【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、被加工体の表面を加工形状のパターン穴が形成された遮蔽体で覆い、該パターン穴を通して、高速原子線、或いは該高速原子線に加え光エネルギー等を直接照射し、そのパターン形状を被加工体に形成する高速原子線を用いた加工方法に関するものである。 【0002】 【従来技術】従来、この種の一般的な加工技術として切削バイト、化学反応、或いは収束ビ−ムを利用した切削等がある。 又、特に半導体分野の微細加工においてはレジストを利用したドライエッチングやウエットエッチングが用いられている。 【0003】従来のこの種の加工においては、加工材料や加工寸法・精度に対応して上記の種々の加工方法が採用されている。 従来の加工方法の一例として、加工精度や高度な表面処理技術が要求される半導体デバイス製造に用いられる微細加工技術について次に述べる。 【0004】図8は従来のレジストを使用した微細加工の工程例を示す図である。 先ず初めに加工基板1にレジスト材2をコ−ティングする(工程1)。 次に、フォトマスク3を介在させて紫外線4を照射し、フォトマスク3に形成されているパタ−ン穴3aをレジスト材2に転写する(工程2)。 次に、現像することにより、パターン穴3aを通して紫外線4が照射された部分のレジスト材2を除去する(工程3)。 次に、プラズマ中のイオンやラジカル種を利用して加工基板1の上のレジスト材2 がない部分の異方性エッチングを行ない(工程4)、最後にレジスト材2を除去する(工程5)。 【0005】以上の工程を経て加工基板1の表面にフォトマスク3のパターン穴3aと同形の穴1cを形成して微細加工が行われる。 通常はこの工程を繰り返して基板上に半導体デバイスが製作される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の通り従来の加工方法では工程が煩雑になり、特に各部の深さ方向の異なる構造を正確な精度で加工することは非常に困難であるという問題があった。 【0007】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、上記問題点を除去し、様々なパタ−ンの加工を効率的に行うことができる高速原子線を用いた加工方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、被加工体の表面を該表面に密着させ又は該表面から所定距離離してパターン穴を形成した遮蔽体で覆い、該遮蔽体に大きな運動エネルギーで飛翔する原子又は分子からなる高速原子線を照射し、該遮蔽体のパターン穴を通って被加工体の表面に照射される高速原子線により、該被加工体を加工することを特徴とする。 【0009】また、遮蔽体を被加工体に対して移動し、 被加工体の任意の位置に高速原子線を照射し、該被加工体を加工することを特徴とする。 【0010】また、被加工体を遮蔽体に対して移動し、 被加工体の任意の位置に高速原子線を照射し、該被加工体を加工することを特徴とする。 【0011】また、同一被加工体の表面を異なるパターン穴が形成された遮蔽体で順次覆い、その都度前記高速原子線を照射して被加工体を加工することを特徴とする。 【0012】また、前記高速原子線に加え、光エネルギー、レーザー光、放射線、X線、電子線及びイオンビームの1又は2以上を組み合わせて用いることを特徴とする。 【0013】 【作用】常温の大気中で熱運動をしている原子・分子は概ね0.05eV前後の運動エネルギ−を有している。 これに較べてはるかに大きな運動エネルギ−で飛翔する原子・分子を高速原子と呼び、それが一方向にビ−ム状に流れる場合に高速原子線という。 高速原子線を用いた加工では、高速原子線が電気的に中性であるために金属や半導体ばかりでなく、荷電粒子を用いた加工技術が不得意とするプラスチック、セラミックスなどの絶縁物を加工対象とした場合に威力がある。 【0014】本発明は、予め該高速原子線が通過するパタ−ン穴が形成された遮蔽体で被加工体の表面を覆い、 該パターン穴を通して高速原子線を照射すると、被加工体の表面がパタ−ン穴状に直接加工されるので、従来のレジスト塗布及びレジストパタ−ン形成工程なしに被加工体上に任意形状のパタ−ンを加工することが出来る。 【0015】また、加工部の深度は高速原子線の照射時間に依存するのでパタ−ンの異なる複数の遮蔽体を用い照射時間を変えて高速原子線を照射すると深度の異なる3次元的な加工も可能となる。 【0016】また、高速原子線に加え、光エネルギー、 レーザー光、放射線、X線、電子線及びイオンビームの1又は2以上を組み合わせて用いることにより、光エネルギー、レーザー光、放射線、X線、電子線、イオンビームを照射することにより、被加工体表面に化学反応性の高い低エネルギーのイオンラジカルが吸着され、加工速度が高まる。 【0017】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。 図1は本発明の高速原子線を用いた加工工程を説明するための図である。 図において、1は加工基板(被加工体)であり、該加工基板1の上には加工形状のパターン穴5aが形成された遮蔽体5が載置されている。 8は高速原子線7を照射する高速原子線発生装置であり、該高速原子線7の照射時間はタイマ9で設定される。 ここで遮蔽体5は、精度の良い板状の材料、例えばステンレス等の金属板にパタ−ン穴5aが精度良く加工されており、パタ−ン穴5aを通過して加工基板1の表面に高速原子線7の照射を行う事が出来るものである。 【0018】図1に従って本発明の加工工程を説明する。 加工基板1の表面上にマスクパタ−ンが形成された遮蔽体5を設置し、高速原子線発生装置8から高速原子線7を遮蔽体5に照射する。 これにより高速原子線7は遮蔽体5のパタ−ン穴5aを通り加工基板1の表面に照射され、加工基板1の表面のパタ−ン穴5aと同形状の穴1aが形成される(工程1)。 穴1aの深さd 1は高速原子線7の照射時間、即ちタイマ9の設定時間で決まる。 【0019】次に遮蔽体5と交換し、異なるパタ−ン穴6aが形成された遮蔽体6を加工基板1の上に設置し前記手順と同じ手順で加工を行うことにより、加工基板1 の表面にパターン穴6aと同形状の穴1bが形成される(工程2)。 その時、タイマ9で高速原子線7の照射時間を変えることにより穴1aの深さd 2を制御し、穴1 aとは異なった深さの穴1bを形成できる(工程3)。 【0020】上述したように、パタ−ン穴5aが形成された遮蔽体5を用い、高速原子線7を加工基板上1の表面に直接照射することにより、従来のレジスト塗布及びレジストパタ−ン形成工程とそれに伴う薬品処理を無用とすることが出来る。 【0021】尚、上記例では遮蔽体5及び遮蔽体6を加工基板(被加工体)1の表面上に密着させた高速原子線7を照射する場合を示したが、遮蔽体5及び遮蔽体6は加工基板(被加工体)1の表面から所定距離離して配置し、高速原子線発生装置8から高速原子線7を照射するようにしてもよい。 【0022】また、本発明の加工方法によれば、図2 (a)、(b)に示すように、異なるパターン穴11a 及び12aが形成された遮蔽体11及び12に対して、 被加工体10を移動(回転)させ、遮蔽体11及び12 のパターン穴11a及び12aを通して高速原子線7を照射し、被加工体10の異なる面にパターン穴11a及び12aと同形状の加工をすることができる。 【0023】また、図3(a)、(b)に示すように、 パターン穴11aが形成された遮蔽体11を被加工体1 0の加工面に対向(加工面から所定距離離して或いは加工面に密着)させて配置し、高速原子線7を照射し、該加工面にパターン穴11aと同形状の加工を施し、更に該被加工体10の同一加工面に対向してパターン穴12 aが形成された遮蔽体12を配置し、高速原子線7を照射することにより、被加工体10の前記パターン穴11 aと同形状の加工を施した部分に更にパターン穴12a と同一形状の加工を施すことができる。 【0024】また、図4(a)、(b)に示すように、 パターン穴11aが形成された遮蔽体11と被加工体1 0を対向して配置し、高速原子線7を照射し、続いて遮蔽体11又は被加工体10を移動させて、高速原子線7 を照射することにより、被加工体10の同一加工面の異なる位置にパターン穴11aと同一形状の加工をすることができる。 【0025】また、図5(a)、(b)に示すように、 パターン穴12aが形成された遮蔽体12と被加工体1 0を対向して配置し、高速原子線7を照射し、続いて異なるパターン穴11aが形成された遮蔽体11の位置に被加工体10を移動させ又は遮蔽体11を異なる位置に対向して配置し、高速原子線7を照射することにより、 被加工体10の同一加工面の異なる位置に異なるパターン穴12a及び11aと同一形状の加工をすることができる。 【0026】また、図6(a)、(b)に示すように、 異なるパターン穴12a及び11aが形成された遮蔽体12及び11と被加工体10の加工面が対向するようにし、被加工体10を移動及び回転させ或いは遮蔽体12 及び11を配置し、高速原子線7を照射することにより、被加工体10の異なる加工面の異なる位置に異なるパターン穴12a、11aの加工を施すことができる。 【0027】また、図7(a)、(b)に示すように、 異なるパターン穴11a及び13aが形成された遮蔽体11及び13を被加工体10の異なる加工面に対向して配置し、高速原子線7を照射し、その後被加工体10を回転し、異なる加工面にパターン穴12aが形成された遮蔽体12を対向して配置し高速原子線7を照射することにより、被加工体10の異なる加工面に異なるパターンの加工を施すことができる。 【0028】上記のように本発明の加工方法によれば、 異なるパターンの形成された遮蔽体と被加工体の加工面を被加工体の回転移動或いは遮蔽体の移動配置により対向して配置し、高速原子線7を照射することにより、被加工体10の3次元的な加工ができる。 【0029】また、上記実施例では高速原子線発生装置8から、高速原子線7を照射する例を示したが、本発明の加工方法はこれに限定されるものではなく、この高速原子線に加え、光エネルギー、レーザー光、放射線、X 線、電子線及びイオンビームの1又は2以上を組み合わせて照射するようにしても良い。 これにより、これら光エネルギー、レーザー光、放射線、X線、電子線、イオンビームにより加工基板1や被加工体10の表面に化学反応性の高い低エネルギーのイオンラジカルが吸着され、加工速度が高まる。 【0030】 【発明の効果】以上、詳細に説明したように本発明によれば、下記のような優れた効果が期待される。 (1)従来の微細加工においては、レジスト塗布及びレジストパタ−ン形成工程では、レジスト塗布、露光及び現像によるレジストパタ−ン形成、べ−キング等、大変複雑で手間のかかる工程が必要であり各工程を行うための装置を使用しなければならないが、本発明の高速原子線とパタ−ン穴が形成された遮蔽体を用いる加工方法では、レジスト塗布及びレジストパタ−ン形成工程は必要とせず、しかも同一真空容器中で加工基板上にパタ−ン形状を加工することが可能となり加工時間及び工程が短縮され、更に真空中で全ての工程を行うことにより、クリ−ンで且つ加工効率も向上する。 【0031】(2)又、本発明では高速原子線の照射時間を制御し加工深度を制御することが可能となるため深さ方向に構造を持つ基板の加工が簡便に出来る。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図2】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図3】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図4】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図5】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図6】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図7】本発明の高速原子線を用いた加工方法の加工工程例を示す図である。 【図8】従来のレジストを使用した微細加工の工程例を示す図である。 【符号の説明】 1 加工基板 2 レジスト材 3 フォトマスク 4 紫外線 5 遮蔽体 6 遮蔽体 7 高速原子線 8 高速原子線発生装置 9 タイマ 10 被加工体 11 遮蔽体 12 遮蔽体 13 遮蔽体 |