Method and a communication system for controlling the supply of the packet

申请号 JP2008520239 申请日 2006-05-26 公开(公告)号 JP5048664B2 公开(公告)日 2012-10-17
申请人 ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション; 发明人 チャン、ウェンユ; バウアー、クラウス;
摘要
权利要求
  • 通信システムにおいてパケットの供給を 制御する方法であって、 前記通信システムは、
    パケットの組の形にアレンジされた情報を運ぶ源信号を供給する第1のデータ源と、
    前記源信号を受信し、バッファー・サイズの大きさを持つバッファーに前記パケットの組の中の少なくともいくつかのパケットに対応する情報を格納し、前記バッファーに格納されていた少なくともいくつかのパケットの情報を 有するパケットを含む出力信号を送信するパケット処理装置であって 前記パケットの組の中の少なくともいくつかのパケットに対応する情報が、前記バッファーが一杯であることを原因とする損失のために前記出力信号から削除されている、パケット処理装置と、
    前記出力信号のパケットの少なくともいくつかのパケットを受信するレシーバーと を含 み、当該方法は、
    (a)前記バッファー・サイズと、一定時間間隔の間に、前記パケット処理装置によって任意の競合データ源からの競合パケットが受信される干渉確率と、前記バッファーが空でない時に 前記一定時間間隔の間に前記パケット処理装置がパケットの送信 成功する送信確率とを表すパラメーターを運ぶ1または複数の信号を受信するステップと、
    (b)前記パラメーターから損失確率の1または複数の量を導くステップであって、各量はデータ・パケット中の情報が損失する確率を表し 損失確率の各量は前記バッファーが一杯であることを原因とする損失を計算に入れるプロセスから導かれ
    (1)前記プロセスは 、ベルヌーイ過程の確率分布の確率過程に従って前記原信号のパケットが前記パケット処理装置に到着するモデルの解決法を表現し、前記バッファー・サイズとは独立の計算複雑性をもち、0から1の間の値をとる 第1の到着確率 前記送信確率と前記干渉確率 の全ての値に対して、前記損失確率は0から1の間の値をとるか、または、
    (2)前記プロセスは、前記源信号中のパケットが決定的過程に従って前記パケット処理装置に到着するモデルの解決法を表すか のいずれかである、ステップと、
    (c)前記パケット処理装置の前記バッファーが一杯であるためにデータ・パケット中の情報が損失する可能性を引き下げるために前記第1のデータ源の動作を順応させるステップであって
    前記パケットの組が、第1数のデータ・パケットと第2数のエラー訂正パケット を含み、前記レシーバーが前記受信したパケットにエラー訂正処理を適用して、破 損あるいは損失した情報をリカバリーし、前記パラメーターは、前記第1および前記第2数、 ならびに前記第1のデータ源からのパケットが 前記一定時間間隔内に前記パケット処理装置によって受信される 第2の到着確率をも表し、データ・パケット中の情報が失われエラー訂正処理によってリカバリーされない確率を表す損失確率の量が、前記パラメーターから導かれ、前記損失確率の量に対応して前記第1数または前記第2数を変更するように前記第1のデータ源 動作 するか、
    または、
    複数の到着確率のそれぞれに対応する損失確率の各量は前記パラメーターから導かれ 各到着確率は、前記第1のデータ源からのパケットが時間間隔内に前記パケット処理装置によって受信される確率を表し、複数の損失確率 中で最小の損失確率を導く前記到着確率を選択し、前記パケット処理装置が選択された到着確率をより厳密に反映するよう パケットを受信するよう前記第1のデータ源の動作を変更することによって、前記第1のデータ源の動作が順応させられるか、
    のいずれかであるステップとを含む方法。
  • 前記プロセスが、前記源信号中のパケットが決定的過程に従って前記 パケット処理装置に到着し、一定頻度でパケットが到着するモデルの解 決法を表し、前記到着確率が前記一定頻度に比例する、請求項1に記載の方法。
  • 前記到着確率が、決定 過程に従って前記 パケット処理装置に到着する前記源信号中のパケットの第1の確率分布に合致し、
    前記干渉確率が、確率的過程に従って前記 パケット処理装置に到着する競合パケットの第2の確率分布に一致する、請求項1に記載の方法。
  • 前記到着確率が、ベルヌーイ過程に従って前記 パケット処理装置に到着する前記源信号中のパケットの第1の確率分布に合致し、
    前記プロセスは、近似することなく損失確率の量を導き、前記第2数と第3数の積に比例する計算複雑性をもち 該第3数は前記第1数と前記第2数の和に等しい、請求項1に記載の方法。
  • 前記プロセスが、定常状態確率が閾値より小さいバッファー使用量の状態を除外することによって、前記損失確率の量 を近的に導く、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記プロセスが、第4数の三乗と前記第1数と第5数の積に比例する計算複雑性をもち 前記第4数は前記閾値を越える定常状態確率を持つバッファー使用量の状態の数を表し、前記第5数は前記到着確率に反比例する、請求項5に記載の方法。
  • 第2のプロセスを、前記バッファー・サイズと、前記第1及び第2の数と、前記到着確率と、前記 送信確率と、初期損失確率とを表す情報とに適用することによって、前記干渉確率を導く、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  • 定常状態確率が閾値より小さいバッファー使用量の状態を除外することによって 前記干渉確率の量を前記第2のプロセスが 近似的に導く、請求項7に記載の方法。
  • パケットの組の形にアレンジされた情報を運ぶ源信号を供給する第1のデータ源と、
    前記源信号を受信し、バッファー・サイズの大きさを持つバッファーに前記パケットの組の中の前記パケットの少なくともいくつかのパケットに対応する情報を格納し、前記バッファーに格納されていた少なくともいくつかのパケットの情報を 有するパケットを含む出力信号を送信するパケット処理装置であって、前記パケットの組の中の少なくともいくつかのパケットに対応する情報が、前記バッファーが一杯であることを原因とする損失のために前記出力信号から削除されている、パケット処理装置と、
    前記出力信号の前記パケットの少なくともいくつかのパケットを受信するレシーバーと を含む通信システムであって 1又は複数の前記第1のデータ源と、前記パケット処理装置と、前記レシーバーとが、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法を実行す る回路を 有する 、通信システム。
  • 前記パケットの組が第1数のデータ・パケットと第2数のエラー訂正パケットを含み、
    前記レシーバーがエラー訂正プロセスを前記受信したパケットに適用して、破損したあるいは失われた情報をリカバリーする、請求項9に記載の通信システム。
  • 通信システムにおいてパケットの提供をコントロールするための請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法を装置 実行 させる命令のプログラムを 記録する記録媒体であって 前記通信システムは、
    パケットの組の形でアレンジされた情報を運ぶ源信号を提供する第1のデータ源と、
    前記源信号を受信し、バッファー・サイズの大きさを持つバッファーに前記パケットの組の中の少なくともいくつかのパケットに対応する情報を格納し、前記バッファーに格納されていた少なくともいくつかのパケットの情報を 有するパケットを含む出力信号を送信するパケット処理装置であって、前記パケットの組の中のパケットの少なくともいくつかに対応する情報が前記バッファーが一杯であることを原因とするに損失のために前記出力信号から削除されている、パケット処理装置と、
    前記出力信号のパケットのうち少なくともいくつかを受信するレシーバーとを含む、 記録媒体。
  • 前記パケットの組は第1数のデータ・パケットと、第2数のエラー訂正パケットを含み、
    前記レシーバーは前記受信したパケットにエラー訂正処理を適用して破損したあるいは失われた情報をリカバリーする、請求項11に記載の 記録媒体。
  • 说明书全文

    本発明は、パケット単位に分割された情報のストリームを処理してレシーバーに送信する装置の動作を最適化することに関連し、特に、前記装置の運転を順応させて、レシーバーにおけるパケット損失を最小化することに向けられている。 本発明が有利に使用されるのは、マルチメディア情報を運ぶパケットのストリームを、ワイヤレス・ネットワークを通じて送信するシステムの場合である。

    ワイヤレス・ネットワーク上のリアルタイム・マルチメディア・トラフィックの配信は、第三世代携帯電話、WIFI、およびWIMAXワイヤレス・ネットワークでの重要なアプリケーションになると期待されている。 これらのアプリケーションでは、画像や音声を表すデジタル・データのようなマルチメディア情報を、パケット単位に配置する。 マルチメディア発信源はこれらのパケットのストリームをワイヤレス・アクセス・ポイントのような処理装置に送り、この処理装置は前記パケットをワイヤレス通信チャンネルを通じてエンド・ユーザーのレシーバーに送信する。 処理装置は、パケットを即時に送信できない場合、送信可能になるまで一時的にそのパケットをキュー又はバッファーに格納する。 例えば、無線通信チャンネルが他の処理装置によって使用されている場合には、処理装置はパケットを送信できないことがありうる。

    エンド・ユーザーが受信したマルチメディア情報の知覚品質は、パケット損失、パケット遅延、および遅延ジッターを含む多くの要因によってマイナスの影響を受けることがある。 パケット損失は、エンド・ユーザー・レシーバーによって受信されなかった消失パケット、および、受信されたもののパケットが運ぶ情報が破損していた破損パケットを含む。 これらのパケット損失が生じる原因として、(1)雑音のある通信チャンネル、(2)複数のトランスミッターによる同時送信、またはパケットの「コリジョン」、(3)送信前のパケットを一時的に格納する処理装置が使用するバッファーのオーバーフローを挙げることができる。 バッファー・オーバーフローは、処理装置がパケットを一時的にそのバッファーに格納する必要があるにもかかわらず、バッファーがすでに一杯であった場合に生じうる。 雑音のあるチャンネル及びコリジョンによるパケット損失をここではI型損失と呼び、バッファー・オーバーフローによるパケット損失をここではII型損失と呼ぶ。

    I型及びII型パケット損失による知覚効果を減少させる技術が、数多く提唱されてきた。 前方エラー訂正(FEC)と呼ばれる技術は、損失の頻度がそれほど高くなく長く続かない環境において、消失又は破損パケットによって運ばれる情報をリカバリーする機能をレシーバーに付与する。 FECが対処可能なエラーの発生する条件の長さと頻度は2のパラメーターnとkによってコントロールされる。 ここで、(nk)の「FECパケット」は、kのマルチメディア・パケットと結合して、nの「マルチメディア+FECパケット」のパケットの組を構成する。 仮にレシーバーがnのパケット中の少なくともkのパケットを破損することなく受信できれば、消失または破損パケットによるあらゆる損失をリカバリーすることができる。

    残念ながら、FECには代償がある。 (nk)のFECパケットを付加することによって、コリジョンによって生じる遅延の危険を上昇させ、各パケットの組を送信するために必要な時間帯域幅またはチャンネル帯域幅を上昇させる。 FECパラメーター(n,k)の値は、競合する要求の得失評価を最適化するように選ばれる。 比率ψ=n/kを高くすれば、エラー訂正ができるレベルを向上させるが、同時に、ψのファクターによって、遅延を増やし、必要なチャンネル帯域幅を増加させることになる。

    FECパラメーター(n,k)は、特定のパケット損失の割合に対する、保護、遅延、および、帯域幅の要求に合致するように決定される。 残念ながら、全ての要求を同時に満たすことは不可能であるだろうし、複数の要求の間での妥協が不可欠であるだろう。 さらに、チャンネル帯域幅の使用可能量によって比率ψに現実上の制限が加えられる。 比率をきわめて高くした場合、高い帯域幅が必要になって、他のデータ源からのパケットを受信できなくなるか、あるいは、通信チャンネルの使用可能な帯域幅をこえることになる。 FECパラメーターを最適に選択するためには、チャンネルの使用可能な帯域幅を考慮に入れると同時に、他のデータ源からのパケットのために必要な帯域幅も考慮にいれる必要がある。

    しかしながら、実際には、通信システムの状態は急激に変化しうる。 帯域幅の上昇を最小限に抑えつつ、希望の保護レベルを与えるFECパラメーターを最適に選択するためには、FECパラメーターの値(n,k)を順応的に設定する必要がある。 要求されていることは、低い計算複雑性を有する処理によって実装できる、FECパラメーターを順応させる方法である。 このことによって、安価であって通常のネットワーク機器に組み込むことができる処理能の少ない装置を用いて、リアル・タイムにFECシステムを順応させることができる。

    状態を定期的に計測でき、これらの測定結果を、FECパラメーターを順応させるシステムの一部に提供する機能があれば、本発明の順応型FECシステムはより効率的に実装することができる。 このような計測機能の存在は、本開示においてはすべて本質的なものではない。 原理的には、本発明において、特定の計測機能は不可欠ではない。 説明の便宜のため、以下の説明では、以下に説明する通信システム・モデルの入力パラメーターとして必要な全てのトラフィック頻度と損失を計測する機能を使用できると想定する。 本発明の実施態様では、FECパラメーター(n,k)を順応させてII型パケット損失の効果を最小化する他のパラメーターと同時に、これらの計測結果を使用することができる。

    発明を解決するための手段

    本発明の目的の1は、計算複雑性の小さい処理を用いて、パケット通信システムにおけるエラー訂正パラメーターを順応させ、パケット損失による影響を最小化する方法を提供することである。

    本発明のある実施態様では、通信システムにおけるパケットの提供をコントロールする。 前記通信システムは、
    第一数のデータ・パケットと第二数のエラー訂正パケットを含むパケットの組にアレンジされた情報を運ぶ源信号を提供する第一のデータ源と、
    源信号を受信し、バッファー・サイズの大きさを持つバッファーにパケットの組の中の少なくとも一部のパケットの情報を格納し、少なくとも一部分がバッファーに格納されていた情報のパケットを含む出力信号を送信し、ここで、パケットの組の少なくともいくつかのパケットの情報はバッファーが一杯だったことによる損失のために出力信号から除かれている、パケット処理装置と、
    出力信号の中の少なくともいくつかのパケットを受信し、受信したパケットにエラー訂正処理を適用して破損した、あるいは消失した情報をリカバリーするレシーバーとを含む。 前記コントロールの方法は、
    (a)バッファー・サイズと、第一数および第二数と、ある時間間隔において第一のデータ源からのパケットがパケット処理装置に受信される到着確率と、バッファーが空でない場合に前記時間間隔おいてパケット処理装置がパケットを正常に送信する送信確率と、前記時間間隔において他の競合するデータ源からの競合するパケットがパケット処理装置によって受信される干渉確率とを表すパラメーターを運ぶ、1または複数の信号を受信するステップと、
    (b)データ・パケット中の情報が失われエラー訂正処理によって修正されない損失確率の値を前記パラメーターから得るステップであって、前記損失確率の値はバッファーが一杯であることによる損失を考慮に入れる処理から得ることができ、ここで、(1)前記処理はバッファー・サイズとは独立の計算複雑性を持ち、0から1の間の値をとる到着確率、送信確率、干渉確率のいずれに対しても、損失確率は0から1の間の値をとるか、(2)前記処理は、源信号中のパケットが決定的過程に従ってパケット処理装置に到着するようなモデルの解決法であるかのいずれかのステップと、
    (c)損失確率の計測値に応じて第1数又は第2数を順応させるステップとによって達成される。

    本発明の他のもう一つの実施態様では、通信システムにおけるパケットの提供をコントロールする。 前記通信システムは、
    パケットの組にアレンジされた情報を運ぶ源信号を提供する第一のデータ源と、
    源信号を受信し、バッファー・サイズの大きさを持つバッファーにパケットの組の中の少なくとも一部のパケットの情報を格納し、少なくとも一部分がバッファーに格納されていた情報のパケットを含む出力信号を送信し、ここでパケットの組の少なくともいくつかのパケットの情報はバッファーが一杯であったことによる損失のために出力信号から除かれている、パケット処理装置と、
    出力信号の中の少なくともいくつかのパケットを受信するレシーバーとを含む。 前記コントロールの方法は、
    (a)バッファー・サイズと、同じ時間間隔にパケット処理装置が任意の競合データ源からの競合パケットを受信する干渉確率と、バッファーが空でない場合に前記時間間隔おいてパケット処理装置がパケットを正常に送信する送信確率とを表すパラメーターを運ぶ1または複数の信号を受信するステップと、
    (b)前記パラメーターから、複数の到着確率のそれぞれに対応する個々の損失確率を得るステップであって、個々の損失確率はデータ・パケット中の情報が失われる確率であって、バッファーが一杯であるために生じる損失を考慮に入れる処理から導かれる確率を表し、ここで、それぞれの到着確率は、第1のデータ源からのパケットが前記パケット処理装置にある時間間隔の間に受信される確率を表し、そして、ここで、(1)プロセスの計算複雑性はバッファー・サイズとは独立であり、損失確率は到着確率のいかなる値に対しても0から1の間の値をとり、送信確率と干渉確率は0から1の間の値をとるか、あるいは、(2)前記プロセスが、決定的過程に従って前記源信号中のパケットがパケット処理装置に到着するモデルの解決方法である場合のいずれかである、ステップと、
    (c)複数の損失確率の中で最小の損失確率を導く到着確率を導く到着確率を選択するステップと、
    前記複数の損失確率のなかの最小の損失確率が導く到着確率を選択するステップと、
    (d)第1のデータ源の動作を、パケット処理装置が前記の選択された到着確率をより厳密に反映する方法でパケットを受信するように順応させるステップとによって達成される。

    本発明の様々な特徴と好ましい実施態様は、以下の議論と付属の図面を参照することによってよりよく理解できる。 以下の議論と図面の内容は、単に例として説明されているのみであって、本発明の範囲に関する制限を意味するものではない。

    発明の詳細な説明

    本発明の実現方法
    A. はじめに
    1. 通信システム

    図1は、通信システムの概略図であって、1または複数のデータ源2、4は、パケットの形式にアレンジされた情報を運ぶ源信号を提供する。 少なくとも複数のパケットによって運ばれる情報は、例えばマルチメディア情報であってもよい。 データ源2によって提供された源信号は、パケットの組の形式にアレンジされた情報を運び、これを「主パケット」と呼ぶ。 なぜなら、これらのパケットを利用可能にすることが本発明の主題であるからである。 主パケットの組には主データ・パケットと主エラー訂正(EC)パケットが含まれる。 ある組には、主パケットの総数nに対して、kの主データ・パケット、(nk)の主ECパケットが含まれる。 データ源4のような他のデータ源も、「競合パケット」と呼ばれる、パケットの形式にアレンジされた情報を運ぶ源信号を提供する。 「競合パケット」と呼ばれるのは、競合パケットは主パケットを提供するのに必要な資源を争う関係にあるからである。 しかしながら、他のデータ源から発信される源信号は、前記の情報と同じタイプの情報を運ぶものである必要はなく、競合パケットはデータ源2について記述されたものと同じアレンジ形式である必要もない。

    各データ源2、4から発信された源信号は、それぞれ通信経路3、5を経由してパケット処理装置10に渡される。 これらの通信経路3、5は様々な種類の、例えば、金属線や光ファイバーを含む媒体によって実装されてもよい。 パケット処理装置10は各データ源2、4からのパケットを受信し、少なくともいくつかのパケットに対する情報をキュー又はバッファーに保存する。 パケット処理装置10は、情報のパケットを通信経路11を経由してレシーバー20に送信する。 この図に示した例では、レシーバー20は、データ源2、4からの情報のパケットを処理する。 レシーバー20は、データ源2から受信した情報の主パケットに対して必要に応じてEC処理を適用し、結果として得られた情報を通信経路21を通して送信する。 レシーバー20は、データ源4からの競合パケットを通信経路22を通して送信する。 通信システムは、必要に応じて、他にレシーバー、トランスミッター、データ源を含んでもよい。

    この通信システムには、クオリティ・オブ・サービス処理や付加的なEC処理のような、他の技術を組み込むこともできる。 クオリティ・オブ・サービス処理を用いることによって、パケットの全ての損失を防止しあるいは減少させることができる。 このことは、データ源2またはパケット処理装置10のいずれかが、レシーバー20が受信確認を行わなかった主パケットを再送信することによって、実現することができる。 すでに述べたEC処理、および以下に述べるEC処理に加えて、1または複数のEC処理を使用することもできる。 これらの付加的なEC処理は、パケット処理装置10およびレシーバー20の中に実装することもでき、I型損失を減少させることができる。 これらの付加的な処理を組み込むことによって、通信経路11を通じて送信することができるオリジナルのパケットの頻度は減少する。 なぜなら、経路の帯域幅の一部は、パケットの再送信、および、第2のECプロセスの付加的なECパケットのために必要となるからでる。 その結果として、I型の損失の確率は上昇する。 クオリティ・オブ・サービス処理、および付加的なEC処理を使用することは、以下に記載する通信モデルには含まれないが、必要があれば組み込むことができる。

    図1に示す概略図には、現実の通信システムの実装においては好ましい複数の構成要素は含まれていないが、これらは本発明を説明するにあたって必要ではない。 例えば、この図には、通信経路11が空いているか否か、即ち、他のパケット処理装置が現に通信経路11を使用しているか否か、またはレシーバー20による受信を妨害しかねない種類の障害が存在するか否か、という点を明らかにするために必要な構成要素は図示されていない。 同様に、パケット損失に関する、あるいはパケットの再送信の必要性に関する情報をレシーバー20から得るために必要な構成要素も示されていない。

    2. 通信システム・モデル 本発明の様々な実施態様の実施は、通信システム・モデルから得られたアルゴリズムを用いてII型損失の確率を計算し、その結果に基づいて行われる。 前記モデルから、以下に記載する複数のパラメーターの関数として、II型主パケット損失の確率を得ることができる。 これらの各パラメーターはバッファー使用量に影響を与え、言い換えればII型損失の確率に影響を与える。

    通信システム・モデルは、ECパラメーター(n,k)の変化が主データ・パケットの頻度に与える影響を考慮にいれることができ、これによって、II型主パケット損失を最小化するよう順応型ECシステムを設計することができる。 以下に記載する導出方法では、パケット処理装置10における全パケットの到着パターンと、パケット処理装置10のバッファーの大きさと、通信経路11の利用可能性とを考慮に入れる。 このモデルでは、II型主パケット損失の可能性を算出するためのアルゴリズムを導き出し、EC処理によるエラー訂正後の主データ・パケットの損失を極小化するようにECパラメーター(n,k)を順応させる。

    以下に記載する通信モデルでは、すでに記載した順応型EC処理以外の処理は、II型損失を減少させるためには使用されていないことを想定している。 このモデルに含まれない処理の例としては、クオリティ・オブ・サービス保護処理を挙げられる。 そこでは、データ源2は、レシーバー20が受信確認をしない主パケットを再送信する。 レシーバー20は、受信したパケットに対応するアクノレッジメントをデータ源2に対して送信する。 データ源2は、一定の時間内にアクノレッジメントを受信しない場合、損失したと推定される1又は複数の主パケットを再度送信する。 この処理はI型損失およびII型損失の両者をともに軽減する。 このような処理をこのモデルに導入することはできるが、主パケットを2回以上送信することによって、パケット処理装置10に到着する主パケットの頻度が増大し、そのためにバッファー使用量とII型損失の頻度を上昇させることになる。 すなわち、パケットが再送信される頻度は、損失する確率に依存する。

    a)基本的なアプローチ 以下に記載するように、マルコフを基礎とした2の定常状態モデルを構築し解決する。 このモデルはバッファー使用量を次に示すものの関数として記述する。 即ち、
    (1)パケット処理装置10にデータ源2から到着する主パケットの頻度
    (2)パケット処理装置10に他のデータ源から到着する競合パケットの頻度
    (3)パケット処理装置10が主パケットを送信し、レシーバー20がそれを破損することなく受信する確率
    (4)パケット処理装置10のバッファー又はキューの大きさ
    (5)ECパラメーター(n,k)
    である。 これらのモデルのうち一方は、ベルヌーイ過程の確率分布をもつ確率的過程に従って主パケットがパケット処理装置10に到着するシステムを記述する。 これらのモデルのうちもう一方は、固定ビット・レート(CBR)処理の決定論的過程に従って主パケットがパケット処理装置10に到着するシステムを記述する。 EC処理が行われない場合、これらのいずれのモデルでも、データ源2から提供された主パケットの組のなかの任意の1のパケットのII型損失の確率はバッファー使用量の関数として計算される。 EC処理が行われる場合、ECリカバリー後の主データ・パケット損失の確率は、ECパラメーター(n,k)の関数として計算される。

    この2のモデルの数理解析は著しく異なる。 CBRトラフィックに対しては、定常状態マルコフ・モデルを解くためには特異値解析が用いられる(Press他著、“Numerical Recipes in C++: The Art of Scientific Computing” 第2版、ケンブリッジ大学出版局、1992年出版を参照のこと)。 ベルヌーイ分布トラフィックに対しては、線形回帰方程式の定理を用いてマルコフ・モデルに対する閉形式解を得ることができる。 加えて、ECリカバリー後のパケット損失確率の計算方法も、この2種類のトラフィックでは異なっている。 ベルヌーイ分布トラフィックでは、データ・パケットとECパケットの到着は統計的に独立であることが想定され、このことによって単純な引数の組み合わせを用いてパケット損失確率を導くことができる。 CBRトラフィックに対しては、データ及びECパケットの正確な到着パターンを反映する反復的数学的方法を構築する。 いずれのモデルであっても、競合パケットのトラフィックはベルヌーイ分布であることが想定されている。 このことは、データ源2とレシーバー20は競合パケットの現実の処理について知らないことを示しているのであるから、伝統的な想定である。 しかしながら、データ源2から送信された主パケットの到着処理は既知であってコントロールすることができるのであるから、このトラフィックに対する処理を変更した場合の効果について調査することができる。

    本発明は、パケット処理装置10が通信経路11として無線周波数(RF)またはその他の無線技術を用いて複数のマルチメディアのパケットを送信する場合に、有利に使用することができるが、しかしながら、本発明は特定の種類のデータ・パケットあるいは特定の通信技術に限定されない。 主データ・パケットの送信または受信の失敗の許容可能な確率のみが、以下のモデルに影響を与える唯一の通信経路の特性である。 この確率を0あるいは任意の小さい値にまで減少させる代わりに、有線による通信あるいは光技術による通信を用いてモデル化することもできる。

    b)導出の概要 以下に記述するのは、一般的な通信モデル、個々のパケットの損失確率を計算するための一般的なアルゴリズムの導出法、ベルヌーイ分布トラフィックにおける分析的通信モデルの導出法、CBRトラフィックにおける通信モデルの導出法、各モデルにおけるECリカバリー後の損失確率の計算法である。 CBRトラフィックにおける損失確率の計算に用いられるアルゴリズムは計算複雑性が高いので、損失確率の近似値を算出する遙かに複雑性の低いアルゴリズムを導く。

    B. 通信システム・モデル
    1. 概要 以下に記述する2の通信モデルによって、図1に図示したシステムのような通信システムの動作を示す。 このモデルにはレシーバー20に加えて1または複数のレシーバーがあってもよい。 これらのモデルによれば、パケット処理装置10はデータ源からのパケットを受信し、バッファーに保存する。 パケットは順次バッファーから取り出されて、通信経路11を経由して送信される。 これらのモデルでは、パケットは先入れ先出し方式(FIFO)の順でバッファーに格納され、取り出されることが想定されている。 パケットが到着した際にバッファーが一杯であった場合、そのパケットは廃棄される。 以下に記述する技術は、他のキュー方式によるモデルを導くこともできるが、数理的解析はより複雑になる。

    以下の記述するモデルは離散時間モデルであって、パケット処理装置10はタイム・スロットと呼ばれる一定の時間ごとにパケットを受信し送信する。 モデルを単純化するために、全てのパケットは同じ固定長をもつものとする。

    このモデルにおける想定では、与えられた任意のタイム・スロットにおいてパケット処理装置10は1の主データ及び1の競合データを受信することができ、1のパケットを送信することができる。 この想定によって計算を単純化することができるが、より一般化されたモデルを導きたいときは、この想定を緩和することができる。 「ベルヌーイ・トラフィック・モデル」とは、パケット処理装置10に到着する主パケットがベルヌーイ確率分布による確率過程の形式によって記述されうる通信システムを意味する。 これらのパケットのうちの1が与えられたタイム・スロットの間にパケット処理装置10に到着する確率をp Aと表す。 ここで0≦p A ≦1である。 「CBRトラフィック・モデル」とは、主データ・パケットが、mタイム・スロットごとに一回という一定の頻度でパケット処理装置10に到着するような、決定的過程として記述されうる方式をとる通信システムをいう。 説明の便宜のため、1/mを到着確率と呼び、シンボルp Aで表す。 パケットは固定長の情報または固定数のビットを運ぶものと想定しているのであるから、一定のパケット到着確率は固定ビット・レート(CBR)と等しい。 従って、第2のモデルをCBRトラフィック・モデルと呼ぶ。

    両方のモデルにおいて、データ源2以外から供給される全ての競合パケットは、ベルヌーイ確率分布を持つ確率過程によって記述される形式で、パケット処理装置10に到着すると想定されている。 任意の与えられたタイム・スロットの間に競合パケットがパケット処理装置10に到着する確率をp Cと表す。 ここで0≦p C ≦1である。 この想定は多くのアプリケーションにおいて合理的である。 なぜなら、競合パケットを送る他のデータ源が使用する処理方法は通常わからないからである。 競合パケットの到着を計測しあるいは見積もるための任意の技術を、競合パケットの到着の分布を導くために使用することができ、以下に述べる技術を、到着過程を反映するモデルを構築するのに使用することができる。 しかしながら、到着過程が不明の場合、ベルヌーイ分布は伝統的な想定である。 以下に述べるモデルでは、全ての競合パケットの累積的到着確率としてp Cのみを用いるのであるから、これらのモデルでは競合トラフィックのデータ源は1だけが想定されている。 発信源が1であることは、複数のデータ源の累積的結果を表す可能性もある。

    両者のモデルでの想定は、少なくとも1のパケットがバッファーに格納されている各タイム・スロットで、シンボルp Dで表される確率でパケット処理装置10はバッファーからパケットを取り出し、通信経路11を経由して前記のパケットを送信するのに成功する。 ここでp Dは0≦p D ≦1である。 パケットが運ぶ情報が破損されることなくレシーバー20が受信した場合、そのパケットの送信は成功したものとみなされる。 他の装置によって同じ通信経路に他のパケットが送信されることによって、または、雑音や他の干渉によって、パケット中の情報が破損する可能性がある。 好ましい実装では、パケット処理装置10に通信経路11が空いているかどうかをパケット送信前に判断させて、破損の危険を避ける。

    パケットが運ぶ情報の実施態様によっては、破損したパケットが使用可能な場合もあるし、使用できない場合もある。 例えば、ビデオ・フレーム中の破損したビデオ情報が一部のみが破損している場合には、破損していないビデオ情報に基づく予測によって置き換えることができることもある(Wah他著 “A Survey of Error-Concealment Schemes for Real-Time Multimedia and Video Transmissions over the Internet”、 米国電気電子学会(IEEE) マルチメディア・ソフトウェア工学に関する国際シンポジウム2000、台北、台湾)。 この例とは対照的に、高度に圧縮された音声情報を運ぶパケットが破損している場合には、情報をリカバリーし、あるいは置き換えることはできない。 以下の述べるモデルでは、部分的に破損したパケットは有用な情報を含まないと想定して、破損することなくレシーバー20にパケットが送信される確率p Dを使用する。 必要であれば、一部分破損したパケットをレシーバー20が受信する可能性を別に定義して、破損したパケットの少なくとも一部分が復元できる可能性をこのモデルに付加することもできる。 通信経路11のギルバート・モデルを用いれば、適切な確率p Dを、この付加された確率から導くことができる (Bolot他著 “Adaptive FEC-based error control for Internet telephony” IEEE Infocom 2003、サンフランシスコを参照のこと)。

    複数の競合するデータ源があるシステムでは、平均してあるタイム・スロットにおいて1を越える競合パケットが到着する可能性があり、これはp C >1という関係として表現することができる。 計算を単純化するために、以下のモデルでは0≦p C ,p A ,p D ≦1と想定する。 p C ,p A ,p D <1となるように、各タイム・スロットの長さを減らすことによって、この想定を満たすことができる。

    前記のモデルと以下に記載するそれに基づく結果は、パケット損失について検討しているが、遅延および遅延ジッターについては検討していない。 さらに、このモデルでは、データ源からレシーバーに向けてパケットが流れる場合のみについて検討されていて、信号がレシーバーからデータ源に向けて流れる場合については検討されていない。

    2.バッファー動作の分析 以下のモデルでは、パケット処理装置10は長さLのキュー又はバッファーを持ち、各タイム・スロットにおいて、データ源2から受信した全ての主パケットと他のデータ源からの全ての競合パケットを、バッファーに格納することを試みる。 これらのモデルによれば、この装置がパケットをバッファーに格納する動作は以下のように記述することができる。

    1. 任意のタイム・スロットにおいて、前記装置はデータ源2からp Aの確率で主パケットを受け取り、他のデータ源からp Cの確率で競合パケットを受け取る。 主パケットと競合パケットを同じタイム・スロットで受信した場合、一方のパケットが他方のパケットより前に到着する可能性は等しいと想定する。 言葉をかえれば、競合パケットが主パケットに先立って到着する可能性は0.5であると想定する。

    2. 与えられたタイム・スロットにおいて、到着しうる主パケットと競合パケットの総数jは、集合{0,1,2}のうちの任意の数である。 到着するパケットは、以下に示すルールに従ってバッファーに格納され、あるいは廃棄される。

    a) これらのパケットが到着する直前のバッファーの使用量がLj以下であれば、到着する全てのパケットはバッファーに格納される。

    b) j=2であり、かつバッファー使用量がL-1である場合は、到着する2のパケットのうち先に到着するものがバッファーに格納され、後に到着するパケットは廃棄される。

    c) それ以外の場合は、到着するパケットは全て廃棄される。

    3. 任意の与えられたタイム・スロットにおいて、確率p Dでパケット処理装置10はバッファーからパケットを取り出し、通信経路11を経由してそのパケットを送信し、そのパケットが運ぶ情報は破損されることなく受信される。 パケットはFIFO順でバッファーに格納され取り出される。 バッファーが空である場合、取り出され送信されるパケットはない。 1のパケットが取り出されて送信されれば、バッファー使用量が1減少する。

    以下の記載するモデルでは、バッファーの統計的な使用量を記述する定常状態ベクトルを含む。 このベクトルは次のように表される。

    ここで、P N =あるタイム・スロットの終了段階においてバッファーにNのパケットが格納されている確率、L=バッファーの長さ又は大きさである。 この定常状態ベクトルはパラメーターp Aと、p Cと、p Dと、Lとの関数として表現することができる。 この関数を以下導く。

    C. パケット損失確率
    1. イントロダクション

    主パケットがパケット処理装置10に到着したタイム・スロットにおいて、以下の2の条件のいずれかを満たす場合、パケット処理装置10はデータ源2からの主パケットを破棄する。 すなわち、(1)バッファー使用量がLである場合、または、(2)バッファー使用量がL-1であり、かつ、競合パケットが主パケットに先立って到着した場合、である。 到着した主パケットが与えられたタイム・スロットにおいて破棄される可能性P lossは次のように表される。

    係数2分の1は、主パケットと競合パケットが同じタイム・スロットに到着した場合、競合パケットが主パケットに先立って到着する確率が0.5に等しいという想定を反映したものである。

    定常状態ベクトルPは、Pの異なる状態の間の遷移の確率を表す成分をもつ遷移行列から算出することができる。 この遷移行列の一般的なパラメーター表現をはじめに導く。 この一般化された表現は、パラメーターを適切に選択して、ベルヌーイ・トラフィックおよびCBRトラフィックに対して適合されうる。

    2. 遷移行列 シンボルTはこの遷移行列を表し、表記法T a,bは、連続したタイム・スロットの間でバッファー使用量がaからbに変化する確率を表す。 ここで、0≦a,b≦Lである。 バッファー使用量は、送信されたパケットがバッファーから取り除かれた後の、各タイム・スロットの終了時において計測される。 表記法(T a,b ) uはuのタイム・スロット経過後にバッファー使用量がaからbに変化する確率を表す。 ここでu≧1である。 従って、T a,b =(T a,b ) 1である。

    遷移行列の成分は次のように表される。

    ここで、
    q A =あるタイム・スロットにおいて主パケットが到着しない確率、またはq A =1-p A
    q C =あるタイム・スロットにおいて競合パケットが到着しない確率、またはq C =1-p C
    q D =あるタイム・スロットにおいてデータ・パケットの送信に成功しない確率、またはq D =1-p D
    である。

    これらのタイム・スロットにおいてデータ・パケットの送信に成功しない場合とは、送信の試みに失敗した場合、送信が行われなかった場合、クオリティ・オブ・サービス保護処置の一部としてパケットが送信された場合である。

    例えば、要素T 0,0は、バッファーがあるタイム・スロットの終了時において空であり、次のタイム・スロットの終了時においても空である確率を意味する。 この状態は、3の起こりうる状態の結果として生じ、これらの起こりうる状態の確率は式3に示されるT 0,0の3の項によってそれぞれ表される。 第1の項q A q Cは、次のタイム・スロットにおいて主パケットおよび競合パケットのいずれもが到着しない確率を表す。 第2の項q A p C p Dは、主パケットが到着せず、競合パケットが到着してバッファーに格納され、バッファーからパケットが取り出されて送信された確率を表す。 第3の項p A q C p Dは、主パケットが到着してバッファーに格納され、競合パケットが到着せず、パケットがバッファーから取り出されて送信された確率を表す。

    D.ベルヌーイ・モデルにおけるII型パケット損失の確率 はじめに、EC保護のないベルヌーイ分布トラフィックのII型パケット損失の確率を計算するモデルを導く。 続いて、このモデルを修正して、EC保護のあるベルヌーイ分布トラフィックにおけるパケット損失の可能性を計算できるようにする。

    1. EC保護のないベルヌーイ分布トラフィックの定常状態モデル ベルヌーイ・トラフィック・モデルを導くためのはじめのステップは、EC保護のないベルヌーイ分布トラフィックの定常状態ベクトルPの計算方法を得ることである。 多くのマルコフ・モデルの適用事例では、定常状態ベクトルPに対する陽公式を得ることができないが、この行列は行列分解の特異値分解の結果として表現することができる。 残念ながら、このアプローチは魅力的ではない。 なぜなら、この方法による解は閉形式ではなく、計算複雑性が極めて高いからである。 これに換えて、線形回帰方程式の理論を用いて、Pに対する閉形式の表現を確立する。 はじめに、定理1で、比較的複雑で計算上高くつくPに対する式を導き、続いて定理2で単純化する。

    定理1は以下のとおりである。

    定理1

    ここで

    定理1は数学的帰納法によって証明される。 式3で与えられた遷移行列の定義から、次の関係を導くことができる。

    式7から11に与えた定義を用いて、式12から15に与えられた関係は次のように表される。

    方程式17、18、19の関係は、j=1,2,3の場合の方程式5の関係を表す。 式19の関係は、式5がj,j+1,j+2で成り立つとき、式5が4≦j+3≦L-1でも成り立つことを示すために使うことができる。 式5に与えられた定義を用いて、式19の関係を書き換えると、次のことを証明することによって、定理1を証明することができる。

    これは次の式と等価である。

    さらに次のように変形できる。

    次のことがわかっている。

    ここで

    は、iの選択肢の中から順序なくjを取り出す方法の数を表す2項係数である。

    式7を用いて、式23の左辺は次のように書き直すことができる。

    式24と25の関係を適用し、各項を結合して単純化すれば、次のように式23の左辺が0に等しくなるように表すことができる。

    式23の右辺の各項は次のように表すことができる。

    式24と25の関係を適用し、各項を結合して単純化すれば、次のように式23の右辺が0に等しくなるように表すことができる。

    式23、29、および33より、j+3に対して式5が正しいことがわかる。 j=Lに対して、式5及び式20から式6が得られる。 式4は、式5及び式6、

    という事実から得られる。

    定理1でB jに対して得られた式は、式7で示したB jの定義をB 0 =1として拡張することによって単純化することができる。 これは、次のことを示すことによって行われる。

    補助定理1

    式34の関係は次のものと等価である。

    式25から、式35の左辺の第1項と、右辺の第1項は、ともに1に等しいことがわかる。 式24から、式36に示すように、式35の左辺の第2項は、右辺の第2項と第3項の和に等しいことがわかる。

    検討を加えると、式35の左辺の第3項と右辺の第4項は、総和の項の総和の範囲がl=1から1/2・jでなければともに0に等しく、その範囲内にあれば1に等しいことがわかる。 これによって補助定理1が得られ、この補助定理はB jの項は、一般化されたフィボナッチ数として表すことができることを示している。

    補助定理2
    まず、次の数列を定義する。

    ここで、K AとK Bは、正の実数である。

    α及びβが、式x 2 =K A x+K bの根として定義され、あるいは

    と定義され、相互に等しくない場合、線形回帰式の定理から以下のことがわかる。

    式37と式38を検討することによって、式38はi=0,1に対して正しいことがわかり、数学的帰納法によって式38はi≧2に対して正しいことがわかる。 式37の関係を、式34のB jに対する式に適用することによって、K AとK Bは次の値をとることがわかる。

    従って

    ここで

    である。

    これはβ=1-αであることを示している。 この関係を式38のβに代入すると、式7のB jの式は次のように表すことができる。

    これは、式7の表現に比べて、計算複雑性が減少している。

    式39および40の関係を、BjおよびKcに代入すると、式4の項は次のように表現できる。

    定常状態ベクトルPを算出するアルゴリズムであって、定理1から導かれたアルゴリズムに比べて計算複雑性が減少しているアルゴリズムは、式4、5、6を次のように書き換えることで得られる。

    ここで

    である。

    2. ベルヌーイ・トラフィック・モデルでのパケット損失確率
    EC保護を使用しない場合、主パケットのいずれかかが損失する可能性は式2及び式42ないし44を用いることによって計算できる。 ベルヌーイ分布トラフィックに対してEC保護を使用した場合、データ・パケットが損失する可能性はECパケットが損失する可能性とは独立であると想定できる。 付加したECパケットによって、主パケットの到着頻度は係数ψだけ増加する。 その結果、到着する確率は同じ係数だけ増加し、次のように表すことができる。

    EC保護が使用される場合、i>0かつs>0として、iのデータ・パケットが損失し、少なくともs=(nk-i+1)のECパケットが損失する場合、主データ・パケットは損失し、リカバリーされない。 ECリカバリーがない場合のデータ・パケットが損失する可能性は、式46で示すとおり、iの主データ・パケットを受信する可能性と少なくともsの主ECパケットを受信する確率の積で計算できる。

    ここで、p i (k,n)は、iのデータ・パケットと少なくともsのECパケットを損失する確率であり、

    である式46で示した確率P lossは、式45で示したp Aの修正された値を用いて、式2で示したように計算できる。 P lossは、主データ・パケットまたは主ECパケットが廃棄される可能性を表す。

    ECリカバリーが使用されることなく、主データ・パケットが損失する確率E lossは以下の式に等しく、

    ECリカバリー後に主データ・パケットをリカバリーする可能性E recは次の式で表される。

    E. CBRトラフィック・モデルにおけるII型パケット損失の確率1. ECを行うCBRトラフィック・モデルにおける送信スキーム すでに示した定常状態ベクトルPの算出アルゴリズムは、ベルヌーイ・トラフィック・モデルの通信システムに対して導かれた。 次の節では、CBRトラフィック・モデルの通信システムにおける定常状態ベクトルPの算出アルゴリズムを導く。 このモデルではタイム・スロットは1から無限大まで番号が振られ、主データ・パケットはパケット処理装置にm>1としてt=m,2m,…のタイム・スロットに到着する。 主データ・パケットは、m-1の中間のタイム・スロットの間は到着しない。 一連のkの主データ・パケットは、一連の(nk)の主ECパケットと組み合わされて、nの主パケットの組を形作る。 m=4、k=3、n=5の場合のパケットの組の例を図2に示す。 D1というラベルによって示された第1の組のkの主データ・パケットは、k・mのタイム・スロットの間隔の間、mタイム・スロットごとに1回、パケット処理装置10に到着する。 D2というラベルで示される、次の組の主データ・パケットは、次のk・mタイム・スロットの間隔の間に同様な態様で到着する。 EC1のラベルで示される第1の組の(nk)のECパケットは、次の主パケットの組のデータ・パケットの間の空のタイム・スロットに到着する。 このスキームの実現可能性を保証するために、ECパケットの数(nk)は、次のkのデータ・パケットに対する空のタイム・スロットの数を超えないという制限を受ける。 これは、

    と表すことができる。

    この到着スキームは、正式には次のように表すことができる。

    ここで、
    2≦i≦nに対してe i =t i -t i-1でありかつ、
    ti=主パケットの組のi番目のパケットがパケット処理装置10に到着するタイム・スロットである。

    式50のはじめの行は、第1の主データ・パケット以外の、主パケットの組の全てのデータ・パケットに関するものである。 第2の行は、最後のデータ・パケットの直後に続く、その組の第1のECパケットに関するものである。 第3の行は、次のパケットの組中のデータ・パケットの直後に続かない主ECパケットに関するものである。 最後の行は、次のパケットの組のデータ・パケットの直後に続く主ECパケットに関するものである。

    以下で導くCBRトラフィック・モデルでは、パケット処理装置10は、主パケットの組の中のはじめのパケット(これは常に主データ・パケットである)を破棄することを仮定する。 このパケットが破棄されるとすれば、その確率は、その前の任意のパケットが破棄される確率とは独立である。 主パケットの組の中の全てのパケットに対して、主パケットが破棄される可能性は、直前の主パケットの損失確率と直前の主パケットがパケット処理装置10に到着したときのバッファーの使用量を反復的に使用することで計算することができる。 この反復的アプローチは式2に示した表現と整合性があり、主パケットが破棄されたときは常に少なくともL-1のバッファー使用量があることを示している。 先行する主パケットが到着するとき使用量が少なくともL-1ある状態は、前記の先行するパケットが破棄されず、かつバッファー使用量が0からL-1というより少ないレベルにある場合の状態に比べて、次の主パケットが到着するときに使用量が少なくともL-1ある確率を上昇させる。 その結果、パケット処理装置10が先行する主パケットを破棄するか否かという点は、バッファー使用量に関する何らかの情報を与え、これは言い換えると、次の主パケットが破棄される可能性に関する何らかの情報を与える。

    2. CBRトラフィック・モデルにおける遷移行列 ベルヌーイ・トラフィック・モデルのすでに述べた遷移行列を、CBRトラフィック・モデルに適合させる。 ベルヌーイ分布トラフィックでは、到着過程は到着確率p Aにのみ依存するのであるから、全てのタイム・スロットに対して到着過程は統計的に等しい。 その結果、すでに述べた遷移T行列は、任意の2の連続するタイム・スロットの確率の間の遷移を適切に記述することができる。 CBRトラフィックでは、平均あるいは合成到着確率はp A =1/mで表されるが、CBRトラフィックの到着プロセスは決定的であり、各タイム・スロットは2のクラスの1に分類することができる。 タイム・スロットi=1(mod m)では、主パケットが到着し、これらのタイム・スロットに対する遷移行列Fは、式3にp Aに1を、q Aに0を代入することによって得られる。 タイム・スロットi≠1(mod m)では、主パケットが到着せず、これらのタイム・スロットに対する遷移行列Gは、式3にp Aに0を、q Aに1を代入することによって得られる。 遷移行列FとGの積は、連続するタイム・スロットでパケットが到着することを表す。 パケットが到着するタイム・スロットは行列Fで表され、パケットが到着しないタイム・スロットは行列Gで表される。

    3. EC保護のないCBRトラフィック・モデルでのパケット損失確率
    EC保護のないCBRトラフィック・モデルの、バッファー使用量に対する定常状態ベクトルπは次のように表される。

    ここで、Tは行列の積の転置を意味する。

    式51は行列(FG m-1 ) T -Iの特異値分解によって解くことができる。 ここで、Iは全ての対成分が1である対角行列であって、一次元の解空間をもち、式

    をもちいてπの最終値を決定する。 主データ・パケットの損失確率は、式53に示す定常状態ベクトルPを用いるのではなく、定常状態ベクトルπを用いて、式2と同様な式から計算できる。

    4. EC保護のあるCBRトラフィック・モデルにおけるパケット損失確率
    EC保護のないCBRトラフィック・モデルにおけるパケット損失確率を計算する式を導くアプローチを拡張して、EC保護のあるCBRトラフィック・モデルにおける式を導くことができる。 これはkのデータ・パケットからなる組の、任意の主データ・パケットがリカバーされない確率を計算することによって、行うことができる。

    a) 主パケットに対する送信スキームの定義 あるパケットの組の中のnの主パケットのうちのはじめのものが損失する確率は、第1の主データ・パケットが到着するタイム・スロットの直前のタイム・スロットのバッファー使用量の定常状態ベクトルSから決定することができる。 この定常状態ベクトルは、ある主パケットの組のkのデータ・パケットが到着する、m・kのタイム・スロットの組に対して導くことができる。 主パケットに先行する組の(nk)のECパケットは、はじめのwのタイム・スロットの間に到着する。 ここで、

    である。

    m≦wの場合、主パケットの最新の組のデータ・パケットのいくつかもまた、第一のwのタイム・スロットの間に到着する。 式49から、w≦m・kであることがわかる。

    さらに次の値を定義する。

    値z-1は、想定したk・mのタイム・スロットのw番目のタイム・スロットと、次の主データ・パケットとの間のタイム・スロットの数に等しい。 値yは、データ・パケットがECパケットによって干渉さてれない場合の、mのタイム・スロットの周期または期間の数に等しい。 定常状態ベクトルSはこれらの値によって表現できる。 式62は、図3に示すようなm-1>wの状態を表しており、ここでは、m=4、k=4、n=6、w=2、u=2、z=2、f=1、y=3である。 式63は、図4に示すようなm-1<wの状態を表しており、ここでは、m=4、k=4、n=8、w=5、u=1、z=3、f=1、y=2である。 w=m-1に対しては、wは全てのm≧2に対してm-1(mod m)と合同ではないので、式は必要ではない。 これは、m=2の場合を検討することでわかる。 m=2とすれば、wは偶数であり、m-1(mod m)と合同となることはない。 m>2に対しては、反対のことを想定すれば矛盾が生じるので合同ではないことが証明できる。 すなわち、次に示す(nk)の値が存在すると仮定する。

    定義より

    ここで、0≦d≦m-2であって、この式と式59から、

    であることがわかる。 式61は、左辺は整数であるが、右辺は整数ではないので真とはなり得ない。 このことは式59の仮定とは矛盾し、wはm-1(mod m)とは合同とはなり得ないことを示している。

    上に示した到着過程の定義より、定常状態ベクトルSは次のように表すことができる。

    πではなくSに対する式52を使用して、式51からから、ベクトルπと同じ方法で、定常状態ベクトルSを決定することができる。

    b) ECリカバリー確率
    CBRトラフィック・モデルで、ECプロセスによって破棄されたデータ・パケットがリカバリーされる確率は、次に示す5段階のステップによって計算できる。

    ステップ1:このステップでは、タイム・スロットjの終了時におけるバッファー使用量がgであるという条件を前提として、タイム・スロットj+m-1の終了時におけるバッファー使用量がhである、条件つき確率を決定する。 この確率U(m-1,g,h)は次のように表される。

    ここで、x jは正の整数であり、

    である。

    この条件つき確率の定義が表していることは、m-1の中間のタイム・スロットの間に主パケットが到着するタイム・スロット(行列Fで表される)と、主データ・パケットが到着しないタイム・スロット(行列Gで表される)があるということである。 特に、(j-1)番目のデータ・パケットが到着したタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がgであることを前提として、j番目の主パケットが到着する前のタイム・スロットの終了時におけるバッファー使用量がhである条件つき確率R(e j -1,g,h)を、2≦j≦nに対して、計算する。

    ここで、
    (F x ) g,h =行列Fのx乗のg行h列の要素
    (G y ) g,h =行列Gのy乗のg行h列の要素
    (F x G y ) g,h =行列の積F x G xのg行h列の要素

    である。 項R(e j -1,g,h)は2≦j≦nに対してのみ定義されているのであるから、jがこの範囲に収まらないw、m、q、uのパラメーターの組は、発生することがなく無視されるべき条件を表す。

    ステップ2:このステップでは、主パケットが到着するタイム・スロットの直前のタイム・スロットの終了時におけるバッファー使用量がhであるときの、到着する主パケットが破棄されるか場合と、破棄されない場合の条件つき確率を決定する。 パケットが破棄されない条件は次の通りである。

    ・ h≦L-2である場合、または、h=L-1かつk=L-2である場合は、到着するパケットは破棄されない。

    ・ rを主パケットが到着するタイム・スロットの終了時におけるバッファー使用量として、h=r=L-1である場合、次の条件のいずれか一方が満たされれば、到着するパケットは破棄されない。 1)競合パケットが到着せず、パケットがバッファーから確率q C p Dで送信される。 2)競合パケットが到着したが、それは主パケットの後に到着し、パケットがバッファーから確率

    で送信される。

    ・ rを主パケットが到着するタイム・スロットの終了時におけるバッファー使用量として、h=L-1かつr=Lである場合、次の条件のいずれか一方が満たされれば、到着するパケットは破棄されない。 1)競合パケットが到着せず、確率q C q Dでパケットがバッファーから送信されない。 2)競合パケットが到着したが、それは主パケットの後に到着し、確率

    でパケットがバッファーから送信されない。

    ・ h=Lの場合、到着する主パケットは破棄される。

    最新のタイム・スロットにおいて主パケットが到着し、前のタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がhであると仮定して、最新のタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がrであり、かつ到着する主パケットが破棄されない条件つき確率は次のように表すことができる。

    同様に、最新のタイム・スロットにおいて主パケットが到着し、前のタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がhであると仮定して、最新のタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がrであり、到着する主パケットが破棄される条件つき確率は次の様に表すことができる。

    ステップ3:このステップでは、ある組の中の(j-1)番目の主パケットが到着するタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がgであるとして、その組の主パケットのj番目のパケットが到着するタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がrであり、かつ、j番目のパケットが破棄されない場合の、条件つき確率を決定する。 この条件つき確率は次のように表すことができる。

    同様に、ある組の中の(j-1)番目の主パケットが到着するタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がgであるとして、その組の主パケットのj番目のパケットが到着するタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がrであり、かつ、j番目のパケットが破棄される場合の条件つき確率は、次のように表すことができる。

    ステップ4:このステップでは、1≦a≦nかつ0≦b≦aとして、主パケットの組のはじめのaのパケットのうち、bのパケットが破棄される条件つき確率M(a,b,d)と、そのa番目のパケットが到着するタイム・スロットの終了時のバッファー使用量がdに等しい条件つき確率を決定する。 a=1に対しては、確率M(a,b,d)は、すでに述べた式62および63に定義されたベクトルSの関数として表現することができる。 a>1に対しては、確率M(a,b,d)は、次の式に示すように、A(k,g,j)とB(k,g,j)を用いて再帰的に定義することができる。

    ステップ5:このステップでは、kの主パケットのうちνが破棄され、はじめのaのECパケットのうちbが破棄され、a番目のECパケットが到着するタイム・スロットの終了時にバッファー使用量がdに等しい確率D(a,b,d,ν)を求める。 ここで、1≦a≦nk、0≦b≦a、0≦ν≦kである。 a=1に対して、確率D(a,b,d,ν)はM(k,ν,j)、A(j,d,k)、B(j,d,k)の関数として表すことができる。 a>1に対しては、確率D(a,b,d,ν)はD(a-1,b,d,ν)、A(j,d,k)、B(j,d,k)を用いて、次の式に示すように、再帰的に定義することができる。

    kの主データ・パケットのうちνが破棄され、(nk)のECパケットのうちbが破棄される確率H(ν,b)は次のように表すことができる。

    ECプロセスによってリカバリーされるデータ・パケットの数の平均値または期待値E recは次のように表すことができる。

    ここで、

    である。

    F. CBRトラフィク・モデルにおける近似アルゴリズム
    E recの近似値のみを計算をするアルゴリズムは、ベルヌーイ・トラフィック・モデルにおいては通常不要である。 なぜなら、式48に示すようにE recを厳密に算出するには、計算複雑性がO(1)である、式42、k=L-1に対する式43、および式44を計算し、計算複雑性がO(nk)である式46が必要であるからである。 E recを計算するこのアルゴリズムの全体にわたる計算複雑性は、O(nk)である。 この複雑性を表す数は、全ての必要な二項係数が予め計算され、引き続いて使用することができるように格納されていることを想定している。 E recを計算するのに必要な時間は、L=400の場合、Cプログラミング言語を用いて実装し、カリフォルニア州サンタ・クララのIntel社から供給されている3.4GHzのペンティアム(R)マイクロプロセッサーを用いれば、1msec未満である。 これは、多くの実施例でのリアル・タイム性の要求に十分合致する速度である。

    残念ながら、CBRトラフィック・モデルでは、E recの近似値を求めるアルゴリズムが必要である。 なぜなら、厳密アルゴリズムの計算複雑性が極めて高いからである。

    1. 厳密アルゴリズムの複雑性 前記の5ステップのアルゴリズムから導かれた式71は、近似を用いることなく期待値E rec計算するのであるから、ここでは厳密アルゴリズムと呼ぶ。 第1ステップでは行列m・kの積を行った上で、行列(L+1)x(L+1)の特異値分解を計算する。 これらの演算の計算複雑性はO(mkL 3 )である。 第2ステップと第3ステップを実行するために必要な演算の計算複雑性は、無視することができる。 確率M(a,b,d)を計算する第4ステップの演算の計算複雑性はO(k 2 L)である。 確率D(a,b,dν)を計算する第5ステップの演算の計算複雑性はO((nk) 2 kL 2 )である。 5段階のアルゴリズムの全体としての計算複雑性は、およそO(mkL 3 +k 2 L+((nk) 2 kL 2 ))である。 しかしながら、現実的な実装では、バッファーの大きさLは、n,kの値よりも1桁または2桁大きいと思われるのであるから、このアルゴリズムの全体としての複雑性はおよそO(mkL 3 )である。

    表1の要素は、5ステップのアルゴリズムをCプログラミング言語で書いた実装の例を、3.4GHzペンティアム・プロセッサー上で実行した場合の、E recを計算するために必要な総時間を示している。 第1ステップの特異値分解には、ケンブリッジ大学出版局1992年、Press他著「Numerical Recipes in C++; The Art of Scientific Computing(第2版)」に記載の、「svdcmp」ルーチンを用いた。

    典型的なマルチメディア無線ネットワークでは、パケット処理装置10は市場に流通しているIEEE802.11に基づいたワイヤレス・アクセス・ポイント(AP)として実装され、典型的には300またはそれ以上のパケットにあたるバッファーの格納容量がある。 表1の要素がによれば、このようなAPでは、前記の典型的な実装を用いて期待値E recを計算するのに必要な時間は、少なくとも623msecであるということである。 残念ながら、多くのマルチメディア・アプリケーションに対して、ECパラメーター(n,k)をリアル・タイムに適用するためには、少なくとも1桁少ない時間の間にこの計算を行わなければならない。 つぎに、かなり少ない時間でErecの概算値を計算する、より複雑性の少ないアルゴリズムを次に導く。

    2. 崩壊状態モデル 前記の5ステップのアルゴリズムの目的は、ECリカバリー後の情報の損失を最小化するECパラメーター(n,k)を決定することである。 このアルゴリズムを用いて計算をする必要があるのは、バッファー・オーバーフローのためにパケット処理装置10が1または複数のパケットを破棄してパケット損失が発生した場合のみである。 バッファー・オーバーフローが発生するのは、バッファー使用量がLであるか、またはそれに近い値であり、パケット処理装置10における競合パケットと主パケット両者の累積的な到着頻度が、その装置がパケットをバッファーから送信する頻度に比べて高い場合である。 言葉を換えれば、kがLにきわめて近い例外的な場合を除いて、全てのkに対して、定常状態ベクトルSの成分S kは0か、または0に近いということである。

    数値実験によって、これらの予想を確認する。 図5ないし7に、異なる競合トラフィック頻度p Cに対する定常状態確率S kの分布を示す。 この3の例において、m=4、n=6、k=5、p D =0.8である。 到着頻度の合計p A +p Cがp Dに等しいとき、このモデルは平衡状態になり、これはp C =0.5の時に生じる。 図5に示す例では、p C =0.52であり、これは、平衡頻度に比べてわずかに大きい。 この図に示すように、kが増大するに従って、定常状態確率S kは急速に増大するが、定常状態確率が0.01より大きくなるのは、k>95の場合だけである。 p Cが増大して、到着頻度の合計p A +p Cが転送頻度p Dより大きい場合、例えば、図6及び7にそれぞれ示すようにp C =0.6およびp C =0.66のような場合であっても、kがLにきわめて近い場合でない限り、定常状態確率S kは、0であるか0に近い。

    この挙動は、よい近似アルゴリズムの開発に使用できる。 定常状態確率S kが0あるいは0に近いトラフィック・モデルのいかなる状態も、システムに対して顕著な影響を与えない。 なぜなら、システムは原則としてこの状態にならないからである。 図5ないし7に示す例では、S k ≒0である全ての状況のうち大部分は、定常状態モデルの動的変化に影響をほとんど与えないか、全く与えない。 結果として、これらの状態を定常状態ベクトルSの計算を行うときに無視したとしても、計算結果に大きな変化を与えないし、E recの計算値に大きな変化を与えない。

    この観察結果に基づけば、S k >εであって、εを小さい閾値としたときの、定常状態kのみに対するE recを計算する近似アルゴリズムを導くことができる。 この近似アルゴリズムは、S k >εである全ての状態kが個々のベクトル成分C k =S k+L0によって表され、S k ≧εである他の全ての状態kは単一状態C 0に崩壊する、崩壊した状態ベクトルCを使用する。 L 0をバッファー使用量の閾値として、k≦L 0でS k ≦εが前提とされている。 結果として、崩壊した状態ベクトルCは、0≦k≦LL 0に対して、LL 0 +1の成分C kを持つにすぎない。

    式3の遷移行列を、Lにかえて値LL 0を用いて再定義することによって、L+1の成分を持つ定常状態ベクトルSは、LL 0 +1のみの成分を持つ崩壊した状態ベクトルCによって、近似的に表すことができる。 0≦a,b≦LL 0に対する、状態C aとC bの間の遷移確率を、T a+L0,b+L0と定義する。 この遷移行列は、a,b>0であれば、バッファー使用量の変化を正確に表しているが、a=0であるかまたはb=0である場合には、バッファー使用量の動的変化を近似的に表すにすぎない。 この近似は、閾値εに十分に小さな値を選べば、1≦k≦LL 0のときC kの計算の正確性に顕著な影響を与えない。 なぜなら、崩壊した状態C 0は、確率がεL 0という、きわめてまれな頻度でしか発生しないからである。 正確にいえば、差の絶対値|C k -C k+L0 |は1≦k≦LL 0において極めて小さいことが期待できるのである。

    崩壊した状態ベクトルCは、式62または63のいずれかに特異値分解を適用し、すでに述べたようにベクトルπに換えてベクトルCを使った式52を用いて前記結果を正規化することによって、計算することができる。 ベクトルCを計算した後、E recの近似値は、ベクトルSではなくベクトルCを用いて式71から計算できる。 図5ないし7の例から、値L 0は値Lに近いことが予想できるので、計算複雑性をO(mkL 3 )からO(mk(LL 0 ) 3 )に減少させることができるということが予想できる。 表1でバッファーの大きさLに換えて値LL 0を使用して、L 0が充分にLに近い場合、この典型的な実装の実行時間を1桁またはそれ以上減少させることがわかる。 L 0の値は、多くのマルチメディア・アプリケーションのリアル・タイム性の要求を満たすような、近似アルゴリズムの実装ができる値が選ばれる。

    近似アルゴリズムを使用する前に、L 0を決定しなければならない。 数値シミュレーションによれば、μ=0.1として、p A +p C >p D +μである場合は常に、近似アルゴリズムの正確性を顕著に下げることなく、L 0 =10を選ぶことができる。 式71から計算されたE recの正確な値とともに、近似アルゴリズムに使用するために、μの異なる値に対して適切であるL 0の値の組を予め計算しておくことができる。 これは、L 0のどの値を使用すれば近似アルゴリズムがE recを見積もる上で正確性を維持できるのかを決定するためである。

    この崩壊した定常状態近似技術は、原則としていかなるトラフィック・モデルに対しても、計算複雑性を減少したアルゴズムを得るために使用することができる。

    G 実施例 前記の技術を使用して、パケット通信システムにおける様々な種類の実施例を実装するアルゴリズムを導くことができる。

    ある実施例では、前記のアルゴリズムを使用して、パラメーターp A 、p C 、p D 、LおよびECパラメーター(n,k)が与えられたときの、ECリカバリー後の主パケットの損失確率を計算する。

    ある実施例では、ECパラメーター(n,k)を順応させて、ECリカバリー後の主データ・パケットの損失を最小化する。 これを実現する一つの方法は、検討中の通信システムに対して、全ての適切なパラメーター値の組(n,k)を、はじめに決定しておくことである。 通信経路帯域幅および最大許容遅延などのこのシステムに関する制約は、ECパラメーターの選択に関しても制約となる。 帯域幅に関する制限は比率φに関する制限となり、遅延に関する制限は、パラメーターnに関する制限となる。 最大限許容可能な遅延の総量と帯域幅を規定した上で、これらの要求を満たすECパラメーターの組(n,k)を全て特定することによって、適切なパラメーターの値の組(n,k)を決定することができる。 上に導いたアルゴリズムを、パラメーターp A 、p C 、p D 、Lおよび、適切なECパラメーターの値の全部又は一部に適用することによって、関連する損失確率を計算することができる。 損失確率を最も下げるECパラメータの値(n,k)が、パラメーターの最適な組として選択される。

    他の実施例は、データ源2が主パケットを送信する最適な頻度を決定するために使用される。 この実施例では、ECパラメーター(n,k)の値を選択し、異なるパケット到着頻度p Aに対して前記のアルゴリズムを適用して、関連する損失確率を計算する。 多くの場合、実施上の配慮から、考え得る頻度に関して制限がある。 損失確率を最小化する頻度は、データ源の最適送信頻度として設定される。

    別の方法として、導かれたアルゴリズムを、ECパラメーター(n,k)とパケット到着頻度の両者の一連の値に適用して、損失確率を最小化する設定を決定する。

    さらに別の実施例では、パラメーターp A 、p D 、L、ECパラメーター(n,k)、および、ECリカバリー後の主パケットを損失する割合を与えて、競合パケットが到着する確率を表すp Cを計算する。 前記のアプリケーションは、パラメーターp A 、p C 、p D 、Lの値は既知のものであることを想定している。 p Cの値が未知である場合、EC保護がないときはp Cの値はパラメーターp A 、p D 、P loss 、およびLから得ることができ、EC保護があるときは、p A 、n、k、p D 、E loss 、およびLから得ることができる。 例えば、データ源2において、p Cを計算する反復処理が実装されてもよい。 この処理は、データ源2からp A 、n、およびkの値を得ることができ、レシーバー20からp D、および、P lossまたはE lossの値を得ることができる。 Lの値は通常はア・プリオリにわかっているのであるが、仮にわかっていなかった場合にはパケット処理装置10から得ることができる。 反復を行う方法は、次のパラグラフで述べる。 このプロセスで計算されるpcの値は、すでに述べたアルゴリズムの入力パラメーターとして使うなど、他の実施例において使用することもできる。

    EC保護がない場合、ベルヌーイ・トラフィック・システムのpcの値は、式2および式42ないし44に定められた関係から決定することができる。 CBRトラフィック・モデルでは、この値は、式2に定められた関係と、式53に関連して述べた前記の技術から決定することができる。 いずれのタイプのシステムであっても、これらの式によって定められた関係から、p CとP lossの間の関係は単調な一対一写像となる。 この写像の特徴を使用して、pcの値に収束する反復的二分探索法によってpcを決定することができる。

    EC保護がある場合、ベルヌーイ・トラフィック・システムのpcの値は、式2および48に定められた関係から決定することができる。 CBRトラフィック・モデルでは、その値は、式2および71に定められた関係から決定することができる。 いずれのタイプのシステムであっても、これらの式によって定められた関係から、p CとE recの間の関係は単調な一対一写像となる。 この写像の特徴を使用して、pcの値に収束する反復的二分探索法によってpcを決定することができる。

    多くの実装では、nとkの適切な選択は、帯域幅と遅延の要求によって制限を受ける。 前のパラグラフで記載したアルゴリズムを使用して、全ての適切なnとkの組の中から、ECリカバリー後の損失確率を最小化するECパラメーター(n,k)を発見することができる。 pcの値は前記の方法で決定され、nとkの全ての適切な値に対する探索が行われて、最適値を見つける。

    H実装 図1によれば、通信経路3、5、11、21、および22は、金属線を経由する電気信号、光ファイバーを経由する光信号、空間を経由する無線周波数(RF)放射のような、原則として任意の技術とメディアによって実装することができる。 本発明は、図1に示すような、通信経路11が無線RF経路であり、他の通信経路が電気又は光経路である通信システムの場合に、有利に使用することができる。

    本発明の様々な実施態様を実施するのに必要な機能は、個別の論理要素、集積回路、1または複数のASIC、ないしプログラム制御プロセッサーを含む様々な方法によって実装することができる。 これらの要素が実装される態様は、本発明にとって重要ではない。

    本発明をソフトウェアとして実装した場合、超音波領域から紫外線領域を含む周波数帯域のベースバンドあるいは変調された通信経路、または、磁気テープ、磁気カード、磁気ディスク、光カード、光ディスク、紙を含む媒体上の可読性のあるマークを含む、原則として任意の記録技術を用いた情報を運ぶ記憶媒体のような、様々な種類の機械可読媒体に搭載することができる。

    通信システムの概略図である。

    CBRトラフィック・モデルの、タイム・スロットごとにアレンジされたパケットの組の概略図である。

    CBRトラフィック・モデルの、タイム・スロットごとにアレンジされた主パケットの組の概略図である。

    CBRトラフィック・モデルの、タイム・スロットごとにアレンジされた主パケットの組の概略図である。

    バッファー使用状態の関数としての定常状態確率を表す図である。

    バッファー使用状態の関数としての定常状態確率を表す図である。

    バッファー使用状態の関数としての定常状態確率を表す図である。

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