首页 / 国际专利分类库 / 电学 / 电通信技术 / 传输 / 有线传输系统 / .相对可动的站之间的通信系统,例如用于与电梯通信(H04B3/54优先) / Communication method using the vehicle outside the facilities and the inter-vehicle communication device and between the vehicle outside the facility and inter-vehicle communication system as well as the vehicle outside the facilities and vehicle communication device

Communication method using the vehicle outside the facilities and the inter-vehicle communication device and between the vehicle outside the facility and inter-vehicle communication system as well as the vehicle outside the facilities and vehicle communication device

申请号 JP2003103686 申请日 2003-04-08 公开(公告)号 JP3835759B2 公开(公告)日 2006-10-18
申请人 株式会社日立製作所; 发明人 祐治 一ノ瀬; 直之 山田; 大輔 新間; 節男 有田; 繁伸 柳井; 弘之 秋山;
摘要
权利要求
  • 車両外施設に設置された通信装置と情報の送受信を行う車両に設置さ れ、
    前記車両外施設に設置された通信装置と、電力を供給する電力供給ルートで接続し、前記車両外施設に設置された通信装置を通信先として、前記電力供給ルートを通信線として通信す る車両外施設・車両間通信装置 であって、
    前記電力供給ルートとして、集電装置とレールとを介して電力を供給する電力線に接続し、前記集電装置とレールと電力線とを通信線として通信すること、を特徴とする車両外施設・車両間通信装置。
  • 車両に設置された通信装置と情報の送受信を行う車両外施設に設置さ れ、
    前記車両に設置された通信装置と、電力を供給する電力供給ルートで接続し、前記車両に設置された通信装置を通信先として、前記電力供給ルートを通信線として通信す る車両外施設・車両間通信装置 であって、
    前記電力供給ルートとして、き電線又はトロリ線又はサードレールと、レール間とに電力を供給する電力線に接続し、前記き電線又はトロリ線又はサードレールと、前記レールとを通信線として通信を行うこと、を特徴とする車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において複数の搬送波信号を用いて各搬送波信号に送信データを割り付けて通信するものであって、各搬送波信号に対して、信号とノイズとの比であるS/Nを推定又は測定し、その推定又は測定したS/Nの値に応じて、各搬送波信号への送信データ割り付け量を変更して通信を行うこと を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において複数の搬送波信号を用い、各搬送波信号に送信データを割り付けて通信するものであって、各搬送波信号に対して伝送誤り率を評価し、この評価した伝送誤り率に応じて、各搬送波信号への送信データ割り付け量を変更して通信を行うこと を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において直交周波数多重分割通信方式によって通信を行うこと を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において少なくとも1本の搬送波信号を用い、その搬送波信号に送信データを割り付けて通信するものであって、搬送波信号に対してあらかじめ定められている、信号とノイズとの比であるS/Nが得られるか否かを判定し、この判定結果があらかじめ定められているS/N以下の場合に、あらかじめ定められている異なった周波数に前記搬送波信号の周波数を変更して通信を行うこと を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において通信信号をより広い帯域に拡散して通信するスペクトル拡散通信方式によって通信を行うこと を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において、複数の搬送波に異なる情報を割り付けるとともに、前記個々の搬送波に割り付ける情報と同じ情報を少なくとも2本以上の搬送波にそれぞれ割り付け、同じ情報を割り付けた搬送波を周波数軸上に隣接するように配置した状態で通信すること を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、その通信手段において、複数の搬送波に異なる情報を割り付けるとともに、前記個々の搬送波に割り付ける情報と同じ情報信号を少なくとも2本以上の搬送波にそれぞれ割り付け、隣り合った同じ情報を割り付けた搬送波の周波数間隔を100kHz以上離隔した状態で通信すること を特徴とする請求項1 又は請求項 2に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置は、前記各通信手段での通信において少なくとも1MHz以上30MHz以下の周波数を利用して通信を行うこと を特徴とする請求項1乃至請求項 のいずれか1項に記載の車両外施設・車両間通信装置。
  • 両の天井と車両外部の屋根の二重構造でできる空間と、前記車両の床の二重構造でできる空間と、前記車両の内側壁と外側壁の二重構造でできる空間とのいずれかに取り付け られていること、を特徴とする請求項1又は請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載の車両外施設・車両間通信装 置。
  • 前記車両外施設・車両間通信装置 は、レールに接続するための車輪と 数メートルから数十メートルの長さの電力線で接続 されること を特徴とする請求項1 に記載の車両外施設・車両間通信装 置。
  • 請求項1に記載の車両外施設・車両間通信装置と請求項2に記載の車両外施設・車両間通信装置との間において通信する車両外施設・車両間通信 システムにおいて、
    力を供給する 一のき電線 の端点隣り合う他のき電線の 近端点とにそれぞれ前記車両外施設・車両間通信装置 をさらに設置し、前記 端点及び近端点に設置された車両外施設・車両間通信装置 はプロトコール変換された信号で相互にデータの授受を行うこ と、を特徴とす る車両外施設・車両間通信 システム
  • 車両外施設に設置された通信装置と情報の送受信を行う車両に設置され、
    前記車両外施設に設置された通信装置と、電力を供給する電力供給ルートで接続し、前記車両外施設に設置された通信装置を通信先として、前記電力供給ルートを通信線として通信する車両外施設・車両間通信装置を用いた通信方法であって、
    前記電力供給ルートとして、集電装置とレールとを介して電力を供給する電力線に接続し、前記集電装置とレールと電力線とを通信線として通信すること、を特徴とする車両外施設・車両間通信装置を用いた通信方法。
  • 車両に設置された通信装置と情報の送受信を行う車両外施設に設置され、
    前記車両に設置された通信装置と、電力を供給する電力供給ルートで接続し、前記車両に設置された通信装置を通信先として、前記電力供給ルートを通信線として通信する車両外施設・車両間通信装置を用いた通信方法であって、
    前記電力供給ルートとして、き電線又はトロリ線又はサードレールと、レール間とに電力を供給する電力線に接続し、前記き電線又はトロリ線又はサードレールと、前記レールとを通信線として通信を行うこと、を特徴とする車両外施設・車両間通信装置を用いた通信方法。
  • 車両と車両外施設とに設置された車両外施設・車両間通信装置を用いて情報の送受信を行う車両外施設・車両間通信方法であって、
    車両に設置された乗客向けの表示装置又は乗務員向けの表示装置に、少なくとも画像情報であって、前記表示装置に表示する情報を通信すること を特徴とする 請求項14又は請求項15に記載の車両外施設・車両間 通信装置を用いた通信方法。
  • 前記車両外施設・車両間通信方法であって、前記車両の点検又は保守に使用する保守情報を、前記車両からリアルタイムで車両検査を行う車両検査場に送信すること を特徴とする請求項 14乃至請求項16のいずれか1項に記載の車両外施設・車両間 通信装置を用いた通信方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本発明は、車両外施設と車両との間で情報の送受信を行う車両外施設・車両間通信装置及び車両外施設・車両間通信システム並びに車両外施設・車両間通信装置を用いた通信方法に関する。
    【0002】
    【従来の技術】
    近年、電車内の乗客に対し各種情報の提供サービスが行われるようになってきており、専用の通信ケーブルを新たに敷設して客車入り口の上部に設置したテロップ表示器に情報を通信して表示させたりしている。 これらの提供情報は記録装置からの再生であり、最新の情報ではないことが多い。 このため、車両外施設側と車両間の通信(これを「車両外施設・車両間通信」という)を行って、最新情報を車内に提供することが望まれるようになってきている。 このような車両外施設・車両間通信について、従来技術としては次のものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。 特許文献1には、電車内に電線搬送モデムを接続し、車両外施設側の変電所に電力線搬送モデムを接続し、架線を利用して両者間で通信する技術が開示されている。 また、特許文献2には、車両内の乗客が座ったまま所望の商品を無線通信により注文できる技術が開示されている。
    【0003】
    【特許文献1】
    特開平11−317697号公報(段落〔0005〕−〔0015〕)
    【特許文献2】
    特開2002−215914号公報(段落〔0005〕−〔0012〕)
    【0004】
    【発明が解決しようとする課題】
    しかしながら、特許文献1での従来技術においては、架線を利用して車両外施設側の変電所に設置した電力線搬送モデムと電車内に設置した電力線搬送モデム間で通信を行うが、電気ノイズの影響については何ら考慮されていない。 電車には、走行性能向上や快適な走行のために、モータ駆動用、各種制御用の各種容量のインバータが取り付けてある。 このインバータを構成するスイッチング素子(例えばIGBT、バイポーラトランジスタ、FET、サイリスタなどの半導体スイッチング素子)からは、そのオン・オフ動作によって電磁ノイズが発生する。 この電磁ノイズは、スイッチング素子がオンあるいはオフした際に、回路内の配線によるインダクタンス、浮遊容量及びスイッチング素子のスイッチング速度によって決まる高周波ノイズである。 この周波数を実験により評価した結果、数百kHzから数十MHz、場合によっては数百MHzまで及ぶことが分かった。 さらに、車両は、速度制御のためにモータ電圧の周波数が可変になっており、この周波数の基本波やその高調波が発生することにより数十kHz以下の電磁ノイズも発生する。 ノイズは低周波成分ほどパワーが高く、走行時における電磁ノイズは数MHz以下が主体であることも分かった。 これらのノイズはインバータ機器に電力を供給している電力線に重畳される。 さらに、走行中に、トロリ線(電車線ともいう)とパンタグラフ間の放電によって数MHz程度までの電磁ノイズ、場合によっては数百MHzまでの電磁ノイズが発生し、これが前記架線に重畳される。 この結果、前記両電力線搬送モデム間の通信にとっては、これらのノイズが障害となり、通信が困難になることが分かった。 さらに、架線はそのケーブル長が長く、アマチュア無線、ラジオやテレビなどの放送局あるいは中継局からの電波がこの架線に重畳してしまうことが分かった。 架線がまるでアンテナのようになってしまい、前記両電力線搬送モデム間の通信にとってノイズとなり、通信が困難になることが分かった。
    【0005】
    また、無線による通信については、電車が移動しているため、車両外施設側において、線路脇に多数のアンテナを敷設しないと、気象条件や建物、トンネル、駅構内構造物、土壁などの影響で安定した通信ができないという問題がある。 この結果、通信システムが高価なものになるという問題が生じる。
    【0006】
    また、特許文献1での従来技術は、架線を利用しての通信によって、外部ネットワークに接続し、電子メールやWWWなどを利用できるようにすることにある。 しかし、車両運行の安全性や乗客へのサービス向上のためには、車両の保守や検査などに必要な保守情報、電車の運行管理情報、車内広告用情報とTV番組などを送受信可能とする必要があり、駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場などとの通信を主とする必要がある。 車内広告情報やTV番組は、電車の通過する地域(地方)の情報を表示するために電車が駅に到着あるいは通過する際に、最新の情報を電車内に取り込むことが必要であり、駅ビル近郊での大容量通信がもとめられる。
    【0007】
    そこで、本発明は、車両外施設・車両間通信に関し、システム構築のコストを低減できて、電車走行中にも、駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場などに設置した通信装置と安定した通信をおこなうことが可能な車両外施設・車両間通信装置及び車両外施設・車両間通信システム並びに車両外施設・車両間通信装置を用いた通信方法を提供することを目的とする。
    【0008】
    なお、本発明における車両とは、電車、モノレール車両、トロリ電車、タイヤ電車なども含む。
    【0009】
    【課題を解決するための手段】
    前記課題を解決するために、車両と車両外施設とに車両外施設・車両間通信装置(以下、通信装置と略称する)を設置し、車両に設置された通信装置は、集電装置とレールを介して車両に電力供給する電力線に接続され、車両外施設に設置された通信装置は、き電線又はトロリ線又はサードレールと、レール間とに電力を供給する電力線に接続し、この通信装置間で、き電線又はトロリ線又はサードレールと、レールとを通信線として通信を行う。 そして、これらの通信手段は、複数の搬送波信号(マルチキャリアともいう)を用い、各搬送波信号に送信データを割り付けて通信するものであり、スペクトル拡散方式や周波数変更方式などの方法で行う。 また、車両外施設に設置する通信装置は、駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場などのいずれかの場所に設置し、少なくとも画像情報であって、車両に設置された乗客向けの表示装置又は乗務員向けの表示装置に表示する情報を送信したり、車両の点検又は保守に使用する保守情報を送信する。 詳細は発明の実施の形態で述べる。
    【0010】
    本発明によれば、S/Nの高い搬送波信号による通信や、S/Nの高い周波数帯域での通信や、通信帯域より広い帯域に拡散して通信するスペクトル拡散通信によるS/N向上を図った通信により、トロリ線とパンタグラフ間の放電によって電磁ノイズが発生したり、列車のインバータが動作して電磁ノイズが発生したり、アマチュア無線、ラジオやテレビなどの放送局あるいは中継局からの電波が架線に重畳しても、これに大きく影響を受けることなく、既設のき電線、トロリ線、サードレール、レールを通信路として車両外施設から車両への情報及び車両から車両外施設への情報又はこれらのいずれかを安定して送信することが可能になる。 また、この通信のために新たなケーブル敷設工事を行う必要がない。
    【0011】
    さらに、車両外施設側に設置する通信装置は、駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場などのいずれかの場所に設置し、前記車両へ電力を供給するトロリ線とレールとに接続して、車両側に設置する通信装置と通信することにより、列車が駅に停止した際にトロリ線とパンタグラフ間の放電がなくなり、加えて列車のインバータの動作によって発生する電磁ノイズが低減し、通信のS/Nが大幅に向上して通信速度が向上し、大量のデータを通信可能になる。 また、列車が駅に停止せずに通過する場合であっても、速度を減速するために、トロリ線とパンタグラフ間の放電によって生じるノイズや、列車のインバータの動作によって発生する電磁ノイズが低減し、通信のS/Nが向上して通信速度が向上し、比較的大量のデータが通信可能になる。
    【0012】
    また、車両外施設側から車両への通信により、乗務員に最新の座席予約状況を提供できたり、乗客に提供する広告情報、TV番組(ニュース、各種スポーツの実況あるいは録画情報など)を最新の情報に更新して提供できるようになる。 また、通常時あるいはダイヤが乱れた時の列車運行情報(次の停車駅名、次の停車駅への到着予想時刻)などの情報提供が可能になったり、乗客の状況(特に、マナーの悪い乗客の状況、盗難、セキュリティなど)をカメラで監視した画像情報や、モータ、インバータなどの機器の温度、振動、電圧、電流などの保守に必要な保守データを車両外施設側に送信し、車両外施設側で遠隔監視したり、集中管理することが可能になり、その結果、到着予定駅あるいは機関区、電車区、運転所、車庫などでの対応準備が事前にできるようになり、効率的に作業を進めることができるなどの効果がある。 また、モータ、インバータなどの機器の温度、振動、電圧、電流などの車両の保守や検査に必要な保守データなどは、車両を検査する車両検査場にリアルタイムで送信したり、又は、保守データを車両内に、例えば、蓄積サーバなどに蓄積しておき、後日車両検査場で出力することが可能になる。
    【0013】
    【発明の実施の形態】
    以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。 なお、本発明の実施形態は、(1)き電線又はトロリ線又はサードレールと、レールとを通信線として、車両側に設置する車両外施設・車両間通信装置(適宜、「通信装置」と略称する)と車両外施設に設置する通信装置間で通信する第一の実施形態と、(2)通信装置間で一度プロトコール変換された信号で相互にデータ授受を行い、き電線又はトロリ線又はサードレールと、レールとを通信線として、車両側に設置する通信装置と車両外施設に設置する通信装置間で通信する第二の実施形態と、(3)2本の電車線を通信線として、車両側に設置する通信装置と車両外施設に設置する通信装置間で通信する第三の実施形態とに大別して説明する。 また、本発明の実施形態における車両とは、電車、モノレール車両、トロリ電車、タイヤ電車なども含む。 また、以下の説明において、駅ビルには駅舎も含む。 駅舎とは、鉄道駅などの本屋にあたる建物である。 き電線とは、変電所からトロリ線(電車線ともいう)に電力を供給する設備を総称してき電線路といい、その主電線をき電線という。 トロリ線は、送電線という電気的機能とともに、パンタグラフ(集電装置ともいう)によりしゅう動されるという機械的機能をも担っている。 サードレールは、地下鉄に多く用いられ、駅区間ではホームと反対側に設備し、電力を供給するものである。 なお、地下鉄においても電車屋根上の電車線から電力を供給し、電車内の主回路を通った後、レールに流れるものもある。 以降、車両外施設・車両間通信装置は、適宜、通信装置と略称する。
    【0014】
    〔第一の実施形態〕
    図1は、第一の実施形態の車両外施設・車両間通信装置の構成を示す図である。 その代表例として、交流電車を対象に示している。 駅ビルあるいは駅構内1のいずれかの場所(例えば、発券管理室、駅員室など)又は図示しないが車両検査場に通信装置5aが設置してあり、通信装置5aはサーバ7に接続されている。 サーバ7は端末6に接続されているが、通信網2にも接続されており、例えば、広告センタ3、座席予約センタ4などの外部のサービスセンタ他に接続されている。 通信装置5aの構造については後記するが、通信装置5aは電車に電力を供給するための、き電線(ちょう架線ともいう)8とレール12に接続されている。 電車は車両10、11他から編成されている。 電車はパンタグラフ(集電装置ともいう)15を介して変電所13、14からの電力供給を受ける。 図中では車両10が変電所13からの電力供給を受ける状況を示している。 き電線8は変電所13、14からの電力をトロリ線(電車線ともいう)9を介して電車に供給するためのものである。 トロリ線9は送電線という電気的機能と共にパンタグラフ15によりしゅう動されるという機械的機能をも担っている。 パンタグラフ15を介して供給される電力は保護回路17を介してトランス18に供給され、車輪16a、レール12を介して変電所13にもどる。 このトランス18の二次側にコンバータ/インバータ(C/I)19が接続され、このコンバータ/インバー19により電動機20a、20bが制御され、車輪16a、16bを駆動する。 また、き電線(ちょう架線ともいう)8とトロリ線(電車線ともいう)9を総称して架線、あるいは架空線ということもある。
    【0015】
    通信装置5bはフューズ21を介して、パンタグラフ15を介して電力供給する電力線31と車輪側に接続される電力線32に接続される。 フューズ21は電力線31、32に接続した通信装置5bが短絡故障して電車への電力供給に支障をきたすことがないようにするために設けている。 通信装置5aと5bは、き電線8、トロリ線9、車輪16a、レール12を通信路として相互に情報を通信する。 なお、この通信については、後記する。
    【0016】
    また、電車内には通信線24が敷設されており、通信装置23、25a、25b間で情報の送受が行われる。 通信装置5bはサーバ22を介して通信装置23に接続されており、通信装置23を介して通信装置25a、25bと通信することが可能になる。 通信装置25a、25bは、車両内の状況を監視するカメラ27a、27bが接続されており、カメラ27a、27bで監視した画像情報を通信装置23、通信サーバ22を介して通信装置5bに通信することが可能になる。 また、図示していないが、加速度振動計、温度センサ、電圧センサ、電流センサなどの各種センサの出力であるデータは、データ収集装置28a、28bで取り込まれ、保守データとして通信装置25a、25bに取り込まれ、保守データを通信装置23、通信サーバ22を介して通信装置5bに通信することが可能になる。
    【0017】
    さらに、これらの監視画像情報及び保守データは、通信装置5bから、き電線8、トロリ線9、車輪16a、レール12を通信路として駅ビルあるいは駅構内1に設置してある通信装置5aに通信される。 この結果、この監視画像及び保守データが端末6に取り込まれ、駅員がこの端末を利用して防犯チェックや乗客のマナーチェックをしたり、電車の正常あるいは異常状態を把握することが可能になる。
    【0018】
    モータ、インバータなどの機器の温度、振動、電圧、電流などの車両の保守や検査に必要な保守データなどは、車両を検査する車両検査場にリアルタイムで送信したり、又は、保守データを車両内に、例えば蓄積サーバなどに蓄積しておき、後日車両検査場で出力することが可能になる。 最新の保守情報をリアルタイムに車両検査場に送信する場合、電車が車両検査場の近くを通過する際に減速しても、通信装置5a,5bでの送受信は、電車に取り付けられている各種制御用のインバータなどの動作によって生じるノイズに影響されないので、保守情報などの安定した送信が可能となる。
    【0019】
    監視画像については、通信網2を介して、図示していないが管理センタの画像サーバに蓄積し、必要に応じて蓄積した画像情報を利用して防犯チェックや乗客のマナーチェックをすることが可能になる。
    【0020】
    通信装置25a、25bに接続される表示装置26a、26bは通信装置23から送信される情報を表示するためのものである。 これらは、広告センタ3、座席予約センタ4などからの情報が通信網2を介して送信され、通信装置5aで一度受信され、さらに、き電線8、トロリ線9、車輪16a、レール12を通信路として通信装置5bに送信される。 この送信されてきた情報はサーバ22に取り込まれ、サーバ22に保存されたり、通信装置23、通信装置25a、25bを介して表示装置26a、26bに表示される。 この結果、乗客は広告情報、イベント情報を見たり、TV番組(ニュース、各種スポーツの実況あるいは録画情報など)を見ることが可能になる。 広告情報、イベント情報、TV番組などの少なくとも画像情報は、車両に固定された表示装置、例えば、車両の戸袋の上に設置された表示装置に表示可能な情報であれば特に限定されない。 電車が駅に到着あるいは通過する際に、最新の情報を電車内に取り込むことが可能になり、乗客に最新情報を提供することが可能となり、乗客の快適さを維持できるようになる。 電車は駅に到着あるいは通過する際には減速するが、この時電車に取りつけられている各種制御用のインバータなどが動作しても、通信装置5a,5bでの送受信は後記するノイズに影響されないので、画像情報などの大容量の送受信が可能になる。
    【0021】
    車両内にいる乗務員が、例えば、サーバ22を利用して、座席予約センタ4から送信され、サーバ22に保存された最新の座席予約情報を入手し、座席指定席の空席状況を把握することが可能になると共に検札も容易になる。 また、通常時あるいはダイヤが乱れた時の列車運行情報(次の停車駅名、次の停車駅への到着予想時刻)などの、駅ビルあるいは駅構内へ又は駅ビルあるいは駅構内からの情報の提供なども可能になる。
    【0022】
    なお、1台の変電所から供給する電力の供給範囲には制限があり、ほぼ数十Kmの区間である。 交流電圧の供給においては、各変電所からの電力を送電するき電線8やトロリ線9は区間ごとに、き電線間の空間(エアセクションともいう)30a、絶縁器(絶縁セクションともいう)30bで絶縁されている。 このため、電車のパンタグラフ15が、例えば変電所14に接続されているトロリ線9をしゅう動している際には、通信装置5bは通信装置5aと通信ができなくなる。 この問題を解決するために、高周波コンデンサ29をき電線間の空間30a(絶縁器30bに相当)の両端に接続し、商用周波数の交流電圧は抑制し、高周波の通信信号を通過させるようにしている。
    【0023】
    なお、変電所13、14から直流電圧が送電される場合には、き電線間の空間30a、絶縁器30bは必要なく、き電線8やトロリ線9が絶縁されていないので、高周波コンデンサ29は不要になる。
    【0024】
    また、結合器65はコンデンサとトランスから成っている。 コンデンサで商用周波数の交流電圧あるいは直流電圧をカットあるいは十分抑制させ、トランスのインダクタンスとこのコンデンサの静電容量の値で決まる高周波通過特性を持たせることにより、後記するメガヘルツ(MHz)の通信帯域の通信信号を減衰させることなしに、き電線8やレール12に重畳させるようにしている。
    【0025】
    通信装置5aは、外部機器(サーバ7、端末6など)との接続や保守性を考慮して、駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場内に設置する。 また、通信装置5aの構成要素である結合器65のコンデンサを駅あるいは駅ビルや車両検査場などいずれかの場所の建屋外に設置し、結合器のトランス、その他の信号処理回路部分5a'を駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場内などのいずれかの場所に設置しても構わない。 これは、高圧が印加されているコンデンサは安全性を考慮して、建屋外に設置し、信号処理回路部分5a'は外部機器(サーバ7、端末6など)との接続や保守性を考慮することによるものである。 また、さらに安全性強化のために、結合器65そのものを駅あるいは駅ビルや車両検査場などいずれかの場所の建屋外に設置し、その他の信号処理回路部分5a'を駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場内などのいずれかの場所に設置することもある。 信号処理回路部分5a'とは、通信装置5aにおいて結合器65を除いた部分を示す。 本発明の実施の形態において、通信装置5aの駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場などへの設置は、前記の設置形態を全て含むものである。
    【0026】
    また、各変電所からき電線8とレール12間に送電する電力は独立した系統となっているために、複線や、上りと下りがある線路では、これらの各系統に対応して独立に、車両外施設側と車両側に通信装置をそれぞれ備える必要がある。 つまり、駅ビルあるいは駅構内1に設置する通信装置5aは電力を供給している線路ごとに通信装置5aを設置する必要がある。 従って、上り列車と下り列車とでそれぞれ独立に車両外施設側と通信が可能になり、同一の周波数帯をそれぞれ利用しても混信したり、通信障害が発生することがないという効果を奏する。
    【0027】
    通信装置5aと通信装置5b間で通信する情報は、前記監視画像やTV画像や広告情報、保守データなどを含んでおり、大容量の情報であるため、少なくとも通信速度は、1Mbps以上が要求される。 このため、通信装置5aと通信装置5bは、後記するメガヘルツ(MHz)帯域を利用して大容量通信を行う。
    【0028】
    電車には、走行性能向上や快適な走行のために、モータ駆動用、各種制御用の各種容量のインバータが取り付けてある。 コンバータ/インバータ(C/I)19はその代表であり、複数の車両に対して1台設置されており、1編成列車では複数のコンバータ/インバータが取り付けられることになる。 このコンバータ/インバータ19(以下では、インバータと表現することもある)を構成するスイッチング素子(例えば、IGBT、バイポーラトランジスタ、FET、サイリスタなどの半導体スイッチング素子)からは、そのオン・オフ動作によって電磁ノイズが発生する。 この電磁ノイズは、スイッチング素子がオンあるいはオフした際に、回路内の配線によるインダクタンスや浮遊容量及びスイッチング素子のスイッチング速度によって決まる高周波ノイズである。 この周波数を実験により評価した結果、数百kHzから数十MHz、場合によっては数百MHzまで及ぶことが分かった。 さらに、車両10は、速度制御のためにモータ電圧の周波数が可変になっており、この周波数の基本波やその高調波が発生することにより数十kHz以下の電磁ノイズも発生する。 ノイズは低周波成分ほどパワーが高く、走行時における電磁ノイズは数MHz以下が主体であることも分かった。 これらのノイズはインバータ機器に電力を供給している架線に重畳される。 さらに、走行中に、トロリ線9とパンタグラフ15間の放電によって数百kHzの電磁ノイズが主体であるが、数MHz程度までの電磁ノイズ、場合によっては数百MHzまでの電磁ノイズが発生し、これが前記架線に重畳される。 さらに、架線はそのケーブル長が長く、アマチュア無線、ラジオやテレビなどの放送局あるいは中継局からの電波がこの架線に重畳してしまうことが分かった。 架線がまるでアンテナのようになってしまい、通信装置5aと通信装置5b間の通信にとってノイズとなり、通信が困難になることが分かった。
    【0029】
    列車走行時における電磁ノイズは前記したように数MHz以下が主体であるが、その一例を図2に示す。 図2ではノイズと通信の送信信号及び受信信号を合わせて示している。 これらの関係については後記する。 ノイズは、約1MHz以下のパワーが高く、約5MHz以上ではあまり高くないことが分かる。 通信帯域としては1MHz以上及び30MHz以下が望ましいが、5MHz以上及び30MHz以下とすればさらに良い。 このような1MHz以上及び30MHz以下の通信帯域はいわゆる中波及び短波の帯域と同一であるため、電車が走行中に、パンタグラフがトロリ線から物理的に離れても、通信信号はパンタグラフとトロリ線間の空間を無線として伝播することができるため、車両外施設と車両間の通信が途絶えることがないという効果がある。 しかし、前記両帯域でもノイズは重畳しており、この帯域を利用する通信にとって障害になってしまう。 特に、通信路としてき電線8、トロリ線9、レール12を利用しているため、信号減衰がかなり大きいため、この影響は大である。
    【0030】
    通信装置5a,5bは、このようなノイズの影響を非常に低減した通信を可能にするものであり、図3を参照して以下に説明する。 図1で示した通信装置5a,5bは同一構成であり、図3に示す通信装置5aを基に説明する。 通信装置5aは、結合器65、バンドパスフィルタ(BPフィルタ)50,60、受信アンプ51、送信アンプ59、アナログ/ディジタル変換器(A/D)52、ディジタル/アナログ変換器(D/A)58、等化器53、復調器54、変調器57、アクセスコントローラ55、プロトコール変換器56からなっている。
    【0031】
    通信装置5aは、サーバ7とのインタフェースをとるために、プロトコール変換器56を設けている。 サーバ7は、パソコンをベースとした装置で構成すると各種汎用ソフトウェアを利用でき、情報管理やデータ処理などが容易になるため、プロトコール変換器56は、例えばイーサ(R)やUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースとすることが有効である。 プロトコール変換器56は、サーバ7から車両に提供するためのデータを外部から受け取ると、このデータを通信装置5aで扱う所定フォーマットの通信パケットに変換する。 アクセスコントローラ55は、プロトコール変換器56からの通信パケットを受信すると、このデータを変調器57に出力する。 変調器57は、別途入力している搬送波ごとのデータ割り付け量情報55bに基づいて、各搬送波に前記データを割り付ける。 このことをビット割り付けともいう。 搬送波にデータが割り付けられた信号はD/A58によりアナログ信号に変換され、送信アンプ59によって増幅され、BPフィルタ60、結合器65を介してき電線8、レール12に電圧として出力され、通信装置5bに送信される。
    【0032】
    一方、通信装置5bから送信されてきた信号は、結合器65を介し、BPフィルタ50によって通信帯域以外の信号を抑制し通信帯域の信号を受信アンプ51に出力する。 受信アンプ51は、受信信号を増幅してA/D52に出力し、A/D52によってディジタル信号に変換された信号が等化器53に出力される。 等化器53は、通信路の通信路歪(伝送路歪ともいう)を補正するためのものであり、通信路歪の補正処理を行った信号が復調器54に出力される。 復調器54では、別途入力している搬送波ごとのデータ割り付け量情報55aに基づいて、各搬送波に割り付けられているデータを取り出し、アクセスコントローラ55に出力する。 アクセスコントローラ55では、この取り出したデータを所定フォーマットの通信パケットに変換し、プロトコール変換器56に出力する。 プロトコール変換器56は、この通信パケットを、情報管理やデータ処理を容易にするためのインタフェース(例えばイーサ(R)やUSBなど)が取れるようにプロトコールの変換をしてサーバ7に情報を出力する。
    【0033】
    アクセスコントローラ55は、復調器54及び変調器57にデータ割り付け量情報55a,55bを出力するが、この情報で示されるデータ割り付け量は常に一定ではなく、一定時間ごとに通信装置5aと5b間の通信特性に対するトレーニング(学習ともいう)を行って搬送波ごとにS/Nを推定(測定あるいは判定という)するか、あるいは通信時の伝送誤り率を評価し、これらの結果に応じて、搬送波ごとあるいは全搬送波に対してデータ割り付け量を変更する。 また、S/N(信号とノイズの強さの比)の推定と伝送誤り率の評価とを併用してデータ割り付け量を変更しても良い。 このように、通信装置5aと5b間で通信路の通信特性(伝送誤りやS/N)をダイナミックに評価し、この結果に基づいて変復調の処理(データ割り付け量の変更)を変更することで伝送エラーを発生させないように通信することが可能になる。 以下では、この点を詳細に説明する。
    【0034】
    なお、通信装置5bは、車両10の内側壁と外側壁の二重構造でできている空間を利用して設置する。 すなわち、車両10の天井と屋根(車両外部)との間の空間、又はドアの戸袋などの空間に設置する。 これらの個所は、いずれも二重構造であり、この空間に設置することにより新たなスペースを必要とすることがなく、また車内の美観を損なうこともない。
    【0035】
    図2に示したように、ノイズは低周波ほどパワーが高い。 具体的には、1MHz以下が高く、7MHz近傍でノイズの部分的なピークがあるものの5MHz以上ではあまり高くない。 通信装置5aから通信装置5bにデータを送信するとして、通信装置5aが通信路に送信した信号の強さが図2に示したように一定であっても(図2の送信信号参照)、通信路の特性が周波数依存性を持っているため、通信装置5bで受信した信号の強さは、高周波ほど低下し、かつ変動している。 これは、通信線のインダクタンスや通信線の往路及び復路間の静電容量により通信信号の減衰や、通信路の分岐点や端点での反射、さらには放送局から出力される電波(放送波)などによるものである。 また、き電線、トロリ線、レールを通信路としているために、通常の通信用信号線と比較し、信号の減衰がかなり大きい。 安定した監視画像の通信(通信速度は1Mbps程度以上)のためには、受信信号とノイズの強さの比(dB表現では差)であるS/Nを所定以上とする必要があり、受信信号の高周波帯域での減衰を評価すると、30MHz以下の周波数帯域を通信帯域として使用することが望ましい。 帯域を狭くすると、通信速度が低くなるという問題があるため、通信帯域としては少なくとも1MHz以上で30MHz以下が望ましい。 さらに、通信帯域として5MHz以上で30MHz以下の帯域を利用すると、ノイズの影響が低くなり、より安定した高速通信が可能である。 等化器53は、通信路の通信路歪を補正し、復調器54が正しくデータを復調するために必要である。 等化器53は、通信におけるプリアンブル信号を用いて通信路歪を評価し、この評価の結果を用いて通信路歪を補正する。 図2のように、等化器53は減衰した受信信号の通信路歪を補正するが、その際ノイズ成分も増幅されるためS/Nは改善されない。 この等化器53がなければ、通信路歪の影響でデータの復元にエラーが生じる。 つまり伝送エラーになってしまう。 この点についても後記する。
    【0036】
    搬送波として使用帯域内で複数の搬送波(マルチキャリア)を用いる場合を例に、S/Nを評価してデータ割り付け量を変更する仕組みについて以下に説明する。 図4にマルチキャリアのスペクトルを示す。 帯域Δfの搬送波は、使用帯域に複数割り当てるが、搬送波と搬送波が重ならないようにするために、搬送波間で所定帯域だけスペースを取るのが一般的である。 各搬送波には所定の送信データのビットが割り付けられる。 マルチキャリアの特殊なケースであるOFDM(直交周波数多重分割)は、図5に示すように、搬送波のピーク点では、他の搬送波のパワーがゼロとなるように各搬送波が配置され、各搬送波の帯域をΔfとすると、時間1/(Δf/2)での逆フーリエ変換による直交性の維持を図っている。 このため、一般のマルチキャリアとは異なって、各搬送波が重なり合っても信号が復元可能であるため、使用帯域が一般のマルチキャリアより狭くて良く、周波数利用効率が一般のマルチキャリアより高いという特徴をもっている。 なお、OFDMもマルチキャリアの一種である。
    【0037】
    搬送波を用いて通信する方式として、前記のような複数の搬送波を用いて通信する方式(マルチキャリア通信方式という)と、単一の搬送波(単一キャリアともいう)を用いて通信する方式(単一キャリア通信方式という)があり、いずれも搬送波(キャリア)にデータ(ビット)を割り付けて伝送する。 このように搬送波(キャリア)にデータを割り付けて伝送するわけであるが、キャリアごとのS/Nによりそのデータ割り付け量には制限がある。 マルチキャリア通信方式は、使用帯域内で複数の狭帯域のキャリアを設けて通信する方式である。 このため、き電線8、レール12に重畳したノイズの内、特定の周波数のノイズのパワーが高いと、そのノイズの周波数に合致するキャリアのS/Nが他のキャリアよりも低くなり、そのキャリアへのデータ割り付け量が低くなるだけであり、全キャリアとして高いデータ割り付け量を維持できる。 この結果、高い通信速度を確保することが可能である。 このように、マルチキャリア通信方式は、複数のキャリアを用いて通信しているため、S/Nの低くなった特定の搬送波(キャリア)に対してデータ割り付け量が低くなるだけである。 これに対して、単一キャリア通信方式では、特定の周波数のノイズのレベルが高いだけであっても、キャリアが一つであるため、そのキャリアに割り付けるデータ量が低くなり、マルチキャリア通信方式と比べ、かなり通信速度が低下する。 特に車両における動きのある監視画像を伝送するためには1Mbps以上の通信速度が必要であるために、単一キャリア通信方式より、マルチキャリア通信方式の方が適している。
    【0038】
    各搬送波(キャリア)ごとに複数の波形(振幅と位相が異なる)を使用し、この波形にデータ(ビット)を割り付けて伝送するが、多数の送信波形を用いて伝送する際の変調は多値変調と呼ばれ、各キャリアごとのS/Nによりそのデータ割り付け量(ビット割り付け量ともいう)には制限があり、図6のような関係になっている。 例えば、伝送誤り率を1/10 5に設定すれば、256QAM、64QAM、16QAM、QPSK、BPSKでは、S/Nがそれぞれ約22.5dB、約17.7dB、約13.5dB、約9.5dB、約6.3dB必要である。 256QAMでは8ビットの割り付けが可能であり、64QAMは6ビット、16QAMは4ビット、QPSKは2ビット、BPSKは1ビットの割り付けが可能であり、S/Nが約6.3dB未満であれば、ビットの割り付けをしない。 なお、QAMはQuadrature Amplitude Modulation、QPSKはQuadrature Phase Shift Keying、BPSKはBinary Phase Shift Keyingと呼ばれ、QAMは振幅変調、QPSK及びBPSKは位相変調である。 前記例では128QAM、32QAMなどを示していないが、その他のQAMもある。 なお、誤り訂正機能を付加することにより、伝送誤り率を1/10 5から1/10 7程度にすることが可能である。 従って、例えば、通信速度が1Mbpsであれば、確率的に10秒に1回誤りが発生することになり、誤りが発生した伝送フレームあるいはパケットを再送することにより、問題なく安定した通信が可能になる。
    【0039】
    〔S/Nの推定評価〕
    次に、図7を用いて、S/Nの評価について、適宜図3を参照しながら説明する。 図7は、通信装置5aから通信装置5bにS/Nを評価するためのトレーニングデータを送信してS/Nを算出する例を示している。 逆に、通信装置5bから通信装置5aにS/Nを評価するためのトレーニングデータを送信してS/Nを算出する場合も同一である。 通信装置5aから通常のデータを送信する場合は、ステップ1からステップ5の手順により実施しており、S/N評価のための処理は割込み処理によって実施する。 ここでは、割込み処理として、一定時間ごとに起動する割込み処理を例にしている。 図7に示す処理は、アクセスコントローラ55によってなされる。 通常のデータ送信においては、まずステップ1にて、プロトコール変換器56から取り込んだデータを基に通信装置内のパケットデータを作成する。 次にステップ2で、作成したパケットデータを変調器57に出力する。 これによって、データが変調され通信装置5bに送信される。 通信装置5bから送信されてくるデータについては、ステップ3で復調器54からのパケットデータを取り込む。 ステップ4にてCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)の評価を実施して、伝送誤り検出を行う。 ステップ5にて、伝送誤りがあれば、通信装置5bに再送要求をし、伝送誤りがなければ取り込んだデータをプロトコール変換器56に出力する。
    【0040】
    このような通常のデータ通信処理を実施している状態で、S/N評価のための割込み処理を実施する。 ステップ6で、あらかじめ用意しているトレーニングデータを変調器57に出力する。 この結果、トレーニングデータが変調されて、通信装置5bに送信される。 これに対して、通信装置5bは、ステップ10でトレーニングデータを受信し、ステップ11で搬送波ごとのS/Nを計算する。 この計算については後記する。 さらに、ステップ12で、搬送波番号とビット割り付け量とをペアとしてパケットデータに変換し、変調器57に出力する。 搬送波番号とビット割り付け量とのペアをビット割り付け情報とよぶ。 この結果、通信装置5bから通信装置5aにビット割り付け情報(搬送波番号とビット割り付け量)が送信されてくる。 また、自局である、通信装置5b自体のビット割り付け情報を更新するためにビット割り付け情報テーブルの書き換えを実施する。 このビット割り付け情報は、通信装置5aから伝送されてきたデータを通信装置5bの復調器54で復調する際に使用する。 その後、通信装置5aは通信装置5bから送信されてくるビット割り付け情報をステップ7で受信し、ステップ8にてビット割り付け情報テーブルの書き換えを実施する。 この処理が終了すると、ステップ9にてビット割り付け情報テーブルの書き換え完了を示すACK(Acknowledge)を通信装置5bに送信する。 通信装置5bでは、ステップ13にてACKを受信し、処理を終了する。 この処理が終了すると、逆に、通信装置5bから通信装置5aにトレーニング情報を送信し、通信装置5bから通信装置5aへの伝送に対するS/Nを評価する。 これは、通信線のS/Nが対称になっていれば必要はないが、S/Nに対称性がない場合には有効である。 車両外施設・車両間通信の場合、ノイズ源であるインバータが通信装置5b側にあるため、通信装置5b側のノイズが通信装置5aのノイズより強いことが考えられる。 従って、通信装置5bにおけるS/Nが低くなるため、通信装置5aから通信装置5bにデータを送信する場合には、各搬送波に割り付けるビットをS/Nに応じて低くする必要が生じる。 このように各通信装置でのS/Nに差がある場合には、双方向でのS/N評価を実施し、この結果得られるビット割り付け情報を各アクセスコントローラ55に記憶しておき、変調及び復調に対応して利用する。
    【0041】
    トレーニングデータを送信するか通常のデータを送信するかを区別する必要があるが、これは図8のように伝送フォーマットを構成することにより実現できる。 この伝送フォーマットは、プリアンブル信号、ヘッダ、データ、CRCからなっており、ヘッダにおいてトレーニング情報か通常のデータ情報かを示すようにしている。 ヘッダがトレーニング情報を示せば、データの中にはトレーニング用データが入っており、ヘッダがデータ情報を示せば、データの中には通常の送信データが入っている。 トレーニング用データとしては、256QAM、64QAM、QPSKなどがあるが、ここでは理解を容易にするために、QPSKを例に説明する。 なお、プリアンブル信号はシンボル同期のために用いる。 QPSKは各搬送波に2ビットを割り付ける変調方式であり、信号点配置は図9のようになっている。 I軸は信号の同相成分を表し、Q軸は信号の直交成分を表している。 信号点へのデータ割り付けは、例えば、第1象限の信号点でデータ“00”を示し、第2象限の信号点でデータ“01”、第3象限の信号点でデータ“11”、第4象限の信号点でデータ“10”を表す。 そこで、全ての象限のデータを送信した方がS/Nをより一層正確に評価することが可能である。 厳密でなければ、2ビットからなる適当なデータを利用しても良い。 例えば、第1象限と第3象限のデータで構成し、“00”、“11”としても良いし、すべて第1象限のデータとし、“00”としても良い。
    【0042】
    図7のトレーニング用データとして“00”、“01”、“11”、“10”が設定される。 そして、この場合、図2において、アクセスコントローラ55から変調器57に出力するビット割り付け情報として各搬送波ごとに2ビットの割り付け(QPSK)であることを出力する。 これにより、変調器57はQPSK変調により、2ビットづつのトレーニング用データを、各搬送波に割り付け伝送する。 トレーニングの場合には、各搬送波のS/Nを評価することが目的であるため、全搬送波に対してQPSK変調を施してデータを送信する。 トレーニングの際にはあらかじめQPSK変調で伝送することが決まっているため、受信側ではQPSKで復調する。 なお、QPSKではどの信号点に対しても振幅が一定であり、位相が異なるだけであり、復調処理が簡単であるが、256QAM、64QAMなどを利用してトレーニングを実施しても良い。
    【0043】
    S/Nの評価は以下のように実施される。 QPSKの場合、通信線上にノイズもなく減衰もなければ、復調した際の信号点は図10のようになる。 しかし、通信線上にはノイズがあり、かつ減衰もする。 減衰については図2に示すように等化器53によって補正されるため、復調された信号は信号点配置において、基本的には真値の周りに復元されることになる。 図10において、丸で示した範囲が復調後の信号点位置である。 原点から真値までの距離が信号の強さSであり、真値から復調後の信号点位置までの距離がノイズの強さNである。 従って、両者の比を計算すればS/Nが求まる。 トレーニングでは、変調方式をあらかじめ定めているので、真値がどこにあるかをあらかじめ通信装置に記憶させておくことができる。 真値を用いてS/Nを計算する方式の他には、平均値を用いる方式がある。 これは、復調後の信号点位置の平均を算出し、この結果を用いて原点からの距離をSとし、各復調後の信号点位置からの距離をNとする方式である。 なお、いずれの方式においても、ノイズをより正確に評価(推定あるいは測定)するためには、各搬送波に対して何度もトレーニングデータを送信する必要がある。 セキュリティを考慮すると1秒ごとに監視画像情報を画像蓄積サーバで保存することが必要と思われるため、秒オーダ、望ましくは1秒ごとにトレーニングを実施するのがよい。
    【0044】
    〔伝送誤り率評価〕
    次に、トレーニングをイベントで実施する方式について説明する。 このための処理を図11に示す。 図7と異なる点は、一定時間ごとにトレーニングを実施するのではなく、通常のデータ伝送を実施し、伝送誤りが多数発生する場合に、トレーニングを実施させるようにしている点である。 このために、ステップ4でのCRCによる誤りチック結果を基に、ステップ5で所定時間内での誤り発生頻度(伝送誤り率)を算出し、この結果があらかじめ定めた所定値以上の場合にトレーニングを実施する。 トレーニングについては、図7と同様に、ステップ6からステップ13を実施することにより達成される。 このトレーニングが終了したら、通常のデータ通信を実施する。 なお、この例では、通信装置5bから通信装置5aへのデータ送信時に発生した伝送誤り率に基づいて、通信装置5aから通信装置5bへのトレーニングを示したが、逆に、通信装置5aから通信装置5bへのデータ送信時に発生した伝送誤り率に基づいて、通信装置5bから通信装置5aへのトレーニングも同様にして実施される。
    【0045】
    このように、伝送誤り率に応じてトレーニングをすること(イベント駆動のトレーニング)、つまり、S/Nが悪化したときにトレーニングをするため、一定時間ごとにトレーニングを実施する方式に比べ伝送効率が高くなるとういう特徴がある。
    【0046】
    さらに、このイベント駆動のトレーニングと一定時間ごとに行うトレーニングとを併用するとさらに伝送効率がよくなる。 つまり、イベント駆動のトレーニングによりS/Nが悪化したときのトレーニングが可能であり、S/Nが改善した場合には一定時間のトレーニングにより、高いS/N状態でのデータ割り付けが可能になるため、通信速度をより一層速くできる。 イベント駆動のトレーニングのみでは悪化したときのトレーニングによって決まるデータ割り付け量のみになってしまうため、伝送路のS/Nが向上しても既にトレーニング済のデータ割り付け量のままであり、通信速度の改善ができないが、両方式を併用することにより、S/N低下時にイベント駆動のトレーニングによりデータ割り付け量が低下しても、一定時間ごとのトレーニングにより、伝送路のS/Nが向上していれば、データ割り付け量は多くなる。 このように伝送路のS/N状態に応じて最適なデータ割り付け量が決定できる。 このための処理は、アクセスコントローラ55により、イベント駆動のトレーニングを図11の処理で実施し、一定時間ごとのトレーニングを割込み処理(図7参照)で実施すればよい。
    【0047】
    〔OFDM通信〕
    前記に加え、OFDMを含むマルチキャリア通信方式を利用して通信装置5a,5b間で通信することにより、十分なS/Nが確保できない周波数が存在し、この結果、データの割り付けのできないキャリアが存在しても、その他の周波数のS/Nが高ければ、これらの周波数の搬送波に多くのデータ割り付けが可能になり、全体として1Mbps以上の十分な通信速度を確保できる効果がある。 さらに、OFDMは周波数利用効率が高いため、一般のマルチキャリア通信方式より狭い帯域で同等の通信速度を確保することが可能になる。 このため、インバータノイズによりS/Nが周波数によって変化するが、そのS/Nの変化がある程度の周波数範囲にわたっていても、OFDMでは比較的S/Nの高い周波数帯域を使用周波数帯域として設定し、通信速度を確保できるという特徴がある。
    【0048】
    〔単一搬送波のS/N評価〕
    次に、単一キャリア(単一搬送波)を使用した場合のS/N評価について説明する。 単一キャリアを使用して、マルチキャリアと同一の通信速度を実現するには単一キャリアの帯域を広くする必要がある。 単一キャリアの帯域を広くすることにより、通信速度を速くすることが可能になる。 変調方式としては、マルチキャリアと変わらないため、図7及び図11に示したトレーニングがそのまま適用できる。 また、S/N評価も図10に示す通りである。
    【0049】
    〔搬送波周波数の変更方式〕
    次に、S/N評価結果に基づいて搬送波(キャリア)周波数を変更する方式を説明する。 図7及び図11ではデータ割り付け量を変更することを示したが、この代わりに、データ割り付け量を変更せずに搬送波の周波数をS/Nが同等以上の周波数帯に変更(シフトともいう)することも可能である。 この場合、図2に示したデータ割り付け量情報55a,55bの代わりに搬送波周波数変更情報がアクセスコントローラ55から変調器57、復調器54に出力される。 なお、あらかじめS/Nの測定を実施しておき、どの周波数帯に変更するかを決めておく。 この方式では、単一キャリアの場合、搬送波が1本であるため、この変更処理は容易である。 ただし、通信の使用帯域は、周波数変更が可能なように十分広い帯域である必要がある。
    【0050】
    〔スペクトル拡散通信方式〕
    通信装置5a,5bとして、スペクトル拡散通信方式を適用した実施形態について、通信装置5aを代表としてその構成を図12に示す。 図3と共通する部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。 図3と異なる点は、変調器57及び復調器54に係わる部分であり、その他は同一である。 OFDMを含めたマルチキャリア方式は、各搬送波ごとにビット割り付け変更を行ったが、スペクトル拡散通信方式はこのような処理はなく、その代わりにベースバンドの帯域をより広い帯域に拡散して通信し、復調時に帯域をベースバンドの帯域に圧縮して、データを復元する方式である。 このスペクトル拡散通信方式は、通信路上にランダムなノイズが重畳される状況下での通信に対してS/Nを高くすることができ、安定した通信が可能であり、インバータ機器から特定周波数帯域でのノイズ(周波数選択性ノイズという)のレベルが高くなるような場合の通信に好適である。 図3との相違点を説明する。 変調器57は、スペクトル拡散通信方式の場合、1次変調器とも呼ばれ、通常の伝送で用いられる振幅変調、周波数変調、位相変調(BPSK、QPSK)、位相と振幅を同時に変調する16QAM、64QAM、256QAMなどの各種変調方式が採用される。 変調器57の出力信号(1次変調された信号)は、スペクトル拡散変調器63に入力される。 スペクトル拡散変調器63は、1次変調された信号に対して拡散符号発生器64から出力されるPN(Pseudorandom Noise)系列と呼ばれる特殊な波形を乗積されてD/A58に出力する。 この処理をアナログ処理回路で実現することも可能であり、その場合にはD/A58が不要である。 これらの処理により、拡散変調された信号が通信装置5aから通信装置5bに送信されることになる。 拡散変調後の帯域幅は、1次変調の帯域幅とPN系列のそれの和になる。 通常は帯域拡散の倍率が大きいので、実質的にPN系列の帯域幅が拡散信号の帯域幅になる。 従って、使用帯域は1次変調の帯域幅(ベースバンドの帯域)より広い帯域にする必要があり、拡散率は5倍以上とするが、列車の場合、ノイズレベルが比較的高いため、少なくとも10倍以上が望ましい。 車両内への情報提供(映像情報含む)、車両からの監視画像の伝送のために、通信装置5aから通信装置5bへの通信、通信装置5bから通信装置5aへの通信に対し、それぞれ最低でも1Mbpsの通信速度が要求されるため、ベースバンドの帯域は少なくとも1MHz以上が必要であり、その10倍の帯域である10MHz以上の帯域が使用帯域として必要である。 しかも、図2に示したように、その測定結果から判断して1MHz以上、望ましくは5MHz以上を使用することが有効である。 つまり、車両の場合、少なくとも5MHz以上の帯域を使用帯域として使用することが望ましい。
    【0051】
    一方、復調については、次のように処理される。 A/D52の出力信号はタイミング/同期回路61及びスペクトル拡散逆拡散器62に出力される。 スペクトル拡散逆拡散器62では送信側で用いたものとまったく同一のPN系列を再度乗積して、1次変調の信号を復元する。 この処理を帯域圧縮とも呼ぶ。 この帯域圧縮により、S/NのうちSが向上し、車両走行時のインバータノイズのような周波数選択性ノイズのNが抑制される。 このため、復調器54での復調処理におけるS/Nが十分高く、通信路上でのノイズの影響を受けることなく、元の信号を復元することが可能になる。 なお、タイミング/同期回路61は、スペクトル拡散逆拡散器62にてPN系列を再度乗積するための同期をとるために用いられる。 また、タイミング/同期回路61及びスペクトル拡散逆拡散器62がアナログ回路で実現される場合にはA/D52は不要になる。
    【0052】
    以上のように、スペクトル拡散通信方式を用いて通信装置5a,5b間で通信することにより、マルチキャリア通信方式の時に必要であったビット割り付け量を決定するためのトレーニングを実施する必要がない。 このため情報通信においてトレーニングのために一時的に伝送中断が発生することがないという特徴を持たせることが可能になる。
    【0053】
    〔OFDM通信とスペクトル拡散通信を併用した通信方式〕
    図13は、OFDM通信とスペクトル拡散通信とを併用した通信方式を示す構成図である。 図3及び図12と異なる点は、変調器57'、復調器54'、スペクトル拡散変調器63、スペクトル拡散逆拡散器62に係わる部分であり、その他は同一である。 図3では、変調器57、復調器54は、それぞれ搬送波の直交性処理のために、逆フーリエ変換(IFFT)、フーリエ変換(FFT)を行うが、図13では、逆フーリエ変換(IFFT)、フーリエ変換(FFT)の処理を変調器57'、復調器54'内で実施するのではなく、スペクトル拡散逆拡散器62とA/D52の間、スペクトル拡散変調器63とD/A58の間に独立して設置するようにしている。 つまり、送信時には、変調器57'によるデータI,Qの値がスペクトル拡散変調器63により、PN系列の拡散符号により乗積(拡散)する。 この処理をスペクトル拡散ともいう。 この拡散された信号に対して逆フーリエ変換器67にて逆フーリエ変換(IFFT)を施すことにより、各々の搬送波(サブキャリア)の直交関係が保たれるようになる。 この直交された信号はD/A58に出力される。 この結果、限られた周波数帯域で大量のデータを送信することができるようになる。 一方、受信時には、A/D52の出力信号がタイミング/同期回路61、フーリエ変換器66に取り込まれる。 フーリエ変換器66では、入力信号をフーリエ変換(FFT)することにより、1次変調の信号でありかつ拡散された信号を出力する。 この出力信号はスペクトル拡散逆拡散器62に出力され、スペクトル拡散逆拡散器62では送信側で用いたものとまったく同一のPN系列を再度乗積して、1次変調の信号を復元する。 この処理をスペクトル逆拡散ともいう。 復元圧縮により、S/NのうちSが向上し、車両走行時のインバータノイズのような周波数選択性ノイズのNが抑制される。 このため、復調器54'での復調処理でのS/Nが十分高く、通信路上でのノイズの影響を受けることなく、元の信号を復元することが可能になる。 なお、タイミング/同期回路61は、フーリエ変換器66のFFT処理及びスペクトル拡散逆拡散器62にてPN系列を再度乗積するための同期をとるために用いられる。 前記実施形態では、逆フーリエ変換器67とフーリエ変換器66を、それぞれスペクトル拡散変調器63とD/A58の間、A/D52とスペクトル拡散逆拡散器62の間に設置しているために、サブキャリアごとの直交性が維持できるが、逆フーリエ変換器67とフーリエ変換器66をそれぞれ変調器57'、復調器54'内に設けると、スペクトル拡散、スペクトル逆拡散した際に、直交性が維持できなくなり、正しくデータが送受信できなくなるという問題が生じる。 直交性が図られたサブキャリアは、搬送波のピークで他の搬送波がゼロになっているが、この状態の信号を拡散すると、この関係を保証できなくなる。 図13では、このようなことが起こらないように、送信時にはスペクトル拡散した後に逆フーリエ変換をし、受信時にはフーリエ変換した後にスペクトル逆拡散をするように工夫しており、ノイズが多かったり、信号減衰が多い車両外施設・車両間通信において、S/Nを向上させて大量のデータを通信できるようにしている。
    【0054】
    〔複数搬送波のスペクトル拡散、同一情報が割り付けられている搬送波の周波数軸上への配置〕
    図15は、搬送波に情報を分割して割り付け、同一情報が割り付いている個々の搬送波を互いに干渉することなく周波数軸上に割り当てた図である。 図14は、本発明に係る通信装置5aにおける、図15又は図16に示す割り付けを行うための構成を示す図である。
    図14において、まず、変調器57aの処理について説明する。 アクセスコントローラ55から送られたデータは、コンスタレーションマッパ57bにより図9に示した信号点配置にしたがってI値Q値に変換され、この変換により得られたI値Q値の情報が帯域割付装置57cに出力される。 帯域割付装置57cでは、アクセスコントローラ55から送られるデータマッピング情報を基にコンスタレーションマッパ57bから出力された情報をコピーしてキャリア割付装置57dに出力する。 データマッピング情報は、あらかじめ、どの搬送波(サブキャリア)にどのデータを割り付ける(マッピング)かを示す情報であり、これに従って図15あるいは図16のデータマッピングが行われる。 キャリア割付装置57dでは、帯域割付装置57cから出力されてきた複数の情報それぞれに搬送波を乗算し、D/A58に出力する。
    【0055】
    次に、復調器54aの処理について説明する。 A/D52でサンプリングされたアナログ信号は、検波回路54dにおいて各搬送波(サブキャリア)ごとに検波が行われる。 検波回路54dの出力信号は、図15あるいは図16に示すように同一データを割り付けた各搬送波(サブキャリア)から得られたI値Q値であるため、例えば、データaのように複数の同一データを含んだI値Q値(ダイバーシティ枝と呼ぶ)から構成されている。 検波回路54dの出力は帯域選択/合成装置54cに出力され、帯域選択/合成装置54cにてアクセスコントローラ55から受け取ったデータマッピング情報を基にしてダイバーシティ枝の選択又は合成を行う。 この結果はコンスタレーションデマッパ54bに出力される。 帯域選択/合成装置54cとしては、あらかじめ定めている選択合成方式、等利得合成方式、最大比合成方式のいずれかの方式で実現する。 選択合成方式は、各ダイバーシティ枝の受信レベルを比較して、最も受信レベルが高い値をコンスタレーションデマッパに出力する。 等利得合成方式は、各ダイバーシティ枝の位相を同相になるよう調整してから各ダイバーシティ枝を加算もしくは平均した値をコンスタレーションデマッパ54bに出力する。 最大比合成方式は、各ダイバーシティ枝の位相が同相になるように調整してから、各ダイバーシティ枝に対して通信路環境(フェージングやSN)に応じた重み係数を付けて加算を行った値をコンスタレーションデマッパ54bに出力する。 コンスタレーションデマッパ54bは、帯域選択/合成装置54cにより同一データを選択又は合成した結果得られたI値Q値に応じて、図10に示したように信号点を同定しデータを取り出し、この結果をアクセスコントローラ55に出力する。
    【0056】
    図15によれば、例えば、情報(データa)は、搬送波82,83,84に割り付いており、この時、搬送波82,83,84は少なくともオーバラップしない程度に近接して周波数軸上に配置される。 情報(データb)及び情報(データn)は、それぞれ搬送波85〜87、搬送波88〜90に割り当てられる。
    【0057】
    従って、この方式は、搬送波それぞれに対して直接拡散する場合と比較して1つの搬送波の帯域幅が相対的に狭くなるため、電力線特有の伝送路特性である周波数選択性フェージングをフラットフェージングにする効果がより大きくなり、これにより通信の信頼性がより向上する。 また、電力線ではランダムに減衰が起こる場合があり、この時の減衰の幅は狭いため、同一情報を割り付けた搬送波のうち、減衰により1つの搬送波が情報を失っても、他の搬送波に割り付けられた同一情報は健全であるため、それら健全な情報を用いて、送信された情報を復元でき、通信の安定性が向上する。
    【0058】
    〔複数搬送波のスペクトル拡散、同一情報が割り付けられている搬送波の周波数軸上への離隔した配置〕
    図16は、複数搬送波に情報を分割して割り付け、同一情報が割り付いている個々の搬送波を離隔して周波数軸上に割り当てた図である。 図16において、例えば、情報(データa)は、搬送波91,94,97に割り付けられている。 そして、同一の情報を割り付けた複数搬送波91,94,97は、搬送波同士が互いに干渉を起こさず、且つ、数十kHzから数百kHz以上の間隔をあけて任意の周波数に割り当てられている。 従って、前記した図15との違いは、同一情報が割り付けられている搬送波91,94,97が、数十kHzから数百kHz以上の間隔をあけて割り付けられていることである。
    【0059】
    図16に示す割り付けでは、図15によって得られる効果のほかに、電力線特有の伝送路特性における特性改善を行うことが可能である。 例えば、電力線の減衰周波数特性としては深い減衰があると、その両側数十kHzから数百kHzに渡っては、深い減衰が継続している場合がある。 実験の結果、通信信号の急激な減衰量の落ち込み時の周波数幅は約100kHzである。 従って、図15のように同一情報が割り付けられている搬送波が近接して配置された場合(例えば、図15で搬送波82,83,84は同一情報)、同一情報が割り付けられた全ての搬送波が歪んでしまうために、結果としてビット誤りを引き起こす可能性が高くなる。 これに対し、図16は、同一情報が割り付けられている搬送波同士が離隔した配置構成となるため、同一情報が割り付けられた全ての搬送波が同時に歪を受けることを回避することができる。 すなわち、隣り合った同一情報を割り付けた搬送波の周波数間隔を100kHz以上離隔した状態で通信することで、歪を受けることを回避することができる。 この結果、送信された情報を復元でき、通信の安定性を向上させることができる。
    【0060】
    1MHzから30MHzの帯域を使うことでより安定した通信ができることはもちろんであるが、ノイズレベルの高い1MHz以下の周波数帯においても、十分なSN比が確保できる帯域が局所的に存在し、前記のように狭い帯域幅の搬送波であれば1MHz以下の帯域を利用しても通信が可能である。 この結果、さらに多くの搬送波を利用して通信することができ、より一層の高速通信を行うことができる。
    【0061】
    〔OFDM出力信号のサンプリングによるスペクトル拡散〕
    図17は、OFDM出力信号のサンプリングによるスペクトル拡散方式の構成を示す図である。 図17に示す通信装置5aには、送信側に直並列変換器103、逆フーリエ変換器(IFFT)67、並直列変換器104、D/A58、ホールド制御装置105、GI(Guard Interval)付加器106を備えている。 また、受信側に受信アンプ100、サンプリング同期回路101、A/D52、GI除去器102、直並列変換器103、フーリエ変換器(FFT)66、並直列変換器104を備えている。 送信時、直並列変換器103に送られたデータは、直並列変換器103においてデータを並列にし、その並列データに対して逆フーリエ変換器67によりOFDM変調処理を行う。 そして、並直列変換器104によりシリアルデータに変換された後、D/A58によりアナログ信号に変換される。
    【0062】
    図18は、図17の通信装置5aにおけるホールド制御装置105の出力波形を示した図である。 ホールド制御装置105は、D/A出力波形に対し、図18に示すようにパルス状又はインパルス状に近い信号(ホールド時間制御回路出力波形107)に変換する。 ホールド制御装置105は、ホールド時間を制御する手段を持った回路であり、例えば、半導体スイッチング素子などで代用することが可能である(図示せず)。
    【0063】
    図18に示すホールド時間制御回路出力波形(OFDM信号波形)107の周波数スペクトルの概念図は図19のようになる。 ホールド時間を制御して、時間軸信号をパルス又はインパルス状に近い波形にすることで、スペクトル108〜112が周波数軸上に複数現れる。 一般にOFDMにスペクトル拡散や帯域割り付けを適用する場合には、拡散後の帯域幅に比例して、一連の変復調処理を行うDSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central processing Unit)の処理能力の高速性が要求される。
    【0064】
    一方、本発明によれば、OFDM変調は、ベースバンド処理を行うことができる演算量があればよく、拡散又は帯域割り付けは、ホールド制御装置105により実行されるため、DSPやCPUの処理は少なくてすむ。 通信装置5aを安価にできる効果がある。
    【0065】
    再度、図17において、受信処理(OFDM復調)について説明する。 まず、通信装置5aは他の通信装置により送信された送信信号を受信して、BPフィルタ50により不要な帯域外の信号を除去した後、受信アンプ100によりA/D52に適切な値が入力するように受信信号のゲイン調整を行う。 同時にサンプリング同期回路101により有値の部分(送信側におけるD/A58の出力状態時間に相当する部分)とA/D52のサンプリングクロックが合致するようにサンプリングクロックの同期を行う。 この同期情報を基にA/D52において受信アンプ100通過後の信号の有値部分のみサンプリングを行う。 サンプリング同期回路101により、有値部分にサンプリングクロックの同期を取るので、A/D52はベースバンド部分のみを処理することができる能力を持った動作周波数のものでよい。
    【0066】
    図17、図18及び図19用いて説明した一連の処理では、OFDMに複数の同一スペクトル108〜112を発生させて(図19参照)送信することで、受信側での周波数ダイバーシティ効果により、通信の信頼性が向上している。 また、同時に、OFDMをスペクトル拡散することで生じるDSPやCPUの演算量を低減している。 なお、受信時は、ヌル値部分に乗ったノイズはサンプリングされないため、逆拡散効果、すなわち変調時のSN比と比較して復調時にSN比が改善する効果が得られる。
    【0067】
    〔車両内の通信装置の接続構成〕
    図20は、代表的な交流電車を対象として車両内の通信装置の接続構成例を示す図である。 図1に示した保護回路17の構成要素を含めて、主に電力供給系統(主回路と一般的にいう)と通信装置5bの接続関係を示している。 パンタグラフ15は電力線31を介し、真空遮断機17a、保護設置装置17dに接続され、真空遮断機17aはラインスイッチ17b、避雷器17cに接続されている。 さらにラインスイッチ17bはトランス18に接続されている。 トランス18は電力線32を介して車輪16aに接続されると共に、接地抵抗器34、電力線32'を介して車両(車体)10に接続される。 ラインスイッチ17b、避雷器17cも車輪16aに接続される。 接地抵抗器34は迷走電流が流れないようにすることを主目的として設置されるが、車両によっては接地抵抗器34がなく、トランス18が直接車両(車体)10、車輪16aに接続される場合もある。 なお、接地抵抗器34は、例えば、0.5オーム程度の低抵抗である。 真空遮断機17a、ラインスイッチ17b、避雷器17c及び保護設置装置17dが保護回路17(図1参照)である。 通信装置5bは、フューズ21を介して、パンタグラフ15に接続されている電力線31と、接地抵抗器34に接続されている電力線32'あるいは車両(車体)10に接続されている。 従って、真空遮断機17a、ラインスイッチ17bが開状態となっても通信が可能となるように構成されている。 また、フューズ21を取り付けることにより、通信装置5bが短絡故障しても、フューズ21が断状態となり、主回路に影響を及ぼすことがないようにしている。 トランス18の二次側にコンバータ/インバータ(C/I)19が接続されるが、接地抵抗器34はコンバータ/インバータ19のスイッチングノイズが車両10から外部に出ないようにする効果もある。 そこで、この機能を利用して、通信装置5bの片方を接地抵抗器34と車輪16aとの間に接続することにより、前記スイッチングノイズによる通信装置5bへの影響を一層低減させることができる。 図20では、通信装置5bの片側を車両(車体)10に接続した構成を示しているが、前記したように接地抵抗器34は、例えば、0.5オーム程度の低抵抗であるため、通信装置5bの片側を車両(車体)10ではなく、車輪16a側の電力線32に接続してもよい。 さらに、トランス18は巻き線が多数本あるが、これらの巻き線間に静電容量が存在し、高周波、特にメガヘルツ(MHz)以上の信号を吸収してしまう。 従って、通信装置5bの両端は等価回路的にはトランス18の両端に接続されるため、通信装置5bの通信信号がこのトランス18で吸収されるという問題が生じる。 電線はインダクタンスを持っており、電線長が数mから10m程度であれば、周波数が高くなるとインピーダンスが高くなり、通信帯域の1MHzから30MHzまでの範囲では、数オームから十数オームを得ることが可能になる。 そこで、通信装置5bとトランス18との間の電線長を長くして、通信装置5bの通信信号がトランス18の前記静電容量で吸収されないようにする。 これについては、図22でさらに説明する。 なお、コンバータ/インバータ(C/I)19は、コンバータ19a、コンデンサ19c及びインバータ19bからなっている。 また、車両によっては保護回路の構成が多少異なる場合があるが、基本的な構成は同様であり、本発明の接続構成は同様に適用できる。
    【0068】
    図21は、代表的な直流電車を対象として車両内の通信装置の接続構成例を示す図である。 通信装置5bの接続構成は、基本的には図20と同様であり、同様な効果を得ている。 避雷器17cは電力線31と32(あるいは車体10)間に接続される。 インバータ装置19'は、インバータ19b、リアクトル19d及びコンデンサ19cからなるフィルタで構成されている。 また、車両によっては保護回路の構成が多少異なる場合があるが、基本的な構成は同様であり、本発明の接続構成は同様に適用できる。
    【0069】
    直流電車の場合には、変電所は直流電圧を出力するために、変電所にコンバータを備えており、コンバータからスパイクノイズ(スイッチングノイズとも言う)が発生し、これが直流電圧に重畳される。 従って、変電所に通信装置を設置するのではなく、駅、駅舎、駅ビル、駅構内に通信装置を設置することにより、列車に設置した通信装置との通信において、上記ノイズによる影響を低くできるという効果がある。 さらにこのノイズの周波数はコンバータ構造に依存するが、数百KHzまでの低周波ノイズであるため、通信の周波数をメガヘルツ(MHz)以上としているために、このノイズの影響を受けにくいという効果もある。 このことは、後記するモノレールについても同様の効果をもたらすものである。
    【0070】
    図22は、交流電車(直流電車も同様)を対象に通信装置の設置構成を示す例である。 真空遮断機17a、保護接地装置17dは車両の屋根に設置され、ラインスイッチ17b、トランス18、コンバータ/インバータ19(19')は床下に接続される。 コンバータ/インバータ19(19')は隣接した別車両の床下に設置されることもある。 トランス18は、直流電車の場合には設置されない。 通信装置5bは、その構成要素である結合器65のコンデンサを車両の屋根に設置し、結合器65のトランス、その他の信号処理回路部分5b'は車体の内側に設置する。 これは、高圧が印加されているコンデンサは安全性を考慮して、車外に設置し、信号処理回路部分5b'は外部機器(表示装置、サーバなど)との接続や保守性を考慮したことによるものである。 通信装置5bは、フューズ21を介して、パンタグラフ15側の電力線31と車輪16b(16aでも良い)側の電力線32に接続される。 なお、電力線32は車両10、車輪16b(16a)に接続されている。 車両長は、一般車両が20mで、新幹線が25mであるため、通信装置5bから車輪16b側の電力線32までの電線長は数mから数十mになる。 従って、通信装置5bの通信信号がトランス18の静電容量で吸収されないようにすることが可能になる。 また、安全性強化のために、結合器65そのものを車両10の屋根に設置し、その他の信号処理回路部分5b'を車体の内側に設置することもある。
    【0071】
    また、車両10が直流電圧で駆動される場合には、車両、駅、駅ビル、車両検査場などいずれにおいても、レールに接続される電圧はゼロボルトであるため、レールに接続される結合器65のコンデンサを取り除き、直接トランスの1次側をレールに接続するように配線することにより、トランスの直流抵抗はほぼゼロであるために、トランスの1次側と2次側が接続してしまうような故障が発生しても、トランスの2次側に高圧電圧が印加されることがなく、ほぼゼロボルトになるため、通信装置5bを故障させることがないという効果がある。 このことは、後記するモノレールについても同様であり、電車線の負側に接続される結合器65のコンデンサを取り除き、直接トランスの1次側をレールに接続するように配線することにより同様な効果を得ることができる。
    【0072】
    なお、通信装置5bの信号処理部5b'は、車両10の内側壁と外側壁の二重構造でできている空間を利用して設置する。 すなわち、車両10の天井と屋根(車両外部)との間の空間、さらにはドアの戸袋などの空間に設置する。 これらの個所は、いずれも二重構造であり、この空間に設置することにより新たなスペースを必要とすることがなく、また車内の美観を損なうこともない。
    【0073】
    図23は、結合器の他の構成例を示した図であり、変流器70、71を利用して、通信装置5bと電力線31あるいは32とを磁気的に接続するようにしている。 符号5b”は通信装置5bにおいて結合器65、BPフィルタ50,60を除いた部分を示す。変流器70、71を利用して、間接的に接続しているために、高電圧が通信装置5bに印加されるところがないため、大型のコンデンサが不要になる。さらに、通信装置5bが短絡しても、電力線31あるいは32側、つまり主回路側に影響を及ぼすことがないため、フューズ21が不要になる。特にフューズ21は高圧タイプにする必要があり、大型で取り付けを含めコストアップになるという問題があるが、これを解消できる。変流器70、71はクランプ型とすることにより、電力線31あるいは32を途中で切断することなしに容易に取り付けることができる。また、変流器70、71の磁路途中に空隙をもたらすことにより、商用周波数の交流電流や直流電流による飽和問題を解決できる。
    【0074】
    これまでの説明では、トロリ線9とレール12とにより車両に電力を供給している例を示したが、トロリ線9の代わりに、レール12に併設して敷設されたサードレールとレール12とにより車両10に電力を供給する場合もある(図示せず)。 パンタグラフ10(集電装置ともいう)はこのサードレールをしゅう動して電力供給を受ける。 この場合、パンタグラフ10を含め、サードレール、レール12が通信路となる。 その他については、これまで説明したことと同一である。 また、このことは以下の実施形態にも適用できることである。
    【0075】
    〔第二の実施形態〕
    次に、通信装置間で一度プロトコール変換された信号で相互にデータ授受を行い、き電線又はトロリ線又はサードレールと、レールとを通信線(通信路)として、車両側に設置する通信装置と車両外施設側に設置する通信装置間で通信する第二の実施形態について、図24を用いて説明する。 図1と共通する部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。 前記したように、1台の変電所から供給する電力の供給範囲には制限があり、ほぼ数十Kmの区間である。 交流電圧の供給においては、各変電所からの電力を送電するき電線8やトロリ線9は区間ごとに、き電線間の空間30a、絶縁器30bで絶縁されている。 このため、電車のパンタグラフ15が、例えば、変電所14に接続されているトロリ線9をしゅう動している際には、通信装置5bは通信装置5aと通信ができなくなる。 この問題を解決するために、通信装置33a、33bで、き電線間の空間30aを接続し、車両と駅間に、き電線間の空間30a、絶縁器30bが存在しても、車両と駅間の通信を可能にしている。 特に、き電線間の空間30a、絶縁器30bと駅間の距離が数Kmから数十Kmにもなるため、通信信号の減衰が極めて大きくなるため、通信エラーが多発する可能性が高い。 この問題を解決するために、図24に示すように、通信装置33aと33b間で一度プロトコール変換された信号で相互にデータ授受を行い、再び、き電線8、トロリ線9を利用して通信するようにしている。 これにより、一度、通信信号がディジタル信号に変換され、S/Nが向上した後に、再び、き電線8、トロリ線9を利用して通信を行うことができ、前記問題を解決できる。
    【0076】
    〔第三の実施形態〕
    次に、モノレールのように電車線が正負2本ある場合に、これらを通信線(通信路)として、車両側に設置する通信装置と車両外施設側に設置する通信装置間で通信する第三の実施形態について、図25を用いて説明する。 モノレールの場合、コンクリート製のレール35に2本の電車線9a、9bが敷設されており、この2本の電車線9a,9bに変電所13(直流電圧出力)から電力が供給されている。 車両は2台のパンタグラフ(集電装置ともいう)15a、15bを介して電車線9a、9bから車両10'に電力を取り込んでいる。 このパンタグラフ15a、15bに通信装置5bが接続されており、パンタグラフ15a、15b、電車線9a、9bを介して、駅ビルあるいは駅構内1のいずれかの場所(例えば、発券管理室、駅員室など)又は車両検査場(図示せず)に設置している通信装置5aと通信する。 その他については、図1と同一である。 この場合には、2本の電車線9a,9bがほぼ平行して敷設されているために、2本の電車線9a,9bの平衡度が比較的高いため、通信信号による外部への漏洩電界が抑制されるという効果もある。
    【0077】
    以上説明した本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。 例えば、電磁ノイズを発生するインバータが取り付けられた乗り物に限らず、外部からノイズが入ってくる環境、例えばインバータ機器の多い工場や地域などのノイズ源の近くを走行する乗り物などにも適用できる。
    【0078】
    【発明の効果】
    本発明によれば、車両外施設・車両間通信に関し、システム構築のコストを低減できて、電車走行中にも、駅構内あるいは駅ビル内や車両検査場などに設置した通信装置と安定した通信をおこなうことが可能となる。 列車走行時にノイズが発生してもこれに大きく影響を受けることなく、き電線又はトロリ線(電車線)又はサードレールと、レールとを介して、車両外施設と車両間で監視画像、保守データ、広告やイベント情報、座席予約情報などの通信が可能になる。 また、地下鉄に本発明を適用すると、き電線、トロリ線、サードレール、レール、パンタグラフが地下にあるため、放送波がこれらに重畳されることが極めて低くなり、車両に設置した通信装置と、駅、駅構内あるいは駅ビル(駅舎含む)内や車両検査場などに設置した通信装置間の通信において、伝送誤りを低くでき、高い伝送速度を得ることが可能になる。
    【図面の簡単な説明】
    【図1】本発明の第一の実施形態を説明する図である。
    【図2】通信特性を説明する図である。
    【図3】図1の通信装置の構成図である。
    【図4】一般のマルチキャリアのスペクトルを説明する図である。
    【図5】OFDMのスペクトルを説明する図である。
    【図6】ガウス雑音下での通信誤り特性を説明する図である。
    【図7】一定時間ごとのS/N評価のための処理フロー図である。
    【図8】伝送フォーマットを説明する図である。
    【図9】QPSKの信号点配置を説明する図である。
    【図10】QPSKのS/N評価を説明する図である。
    【図11】イベント駆動によるS/N評価のための処理フロー図である。
    【図12】スペクトル拡散通信方式を適用した通信装置の構成図である。
    【図13】OFDM通信とスペクトル拡散通信を併用した通信装置の構成図である。
    【図14】帯域割り付けを行う通信装置の構成図である。
    【図15】複数搬送波のスペクトル拡散において、同一情報が割り付けられている搬送波の周波数軸上への配置を説明する図である。
    【図16】複数搬送波のスペクトル拡散において、同一情報が割り付けられている搬送波の周波数軸上への離隔した配置を説明する図である。
    【図17】OFDM出力信号のサンプリングによるスペクトル拡散方式を適用した通信装置の構成図である。
    【図18】ホールド制御装置の出力波形を示す図である。
    【図19】ホールド制御装置の出力波形の周波数スペクトルの概念図である。
    【図20】交流電車への通信装置の接続構成例を示す図である。
    【図21】直流電車への通信装置の接続構成例を示す図である。
    【図22】電車への通信装置の設置例を示す図である。
    【図23】結合器の他の構成例を示す図である。
    【図24】本発明の第二の実施形態を説明する図である。
    【図25】本発明の第三の実施形態を説明する図である。
    【符号の説明】
    1・・・駅ビル/駅構内5a、5b・・・通信装置8・・・き電線(ちょう架線)
    9、9a、9b・・・トロリ線(電車線)
    10、10'、11・・・車両12・・・レール13、14・・・変電所15、15a、15b・・・パンタグラフ19・・・コンバータ/インバータ

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