被覆用油脂組成物

申请号 JP2017107417 申请日 2017-05-31 公开(公告)号 JP2017143837A 公开(公告)日 2017-08-24
申请人 日清オイリオグループ株式会社; 发明人 粟飯原 知洋; 大西 清美; 村山 典子;
摘要 【課題】本発明の課題は、コーティング適性が良好で、流通・保存時にひび割れが生じにくく、食感、口溶けにすぐれた被覆用油脂組成物を開発することである。 【解決手段】油脂中に、以下の油脂Aを、0.1〜60質量%含有し、かつ、前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)が10質量%以上である、被覆用油脂組成物。 油脂A:L2MおよびLM2を含み、L2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)が 50質量%以上である油脂 【選択図】なし
权利要求

油脂中に、以下の油脂Aを、0.1〜60質量%含有し、かつ、前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)が10質量%以上である、被覆用油脂組成物。 油脂A:L2MおよびLM2を含み、L2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)が 50質量%以上である油脂 ただし、L、M、U、L2U、LU2、L2MおよびLM2は、以下を意味する。 L:炭素数16〜24の飽和脂肪酸 M:炭素数6〜10の脂肪酸 U:炭素数16〜24の不飽和脂肪酸 L2U:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のUが結合したトリアシルグリセロール LU2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のUが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール前記油脂Aに占める、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.05〜4.5である、請求項1に記載の被覆用油脂組成物。前記L2MおよびLM2を構成するMの全量に占める、カプリン酸の含有量が20質量%以上である、請求項1または2に記載の被覆用油脂組成物。前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)に対する油脂Aの含有量の質量比(油脂A/(L2U+LU2))が0.01〜2.0である、請求項1〜3の何れか1項に記載の被覆用油脂組成物。前記油脂に占める、パーム系油脂の含有量が5質量%以上である、請求項1〜4の何れか1項に記載の被覆用油脂組成物。前記油脂に占める、ココアバターの含有量が0.5〜50質量%である、請求項1〜5の何れか1項に記載の被覆用油脂組成物。前記油脂に占める、MMMの含有量が0.01〜12質量%である、請求項1〜6の何れか1項に記載の被覆用油脂組成物。 ただし、MMMは、以下を意味する。 MMM:グリセロール1分子に3分子のMが結合したトリアシルグリセロール前記被覆用油脂組成物がチョコレートである、請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆用油脂組成物。請求項1〜8の何れか1項に記載の被覆用油脂組成物で被覆された状態にある食品。油脂中に、以下の油脂Aを、0.1〜60質量%含有し、かつ、前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)が10質量%以上である、被覆用油脂組成物を使用して、食品を被覆する、油脂組成物で被覆された食品の製造方法。 油脂A:L2MおよびLM2を含み、L2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)が 50質量%以上である油脂 ただし、L、M、U、L2U、LU2、L2MおよびLM2は、以下を意味する。 L:炭素数16〜24の飽和脂肪酸 M:炭素数6〜10の脂肪酸 U:炭素数16〜24の不飽和脂肪酸 L2U:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のUが結合したトリアシルグリセロール LU2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のUが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール

说明书全文

本発明は、アイスクリームなどの冷菓のコーティングに適した油脂組成物、及び、当該油脂組成物でコーティングされた食品に関する。

アイスクリーム等の冷菓は、コーティングチョコレートのような被覆用油脂組成物でコーティングされることがある。コーティングがあることによって、冷菓の風味や食感が向上する。さらに、アイスクリーム類の分がコーンカップに移行することを防ぐ吸湿防止の目的でも使用される。被覆用油脂組成物に求められる適性は、次のようなものが挙げられる。ひとつは、薄く均一にコーティングできて、乾き(固化)が速いという「コーティング適性」である。次に、固化した後にひび割れしない「耐ひび割れ性」である。さらに食べた時の口溶けの良さである。被覆用油脂組成物に使用される油脂としては、薄く均一にコーティングできて乾きが速いこと、口溶けが良いことから、ヤシ油やパーム核油のようなラウリン系油脂が主に用いられてきた。しかしながら、ラウリン系油脂は固化した後にひび割れが生じ易い欠点を有している。

そこで、被覆用油脂組成物の油脂には、ラウリン系油脂と大豆油のような液体油とが配合されることが多い。しかしながら、液体油を配合する方法は、その配合量が多いとひび割れは抑制されるものの、乾きが遅くなる。さらに、固化したコーティング部分の食感がべたついたものになってしまう。そのため、冷菓の生産効率が悪くなるとともに、冷菓の食感は油性感が強くなる。一方、液状油の配合量が少ないと、ひび割れ防止効果が少なく、十分な方法であるとは言えない。特開2004−65070号公報では、液体油として、構成脂肪酸が炭素数16以上の不飽和脂肪酸(シス・トランス体共に含む)を90重量%以上含有する油脂を使用することによって、油性感の低減が試みられている。しかし、その効果は乏しい。したがって、液体油が配合されても、食感、口溶けにすぐれた被覆用油脂組成物の開発が望まれていた。

被覆用油脂組成物には、また、ラウリン系油脂とは別に、例えば、特表平10−506285号公報、特表平10−506286号公報のように、SUSトリグリセリドに富む油脂も使用される。しかし、ラウリン系油脂を使用する場合と同様の課題があった。したがって、液体油の配合が少ない場合であっても、ひび割れが抑制され、食感、口溶けにすぐれた被覆用油脂組成物の開発が望まれていた。

特開2004−65070号公報

特表平10−506285号公報

特表平10−506286号公報

本発明の課題は、コーティング適性が良好で、流通・保存時において固化したコーティング部分にひび割れが生じにくく、食感、口溶けにすぐれた被覆用油脂組成物を開発することである。

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、被覆用油脂組成物の油脂中に、長鎖脂肪酸残基と中鎖脂肪酸残基とからなる混酸基トリアシルグリセロール(L2M、LM2)を特定量含有する油脂Aを、特定量含有させ、かつ、前記油脂中の、長鎖飽和脂肪酸と長鎖不飽和脂肪酸とからなるトリアシルグリセロール(L2U、LU2)の含有量を特定量とすることにより、上記課題が解決できることを見いだした。これにより、本発明は完成された。

すなわち、本発明は以下のようなものを提供する。 (1)油脂中に、以下の油脂Aを、0.1〜60質量%含有し、かつ、前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)が10質量%以上である、被覆用油脂組成物。 油脂A:L2MおよびLM2を含み、L2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)が 50質量%以上である油脂 ただし、L、M、U、L2U、LU2、L2MおよびLM2は、以下を意味する。 L:炭素数16〜24の飽和脂肪酸 M:炭素数6〜10の脂肪酸 U:炭素数16〜24の不飽和脂肪酸 L2U:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のUが結合したトリアシルグリセロール LU2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のUが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール (2)前記油脂Aに占める、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.05〜4.5である、(1)の被覆用油脂組成物。 (3)前記L2MおよびLM2を構成するMの全量に占める、カプリン酸の含有量が20質量%以上である、(1)または(2)の被覆用油脂組成物。 (4)前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)に対する油脂Aの含有量の質量比(油脂A/(L2U+LU2))が0.01〜2.0である、(1)〜(3)の何れか1項の被覆用油脂組成物。 (5)前記油脂に占める、パーム系油脂の含有量が5質量%以上である、(1)〜(4)の何れか1項の被覆用油脂組成物。 (6)前記油脂に占める、ココアバターの含有量が0.5〜50質量%である、(1)〜(5)の何れか1項の被覆用油脂組成物。 (7)前記油脂に占める、MMMの含有量が0.01〜12質量%である、(1)〜(6)の何れか1項の被覆用油脂組成物。 ただし、MMMは、以下を意味する。 MMM:グリセロール1分子に3分子のMが結合したトリアシルグリセロール (8)前記被覆用油脂組成物がチョコレートである、(1)〜(7)の何れか1項の被覆用油脂組成物。 (9)(1)〜(8)の何れか1項の被覆用油脂組成物で被覆された状態にある食品。 (10)油脂中に、以下の油脂Aを、0.1〜60質量%含有し、かつ、前記油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)が10質量%以上である、被覆用油脂組成物を使用して、食品を被覆する、油脂組成物で被覆された食品の製造方法。 油脂A:L2MおよびLM2を含み、L2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)が 50質量%以上である油脂 ただし、L、M、U、L2U、LU2、L2MおよびLM2は、以下を意味する。 L:炭素数16〜24の飽和脂肪酸 M:炭素数6〜10の脂肪酸 U:炭素数16〜24の不飽和脂肪酸 L2U:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のUが結合したトリアシルグリセロール LU2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のUが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール

本発明により、コーティング適性が良好で、流通・保存時にひび割れが生じにくく、食感、口溶けにすぐれた被覆用油脂組成物および該被覆用油脂組成物を使用した食品を提供できる。本発明により、ココアバターの含有量が高いにもかかわらず、ひび割れが生じにくい被覆用油脂組成物を提供できる。

以下、本発明に関してより詳細に説明を行う。 本発明の被覆用油脂組成物は、油脂中に、次の油脂Aを含有する。油脂Aは、L2MおよびLM2を含み、L2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)が、50質量%以上の油脂である。ここで、L、M、L2MおよびLM2は、次を意味する。Lは、炭素数16〜24の飽和脂肪酸である。Lは、好ましくは炭素数16〜20の飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数16〜18の飽和脂肪酸である。Lは、好ましくは直鎖飽和脂肪酸である。Mは、炭素数6〜10の脂肪酸である。Mは好ましくは直鎖飽和脂肪酸である。L2Mは、グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロールである。LM2は、グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロールである。油脂Aに含まれるL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量以上である。上限は特に制限されないが、油脂Aを経済的に製造するには、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。

本発明の被覆用油脂組成物に含まれる油脂に占める、上記油脂Aの含有量は、0.1〜60質量%である。油脂Aの含有量は、好ましくは0.5〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%であり、さらに好ましくは1〜14質量%であり、最も好ましくは2〜10質量%である。被覆用油脂組成物に含まれる油脂に占める、油脂Aの含有量、および、油脂Aに含まれるL2MおよびLM2の合計含有量が上記範囲内にあると、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物の割れが効果的に抑制される。

上記油脂Aに含まれるL2MおよびLM2は、油脂Aに占める、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.05〜4.5であることが好ましい。L2M/LM2は、より好ましくは0.3〜3であり、さらに好ましくは0.55〜2.5である。油脂AのL2M/LM2が上記範囲内にあると、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物の割れが効果的に抑制される。

上記油脂Aに含まれるL2MおよびLM2は、それらが有する構成脂肪酸中のMの全量のうち、炭素数6の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。さらに、油脂Aに含まれるL2MおよびLM2が有する構成脂肪酸中のMの全量のうち、炭素数10の脂肪酸が占める割合は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30〜100質量%であり、さらに好ましくは40〜100質量%であり、最も好ましくは60〜100質量%である。

本発明の被覆用油脂組成物に含まれる油脂は、MMMを0.01〜12質量%含有してもよい。以下、MMMは、グリセロール1分子に3分子のMがエステル結合しているトリアシルグリセロールを意味する。MMMの、これら3つの脂肪酸(M)は、すべて同一であってもよいし、異なる脂肪酸を含んでいてもよい。さらに、MMMは、複数の異なる化合物の混合物であってもよい。このような混合物の例として、トリオクタノイルグリセロールとトリデカノイルグリセロールとの混合物を挙げることができる。MMMの炭素数6〜10の構成脂肪酸は、直鎖の飽和脂肪酸であることが好ましい。被覆用油脂組成物に含まれる油脂中のMMMの含有量は、好ましくは0.08〜8質量%であり、より好ましくは0.08〜4質量%であり、さらに好ましくは0.15〜3質量%であり、最も好ましくは0.3〜2質量%である。被覆用油脂組成物に含まれる油脂中のMMMの含有量が上記範囲内にあると、コーティング適性が良好である。

上記MMMは、MMMが有する構成脂肪酸全量のうち、炭素数6の脂肪酸が好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。さらに、上記MMMは、MMMが有する構成脂肪酸全量のうち、炭素数10の脂肪酸が好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20〜100質量%であり、最も好ましくは40〜80質量%である。

本発明の被覆用油脂組成物の油脂中に任意成分として含まれる上記MMMは、従来公知の方法を用いて製造できる。例えば、炭素数6〜10の脂肪酸とグリセロールとを、120〜180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。この縮合反応は、減圧下で行うのが好ましい。上記縮合反応には、触媒を用いることができる。しかし、無触媒下で、上記縮合反応を行うことが好ましい。

本発明の被覆用油脂組成物の油脂中に含まれる、L2MとLM2とを合計で50質量%以上有する上記油脂Aは、従来公知の方法を用いて製造できる。すなわち、油脂Aは、構成脂肪酸全量のうち、炭素数6〜10の構成脂肪酸が20〜65質量%を占め、炭素数16〜24の飽和の構成脂肪酸が35〜80質量%を占めるエステル交換油脂であってもよい。もしくは、当該エステル交換油脂の分別油脂であってもよい。より具体的には、例えば、20〜65質量部(より好ましくは25〜55質量部)のMMMと、35〜80質量部(より好ましくは45〜75質量部)のヨウ素価5以下かつ構成脂肪酸として炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が90質量%以上の油脂(例えば、菜種油、大豆油、パーム油などを原料とする、極度硬化油)とを混合し、その後エステル交換した油脂であってもよい。必要に応じて当該エステル交換した油脂を分別した分別油脂でもよい。また、20〜65質量部(より好ましくは25〜55質量部)のMMMと、35〜80質量部(より好ましくは45〜75質量部)の構成脂肪酸として炭素数16〜24の脂肪酸の含有量が90質量%以上の油脂(例えば、菜種油、大豆油、パーム油など)とを混合し、エステル交換した後、極度硬化させた油脂であってもよい。当該極度硬化した油脂を、必要に応じて分別した油脂でもよい。

上記油脂Aの製造に係る、硬化(水素添加)反応およびエステル交換反応は、従来公知の方法で行うことができる。エステル交換反応は、ナトリウムメチラートなどの合成触媒を使用した化学的エステル交換、ならびに、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。分別は、従来公知の、ドライ分別(自然分別)、乳化分別(界面活性剤分別)、ならびに、溶剤分別などの通常の方法により行うことができる。また、上記油脂Aの製造に係る、エステル交換油脂は、上記組成の、炭素数6〜10の構成脂肪酸および炭素数16〜24の飽和構成脂肪酸を有するエステル合成油脂であってもよい。このエステル合成油脂は、例えば、上述のMMMの合成と同様に、従来公知の方法で製造できる。

本発明の被覆用油脂組成物は、その油脂中に、L2UとLU2を合計で10質量%以上含有する。以下、U、L2UおよびLU2は、次を意味する。Uは、炭素数16〜24の不飽和脂肪酸である。Uは、好ましくは炭素数16〜20の不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数16〜18の不飽和脂肪酸である。Uは、好ましくは直鎖不飽和脂肪酸である。L2Uは、グリセロール1分子に2分子のLと1分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロールである。LU2は、グリセロール1分子に1分子のLと2分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロールである。L2UとLU2は、被覆用油脂組成物に好ましい食感と口溶けを与える。しかし、被覆用油脂組成物の油脂に占めるL2UとLU2の合計含有量が高くなると、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物はひび割れし易くなる。従って、被覆用油脂組成物に含まれる油脂中の、L2UとLU2の合計含有量(以下、L2U+L2Uとも表す)は、好ましくは20〜90質量%であり、より好ましくは25〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%である。

本発明の被覆用油脂組成物に含まれる油脂が、上記L2UとLU2を含有するように、被覆用油脂組成物に含まれる油脂として、L2UとLU2を豊富に含む油脂(40質量%以上、好ましくは60質量%以上のL2U+LU2を含む油脂)を使用することが好ましい。L2UとLU2を豊富に含む油脂(以下、L2U+LU2油脂とも表す)の例として、ココアバター、パーム油、シア脂、サル脂、アランブラッキア脂、モーラー脂、イリッペ脂、マンゴー核油、ラードおよび脂、ならびに、それらの分別油などが挙げられる。また、すでに知られているように、パルミチン酸、ステアリン酸、あるいは、それらの低級アルコールエステルと、ハイオレイックヒマワリ油などの高オレイン酸油脂との間で、1,3位選択性リパーゼ製剤を用いて、エステル交換反応をさせた後、必要に応じて分別することにより得られる油脂を使用してもよい。また、油脂を構成する脂肪酸の90質量%以上が炭素数16以上である非ラウリン系油脂のエステル交換油脂、もしくは、その分別油であってもよい。本発明においては、これらのL2U+LU2油脂を1種以上使用してもよい。

また、上記L2U+LU2油脂としては、特に、パーム系油脂を使用してもよい。ここでパーム系油脂とは、パーム油由来の油脂であり、パーム油、パーム油の分別油およびそれらの加工油(硬化、エステル交換および分別のうち1種以上の処理がなされたもの)が例示できる。より具体的には、1段分別油であるパームオレイン、パームステアリン、パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)およびパームミッドフラクション、パームステアリンの2段分別油であるパームオレイン(ソフトパーム)およびパームステアリン(ハードステアリン)などが例示できる。また、それらの1種以上とパーム系油脂以外の油脂との混合油を原料油としたエステル交換油や硬化油を例示できる。

上記L2U+LU2油脂は、本発明の被覆用油脂組成物の油脂中に、20質量%以上含有されることが好ましい。本発明の被覆用油脂組成物の油脂に占める、上記L2U+LU2油脂の含有量は、好ましくは25〜90質量%であり、より好ましくは25〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%である。特に、L2U+LU2油脂としてココアバターが使用される場合、本発明の被覆用油脂組成物の油脂に占めるココアバターの含有量は、好ましくは0.5〜50質量%であり、より好ましくは3〜43質量%であり、さらに好ましくは4〜40質量%である。被覆用油脂組成物の油脂に占める、L2U+LU2油脂の含有量およびココアバターの含有量が上記範囲内にあると、油脂中にココアバターを豊富に含有する場合でも、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物はひび割れし難い。

本発明の被覆用油脂組成物は、その油脂に占める、L2UとLU2の合計含有量(L2U+LU2)に対する油脂Aの含有量の質量比(以下、油脂A/(L2U+LU2)とも表す)が0.01〜3.0であることが好ましい。油脂A/(L2U+LU2)は、より好ましくは0.03〜2.0であり、さらに好ましくは0.05〜1.5である。油脂A/(L2U+LU2)が上記範囲内にあると、油脂中にL2U+LU2油脂を豊富に含有する場合でも、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物はひび割れし難い。

本発明の被覆用油脂組成物は、その油脂に占める油脂Aの含有量が0.1〜60質量%であり、その油脂中に、L2UとLU2を合計で10質量%以上含有する限り、一般に食用に供される油脂を含んでもよい。一般に食用に供される油脂としては、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米油、ゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、落花生油、亜麻仁油、ヤシ油、パーム核油および乳脂肪などの油脂、これら油脂を、混合、分別、水素添加、エステル交換等から選ばれる一種もしくは二種以上の加工を行った油脂などが挙げられる。

本発明の被覆用油脂組成物は、その油脂に占める、U3の含有量が49質量%以下であることが好ましい。以下、U3は、グリセロール1分子に3分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロールである。本発明の被覆用油脂組成物の油脂に占めるU3の含有量は、より好ましくは0〜45質量%であり、さらに好ましくは0〜35質量%である。U3の含有量が上記範囲内にあると、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物の乾きが速い。

本発明の被覆用油脂組成物は、その油脂に占める、ラウリン系油脂の含有量が45質量%以下であることが好ましい。本発明の被覆用油脂組成物の油脂に占めるラウリン系油脂の含有量は、より好ましくは0〜40質量%であり、さらに好ましくは5〜35質量%である。ラウリン系油脂の含有量が上記範囲内にあると、油脂中にL2UとLU2を含んでも、食品にコーティングされた被覆用油脂組成物はひび割れし難い。

本発明の被覆用油脂組成物は、油脂以外に、その用途に応じてその他の成分を含有してもよい。その他の成分として利用できるものとしては、例えば、周知のチョコレートの成分であるカカオ分(カカオマス、ココアパウダーなど)、乳製品(全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー蛋白、粉末チーズなど)、甘味類(砂糖、乳糖、キシリトール、エリスリトールなど)の他、公知の食品素材(例えば、澱粉、デキストリン、大豆蛋白、ナッツ類など)や、呈味成分(香料、香辛料等)、乳化剤、着色料などを挙げることができる。本発明の被覆用油脂組成物は、その油脂含有量が、好ましくは30〜100質量%であり、より好ましくは40〜100質量%であり、最も好ましくは50〜100質量%である。

本発明の被覆用油脂組成物に含まれる油脂は、配合される油脂以外に、原料から由来する油脂も含む。例えば、一般的に、カカオマス中の油脂(ココアバター)の含有量は55質量%(含油率0.55)であり、ココアパウダー中の油脂(ココアバター)の含有量は11質量%(含油率0.11)であり、全脂粉乳中の油脂(乳脂)の含有量は25質量%(含油率0.11)である。よって、被覆用油脂組成物の油脂の含有量は、被覆用油脂組成物の各原料の配合量(質量%)に含油率を掛け合わせた値を合計した値となる。

本発明の被覆用油脂組成物は、好ましくはチョコレートである。本発明においてチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではない。本発明のチョコレートは、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、冷却工程等)の一部乃至全部を経て製造されたもののことである。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含む。本発明のチョコレートは、油脂の含有量が好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは35〜65質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。

本発明のチョコレートは、油脂以外に、好ましくは糖類を含有する。糖類としては、例えば、ショ糖(砂糖および粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、およびデキストリンなどを使用できる。本発明のチョコレート中の糖類の含有量は、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜55質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。

本発明のチョコレートには、油脂および糖類以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用できる。具体的には、例えば、全脂粉乳および脱脂粉乳等の乳製品、カカオマスおよびココアパウダー等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、およびコーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、乳化剤、酸化防止剤、着色料、ならびに香料などを使用できる。

本発明の被覆用油脂組成物ないしチョコレートの用途としては、冷蔵および冷凍食品へのコーティングが挙げられる。具体的には、アイスクリーム類(アイスクリーム、ラクトアイス等)、氷菓類(シャーベット等)へのコーティングが挙げられる。また、アイスクリーム類の水分がコーンカップやモナカの内面に移行することを防ぐ吸湿防止のための内面コーティングや、冷凍ケーキ、冷凍パイ等の冷凍保存される焼き菓子へのコーティングが挙げられる。なお、本発明におけるコーティングは、食品に部分的にコーティングされる態様を含む。また、サンド、トッピング、分散などの態様を含む。

本発明の被覆用油脂組成物の調製方法としては、油脂以外の固形分を含まない場合は、油脂を加熱融解させ、必要に応じて乳化剤等を添加調合することにより調製できる。チョコレートのように油脂以外の固形分を含有するものは、例えばチョコレート製造の常法に従い、原料を混合、ロール掛け、コンチングすることにより調製できる。

本発明の被覆用油脂組成物の使用方法としては、コーティングの対象となる食品を、融解液状とした被覆用油脂組成物に浸漬(どぶ漬け)する態様が挙げられる。もしくは、コーティングの対象となる食品に、融解液状とした被覆用油脂組成物を上掛け、塗布または噴霧する、などの方法にてコーティングする態様が挙げられる。

かくして、本発明の被覆用油脂組成物でコーティングされることにより、流通・保存時に被覆用油脂組成物のひび割れが生じにくく、食感、口溶けにすぐれた食品が得られる。また、高水分と低水分の素材を同時に含む食品において、本発明の被覆用油脂組成物を使用することにより、水分移行防止に役立つ。本発明の被覆用油脂組成物は、特に、アイスクリーム類、エクレアなどの冷凍ないし冷蔵食品にコーティングされる場合、その効果が顕著である。

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、これらの例示により本発明は限定されない。

〔分析方法〕 油脂のMMM含有量、L2M含有量、LM2含有量、L2U含有量、LU2含有量およびU3含有量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993))に準じて測定した。

〔試験用油脂〕 試験用として以下の油脂を使用した。 MMM−1:構成脂肪酸がカプリル酸とカプリン酸であり、その質量比が75:25であるMMMを合成し、MMM−1とした。 MMM−2:構成脂肪酸がカプリル酸とカプリン酸であり、その質量比が3:7であるMMMを合成し、MMM−2とした。 油脂A−1:86質量部の菜種油と14質量部のMMM−1とを混合した。その後、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換して、エステル交換油脂を得た。次いで、エステル交換油脂を極度硬化し、その後溶剤分別した。得られた油脂を油脂A−1とした。油脂A−1は、L2M+LM2が95.4質量%であり、L2M/LM2が4.1である。 油脂A−2:50質量部の菜種油の極度硬化油と50質量部のMMM−2とを混合した。その後、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換して、エステル交換油脂を得た。得られた油脂を油脂A−2とした。油脂A−2は、MMMの含有量が19.9質量%、L2M+LM2が74.6質量%であり、L2M/LM2が0.7である。 L2U+LU2油脂−1:ココアバター(L2U+LU2が96.6質量%)をL2U+LU2油脂−1とした。 L2U+LU2油脂−2:パームオレイン(L2U+LU2が90.6質量%)をL2U+LU2油脂−2とした。 植物油脂−1:ヤシ油(U3含有量が0質量%)を植物油脂−1とした。 植物油脂−2:菜種油(U3含有量が78.3質量%)を植物油脂−2とした。

〔チョコレートの調製1〕 表1〜4の配合に従って、比較例1〜8および実施例1〜12のアイスコーティングチョコレートを、常法に従って、混合、微粒化、精練した。精錬後の融液状態にある各チョコレートを35℃に保持し、−20℃に保存した直径90mmのシャーレに、7gずつ注入した。注入したチョコレートの、乾きの速さについて評価し、さらにこのようにして調製したチョコレートを−20℃で7日間保存して、応を加えたときのひび割れの程度、風味、食感および口溶けを評価した。評価は、5名の専門パネラーにより以下の基準にしたがって総合的に行なわれた(◎および○が合格である)。評価結果は表1〜4に示される。なお、チョコレートをシャーレで固める本評価方法は、実際の冷菓へコーティングするよりも厳しい条件での評価となる。

〔評価項目および基準〕 (乾きの速さ) ◎:乾きが速く、非常に良好 ○:乾きが比較的速く良好 △:ふつう ×:乾きが遅く、不良 (保存後のひび割れ) ◎:ひび割れがなく、非常に良好 ○:ひび割れがなく、良好 △:ややひび割れがある ×:大きく割れがあり、不良 (風味) ◎:チョコレート風味が豊かで、非常に良好 ○:チョコレート風味が比較的豊かで、良好 △:ふつう ×:チョコレート風味に乏しく、不良 (食感(歯触り)) ◎:適度なもろさがあり、非常に良好 ○:比較的弱いもろさがあり、良好 △:ふつう ×:べたつきがあり、不良 (口溶け) ◎:すみやかな口溶け感があり、非常に良好 ○:比較的すみやかな口溶け感があり、良好 △:ふつう ×:油性感が強く、不良

〔チョコレートの調製2〕 上記、比較例1と実施例1の融液状態にある各チョコレートを35℃に保持し、品温が−20℃の棒状のラクトアイスを浸漬して、チョコレートをコーティングした。比較例1のアイスコーティングチョコレートは、食するとき、著しく剥がれ落ち、食べにくかった。一方、実施例1のアイスコーティングチョコレートは、パリッとした食感ながら、食べる際に剥がれ落ちはなかった。

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