム油由来の油脂であり、パーム油、パーム油の分別油およびそれらの加工油(硬化、エステル交換および分別のうち1種以上の処理がなされたもの)が例示できる。より具体的には、1段分別油であるパームオレイン、パームステアリン、パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)およびパームミッドフラクション、パームステアリンの2段分別油であるパームオレイン(ソフトパーム)およびパームステアリン(ハードステアリン)などが例示できる。非ラウリン系エステル交換油脂が、エステル交換の原料油脂として、パーム系油脂を使用する場合、原料油脂に占めるパーム系油脂の含有量は、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは40〜100質量%であり、さらに好ましくは60〜100質量%である。

非ラウリン系エステル交換油脂は、エステル交換油脂の構成脂肪酸の全量に占めるラウリン酸の含有量が10質量%未満(好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%)であり、エステル交換処理されたものであれば、エステル交換処理の前後で、分別、水素添加などの、その他の加工処理が単回、もしくは複数回繰り返されたものであってもよい。非ラウリン系エステル交換油脂は、ヨウ素価が、好ましくは10〜70であり、より好ましくは20〜55であり、さらに好ましくは25〜45である。

上記、ラウリン系エステル交換油脂および非ラウリン系エステル交換油脂は、それぞれ単独で用いられてもよいし、併用して用いられてもよい。また、その他の油脂(例えば、ラウリン酸ハードバター、トランス酸型ハードバター、ココアバターなど)と併用されてもよい。焼成前のチョコレートがノンテンパー型チョコレートである場合、チョコレートに含まれる油脂に占める、ラウリン系エステル交換油脂および/または非ラウリン系エステル交換油脂の含有量は、好ましくは3〜99.99質量%であり、より好ましくは30〜98質量%であり、さらに好ましくは50〜95質量%である。

焼成前のチョコレートは、油脂並びに糖質および糖類以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用できる。例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダーなどのカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末などの各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料などが挙げられる。

焼成前のチョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。チョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖質および糖類、乳製品、並びに、乳化剤などの原材料を使用して、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)および冷却工程などを経て、製造される。精錬工程の後で、必要に応じて、テンパリング処理が行われてもよい。

焼成前のチョコレートは、その製造工程において、融液状態にあるチョコレートに、水を添加分散する工程(水添加工程)を有してもよい。ここで融液状態とは、チョコレートに含まれる油脂が融解された状態を指す。水添加工程における融液状態にあるチョコレートの温度は次のとおりである。ノンテンパー型チョコレートの場合、好ましくは30〜70℃であり、より好ましくは35〜60℃であり、さらに好ましくは35〜55℃である。また、テンパー型チョコレートで上述のシーディング処理の後に水添加工程をとる場合は、ノンテンパー型チョコレートと同様で良い。テンパリング処理もしくはシーディング処理の後に水添加工程をとる場合は、好ましくは24〜42℃であり、より好ましくは28〜40℃であり、さらに好ましくは30〜38℃である。水添加工程において添加される水の量は、含水型耐熱性チョコレートにおいて通常使用される量でよく、特に限定はされない。水の添加量は、融液状態のチョコレートに対して、0.1〜5.0質量%であってもよい。水の添加量が融液状態のチョコレートに対して0.1質量%以上であると、糖骨格が十分に形成され、耐熱性に優れたチョコレートが得られる。水の添加量が融液状態のチョコレートに対して5.0質量%以下であると、生物汚染のリスクを抑制できる。水の添加量は、融液状態のチョコレート生地に対して、0.2〜3.0質量%であってもよく、0.3〜2.5質量%であってもよい。

水添加工程において添加される水は、水のみであってもよい。加えて、水と共に水以外の成分を含む組成物(以下、このような組成物を「含水材」という)であってもよい。水添加工程において添加する水は、水としての添加量が同じであっても、水と共に添加される成分によって、融液状態のチョコレートの粘度上昇速度が変化し得る。具体的には、水のみ、又は、水分含有量の高い含水材(果汁、牛乳等)を添加すると、チョコレートの粘度は急激に上昇しやすい。他方、糖液やタンパク液等の含水材を添加すると、比較的緩やかに粘度が上昇する傾向にある。急激に粘度が上昇すると、融液状態のチョコレート中に十分に水が分散できない可能性があるため、水添加工程における水は、含水材、特に糖液やタンパク液であることが好ましい。

糖液としては、果糖、ブドウ糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖等の糖と水とを含む、還元水飴や果糖ブドウ糖液糖、ソルビトール液等の溶液が挙げられる。タンパク液としては、卵白メレンゲ、濃縮乳、生クリーム等のタンパク質と、水とを含む溶液が挙げられる。糖液やタンパク液に含まれる水分の含有量は、溶液全体に対して10〜90質量%であってもよく、10〜50質量%であってもよい。水添加工程において、水を含水材の形態で添加する場合は、その添加量は、融液状態のチョコレートに対する水の量が上記の範囲となるように添加すればよい。

水添加工程において使用する水や含水材の温度は、特に限定されない。しかし、融液状態のチョコレートの温度と同程度であること好ましい。水や含水材と添加しようとする融液状態のチョコレートの温度が同程度であれば、チョコレートの温度が一定に保たれ、水や含水材を均一に分散させやすい。水を融液状態のチョコレートに添加した後は、撹拌等により水をチョコレート中に均一に分散させてもよい。なお、水の添加は、後述の冷却固化工程で冷却固化したチョコレートの表面に噴霧してもよい。

水添加工程を経た融液状態のチョコレートは、冷却固化してもよく、この冷却工程により、融液状態から固形のチョコレートを製造できる。冷却固化の方法は特に限定されない。冷却固化は、チョコレート製品の特性に応じて、モールド成形や食品への被覆という態様をとればよい。半固形状のチョコレートを押出し成形してもよい。より具体的には、例えば、冷却トンネル(クーリングトンネル)などでの冷風の吹付、もしくは、冷却プレートとの接触などによる冷却固化が挙げられる(例えば、「製菓用油脂ハンドブック」(蜂屋巖訳、2010年発行、株式会社幸書房)を参照)。冷却固化の条件は、融液状態のチョコレートが固化する限り特に限定されないが、0〜20℃(好ましくは0〜10℃で5〜90分間(好ましくは10〜60分間)行ってもよい。

上記冷却固化後のチョコレートは、好ましくは、保温工程において保温処理される。保温処理は、冷却固化後のチョコレートを、好ましくは18〜36℃、より好ましくは22〜34℃、さらに好ましくは26〜32℃において、好ましくは1〜240時間、より好ましくは6〜144時間、さらに好ましくは12〜96時間保温する処理である。保温処理により、チョコレート中の糖骨格の形成をより強固にできるので、チョコレートは50℃での保形性を得やすい。

焼成前のチョコレートは、起泡化して、含気チョコレートとしてもよい。チョコレートを起泡化することにより、ソフトな食感に軽さが加わり、口どけがさらに良好なものとなる。含気チョコレートは、その比重(g/cm3)が、好ましくは0.8〜1.25であり、より好ましくは0.9〜1.2である。チョコレートを起泡化する方法には特に限定されない。例えば、製造工程上の冷却固化前の融液状ないし半融液状のチョコレートおよび、一度冷却固化したチョコレートを加熱により融液状ないし半融液状としたチョコレートを、縦型ミキサーや連続ミキサーでホイップして起泡化することができる。

本発明の好ましい実施の態様によれば、本発明の焼成チョコレートは、上述の水添加工程、冷却固化工程および保温工程を経たチョコレートを、焼成することにより得られる。焼成は、上述したとおりである。本発明の焼成チョコレートは、焼成による焼きダレが抑制される。そして、焼成前のチョコレートは、澱粉や糖アルコールを多量に使用する必要がないので、原材料由来の不快味が抑制され、焼成チョコレート独特のさっくりとした食感を有する。さらに、本発明の焼成チョコレートは、特定のトリアシルグリセロールを含有すると、優れたブルーム耐性を有する。

本発明の焼成チョコレートは、チョコレート塊としてそのまま食することができる。また、本発明の焼成チョコレートは、製菓製パン製品と組み合わせ、複合菓子にすることができる。例えば、焼成前のチョコレートは、パン、ケーキ、洋菓子、焼き菓子、ドーナツ、および、シュー菓子などに、コーティング材、フィリング材、または、生地へ混ぜ込むチップ材として使用できる。

次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに何ら制限されない。

〔分析方法〕 (トリアシルグリセロール) 油脂の、L2M含有量、LM2含有量およびL2O含有量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993))に準じて測定された。LOL含有量は、LOL/L2O比を、J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準じた方法で測定し、この値とL2O含有量を基に算出された。ただし、上記L2Oは、グリセロール1分子に2分子のLと1分子のOがエステル結合したトリアシルグリセロールである。 (SFC) チョコレートに含まれる油脂のSFC(%)は、製菓油脂ハンドブック(Confectionary Fat Handbook、THE OILY PRESS出版、ISBN 0-9531949-4-9)の72頁表3.1に記載の方法3(Method 3)に準じて、オリーブ油を標準物質とするNMR間接法により、以下の1〜4の手順で測定された。 1.試料管に充填されたチョコレートは、10℃で30分間保持された。 2.その後試験管は、20℃で168時間保持された。 3.その後試料管は、最も低い測定温度で30分間保持された。 4.SFCを測定後、次に高い測定温度に移された。全ての測定温度における測定が終了するまで、3、4が繰り返された。 SFCの測定装置は、BRUKER社製minispec mqが使用された。

〔使用油脂〕 チョコレートの原料油脂として以下の油脂を使用した。 (LOL油脂−1):ココアバター(大東カカオ株式会社製、LOL含有量85.1質量%)をLOL油脂−1とした。 (LOL油脂−2):ココアバター代用脂(日清オイリオグループ株式会社製、LOL含有量81.9質量%)をLOL油脂−2とした。 (LOL油脂−3):ココアバター代用脂(日清オイリオグループ株式会社製、LOL含有量81.2質量%)をLOL油脂−3とした。 (LOL油脂−4):ココアバター代用脂(日清オイリオグループ株式会社製、LOL含有量63.9質量%)をLOL油脂−4とした。 (NTHB−1):パーム核ステアリン極度硬化油(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量53.1質量%)をNTHB−1とした。 (NTHB−2):50質量部のラウリン系油脂と50質量部の非ラウリン系油脂のエステル交換油脂(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量24.2質量%、ヨウ素価23.5)をNTHB−2とした。 (NTHB−3):72.4質量部のパーム系油脂、18.8質量部の大豆油極度硬化油および8.8質量部の高オレイン酸ひまわり油のエステル交換油脂の分別中融点部(日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価37.5)をNTHB−3とした。 (NTHB−4):50質量部のNTHB−2と50質量部のパーム系油脂の混合油(日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価42.6)をNTHB−4とした。 (FLO−1):72.4質量部のパーム系油脂、18.8質量部の大豆油極度硬化油および8.8質量部の高オレイン酸ひまわり油の混合油のエステル交換油脂の2段分別低融点部(日清オイリオグループ株式会社製、10℃で流動性あり)をFLO−1とした。 (FLO−2):中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(日清オイリオグループ株式会社製、10℃で流動性あり)をFLO−2とした。 (FLO−3):菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、10℃で流動性あり)をFLO−3とした。 (L2M+LM2油脂−1):50質量部のFLO−2と50質量部の菜種油極度硬化油のエステル交換油脂(日清オイリオグループ株式会社製、L2M+LM2が74.6質量%、L2M/LM2が0.7)をL2M+LM2油脂−1とした。 (極度硬化油):ハイエルシン酸菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)を使用した。

〔チョコレートの製造1〕 表1の配合に従って、例1〜6の融液状態のチョコレートを調製した。融液状態のチョコレートは、常法に従って、混合、微粒化(リファイニング)、精練(コンチング)の各工程を経ることにより、得られた。表1において、シード剤が「有」である例では、融液状態のチョコレートに含まれる油脂に対して、1質量%のシード剤(SOSを35質量%含有)が添加され、分散された。また、表1において、含水材が「有」である例では、4質量%の果糖ブドウ糖液糖(水含有量25質量%)が添加され、分散された。その後、融液状態のチョコレートは、モールド(型)に流し込まれ、8℃で冷却固化された。冷却固化後、型から外された例1〜6のチョコレートは、底面積8.15cm2、高さ0.77cmの直方体であった。表1において、保温工程が「有」である例は、型抜き後28℃で72時間保温された。

〔チョコレートの焼成評価1〕 上記の例1〜6のチョコレートについて、以下の基準に従って、50℃における保形性が確認された。また、上記の例1〜6のチョコレートが、200℃のオーブンで2分間焼成されることにより、焼成チョコレートが得られた。そして、例1〜6の焼成チョコレートの焼きダレ指数が測定された。また、例1〜6の焼成チョコレートの風味および食感の評価が、以下の基準に従って、5名のパネルにより、行われた。また、焼成チョコレートの耐ブルーム評価が、以下の基準に従って行われた。結果は表1に示された。

(50℃における保形性の評価基準) 50℃で24時間静置後、形状の変化が観察された。底面の変化は、50℃保持24時間後のチョコレートの底面積を50℃保持前のチョコレートの底面積で除した値(50℃24時間保持後のチョコレートの底面積/50℃保持前のチョコレートの底面積)を指標とした。 4:エッジがあり、底面の変化が1〜1.1 3:エッジがあり、底面の変化が1.1より大きく1.3以下 2:エッジは残るが、底面の変化が1.3より大きい 1:エッジがなく、元の形状がなくなる

(焼成チョコレートの風味の評価基準) 4:原材料由来の不快味がなく、非常に良好 3:原材料由来の不快味がなく、良好 2:原材料由来の不快味が感じられる 1:原材料由来の不快味が強く感じられる

(焼成チョコレートの食感の評価基準) 4:噛み出しがさっくりとして、非常に良好である 3:噛み出しがさっくりとして、良好である 2:噛み出しが硬い 1:噛み出しが硬く、口どけも悪い

(焼成チョコレートの耐ブルーム評価基準) 焼成チョコレートは、20℃で2日間保持された後、ブルームの状態が観察された。 4:ブルームの発生がなく、非常に良好 3:ブルームの発生がなく、良好 2:ブルームが発生 1:ブルームが顕著に発生

(*):焼成により形状が保持できず、評価の対象外

〔チョコレートの製造2〕 表2の配合に従って、例7〜12の融液状態のチョコレートを調製した。融液状態のチョコレートは、常法に従って、混合、微粒化(リファイニング)、精練(コンチング)の各工程を経ることにより、得られた。表1において、含水材が「有」である例では、融液状態のチョコレートに、4質量%の果糖ブドウ糖液糖(水含有量25質量%)が添加され、分散された。その後、融液状態のチョコレートは、モールド(型)に流し込まれ、8℃で冷却固化された。冷却固化後、型から外された例7〜12のチョコレートは、底面積8.15cm2、高さ0.77cmの直方体であった。表2において、保温工程が「有」である例は、型抜き後28℃で72時間保温された。

〔チョコレートの焼成評価2〕 上記の例7〜12のチョコレートについて、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って、50℃における保形性が確認された。また、上記の例7〜12のチョコレートが、200℃のオーブンで2分間焼成されることにより、焼成チョコレートが得られた。そして、例7〜12の焼成チョコレートの焼きダレ指数が測定された。また、例7〜12の焼成チョコレートの風味および食感の評価が、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って、5名のパネルにより、行われた。また、焼成チョコレートの耐ブルーム評価が、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って行われた。結果は表2に示された。

(*):焼成により形状が保持できず、評価の対象外

〔チョコレートの製造3〕 表3の配合に従って、例13〜18の融液状態のチョコレートを調製した。融液状態のチョコレートは、常法に従って、混合、微粒化(リファイニング)、精練(コンチング)の各工程を経ることにより、得られた。表3において、含水材が「有」である例では、4質量%の果糖ブドウ糖液糖(水含有量25質量%)が添加され、分散された。その後、融液状態のチョコレートは、バット(手札判125mm×155mm)に130g分注され、半固形状まで冷却された段階で、5連の刃を有する伸縮カッター(目黒金属工業製)により、1.5cm幅にカットされた。カットされた例13〜18のチョコレートは、底面積2.3cm2、高さ0.8cmの直方体であった。表3において、保温工程が「有」である例は、カット後20℃で72時間保温された。

〔チョコレートの焼成評価3〕 上記の例13〜18のチョコレートについて、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って、50℃における保形性が確認された。また、上記の例13〜18のチョコレートが、180℃のオーブンで2分間焼成されることにより、焼成チョコレートが得られた。そして、例13〜18の焼成チョコレートの焼きダレ指数が測定された。また、例13〜18の焼成チョコレートの風味および食感の評価が、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って、5名のパネルにより、行われた。また、焼成チョコレートの耐ブルーム評価が、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って行われた。結果は表3に示された。

(*):焼成により形状が保持できず、評価の対象外 (+):焼成チョコレート内部の食感は軟らかく滑らかであった

〔チョコレートの製造4〕 表4の配合に従って、例19〜24の融液状態のチョコレートを調製した。融液状態のチョコレートは、常法に従って、混合、微粒化(リファイニング)、精練(コンチング)の各工程を経ることにより、得られた。表4において、含水材が「有」である例では、融液状態のチョコレートに、4質量%の果糖ブドウ糖液糖(水含有量25質量%)が添加され、分散された。その後、融液状態のチョコレートは、モールド(型)に流し込まれ、8℃で冷却固化された。冷却固化後、型から外された例19〜24のチョコレートは、底面積8.15cm2、高さ0.77cmの直方体であった。表4において、保温工程が「有」である例は、型抜き後28℃で72時間保温された。

〔チョコレートの焼成評価4〕 上記の例19〜24のチョコレートについて、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って、50℃における保形性が確認された。また、上記の例19〜24のチョコレートが、240℃のオーブンで2分間焼成されることにより、焼成チョコレートが得られた。そして、例19〜24の焼成チョコレートの焼きダレ指数が測定された。また、例19〜24の焼成チョコレートの風味および食感の評価が、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って、5名のパネルにより、行われた。また、焼成チョコレートの耐ブルーム評価が、〔チョコレートの焼成評価1〕と同様の基準に従って行われた。結果は表4に示された。

(#):形は維持されるが、油脂の滲み出しがある (*):焼成により形状が保持できず、評価の対象外

QQ群二维码
意见反馈