C1 inhibitor produced in milk of transgenic mammal

申请号 JP2011270236 申请日 2011-12-09 公开(公告)号 JP2012050465A 公开(公告)日 2012-03-15
申请人 Pharming Intellectual Pty Bv; ファーミング インテレクチュアル プロパティー ベー.フェー.; 发明人 NUIJENS JOHANNES HENRICUS; VAN VEEN HENRICUS ANTONIUS; PIEPER FRANK R; HEUS JORIS JAN;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a transgenic nonhuman mammals expressing C1 inhibitor in their milk.SOLUTION: The transgenic nonhuman mammals expressing C1 inhibitor in their milk are provided. The C1 inhibitor is useful in treating patients with hereditary angioedema or patients requiring immunosuppression. The transgenic nonhuman mammals have a transgene comprising a recombinant DNA segment encoding a C1 inhibitor operably linked to at least one regulatory sequence effective to promote expression of the DNA segment in mammary gland cells and a segment encoding signal peptide functionally in mammary secretory cells.
权利要求
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    (技術分野)
    本発明は、組換え遺伝子および医薬の分野に存在し、そして治療分子としてのC1インヒビターの形質転換産生およびその使用(例えば、遺伝的な血管性腫を罹患する患者または免疫抑制を要する患者における補充療法において)に関する。

    (発明の背景)
    ヒトC1インヒビター(またC1エステラーゼインヒビターとしても公知)は、周知であり、そして同定された物質である。 C1インヒビターは、セリンプロテアーゼインヒビターのスーパーファミリーに属し、そして補体系のC1rおよびC1sの唯一のインヒビターであり、そして接触系のXIIa因子およびカリクレインの主要なインヒビターである。 さらに、C1インヒビターはまた、XI因子(組織型プラスミノゲン活性因子およびプラスミン)のような凝血および線維溶解系の他のセリンプロテアーゼを阻害する(Schapira M.ら、1985、Complement 2:111/Davis A.E.1988、Ann.Rev.Immunol、6:595)。

    C1インヒビターは、染色体11の単一遺伝子によってコードされ、かつ8のエキソンおよび7のイントロンからなる。 この全体のゲノム配列は公知であり、そして500のアミノ酸(22のアミノ酸単一配列を含む)のタンパク質をコードする(Carter P.ら、1998、Euro.J.Biochem、173;163)。 血漿C1インヒビターは、およそ105kDaの糖タンパク質であり、そして重度にグリコシル化され、その分子の質量の50%までが炭水化物から構成される。

    現在、高度にまたは部分的にのいずれかで精製される、ヒト血液から得られるC1インヒビターのみが、同じヨーロッパの国々で遺伝性血管性水腫の処置のために使用されそして認可される。 これは、C1インヒビターの遺伝的欠損によって引き起こされ、血管透過性の局所的な増加によって生じる非常に限局性の上皮下の非圧痕水腫の発作によって特徴付けられる疾患である(Cicardi Mら、1998、Immunobiol.199:366)。 主に含まれるこれらの3つの部位は以下である:皮下組織(四肢、顔、生殖器、臀部)、腹部の器官および上部気道(喉頭)。 腸管粘膜の腫脹は、非常に痛いものであり得、そして喉頭の水腫は、生命にかかわる事態である。

    アンドロゲンまたは線維溶解因子を使用する予防的治療を使用して、多くのそして深刻な発作を減少するが、これらは急性の発症には効果的ではなく、その上これらは長期間の治療には不適合な副作用を引き起こす。 (Zurloら、1990、Fertility and sterility54:64)。

    C1インヒビターの補充療法が、急性の発作の場合における処置のために試みられてきた。 しかし、血漿から単離された生成物は、汚染の重大なリスクを引き起こす。 現在使用されるC1インヒビターのこの血漿調製物は、蒸発処理されるか、または低温殺菌された生成物である。 熱処理は、血液産生感染因子を除去するための予防である。 ウイルスの除去/不活化のための予防をするけれども、例えばHIVおよび肝炎のようなウイルスの伝播のリスクはまだ存在する(De Filippi F.ら、1998、Transfusion 38:307)。 安全問題に加えて、精製された血漿C1インヒビターの有効性の欠如ならびに関連する高いコストが不利益である。

    組換えDNA技術を介した、COSまたはCHO細胞中での機能的C1インヒビターの産生が報告された(例えば、Eldering E.ら、1988、J.Biol.Chem.263:11776を参照のこと)。 しかし、μg/ml範囲の、報告された収量は、治療的適用にはあまりに少ない。 生物中におけるC1インヒビターの発現は、機能的インヒビターの正しい翻訳後の改変という結果になることを期待しないし、そして気付く限り試みられていない。

    (発明の要旨)
    1つの局面において、本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物発現C1インヒビターをその乳汁中に提供する。 このような哺乳動物は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳腺細胞中に、DNAセグメントの発現を促進するのに効果的な少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されたC1インヒビターをコードする組換えDNAセグメントを含む導入遺伝子を有し、そしてトランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳分泌細胞中にシグナルペプチドを機能的にコードするセグメントを有する。 非ヒト哺乳動物の成体形または非ヒト哺乳動物の雌子孫において、この導入遺伝子は、乳房細胞中に組換えDNAセグメントを発現し、乳分泌細胞によって非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳汁中に分泌される形態のC1インヒビターを産生し得る。 このC1インヒビターは、好ましくはヒトであり、そして好ましくは乳汁中に少なくとも1mg/mlの濃度で発現される。

    本発明はまた、C1インヒビターを提供する方法に関する。 このような方法は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の成体形または項目1に記載の雌子孫から乳汁を回収する工程を伴う。 必要に応じて、このC1インヒビターは、さらに乳汁から精製され得る。 いくつかの方法において、このC1インヒビターは薬学的組成物として、薬学的キャリアと共に処方される。

    本発明はさらに、ヒトC1インヒビターを含む非ヒト動物由来の乳汁を提供する。 このC1インヒビターは、好ましくは少なくとも1mg/mlの濃度、および少なくとも0.9の機能的指数(functionality index)を有する。

    本発明はさらに、C1インヒビターおよび薬学的キャリアを含む薬学的組成物を提供する。 このC1インヒビターは乳汁または他の供給源から得られ得る。 いくつかのこのような組成物において、このヒトC1インヒビターは他のヒトタンパク質を有さない。 いくつかの組成物において、このヒトC1インヒビターは少なくとも98%または99%(w/w)純粋である。

    本発明はまた、上記の組成物を使用して、C1インヒビター欠損症に罹患しているか、または感受性のある患者を処置する方法を提供する。

    別の局面において、本発明は、C1インヒビター欠損症に罹患しているか、または感受性のある患者の処置のための医薬品の製造において、精製されたヒトC1インヒビターの使用を提供する。 いくつかの使用において、ヒトC1インヒビターは、他のヒトタンパク質を有さず、そしていくつかの方法において、このヒトC1インヒビターは少なくとも98%または99%純粋である。

    本発明はさらに、ヒトC1インヒビターを精製する方法を提供する。 このような方法は、ヒトC1インヒビターを含むサンプルを、陽イオン交換カラムに、このヒトC1インヒビターがカラムに結合する条件化で充填する工程を伴う。 次いでヒトC1インヒビターは、陽イオン交換カラムから溶出される。 この溶出物は、陰イオン交換カラムに、このヒトC1インヒビターがカラムに結合する条件化で充填される。 次いでヒトC1インヒビターは、陰イオン交換カラムから溶出される。 この溶出物は、金属イオン交換カラムに、残留する混入タンパク質がカラムに結合する条件化で充填される。 次いでヒトC1インヒビターを含む溶出物は、金属イオン交換カラムから収集される。 上記の方法は、ウサギまたは他の非ヒトC1インヒビターからヒトC1インヒビターを分離するために、特に適切である。
    本発明は例えば、以下の項目を提供する:
    (項目1)非ヒト哺乳動物であって、該非ヒト哺乳動物は、以下:
    該哺乳動物に対して異種のC1インヒビターをコードするDNAセグメントであって、該哺乳動物の乳腺細胞における該DNAセグメントの発現を促進させるのに効果的な少なくとも1つの調節配列に対して作動可能に連結されている、DNAセグメント、および該哺乳動物の乳房細胞において機能するシグナルペプチドをコードするセグメント、を含み;
    ここで、該C1インヒビターをコードするDNAセグメントが、該哺乳動物の成体形またはその雌の子孫の乳腺細胞において発現されて、該非ヒト哺乳動物の乳汁中にC1インヒビターを産生し得る、非ヒト哺乳動物。
    (項目2)前記乳汁中の前記C1インヒビターの濃度が、少なくとも1mg/mlである、項目1に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目3)前記C1インヒビターがヒトC1インヒビターである、項目1に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目4)前記非ヒト哺乳動物が、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシである、項目1に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目5)前記組換えDNAセグメントがcDNAである、項目4に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目6)前記組換えDNAセグメントがゲノムである、項目4に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目7)前記組換えDNAセグメントが、cDNA−ゲノムハイブリッドである、項目4に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目8)前記シグナルペプチドが、C1インヒビターシグナルペプチドである、項目1に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目9)前記異種C1インヒビターをコードするDNAセグメント、前記調節配列および前記シグナルペプチドをコードするセグメントが、前記哺乳動物の生殖細胞系中に挿入される、項目1に記載の非ヒト哺乳動物。
    (項目10)C1インヒビターを提供する方法であって、該方法は、以下:
    項目1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の成体形またはその雌の子孫から乳汁を回収する工程、
    を包含する、方法。
    (項目11)食品中に前記乳汁を組み込む工程をさらに包含する、項目10に記載の方法。
    (項目12)前記乳汁から前記C1インヒビターを精製する工程をさらに包含する、項目11に記載の方法。
    (項目13)前記C1インヒビターが、少なくとも95%純粋である、項目12に記載の方法。
    (項目14)前記C1インヒビターを、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与または経口投与のための薬学的キャリアと混合する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
    (項目15)ヒトC1インヒビターを含む非ヒト哺乳動物由来の乳汁。
    (項目16)前記C1インヒビタータンパク質の濃度が、少なくとも1mg/mlである、項目15に記載の乳汁。
    (項目17)前記C1インヒビターが少なくとも0.9の機能性指数を有する、項目16に記載の乳汁。
    (項目18)項目12に記載の方法によって産生されるC1インヒビター。
    (項目19)前記C1インヒビターが、ヒトC1インヒビターであってそして他のヒトタンパク質を含まない、項目18に記載のC1インヒビター。
    (項目20)項目19に記載のC1インヒビターおよび薬学的キャリアを含む、薬学的組成物。
    (項目21)前記薬学的キャリアが、静脈内投与のためである、項目20に記載の薬学的組成物。
    (項目22)前記薬学的組成物が、滅菌されており、実質的に等張であり、そしてGMP条件下で産生される、項目21に記載の薬学的組成物。
    (項目23)C1インヒビター欠損症に罹患しているかまたは感受性のある患者を処置する方法であって、該方法は、項目1に従って産生されたC1インヒビターの有効量および薬学的受容可能な組成物を患者に投与する工程を包含する、方法。
    (項目24)ヒトC1インヒビターを精製する方法であって、該方法は、以下:
    該ヒトC1インヒビターが陽イオン交換カラムに結合する条件下で、該陽イオン交換カラムに該ヒトC1インヒビターを含むサンプルをロードする工程;
    該陽イオン交換カラムから該ヒトC1インヒビターを溶出する工程;
    該ヒトC1インヒビターが陰イオン交換カラムに結合する条件下で、該陰イオン交換カラムに該溶出液をロードする工程;
    該陰イオン交換カラムから該ヒトC1インヒビターを溶出する工程;
    残留する混入タンパク質が金属イオン交換カラムに結合する条件下で、該金属イオン交換カラムに該溶出液をロードする工程;
    該金属イオン交換カラムから該ヒトC1インヒビターを含む溶出液を収集する工程、
    を包含する、方法。
    (項目25)前記サンプルがウサギC1インヒビターをさらに含み;そして、前記金属イオン交換カラムからの前記溶出液が、該サンプルよりも、ウサギC1インヒビターに対するヒトC1インヒビターのより高い比率を有する、項目24に記載の方法。
    (項目26)前記比率が少なくとも500:1である、項目25に記載の方法。
    (項目27)他のヒトタンパク質を含まないヒトC1インヒビターを含む、薬学的組成物。
    (項目28)少なくとも98%w/w純粋であるヒトC1インヒビターを含む、薬学的組成物。
    (項目29)滅菌されている、項目27または項目28に記載の薬学的組成物。
    (項目30)C1インヒビター欠損症に罹患しているかまたは感受性のある患者を処置するための方法であって、該方法は、項目27〜項目29のいずれか1項に記載の組成物の有効量を該患者に投与する工程を包含する、方法。
    (項目31)C1インヒビター欠損症に罹患しているかまたは感受性のある患者の処置のための医薬の製造における、非ヒトタンパク質を含まないヒトC1インヒビターの使用。
    (項目32)C1インヒビター欠損症に罹患しているかまたは感受性のある患者の処置のための医薬の製造における、少なくとも98%w/w純粋であるヒトC1インヒビターの使用。

    図1aは、マイクロインジェクションに使用された2つの重複フラグメントの略図の提示である。 ウシαS1−カゼインプロモーターフラグメントが黒の棒で示され、C1インヒビターエキソンが灰色の棒で示され、そしてC1インヒビターイントロンおよび隣接配列が細い黒の線で示される。 組換えの部位(重複)は十字で示される。 3'隣接領域のEcoRI部位がどこにあるかは、分かっていない。

    図1bは、マイクロインジェクションに使用された単一ゲノムフラグメントの略図の提示である。

    (定義)
    用語「実質的に同一」または「実質的に相同」とは、2つのペプチド配列が、必要に応じて整列する場合(例えば、GAPプログラムまたはデフォルトギャップウェイトを使用するBESTFITによって)、少なくとも65%の配列同一性、好ましくは少なくとも80または90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、またはそれ以上(例えば99%の配列同一性)を共有することを意味する。 好ましくは、残基の位置は、同一でない場合、保存的アミノ酸置換によって相違する。
    用語「実質的に純粋」または「単離された」とは、対象種が同定されそして分離され、および/またはその自然環境の成分(例えば、乳汁)、非ヒト組織培養細胞または天然供給源から回収されることを意味する。 例えば、非ヒト細胞において組換え手法によって産生された、実質的に純粋または単離されたヒトC1インヒビターは、天然に存在する他のヒトタンパク質を有さない。 通常、対象種は、現在の種に優勢であり(すなわち、組成物中で、モル基準で他の個々のいずれの種よりも豊富である)、そして好ましくは、実質的に精製された分画は組成物であり、ここで対象種は、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モル基準で)を含む。 一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80〜90%重量より多くを含み、より好ましくは90、95、99または99.9%である。 もっとも好ましくは、この対象種は精製され、本質的に均質であり(従来の検出方法によって組成物中に混入種は検出されない)、ここでこの組成物は本質的に単一高分子種の誘導体からなる。

    DNAセグメントは、別のDNAセグメントと機能的な関連性があるように配置される場合、作動可能に連結される。 例えば、シグナル配列のDNAが、ポリペプチドの分泌において関与するプレタンパク質として発現される場合、これはポリペプチドをコードするDNAと作動可能に連結される;プロモーターまたはエンハンサーが配列の転写を刺激する場合、これはコードする配列と作動可能に連結する。 一般に、作動可能に連結されるDNA配列は連続し、そしてシグナル配列が両方とも連続する場合であり、そしてリーディングフェーズ(reading phase)である。 しかし、エンハンサーは、その転写を制御する配列をコードする配列と連続する必要はない。 連鎖は、便利な制限部位またはそれらの代わりに挿入されたアダプターもしくはリンカーで連結することによって達成される。

    外因性DNAセグメントは、細胞に対して異種のものであり(例えば、この細胞とは異なる種由来)、または細胞のDNAセグメントに対して同一であるが宿主細胞ゲノム中で不自然な位置にある。 外因性DNAセグメントは、外因性ポリペプチドを収集するために発現される。

    トランスジェニック哺乳動物において、生殖細胞系列細胞および体細胞の全て、または実質的に全ては、哺乳動物または初期胚段階の哺乳動物の祖先の中に導入される導入遺伝子を含む。

    本発明はさらに、精製されたヒトC1インヒビターを含む薬学的組成物を提供する。 いくつかのこのような組成物において、このヒトC1インヒビターは他のヒトタンパク質を含まない。 いくつかの組成物において、このヒトC1インヒビターは、少なくとも98%または99%w/w純粋である。

    本発明はまた、C1インヒビター欠損症に罹患しているか、または感受性のある患者を、上記の組成物を使用して処置する方法を提供する。

    別の局面において、本発明は、C1インヒビター欠損症に罹患しているか、または感受性のある患者の処置のための医薬品の製造において、精製されたヒトC1インヒビターの使用を提供する。 いくつかの使用において、ヒトC1インヒビターは、他のヒトタンパク質を有さず、そしていくつかの方法において、このヒトC1インヒビターは少なくとも98%または99%純粋である。

    (詳細な説明)
    本発明は、効果的でかつ安全な、トランスジェニック動物の乳汁中におけるC1インヒビターの産生、乳汁または他の供給源からのC1インヒビターの精製、およびそれらの治療的使用に関する。 この応用によって提供される結果は、C1インヒビターは、非常に高濃度で乳汁中に、適切に折りたたまれ、かつ(酵素)阻害活性を付与するために翻訳後に改変された形態で産生され得る。 血漿由来のC1インヒビターと比較して、トランスジェニック動物を介して産生されるC1インヒビターは、血液産生感染因子の伝染のリスクを有さない。 トランスジェニック産物の産生のために使用される動物は、均一な集団であり、そして血漿ドナーよりもよく制御され得、それによってC1インヒビターの単離のためのより安全な開始点を提供する。 これは臨床的使用にとって血漿産物よりもより安全なC1インヒビターの組換え形態を生成する。

    本発明は、その乳汁中にC1インヒビターを分泌するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。 分泌は、C1インヒビターおよび乳腺に対して遺伝子の標的発現を可能にする少なくとも1つの調節配列をコードする導入遺伝子を組み込むことによって達成される。 この導入遺伝子は発現され、そして乳腺中で翻訳後に改変され、次いで乳汁中に分泌される。

    (A. C1インヒビター遺伝子)
    C1インヒビターcDNA配列は、22アミノ酸シグナル配列を含む500アミノ酸のタンパク質をコードすることが示された(Bockら、1986,Biochem.25:4292−4301)。 C1インヒビターのヒトゲノム配列の全体は公知であり、そしてこの遺伝子は7のイントロンを含むことが示される(Carter P.ら、1988、Eur.J.Biochem.173:163)。 この参考文献に記載される原形の配列の任意の改変体の対立遺伝子で、同族で、そして誘導されるこの改変体を発現するトランスジェニック哺乳動物は、本発明中に含まれる。 このような改変体は通常、公知のC1インヒビター遺伝子とのアミノ酸レベルで、実質的な配列同一性を示す。 このような改変体は通常、ストリンジェントな条件下で公知の遺伝子とハイブリダイズするか、または公知の遺伝子の1つによってコードされるポリペプチドに対する抗体と交差反応する。 ゲノムおよびcDNA配列の他の例は、ジーンバンクから入手可能である。 C1インヒビター遺伝子のさらにクローン化された配列が必要とされる程度まで、これらは公知のC1インヒビター配列を使用して、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー(好ましくはヒト)から得られ得る。

    (C. 導入遺伝子設計)
    導入遺伝子は、導入遺伝子を保有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳腺に対して組換えC1インヒビターを発現を標的化するように設計される。 この基本的なアプローチは、シグナル配列を有するタンパク質をコードする外因性DNAセグメントを、その外因性DNAセグメントの発現を促進するのに効果的な調節配列と作動可能に連結する工程を含む。 代表的に、この調節配列は、プロモーターおよびエンハンサーを含む。 このDNAセグメントは、ゲノム、ミニジーン(1つ以上のイントロンが省略されたゲノム)、cDNA、YACフラグメント、2つの異なるC1インヒビター遺伝子のキメラ、またはこれらの任意のハイブリッドであり得る。 ゲノム配列を含むことは一般に、より高い発現レベルをもたらす。

    ゲノム構築物において、全てのイントロン配列を保持する必要はない。 例えば、いくつかのイントロン配列は、DNA操作および続くマイクロインジェクションを促進する、より小さな導入遺伝子を得るために除去され得る。 Archibaldら、WO90/05188(全ての目的のために、その全体が参考として援用される)を参照のこと。 いくつかのイントロンの除去はまた、いくつかの場合に発現レベルを増強するために有用である。 翻訳後修飾が実質的に完全であることを保証するために発現レベルを減少する1つ以上のイントロンの除去も、また望ましくあり得る。 いくつかまたは全ての非コードエキソンを削除することもまた可能である。 いくつかの導入遺伝子において、C1インヒビターコード配列において選択されたヌクレオチドは、タンパク分解性切断部位を除去するように変異される。

    トランスジェニック哺乳動物によって産生されたC1インヒビターの意図された使用は、通常はヒトへの投与なので、C1インヒビター配列をコードするDNAセグメントが得られる種は、好ましくはヒトである。 同様に、意図された使用が獣医学的治療における(例えば、ウマ、イヌまたはネコに対して)場合、そのDNAセグメントは同じ種由来であることが好ましい。

    プロモーターおよびエンハンサーのような調節配列は、排他的にかまたは少なくとも優先的に、乳腺中で発現される遺伝子(すなわち、乳腺特異的遺伝子)由来である。 プロモーターおよびエンハンサーの供給源として好ましい遺伝子としては、β−カゼイン、κ−カゼイン、αS1−カゼイン、αS2−カゼイン、β−ラクトグロブリン、ホエー酸タンパク質およびα−ラクトアルブミンが挙げられる。 このプロモーターおよびエンハンサーは、しかしいつもではないが通常は、同じ乳腺特異的遺伝子から得られる。 好ましくはこの遺伝子は、導入遺伝子が発現されるべき哺乳動物と同じ種の哺乳動物に由来する。 ヒト遺伝子由来の調節配列のような他の種由来の発現調節配列もまた、使用され得る。 このシグナル配列は、乳腺由来のC1インヒビターの分泌を指向し得なければならない。 適切なシグナル配列は、分泌タンパク質をコードする哺乳動物遺伝子由来であり得る。 C1インヒビターの天然の、シグナル配列が適切である。 このようなシグナル配列に加えて、シグナル配列の好ましい供給源は、このプロモーターおよびエンハンサーが得られるのと同じ遺伝子由来のシグナル配列である。 必要に応じて、さらなる調節配列が、発現レベルを最適化するためにその導入遺伝子に含まれる。 このような配列には、5'隣接領域、5'転写されるが翻訳されない領域、イントロン配列、3'転写されるが翻訳されない領域、ポリアデニル化部位、および3'隣接領域が挙げられる。 このような配列は、通常は、プロモーターおよびエンハンサーが得られる乳腺特異的遺伝子か、または発現されるC1インヒビターのいずれかから得られる。 このような配列の包含は、真正の乳腺特異的遺伝子の遺伝的環境および/または真正のC1インヒビター遺伝子の遺伝的環境を模倣する、遺伝的環境を産生する。 この遺伝的環境は、いくつかの場合(例えば、ウシαS1−カゼイン)、転写遺伝子のより高い発現を生じる。 あるいは、3'隣接領域および非翻訳領域は、他の異種遺伝子(例えば、β−グロブリン遺伝子またはウイルス遺伝子)から得られる。 C1インヒビター遺伝子由来の3'非翻訳領域および5'非翻訳領域、または他の異種遺伝子を含むこともまた、転写産物の安定性を増大させ得る。

    いくつかの実施形態において、乳房特異的遺伝子由来の約0.5kb、1kb、5kb、10kb、15kb、20kbまたは30kbの5'隣接配列が、発現されるC1インヒビター遺伝子由来の約1kb、5kb、10kb、15kb、20kbもしくは30kbの3'隣接配列と組み合わせて含まれる。 このタンパク質がcDNA配列から発現される場合、イントロン配列がプロモーターとコード配列との間に含まれることが有利である。 イントロン配列は、好ましくは、プロモーターが得られる乳腺特異的領域の第1のイントロン由来の介在性配列由来の5'部分とIgG介在性配列またはC1インヒビター遺伝子の介在性配列由来の3'領域とから形成される、ハイブリッド配列である。 DeBoerら、WO 91/08216(全ての目的のためにその全体を参考として援用する)を参照のこと。 C1インヒビターcDNAを発現させるための別の好ましい導入遺伝子は、pBC1発現ベクターキット(Invitrogen(Carlsbad、CA)から市販される)に基づく。 このpBC1ベクターは、ヤギβ−カゼインプロモーター、ならびにヤギβ−カゼイン遺伝子の部分(いくつかのエキソンおよびイントロンを含む)、ならびに3'非翻訳配列を含む。 pBC1の唯一のXhoI挿入部位へのC1インヒビターcDNAの挿入は、ヤギβ−カゼインエキソン配列およびイントロン配列に隣接したC1インヒビターcDNA配列を含むキメラRNAを産生する。 しかし、このキメラRNA分子の適切なスプライシングの際、C1インヒビターcDNA配列のみが翻訳される。

    ゲノム配列由来のC1インヒビタータンパク質を発現する好ましい導入遺伝子は、C1インヒビタータンパク質の発現を指向するのに十分な調節配列を含む5'αS1カゼインフラグメントに作動可能に連結された、全体のコード配列およびシグナルペプチドをコードするゲノムC1インヒビター配列、3'UTRおよび3'隣接配列を含む。

    DNA配列情報は、上記に列挙される乳腺特異的遺伝子の全てについて、少なくとも1つの生物、そしてしばしばいくつかの生物において、利用可能である。 例えば、Richardsら、J. Biol. Chem. 256,526−532(1981)(α−ラクトアルブミン ラット);Campbellら、Nucleic Acids Res. 12,8685−8697(1984)(ラットWAP);Jonesら、J. Biol. Chem. 260,7042−7050(1985)(ラットβ−カゼイン);Yu−LeeおよびRosen,J. Biol. Chem. 258,10794−10804(1983)(ラットγ−カゼイン);Hall,Biochem. J. 242,735−742(1987)(α−ラクトアルブミン ヒト);Stewart,Nucleic Acids Res. 12,389(1984)(ウシのαs1カゼインcDNAおよびκカゼインcDNA);Gorodetskyら、Gene66,87−96(1988)(ウシβ−カゼイン);Alexanderら、Eur. J. Biochem. 178,395−401(1988)(ウシκ−カゼイン);Brignonら、FEBS Lett. 188,48−55(1977)(ウシαS2カゼイン);Jamiesonら、Gene61,85−90(1987),Ivanovら、Biol. Chem. Hoppe−Seyler 369,425−429(1988),Alexanderら、Nucleic Acids Res. 17,6739(1989)(ウシβラクトグロブリン);Vilotteら、Biochimie 69,609−620(1987)(ウシα−ラクトアルブミン)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと。 種々の乳汁タンパク質遺伝子の構造および機能は、MercierおよびVilotte,J. Dairy Sci. 76,3079−3098(1993)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)により論評される。 さらなる配列データが要求され得る程度まで、すでに得られた領域に隣接する配列は、存在する配列をプローブとして使用して容易にクローニングされ得る。 異なる生物由来の乳腺特異的調節配列は、同様にこのような生物由来のライブラリーを、既知の同族のヌクレオチド配列を使用して、または同族のタンパク質に対する抗体をプローブとして使用してスクリーニングすることによって得られる。

    乳腺に対して組換えタンパク質の発現を標的化するためにαS1−カゼイン調節配列を使用する一般的なストラテジーおよび例示的な導入遺伝子が、DeBoerら、WO 91/08216およびWO 93/25567(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)にさらに詳細に記載される。 他の乳腺特異的遺伝子由来の調節配列を使用する導入遺伝子の例もまた記載される。 例えば、Simonら、Bio/Technology 6,179−183(1988)およびWO 88/00239(1988)(ヒツジにおける発現のためのβ−ラクトグロブリン調節配列);Rosen,EP 279,582およびLeeら、Nucleic Acids Res. 16,1027−1041(1988)(マウスにおける発現のためのβ−カゼイン調節配列);Gordon,Biotechnology 5,1183(1987)(マウスにおける発現のためのWAP調節配列);WO 88/01648(1988)およびEur. J. Biochem. 186,43−48(1989)(マウスにおける発現のためのα−ラクトアルブミン調節配列)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと。

    (D. トランスジェネシス(transgenesis))
    上記に記載される導入遺伝子は、非ヒト哺乳動物に導入される。 ほとんどの非ヒト哺乳動物(マウスおよびラットなどのげっ歯類、ウサギ、ヒツジ(sheep)などのヒツジ(ovine)、ヤギ(goat)などのヤギ(caprine)、ブタ(pig)などのブタ(porcine)、ならびにウシ(cattle)およびバッファローなどのウシ(bovine)を含む)が適切である。 ウシ(bovine)は、多大な収量の乳汁という利点を提供し、一方マウスはトランスジェネシスおよび繁殖の容易さという利点を提供する。 ウサギはこれらの利点の妥協点を提供する。 ウサギは、1日に100mlの乳汁(タンパク質濃度がおよそ14%)を産生し得(Buhlerら、Bio/Technology 8,140(1990)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと)、そしてなお、マウスと同じ原理を使用し、そして同様の容易さで操作および繁殖させ得る。 非胎生の哺乳動物(例えば、ハリモグラまたはカモノハシ)は、代表的には使用されない。

    トランスジェネシスのいくつかの方法において、導入遺伝子は受精した卵母細胞の前核に導入される。 いくつかの動物(例えば、マウスおよびウサギなど)において、受精はインビボで実行され、そして受精卵は外科的に取り出される。 他の動物(特にウシ)において、生存動物または屠殺場の動物から卵子を取り出し、そしてインビトロでその卵子を受精することが好ましい。 DeBoerら、WO 91/08216を参照のこと。 体外受精は、実質的に同調した細胞中に、組込みのための細胞周期の最適な期(S期より遅くない)で導入遺伝子を導入することを可能にする。 導入遺伝子は通常マイクロインジェクションによって導入される。 米国特許第4,873,292号を参照のこと。 受精卵母細胞は、次いでインビトロで、約16〜150細胞を含む着床前胚が得られるまで培養される。 胚の16〜32細胞期は、桑実胚として記載される。 32個より多くの細胞を含む着床前胚は、胚盤胞と呼ばれる。 これらの胚は、代表的に64細胞期で、胞胚腔の発達を示す。 受精卵母細胞を着床前期まで培養する方法は、Gordonら、Methods Enzymol. 101,414(1984);Hoganら、Manipulation of the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,C. S. H. L. N. Y. (1986)(マウス胚);Hammerら、Nature 315,680(1985)(ウサギ胚およびブタ胚);Gandolfiら、J. Reprod. Fert. 81,23−28(1987);Rexroadら、J. Anim. Sci. 66,947−953(1988)(ヒツジ胚)およびEyestoneら、J. Reprod. Fert. 85,715−720(1989);Camousら、J. Reprod. Fert. 72,779−785(1984);およびHeymanら、Theriogenology 27,5968(1987)(ウシ胚)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)に記載される。 ときどき、着床前胚は、移植を待つ期間の間、凍結して保存される。 着床前胚は、偽妊娠雌の卵管に移され、導入遺伝子が組み込まれる場合、発生の段階に依存してトランスジェニック動物またはキメラ動物の誕生を生じる。 キメラ動物は、真の生殖細胞系列トランスジェニック動物を形成するように繁殖され得る。

    あるいは、導入遺伝子は、胚性幹細胞(ES)に導入され得る。 これらの細胞は、インビトロで培養した着床前胚から得られる。 Bradleyら、Nature 309,255−258(1984)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)。 導入遺伝子は、このような細胞中にエレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションによって導入され得る。 ES細胞は、特定の染色体位置に相同組換えを介して導入遺伝子を導入するのに適切である。 例えば、C1インヒビターをコードする導入遺伝子は、乳腺においてコード配列の発現を指向し得る内因性調節配列にその導入遺伝子が作動可能に連結するゲノム位置に、導入され得る。 形質転換したES細胞は、非ヒト動物由来の胚盤胞と合わせられる。 このES細胞は、胚にコロニー形成するか、または生じるキメラ動物の生殖細胞系列を形成するかもしくはこの生殖細胞系列に寄与する。 Jaenisch,Science,240,1468−1474(1988)(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと。 あるいはES細胞は、除核した受精卵母細胞中に移植するための核の供給源として使用され、トランスジェニック動物を生じ得る。

    さらなる実施形態において、C1インヒビターを発現し得る導入遺伝子を含むトランスジェニック動物(好ましくは非ヒト哺乳動物)は、核移植を含む方法によって産生される。 種々の型の細胞が、卵母細胞中に移植される核のドナーとして使用され得る。 ドナー細胞は、C1インヒビター導入遺伝子を含むトランスジェニック動物の全ての組織(例えば成体、胎仔または胚細胞など)から、分化の種々の段階(未分化から完全に分化した範囲)で、種々の細胞周期の期(例えば、静止期および増殖期の両方)で得られ得、そして体細胞組織または生殖細胞系組織のいずれかから得られ得る(WO 97/07669、WO98/30683およびWO 98/39416、(それぞれ全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと)。 あるいはドナー核は、C1インヒビター導入遺伝子がリン酸カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション、またはリポフェクションなどの従来の方法を使用して導入され、そして続いて導入遺伝子の存在または導入遺伝子の特異的組込みについて選択されまたはスクリーニングされた、インビトロで培養された、細胞から得られる(WO 98/37183およびWO 98/39416(それぞれ全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと)。 ドナー核は、卵母細胞中に電気的または化学的に誘導された融合を用いて導入されるか、(WO 97/07669、WO 98/30683およびWO 98/39416のいずれか1つを参照のこと)、またはマイクロインジェクションによって導入される(WO 99/37143を参照のこと(全ての目的のためにその全体が参考として援用される))。 移植された卵母細胞は、続いて胚に発達するまで培養され、この胚は続いて偽妊娠雌動物の卵管に移植され、トランスジェニック子孫の誕生をもたらす(WO 97/07669、WO 98/30683およびWO 98/39416のいずれか1つを参照のこと)。

    トランスジェネシスの別の方法は、所望の導入遺伝子を導入するために(レトロ)ウイルスベースのベクターを使用する。 このようなベクターの例としては、Yeeら(1994,Meth.Cell.Biol.43:99−112(全ての目的のためにその全体が参考として援用される))によって記載される水疱性口内炎ウイルスG糖タンパク質(VSG−G)MoMLV由来レトロウイルスベクター(VSV−G偽型(pseudotype))が挙げられる。 受精前の第二減数分裂の第II中期で静止された非ヒト哺乳動物(好ましくはウシ)卵母細胞が、Chanら(1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14028−14033(全ての目的のためにその全体が参考として援用される))によって記載されるようなVSV−G偽型ベクターに感染され、トランスジェニック子孫が産生される。 あるいは、遺伝的に改変された動物を作製する代わりに、制限された器官(好ましくは乳腺)が、薬学的タンパク質を生成する目的のためにレトロウイルス感染によって形質転換される。 C1インヒビターをコードする配列を保有するレトロウイルスベクターを非ヒト乳腺中に注入して、乳上皮細胞に感染させることは、これらの動物の乳汁中でのC1インヒビタータンパク質の産生を可能にする(Archerら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6840−6844(全ての目的のためにその全体が参考として援用される))。

    2つ以上の導入遺伝子を含むトランスジェニック動物の産生のために、この導入遺伝子は、単一の導入遺伝子についてと同じ手順を使用して、同時に導入され得る。 あるいは、この導入遺伝子は、最初に別々の動物に導入され得、次いでこの動物を繁殖することによって同じゲノム中に合わせ得る。 あるいは、第1のトランスジェニック動物が、それらの導入遺伝子のうちの1つを含むように産生される。 次いで、第2の導入遺伝子がその動物由来の受精卵または胚性幹細胞中に導入される。 いくつかの実施形態において、他の方法では長さが約50kbを超える導入遺伝子は、重複するフラグメントとして構築される。 このような重複フラグメントは、受精卵母細胞または胚性幹細胞に同時に導入され、そしてインビボで相同組換えを受ける。 Kayら、WO 92/03917(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと。

    (E.トランスジェニック哺乳動物の特徴)
    本発明のトランスジェニック哺乳動物は、上記のように、少なくとも1つの導入遺伝子をこれらのゲノム中に組み込んでいる。 ある細胞分裂期での導入遺伝子の導入は、通常、生殖細胞系細胞および体細胞の実質的に全てが、これらのゲノム中に導入遺伝子を含む(体性変異を起こした少数の細胞の考えられ得る例外を伴う)トランスジェニック動物およびこれらの動物の子孫を生じる。 後期での導入遺伝子の導入は、モザイク動物またはキメラ動物を引き起こす。 しかし、これらの動物の生殖細胞系に導入遺伝子を組み込んでいるいくつかのこのような動物を繁殖して、体細胞および生殖細胞系細胞の実質的に全てが導入遺伝子を含むトランスジェニックを産生し得る。 乳腺細胞のウイルスのトランスジェネシス(viral transgenesis)は、通常、導入遺伝子が乳腺細胞中にのみ存在するトランスジェニック哺乳動物を生じる。 このような哺乳動物は、次世代へその生殖細胞系を伝えない。 導入遺伝子は、少なくとも乳腺に対して優勢にC1インヒビタータンパク質をコードするDNAセグメントの発現を標的化する。 C1インヒビターは、少なくとも100μg/ml、500μg/ml、1000μg/ml、2000μg/ml、5000μg/ml、10,000μg/ml、20,000μg/ml、または50,000μg/mlの高レベルで分泌され得る。 驚いたことに、本発明のトランスジェニック哺乳動物は、実質的に正常な健康状態を示す。 乳腺以外の組織におけるC1インヒビタータンパク質の2次発現は、有害な作用を引き起こすのに十分な程度まで生じない。 さらに、外因性C1インヒビタータンパク質は、分泌機構を目詰まりさせる沈着物によって提示されるいかなる問題もなしに、十分有効に乳腺から分泌される。

    トランスジェニック哺乳動物が乳汁を産生し始め得る年齢は、当然のことながら、その動物の性質によって変化する。 トランスジェニックウシに関して、その年齢は、天然ではおよそ2歳半、またはホルモン刺激を用いて6ヶ月であるのに対して、トランスジェニックマウスに関しては、その年齢は、約9〜11週間である。 当然のことながら、種の雌メンバーのみが、乳汁を産生するのに有用である。 しかし、トランスジェニック雄もまた、雌の子孫を繁殖させるために価値がある。 トランスジェニック雄由来の精子を、以後のインビトロでの受精および雌の子孫の発生のために凍結保存し得る。

    (F.乳汁または他の供給源からのタンパク質の回収)
    トランスジェニック成体雌性哺乳動物は、高濃度の外因性C1インヒビタータンパク質を含む乳汁を産生する。 乳汁からのC1インヒビターの精製は、遠心分離および脂肪の除去によるトランスジェニックの乳汁の脱脂、次いで、高速遠心分離に続く全量ろ過(すなわち、フィルターサイズを首尾良く減少させて用いることによる全量ろ過)もしくはクロスフロー(cross−flow)ろ過によるカゼインの除去;またはクロスろ過による直接的なカゼイン(casinos)の除去によって実施され得る。 このタンパク質は、所望の場合、その特徴的な物理学的性質および化学的性質によって乳汁から精製され得る(一般に、Scopes,Protein Purification(Springer−Verlag,N.Y.,1982)Prograisら,(1985)J.Medicine 16(1−3):303−350;Pilatteら,(1989)J.Immunol.Methods 120:37−43,Reboulら,(1977)Febs Lett.79:45−50,Alsenzら,(1987)J.Immunol.Methods 96:107−114,Ishizakiら,(1977)J.Biochem.82:1155−1160を参照のこと)。 この精製の条件は、好ましくは、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の内因性C1インヒビターからヒトC1インヒビターを分離すべきである。

    陽イオンクロマトグラフィー、陰イオンクロマトグラフィーおよび金属親和性クロマトグラフィーは全て、乳汁または他の供給源(例えば、組換え細胞培養物または天然の供給源)からのヒトC1インヒビタータンパク質の精製のために用いられ得る。 いくつかの方法では、1つより多いこれらの工程が用いられ、そしていくつかの方法では3工程全てが用いられる。 これらの工程を、任意の順序で実施し得るが、好ましい順序は、陽イオンクロマトグラフィーに続いて、陰イオンクロマトグラフィー、これに続いて、金属イオン親和性クロマトグラフィーを行う順序である。

    陽イオンクロマトグラフィーを、例えば、セファロース(TM)の大きなビーズまたはカルボキシメチルセルロースを用いて実施し得る。 低塩ローディング(loading)緩衝液(例えば、20mMのクエン酸ナトリウム、0.02Mの塩化ナトリウム)を用いる。 ヒトC1インヒビターを、より高い塩濃度(例えば、20mMのクエン酸ナトリウム、0.2Mの塩化ナトリウム)で溶出し得る。 次いで、ヒトC1インヒビターを含む溶出液を、陰イオンクロマトグラフィーに供する。

    陰イオンカラムのマトリクスは、セルロース、デキストラン、アガロースまたはポリスチレンのような材料であり得る。 リガンドは、ジエチルアミノエチル(eithylaminoethyl)(DEAE)、ポリエチレンイミン(PEI)または4級アンモニウム官能基の例であり得る。 陰イオン交換カラムの強度とは、そのリガンドのイオン化状態をいう。 強イオン交換カラム(例えば、4級アンモニウムリガンドを有するカラム)は、常時正電荷を保有する。 弱陰イオン交換カラム(例えば、DEAEおよびPEI)において、正電荷の存在は、そのカラムのpHに依存する。 陰イオン交換カラムは、一般に、ヒトC1インヒビター( )のpIを超えるpHの低塩緩衝液でロードされている。 このカラムを低塩緩衝液で数回洗浄して結合していないタンパク質を溶出する。 次いで、結合しているタンパク質を、増加させた塩濃度の緩衝液を用いて溶出する。 QセファロースFFは、好ましい陰イオン交換カラムである。 なぜなら、この材料は、他の陰イオン交換カラムと比べて比較的低価格であり、そして大規模な精製に適した比較的大きなビーズサイズを有している。 特定の条件下で、ヒトC1インヒビターを、ウサギの乳汁中に見出されるウサギC1インヒビターまたは他のタンパク質を溶出することなくQセファロースFFから溶出し得る。 QセファロースFFへのヒト酸性αグルコシダーゼの良好な結合を得るために、このカラムを低塩(すなわち、50mM未満、例えば、リン酸ナトリウム緩衝液)にて前平衡化する。 この緩衝液のpHは、このカラムへのヒトC1インヒビターの良好な結合を得るために約7.0+/−1.0であるべきである。 次いで、ヒトC1インヒビターを、増加させた塩濃度で段階的溶出または勾配溶出によって溶出する。 段階的溶出は、大規模な精製に、より従い易い。 ほとんどのロードされたヒトC1インヒビターを、1工程にて(約0.25Mの塩で)比較的高純度でQFFカラムから溶出し得る。

    金属親和性クロマトグラフィーを、マトリクス(例えば、セファロース( TM ))および結合金属イオン(例えば、銅、亜鉛、ニッケル(nichol)、コバルトまたはカルシウム)を用いて実施する。 有機キレート剤群(例えば、イミノ二酢酸)もまた、使用し得る。 このカラムを、比較的高濃度(例えば、0.2Mより高濃度)で存在する非キレート化塩(例えば、塩化ナトリウム)を用いて約6〜8のpHで平衡化する。 これらの条件下で、残留している混入タンパク質が、このカラムに結合するのに対して、ヒトC1インヒビターは結合せず、容易に溶出され得る。

    例示的な精製手順は、実施例の節において記載される。 この手順は、C1インヒビターの調製物を提供し、このC1インヒビター調整物は、全ての混入物を考慮しても少なくとも98%または99%純粋(w/w)であり、そして、0.5%未満、0.1%未満または0.05%未満のウサギC1インヒビター(w/w)を含有する。 さらなる精製を好ましくは用いて、少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは99.8%、そして最も好ましくは99.9%の純度でのC1インヒビター調製物を得る。

    (G.組換えC1インヒビターの使用)
    乳汁または他の供給源から精製されたC1インヒビターは、遺伝性血管性浮腫(内因性機能的C1インヒビターの欠如または欠損によって特徴付けられる疾患)に羅患した患者において内因性C1インヒビターを置換するかまたは補完する用途を見い出す。 機能的C1インヒビターの不足を生じる遺伝的欠損症または他の欠損症を有する患者を、この患者への外因性C1インヒビターの投与によって処置し得る。 このような処置の必要な患者を、血管透過性の局所的漸増から生じる非陥凹性上皮下組織浮腫から同定し得る(Cicardi M.ら 1998,Immunobiol.199:366)。 主に関連した3つの部位としては、皮下組織(四肢、顔面、性器、臀部)、腹部器官および上部気道(喉頭)である。 腹部の粘膜の腫脹は、非常に痛み得、そして喉頭浮腫は、生命に関わるような状態である。

    あるいは、またはさらに、患者を生化学的分析により診断し得る。 診断的アッセイは、しばしば血漿で実施され、そして、C1インヒビターの機能性アッセイおよび抗原性アッセイ、ならびに、補体成分のC4レベルおよびC2レベルの測定を包含する。 補体成分のC4レベルおよびC2レベルは、血管性浮腫の発作の間、一般的に著しく減少し、そして時折発作の間も、より少ない程度ではあるが減少する。 補体成分のC4レベルおよびC2レベルは、C1エステラーゼによってC4成分およびC2成分の進行中の活性化および消耗に起因して減少する。 後天性血管性浮腫を有する患者において、補体成分のC1または補成分のC1qは、成分のC4レベルおよびC2レベルの次に、一般に減少する。 遺伝性血管性浮腫の患者は、I型患者またはII型患者に区別され得る。 より一般的なI型欠損症は、低いレベルの循環性C1インヒビター(冒された対立遺伝子の発現を無効にする遺伝的病変から生じる(Tosi,M.,1998,Immunobiol.199:358−365を参照のこと))によって特徴付けられる。 C1インヒビター抗原の正常レベルを有するII型欠損症は、機能不全タンパク質の発現を生じる点変異によって主に引き起こされる(Complement in health and disease,第2版,Whaley,Loos and Weiler編におけるTosi,M.,1992,「Molecular genetics of C1 inhibitor and hereditary angioedema」)。 患者はまた、C1インヒビター遺伝子中の同型変異または異型変異を検出することによっても診断され得る。 診断は、好ましくは、症状の発症前にC1インヒビターの欠損を検出することによってかまたはDNA分析によってなされる。 遺伝性血管性浮腫に羅患するメンバーを有することが既知のファミリー由来の子孫において、時折、決定的な診断がなされ得る前であろうとも、予防的処置を開始することが望ましい。

    (薬学的組成物)
    いくつかの方法において、乳汁または他の供給源から精製されたC1インヒビターを、薬学的組成物として薬学的キャリアとともに精製された形態で投与する。 好ましい形態は、投与および治療的適用の意図される様式に依存する。 薬学的キャリアは、患者に対してポリペプチドを送達するのに適した任意の適合性のある非毒性物質であり得る。 滅菌水、アルコール、脂肪、ろう、および不活性固体がそのキャリアとして用いられ得る。 薬学的に受容可能なアジュバント、緩衝剤、分散剤などもまた、その薬学的組成物中に組み込まれ得る。

    薬学的組成物中のインヒビター濃度は、広範に変化し得る(すなわち、約0.1重量%未満から(通常、少なくとも約1重量%)20重量%程度以上まで)。

    経口投与について、活性成分は、固体投薬形態(例えば、カプセル剤、錠剤、および粉剤)または液体投薬形態(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、および懸濁液)で投与され得る。 活性成分(単数または複数)は、ゼラチンカプセル中に不活性成分および粉末化されたキャリア(例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、炭酸マグネシウムなど)とともにカプセル化され得る。 所望の色、味、安定性、緩衝化能、分散または他の公知の所望の特性を提供するために添加され得る、さらなる非活性成分の例としては、酸化赤鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白インクなどである。 同様の賦形剤を用いて、圧縮錠を作製し得る。 錠剤およびカプセル剤は両方とも、数時間にわたって薬剤の持続的な放出を提供する徐放性製品として製造され得る。 圧縮錠は、いかなる好ましくない味をもマスクし、そして大気から錠剤を保護するために糖コーティングされ得るかまたはフィルムコーティングされ得るか、あるいは胃腸管における選択的分解のために腸溶性コーティングされ得る。 経口投与のための液体投薬形態は、患者の受け入れ易さを増加するために着色剤および香味料を含む。

    C1インヒビターは、好ましくは、非経口的に投与される。 非経口投与のためのC1インヒビターの調製物は、滅菌されていなければならない。 滅菌は、凍結乾燥および再構成の前かまたは後に、滅菌用ろ過膜に通すろ過によって容易に達成される。 C1インヒビター投与のための非経口的経路は、公知の方法(例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内または病巣内の経路への注射または注入)に従う。 C1インヒビターは、注入によってかまたはボーラス注射によって継続的に投与される。 静脈内注入のための代表的な組成物は、20%のアルブミン溶液および100mg〜500mgのC1インヒビターを必要に応じて補充した100ml〜500mlの滅菌された0.9%のNaClまたは5%のグルコースを含んで作製され得る。 筋肉内注射のために代表的な薬学的組成物は、例えば、1〜10mlの滅菌緩衝用水および1〜100mgの本発明のC1インヒビターを含んで作製される。 非経口的に投与可能な組成物を調製するための方法は、当該分野で周知であり、種々の出典(例えば、Remington's Pharmaceutical Science(第15版,Mack Publishing,Easton,PA,1980)(全ての目的のために、これらの全体を参考として援用する))においてより詳細に記載される。

    (治療的方法)
    本発明は、外因性C1インヒビターを用いてC1インヒビター欠損症を処置するための有効な方法を提供する。 C1インヒビターをまた用いて、古典的な経路の補体活性(活性化C1成分)および/または接触系(XIIa因子、カリクレイン、XIa因子)活性が好ましくない免疫応答または炎症応答を助長する他の疾患も処置し得る。 このような疾患としては、以下が挙げられる:心筋梗塞(WO95/06479);後天性全身性炎症応答(特に、重篤な敗血症、敗血症性ショック、ARDS(成人呼吸促進症候群)、複合臓器不全および子癇前症(WO92/22320:Genentech Inc));重篤なやけど、複損傷(polytraumata)、体外循環を用いた手術の場合の毛細血管漏出症候群(capillary leakage syndrome)および循環障害(EP 0586909)、治療的サイトカイン(例えば、IL2)の注入、同種異系骨髄移植(または、自己骨髄移植)後の急性対宿主性移植片病。 他の適応症は、過剰な古典的経路の補体および/もしくは接触活性化、ならびに/またはC1インヒビターの消費もしくは(関連)機能的C1インヒビター欠損が、病態生理学(例えば、髄膜炎、慢性関節リウマチ、同種移植および異種移植後の過剰急性移植片拒絶、ならびに膵炎)に関連する障害であり得る。

    本発明の薬学的組成物は、通常、静脈内に投与される。 皮内投与、筋肉内投与または経口投与もまた、いくつかの状況で可能である。 組成物は、疾患に罹患しているかまたは危険性のある個体予防的処置のために以後の疾患を予防、遅延、またはその重篤度を軽減させるのに十分な量で投与され得る。 治療的適用のために、薬学的組成物は、確立された疾患に罹患している患者に、症状の重篤度を軽減させるかおよび/または症状のさらなる進行を防ぐかもしくは阻止するのに十分な量で投与される。 これを達成するのに十分な量は、「治療的」有効量または「予防的」有効量として定義される。 このような有効な投薬量は、状態の重篤度および患者の健康の全身状態に依存する。 1つの有効な投薬量は、1mlの血漿あたり少なくとも約50μgの機能的C1インヒビター、好ましくは1mlの血漿あたり少なくとも約100μgの機能的C1インヒビター、より好ましくは1mlの血漿あたり少なくとも約200μgの機能的C1インヒビター、そして最も好ましくは1mlの血漿あたり少なくとも約250μgの機能的C1インヒビターの血漿濃度に達するのに必要な量である。 機能的C1インヒビターの代表的なこれらの血漿中濃度は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも12時間、そして最も好ましくは少なくとも24時間維持される。

    本方法において、C1インヒビターは、1人の患者に対して1週間に患者の体重1kgあたり約10mg以上の投薬量で通常投与される。 しばしば、投薬量は、1週間あたり10mg/kgより多い。 投薬レジメンは、1週間あたり10mg/kgから1週間あたり少なくとも1000mg/kgの範囲にある。 代表的な投薬レジメンは、1週間あたり10mg/kg、1週間あたり20mg/kg、1週間あたり30mg/kg、1週間あたり40mg/kg、1週間あたり60mg/kg、1週間あたり80mg/kgそして1週間あたり120mg/kgである。 好ましいレジメにおいて、10mg/kg、20mg/kg、または40mg/kgが、1週間に1回、2回または3回投与される。 処置は、少なくとも4週間、時折24週間、そして時折患者の生涯にわたって、代表的に継続される。 処置は、好ましくは静脈内経路に投与される。 必要に応じて、C1インヒビターのレベルは、処置の後にモニターされ(例えば、血漿中)、そして、検出されたレベルが、例えば、正常なヒトにおける値の40%未満、30%未満、または20%未満より実質的に低く低下する場合、追加投薬が投与される。 あるいは、いくつかの状態において、正常なレベルよりも高く、例えば、正常なレベルの150%、正常なレベルの200%、または正常なレベルの300%さえも到達することが所望され得る。

    (他の用途)
    トランスジェニック動物の乳汁中に産生されるC1インヒビターは、多数の他の用途を有する。 例えば、C1インヒビターは、内因性C1インヒビター活性のインビトロでの診断のためのキット中のコントロール試薬として用いられ得る。 あるいは、C1インヒビターは、体外デバイス上に固定されて、患者からの抗C1インヒビター抗体を選択的に除去し得る。

    (実施例)
    (実施例1:導入遺伝子の構築)
    (a.重複ゲノム構築物(CINH1))
    ヒトC1インヒビター遺伝子のゲノム配列の重複部分を含む2つの発現ベクターのセットを構築した。 これらのプラスミドはともに、ウシαS1−カゼインプロモーターおよび完全ヒトC1インヒビターゲノム配列を含む。 用いられた全てのC1インヒビターフラグメントは、P1クローンDMDC−HFF#1−1112−69(Genome Systems Inc.(8620 Pennell Drive,St.Louis,Missouri 63114)より入手)由来であり、このクローンを、2つのC1インヒビター特異的プライマー(付録1A)を用いたPCRによってP1ヒトゲノムライブラリーから単離した。

    プラスミドpαS1/5'C1(これは、C1インヒビター遺伝子の5'部分に融合した6.3kbのウシαS1−カゼイン調節配列を含む)を、以下のように構築した。 第1に、pKUN1(Konings,1986 Gene 46,269−76)をEcoRIおよびSalIを用いて消化し、そしてリンカー1(付録1B)に連結し、次いで、Klenowを用いて充填して連結することによってClaI部位を除去した。 得られたプラスミドpKUN2ΔCから、pKUN2ΔCNBSを、NotIおよびSalI部位にリンカー2(付録1C)を連結することによって作製した。 リンカー2は、ClaI部位、19bpのαS1−カゼインエキソン1(ClaI部位のメチル化を妨げるためにTに変異された第1のCを有する)、6bpの正常に隣接するC1インヒビターATG翻訳開始部位、およびATGに重複するC1インヒビター遺伝子中のBglI部位と互換性のあるSfiI部位を提供した。 次いで、リンカー3(付録1D)は、pKUN2ΔCNBSのSfiI部位およびMluI部位中に連結し、プラスミドpKUN2ΔCEVを得た。 リンカー3を、C1インヒビター遺伝子中の隣のBglI部位に互換性のある第2のSfiI部位(ATGの下流の4.8kbに位置する)およびNotI部位を導入した。 次いで、4.8kbのBglIフラグメントは、プラスミドpKUN2ΔCEVの脱リン酸化されたStiI部位中のP1クローン(前出)からクローン化し、pK−BglI−Clを得た。 この構築物は、エキソン1およびエキソン2由来の最初の16bp(これらはともに、C1インヒビターの5'UTR(非翻訳領域)のほとんどを形成するが、なおATG翻訳開始コドンを含む)を欠き、これは、エキソン2中に位置する。 このプラスミド由来の4.85kbのClaI−SalIフラグメントをプラスミドp(−8kb、CS)(特許出願WO93/25567)中にクローン化し、プラスミドpαS1/5'−C1を得た。 これは、6.2kbのNotI−ClaIウシαS1−カゼインプロモーターフラグメント(これは、αS1−カゼインエキソン1から最初の20bpを含む(EMBLデータベース、受託番号X59856;(Koczan,1991,Nucleic Acids Res.19,5591−5596)))にC1インヒビターフラグメントを連結し、クローニング工程において用いられるClaI部位に直接隣接する。

    第2ベクター(pIC20R/3'−C1)を、SpeIを用いたP1クローン(前出)の消化によって、次いで、エキソン4〜8+約5.5kbの3'隣接DNAを含む20kbのSpeIフラグメントのpIC20Rの脱リン酸化XbaI部位への連結によって作製した(Marsh,1984 Gene 32,481−485)。 pαS1/5'−C1とpIC20R/3'−C1との間の重複は2.0kbであった。

    (b.単一ゲノム構築物(CINH2))
    ウシαS1−カゼインプロモーターに融合した完全ヒトC1インヒビター遺伝子を含む単一構築物もまた、作製した。 第1に、プラスミドpK−BglI−Clインヒビター(前出)を、SpeIおよびSalIを用いて消化してリンカー4(付録1E)に連結し、プラスミドpK−BgSpL−C1を得た。 次いで、P1クローン(前出)から、20kbのSpeIフラグメントを、SpeIを用いて消化して脱リン酸化したpK−BgSpL−C1中にクローン化した。 得られたベクター(pCBSpeIC1と呼ばれる)由来の22kbのClaI−SalIフラグメント(全C1インヒビターコード領域+5.5kbの3'隣接DNAを含む)を、ClaIおよびSalIを用いて消化したp(−8kb、CS)(前出)中に連結した。 この最終構築物を、p6,2C1−INH2と名付けた。

    (実施例2:トランスジェネシス(transgenesis))
    (A.マウスにおける重複構築物(CINH1))
    トランスジェニックマウスを、Hoganら,1986,「Manipulating the Mouse Embryo」,Cold Spring Harbour Press NYによって本質的に記載されるように、受精した卵母細胞への前核注射によって産生した。 pαS1−5'C1(図1Aを参照のこと)をNotIを用いて消化した。 11.3kbのフラグメントを得、これを、ゲル精製および電気溶離によって単離した。 同様に、pIC20R/3'−C1由来の15.8kbのScaI−EcoRVフラグメント(イントロン3から最後のエキソンを越えた2kbまで伸長した)を、調製した。 両フラグメントを、(3ng/μlの濃度で)連結し、受精したマウスの卵母細胞の前核に注射した。 この卵母細胞を、偽妊娠マウス養母の子宮に移植した。 その子孫を、切除された尾から単離したDNAのサザンブロット法によってヒトC1インヒビターのゲノム遺伝子構築物の挿入について分析した。 重複フラグメント間で正確な相同組換えが生じたか否かを、サザンブロットおよびPCRによってチェックした。 33匹のトランスジェニックマウスを得、そのうちの31匹が、組換え導入遺伝子を正確に含んでいた。 これらの31匹のマウスのうちの17匹をさらに繁殖させるために、FISH分析を用いて選択し、複数の組込み部位および/または高レベルのモザイク現象を有する動物を除外した。

    (B.マウスにおける単一ゲノム構築物(CINH2))
    p6,2C1−INH2を、NotIおよびSalIを用いて消化し、28.2kbのフラグメントを得た(図1B)。 3ng/μlの濃度のこのフラグメント溶液を用いて、上記のように、マウスの卵母細胞中にマイクロインジェクションした。 30匹のトランスジェニックマウスを得、そのうちの12匹をさらなる繁殖のために、FISH分析によって選択した。

    (C.ウサギにおける単一ゲノム構築物(CINH2))
    トランスジェニックウサギを、以下のプロトコルに従って作製した。 各雌のドナー動物(New Zealand White)を、ブタのFSH(Sigma)で3日間皮下に処置した。 1日目および2日目に、0.5Uをおよそ午前8時および午後6時に注射した。 3日目に、0.5Uをおよそ午前8時および午後11時に注射した。 4日目に、これらの雌を、午後2時に(New Zealand Whiteシリーズと)交配させた。 この交配の直後、これらの雌に150UのPregnil(ヒト;Organon)を筋肉内注射した。 5日目に、これらのドナー動物を、T61(Hoechst Roussel Vet)の静脈内注射で午前9時に屠殺し、そしてこれらの胎芽をフラッシング(flushing)によって収集した。 これらの動物の交配と屠殺との間を比較的長い遅延させることによって、ヒアルロニダーゼを用いたこれらの胎芽の処置も、自発的に放出される周辺細胞を除去するための顕微解剖も、必要性がなくなった。 胎芽を、RD培地(100U/mlのペニシリン−G、100mg/mlの硫酸ストレプトマイシンおよび15mg/mlのFraction V BSA/mlを補充したRPMI−1640とDulbecco's Modified Eagle's Medium(高グルコース改変)との1:1(v/v)混合物;Carney E.W.およびFoote R.H.(1991)J.Reprod.Fert.91:113−123)中で39℃にて維持した。 マイクロインジェクション(1個の卵母細胞あたり2〜3ピコリットル)を直ちに実施し、そしてこれらの胎芽を、レピシエント雌の両卵管に(各側に10〜15個の胎芽)再移植した。 これらのレピシエント雌を、2日目に15UのウマFolligon(Intervet)の皮下注射によって調製した。 4日目に、これらのレピシエント雌は、0.33mlのReceptal(0.0014mgのブセレリン(buserelini),Hoechst Roussel Vet.)の筋肉内注射をうけた。

    最初に、数羽のウサギを重複構築物を用いて作製し、PCR分析は、正確に組換えられた導入遺伝子だけでなく、非組み換え連結5'フラグメントおよび3'フラグメントも存在することを示した。 このような配置において、エキソン4は2連である。 導入遺伝子の再配列されたコピーは、望ましくない。 なぜなら、それらのコピーが、異常な転写およびそれによる変質タンパク質分子を生じ得るからである。 このため、市販のC1インヒビター産物に対するトランスジェニックウサギの作製のために単一ゲノム構築物のみを用いることを決定した。

    p6,2C1−INH2をNotIおよびSalIを用いて消化し、28.2kbのフラグメントを得た(図1B)。 3ng/μlの濃度のこのフラグメントの溶液を用いて、受精したウサギの卵母細胞中にマイクロインジェクションした。 10羽のトランスジェニックウサギを作製し、PCR、サザンブロットおよびFISHによって分析した。 1つの株(3358)は、導入遺伝子の完全なコピーを含まなかった。 残りの9株を全て繁殖させて、発現分析のための乳汁を得た。

    (実施例3:トランスジェニック動物の乳汁中のC1インヒビターの分析)
    (A,B.マウスにおける重複ゲノム構築物および単一ゲノム構築物(CINH1およびCINH2))
    トランスジェニックマウスおよび非トランスジェニックコントロール由来の乳汁を酵素結合放射免疫測定法によって分析した(ELISAの説明について、付録2を参照のこと;発現データについて、表1、表2および表3を参照のこと)。 ELISAは、C1インヒビター(活性および不活性の両方)の総量を測定する。 C1インヒビターの平均レベルは、0.04〜5mg/mlの範囲にある重複フラグメントを用いて作製したトランスジェニックマウスにおいて得た。 最も高く産生する株のうちのいくつかの個体サンプルは、20mg/mlより多く含んでいた。 C1インヒビターの平均レベルは、0.1μg/ml〜10mg/mlの範囲にある単一フラグメントを用いて作製したトランスジェニックマウスにおいて得た。 最も高く産生する株(5903)のうちのいくつかの個体サンプルは、20mg/mlより多く含んでいた。

    (表1.rH−C1INH1マウス株のC1インヒビター発現データ)

    発現レベルを、ELISAによって決定した(付録2A)。
    特定の株の全てのF1マウス由来の2回の授乳期間の、産後6日目、9日目および12日目の乳汁サンプルの平均発現。
    特定の株の全てのF1マウス由来の乳汁サンプル中に見出された最も高い発現。

    (表2.rH−C1INH2マウス株のC1インヒビターの発現データ)

    FISHによる前選択に起因して、全ての株は、単一導入遺伝子の組込み部位を含んだ。
    発現レベルを、ELISAによって決定した(付録2A)。
    特定の株の全てのF1マウス由来の2回の授乳期間の産後6日目、9日目および12日目の乳汁サンプルの平均発現。
    特定の株の全てのF1マウス由来の乳汁サンプル中に見出された最も高い発現。

    (表3.rH−C1INH1マウス株およびrH−C1INH2マウス株の発現データの概要)

    株の数を、株の合計数で割った。

    (C.ウサギにおける単一ゲノム構築物)
    トランスジェニックウサギおよび非トランスジェニックコントロール由来の乳汁を、2種類のアッセイによって分析した(これらのELISAの説明については、付録2Bを参照のこと;発現データについては、表4を参照のこと)。 ELISAは、乳汁中に存在する抗原性C1インヒビタータンパク質の総量を評価するのに対して、C1インヒビター活性アッセイは機能的に活性なC1インヒビターの量を測定する。 活性C1インヒビターの平均レベルを、0.05mg/ml〜20mg/mlの範囲にあるトランスジェニックウサギにおいて得た。 最も高く産生する株のうちのいくつかの個体サンプルは、25mg/mlより多く含む。

    (表4.rH−C1INHの創始ウサギ:導入遺伝子のコピー数および発現レベル(タンパク質含有量および活性))

    =世代


    =分裂中期のFISHにより決定した


    =FiberFISHにより決定した


    =C1インヒビター抗原の濃度(付録2BI);(n)サンプルの平均


    =機能的に活性なC1インヒビターの濃度(付録2BII);(n)サンプルの平均


    =存在する6個の完全コピー+2個の半コピー


    =存在する非完全コピー (実施例4:ウサギの乳汁由来の組換えヒトC1INHの精製)


    乳汁中のR−C1INHの存在を、非トランスジェニックウサギの乳汁からの精製後に得られた画分の免疫ブロット法およびSDS−PAGE分析によって確認した。 トランスジェニック乳汁中のR−C1INHの推定レベルおよびrH−C1INHの濃度から、分離が必要であると判断した。 R−C1INHからのrH−C1INHの分離を、pH5.5およびpH7.0でのQセファロース(Pharmacia)の陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて達成した。 溶出差は、約0.1Mの塩化ナトリウムであり、これは製造に十分適している。

    15g/lのrH−C1INH濃度を有する2972p株由来のトランスジェニックウサギの乳汁を、解凍し、プールし、そしてpH5.5の20mMのクエン酸ナトリウムの1容量で希釈した。 希釈後のpHは、7.0だった。 次いで、この希釈された乳汁を25μmのPolygard(登録商標)フィルター(Millipore)でろ過し、そして室温にて連続遠心分離によって脱脂した。 200ミリリットルの脱脂した乳汁を、pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム+0.05Mの塩化ナトリウムで平衡化したSPセファロースの大きなビーズ(Pharmcia)カラム(50/15)に適用した。 線形流(linear flow)は、60cm/hであった。 ロード後、このカラムを、pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム+0.05Mの塩化ナトリウムの5カラム容量で洗浄し、結合したrH−C1INHを、pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム+0.2Mの塩化ナトリウムの1工程で溶出した。 溶出したrH−C1INHを0.22μmに通してろ過し、pH7.0の20mMのリン酸ナトリウムで3倍に希釈し、そしてQセファロース高性能(Pharmacia)カラム(50/20)(pH7.0の20mMのリン酸ナトリウム+0.05Mの塩化ナトリウムにて平衡化した)に60cm/hの線形流にて適用した。 このカラムをpH7.0の20mMのリン酸ナトリウム+0.05Mの塩化ナトリウムの10容量で90cm/hの線形流にて洗浄後、結合したrH−C1INHを、pH7.0の20mMのリン酸ナトリウム+0.25Mの塩化ナトリウムの1工程で溶出した。 溶出の間の線形流は、60cm/hであった。 次いで、rH−C1INH画分を、pH7.0の20mMのリン酸ナトリウム+0.25Mの塩化ナトリウム中、60cm/hの線形流を用いて亜鉛充填のキレート化セファロース高速流(Zinc charged Chelating Sepharose fast flow)(Pharmacia)カラム(50/15)にロードした。 このカラムによって吸収されなかったタンパク質画分を、濃縮し、そして50cm2 Biomax−30膜(Millipore)を用いて緩衝液をリン酸緩衝化生理食塩水に交換した。 濃縮されたrH−C1INHを0.22μmに通してろ過し、アリコートし、そして−70℃以下に保存した。

    このプロセスの回収率を、rH−C1INHについて特異的ELISAを用いてモニターし、そしてこの回収率はおよそ40%であった。 さらに、この精製にわたってrH−C1INHの活性を、C1の阻害によって決定されるように保存した。 純度が99%を超えることを、SDS−PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって決定し、そして99.95%を超えることを、ウサギ乳汁中に存在する宿主タンパク質を検出する特異的ELISAを用いて決定した。

    (RH−C1INH調製物の純度の決定)
    (サイズ排除クロマトグラフィー)
    精製したrH−C1INH(100μl、2mg/ml)を、リン酸緩衝化生理食塩水+0.15Mの塩化ナトリウムで流速0.5ml/分にてセファロース12HR10/30ゲルろ過カラム(Pharmacia)に通してろ過した(Akta explorer 10 system,Pharmacia)。 溶出タンパク質を205nmの吸光度で検出した。 溶出ピークの割合を、Unicornソフトウェア(Pharmacia)を用いて積分によって決定した。

    (宿主に関連した不純物の検出)
    最終産物における宿主に関連した不純物(HRI)の相対的存在を、定量的酵素免疫測定法(ELISA)によって決定した。 ウサギC1インヒビターに結合せずにヒトC1インヒビターに結合するポリクローナル抗体を、ヒトC1インヒビターを用いてウサギを免疫することによって生成した。 ウサギ乳汁タンパク質に対する特異的抗体を、乳汁および乳清タンパク質で、ヒツジおよびヤギを免疫することによって産生した。 この抗血清の特異性をウエスタンブロット分析によって評価した。 全てでなくてもほとんどのウサギ乳汁タンパク質と反応するこれらの抗血清を選択した。 全IgG画分を、製造業者指示書に従ってプロテインGセファロースで精製した(Pharmacia)。 この精製されたIgGをサンドイッチELISAの展開のために用いた。

    マイクロタイタープレート(Polysorp,Nunc)を、pH9.4の0.1Mの炭酸ナトリウム中の5μg/mlの精製されたIgGを用いて、一晩室温にてコーティングした。 PBS/0.02%のTween−20を用いて洗浄後、これらのウェルをPBS/0.3%のBSA/0.1%のTween−20/10mMのEDTAで希釈したサンプルとともに1時間室温にてインキュベートした。 PBS/0.02%のTween−20で洗浄後、ウェルをペルオキシダーゼ標識したIgG(PBS/0.3%のBSA/0.1%のTween−20中で1:2000)とともに1時間室温にてインキュベートした。 もう1回洗浄後、基質溶液(ImmunoPure TMB Substrate Kit,Pierce)を添加した。 基質の転換を、2MのH SO の添加によって停止させ、そしてプレートを、BIOLISEソフトウェアを用いてSLT 340 ATTCプレートリーダー(SLT Labinstruments)において450nmにて読み取った。 全てのインキュベーションを、100μl容量で実施した。

    宿主に関連した不純物の総量(重量対重量を基礎とした100万分率(PPM)として表現)を、標準としてウシ血清アルブミンを用いたビシンコニックアッセイ(Bicinchinonic assay)(Pierce)によって総タンパク濃度が決定される標準的乳汁と比較して精製されたrH−C1INHサンプルの反応活性から算出した。

    コントロールの目的のために、ウサギC1インヒビターをウサギ血漿から精製した。 この精製は、ポリエチレングリコールを用いた沈澱、陽イオン交換クロマトグラフィーによる捕獲、レクチン親和性クロマトグラフィーによる中間体精製、そして陰イオン交換クロマトグラフィーによるポリッシングによってもたらされる。

    (実施例5:異なるトランスジェニックウサギの創始者の乳汁由来の組換えC1インヒビターの精製)
    2972q株、2972p株および2977q株由来の乳汁プールを、pH5.5の20mMのクエン酸ナトリウムの等量と混合し、この後、pHを7.0に調整した。 希釈した乳汁を4℃にて20分間の1300gの遠心分離にて脱脂し、次いで、pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム(緩衝液A)で平衡化したSPセファロースカラムの陽イオン交換クロマトグラフィーに供した。 ロードした後、このカラムを緩衝液Aで洗浄し、そして結合したタンパク質を、60cm/hの線形流速にて緩衝液A中の0.15Mの塩化ナトリウムで溶出した。 C1インヒビターを含む溶出画分(特異的ELISA(付録2BIを参照のこと)で決定するように)をプールして精密ろ過(0.45μm)し、次いで、Superdex200のゲルろ過カラムに通して(15cm/hの線形流にて0.15MのNaClを含む20mMのリン酸ナトリウムで)ろ過した。 C1インヒビターを含む画分をプールし、アリコートし、そして−50℃以下で保存した。 各工程の回収率を90%を超えるように決定した。 この純度(定量的SDS−PAGE(付録3を参照のこと)を用いて決定される場合)は、98%を超えた。

    特徴付け研究においてコントロールとして用いたCetor(登録商標)(すなわち、プールしたヒト血漿から精製したC1インヒビター,CLB,The Netherlands)もまた、上述と同じ条件下にてSuperdex 200でろ過した。

    (実施例6:異なる組換えC1インヒビター調製物の特徴づけ)
    (機能的指数)
    機能的に活性なC1インヒビターと総C1インヒビター抗原との間の比として規定される機能的指数(F.I.)を、表5に示す。 総C1インヒビター抗原の量は、付録2BIに記載されるELISAを使用して測定される。 機能的に活性なC1INHの量は、付録2BIIに記載されるC1INH活性試験を使用して決定される。

    (SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析)


    異なるC1インヒビター調製物を、4〜20%SDS−PAGEで、還元条件下および非還元条件下で分析した。 全てのC1インヒビター調製物は、還元条件下および非還元条件下の両方で単一バンドとして移動し、このバンドはウェスタンブロットのウサギ抗C1インヒビター抗体(DAKO、A0253)によって認識された。 非還元条件下で、Cetor(登録商標)は、およそ105kDaの見かけの分子量を有し、一方3つの異なる組換えC1インヒビターは、全ておよそ96kDaの見かけの分子量を有する。 還元条件下で、見かけの分子量は、Cetor(登録商標)についてはおよそ95kDa、そして組換えC1INH調製物については80kDaである。

    (C末端配列分析)
    配列分析を、C末端分解(Boyd VLら、(1992)Anal.Biochem.206、344−352;Boyd VLら、(1995)J.Organic Chem.60、2581−2587)によって、Applied Biosystems(Warrington,UKおよびFoster City,California,USA)から入手のプロトコール、試薬、化学物質、および材料を使用して、自動配列決定装置(477Aモデル、Applied Biosystems)を用いて実行した。 段階的に放出されるATHアミノ酸を、オンラインHPLC(120Aモデル、Applied Biosystems)を用い、その放出時間に基づいて同定した。

    同一のC末端配列を、異なる組換えC1インヒビター調製物およびCetor(登録商標)において見出した。 それぞれのサンプルにおいて、主要な配列はC末端でAlaを示した。 分析方法の制限に起因して、アミノ酸は2〜4位(C末端から開始して)で決定ができなかった。 微量シグナルの分析は、異なる組換えC1インヒビター調製物およびCetor(登録商標)において明かなC末端異質性が存在しないことを明らかにした。

    (実施例7:10リットル乳汁規模での組換えヒトC1INHの精製)
    2972p系列由来の凍結乳汁(合計11kg)を、凍結して保存し、解凍し、そしてプールした。 解凍の後、等容積の20mMのクエン酸ナトリウムpH5.5を添加した。 この希釈乳汁を、25μmで濾過し、そして室温で連続的遠心分離によって、脱脂した。 この脱脂乳を、続いて、20mMのクエン酸ナトリウムpH7.0および0.02Mの塩化ナトリウムで平衡化したSP Sepharose big bead(Pharmacia、Sweden)カラム(450/15)に、60cm/時間の流量で適用した。 ロードした後、このカラムを、20mMのクエン酸ナトリウムpH7.0および0.02Mの塩化ナトリウムの5カラム容量で洗浄し、そして結合したrH−C1INHを、20mMのクエン酸ナトリウムpH7.0および0.2Mの塩化ナトリウムの一工程で溶出した。 この溶出したrH−C1INHを、0.2μmを通して濾過し、そして6時間25℃で、1%のTween80(Merck,Germany)および0.3%のトリ(n)リン酸ブチル(Merck,Germany)の存在下でインキュベートし、被包性ウイルスを不活化した。 ウイルスの不活化の後、このプールを20mMのリン酸ナトリウムpH7.0で3倍に希釈し、0.2μmで濾過し、そして20mMのリン酸ナトリウムpH7.0および0.05Mの塩化ナトリウムで平衡化したQ Sepharose high performance(Pharmacia,Sweden)カラム(450/15)に、60cm/時間の流量で適用した。 このカラムを20mMのクエン酸ナトリウムpH7.0および0.05Mの塩化ナトリウムの5カラム容量で洗浄した後、結合したrH−C1INHを、20mMのリン酸ナトリウムpH7.0および0.22Mの塩化ナトリウムの一工程で溶出した。 このQ Sepharose溶出物を、続いて20mMのリン酸ナトリウムpH7.0中に2倍に希釈し、0.2μmで濾過し、そして20mMリン酸ナトリウムpH7.0および0.1Mの塩化ナトリウムで平衡化した亜鉛充填Chelating Sepharose fast flow(Pharmacia,Sweden)カラム(450/15)に30cm/時間の流量で適用した。 ロードした後、このカラムを20mMのリン酸ナトリウムpH7.0および0.1MのNaClで洗浄し、そしてカラムによって吸収されなかったタンパク質分画を収集した。 このタンパク質分画をさらに0.2μmで濾過し、続いて起こり得るウイルス混入の除去のためにVira/Grad500膜(AG/T、USA)で濾過した。 後の実験では、Asahi(日本)から入手のPlanova 15NフィルターをVira/Grad膜と置き換えた。 このウイルス濾過の後、rH−C1INHを濃縮し、Biomax−10メンブレン(Millipore、USA)を使用して緩衝液を20mMクエン酸ナトリウムpH7.0と交換した。 この濃縮rH−C1INHを0.1μmを通して濾過し、ビンに詰め、そして−20℃で保存した。 後の実験では、6.5%のスクロースを濃縮rH−C1INHに添加し、これを続いて0.1μmを通して濾過し、ビンに詰め、そして凍結乾燥した。

    このプロセスの回収率は、rH−C1INHの特異的ELISAを使用して37%だった。 さらに、精製を通してのrH−C1INHの活性は、C1の阻害によって決定されるように保存された。 この純度は、サイズ排除クロマトグラフィーによって99%よりも上、ウサギ乳汁中に存在する宿主タンパク質を検出する特異的ELISAを使用して99.999%よりも上と決定された。 内因性R−C1INHの量は、1ppm未満と定量された。

    (付録1)

    (付録2)


    (A.トランスジェニックマウス乳汁における抗原性C1インヒビターの総量の決定に使用される方法の説明)


    マウス乳汁中のC1インヒビターの発現レベルを、Veerhuisら、(1998)[Veerhuis、1998 Acta Neuropathol 96,287〜296]に従うELISAを使用して決定した。 簡単に言えば、96ウェルELISAプレートをモノクローナル抗C1インヒビター抗体でコートし、続いて乳汁サンプルと共にインキュベートした。 結合C1インヒビターを、ビオチン化ウサギ抗C1インヒビター抗体を使用して検出し、続いてペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンと共にインキュベートし、そしてTMB(3,3',5,5'テトラメチルベンジジン)染色反応した。 着色を、20分後に100μl/ウェルの2MのH

    SO

    を用いて停止し、そしてBIOLISEソフトウェア(バージョン1.65)を使用する340ATTCプレートリーダー(SLT Labinstruments)を用いて、450nmで読み取った。 全てのインキュベーションは、室温(1時間)で実行し、そして毎インキュベーションの間に、ウェルを、Tween−20を0.02%含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で5回洗浄した。 プールした正常ヒト血漿(NP)の段階希釈を、乳汁中のC1インヒビターレベルの計算のための基準として使用した。 CLB標準物質によると、NPは275μg/mlのC1インヒビターを含む。

    (B.トランスジェニックウサギ乳汁における機能的C1インヒビターレベルおよび抗原性C1インヒビターレベルの決定に使用される方法の説明)
    (I.総C1インヒビター抗原レベルの決定)
    96ウェルELISAプレートを、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)中の3.5μg/mlのウサギ抗C1インヒビター抗体(DAKO、A0253)(100μl/ウェル)で、室温で一晩コートした。 洗浄後、これらウェルを、100μl/ウェルの希釈乳汁サンプルと共に、1時間室温でインキュベートした。 結合されたC1インヒビターを、100μl/ウェル 1:5000希釈ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗C1インヒビター抗体を使用して(1時間、室温)検出し、そして100μl/ウェルの3,3',5,5'テトラメチルベンジジン(TMB、ImmunoPure TMB Substrate Kit、Pierce 34021)を基質として用いて可視化した。 発色を、20分後に100μ/ウェルの2MのH SO を用いて終了し、そしてBIOLISEソフトウェア(バージョン1.65)を使用して、340ATTCプレートリーダー(SLT Labinstruments)を用いて450nmで読み取った。 結果を、血漿由来の精製したC1インヒビター(Sigma、E0518)の段階希釈(0〜130ng/ml)を参照して産出した。 (乳汁)サンプルの全ての希釈および結合体は、PBS/2%の乳汁/0.1%のTween20中で調製した。

    (II.C1インヒビター活性)
    25μlの希釈乳汁サンプルを、96ウェルプレートのウェル中の1.5μl/mgのC1(Kordia,The Netherlands/Enzyme Research Lab.Inc.,USA)25μlと共に、60分間室温でインキュベートした。 その後、残存するC1活性を1mMのPefachrome(登録商標)C1E−5019(Kordia、The Netherlands/Pentapharm Ltd.,Switzerland、PF 087−31)25μlを添加することによって決定した。 色素形成基質を添加した直後、450nmでの吸光度における変化を、BIOLISEソフトウェア(バージョン1.65)を使用して、340ATTCプレートリーダー(SLT Labinstruments)を使用して、45分間37℃でモニターした。 結果を、血漿精製C1インヒビター(Sigma、E0518)の段階希釈(0〜6μg/ml)によって作成した検量線と関連させた。 乳汁サンプルおよびC1は、PBS/0.1%のTween20で希釈した。 Pefachrome(登録商標)C1E−5019は、蒸留水で希釈した。

    (付録3)
    (異なるC1インヒビター調製物の純度を決定するための定量的SDS−PAGE)
    Sigmaから得たC1インヒビター(Sigma、E0518)、および異なる精製した組換えC1インヒビター調製物を、PBS/0.1%のTween20で希釈し、等容積の非還元サンプル緩衝液(Tris−グリシン(pH6.8)Novex、LC2676)と混合した。 検量サンプルの濃度を、1μg/mlと25ng/mlとの間で変化させ、そして精製した組換えC1インヒビター調製物は、500μg/mlの濃度を有した。 それぞれのサンプルの10μlを、4〜20%SDS−PAGE(Tris−グリシン、Novex、EC60252)にアプライし、そして標準の手順に従ってゲルを電気泳動し、そして銀染色した。 ゲルの種々の個々のバンドの強度を、Fluor−S TM MultiImager(BIO−RAD)を使用して測定した。 異なる検量サンプルの強度を、ゲルにロードしたタンパク質の量に対してプロットし、そして最適な曲線を、これらの点を通して当てはめた。 異なるC1インヒビター調製物の不純物の量(ng)を、この検量線を使用して計算した。 サンプルの不純物の割合は、ゲルにロードしたタンパク質の総量と比較した、総不純物の相対的な量である。

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