Anti-inflammatory factor, method of isolation, and use

申请号 JP2005261108 申请日 2005-09-08 公开(公告)号 JP2006036785A 公开(公告)日 2006-02-09
申请人 Stolle Milk Biologics Inc; ストール、ミルク、バイオロジクス、インコーポレーテッドStolle Milk Biologics, Inc.; 发明人 BECK LEE R;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide an anti-inflammatory factor separated from milk and being capable of removing adhering neutrophils from endothelial cells, of preventing cells from emigrating from a vasculature, and of suppressing the response of lymphocytes to foreign antigens, to provide a method for producing the factor, and to provide a method for using the factor in the treatment of inflammations. SOLUTION: The anti-inflammatory factor is isolated from milk by a specified means such as a filtration, ion-exchange chromatography, gel filtration, or affinity chromatography. COPYRIGHT: (C)2006,JPO&NCIPI
权利要求
  • 哺乳類に存在するCD18細胞表面抗原と他の分子との相互作用を防止するための薬剤であって、ミルク抗炎症因子を含有する組成物を含むことを特徴とする、抗炎症剤。
  • 前記組成物が以下に記載の組成物である、請求の範囲第1項に記載の薬剤。
    抗炎症因子を含んでなり、この抗炎症因子がマウス好中球の移出抑制分析で分析した10,000ダルトンの脱脂乳濾液中の前記因子と比較して少なくとも約55,000倍以上精製されている抗炎症組成物であって、
    a) ミルク産生動物のミルクから脂肪を除去して脱脂乳溶液を生産し、
    b) 段階aからの前記脱脂乳溶液をフィルターを通して濾過して分子量が<10,000の脱脂乳濾液を生産し、ここで前記フィルターは約10,000ダルトンを上回る分子量の分子を保持し、
    c) 段階bで生産された前記脱脂乳濾液をイオン交換クロマトグラフィによって分画して、前記因子の濃度を高めたイオン交換画分を生産し、
    d) 前記の濃度を高めたイオン交換画分から前記因子をゲル濾過クロマトグラフィによって精製して、前記因子の濃度を更に高めたゲル濾過画分を生産し、
    e) 前記の濃度を高めたゲル濾過画分から前記因子を、同一平面上のシスヒドロキシル基に対して親和性を有する媒質を用いるアフィニティークロマトグラフィによって精製して、マウス好中球の移出抑制分析で分析した段階bの前記脱脂乳濾液中の前記因子と比較して55,000倍以上精製された前記抗炎症因子を含む組成物を生産する、
    工程によって生産されることを特徴とする組成物。
  • 前記組成物が、
    (i) ミルク産生動物のミルクから脂肪を除去して脱脂乳を生産し、
    (ii) 前記脱脂乳を低温殺菌し、
    (iii) 前記の低温殺菌した脱脂乳からカゼインを除去してホエーを生産し、
    (iv) 前記ホエーから分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を除去して分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を含まない組成物を生産し、
    (v) 段階(iv)の前記組成物のイオン強度を減少させて、抗炎症活性を有する凝集体を生産させ、ここで前記凝集体の分子量は約5,000ダルトンを上回り、
    (vi) 段階(v) の前記組成物から分子量が約5,000ダルトン未満の高分子を除去して、分子量が約5,000ダルトン未満の高分子を含まない組成物を生産し、
    (vii) 段階(vi)の前記組成物を収集する、
    工程によって製造される、請求の範囲第1項に記載の薬剤。
  • 静脈系から細胞の移出を防止するための薬剤であって、ミルク抗炎症因子を含有する組成物を含むことを特徴とする、薬剤。
  • 前記細胞が白血球である、請求の範囲第4項に記載の薬剤。
  • 前記細胞が好中球である、請求の範囲第4項に記載の薬剤。
  • 前記組成物が、
    (i) ミルク産生動物のミルクから脂肪を除去して脱脂乳を生産し、
    (ii) 前記脱脂乳を低温殺菌し、
    (iii) 前記の低温殺菌した脱脂乳からカゼインを除去してホエーを生産し、
    (iv) 前記ホエーから分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を除去して分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を含まない組成物を生産し、
    (v) 段階(iv)の前記組成物のイオン強度を減少させて、抗炎症活性を有する凝集体を生産させ、ここで前記凝集体の分子量は約5,000ダルトンを上回り、
    (vi) 段階(v) の前記組成物から分子量が約5,000ダルトン未満の高分子を除去して、分子量が約5,000ダルトン未満の高分子を含まない組成物を生産し、
    (vii) 段階(vi)の前記組成物を収集する、
    工程によって製造される、請求の範囲第4項〜第6項のいずれか1項に記載の薬剤。
  • 前記組成物がミルク抗炎症因子を含有し、この抗炎症因子がマウス好中球の移出抑制分析で分析した10,000ダルトンの脱脂乳濾液中の前記因子と比較して少なくとも約55,000倍以上精製されており、上記組成物が以下の工程によって生産されることを特徴とする、請求の範囲第4項〜第6項のいずれか1項に記載の薬剤。
    (a) ミルク産生動物のミルクから脂肪を除去して脱脂乳溶液を生産し、
    (b) 段階aからの前記脱脂乳溶液をフィルターを通して濾過して分子量が<10,000の脱脂乳濾液を生産し、ここで前記フィルターは約10,000ダルトンを上回る分子量の分子を保持し、
    (c) 段階bで生産された前記脱脂乳濾液をイオン交換クロマトグラフィによって分画して、前記因子の濃度を高めたイオン交換画分を生産し、
    (d) 前記の濃度を高めたイオン交換画分から前記因子をゲル濾過クロマトグラフィによって精製して、前記因子の濃度を更に高めたゲル濾過画分を生産し、
    (e) 前記の濃度を高めたゲル濾過画分から前記因子を、同一平面上のシスヒドロキシル基に対して親和性を有する媒質を用いるアフィニティークロマトグラフィによって精製して、マウス好中球の移出抑制分析で分析した段階bの前記脱脂乳濾液中の前記因子と比較して55,000倍以上精製された前記抗炎症因子を含む組成物を生産する。
  • 異種抗原に対する宿主哺乳類のリンパ球のマイトジェン反応を抑制するための抗炎症剤であって、
    ミルク抗炎症因子を含有する組成物を含むことを特徴とする、薬剤。
  • 前記抗原が宿主の細胞以外の細胞の表面上にある、請求の範囲第9項に記載の薬剤。
  • 前記細胞が白血球である、請求の範囲第10項に記載の薬剤。
  • 前記細胞がリンパ球である、請求の範囲第10項に記載の薬剤。
  • 前記組成物が、
    (i) ミルク産生動物のミルクから脂肪を除去して脱脂乳を生産し、
    (ii) 前記脱脂乳を低温殺菌し、
    (iii) 前記の低温殺菌した脱脂乳からカゼインを除去してホエーを生産し、
    (iv) 前記ホエーから分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を除去して分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を含まない組成物を生産し、
    (v) 段階(iv)の前記組成物のイオン強度を減少させて、抗炎症活性を有する凝集体を生産させ、ここで前記凝集体の分子量は約5,000ダルトンを上回り、
    (vi) 段階(v) の前記組成物から分子量が約5,000ダルトン未満の高分子を除去して、分子量が約5,000ダルトン未満の高分子を含まない組成物を生産し、
    (vii) 段階(vi)の前記組成物を収集する、
    工程によって製造される、請求の範囲第9項〜第12項のいずれか1項に記載の薬剤。
  • 前記組成物がミルク抗炎症因子を含有し、この抗炎症因子がマウス好中球の移出抑制分析で分析した10,000ダルトンの脱脂乳濾液中の前記因子と比較して少なくとも約55,000倍以上精製されており、上記組成物が以下の工程によって生産されることを特徴とする、請求の範囲第9項〜第12項のいずれか1項に記載の薬剤。
    (a) ミルク産生動物のミルクから脂肪を除去して脱脂乳溶液を生産し、
    (b) 段階aからの前記脱脂乳溶液をフィルターを通して濾過して分子量が<10,000の脱脂乳濾液を生産し、ここで前記フィルターは約10,000ダルトンを上回る分子量の分子を保持し、
    (c) 段階bで生産された前記脱脂乳濾液をイオン交換クロマトグラフィによって分画して、前記因子の濃度を高めたイオン交換画分を生産し、
    (d) 前記の濃度を高めたイオン交換画分から前記因子をゲル濾過クロマトグラフィによって精製して、前記因子の濃度を更に高めたゲル濾過画分を生産し、
    (e) 前記の濃度を高めたゲル濾過画分から前記因子を、同一平面上のシスヒドロキシル基に対して親和性を有する媒質を用いるアフィニティークロマトグラフィによって精製して、マウス好中球の移出抑制分析で分析した段階bの前記脱脂乳濾液中の前記因子と比較して55,000倍以上精製された前記抗炎症因子を含む組成物を生産する。
  • 说明书全文

    本発明は、抗炎症因子、実質的に純粋な形態でのその製造法、および炎症の治療におけるその使用法に関する。
    本出願は、1982年6月3日出願の米国特許出願連続番号第384,625号の一部継続出願(現在は出願放棄)でありかつ1983年10月27日出願の米国特許出願連続番号第546,162号(現在は米国特許第4,636,384号)および1983年2月1日出願の米国特許出願連続番号第576,001号(現在は出願放棄)の出願記録継続出願である1986年9月17日出願の米国特許出願連続番号第910,297号(現在は米国特許第4,919,929号)の分割出願である1987年1月9日出願の米国特許出願連続番号第001,848号(現在は米国特許第4,897,265号)の一部継続出願である1988年4月4日出願の米国特許出願連続番号第177,223号(現在は米国特許第4,956,349号)の一部継続出願である1990年9月11日出願の米国特許出願第07/580,382号の一部継続出願であり、前記の全ての特許明細書の内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。

    発明の背景

    発明の分野
    本発明は、抗炎症因子、実質的に純粋な形態でのその製造法、および炎症の治療におけるその使用法に関する。

    背景技術の説明
    炎症は、Dorland´s Medical Dictionaryに定義されているように、「組織の損傷または破壊によって引き起こされ、有害な薬剤および損傷を受けた組織を両方共破壊し、効を弱めまたは防御する働きをする局在化された防御反応」である。 これは、微小血管の穿孔、血液成分の間隙への漏洩、および炎症を引き起こした組織への白血球の移行(migration) を特徴とする。 巨視的準では、これは、通常は紅斑、水腫、圧痛および疼痛といった良く見られる臨床的徴候を伴う。 この複合反応の際には、ヒスタミン、5−ヒドロキシトリプタミン、各種の走化性因子、ブラジキニン、ロイコトリエンおよびプロスタグランジンなどの化学的媒介物質が局部的に放出される。 食細胞がその部位に移行して、細胞のリソソーム膜が破壊されて溶解酵素を放出することがある。 これらの場合の全てが、炎症反応に関与することができる。

    慢性関節リューマチ患者の炎症は、抗原(ガンマーグロブリン)と抗体(リューマチ因子)および補体との結合を伴い、白血球を引き付ける走化性因子を局部的に放出させるものと考えられる。 白血球は抗原−抗体および補体の複合体を食作用し、それらのリソソーム中に含まれる多くの酵素も放出する。 次いで、これらのリソソーム酵素によって、軟骨や他の組織が損傷を受け、これにより炎症の程度が増進される。 細胞によって媒介される免疫反応を伴うこともある。 プロスタグランジンも、この過程中に放出される。

    プロスタグランジンは、炎症で生成されると思われ、紅斑を生じ、局所的血流を増加させる。 プロスタグランジンの2つの重要な血管作用、すなわち長時間持続性血管拡張作用、およびノルエピネフリンおよびアンジオテンシンなどの物質の血管収縮作用を抑制する能力は、一般的には他の炎症の媒介物質には見られない。

    多くの炎症の媒介物質によって、後毛細血管および集合小静脈(collecting venules)での血管透過性(漏洩)が増加する。 また、白血球が炎症部位へ移行することは、炎症過程の重要な側面である。

    アルツス反応は、抗原がこの抗原に対する抗体と複合体を形成する皮下部位で免疫複合体を形成することによって生じる炎症反応である。 好中球は、皮下注射部位に生じる免疫グロブリン複合体のFc部に特徴的に結合し、消化酵素を放出して、目に見える急性の炎症を引き起こす。 従って、この反応は主として好中球によって媒介され、この反応を発達させる薬剤はこれらの細胞に対する効果を介して発達させるのである。

    好中球が血管から炎症部位へ移行するのを薬剤が妨害する幾つかの経路がある。 一つの考えられる経路は、辺縁趨向、すなわち炎症性細胞の血管壁の内皮細胞ライニングへの可逆的「付着」、の抑制である。 正常な状態では、好中球の約50%は可逆的に付着するが、急性の炎症反応の際には、付着はずっと強くなり、好中球の移行の過程における重要な段階となる。 プロスタグランジンは走化性反応に直接関与しているとは思われないが、アラキドン酸の代謝のもう一つの生成物である、ロイコトリエンは極めて強力な走化性物質である。

    抗炎症反応は、前記に定義された炎症を特徴とする反応である。 炎症反応により、疼痛および機能喪失といった、様々な疾患および傷害に関連している肉体的不快の多くが引き起こされるということは、医療技術に習熟した者にとっては周知である。 従って、普通に行なわれている治療法は、炎症反応を中和する作用を有する薬剤を投与することである。 これらの特性を有する薬剤は、抗炎症薬として分類されている。 抗炎症薬は、広汎な疾患の治療に用いられ、また同一の薬剤が異なった疾病を治療するのに用いられることがしばしばある。 抗炎症薬は、疾病を治療するためのものではなく、ほとんどの場合症状、すなわち炎症を治療するためのものである。

    抗炎症薬、沈痛薬および解熱薬は、異種の化合物群であって化学的に関連性のないことがしばしばあるが、ある種の治療作用および副作用を共有している。 コルチコステロイドは、抗炎症反応の治療に最も広く用いられている種類の化合物である。 タンパク質分解酵素は、抗炎症作用を有すると考えられているもう一つの種類の化合物である。 直接または間接的に副腎皮質にステロイドを産生させ、分泌させるホルモンは、もう一つの種類の抗炎症性化合物である。 多数の非ホルモン性の抗炎症薬が報告されている。 これらの中で、最も広く用いられているものは、サリチル酸塩である。 アセチルサリチル酸またはアスピリンは、最も広く処方される鎮痛−解熱および抗炎症薬である。 ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬の例は、Physician´s Desk Reference,1987 に記載されている(これらの製剤の指針については207頁および208頁を参照されたい)。

    天然および合成コルチコステロイド製剤は、血圧の上昇、塩および水の保持、およびカリウムおよびカルシウム排泄の増加など多数の重大な副作用を引き起こす。 更に、コルチコステロイドは感染の徴候を隠蔽し、感染性生物の伝染が増進されることがある。 これらのホルモンは妊婦に使用するには安全でないと考えられており、長期間のコルチコステロイド治療では胃の機能亢進および/または消化性潰瘍が見られている。 これらの化合物による治療は真性糖尿病を悪化させ、より高投与量のインシュリンを必要とすることがあり、また精神病性の病気を生じることもある。 ホルモン性の抗炎症薬は内因性のコルチコステロイドの産生を間接的に増加させるが、同様に好ましくない副作用の可能性もある。

    非ホルモン性の抗炎症薬は合成生化学化合物であり、高投与量では毒性を有し、広汎な好ましくない副作用を示すことがある。 例えば、サリチル酸塩は、この種の化合物の中毒症状と見られる重篤な酸−塩基平衡傷害の原因となる。 サリチル酸塩は、直接および間接的に呼吸作用を刺激する。 サリチル酸塩の毒性量を投与すると、中枢性の呼吸麻痺並びに血管運動の低下によって引き起こされる循環虚脱を生じる。 サリチル酸を摂取すると、上胃部の痛み、吐気および嘔吐を生じることがある。 サリチル酸塩によって誘発される胃出血は、良く知られている。 サリチル酸塩は肝臓障害を引き起こし、血液凝固時間が長くなることがある。 従って、アスピリンは、重症の肝臓障害、低プロトロンビン血症、ビタミンK欠乏症または血友病の患者では避けるべきであり、これはサリチル酸塩により血小板の止血が阻害され出血を引き起こすことがあるからである。 サリチル酸塩中毒は良く見られることであり、米国では毎年10,000件を越す重症のサリチル酸塩中毒が見られ、それらの幾つかは致命的な物であり、多くは小児で見られる。 Goodman およびGilman, The Pahrmacological Basis of Therapeutics, 7th Ed., 1985を参照されたい。 従って、多数の抗炎症薬が現在利用されているが、副作用や好ましくない反応のない安全で有効な抗炎症性生成物が必要とされている。

    抗炎症作用を有する乳製品のような天然食品を得ることができれば、投与が容易で利用し易く安全な治療組成物となろう。

    従来技術では、多様な治療効果を有するミルクを生産することが知られている。 例えば、Beckは虫歯抑制作用を有するStreptococcus mutansに対する抗体を含むミルクを開示している(米国特許第4,324,782号)。 このミルクは、ウシをS. mutans で2段階で免疫して、そこから治療用ミルクを得ることによって得られる。

    Stolleらは、動物における喫煙に伴う血管障害または障害の治療法であって、高免疫状態に保持されたウシから採取したミルクを動物に投与することからなる方法を開示している(米国特許第4,636,384号)。 Beckは、動物の炎症の治療法であって、抗炎症性因子を産生する状態に保持されたウシから採取された抗炎症作用量のミルクを動物に投与することからなる方法を開示している(米国特許第4,284,623号)。 Heinbachは、米国特許第3,128,230号で、ウシに抗原性混合物を接種することによるアルファ、ベーターおよびガンマー成分のグロブリンを含むミルクを報告している。 Petersonら(米国特許第3,376,198号)、Holm(米国特許出願(公告済み)連続番号第628,987号)、Tunnahら(英国特許第1,211,876号)およびBiokema SA(英国特許第1,442,283号)も、抗体を含むミルクを報告している。

    しかしながら、上記文献では、所望な治療効果を生じる治療用ミルクの成分または複数の成分の正体は全く明かされていない。 例えば、Beckの米国特許第4,284,623号では、治療手段として用いられる乳製品は流動性の全乳、流動性の脱脂ホエーまたは全乳粉末からなっている。 これらの乳製品はそれぞれ抗炎症特性を有するが、実際に治療効果を示す因子または複数の因子は単離も同定もされていないのである。

    発明の概要
    本発明は、ミルクに含まれる抗炎症性因子、およびミルクに含まれる抗炎症性因子の使用に関する様々な方法に関する。 具体的には、本発明は、ミルクから脂肪を除去し、ミルクを濾過して分子量が約10,000ダルトンを上回る分子を除去し、イオン交換により低分子量の分子を含む濾液を分画し、ゲル濾過により因子中のイオン交換画分を更に濃縮しかつ同一平面の隣接するシスヒドロキシル基に対する親和性を有するクロマトグラフィ媒質を用いてアフィニティクロマトグラフィによってゲル濾過画分を更に濃縮することによってミルクから産生される抗炎症性因子に関する。

    本発明は、ミルクの抗炎症因子を用いて好中球が小静脈の内皮に付着するのを防止しまたは小静脈壁を覆っている内皮細胞へ既に付着している好中球を分離させる方法にも関する。 この方法では、因子は炎症反応に伴う組織の損傷を軽減するのに用いられる。

    本発明は、ミルクの抗炎症因子を用いてCD18細胞表面抗原と他の分子との相互作用を防止する方法にも関する。 このような相互作用は細胞が血管系から出て行くのに必要であり、炎症反応の際に動物体内でそのような移出が起きると組織の損傷が増加することになることが知られている。 CD18抗原は、宿主器管の異種抗原に対する免疫学的反応において重要であることも知られている。

    本発明は、哺乳類の抗炎症因子を用いて、細胞が血管系から移出(emigration)するのを防止しかつリンパ球の異種抗原に対するマイトジェン性反応を抑制することも包含する。

    好ましい態様の詳細な説明

    本発明は、ミルクからの抗炎症因子を単離して、精製し、この因子を抗炎症性障害を治療する目的で動物に投与することを含むものである。 特に断らない限り、下記の定義が適用される。

    「ミルクの抗炎症因子」という用語は、高免疫乳または通常の(normal)乳から得られる因子を表す。 「実質的に純粋なミルクの抗炎症因子」という用語は、本発明の目的では、高分子量物質(>10,000ダルトン)を除去して低分子量の負に帯電した種をイオン交換クロマトグラフィによって単離した後、HPLCクロマトグラフィで単一の主要な対称ピークとして溶出する抗炎症因子を表す。 通常の乳および高免疫乳はいずれも本明細書に記載の方法によって加工して、抗炎症因子を得ることができる。

    「高免疫ミルク」という用語は、本発明の目的においては高免疫状態に保持されたミルク産生動物から得られるミルクを表し、高免疫化についての詳細は下記に更に詳細に記載されている。

    「ホエー」という用語は、本発明の目的においては、クリームを除去したミルクを表す。

    「通常のミルク」という用語は、本発明の目的においては、通常の手段および酪農法によってミルク産生動物から得られるミルクを表す。

    「ミルク産生動物」という用語は、本発明の目的においては、商業的に実現可能な量でミルクを産生する哺乳類、好ましくはウシ、ヒツジおよびヤギ、更に好ましくはウシ属(ウシ科)の酪農用雌ウシ、特にホルスタインなどの高収率のミルクを産生する品種を表す。

    「細菌性抗原」という用語は、本発明の目的においては、熱で殺した細菌の細胞を凍結乾燥した製剤を表す。

    「マイクロカプセルに入れた形態」という用語は、本発明の目的においては、ミルク産生動物に投与する目的で1または2種類以上の細菌性抗原をカプセルに入れるポリマー性微粒子を表す。

    「炎症」という用語は、本発明の目的においては、有害な薬剤および損傷を受けた組織を両方共破壊し、希釈しまたは遮蔽するのに用いることができる組織の損傷または破壊によって誘発される局所化された防御反応であって、疼痛、発熱、赤味、腫脹および機能喪失といった古典的道筋による急性形態を特徴とし、組織学的には小動脈、毛細管および小静脈が拡張し、浸透性および血流が増加し、血漿タンパク質を含む流体が滲出し、白血球が炎症部位へ移出するなどの一連の複雑な現象を含む反応を表す。

    「処理すること(treating)」という用語は、本発明の目的においては、疾患および/または疾患の病因の症状を改善しまたは完全になくすることを表す。

    「投与する」という用語は、本発明の目的においては、被験者を経口、鼻内、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)、または直腸的に物質で処理する方法を表す。

    「動物」という用語は、本発明の目的においては、ヒト、農場動物、家畜、または動物園の動物などの炎症に罹りやすい生物を表す。

    本発明の単離して精製した乳製品によって処理することができる炎症症状の例は、急性および亜急性滑液包炎、急性の非特異性炎、全身性エリテマトーデス、全身性皮膚筋炎、急性リウマチ性心臓炎、天疱瘡、水疱性皮膚炎、疱疹(herpeteformis) 、重症性紅斑、多形剥脱性皮膚炎、肝硬変、季節性の反復性鼻炎、気管支喘息、異所性皮膚炎、血清疾患、膜炎、虹彩炎、散在性ウレイチス(ureitis) 、声帯炎、視神経炎、交感性眼炎、症候性サルコイドーシス、レフラー症候群、ベリリウム症、溶血性貧血、乳腺炎、乳突起炎、接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、急性の痛風性関節炎、および帯状疱疹からなる群から選択される症状である。

    本発明は、部分的には、ウシなどのミルク産生動物を高免疫感作の特殊な状態にするとき、この動物は通常を超えた濃度の極めて有益な抗炎症因子を含むミルクを産生し、この因子はヒトおよび他の動物の炎症の症状を抑制するだけでなく、受容者における炎症性薬の存在を予想した予防薬でもあることを発見したことに基づいている。 「通常を超えた濃度」という用語は、高免疫感作を受けていない動物からのミルクには見られる濃度以上の濃度を表す。 免疫感受性の誘導だけでは、通常のウシをウシの疾患に対する通常の免疫感作中および環境に対する通常の暴露中に様々な抗原に対して感受性になっても、通常の牛のミルクはこれらの通常を超えた濃度を含まないという事実によって示されるように、ミルク中に通常を超えた濃度のMAIFを生じさせるには不十分である。 ミルクが所望な通常を超えた濃度となるのは、特異的な高免疫状態においてだけである。

    この特殊な状態は、最初に免疫感作を行なった後、追加免疫を十分に高い投与量の特異的抗原と共に定期的に投与することによって得ることができる。 好ましい追加免疫の投薬量は、ウシの一次免疫感作を生じるのに必要な投薬量の50%以上とするべきである。 従って、ウシが通常は免疫状態と呼ばれる状態にあっても、それ以下ではこれらの特性がミルクに生じない投薬量の追加免疫の閾値がある。 必要な高免疫状態を得るには、最初の一連の追加免疫の投与の後に高免疫ミルクを試験することが必須であることである。 有益な因子がミルクに含まれないときには、これらの特性がミルクに現れるまで高投与量の追加免疫を更に行なう。

    通常を超えた濃度の抗炎症因子を含む高免疫ミルクを産生させる方法は、1990年9月11日出願の同時係属米国特許出願連続番号第580,382号明細書に開示されており、1989年5月22日出願の米国特許出願連続番号第355,786号明細書(現在は米国特許第5,106,618号である1987年7月2日出願の米国特許出願連続番号第069,139号の出願記録継続出願)および1986年9月17日出願の米国特許出願連続番号第910,297号明細書(現在は米国特許第4,919,929号明細書である1983年2月1日出願の米国特許出願連続番号第576,001号の出願記録継続)にも開示されており、前記特許明細書の内容はいずれもその全体を本明細書に引用される。 簡単に説明すれば、通常を超えた濃度の抗炎症因子を含む高免疫ミルクを産生させる一つの方法は、(1) 抗原の選択、(2) ウシの一次免疫感作、(3) 血清の試験による感受性の誘導の確認、(4) 適当な投与量の追加免疫を用いる高免疫感作、および場合によっては(5) 抗炎症特性に対するミルクの試験、(6) 高免疫ウシからのミルクの収集、および(7) ミルクの加工によるMAIFの単離の各段階を含んでいる。

    第一段階: 任意の抗原または抗原の組み合わせを用いることができる。 これらの抗原は、細菌性、ウイルス性、原生動物性、真菌性、細胞性、またはミルク産生動物の免疫系が反応する任意の他の物質であることができる。 この段階における重要な点は、(複数の)抗原がミルク産生動物において免疫および高免疫状態を誘導するだけでなく、ミルクに通常を超えた濃度の抗炎症因子を産生させることができるものでなければならない。 任意の抗原を用いて、通常を超えた濃度の因子を生産することができる。 一つの好ましいワクチンは、Series 100ワクチンと表され、後述の例1Aに記載されている多価細菌性抗原の混合物である。

    第二段階: (複数の)抗原を、感作を引き起こす任意の方法で投与することができる。 一つの方法では、1×10 〜1×10 20 、好ましくは10 〜10 10 、最も好ましくは2×10 個の加熱殺菌した細菌から得られる抗原からなるワクチンを筋肉内注射によって投与する。 しかしながら、静脈内注射、腹腔内注射、直腸座薬または経口投与などの他の方法を用いることもできる。

    第三段階: ミルク産生動物が抗原に対して感作されているかどうかを決定する必要がある。 感受性を試験するには、免疫学の技術に習熟した者に知られている多くの方法がある(Methods in Immunology and Immuno- chemistry, William, CA and Chase, WM, Academic Press,ニューヨーク、第1〜5巻(1975年))。 好ましい方法は、複数の細菌種を含む多価ワクチンを抗原として用い、ワクチンを作用させる前および後における動物の血清中の凝集抗体の存在について試験することである。 ワクチンで感作した後にミルク抗体が出現すれば、感受性があることを示しており、この時点で第四段階に進むことができる。

    第四段階: この段階は、感作した動物における高免疫状態の誘導および維持を含んでいる。 これは、一次感作を行なうのに用いた同じ多価ワクチンを一定の時間間隔で追加免疫を繰り返し投与することによって行なう。 細菌性の多価抗原については、2週間の追加免疫の間隔が最適である。 しかしながら、動物が高免疫状態から抗原に対して免疫寛容の状態へ通過しないようにする必要がある。

    好ましい態様では、ウシに後記の例1Bで詳細に記載されている方法で製造されるマイクロカプセルに入れたワクチンを一回投与することによって、高免疫感作を行なうことができる。 高免疫感作の制御された放出形態の利点は、抗原に定常的に暴露されることによって動物を高免疫状態のまますることができることである。

    もう一つの態様では、異なる免疫感作法、たとえばマイクロカプセルに入れた液体抗原または一次免疫感作のための筋肉内注射と、マイクロカプセル化の手段による経口投与または非経口投与による追加免疫の投与量とを同時に投与するなどを組み合わせることもできる。 一次免疫感作と高免疫感作との多くの異なる組み合わせが、当業者に知られている。

    第五段階: ミルクの抗炎症活性濃度を試験する必要がある。 これは、高免疫ミルクまたは炎症時にミルクから誘導される生成物の効果を試験する任意の研究法によって行なうことができる。 ラット足の化学薬品によって誘発される炎症は、抗炎症薬の標準的な分析法である。

    第六段階: これは、ミルクの回収および加工を含んでいる。 ミルクは通常の方法で収集することができる。 ミルクを加工して抗炎症因子を単離する方法を、下記に示す。

    抗炎症因子を単離し、精製し、試験するための最も簡単な方法は、下記の段階を含むものである。
    1. 高免疫ミルクを脱脂して、脱脂乳を生産し、
    2. 脱脂乳からカゼインを除去して、ホエーを生産し、
    3. ホエーから、限外濾過によって分子量が約10,000ダルトンを上回る高分子を除去し、
    4. 段階3からの生成物をイオン交換樹脂カラムを用いて分画して、分子量が約10,000ダルトン未満の負に帯電した抗炎症因子の種を単離し、
    5. 段階4からの負に帯電した種を分子篩クロマトグラフィによって分離し、
    6. 段階5からの抗炎症因子製剤を生物学的に分析する。

    もう一つの好ましい態様では、生物学的活性を有する分子篩クロマトグラフィからの画分を、分子量が約5,000ダルトンを上回る高分子を保持する膜を介して濾過することによって更に精製する。
    7. ミルクの因子の抗炎症作用を、ラットの足にカラゲニンの溶液を注射して引き起こした水腫について試験する。 このラット足試験は、抗炎症薬の標準的な動物試験である。 Winter, CA, Risley, GA, Nuss, AW, "Carrageenan-Induced Edema in the Hind Paw of the Rat as an Assay for Anti-inflammatory Drugs," Proc. Soc. Exper. Biol. Med., 3:544 (1967) 。 他の様 々な試験法を用いることもできる。 Wetnick, AS, and Sabin, C., "The Effects of Clonixin and Bethaurethasone on Adjuvant-Induced Arthritis and Experimental Allergic Encephalomyelitis in Rats," Jap. J. Pharm. 22:741 (1972) 。 しかしながら、ラット足蹠試験は利用することができる最も簡単で直接的な試験であり、総ての抗炎症薬に対して十分であることが示されている。 この試験は、Beckの米国特許第4,284,623号に詳細に記載されているが、この特許の内容は、ラット足試験を記載している範囲に関して本明細書に引用される。 簡単に説明すれば、この試験は、少量のカラゲニンを成熟した白ラットの足蹠に注射することを含んでいる。 これによって、炎症反応が誘発されることが知られている。 生じる腫脹の程度を定量することができる。 抗炎症因子を含む試料を、ラットに適当な経路、好ましくは腹腔内注射によって投与し、炎症過程の遮断または改善を容量測定法または重量測定法によって定量する。

    要約すれば、高免疫感作したミルクを脱脂する工程の後、カゼインを除去し、10,000ダルトンを上回る高分子を除去し、イオン交換および分子篩クロマトグラフィを続けて行なうことによって、ミルクから抗炎症因子を単離することができる。 抗炎症因子の適当な製剤の生物学的活性を、本明細書に記載の投与量−反応実験を行なうことによって試験することができる。

    本発明の更に好ましい態様では、高免疫感作したミルクに含まれる抗炎症因子を、分子量に基づいて分子を分離することができる膜上での濾過、イオン交換クロマトグラフィ、分子篩クロマトグラフィ、およびアフィニティークロマトグラフィを含む段階を組み合わせて用いて精製する(例15)。

    好ましい第一段階は、前記と同じ方法で生産した高免疫脱脂乳を、分子量が約10,000ダルトンまたはそれより大きい分子を保持する膜を介して濾過することからなっている。 膜を通過した物質(すなわち、濾液または透過液)を集め、次の精製段階で用いる。 このような濾過を行なうための装置および膜は、当該技術分野では周知である。

    濾過に続く好ましい段階は、アニオン交換樹脂上でのイオン交換クロマトグラフィである。 ジエチルアミノエチル基を有する交換体は良好な分離を行なうことが判っているが、他のアニオン交換体も同様に用いることができると思われる。 イオン交換体の固形支持体は高流速を保持することができることが好ましい。 セファロースはこの目的に好適であることが分かっている。

    イオン交換クロマトグラフィの後の好ましい段階は、ゲル濾過クロマトグラフィである。 この段階に用いるカラム充填剤は分子量が10,000ダルトン未満の分子を分画することができるものを選択するべきである。 好ましい充填剤はToyopearl HW−40(Rohm & Haas) であるが、当該技術分野に周知の他の充填剤も同様に用いることができる。 用いることができ、市販されている他の充填剤の例は、Sephadex G−10またはG−25(Pharmacia) などのポリマー性炭水化物を基剤とする充填剤、またはBiogel P−2、P−4、P−6、P−10またはP−30(Bio-Rad) などのポリアクリルアミドを基剤とする充填剤である。

    ゲル濾過クロマトグラフィの後の好ましい段階は、ボロネートアフィニティー支持体上でのアフィニティークロマトグラフィである。 これらの支持体は、シス−ジオール基を有する低分子量化合物を分画する際に有効であることが判っている。 好ましい支持体は、AffiGel 601(Bio-Rad) である。 これは、ポリアクリルアミドゲル濾過支持体Bio−Gel P−6のボロネート誘導体(これもまたBio-Rad から発売されている)である。

    イオン交換、ゲル濾過またはアフィニティークロマトグラフィ段階の後の製剤を保管するのに好ましい様式は、凍結乾燥した粉末としてである。 第一の精製段階で収集された濾液は、使用まで冷蔵保存することができる。 精製によって生じる抗炎症因子の活性は、前記のラット足試験を用いて測定することができる。

    例16に記載の実験の結果は、動物を抗炎症因子の製剤で前処理すると、血小板活性化因子(PAF)によって刺激された好中球の小静脈の輪郭を形成している内皮細胞への付着が減少し、好中球が小静脈から遊走する速さが減少することを示している。 更に、動物をPAFで処理した後この因子の製剤を投与すると、内皮細胞へ付着している好中球の数が減少することが判った。 患者または動物がこれらの効果から利益を得る程度までは、本発明は抗炎症因子の製剤の使用を包含する。 これは、関与している特定の疾病とは無関係に真実である。 同様に、例16のデーターは、抗炎症因子は、細胞表面CD18抗原と直接相互作用し、他の分子がこの糖タンパク質複合体と相互作用することを防止することによって、付着および移出へ影響を与えることを示している。 本発明は、この目的の為の抗炎症因子の製剤の使用も同様に包含する。

    例18に示されるように、抗炎症因子の製剤を動物に投与すると、対移植片宿主反応が抑制されるが、対宿主移植片反応は抑制されず、脾臓重量および脾臓リンパ球の数が増加する。 コンカナバリン Aに対するリンパ球の反応も、製剤によって停止することが判った。 これらのデーターは、抗炎症因子が、組織破壊性の感染性過程の抑制、およびリンパ球の機能を抑制することが望ましい症状で有用であることを示している。

    本発明の組成物は、抗炎症活性を提供する任意の手段によって投与することができる。 例えば、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内または経口で投与することができる。

    経口投与用の固形投与形態としては、カプセル、錠剤、ピル、散剤および顆粒が挙げられる。 このような固形投与形態では、活性化合物をスクロース、ラクトースまたは澱粉などの少なくとも1種類の不活性な希釈剤と混合する。 このような投与形態は、通常の実施形態と同様に、不活性希釈剤以外の追加物質を含むこともできる。 カプセル、錠剤およびピルの場合には、この投与形態は緩衝剤を含むこともできる。 錠剤およびピルは、更に腸溶性コーティングを有するように製造することもできる。

    経口投与用の液状投与形態としては、製薬業界で普通に用いられる不活性希釈剤を含む薬学上許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリクシルが挙げられる。 このような組成物は、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化および懸濁剤、および甘味料などのアジュバントを含むこともできる。

    本発明による非経口投与用の製剤としては、無菌水溶液または非水性溶液、懸濁液またはエマルジョンが挙げられる。 非水性溶媒または賦形剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。

    本発明の組成物中の活性成分の投薬量は変化させることができるが、適当な投与形態が得られるような活性成分の量とする必要がある。 選択された投与形態は、投与経路および処理期間に対する所望な治療効果に依存する。

    投与量および頻度は、副作用の可能性を考慮して患者の年齢および一般的健康状態によって変化する。 投与は、他の薬剤による併用処理および投与薬剤の患者の耐性によっても変化する。

    本発明を一般的な用語について説明し、本発明を幾つかの具体例によって更に説明するが、これらの例は説明の目的だけで本明細書に提供するものであり、特に断らない限り制限をしようとするものではない。

    例1A
    S−100ワクチンの製造
    American Type Culture Collectionから得られた下記の第1表に示すスペクトルの細菌を含む細菌培養物を、培地15mlを用いて再構成し、37℃でインキュベーションした。 良好に成長したならば、細菌懸濁液の約半分を用いて、ブロス1リットルに37℃でインキュベーションした接種物を接種した。 残りの懸濁液を滅菌したグリコール試験管に移して、6ケ月まで−20℃で保存した。

    良好な成長が培養物中に見られた後、懸濁液を20分間遠心分離することによって細菌菌体を回収して、培地を除去した。 得られた細菌のペレットを無菌食塩溶液に再懸濁し、細菌試料を3回遠心分離して、菌体から培地を洗浄した。 3回目の無菌食塩水での洗浄の後、遠心分離で得られた細菌ペレットを2回蒸留した水少量に再懸濁した。

    培地を含まない細菌懸濁液を80℃の水槽中のガラスフラスコに一晩入れることによって、加熱殺菌した。 ブロス培養物の成育力を、加熱殺菌した少量の細菌で試験した。 ブロスに加熱殺菌した細菌を接種し、37℃で5日間インキュベーションし、ワクチンに使用するには細菌が殺されていなければならないので、成長を毎日チェックした。

    加熱殺菌した細菌を、凍結乾燥により乾燥した。 次に、乾燥した細菌を無菌の食塩水溶液と混合して、濃度を2.2×10 個の細菌菌体/ml食塩水(660nmでの光学濃度の読み1.0)とした。

    ウシに、多価液体ワクチンの5ml試料の注射を毎日投与した。 注射したウシの抗体(IgG)タイター濃度を、多価抗原に対するウシ抗体についてのエンザイムイムノアッセイを用いて定期的に測定した。

    例1B
    免疫感作法
    加熱によって殺した細菌を、前記の方法で製造した。 得られた多価抗原試料(S−100)を通常の相分離法によってマイクロカプセルに入れて、多価抗原を含む微小粒子生成物を製造した。 一般的には、抗原を含む成形したマトリックス材料は、生物適合性材料、好ましくは生物分解性または生物浸食性材料のポリマー、好ましくはポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸とのコポリマー、ポリカプロラクトン(polycaptolactone)、コポリオキサレート、コラーゲンなどのタンパク質、グリセロールの脂肪酸エステル、およびセルロースエステルから形成される。 これらのポリマーは当該技術分野で周知であり、例えば米国特許第3,773,919号、米国特許第3,887,699号、米国特許第4,118,470号、および米国特許第4,076,798号に記載されており、前記特許明細書の内容は、本明細書に引用により含まれる。 用いたポリマー性のマトリックス材料は、生物分解性のラクチド−グリコリドコポリマーであった。

    加熱によって殺菌した細菌性抗原を、マトリックス材料、好ましくは直径が1〜500ミクロン、好ましくは10〜250ミクロンの微小球などにカプセル化する。 このカプセル化法は通常のものであり、相分離法、界面反応、および物理的方法がある。 様々なマトリックスと様々な濃度の調和のとれた抗原との組み合わせを用いて、微小粒子から宿主本体への細菌性抗原の放出速度を最適にすることができる。 これらの組み合わせは、過度の実験を行なうことなく当業者が決定することができる。

    この例の微小粒子の直径は、250ミクロン未満であった。 次に、多価抗原22%(16.5mg)を含む微小粒子約750mgを、ビヒクル約3cc(1重量%のTween20および2重量%のカルボキシメチルセルロースの水溶液)に懸濁した。

    小さな群のウシを大きなウシの群から選択した。 これらの無作為に選択したウシの5頭を、コントロールとして選択した。 4頭のウシに、多価抗原を含む微小粒子を筋肉内に注射した。 微小粒子試料は、2.0ミリラッドのガンマー線で殺菌した。 抗体(IgG)タイター濃度を、接種したウシ並びにコントロールウシから得た牛乳の試料から定期的に測定した。

    例2
    高免疫感作したミルクからのMAIF因子の単離
    段階1: ミルク濾液製剤 高免疫感作したウシからの新鮮なミルク20リットルをクリーム分離装置(DeLaval Model 102)を通して、脂肪を除去した。 生成する16リットルの脱脂乳を中空繊維ダイアフィルトレーション(diafiltration) /濃縮装置(Amicon DL−10L)を用いて限外濾過し、高分子量種(10,000ダルトン以上)を除去した。 この濃縮装置は、2個の10,000ダルトンの分子量カットオフカートリッジ(Amicon H 10-43 )を備えている。 脱脂乳を、メートルで80の送出速度、および入口および出口圧がそれぞれ30psiおよび25psiで流した。
    4リットル/時の流速でカートリッジから出てくる濾液(<10,000ダルトン)12リットルを凍結または凍結乾燥して、保存および更に精製を行なった。

    段階2: イオン交換クロマトグラフィ 濾液中のミルクの抗炎症因子を、最初にアニオン交換クロマトグラフィカラムによって単離した。
    この処理法ではDEAE−SephadexCL−6Bゲル(Pharmacia)を用いて5×10cmのガラスカラムに充填し、これを滅菌した2回蒸留水、pH7.0で平衡にした。
    濾液(<10,000)1リットルをカラムに適用して、滅菌した2回蒸留水、pH7.0で160ml/時の流速で溶出した。 10ミリリットル画分を集め、LKB Uvicord 4700吸光光度計で280nmで観察し、光学濃度は連結した記録計(Pharmacia REC−482)でプリントアウトした。 正および中性の電荷を有する抗炎症因子以外の物質は、DEAE−Sephadexゲルに結合しない。 これらは、崩れたピーク(第一のピーク)で溶出する。 負の電荷を有する抗炎症因子は、ゲルに保持される。 この因子を溶出するため、滅菌した生理食塩水、pH7.0を用いて段階的グラディエントによって溶出した。 典型的な曲線を図1に示す。 個々の画分をバイオアッセイしたところ、第二のピークに因子が含まれていることが判った。 第二のピークとその肩を含む画分を用いて、更に精製した。 回収の検討では、乾燥粉末8.8グラムがこの方法によって得られたことを示している。

    段階3: ゲル濾過クロマトグラフィ 段階2から得られた第二のピークは、抗炎症因子および他の負に帯電した分子を含んでいるので、追加の精製段階が必要である。 追加の精製を行なうには、ゲル濾過カラムを用いて分子量に基づいて各種成分を分離するのが好都合である。
    この方法では、Sephadex G−10樹脂(Pharmacia)を2.5×80cmガラスカラムに充填して、滅菌した2回蒸留水、pH7.0で平衡にした。 段階2からの第二画分2グラムを滅菌した2回蒸留水に再溶解し、カラムの最上部に適用した。 カラムを、30ml/時の流速で溶出した。 画分(3.3ml)を集め、254nmおよび280nmで観察し(Pharmacia Duo Optical Unit)、光学濃度は連結した記録計(Pharmacia REC−482)でプリントアウトした。

    典型的には、図2に示されるように溶出曲線には3個のピークが示されていた。 第一および第二のピークは、抗炎症活性を含んでいた。
    第一のピークは、G−10カラム上で形成される凝集体であり、活性因子を含んでいる。
    第二のピークは、非凝集形態の因子を含んでいる。 凝集体の形態(ピーク1)および非凝集形態(ピーク2)はいずれも、ラットによるバイオアッセイでは生物学的に活性である。

    例3
    ミルク抗炎症因子の特性決定
    前記の方法で製造した因子の非凝集形態の分子量は、10,000ダルトン未満であることが判った。 これは、ホエーからの因子の単離における第一段階が分子量が>10,000ダルトンの化合物種を通さない膜を用いる限外濾過によるものであるということから推定された。 この因子は負に帯電していた。 これはミルクの限外濾液をDEAEセルロースイオン交換カラムに適用することによって測定した。 抗炎症活性は、水ではカラムから溶出しなかった。 溶出媒質を塩化ナトリウム(0.9%pH)に代えたところ、数個のピークが溶出した(図1)。 中性および正に帯電した化合物種はイオン交換樹脂に付着せず、負に帯電した化合物種は塩濃度を増加することによって溶出する。 10,000ダルトン未満の分子量の透過液をDEAEカラムに適用すると、中性塩および糖は水で溶出した(ピーク1、図1)。 緩衝液を食塩水に代えたところ、3個の異なるピークが溶出した(ピーク2〜4)。 第二のピークおよびその肩には、ラットによるアッセイで抗炎症生物活性を含んでいた。 従って、因子は負の電荷を有すると結論される。

    この因子のもう一つの化学的特徴は、塩の除去工程中にこれが凝集体を形成することである。 この特性は、<10,000ダルトンの分子量の透過液をSephadexG−10カラムに通し、2回蒸留水で平衡にし、pH7の水で溶出したときに明らかになった(図2)。 3個のピークがG−10カラムから溶出したが、第一のピークは、分子量が10,000ダルトン以上であることを示唆する空隙率で溶出した。 これは予想しなかったことであり、10,000ダルトンより大きな分子はこの試料から限外濾過によって予め除去していたからであった。 第二のピークは、抗炎症因子について予想した位置で溶出した。 第一および第二のピークはいずれもラット足の分析法では抗炎症生物活性を示したが、第三のピークは活性を示さなかった。 第一および第二のピークがいずれも抗炎症生物活性を有することを見出したことは驚くべきことであった。 G−10カラム(段階3)の第一のピークから回収した物質を凍結乾燥し、G−100カラムに適用したところ、分子量が100,000ダルトン以上であることを示唆する空隙率を有する単一ピークが溶出した。 段階3のG−10カラムは塩を除去するが、同時にこれは異なる分子量種を分離する。 従って、G−10カラム上を通過し、塩を除去する際に、抗炎症因子は大きな分子量の凝集体を形成すると結論された。 凝集の程度は、塩濃度によって変化した。

    凝集特性は、抗炎症因子が含まれていることによる抗炎症生物学的活性を有する広汎なスペクトルの様々な分子量種を形成することができるという可能性を示唆している。 この特性を見出したことから、最終生成物の凝集の程度によって様々な生化学的特性の広汎なスペクトルを有するミルクの抗炎症因子を産生する可能性が示唆される。 例えば、大きなまたは小さな分子量の凝集体を用いることによって、長めまたは短めの生物学的半減期を有する処方物を製造することができ、分子量分布は加工中の塩濃度によって制御する。 本明細書に記載のカラムクロマトグラフィ法により、生物学的活性を有する最も小さな分子量の化合物種が得られる(すなわち、段階3のG−10カラムからのピーク2)。 この観察結果は、他の凝集体形成法を用いても示される。 例えば、水で希釈すると、凝集が起こる。 塩、特にカルシウムと結合する化学薬剤によって、凝集体を形成させることができる。 この知見を得たことにより、凝集体を形成し、因子を分離する他の方法は当業者には明らかであろう。

    例4
    生物学的活性のアッセイ
    精製した抗炎症因子の抗炎症作用を、ラットの足蹠にカラゲニンの溶液を注射することによって引き起こした水腫について試験した。 ミルク抗炎症因子製剤の凍結乾燥試料を適当な賦形剤に溶解して、実験ラットの腹腔内に投与した。 次に、カラゲニン1%食塩水溶液を、0.1mlの量でラットのそれぞれの後足蹠に投与した。 注射を行なう前および注射の2.5時間後に、足蹠を厚みゲージで測定した。 結果を第2表および第3表に示す。 これらの表において、MAIFという略号は、前記の実施例1および2に記載の方法を用いて得たミルク抗炎症因子の製剤に関する。

    コントロールおよび高免疫ミルクからの非凝集形態の因子(G−10カラムからのピーク2)では、1mgと0.25mgとの間の投与量でラット足の炎症が減少した(第2表)。 高免疫ミルクおよび通常のミルクは両方共活性を示したが、高免疫材料の方が強かった。 これから、抗炎症因子は高免疫ウシからのミルクに一層高濃度で含まれると結論した。

    DEAEカラムからの第二のピークは、高免疫ミルクまたは通常のミルクのいずれから単離されたときにも活性を示した。 この活性は、高免疫ミルクでの方が実質的に大きい(第3表)。

    凝集形態の因子であるG−10カラムからの第一のピークは、ラット足試験で活性を示した(第2表)。 しかしながら、凝集形態は、同一重量基準では非凝集形態ほど活性は強くない。

    これらの検討から、抗炎症因子はウシのミルクに自然に存在すると結論される。 ウシを免疫感作することによって、ミルク中の因子の濃度は高くなる。 この因子は負に帯電した低分子であり、各種の方法によってミルクから分離することができる。 この因子は、ミルク中には自然には存在しないが、加工中に形成される大分子量凝集体を形成することができる。

    例5
    抗炎症因子の化学分析
    抗炎症因子試料を、化学的に分析した。 この因子は、X線回折法によって測定したところ、構造が結晶性ではない。 MAIF製剤は、炭水化物の組成と一致する元素分析値を与えた。 C、H、Oの比率は、ポリマー性またはオリゴマー性材料と一致し、幾つかのカルビノール基はカルボキシルまで酸化されていた。 塩化物イオンに対して若干過剰量のカルシウム当量数は、部分的にカルボキシレート塩として説明することができる。 残りは、ナトリウムまたはカリウム塩であることができる。 しかしながら、融解挙動、または逆に非融解挙動は、塩様および/または高分子量組成物であることを示唆するものであった。 現状の純度の材料は、可変量のカルシウムとクロリドとの塩、恐らくはCaCl を含むことは明らかである。

    いずれの製剤も有意な量の窒素を含んでおらず、組成物にはペプチド成分を全く含まない。 同様に、有意な窒素がないことから、アミノ糖、および各種の複合脂質などの他の含窒素材料を(複数の)主成分として含むことを除外することができる。

    熱分解マススペクトルから、有意な痕跡量の18個の炭素を有する脂肪酸が認められた。 この事実をNおよびPの痕跡量と考え合わせることにより、製剤に複合脂質が含まれると考えられた。

    赤外吸収分析法では、カルビノールおよびカルボキシレート官能基と一致する吸収が認められた。 紫外、可視および蛍光吸収分析法では、赤外で示された発色団の他には有意な量の発色団を認めなかった。

    化学試験は、オリゴマー性炭水化物と一致しており、カルボニル官能基(アルデヒドまたはケトン)はサブユニット結合に一致している。 オリゴマー性炭水化物は、カルボキシレートへの幾つかの側鎖酸化も含んでいる。 MAIF製剤は、完全にではないが実質的に純粋である。

    例6
    ラット足の水腫試験:経口投与
    ラットのカラゲニンによる足蹠分析法を用いて、イン・ビボでの抗炎症薬としての抗炎症因子の有効性を試験した。 30尾の成熟した白ラットを、1群10尾のラットからなる3群に無作為に分けた。 各群に、高免疫感作した動物からの脱脂乳粉末10mg、非免疫感作動物からの脱脂乳粉末10mgを連続5日間の処理で投与し、または無処理とした(毎日水20mlだけ)。 粉末は、水20mlで経口投与した。 5日目に、それぞれのラットの右足に1%カラゲニンを食塩水に溶解した物0.1mlを注射した。 この処理は、急性炎症(水腫)を起こすことが知られている。 注射から24時間後に、ラットを屠殺し、足を切断して、左(コントロール)および右(水腫状)足の重量を比較した。 この分析の結果を第4表(グラムでの重量で表した)および第3表(コントロール足の平均重量の百分率として表した)に示す。

    カラゲニン注射に対する炎症反応は、非免疫ミルクおよび水コントロール群と比較して、免疫ミルクで処理したラットでは著しく減少した。 副作用またはラットの全般的健康に関する悪影響は全く見られなかった。 これらのデーターから、高免疫感作した動物からの脱脂乳粉末を毎日投与すると、ラットの足蹠にカラゲニンを注射することによって誘発された炎症反応はほぼ完全に防止されたと結論することができる。

    例7
    ラット足水腫の定量試験
    一連の実験を、高免疫ミルク画分について行なった。 これらの実験は、腹腔内に投与したときミルクの抗炎症因子の抗炎症活性が確認され、かつ投与量反応曲線を確立して別の投与経路を検討し、投薬法を検討するように設計され、これにより更に検討を行なう基礎を形成するようにした。

    Stolle Milk Biologics International 製のG−10カラムからのピークIは、特許第4,956,349号公報に記載の方法に従って製造した。 市販のラクトースをプラシーボとして用いた。 アスピリンを正のコントロールとして用いた。 アスピリンは水に溶解し、この分析法で活性であることが知られている200mg/kgの割合で胃管栄養法によって経口投与した。 カッパーカラゲニン(Sigma C−1263)の2%溶液は、最も再現性のある結果を生成することが判っており、従ってこれらの実験で用いた。 足蹠分析法を、滲出液の容積に直接比例してカラゲニンによって誘発される病変部に局在する同位体標識したヒト血清アルブミン( 125 I−HSA)を用いることによって改良した。 足蹠における総放射能カウント数を測定し、これを注射した動物からの既知容積の血漿のカウント数と比較することによって、血漿相当物のマイクロリットル中の水腫を直接測定することができる。 125 I−HSAを、ラット当たり1.0マイクロキューリーの投与量で静脈内に注射した。 雌性のDark Agoutiラットを用いた。 ラットは約12週齢であり、体重は160g〜200gであり、一集団内の同系交配した群から得た。 カラゲニン足蹠試験を行なうため、2%カラゲニン0.1mlを、麻酔ラットのそれぞれ後足蹠に皮下注射した。 この注射の直後に、 125 I−HSA1.0マイクロキューリーを食塩水0.5mlに溶解したものを尾静脈に注射した。 4時間後に、それぞれラットの体重を測定し、血液試料を得て、ラットを安楽死させた。 次に、両後足を切り離し、それぞれの足および200μlの血漿標準物質の放射能レベルを自動ガンマーカウンターで測定した。 これらの測定値から、それぞれの足における水腫の容積を計算し、マイクロリットルで表した。

    実験1:腹腔内投与量反応 図4は、ラクトース(CON)、アスピリンおよび無処理(No R )と比較した場合のMAIFの精製した製剤を腹腔内投与した効果を示す。 総ての処理(ラクトース、アスピリン、MAIF)は、カラゲニンを注射する30分前に投与した。
    カラゲニン注射により、平均250μlの水腫を生じた(No R )。 水腫は、アスピリンおよびMAIF製剤の総ての投薬量によって抑制されたが、ラクトースによっては抑制されなかった。 MAIF製剤で得られ、データーを平均コントロール(無処理)水腫の百分率として表すことによって誘導された腹腔内投与量−反応曲線を、図5に示す。

    実験2:MAIF投与の各種経路の効果 図6は、足蹠水腫に対する、ラクトースおよび精製したMAIFの製剤を経口(ORAL)、筋肉内(IM)、皮下(SUB Q)および静脈内(IV)投与の効果を示している。 正のコントロール(アスピリン)および未処理コントロール(NO R )も、示されている。 これらの製剤を投与した後、カラゲニンを下記の計画に従って作用させる。 アスピリン:経口、30分前;皮下MAIF:1時間前;経口MAIF:24,16および1時間前;筋肉内MAIF:30分前;静脈内MAIF:作用時(同位体も注射した)。
    これらの結果は、それぞれ別個の分析に置いて平均コントロール水腫の百分率として表したところ、あらゆる投与経路による抗炎症因子は水腫の形成を抑制したことを示している。 MAIF製剤40ミリグラムを静脈内投与したところ、カラゲニンに対する炎症反応はほぼ完全に止んだ。 これらの結果は、MAIFの抗炎症活性を示しており、前記の実験1の結果を考慮すれば、様々な投与経路についての有効性の順序は、IV>IP>IM>SUB Q>ORALであることを示している。

    実験3:静脈内および長期経口投与の水腫に対する効果:投与量反応 図7は、ラットの足蹠水腫に対する精製した抗炎症因子の製剤のIVおよび経口投与の効果を示している。 MAIF(40mg/ラット/日)を毎日6日間経口投与し、カラゲニンを作用させる1時間前にも投与した(PO)。 静脈内投与(5、10、20mg)は、カラゲニンを作用させる時間に行なった(IV)。 正のコントロール(アスピリン)および負のコントロール(無処理)も示す。
    図7に示された結果は、MAIF製剤の総ての3種類の投与量では、分析ではアスピリンの活性を上回る抗炎症活性を生じ、長期経口投与では顕著ではあるが限定された活性を生じることを示している。

    従って、検討範囲を広げて、抗炎症因子の静脈内投与量を更に減少した場合の効果を検討した。 ラクトースプラシーボの静脈内投与を、コントロールとして含めた。 これらの検討の結果を、図8に示す。 MAIF製剤2.5および1mgを静脈内投与したところ、アスピリンによって誘発された活性の範囲の抗炎症活性を誘発した。 ラクトースプラシーボ10mgを静脈内投与(10mg PLAC IV)しても、上記範囲の活性は誘発されなかった。

    静脈内投与量−反応曲線は、実験2および3の結果を組み合わせ、これらの結果をそれぞれ別個の分析における平均コントロール水腫(無処理)の百分率として表すことによって得られた。 この曲線を図9に示す。

    定量的なラット足水腫試験から引き出される結論は、下記の通りである。 特許第4,956,349号に記載の方法によって抽出し精製した、カラムG−10からのミルク画分ピーク1は、ラット足水腫モデルで試験したところ、一貫して抗炎症活性を示す。 ラット当たりMAIF製剤4mgの投与量をカラゲニンの注射時に静脈内投与することは、水腫を強烈に抑制するのに十分であり、従って標準として選択し、別の実験で他の製剤をこれと比較するようにした。

    例8
    同一の双性ウシから得た高免疫ミルクの製剤の抗炎症特性
    ミルクの抗炎症活性に対するワクチン接種の効果を、同一の双性ウシから得た各種のミルク画分の生物活性を試験することによって検討した。 特許第4,956,349号に記載の抽出法に基づいて、限外濾過を用いる抽出工程図を考案した。 加工順序は下記の通りであった。
    原料ミルク

    脱脂

    低温滅菌

    レンネット→ |
    | →カゼイン(廃棄)
    ホエー

    限外濾過 →保持物(R

    透過液(P

    希釈1:4

    限外濾過 →透過物(P

    保持物(R

    ミルク試料を、免疫感作した双性ウシ、非免疫感作コントロール双性ウシ、および免疫感作したウシから予め製造しておいた再構成した脱脂乳粉末から製造した。 試料群は、45組の同一の双性ウシからなった。 それぞれの双性組の一頭のウシに、2週間ごとにStolle S100を混合した細菌ワクチン(特許第4,956,349号に記載の)を接種した。 各種画分の生物活性を、前記のラットカラゲニン足蹠分析法を用いて静脈内注射を行なうことによって試験した。

    試験を行なう仮説は、(a) 高免疫感作は前記の抗炎症活性に関与し、(b) MAIFは限外濾過によって商業的規模で抽出することができ、(c) 透過液を希釈すると、抗炎症因子が凝集し、30,000の分子量の限外濾過膜によって保持される、ということであった。

    図10は、ワクチン接種を行っていないコントロール双子のミルクおよび免疫感作したウシからの再構成したミルク粉末から製造した各種の画分の生物活性を試験するように設計された双性群の限外濾過実験の結果を示している。 試験を行なった画分は、下記の通りである。 ピークI、G−10カラム製剤、4ml(OHIO MAIF STD);ワクチン接種していない双子からの最終的保持物R (CONTROL TWIN R );再構成したミルク粉末からの最終的透過液P (RECON S100 P );ワクチン接種していない双子からの透析した最終的保持物R (CON DIALYZED R );再構成したミルク粉末からの透析した最終的保持物(S100 DIALYZEDR )。

    免疫感作していないウシから製造したR 最終的保持物画分では、透析を行なった後でも抗炎症活性は検出されなかった。 再構成したミルク粉末から製造した最終的透過液P 画分では、抗炎症活性は検出されなかった。 再構成したミルク粉末保持物R 画分は、透析を行なった後では、MAIF標準の活性の範囲の抗炎症活性を示した。

    図11は、ワクチン接種したおよびワクチン接種していない双性ウシおよび免疫感作したウシから再構成したミルク粉末から製造した各種のミルク画分の生物活性を試験するように設計した双子群の限外濾過実験の結果を示している。 試験を行なった画分は、下記の通りである。 ピークI、G−10カラム製剤、4ml(OHIO MAIF STD);ワクチン接種していない双子からの透析した最終的保持物R (CON TWIN R );再構成したミルク粉末からの最終的保持物R (RECON S100 R );ワクチン接種した双子からの最終的保持物R (IMMUNE TWIN R );再構成したミルク粉末からの透析した第一の保持物R1(S100 DIALYZED R1)。

    ワクチン接種していないコントロール双子からの透析した保持物R またはワクチン接種した双子からの透析していない保持物R では、抗炎症活性はほとんど検出されなかった。 幾らかの活性は、分散ダイアグラムにより検出することができる。 免疫感作したウシからの再構成したStolleミルク粉末から透析せずに製造したR 保持物は、抗炎症性が高かった。 しかしながら、再構成したミルクの希釈の後ミルクから製造したホエーの希釈よりは限外濾過によって製造した製剤では、活性はごく僅かであった。 この結果は、抗炎症活性はホエー画分から更に効率的に抽出されることを示している。

    図12は、ワクチン接種した双性ウシからの透析した保持物の生物活性を試験するように設計された双子群の限外濾過実験の結果を示している。 試験を行なった画分は、下記の通りである。 ピークI、G−10カラム製剤、(OHIO MAIF STD);ワクチン接種した双子からの透析した最終的保持物R (IMM DIALYZED R );G−10製剤からの透析した最終保持物(DIALYZED OHIO MAIF)。 これらの結果は、抗炎症活性は透析後の免疫感作した双子からのR 画分に含まれていることを示している。 透析したMAIFは、透析していないMAIF標準よりも分析では活性が高かった。 この結果は、透析が抗炎症活性に関与するミルク因子を更に濃縮するのに有効な手段であることを示している。

    図10〜図12に示された結果は、下記の結論を支持している。
    (1) 抗炎症活性は、希釈した透過液の限外濾過によって免疫感作したウシからの再構成したミルクから抽出することができる。
    (2) 抗炎症活性は、免疫感作されていないウシのミルクから製造した前記製剤では示されなかった。
    (3) 抗炎症活性は、免疫感作したウシのミルクから製造した希釈透過液の限外濾過の後の最終保持物R で示されたが、活性を明らかに示すには、透析が必要であった。

    例9
    MAIFの安定性、MAIFの加熱およびプロテイナーゼ処理
    ミルクの抗炎症因子が化学的にはタンパク質またはペプチドではないという前記の証拠は、大部分が、窒素をほぼ全く含まないことを一貫して示している化学分析に基づいていた。 抗炎症因子を更に特性決定するために、数種類の製剤をピークI、G−10カラム製剤4mgを標準物質として静脈内に用いて、ラット足の水腫分析で試験した。 下記の処理を行なった。 プロテイナーゼ(プロナーゼ)処理6時間;プロテイナーゼ処理なしのコントロール6時間;未処理の正のコントロール;100℃での加熱30分間。
    この分析の結果を、図13に示す。 この検討から誘導された結論は、抗炎症活性はタンパク質またはペプチドによるものではなく、抗炎症活性は煮沸によって不活性化されないということであった。 プロナーゼ処理の有効性は、並行して行なうプロナーゼ処理によってミルクタンパク質が完全に変性されるという知見によって確認された。

    例10
    更に精製したMAIFおよび免疫感作したウシからのホエータンパク質濃縮物の抗炎症活性
    Amicon YM5膜を用いる限外濾過からの保持物および透過液を、ラット足水腫分析法で静脈内投与を用いて生物学的活性について試験した。 この方法では、特許第4,956,349号に従って製造したG−10カラムのピークIにおけるMAIFを、Amicon YM5膜上での限外濾過によって更に精製した。 この膜は、分子量が5000以上の分子を保持する。 ホエータンパク質濃縮物(WPCs)も免疫感作した動物から得たミルクから製造し、YM5膜を通して濾過した。 下記の試料を、製剤をピークI、G−10カラム製剤4mgを標準物質として静脈内に用いて、上記分析法で試験した。 Amicon YM5限外濾過から得た透過液;Amicon YM5限外濾過から得た保持物;免疫感作したウシから得たWPC、30mg/ラット;市販品(免疫感作していないウシ)から得たWPC、30mg/ラット。

    この分析の結果を、図14に示す。 これらの結果から、活性は総てYM5フィルターに適用された画分の総重量の約0.5%である保持物中にあることは明らかである。 この実験で見られた水腫は、20〜25マイクログラムの物質を投与したところ、減少した。

    WPCの活性に関しては、高免疫感作動物から作成したWPCは、予想されたように抗炎症活性を明らかに示した。 興味深いことには、免疫感作されていない動物から作成したWPCも抗炎症活性を示した。 免疫感作されていないウシのミルクに抗炎症活性があることは、ミルクが天然物質でなければならないので、意外なことではない。 その検出は、バイオアッセイの感度を反映したものである。

    例11
    カラゲニン誘発足蹠水腫の連続観察
    カラゲニンの注射時にMAIF製剤4mgを静脈内に投与すると、足蹠の水腫の蓄積が40%〜50%減少することが明らかになった。 これらの結果は、この物質が抗炎症活性を含むことを示しているが、MAIFの作用部位または薬理学的プロフィールはほとんど示されていなかった。 このようなデーターを得るには、カラゲニンに対する反応を通じて足蹠水腫を連続的に観察できる方法を確立することが必要であった。 これは、分解したガンマー線検出装置にラットの足を固定することによって達成された。 この処理法では、動物を4時間まで麻酔する必要があり、麻酔薬は炎症反応を抑制することが知られているので、最初にカラゲニン誘発水腫に対する麻酔薬の効果を測定することが必要であった。 従って、ラットを麻酔するのに普通に用いられる5種類の薬剤を評価したが、これらは、エーテル、包水クロラール、Innovar−vet、ネンブタールおよびウレタンであった。 結果を図15に示す。

    これらの結果から、炎症反応をこの手法によって評価しようとするときには、エーテルが麻酔薬として選択されることは明らかであった。 エーテルを用いたときに得られた曲線の形状は、反応が二相性であることを示していた。 反応を更に詳細に描写するため、更に実験を行ない、水腫の容積を12個の時点で5時間に亙って測定した。 これらの結果から、反応が二相性であることが確かめられた。 初期の反応は免疫性試験(challenge) 0〜1時間後に起こり、後期相反応は1.5〜2時間に起こった(図16)。

    他の研究者によっても観察されているこの2つの相は、それぞれ非食細胞性炎症反応(NPIR)および食細胞性炎症反応(PIR)と命名されている。

    NPIRは、損傷に反応して、ヒスタミンおよびブラジキニンなどの可溶性伝達物質によって開始されるが、PIRは好中球の関与によって変わる。 従って、プロトコールはMAIFを投与し、薬剤の抗炎症特性が初期の非細胞性(NPIR)相に対する免疫性試験の結果であるかまたは後期の細胞性(PIR)相に対する免疫性試験の結果であるかを決定する目的で水腫の蓄積を連続的に観測することであった。 MAIF製剤5mgまたは40mg/ラットをカラゲニンの作用時に静脈内に投与し、水腫の蓄積を一定の間隔で4時間に亙って観測した。 いずれの相においても、これらの投与量はいずれも水腫の蓄積に影響しなかった(図17)。

    この結果は、免疫性試験から4時間後のカラゲニン誘発水腫に対するMAIFの精製した製剤の効果を測定した多くの以前の分析結果は、これらの画分に抗炎症活性がかなりあることを示していたので、意外なものであった。 それ故、エーテルに連続的に暴露されると、イン・ビボでのMAIFの活性な抗炎症成分が抑制されまたは不活性化されるものと思われる。

    以前の研究では、エーテルに短時間暴露されても、抗炎症因子の活性には影響しないことが示されていた。 それ故、水腫が次第に蓄積することに対するMAIFの効果を4点の時間、すなわち0、1、3および4時間目だけ測定する実験を行なうことにより、動物がエーテルに暴露されるのを制限した。 1時間の時点を選択して、初期の非食細胞性の炎症反応についての影響を評価し、3および4時間の測定を選択して、後期の食細胞性の炎症反応に対する影響を定量した。 この実験では、MAIF製剤を40mg投与すると、第二の食細胞によって媒介される相中には水腫の蓄積が減少するが、第一の可溶性の伝達物質によって行なわれる相にはほとんど影響がなかった(図18)。

    この一連の実験から、下記の結論を引き出すことができる。
    1. エーテルは、カラゲニンに対する炎症反応を連続的に観測する実験に用いられる好ましい麻酔薬である。
    2. 連続的にエーテル麻酔を行なうと、カラゲニン足蹠分析法における抗炎症因子のイン・ビボでの抗炎症活性が抑制される。
    3. MAIFは、カラゲニンに対する炎症反応の後期の食細胞によって媒介される相を阻害することによって、炎症を改善する。

    例12
    カラゲニンによって誘発される足蹠水腫に対するMAIFの効果の時間経過
    更に一連の実験を行ない、カラゲニンの作用の時点よりはカラゲニンを注射する前または後の選択された時点に投与した。 この検討の目的は、下記のことについて知見を得ることであった。
    (a) 炎症性刺激に関してMAIFを投与するための最も効果的な時間。
    (b) 抗炎症性残基の生物学的半減期。
    (c) MAIFによって影響される炎症反応の発現の時点。

    検討は3つの部分で行なった。 MAIFの製剤を、カラゲニン注射の150分前から150分後までの範囲の11の時点の一つにおいて、4mg/ラットの投与量を静脈内に投与した。 この実験の結果を、図19および第5表に示す。

    検討を行なった総ての時点で、水腫は有意に抑制されたが、抑制の程度は両極時点(±150分)では少なかった。 MAIF投与に対する興味深い周期的反応が、免疫性試験の時点近くでは処理群に見られた。 MAIFは、免疫性試験の15分後に投与するよりは免疫性試験の30分後に投与する方が効果的であるという事実は、第二の食細胞によって媒介される反応の相がこの薬剤によって抑制されるという考え方を支持している。 MAIFの製剤を免疫性試験の15分前または試験時に投与すると、カラゲニンに対する反応が著しく抑制された。 更に、この薬剤は血清中の半減期が比較的長く(1〜2時間)、その有効性は免疫性試験の時間および炎症反応の動力学的性質に関係している。
    従って、抗炎症効果は、好中球のような炎症細胞に対する効果によっているものと推定される。

    例13
    逆受動アルツス反応に対するMAIFの効果
    抗炎症因子が好中球の関与に影響するという可能性を、逆受動アルツス反応(RPA)を調節する物質の能力を評価することによって検討した。 この免疫複合体によって誘発される反応は主として好中球によって伝達され、反応の展開に影響する薬剤はこれらの細胞に対する作用を介して伝達される。 RPAを誘発させるため、ラットに卵白アルブミンに対するウサギ抗体を皮内に、天然の卵白アルブミンを静脈内に注射した。 卵白アルブミン/卵白アルブミン−抗体免疫複合体が皮膚の血管壁内部および周囲に形成し、宿主好中球が抗体のFc部に結合し、強い炎症反応が開始する。 この反応は免疫複合体によって開始されるが、これは宿主の免疫系とは独立に起こる粉とに留意すべきである。

    3個のパラメーターを用いて、RPAを定量する。 これらは、(1) 水腫− 125 I−HSAの蓄積を用いて測定、(2) 出血− 59 FeでRBCをイン・ビボで前標識することによって評価、および(3) 好中球の蓄積−好中球に特異的な酵素であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)の組織内濃度を定量することによって測定、である。 これらの分析法は、当業者に知られている。

    18尾のラットを、6尾ずつの3群に分けた。 ウサギの抗卵白アルブミン(40μl)をそれぞれの動物の背中の4か所に皮内注射し、卵白アルブミン2mgをその直後に静脈内注射した。 1群の動物は他の処理は全く行なわず、コントロールとして用いた。 第二の群には、ラクトース製剤20mgを静脈内注射し、最後の群には精製したMAIFの製剤20mgを静脈内注射した。 ラクトースおよびMAIF製剤は、両方共卵白アルブミンと一緒に投与した。 カラゲニン投与から3.5時間後に、反応の程度を評価した。 MAIF製剤をRPA反応の開始前に20mg/ラットの投与量で静脈内投与したときには、反応を測定するのに用いた3種類のパラメーターが極めて著しく抑制された(第6表、図20)。 ラクトースコントロール物質でも、好中球の蓄積および出血が若干および僅かに有意に抑制された。 これは、通常のミルクに少量の抗炎症活性があることを示している。

    好中球はRPAの主要な伝達物質であるので、これらの結果からも、MAIFは好中球の機能に対する効果を介して炎症反応を抑制することができることは明らかである。

    例14
    好中球の移行に対するMAIFの効果
    好中球が炎症反応に効果的に関与するには、好中球は最初に血管系から炎症部位に移出しなければならない。 抗炎症因子が好中球の移出を妨害するかどうかを決定するため、殺菌したポリウレタンスポンジの皮下移植を用いる炎症のモデルを用いた。 移植後、スポンジを定期的に取り出して、スポンジの重量を測定した後、細胞を浸透液中に抽出して、計数し、反応の液相および細胞相を定量することができる。 移植から25時間後には、スポンジ中に見られる細胞の>95%は好中球である。

    2種類の実験を行なった。 最初の実験では、スポンジの移植時に動物を精製したMAIF製剤5、10、20または40mgで処理した。 スポンジを、移植から24時間後に取り出した。 それぞれの群は5および8尾のラットからなり、それぞれの動物に2個のスポンジを移植した。 結果を図21に示す。

    スポンジの移植時に静脈内投与したMAIF製剤20および40mgは、炎症性細胞を移出させる能力に顕著な影響を与えた。 余り顕著ではないが同様に有意な液体蓄積の抑制も見られた。 MAIFの2種類の低投与量では、この炎症のモデルでは明白な効果は見られなかった。 炎症性の免疫試験(スポンジ移植)とMAIFの投与との間の一時的関係を表すように設計された第二の実験を行なった。 この検討では、MAIF製剤20mgを、スポンジ移植から30、60または120分後に静脈内投与した。 第四のコントロール群は、未処理のままにしておいた。 各群は5尾とした。 それぞれの動物に2個のスポンジを移植し、これらを24時間後に取り出した。 結果を図22に示す。 このグラフには、移植時にMAIF製剤20mgを投与したラットの試料群から得た結果が示されている(図21を参照されたい)。

    カラゲニンによって誘発された水腫に対するMAIFの効果の時間経過からの結果は、MAIFを免疫性試験の60分以上後に投与すると、余り効果がないことを示している。 スポンジ移植に関連した炎症を抑制するのにMAIF製剤20mgを要したが、カラゲニン誘発水腫を抑制するには4mgで十分であったことは注目すべきことである。 この解釈に固執しようとするものではないが、この格差は2種類の刺激によって宿主に与えられる刺激のレベルが異なっていることに関係している可能性がある。 スポンジ移植物は比較的温和な刺激であり、遅発性炎症反応を誘発し、多量の細胞は移植後8〜16時間に蓄積する(図23)。 一方、カラゲニンを皮下注射したものは極めて強い刺激剤であり、比較的短期間に亙って対応する強い反応を誘発する。

    例15
    ミルクからの抗炎症因子の別途精製法(製剤「AIF」)
    下記の例では、ミルクからの分子量が最も小さく、非凝集形態の抗炎症因子の精製法を説明する。 個々で記載される精製段階から生じる製剤には、実施例2に記載の方法を用いて得た製剤と区別するために「AIF」という名称を与えた。 本実施例および次の実施例(すなわち、例16)では、製剤内の活性因子は単に「抗炎症因子」と呼ばれる。 総ての精製段階は、細菌や発熱性物質による汚染の可能性ができるだけ少なくなるように行なった。 滅菌水を用いて溶液を調製し、総てのガラス器具は発熱性物質を除去した。

    段階1: <10,00の分子量(「MW」)の限外濾過
    新鮮なS100免疫脱脂乳(免疫ミルクを得るのに用いた処理法の説明については例1を参照されたい)を、30psiの圧で10,000MWカットオフ限外濾過膜(Filtron)を通して送液した。 透過液を、氷上に保持した発熱性物質を除去した瓶に集めた。 透過液を無菌濾過紙、使用まで冷凍した。 <10,000MWの透過液は、ミルク抗炎症因子並びに低分子量ペプチド、オリゴ糖および多量のラクトースを含んでいる。 透過液中の抗炎症活性は、低分子量の非凝集形態に含まれている。

    段階2: DEAE−セファロースクロマトグラフィ
    抗炎症活性は最初にDEAE−セファロース上で分画した。 DEAE−セファロース1リットルを含む5×50cmカラムを、透過液の緩衝溶液で平衡にした。 透過液の緩衝溶液は、原料ミルク中に含まれる拡散性イオンを適当な濃度で含む無菌の内毒素を含まない溶液である。 透過液の緩衝溶液は、CaCl 、MgCl 、NaCl、クエン酸ナトリウムおよびNaH PO を含む。 典型的には、<10,000MWの透過液約8リットルを、約500ml/時の流速でDEAE−セファロースカラムに送液した。 カラム溶出液を、280nmで観測した。 カラムを、280nmの吸光度がベースラインに戻るまで蒸留水で洗浄した(典型的には、蒸留水約6〜8リットルを要した)。 抗炎症活性をカラムに結合させ、0.5M酢酸アンモニウム/水、pH7.4約4リットルで溶出した。 溶出液を凍結乾燥して、乾固し、秤量した。 透過液8リットルから得られた回収物質の重量は、典型的には15〜20gであった。 酢酸アンモニウムは凍結乾燥の際に完全に揮散してしまうので、残存重量は結合した物質の重量となる。 抗炎症活性を、マウス好中球の移行抑制分析法で分析した。

    段階3: H−40クロマトグラフィ
    DEAE−セファロースカラムから溶出した物質をサイジングカラム(sizing column)上で更に分画して、抗炎症活性に関与する因子を他の低分子量成分から分離した。 DEAE試料8gを蒸留水50mlに溶解し、Toyopearl HW−40(Rohm & Haas)を水で平衡したもの736mlを含む2.5×150cmカラムに適用した。 このカラムを、蒸留水で40ml/時の流速で展開し、溶出液を280nmで観測した。 画分を集め、マウス好中球移出抑制分析法で抗炎症活性を分析した。 活性を示し、280nmの吸光度が最小の画分をまとめて、凍結乾燥した。 抗炎症活性を含む物質約80mgが、透過液8リットルから回収された。

    段階4: AffiGel 601クロマトグラフィ
    最終精製段階は、ボロネート酸で誘導体形成したポリアクリルアミドを基剤とする媒質(AffiGel 601、Bio-Rad)であって、同一平面上の隣接するシスヒドロキシル基に対して親和性を有するものを充填したカラムでの活性因子のアフィニティークロマトグラフィからなっている。 低分子量のHW−40由来の材料40mgを0.25M酢酸アンモニウム、pH7.0、10ml中で平衡にし、これも0.25M酢酸アンモニウム中で並行にしておいたAffiGelカラムに適用した。 溶出液を280nmで観察した。 280nmの吸光度がバックグラウンドまで減少するまで、カラムを0.25M酢酸アンモニウム400mlで50ml/時の流速で洗浄した。 次いで、AffiGelカラムを0.1Mギ酸、pH2.8、1600mlで溶出した。 溶出液を、マウス好中球移出抑制分析法で活性を試験し、凍結乾燥して乾固した。 抗炎症活性を含む結合材料約8〜10mgが、透過液8リットルから回収された。

    この方法で得た製剤を「AIF」と命名する。 この製剤を抗炎症因子に関して高度に精製したが、不均質である。 この製剤は、マウス好中球移出抑制分析、ラット足水腫分析およびラット腫脹分析において抗炎症活性を示し、ラット腸間膜の小静脈内皮への好中球の結合を遮断する(内視鏡により明視化)。 マウス好中球移出抑制分析法での相対的分析に基づけば、AIFは元の脱脂乳の<10,000MWの透過液より約55,000倍精製されている。

    例16
    内皮細胞への好中球の付着および血管系からの好中球の移出に対する抗炎症因子の製剤の効果
    内皮細胞への好中球の付着および血管系からの好中球の移出に対する抗炎症因子の効果を試験した。 2種類の異なる抗炎症因子の製剤を用いた。 一つの製剤は、例2に記載の精製法を用いて製造した。 本実施例の目的には、これ製剤を単に「MAIF」と表す。 他の抗炎症因子の製剤は、例15に記載の精製法を用いて製造し、その例および本実施例では「AIF」と表す。 MAIFもAIFも共にその中に異なる性性状体の抗炎症因子を含むことを理解すべきである。

    化学薬剤:
    ヒト血清アルブミン、トリプシン、血小板活性化因子(PAF)、ホルボールミリステートアセテート(PMA)、ヨウ化プロピジウムおよびHistopaqueは、Sigma Chemical Co.、セントルイス、ミズーリー州から入手した。 負のコントロール抗体として用いられるネズミの抗ヒトCD18モノクローナル抗体(IgG −サブクラス;FITC抱合体)およびネズミ抗キーホール・リンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン(IgG −サブクラス;FITC抱合体)は、Becton Dickinson Systems Inc. 、マウンテインビュー、カリフォルニア州から購入した。 Simply Cellular TM Microbeadsは、Flow Cytometry Standards Corp.、リサーチ・トライアングル・パーク、ノース・カロライナ州から購入した。 他の試薬は市販の最上級品であり、更に精製することなく使用した。

    イン・ビトロ法:
    内視鏡実験法 24尾の雄性Wistarラット(180〜250g)を、精製した実験室飼料で飼育し、手術前に24時間絶食させた。 動物を最初にペントバルビタールで麻酔した(12mg/100g体重)。 右頸動脈と頸静脈にカニューレを挿入して、それぞれ全身の動脈圧を測定し(Statham P23A圧トランスデューサーおよびGrass生理記録計)、薬剤を投与した。 腹部正中切開を行ない、動物を仰臥位にした。 空腸中央部(mid-jejunum) の切片を腹部切開中に取り出し、総ての露出した組織を食塩水に浸漬したガーゼで覆い、組織が脱水されるのをできるだけ少なくした。 腸間膜を光学的にはっきり観察するための台であって、組織の2cm 切片を透視できるものに注意深く置いた。 台の温度は、恒温循環装置(Fisher Scientific,80型)を用いて37℃に保持した。 直腸および腸間膜の温度を、電気温度計を用いて観測した。 腸間膜を、加温した重炭酸塩で緩衝した食塩水(pH7.4)で覆った。 25倍の対物レンズ(Leitz Wetzlar L25/0.35、ドイツ)と10倍の接眼レンズを備えた内視鏡(Nikon Optiphot−2、日本)を用いて、腸間膜の微小循環を観察した。 顕微鏡上に設置したビデオカメラで画像をカラーモニターに投影し、画像を記録して、ビデオカセットレコーダーを用いて再生分析した。 直径が25〜40μmの単一の分岐していない小静脈を選択して、検討を行なった。 小静脈の直径は、ビデオノギスを用いて、オンラインで測定した。 付着している好中球および移出した好中球の数を、ビデオ集録した画像を再生する際に、オフラインで測定した。 好中球が30秒以上静止したままであるときは、これは小静脈内皮に付着していると考えられた。 回転する好中球は、同じ血管での赤血球の速度より小さな速度で移動する白血球として定義された。 白血球の回転速度は、小静脈の長さに沿って所定の距離を白血球が横切るのに要する時間によって測定された。

    実験プロトコール 総ての血行力学パラメーターが定常状態になった後、腸間膜からの画像を5分間記録した。 次に、腸間膜にMAIF製剤40または5mg/ラットの存在下で100nM PAFを60秒間注いだ(iv.)。 前記パラメーターの測定を、PAFの洗浄液30および60分後に、行なった。 2つの実験群では、腸間膜製剤を前記と同じPAFに30分間暴露し、これらの製剤はMAIF製剤40または5mg/らったを収納した。 3つの追加実験では、AIF製剤は前処理または後処理として与えた。

    イン・ビトロ法 好中球の単離 健康な供与者からの好中球を、デキストランの沈降を行なった後、低緊張性リーシスおよびHistopaque遠心分離によって精製した。 室温で行なったデキストラン沈降段階を除き、細胞は単離処理を通じて4℃に保持した。 細胞製剤は95%の好中球を含み、これらの99%以上はTrypan Blueを用いて測定したところ成育可能であった。 単離後、好中球を最終濃度2×10 細胞/mlリン酸緩衝食塩水(PBS)で再懸濁させた。 次に、細胞の一部を、各種濃度のMAIFまたはAIF製剤と共に37℃で20分間インキュベーションした。 洗浄を行なった後、好中球を、暗所で4℃にて30分間インキュベーションし、フルオレセインで抱合したネズミ抗ヒトCD18、ヒトCD11b、IGGをコーティングしたマイクロビーズ(Simply Cellular TMマイクロビーズ)またはネズミの負のコントロール抗体の濃度で飽和した。

    免疫蛍光染色およびFACS分析 CD18表面発現の尺度としての直接免疫蛍光を、10,000個の細胞の平均蛍光強度を表すチャンネル数(対数尺度)を用いてFACScan(Becton Dickinson Systems Inc. 、マウンテイン・ビュー、カリフォルニア州)上での分析によって測定した。 対数チャンネル数を、当業者に周知の方法を用いて線形値に変換した。 CD18抗体によって染色された細胞についての特異的平均蛍光強度を、負のコントロール抗体に暴露された細胞の平均蛍光強度を差し引いた後、算出した。 成長力を持たない細胞を、ヨウ化プロピジウムを用いて除去した。

    スーパーオキシド分析法 単離した好中球からのスーパーオキシドの産生を、各種濃度のMAIFの存在下にてPMAおよびN−ホルミル−Met−Leu−Phe(「fMLP」)で刺激して測定した。 活性化した好中球によるチトクロームCの還元を、分光光度計(Hitachi U2000)を用いて550nmで測定した。 簡単に説明すれば、試料を2個のセルに入れ、1個のセルをリファレンスとして用いた。 後者には、スーパーオキシドジスムターゼ(スーパーオキシドスカベンジャー)を入れた。 好中球を各種濃度MAIFの存在下にて37℃で5分間平衡にし、次に細胞をPMAまたはfMLPで刺激した。 スーパーオキシドの産生を3分間測定した。

    プロテアーゼの放出125 Iで標識したアルブミンを壁にコーティングし、一晩乾燥させた。 未結合アルブミンを洗浄した後、PMAで刺激した好中球を、各種濃度のMAIFの存在または非存在下にて壁内部で1時間インキュベーションした。 壁の上清内の遊離放射能を、それぞれの壁ない部の総放射能で割り、タンパク質加水分解の程度を評価した。

    結果:
    結果を図24〜図30および第7〜9表にまとめる。 図24は、PAFで洗浄すると、後毛細管小静脈への好中球の付着が60分間に亙って約6倍に増加することを示している。 MAIF製剤40mg/ラットは、PAFによって誘導された好中球の付着を30分では90%以上まで、60分では80%以上まで減少した。 興味深いことには、MAIFで前処理すると、PAFの暴露前の付着性好中球の数も減少すると思われた。 低濃度のMAIF(5mg/ラット)は余り効果的ではなく、白血球の付着を60分では50%減少させた。 AIF製剤は0.01mg/ラットの濃度では、白血球の付着を60分では約50%減少させることが判った。 AIFの濃度が10倍以上になれば、白血球の付着は著しく増加した(データーは示していない)。 付着は、ビデオテープでは分析できないほど劇的なものであった。 図25には、好中球の移出に対するMAIFおよびAIFの効果が示されている。 40mg/ラットおよび5mg/ラットの濃度のMAIFおよび0.01mg/ラットの濃度のAIFでは、PAF暴露の時間と共に好中球の移出の増加を完全に防止することが判った。 好中球流は、MAIF処理群では、未処理群と比較して、著しく変化しなかった(図26)。 AIFを投与すると、最初の内は通常より多くの好中球が回転することが観察されたが、その数は時間と共に減少した。

    第二の一連の実験では、好中球が付着してしまってから各種の抗炎症薬を投与した(図27)。 この一連の実験では、白血球の付着はMAIF40mg/ラットの投与量で逆転したが、5mg/ラットの投与量では逆転しなかった。 AIFは、0.01mg/ラットの投与量では好中球の付着を約25%逆転した。 高濃度のMAIF(40mg/ラット)の効果を更に評価するため、記録処理の開始時の付着好中球の数およびそれぞれの期間に5分間で付着した新たな好中球の数を検討した。 第27a図には、MAIFの投与から10分後には、付着している好中球の数は僅かであることが示されており、抗炎症因子が付着している好中球を実際に「剥離」したものと思われる。 更に、第27b図には、MAIFが新たな好中球−内皮細胞の付着を阻害したことが示されている。 小静脈の長さ方向に沿って回転した好中球の速度は、群同志および経時的には変化しなかったが、AIFは好中球の回転速度を増加させることができた(図28)。 この効果は、赤血球の速度が変化しないままであることを考慮すればかなり興味深いことである(図29)。 これらの結果は、水力学的力が増加するだけでは好中球の回転速度の増加を説明することができないことを示唆している。 好中球流もMAIFによっては影響されないが、これもAIFによって減少した(図30)。 イン・ビトロでのデーターは、抗炎症因子は、好中球自体の活性化を妨害しないことを示している。 スーパーオキシドラジカルスカベンジャーであるスーパーオキシドジスムターゼはPMAおよびfMLPで刺激した好中球によるチトクロームcの還元を完全に遮断し、これはスーパーオキシドによって伝達される工程であることを示唆している。 極端に高濃度のMAIFはチトクロームcの還元にごく僅かしか影響しないことは、MAIFがスーパーオキシドを直接には掃去しないことを示している(第7表)。 プロテアーゼの放出は、MAIFによっては影響されなかった(データーは示していない)。

    抗CD18モノクローナル抗体の結合をMAIFまたはAIFによって減少させることができることが判った(第8表)。 これは、CD11b抗体では起こらなかった。 CD18抗体のIgGをコーティングしたマイクロビーズへの結合もMAIFまたはAIF製剤によって影響されず、抗炎症因子は抗−CD18モノクローナル抗体が物質に結合する能力に影響しないが、リガンドであるCD18に作用しているものと思われた。 同様なパターンは、刺激した好中球でも見られた(第9表)。 異なる細胞が毎日使用されているので、CD18への結合は毎日変化することに留意すべきである。 従って、第8表の結果を第9表の結果と直接比較することはできない。

    検討:
    前記実施例のデーターは、抗炎症因子が用量依存的に小静脈中での好中球の付着および移出を防止することを示唆している。 しかしながら、更に重要なことには、抗炎症因子が、短時間(10分間)ではあるが、これらの血管への好中球の付着を逆転することができる。 接着している好中球を内皮上でのそれらの保持を効率的に放出させるごく僅かな他の薬剤は、好中球上のCD11/CD18糖タンパク質複合体に対するモノクローナル抗体である。 MAIFは、個々の血管中の血流または全身の血圧に全く影響しないと思われ、剪断応力のような血液力学的因子は白血球の付着の逆転を説明することは出来ないと思われる。 白血球の回転は白血球の付着の必須条件であると思われるが、MAIFは白血球の回転速度または白血球流に影響しなかった。 後者の結果は、血管中をか移転する好中球の数に影響せず、従って付着している白血球の減少は内皮と相互作用する白血球の数が少なくなった結果ではないことを示している。 白血球の回転速度並びに白血球流が変化しないままであることは、好中球上の付着分子および白血球の回転に関与する内皮(IL−セレクチン、P−セレクチン)は、MAIF製剤の抗炎症因子によって影響されないことを示している。

    白血球はスーパーオキシドおよびプロテアーゼを放出することによってそれ自身の付着を調節することができることが報告されている。 従って、MAIFおよびAIFの存在下での白血球の付着力の欠如はこれらの製剤がスーパーオキシドまたはプロテアーゼを遮断することができることによるものであると考えられた。 MAIFはスーパーオキシドまたはプロテアーゼの放出にほとんど影響せず、放出されたプロテアーゼと相互作用せずまたは放出されたスーパーオキシドを掃去しないことを考慮すれば、この可能性は否定される。 更に、MAIFは、ヨウ化プロピジウムで評価したところ好中球の成育力に影響するとは思われず、好中球に対する抗炎症因子の直接的な細胞毒作用を行なうとは思われない。

    好中球が付着し、移出するには、これが完全なCD11/CD18糖タンパク質複合体を有するものでなければならない。 付着複合体を免疫中和すると、好中球が内皮に永久的に付着して周囲の組織に移出する能力が完全に損なわれる。 好中球の付着および移出は、多数の炎症症状と関連した組織の損傷における律速段階であるので、これらの工程を妨害する薬剤は同様に炎症反応も遮断すると思われる。 本研究では、MAIFもAIFも好中球の付着を劇的に逆転させ、PAFによって誘発される好中球の移出を遮断した。 好中球の付着を逆転させたAIF−、MAIF−および抗−CD18モノクローナル抗体が類似しているため、AIFおよびMAIF内の抗炎症因子はCD18糖タンパク質複合体と直接相互作用することによってその作用を行なうことが可能であると思われた。 前記のイン・ビトロデーターは、AIFおよびMAIFが両方とも抗−CD18抗体がCD18糖タンパク質複合体に結合する能力を遮断したという点でこの観点を支持している。 対照的に、AIfもMAIFも、CD11bがそれぞれのモノクローナル抗体への結合に影響しない。 最後に、AIFおよびMAIf製剤は、抗−CD18モノクローナル抗体がIgGをコーティングしたマイクロビーズに結合する能力を妨害しなかった。 従って、抗炎症因子はCD18複合体と直接相互作用し、CD18が内皮細胞付着分子などの各種リガンドへ付着するのを防止する、と結論することができる。

    例17
    循環する白血球に対するMAIFの効果
    幾つかの製剤は、好中球の移出を抑制することができる。 シクロホスファミドのような幾つかの薬剤は細胞還元性であり、骨髄での造血作用を抑制することによって作用するが、ステロイドおよび非ステロイド系抗炎症薬などの他の薬剤は特異的な作用部位を有し、白血球増多症を生じない。 従って、循環する白血球数および割合に対する抗炎症因子の効果を決定することが重要である。

    2種類の実験を行なった。 第一の実験では、MAIF製剤を40mg/ラットの投与量で6尾の動物からなる1群に静脈内投与し、コントロール群には食塩水を投与した。 血液試料を、ベースライン、および処理から1、4および24時間後に採取した。 結果を図31に示す。

    MAIF投与では、循環好中球数が増加し、4時間後に最大となり、これと対応して末梢血中のリンパ球の数が減少した。 更に投与量−反応の検討を行ない、1群のラットに食塩水、5、10または20mgのMAIF製剤を静脈内に投与した。 それぞれのラットからの血液を予め7日間採取してベースライン値を与え、MAIFを投与して4時間後にも再度採取した。 結果を図32に示す。 グラフには、MAIF製剤40mgを投与して4時間後に採取した試料から得た結果を含んでいる(図31を参照されたい)。

    総てのMAIFの投与量で、循環好中球の数が増加し、リンパ球数が減少した。 リンパ球に対する効果は直線的に投与量に関係しており、好中球数の増加は曲線の形態であり、最大の効果は10mgを投与した動物で見られた。

    これらの結果は、抗炎症因子が、好中球の内皮細胞への付着に影響することによって炎症を調節するという考え方を支持している。

    3種類の他の細胞を標的とした抗炎症/免疫調節剤のラットの循環白血球に対する効果に関しても得られた。 ステロイド薬であるメチルプレドニゾロンは、MAIFで見られたのと同様なリンパ球/好中球の割合を変化させる。 薬剤投与と効果との一時的関係は幾分異なっている。 抗拒絶/抗炎症薬であるシクロスポリンAも循環好中球の数を増加させるが、リンパ球数は投与量によって増加するか又は影響されない。 対照的に、細胞毒性薬であるシクロホスファミドは、循環リンパ球および好中球を減少させる。 抗炎症因子の効果は、メチル−プレドニゾロンの作用と緊密に平行していると思われる。

    例18
    リンパ球の機能に対する抗炎症因子の効果
    抗炎症因子が循環リンパ球数の可逆的減少を引き起こすことができることから(例17)、この因子のリンパ球の機能に対する効果について更に検討を行なった。 グラフト対宿主(GvH)および宿主対グラフト(HvG)分析を用いて、この因子のTリンパ球の機能に対する効果を測定した。

    HvG分析では、親のDark Agoutiラット(「DA」)にMAIF製剤20mgを静脈内投与してから48、24および3時間後にF1雑種子孫(DA×Hooded Oxfordラット)からのリンパ球を足蹠に注射した。 従って、完全な宿主(DA)からのTリンパ球が異種のF1リンパ球の組織適合性抗原に反応する能力に対する抗炎症因子の効果を測定した。 プロトコールは膝窩リンパ節重量の減少によって明らかなように、反応が著しく減少した(30%)(第33A図)。

    GvH反応では、親(DA)リンパ球はMAIF処理した親ラット(DA)から得て、そのF1(DA×Hooded Oxford)子孫の足蹠に投与した。 この分析法では、評価を行なっている宿主、すなわちMAIFで処理したラットから採取したTリンパ球のイン・ビボでの反応(responsiveness) を測定した。 MAIF処理法は、GvH反応に対して全く影響がなかった(第33B図)。

    前記の実験中に、MAIFで処理した動物の脾臓リンパ球の数が明確に増加することに留意した。 更に実験を行なったところ、脾臓重量および脾臓細胞数が両方とも著しく増加した(第33C図および第33D図)。 脾臓細胞数の増加は、前に報告した循環細胞の数の減少とほぼ等しかった。

    最後に、単離した脾臓リンパ球がミトゲンコンカナバリンAに反応する能力に対する抗炎症因子の効果を測定した。 MAIF製剤を投与したところ、このレクチンに対する培養リンパ球のミトゲン性反応がほぼ完全に停止することが判った(第33E図)。

    例19
    抗炎症因子による、感染によって誘発された炎症の抑制
    急性相の反応体(APRs)の血清濃度の変化を用いて、抗炎症因子の抗炎症活性を定量することができるかどうかを決定するため、実験を行なった。 APRsは、炎症性刺激に応じて合成されるタンパク質の群である。 これらの一種類であるアルファ−2−マクログロブリンはヒトおよびラットのいずれにも良く見られるものであり、この炎症性成分を測定する方法論を用いることができる。 MAIF製剤を2回静脈内投与したところ(0および24時間)、アルファ−2−マクログロブリンのピーク反応(48時間)は減少しなかった。 この結果は、因子が後者の炎症反応に影響しないことを示している。

    例20
    ミルクから誘導された抗炎症因子のイン・ビトロおよびイン・ビボでの評価(ウシ乳房マクロファージ分析法、マウスでの感染モデル)
    ウシ乳房マクロファージを高免疫ミルク画分と共にインキュベーションしたところ、食作用の程度は増加しなかったが、食作用されたStaphylococcus aureus を殺すマクロファージの能力は増加した。 MAIF製剤10mg/kgラットを腹腔内投与したマウスでは、致死量のStaphylococcus aureus の腹腔内投与に対する耐性は増加した。
    乳房内Staphylococcus aureus mastitisを投与したモデルでは、MAIFを投与したマウスは、乳房の炎症および退化が有意に減少し、感染性生物のクリアランスが増加した。 MAIFで処理したマウスからの乳房組織の定量的な組織学的分析では、コントロールマウスと比較して管腔が有意に増加し、肺胞間の結合組織が減少し、白血球の浸潤が減少した。 処理されたマウスの乳房臓器は、コントロールマウスよりもコロニー形成単位の数が減少していた。 抗炎症因子は、白血球の機能を調節することによって非特異的防御系に対して作用するものと思われる。

    例21
    実験的感染症の病因に対する抗炎症因子の効果
    ヒトで見られる最も普通の炎症起因物質は微生物性であり、感染に対して宿主の防御を調節する薬剤の効果を決定することが重要である。 多くの感染性疾患に伴う組織損傷は、実際には侵襲する生物によるよりはむしろ感染症に対する宿主の反応によって引き起こされる。 感染症に対する炎症反応を調節することができることは、臨床上有用な手法であるが、感染中に宿主の反応を抑制することは不利なことがあることを理解しなければならない。 これは、好中球の抑制の場合には特に真実である。 感染の初期段階で好中球の関与を抑制する薬剤を用いた検討では、炎症および組織の損傷は最初のうちは抑制されるが、細胞の反応が減少する結果として起こる細菌の負荷が増加すると組織の損傷が悪化することを示した。 従って、ミルク抗炎症因子が感染症を調節して、(1) 薬剤が感染によって誘発される組織の損傷を少なくすることができるかどうかを決定し、および(2) 宿主の反応の抑制が見られると、感染の重篤度が増加するかどうかを評価することが重要である。

    E. coli 075 を皮内注射した後の水腫の形成に対する抗炎症因子の効果を測定した。 8尾の動物からなる2群を用いた。 一つの群は未処理であり、コントロールとして用い、第二の群では、それぞれの動物にMAIF製剤40mgを食塩水0.5mlに溶解したものを静脈内注射した。 MAIFを投与した直後、E. coli 075 を一晩培養した物100μlをラットの剃毛した背中の2か所の皮膚部位に皮内注射した後、更に2か所に食塩水100μlを皮内注射した。 感染した皮膚の水腫容積を推計するため、 125 I−HSA0.1μCiを、抗原の投与時に静脈内注射した。 6時間後に動物を麻酔して、血液試料を採取し、背中の皮膚を除去し、感染部位および食塩水を投与した部位を切除した。 水腫の容積は、組織のカウント数を血漿カウント数を前記のように関連づけることによって計算した。 E. coli が含まれる結果として蓄積する水腫の容積を得るため、食塩水を投与した部位の水腫/血漿容積を差し引いた。 結果を図34に示す。

    MAIFを投与したところ、水腫の形成は48%抑制された。 この実験により、抗炎症因子は感染症に対する局部的炎症反応を制御することができることが明らかになった。

    抗炎症因子の投与、細菌の複製、流体の蓄積および炎症性細胞の浸潤の間の関係を検討するため、もう一つの感染症のモデルを用いた。 前記のようにして製造して移植したポリウレタンスポンジを、移植時にE. coli 075 の一定量の試料をを感染させた。 スポンジを時間を置いて取り出し、秤量して、流動性滲出物の容積を測定した後、培地に絞りだしてスポンジから細菌および細胞を除いた。 細菌および細胞数を、当業者に知られている手法を用いて計算した。 下記の実験は、このモデルを用いて行なった。 90尾の動物を、45尾ずつの2群に分けた。 これらの1群は未処理であり、コントロールとして用いた。 第二の群には、MAIF製剤40mgを静脈内に注射した。 次いで、スポンジを皮下に移植し、移植時にそれぞれのスポンジに10 個のE.coli 075を接種した。 その後、6〜8尾の動物の群を間隔を開けて屠殺し、スポンジにおける細菌学的状況および炎症性滲出物の大きさを測定した。 これらの結果を、第35〜37図に示す。 細菌の複製の速度はコントロールよりもMAIFで処理した動物でのほうが遥かに大きく、それぞれ4、8および16時間後には細菌数には10,000および10,000倍の差があった。 その後、細菌数は減少したが、それでもなお96時間では大きな差があった(図35)。

    感染症に対する初期の反応は、感染性の症状発現の結果に重要な決定因子となる。 この実験では、MAIFを投与した動物での2、4および8時間後の細胞滲出物はそれぞれコントロールの滲出物の27%、35%および46%であった(第36B図)。 抗原を投与してから最初の24時間に蓄積する細胞は>90%が好中球であり、この相におけるこの細胞成分の抑制は細菌数の急速な増加を説明することができる。 2時間後の流体の蓄積はMAIFの投与によって影響されなかったが、抗原投与から4、8および16時間後では、かなり少なかった。 これは、炎症因子が一次的な非細胞性相の水腫形成を抑制しないという前の知見と一致している。 免疫調節剤であるシクロスポリンAおよびメチルプレドニゾロンを用いる以前の検討では、急性の細胞性炎症滲出物の抑制と細菌複製の促進との間の同様な関連性が示された。 しかしながら、これらの実験では、細菌の負荷が増加することによって、好中球の多量の流れがある抗原投与から24〜48時間の宿主の反応が促進された。 組織が関与しているときには、炎症反応が増加すると、組織の損傷が著しく悪化し、傷が形成された。 興味深いことには、MAIFを投与すると初期の炎症反応は抑制され、細菌の数は10,000倍に増加したが、抗原投与後24〜48時間では好中球の多量の流入は見られなかった。

    例22
    実験的腎盂腎炎に対する抗炎症因子の効果
    感染症の炎症を抑制し、組織の損傷が増大することによる余病を生じることがない薬剤は、かなりの潜在能力を有するものであろう。 感染性疾患の臨床的に関連したモデルにより、そのような潜在能力を確立するための実験的基礎を提供することができる。

    腎盂腎炎は、局部的な炎症、組織破壊および傷形成を極めて重要な組織学的特徴として示す感染性疾患である。 この疾患の十分に特性決定されたモデルであって、ヒトの疾患の中心的な病理学的特徴を再生するものを利用することができる。 腎盂腎炎は、所定数のE. coli 075 を外科的に暴露された腎臓に直接接種することによってラットに誘発される。 抗原を接種した後、細菌数は速やかに増加し、3〜4日後にピークに達する。 通常の動物では、感染のレベルは更に5〜6日後には減少し、抗原を接種してから約10日後にはプラトーに達する。 21日までに、病巣は消滅し、窪みになった傷組織の病巣部として存在する。 この感染症のモデルに対する抗炎症因子の効果を評価するため、26尾の動物の両腎臓に腎盂腎炎を誘発させた。 これらの動物の半数は、抗原の投与時および48時間後に再度MAIF製剤を40mg/ラットの投与両で静脈内に投与した。 それぞれの群からの7尾の動物を、腎盂腎炎を誘発させてから4日後に殺し、6尾の動物からなる残りの2群は21日後に屠殺した。 腎臓を無菌的に取り出して秤量し、流動性滲出物の相対的容積を決定した。 表面の傷の大きさの程度を直接目視することによって概算し、腎臓をホモゲナイズして、細菌数を数えた。 結果を図38に示す。

    抗原を接種してから4日後に、流体蓄積および腎臓の表面の傷の大きさが抑制されることによって明らかなように、炎症反応はMAIFの投与によって抑制された。 感染して、皮下に移植したスポンジを含む検討で前に見られたように、炎症が初期に抑制されると、MAIFで処理した動物の細菌数が対数的に増加した。 21日までに、腎臓重量、細菌数又は腎臓表面の傷の大きさによって測定した疾患の病因の差はなくなった。 従って、MAIFによる初期の炎症反応の抑制では、慢性(21日)相の腎盂腎炎での組織の破壊が減少しなかったが、他の抗炎症薬および免疫調節剤と同様な病理学的病巣の展開は促進しなかった。

    例23
    実験データーのまとめ
    連続的に観察するカラゲニンを注射した足蹠での水腫を蓄積できる方法を開発した。

    炎症反応の初期の非食作用性の相は抗炎症因子によって影響されなかったが、反応の細胞性相は有意に阻害された。 カラゲニンを投与する前後に間隔を置いてMAIFを投与する実験では、MAIFが二次的な好中球によって伝達される炎症反応を調節することによってその抗炎症効果を示すことが更に確かめられた。

    抗炎症因子の半減期は静脈内注射から1〜2時間であり、この因子を抗原の接種から30分後に投与すると炎症の展開は抑制された。 この結果は、抗炎症因子の強力な治療目的に使用するのに適している。

    好中球は、急性の炎症反応に関与する主要な細胞である。 アルツス反応の際には、MAIFを投与すると好中球の蓄積が>80%減少するのが見られ、これはまた炎症反応の二次的な特徴である水腫および出血を著しく抑制することと関連している。 この結果は、好中球を炎症のMAIFによって誘導される抑制における標的として更に関連付けていた。

    炎症の展開における重要な段階の一つは、血管系から組織への好中球の移出である。 抗炎症因子を静脈内投与すると、大きくかつ容量依存性の好中球移出の抑制が見られた。 末梢血白血球に対する抗炎症因子の効果を検討するときには、循環好中球の数が著しく増加し、これに伴ってリンパ球の数が減少した。 この効果は用量依存性であったが、好中球滓の増加の場合には、直線的ではなかった。

    ミルク抗炎症因子を投与すると、好中球の内皮への付着がが遮断され、投与時に付着していた宿主好中球の解離が促進された。 この効果は、抗炎症因子が細胞表面のCD18抗原と他の分子との相互作用を遮断することができることによるものと思われる。 この因子によるCD18結合の抑制は、この因子が抗−CD18モノクローナル抗体が細胞へ結合するのを防止するが、抗CD11bモノクローナル抗体の結合は同様には防止しないという点で特異的であると思われる。

    CD18細胞表面抗原を含む分子間相互作用の遮断は、この因子が宿主リンパ球が異種の組織適合性抗原に反応する能力を抑制することができたという観察も説明することができる。 他の実験では、抗炎症因子は、リンパ球でのコンカナバリンによって誘発されたマイトジェン性反応を遮断することが見出された。

    最後に、この因子は初期の感染に対する細胞の反応、すなわち皮下感染のモデルで細菌数が対数的に増加する効果を有意に抑制した。 この感染症の悪化は、感染症での急性の炎症を抑制する他の薬剤で見られるような炎症反応の反動は見られなかった。 臨床的に適当な感染症のモデルである腎盂腎炎を用いる第二の実験でも、細菌数の増加を伴う炎症に対する抑制効果が示された。 また、反動効果は見られず、MAIF処理およびコントロール群で見られた組織の損傷の度合には差はなかった。

    これらの一連の実験から下記の結論を引き出すことができる。
    1. 静脈内投与した抗炎症因子は、カラゲニンによって誘発される炎症反応の二次的な好中球によって媒介される相を抑制する。
    2. カラゲニンによる足蹠分析法で評価すると、抗炎症因子の生物学的半減期は1〜2時間であり、炎症が誘発された後に投与しても有効である。 引き続く実験から、有効半減期は、用いた投与量および炎症性刺激によって変化することを示している。
    3. 抗炎症因子は、イン・ビボでの好中球の移出(emigration)を抑制する。
    4. 抗炎症因子を投与すると、循環好中球の数が増加し、リンパ球数はこれに対応して減少する。
    5. 抗炎症因子は、恐らくは好中球の移出に対する作用によって、感染症に対する宿主の防御を抑制する。
    6. 抗炎症因子は、細胞表面CD18抗原と他の分子との相互作用を遮断する。
    7. 抗炎症因子は、好中球の内皮への付着を遮断する。
    8. 抗炎症因子は、内皮からの付着性好中球の解離を促進する。
    9. 抗炎症因子は、宿主リンパ球が異種の組織適合性抗原に反応する能力を遮断する。
    10. 抗炎症因子は、リンパ球のマイトジェン性反応を遮断する。

    これらの検討で得た実験データーは、ミルク抗炎症因子が好中球およびリンパ球のいずれに対しても顕著な効果を有することを明らかに示している。 観察された効果は、細胞自身に対する抗炎症因子の直接的効果の結果、または細胞の生物学的活性を間接的に変化させる幾つかの他の細胞性または可溶性の媒介物質の抑制(または刺激)の結果であることができる。 ほとんどの薬剤は複合作用を有していることが広く受け入れられており、抗炎症因子は数多くの他の確認されていない生物学的工程に影響することが見出だされる可能性がある。

    本発明を一般的に説明して来たが、当業者であれば多くの変更および改良を発明の思想または範囲に影響を与えることなく行なうことができることを容易に理解されるであろう。

    添付図面に関して下記の詳細な説明を考察すると、これを引用することによって本発明は更に良好に理解されるので、本発明およびそれに伴う利点の多くは更に完全に容易に理解されるであろう。

    DEAE−セルロースのカラム上でのイオン交換クロマトグラフィによる抗炎症因子の単離。

    セファデックスG−10分子篩カラム上でのDEAE−セルロースクロマトグラフィ(図1)からのピーク(第二)を含む抗炎症因子の分画。

    ラットのカラゲニン誘発水腫に対する免疫ミルクの効果(足重量、対照足%、平均値±標準誤差(sem)、n=10)。

    ラット足蹠の水腫に対する抗炎症因子の腹腔内投与の効果(μl、平均値±標準偏差(SD)、n=6)。

    ラット足の水腫試験における抗炎症因子の腹腔内投与量−反応曲線(対照%、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足蹠の水腫に対する高免疫ミルク因子対プラシーボ(ラクトース)の効果(対照%、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足蹠の水腫に対するMAIFの静脈内および経口投与の効果(対照%、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足蹠の水腫に対するMAIFの低静脈内投与の効果(対照%、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足の水腫試験におけるMAIFの静脈内投与量−反応曲線(対照%、平均値±標準偏差、n=6)。

    実験1、二群/限外濾過実験(平均対照水腫%、平均値±標準偏差、n=6)。

    実験2、二群/限外濾過実験(平均対照水腫%、平均値±標準偏差、n=6)。

    実験3、二群/限外濾過実験(平均対照水腫%、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足蹠の水腫の抑制に対するMAIFの各種処理の効果(足蹠の水腫のμl、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足蹠の水腫の抑制に対するMAIFの画分および免疫wpcの効果(足蹠の水腫のμl、平均値±標準偏差、n=6)。

    ラット足蹠でのカラゲニンに対する反応に対する5種類の麻酔薬の効果。 水腫の蓄積を同一動物で選択された間隔で観察した。 各データー点に対してn=6。

    ラット足蹠でのカラゲニンに対する反応の二相性の証明。 各データー点に対してn=5。 エーテルを麻酔薬として用いた。

    5mg/ラット(A)または40mg/ラット(B)で投与したMAIFは、エーテル麻酔したラットのカラゲニンに対する炎症反応を抑制しない。 総てのデーター点についてn=4。

    カラゲニンを作用させた時点(時間0)に静脈内注射したMAIF40mgによる二次的に食細胞によって媒介される反応中のカラゲニン誘発水腫の蓄積の抑制。 対照群での各データー点についてはn=12。 MAIF処理群の各データー点についてはn=10。

    ラット足蹠でのカラゲニンに対する反応に対する様々な時間でのラット当たり4mgで静脈内投与したMAIFの効果。 いずれの場合にも、水腫は投与4時間後に評価した。 各データー点に付いてn=12。

    逆受身アルツス反応に対する静脈内注射したMAIF20mgの効果。

    =p<0.01;

    ** =p<0.05。

    皮下移植した無菌スポンジへ好中球が血管系から移出する能力に対するMAIFの投与量を減少させる場合の効果。

    =p<0.01。

    スポンジを皮下移植したときまたは移植後120分までにMAIFをラット当たり20mgの投与量で投与したときに、炎症細胞がスポンジに蓄積する能力を抑制する効果。

    =p<0.01。

    正常な動物での皮下移植したスポンジへの細胞性の炎症の浸潤の時間経過。

    小静脈血管への好中球の血小板活性化因子(PAF)によって誘発される付着に対する抗炎症因子の製剤の効果。

    PAFによって誘発される好中球の移出に対する抗炎症因子の製剤の効果。

    小静脈血管を通る好中球のPAFによって誘発される流出に対する抗炎症因子の製剤の効果。

    抗炎症因子の製剤による好中球の付着の逆転。

    27aは、PAFに反応して血管に付着する好中球数の減少におけるMAIF製剤(40mg/ラット)の効果を示す。

    27bは、新たな好中球−内皮細胞の付着に対するMAIF製剤(40mg/ラット)の効果を示す。

    血管中の好中球の速度に対する抗炎症因子の製剤の効果。

    血管中の赤血球の速度に対する抗炎症因子の製剤の効果。

    血管中の白血球流出に対する抗炎症因子の効果。

    注射後24時間中に循環する好中球およびリンパ球の数に対する静脈内投与したMAIF製剤40mgの効果。

    MAIF製剤の静脈内投与と循環する白血球数との間の投与量−反応の関係(p<0.01)。

    各種様相のリンパ球の機能に対する抗炎症因子の効果。 33aは異種組織適合性抗原に対する宿主Tリンパ球の反応に対する因子の前投与の効果を示す。 33bはMAIFで処理したラットから得られるリンパ球を未処理ラットに注射したときに得られる結果を示す。 33Cおよび33Dはラットにおける脾臓重量および脾臓細胞数に対するMAIF処理の効果を示す。 33Eはリンパ球のコンカナバリンAで刺激したマイトジェン性反応に対するMAIF処理の効果を示す。

    静脈内注射したMAIF40mgによる感染により誘発された水腫の抑制。 二つの群の平均値は、対照では87±22μlであり、MAIFでは45±17μl、p<0.01であった。

    細菌の複製および皮下に移植したE. coli に感染させたスポンジに対するラット当たり40mgで静脈内投与したMAIFの効果。

    感染したスポンジ中への炎症細胞の浸潤のMAIF(ラット当たり40mg、静脈内)による抑制。

    E.coliに感染したスポンジにおける中間相(4〜16時間)の炎症性流体の蓄積の抑制に対するMAIF(ラット当たり40mg、静脈内)の効果。

    実験的腎盂腎炎の病原に対する静脈内投与したMAIF40mgの投与時および48時間後の効果。 左側のグラフ上の点線は平均バックグラウンド腎重量を表す。

    =p<0.01;

    ** =p<0.02。

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