ルピナスタンパク質を含むエマルション

申请号 JP2016576051 申请日 2015-06-15 公开(公告)号 JP2017519513A 公开(公告)日 2017-07-20
申请人 プロルーピン ゲーエムベーハーProlupin Gmbh; プロルーピン ゲーエムベーハーProlupin Gmbh; 发明人 アイスナー,ペーター; フィシュル,レジーナ; ミッターマイヤー,シュテファニー; ザハル,クリスチャン; トールシュターダ,シモネ; ヤコブス,ドロテー; シュライバー,クラウス; ヒキシュ,アンドレア;
摘要 本発明は、ルピナス(ハウチワマメ)タンパク質と 水 中に乳化させた 植物 性油脂とを少なくとも含むエマルション、および該エマルションの製造方法に関する。本発明のエマルションは、該エマルション中のルピナスタンパク質の質量分率が3%未満であることを特徴とする。本願で提案するエマルションは、レオロジー特性、色、匂いおよび味の点で 牛 乳に匹敵するものであり、無味無臭の様々な牛乳代替製品へとさらに加工することができる。
权利要求

ルピナスタンパク質を含むエマルションであって、 ルピナスタンパク質と中に乳化された植物性油脂とを少なくとも含み、 該エマルション中の該ルピナスタンパク質の質量分率が3%未満であることを特徴とするエマルション。前記エマルション中の前記ルピナスタンパク質の質量分率が2.5%未満であり、特に好ましくは1.8%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のエマルション。前記エマルション中の前記植物性油脂の質量分率が3%を超えることを特徴とする、請求項1または2に記載のエマルション。前記エマルション中の前記タンパク質に対する前記油脂の質量比が2を超えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエマルション。L*a*b*色空間における色値L*が88以上である色を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエマルション。前記ルピナスタンパク質中のα−コングルチンとβ−コングルチンとを合わせた質量分率が80%以上であり、γ−コングルチンの質量分率が1〜10%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエマルション。前記ルピナスタンパク質中のγ−コングルチンの質量分率が2.5%以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエマルション。ルピナス油脂を全く含まないか、または前記エマルション中のルピナス油脂の質量分率が0.2%未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエマルション。前記植物性油脂が、精製油脂であり、具体的にはパーム油脂および/またはココナッツ油であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルション。20℃における粘度が1mPa・s〜10mPa・sであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のエマルション。pHが6.5を超え、特に好ましくはpHが7.5を超えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエマルション。前記エマルション中の前記植物性油脂の粒子径D90が5μm未満であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエマルション。前記エマルション中の水の質量分率が87%を超えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のエマルション。糖類、香味料、粘度に影響を及ぼす炭水化物、酸性度を調節するリン酸塩、無機質、および/またはビタミン類をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエマルション。請求項1〜14のいずれか一項に記載のエマルションから製造される食品。ルピナスタンパク質を含むエマルション、特に請求項1〜14のいずれか一項または複数項に記載のエマルションの製造方法であって、 ルピナスタンパク質を水および植物性油脂と混合すること、ならびに 学的エネルギーを利用した混合過程により前記植物性油脂の粒子の大きさを小さくしてエマルションを形成することを含み、 前記エマルション中の前記ルピナスタンパク質の質量分率が3%未満であることを特徴とする方法。前記混合に使用される水が、30℃を超える温度、好ましくは45℃を超える温度に加熱されていることを特徴とする、請求項16に記載の方法。前記混合過程が、ホモジナイザーを使用して、200×103hPaを超える圧力、好ましくは300×103hPaを超える圧力で行われることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。前記混合過程を行った後に、前記エマルションを加熱して95℃を超える温度とし、次いで冷却することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。前記混合過程を行った後に、前記エマルションを加熱して119℃を超える温度、好ましくは120℃を超える温度とし、次いで冷却することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。γ−コングルチンの質量分率が2.5%以下であり、かつα−コングルチンとβ−コングルチンとを合わせた質量分率が80%以上であるルピナスタンパク質を前記エマルションの製造に使用することを特徴とする、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。ルピナス種子由来の油脂を含まない植物性油脂を前記エマルションの製造に使用することを特徴とする、請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。ルピナスタンパク質の分離を行う前にルピナス種子を超臨界CO2またはエタノールで処理し、そのルピナス種子から抽出されたルピナスタンパク質を前記エマルションの製造に使用することを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。

说明书全文

本発明は、ルピナス(ハウチワマメ)タンパク質と中に乳化させた植物性油脂とを少なくとも含むエマルション、および該エマルションの製造方法に関する。このエマルションは、ルピナスのプディング、ルピナスのヨーグルト、ルピナスのフレッシュチーズなどの食製品にさらに加工することができる。

豆乳やオート麦ミルクなどの、種子または原料をまるごと使用して製造したエマルションが知られている。このようなエマルションを製造する目的で、たとえば、大豆を水中で粉砕し、大豆に含まれる油脂を大豆タンパク質で乳化させた後、遠心分離によって不溶性成分を除去することが行われる。得られたエマルションは、乳の代替品として使用することができる。

ルピナスの種子を使用した類似の方法が欧州特許第0449396(A1)号明細書に記載されている。この文献の方法では、ルピナス種子をあらかじめ膨潤させ、必要に応じてさらに水を加えて「スラリー」を得た後、スラリーを室温で圧搾することにより、ルピナスタンパク質およびルピナス油脂のエマルションを得る。このようにして得られたエマルションは、二次的な植物由来成分および種子に含まれていた油脂酸化物を含むことから、独特な青臭い匂いや味を呈し、消費者に敬遠されることが多い。さらに、このエマルションにはルピナス由来の油脂が含まれているため黄色味が強く、牛乳の色とは大きく異なる。

WO2008/118129(A1)には、ルピナスの種子から製造された、飲料の基本材料が記載されている。この文献の一実施形態では、上述の工程に加えて、懸濁液を85℃で20分間加熱した後に、140℃の蒸気を2秒間注入することによって高温で加熱する工程を行い、これによって、豆独特の「不快な匂い」を低減させ、貯蔵寿命を延長している。この方法では、不飽和脂肪酸の含量の高い、種子由来の油脂が含まれることから、前記加熱工程の熱によって劣化が起こり、油脂酸化物およびトランス脂肪酸が生成され、ひいては風味が著しく損なわれうる。さらに、このWO2008/118129(A1)に記載の方法を使用した実験では、得られた溶液の温度を90℃を超える温度に上昇させると、ルピナスタンパク質の沈殿が生じることが示されている。

WO2004/093560(A1)には、基本材料として使用される、ルピナス種子タンパク質の濃縮混合物の製造が記載されている。この濃縮混合物は、未脱油ルピナス粉を原料としてルピナスタンパク質をアルカリ抽出し、次いで沈殿させ、可溶化させることによって得られる。この濃縮混合物を希釈し、様々な材料(たとえば、油脂、糖類、着色料など)を加えることによって、一種の「ルピナスミルク」が得られ、これをさらに別の製品に加工することができる。この方法を使用した実験では、このようにして得られた「ルピナスミルク」は黄色味を呈し、官能試験において強烈な「豆臭さ」や「青臭さ」があったことが示されている。前記濃縮混合物から得られた製品は、見た目においても味においても従来の乳製品とはほど遠いものであった。

これまで述べた方法では、油脂の除去や前処理を行っていないルピナス種子を原料として、ミルクの製造や、さらに別の食製品に加工されるミルク様基本材料の製造を行っている。これらの方法は、上述したように匂いや風味がよくないことに加え、別の食製品へと加工する際に、ルピナス種子に含まれる栄養分吸収阻害性の水溶性成分(オリゴ糖や苦味物質など)や、油相に含まれるルピナス種子由来の脂溶性成分および/または両親媒性成分が製品に持ち越されるという欠点がある。

ルピナス油を含まないルピナスタンパク質製品の不快な匂いや味を抑えることを目的として、さらに別の方法が提案されている。たとえばWO2004/034806(A1)に記載されているような、発酵を利用した方法のほか、熱を加えることによってルピナスタンパク質の風味を向上させる方法があり、このような熱を加える方法は、WO2008/089734(A1)に記載されているように、糖類の添加と組み合わせて行われることが多い。しかしながら、95℃を超える温度ではルピナスタンパク質が少なくとも部分的に変性してしまい、その機能特性の一部が失われる。特に、非常に高い乳化作用を有するルピナスグロブリンは高温の影響を受けやすく、その高度な乳化特性は熱処理によって失われてしまう。すなわち、ルピナスグロブリンは、95℃を超える温度では水性懸濁液中または水溶液中で凝集して粒子状の沈殿を生じ、乳化剤としては利用できなくなる。したがって、加熱による前処理を行ったルピナスタンパク質を用いて、ミルク、プディング、ヨーグルト、チーズなどの微細に乳化されたエマルションを安定に製造することは不可能である。

上述したように、牛乳とよく似た風味を有するエマルションであることから、牛乳の代替製品の製造に利用することができるようなルピナスタンパク質の安定なエマルションは未だに製造不可能である。

本発明は、レオロジー特性、色、匂いおよび味の点で牛乳に匹敵するエマルションであることから、無味無臭の様々な牛乳代替製品の調製に利用することができるようなルピナスタンパク質の安定なエマルション(ルピナスミルク)およびその製造方法を提供することを目的とする。

本発明の目的は、請求項1および請求項16に記載のエマルションおよび方法によって達成される。本発明のエマルションおよび方法の有利な実施形態は、従属請求項に記載されており、また、以下の説明および実施形態からも明らかである。

本発明のエマルションは、従来の牛乳代替製品よりもタンパク質含量(質量分率)が顕著に少なく、タンパク質含量(質量分率)が3%未満、好ましくは2.5%未満、特に好ましくは1.8%以下であることを特徴とする。本発明のエマルションは、タンパク質の含量が少ないにもかかわらず、従来の牛乳代替製品と同等以上の油脂含量(質量分率)を有することができる。油脂含量は、3%を超えることが好ましく、4%以上であることが特に好ましい。本発明のエマルションの油脂含量は植物性油脂の添加によって容易に調整することができ、本発明のエマルションはそのようにして油脂含量が高められていることから、エマルションの口当たりが改善されており、さらに、その粘度も、20℃で1〜10mPa・sの範囲にまで高められている。上述したように、油脂含量は植物性油脂の添加によって容易に調整できることから、添加する植物性油脂としてルピナス油脂は使用されない。典型的な一実施形態において、ルピナスタンパク質1.8%および植物性油脂4%を水中に含む本発明のエマルションの粘度は、20℃で2mPa・sである。これは牛乳の粘度に相当する。

本願明細書において、「植物性油脂」は固体油脂および液体油脂(脂肪油)を包含する。以下の記載において、液体の植物性油脂は植物油とも呼ばれる。

本発明のエマルションは、牛乳の代替製品の基本材料としての使用に特に適している。本発明のエマルションは、ルピナス油脂を使用していないこと、およびルピナスタンパク質の含量が従来よりも少ないことから、白色で、牛乳に近い粘度を有し、無味無臭である。本発明のエマルションは、95℃を超える温度で加熱した後も安定な状態を保つ。本発明のエマルションは、120℃を超える温度に達するまで加熱することが特に好ましく、このような加熱を行っても、その均質な物理特性は保存中にまったく変化しないか、わずかしか変化しない。

本発明のエマルションにおけるタンパク質に対する油脂の質量比は、1を超えることが好ましく、2を超えると有利であり、2.2を超えることが特に好ましい。さらに、該油脂は、粉砕後、本発明のエマルション中に非常に細かく分散されている。本発明のエマルション中に含まれる脂肪球の粒子径D90(脂肪球の90%がある粒径よりも小さい粒径を有していることを指す)は、5μm未満であることが好ましく、3μm未満がより好ましく、2μm未満が特に好ましい。驚くべきことに、本発明のエマルションは、タンパク質の含量が少ないにもかかわらず、前記のような粒子径を有する脂肪球の総表面積が大きいことにより、エマルションが安定な状態に保たれ、熱処理を行った後でもエマルションの安定性が変化しない。また、本発明のエマルションは、脂肪球の粉砕後、熱によるルピナスタンパク質の前処理を行わずとも、既に無味無臭に近いことが見出された。これらのことから明らかなように、脂肪球が大きな総表面積を有することより、ルピナスタンパク質に由来する両親媒性の不快な匂い分子はこの脂肪球/脂肪滴によく付着し、粒子が大きい場合やタンパク質含量が多い場合のように不快な匂いが放出されて後鼻腔を通じて感知されることはない。

本願で提案するエマルションの製造方法において、脂肪球/脂肪滴の粉砕は、30℃を超える温度で行うことが好ましく、45℃を超える温度で行うことがより好ましい。前記粉砕は、ホモジナイザーを用いて、200×103hPa(200バール)を超える圧で行うことが好ましい。粉砕を行った後、得られたエマルションを加熱して95℃を超える温度とすることが好ましく、該温度は110℃を超えることがより好ましく、120℃を超えることが特に好ましい。この加熱によって、ルピナスタンパク質の味および匂いがさらに改善されるが、これは大部分の用途において望ましい。さらに、加熱することによって、エマルションに牛乳のような風味が付与される。高温での加熱にもかかわらず、本発明のエマルションは加熱後およびこれに続く冷却後でも安定な状態が保たれる。また、先行技術とは異なり、加熱を行った後でもホモジナイゼーション工程を行う必要はない。

本発明のエマルションが、たとえば飲料として、あるいはヨーグルト、プディング、フレッシュチーズなどの製品の基本材料として消費されることを意図している場合には、たとえば、糖類、香味料、粘度に影響を及ぼす炭水化物、酸性度を調節するリン酸塩、無機質および/またはビタミン類などのさらなる材料を加える。技術的処理を単純化するには、本発明のエマルションへの前記材料の添加は、ホモジナイゼーションおよび加熱の前に行うと有利である。

本発明のエマルションにおけるルピナスタンパク質の使用量が3質量%未満であり、添加したルピナスタンパク質中のα−コングルチンおよびβ−コングルチンの割合が特に高く、かつそれに応じてγ−コングルチンの割合が低い場合、エマルションは特に長期間にわたって安定性を保つことが分かる。これは、ルピナスタンパク質の抽出の手法によって、たとえば、中性またはわずかにアルカリ性に調整したルピナスタンパク質溶液からα−コングルチンおよびβ−コングルチンを沈殿させることによって達成できる。このような操作を行っても、沈殿させたタンパク質中に5〜10質量%のγ−コングルチンが残る。γ−コングルチンを除去するには、ルピナスタンパク質の抽出を行う前に、酸性条件でルピナス原料(フレーク、粗粒粉または細粉)の前抽出を行うことによってγ−コングルチンを分離することが特に好ましい。この操作を行うことによって、ルピナスタンパク質中のγ−コングルチンの量を半分以下の2.5質量%以下に低減させることができ、したがって、エマルション中のα−コングルチンおよびβ−コングルチンのパーセンテージを増加させることができる。

酸性条件での前抽出は、ルピナスグロブリンの等電点付近で行うことが特に好ましい。ルピナスグロブリンの等電点は、ルピナス種によって異なり、pH4.3〜4.7の範囲にある。酸性条件での前抽出を2回以上行い、抽出後に、固液分離によってラフィネート(精製物)から抽出物を分離すると、α−コングルチンおよびβ−コングルチンの含量をさらに増加させることができる。一例として、独国特許第19640992(A1)号明細書には、従来技術に従って、酸性条件での抽出とアルカリ条件での抽出とを組み合わせた好ましい方法が記載されている。

さらに別の方法として、向流法によるタンパク質の2段抽出を行うことによっても、ルピナスタンパク質中のα−コングルチンの量およびβ−コングルチンの量を増加させ、かつγ−コングルチンの量を低減させることができる。この方法では、タンパク質抽出により得られたラフィネートから、同じpH(pH6.5〜8.0の範囲)またはそれに近いpHで繰り返し抽出を行う。ラフィネートからの第2段目の抽出で得られた抽出液を次の原料として第1段目のタンパク質抽出に供することができる。第2段目の抽出を経た抽出液のみをこの系の抽出液として取り出し、沈殿などの方法によってタンパク質を濃縮する。このような向流法によっても、沈殿させたタンパク質中のα−コングルチンの量およびβ−コングルチンの量を増加させることができる。

本発明のエマルションの用途およびさらなる加工の種類によっては、製造されるエマルションの官能的品質または技術的機能性に注目して処理を行うことができる。具体的には、ルピナスタンパク質を、本発明のエマルションの形態に加工する前に乾燥させると、さらに匂いおよび味が抑えられたエマルションが得られる。この工程によって、タンパク質由来の様々な揮発性匂い分子が水相とともに分離される。しかしながら、本発明のエマルションに使用する前のルピナスタンパク質を乾燥させずに湿潤状態で加工を行った方が、ルピナスタンパク質の機能性は高くなる。したがって、本発明のエマルションの製造に当たっては、抽出および沈殿によって得られた湿潤状態のルピナスタンパク質を、水中に溶解または懸濁させて使用することは有利だと考えられる。これは、湿潤状態のルピナスタンパク質を使用することによって、同等の乳化性を維持しつつも、本発明のエマルション中のタンパク質含量をさらに低減させることができるからである。前記ルピナスタンパク質の水懸濁液は、粘度の高い液体の形態であっても、凍結された固体の形態であってもよい。

ルピナスタンパク質を分離する前に、超臨界CO2またはエタノールでルピナス種子を処理することによって、本発明のエマルションの官能的品質をさらに改善することができる。この処理によって、原料から相当な量のカロテノイド類を取り除くことができ、本発明のエマルションの黄色味が抑えられ、牛乳のような色が得られる。抽出前にCO2で処理したルピナスタンパク質から得た本発明のエマルション(ルピナスミルク)の色と、油脂の除去を行っていないルピナス原料から抽出したWO2004/093560(A1)によるルピナスミルクの色を比較すると、対照のエマルションの黄色味と比べて、本発明のエマルションが牛乳のような白色を呈することがはっきりと示された。

本発明のエマルションのpHは6.5を超えることが特に好ましく、7.5を超えることがさらに好ましい。このようなpH値を有し、かつエマルション中にリン酸塩またはその他の安定化剤が含まれていれば、本発明のエマルションを熱い酸性飲料(たとえばコーヒー)に添加しても、ルピナスタンパク質の凝集を防ぐことができ、芳醇な風味を得ることができる。

以下、本発明のエマルションおよびこれに関連する方法を、実施形態および図を参照しつつ、例を挙げて説明する。

本願で提案する方法における工程の流れを示した第1の例を示す。

本願で提案する方法における工程の流れを示した第2の例を示す。

本発明によるエマルションの製造を示した図1の例では、まず、ルピナス種子からルピナスタンパク質を抽出してスプレー乾燥した後、マルトデキストリン、リン酸二カリウムおよび水と混合する。この混合は、たとえば、Turrax(登録商標)などの分散装置を用いて、V=6000rpm、温度T=50℃、t=10分間の条件で行う。次いで、得られた混合物に液糖およびリン酸一カリウムを加え、T=50℃、t=10分間の条件で撹拌する。次の工程で、溶融した油脂を前記混合物に加え、ここでも、前記分散装置によってT=50℃、t=10分間の条件で撹拌してよく混合する。次いで、T=50℃、圧力p=250/50×103hPa(250/50バール)の条件でホモジナイゼーションを行う。最後に、得られたエマルションを、T=140℃、t=10秒間の条件で超高温殺菌する。

本発明によるエマルションの製造を示した図2の例では、まず、ルピナス種子から抽出した湿潤状態のままのルピナスタンパク質、すなわち、酸性のクリームチーズ状タンパク質を、マルトデキストリン、リン酸二カリウムおよび水と混合する。ここでも、この混合は、Turraxを用いて、V=6000rpm、温度T=50℃、t=10分間の条件で行う。次いで、得られた混合物に液糖およびリン酸一カリウムを加え、T=50℃、t=10分間の条件で撹拌する。酸性のクリームチーズ状タンパク質を混合物に加えたことによって酸性側に移動したpHを中和するため、水酸化ナトリウムを加え、T=50℃、t=30分間の条件で撹拌する。水酸化ナトリウムの量は、混合物のpHが6.8〜7.0の範囲になるような量を選択する。次の工程で、溶融した油脂を前記混合物に加え、ここでも、TurraxによってT=50℃、t=10分間の条件で撹拌してよく混合する。次いで、T=50℃、圧力p=250/50×103hPa(250/50バール)の条件でホモジナイゼーションを行う。最後に、得られたエマルションを、T=140℃、t=10秒間の条件で超高温殺菌する。

これらの例において、ルピナスタンパク質および油脂の添加量は、エマルション中のルピナスタンパク質の質量分率が1.8%となり、油脂の質量分率が4%となるような量を選択する。本願で提案する方法では、純粋なルピナスタンパク質、すなわち、ルピナス油脂を含まないルピナスタンパク質をエマルションの製造に使用した。油脂としては、たとえば、パーム油脂またはココナッツ油を加える。

以下の表に、本発明のエマルションの典型的な組成を示す。

調製されたエマルションは、ルピナスタンパク質由来のカロテノイドを含んでいるが、ほぼ白色を呈する。エマルションのL*値(定義についてはL*a*b*色空間を参照されたい)は88以上であり、L*値が約90である牛乳と比較して色差はわずかΔE=1〜2しかない。同様に、牛乳と豆乳(L*値=50〜80)とを比較すると、色差ΔEは5を超えることが多く、文献ではこのような大きな色差は異なる色として評価されている(Popov-Raljic et al., 2008 Color Change of UHT Milk During Storage. Sensors Vol: 8(9)を参照されたい)。

タンパク質に対する油脂の比が2である本発明のエマルションは、10mPa・s未満という低い粘度を有するにもかかわらず、110℃を超える温度に加熱されてその後保存される間、何日間にもわたって驚くべき安定性を示す。驚くべきことに、乳化剤としてルピナスタンパク質のみを使用した場合でも、10日間から8週間にわたる保存後、エマルション中に分離した固体は全く見られないか、あったとしてもごくわずかである。このエマルションを用いた実験では、140℃の温度に加熱した後でも、10日間の保存中において油脂やタンパク質の分離はほとんど検出されなかった。したがって、本発明のエマルションから沈殿した固体の量は、エマルション中に含まれていた固体の10%未満であった。いくつかの実験では、4℃における10日間の保存後、沈殿した固体は2%未満であった。8週間保存した後でも同様の結果が得られた。

本発明によるエマルションの一実施形態として説明したルピナスミルク以外にも、さらなる加工を行うことによって、本発明のエマルションから味のよい牛乳代替製品を様々な形態で得ることができる。いくつかの例を以下に示す。

ルピナスのバニラプディング:

ルピナスミルクからプディングを作製するため、まずコーンスターチと糖類を混合した。さらに、特定の味を付与するため、たとえば、カカオパウダーまたは香味料を添加することができる。また、舌触りのクリーミーさを増したり、黄色味をさらに強めたり、またはタンパク質含量を増加させることを目的として、コーンスターチと糖類の乾燥混合物に添加するルピナスタンパク質単離物の量をさらに増やすことができる。

本発明のエマルションすなわちルピナスミルクを沸騰させ、火から下ろし、ここにスターチ混合物を投入して撹拌した。得られた混合物を撹拌しながらさらに1分間沸騰させ、容器に流し込んだ。ルピナスプディングの別の製造方法として、ルピナスミルクに含まれる各材料と、プディングに使用されるそれ以外の材料から直接プディングを作製した。この方法でも、所望の風味を得るため、95℃を超える温度で混合物を加熱すること、および激しい撹拌によって脂肪球を粉砕することが必要であった。

ルピナスのヨーグルト: 本発明のエマルションは、ヨーグルト様製品の製造に使用することができる。ルピナスミルク中の糖類、油脂およびタンパク質の含量(乾燥物量:10〜18%)は、適宜調整することができる。さらなる材料を加える際、その成分の溶解性が熱によって増加するのであれば、ルピナスミルクを再度加熱してもよい。次の工程で、ルピナスミルク(20〜45℃)に乳酸菌を播種し、pHが4.3±0.2に達するまで30〜40℃で発酵させる。次いで、1〜4℃で24時間冷却する。発酵中および冷却中は、ヨーグルトをできる限り静かに保管する。しっかりと固まったヨーグルト、滑らかなヨーグルトのいずれをも作製することが可能である。滑らかなヨーグルトは、冷却工程の後にさらに撹拌することによって得られ、これに果実加工品または香味料を加えてもよい。

ルピナスのフレッシュチーズの製造: 本発明のエマルションは、フレッシュチーズ様製品の製造に使用することもできる。ルピナスミルク中の乾燥物量は、油脂またはタンパク質の添加によって好適に増加させることができる。さらに、増粘剤または粘度増強物質(たとえば柑橘類の繊維)および無機質を添加して、フレッシュチーズの口当たりおよび風味を向上させることができる。フレッシュチーズを製造するには、本発明のルピナスミルクに20〜45℃で乳酸菌培養物を播種し、pHが4.5未満に達するまで30〜40℃で発酵させる。次いで、生じたホエーをいわゆるカード(凝固したエマルション)から分離する。得られたフレッシュチーズ様製品を容器に入れる。香味料、香辛料またはさらなる安定化剤を加えてもよく、必要に応じて再度熱処理した後に、1〜6℃で保存する。

このようなフレッシュチーズ様製品は、さらに別の培養物(たとえばカビ)と混合し、数日間〜数週間かけて熟成することができる。熟成によって、セミハードチーズ様製品、ソフトチーズ様製品、あるいはハードチーズ様製品を製造することができる。

QQ群二维码
意见反馈