【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体集積回路およびこれを用いた無線通信装置に関し、特に高周波用途に適した化合物系FET(電界効果トランジスタ)半導体集積回路およびこれをRFフロントエンド部の利得制御僧服回路として用いた携帯電話などの無線通信装置に関する。 【0002】 【従来の技術】携帯電話に代表される高周波無線通信装置において、そのRFフロントエンド部には高周波用途に適した化合物FET半導体集積回路が一般的に用いられる。 このような半導体集積回路の一つであるRFフロントエンド増幅器では、他チャンネル信号波の相互変調歪みによる妨害を避けるために、その特性が低歪み(低歪み特性)であることが要求される。 【0003】増幅器において、上記歪み特性を表す指標としては、入力3次インターセプトポイント(IIP 3)が一般的に用いられる。 国内ディジタルセルラー電話(PDC)やパーソナルハンディホン(PHS)では、フロントエンド増幅器として要求されるIIP3は−数dBm程度であり、ドレインバイアス電流が2〜3 mA程度で利得が15dB前後、IIP3として−5d Bm程度が容易に実現可能であることから、実用上問題は生じない。 【0004】しかし、他のシステムとして最近サービスが開始されたCDMA(Code Division Multiple Acces s)方式では、送受信が同時に行われるFDD(Frequency Division Duplex)方式のため、同一周波数帯を使用している他システムの信号波と送信波の回り込みによる混変調歪み妨害波が新たに生ずる。 この妨害波の影響を避けるためにはより一層の低歪み特性が要求され、IIP 3としては+数dBm程度の性能が必要となる。 【0005】IIP3として+数dBm程度の性能を実現するためには、ドレインバイアス電流として上記の2 〜3倍程度は必要となる。 また、さらに他チャンネル信号の相互変調歪みによる妨害に対しても、強電界、中電界、弱電界の3規格への対応が必要となるため、利得制御機能は必須である。 【0006】図5は、斯かるCDMA方式で一般的に使用される1段利得制御増幅回路の従来例を示す回路図である。 【0007】図5において、従来例に係る利得制御増幅回路は、増幅回路部101および利得制御回路部102 からなり、入力信号RFinが印加される信号入力端子103、出力信号RFoutが導出される信号出力端子104、バイアス電圧VDD1,VDD2がそれぞれ印加されるバイアス入力端子105,106、バイアス電圧VGGが印加されるバイアス入力端子107および外部から利得制御電圧CTLが印加される利得制御端子1 08とを有する構成となっている。 【0008】増幅回路部101は、信号入力端子103 を通して入力される入力信号RFinを増幅するための信号増幅用FETQ1と、このFETQ1に対してゲートバイアス電圧を与えるためのバイアス抵抗Rg1と、 FETQ1に対してドレインバイアス電圧を与えるためのチョークコイルLbとから構成されている。 【0009】利得制御回路部102は、入力信号RFi nを接地側にバイパスするための信号バイパス用FET Q2と、このFETQ2のゲートに利得制御電圧CTL を与えるための抵抗Rg2と、FETQ2に対してソースバイアス電圧を与えるための抵抗Rg3と、FETQ 2に対してドレインバイアス電圧を与えるための抵抗R g4と、入力信号RFinをバイパスさせるための結合容量Cbと、接地容量Csとから構成されている。 【0010】この利得制御増幅回路においては、信号バイパス用FETQ2のドレイン-ソース間抵抗が、利得制御端子108へ印加する利得制御電圧CTLを変化させることで可変抵抗として動作することを利用している。 そして、入力信号RFinの強度に応じて当該入力信号RFinの一部を接地側へバイパスさせることによって本利得制御増幅回路の利得制御を行っている。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構成の従来例に係る半導体集積回路、即ち利得制御増幅回路では、入力信号RFinの一部を接地側へバイパスさせていることから、利得制御によって利得を減衰させた分だけIIP3特性を向上できるものの、これはシステム設計上オーバースペックとなる。 【0012】なぜなら、システム上利得制御を行わなければならない理由は、後段ブロックが前段で入力信号R Finが増幅されている分だけ歪み特性に対する負荷が大きくなるために、これを緩和する必要があるためだからである。 したがって、前段の歪み特性、即ちIIP3 特性が必要以上に改善されても、システム全体を考えれば意味が無い。 【0013】其れよりは寧ろ、利得減衰によるIIP3 特性の向上分をドレインバイアス電流、即ち消費電流の低減に振り向けた方が得策である。 特に携帯電話の場合、電源がバッテリであり、小型化のためにバッテリ容量が限られている。 このことから、通話や待ち受け時間を確保するためには出来るだけ低消費電流であることが要求され、低消費電流化は非常に重要である。 【0014】図6に、GaAsFETを用いた従来の利得制御増幅回路において、最大利得(利得減衰制御を行わない)時の利得とIIP3のドレインバイアス電流依存性の一例を示す。 ここで、ドレインバイアス電流の調整は、バイアス入力端子107に与えられるバイアス電圧VGGを制御することによって行われる。 【0015】図6より明らかなように、ドレインバイアス電流を低減するにつれて利得が減少し、IIP3も劣化していくことが判る。 CDMA携帯電話システムにおいて必要とされる強電界、中電界、弱電界の規格を利得制御ステップ幅に換算すれば約10dBに相当することから、図6において、IIP3を4〜5dBm程度に保ちながら最大利得15dB付近から、5dBと−5dB 付近に変化させるための条件はおおよそ図7に示すようになる。 なお、図7には、IIP3を一定に保持するための利得減衰時におけるドレインバイアス電流と入力信号減衰量との関係を示している。 【0016】したがって、ドレインバイアス電流と利得減衰条件を上手く組み合わせれば、中および弱電界時において、消費電流を激減できる利点を得ることができる。 しかしながら、先述した従来例に係る利得制御増幅回路では、特に1mA前後の低ドレインバイアス電流時においては、電流変動に対する利得変動が非常に大きくなるため、利得安定性やバラツキの点で問題となっていた。 【0017】本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、IIP3特性を劣化させない程度に保ちながら利得減衰時の低消費電流化を図るとともに、減衰(負の利得)時における高安定化を可能とした半導体集積回路およびこれを用いた無線通信装置を提供することにある。 【0018】 【課題を解決するための手段】本発明による半導体集積回路は、ゲートに与えられる入力信号を増幅する少なくとも1段の信号増幅用トランジスタと、入力信号の強度に応じて当該入力信号の一部を接地側へバイパスさせる第1のバイパス手段と、入力信号の強度に応じて当該入力信号の一部を出力側へバイパスさせる第2のバイパス手段とを備えた構成となっている。 【0019】上記構成の半導体集積回路において、入力信号の強度に応じて、第1のバイパス手段が当該入力信号の一部を接地側へバイパスさせ、第2のバイパス手段が当該入力信号の一部を出力側へバイパスさせることから、これらを組み合わせて例えば強電界、中電界、弱電界の電界強度に応じてステップ的にコントロールすることにより、IIP3特性を劣化させない程度に保ちながら利得減衰制御を実現できる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。 【0021】[第1実施形態]図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体集積回路である利得制御高周波増幅回路を示す回路図である。 【0022】本実施形態に係る利得制御高周波増幅回路は、増幅回路部11および第1,第2のバイパス回路部12,13からなり、入力信号RFinが印加される信号入力端子14、出力信号RFoutが導出される信号出力端子15、バイアス電圧VDD1,VDD2がそれぞれ印加されるバイアス入力端子16,17、バイアス電圧VGGが印加されるバイアス入力端子18および外部からバイパス制御電圧CTL1,CTL2がそれぞれ印加されるバイパス制御端子19,20を有する構成となっている。 第1,第2のバイパス回路部12,13 は、利得制御回路部としての機能を持つ。 【0023】増幅回路部11は、少なくとも1段の信号増幅用FETQ1、バイアス抵抗Rg1およびチョークコイルLbから構成されている。 信号増幅用FETQ1 はゲートが信号入力端子14に、ドレインが信号出力端子15にそれぞれ接続され、ソースが接地されており、 信号入力端子14を通して入力される入力信号RFin を増幅して出力する。 【0024】バイアス抵抗Rg1は信号増幅用FETQ 1のゲートとバイアス入力端子18との間に接続されており、バイアス入力端子18に印加されるバイアス電圧VGGに応じたゲートバイアス電圧を信号増幅用FET Q1のゲートに与える。 チョークコイルLbは信号増幅用FETQ1のドレインとバイアス入力端子16との間に接続されており、バイアス入力端子16に印加されるバイアス電圧VDD1に応じたドレインバイアス電圧を信号増幅用FETQ1のドレインに与える。 【0025】第1のバイパス回路部12は、信号バイパス用FETQ2、バイパス信号強度調整用抵抗Rc1、 抵抗Rg2〜Rg4、結合容量Cb1および接地容量C s1から構成されている。 結合容量Cb1はその一端が入力端子14、即ち信号増幅用FETQ1のゲートに接続されている。 信号バイパス用FETQ2は、そのドレインが結合容量Cb1の他端に接続されている。 【0026】抵抗Rg2は信号バイパス用FETQ2のゲートとバイパス制御端子19との間に接続されており、バイパス制御端子19に印加されるバイパス制御電圧CTL1を信号バイパス用FETQ2のゲートに与える。 バイパス信号強度調整用抵抗Rc1はその一端が信号バイパス用FETQ2のソースに接続され、その他端が接地容量Cs1を介して接地されている。 【0027】抵抗Rg3はバイパス信号強度調整用抵抗Rc1の他端とバイアス入力端子17との間に接続されており、バイアス入力端子17に印加されるバイアス電圧VDD2に応じたソースバイアス電圧を、バイパス信号強度調整用抵抗Rc1を通して信号バイパス用FET Q2のソースに与える。 抵抗Rg4は信号バイパス用F ETQ2のドレインとバイアス入力端子17との間に接続されており、バイアス入力端子17に印加されるバイアス電圧VDD2に応じたドレインバイアス電圧を信号バイパス用FETQ2のドレインに与える。 【0028】第2のバイパス回路部13は、信号バイパス用FETQ3、バイパス電力調整用抵抗Rc2、抵抗Rg5,Rg6および結合容量Cb2から構成されている。 信号バイパス用FETQ3はそのドレインが信号バイパス用FET2のドレインに接続されている。 抵抗R g5は信号バイパス用FETQ3のゲートとバイパス制御端子20との間に接続されており、バイパス制御端子20に印加されるバイパス制御電圧CTL2を信号バイパス用FETQ3のゲートに与える。 【0029】バイパス電力調整用抵抗Rc2はその一端が信号バイパス用FETQ3のソースに接続され、その他端が結合容量Cb2を介して信号増幅用FETQ1のドレイン(信号出力端子15)に接続されている。 抵抗Rg6はバイパス電力調整用抵抗Rc2の他端とバイアス入力端子17との間に接続されており、バイアス入力端子17に印加されるバイアス電圧VDD2に応じたソースバイアス電圧を、バイパス電力調整用抵抗Rc2を介して信号バイパス用FETQ3のソースに与える。 【0030】斯かる構成の第1実施形態に係る利得制御高周波増幅回路では、バイパス制御端子19,20に印加するバイパス制御電圧CTL1,CTL2を入力信号RFinの強度、例えば強電界、中電界、弱電界に応じてステップ的にコントロールすることによって利得減衰制御が行われることになる。 なお、信号増幅用FETQ 1および信号バイパス用FETQ2,Q3は、化合物半導体を用いた素子で形成されている。 【0031】ここで、例えばJ−CDMA(cdmaO ne)の妨害波規格については、FER(Frame Error R ate)≦1%を次の条件で満足する必要がある。 その条件は、妨害2波入力レベルについては強電界で−21dB m、中電界で−32dBm、弱電界で−43dBm、希望波入力レベルについては強電界で−79dBm、中電界で−90dBm、弱電界で−101dBmである。 【0032】次に、上記構成の利得制御高周波増幅回路における利得制御の動作について、高利得時、中利得時、低利得(減衰)時に分けて説明する。 【0033】高利得時には、バイパス制御端子19,2 0に印加するバイパス制御電圧CTL1,CTL2をコントロールすることにより、信号バイパス用FETQ 2,Q3を共にオフさせる。 これは、信号バイパス用F ETQ2,Q3のドレイン-ソース間抵抗をいずれも無限大に設定することに相当する。 また、バイアス入力端子18に印加するバイアス電圧VGG1をコントロールすることにより、信号増幅用FETQ1のドレインバイアス電流を所望の値、例えば図7に示した高利得条件に設定する。 これにより、本利得制御高周波増幅回路は、 バイパス経路(第1,第2のバイパス回路部12,1 3)への信号が完全に遮断させるため、最大利得を得ることができる。 【0034】中利得時には、バイパス制御電圧CTL 1,CTL2をコントロールすることにより、信号バイパス用FETQ2を完全にオン、信号バイパス用FET Q3をオフさせる。 これにより、第2のバイパス回路部13側については、信号バイパス用FETQ3がオフであることから、出力側への信号のバイパス経路は完全に遮断される。 一方、第1のバイパス回路部12側については、信号バイパス用FETQ2のドレイン-ソース間オン抵抗とバイパス信号強度調整用抵抗Rc1とで決定づけられる信号強度分だけ接地側へバイパスされる。 その結果、利得が減衰される。 【0035】また、バイアス電圧VGGをコントロールすることにより、信号増幅用FETQ1のドレインバイアス電流を所望の値に設定する。 例えば、接地側へのバイパス信号強度(減衰量)およびドレインバイアス電流を図7に示す中利得条件に設定する。 これにより、本利得制御高周波増幅回路は、所望の中利得を得ることができる。 【0036】低利得(減衰)時には、バイパス制御電圧CTL1,CTL2をコントロールすることにより、信号バイパス用FETQ2をオフ、信号バイパス用FET Q3をオンさせる。 これにより、第1のバイパス回路部12側については、信号バイパス用FETQ2がオフであることから、接地側への信号のバイパス経路は完全に遮断される。 一方、第2のバイパス回路部13側については、信号バイパス用FETQ3のドレイン-ソース間オン抵抗とバイパス電力調整用抵抗Rc2とで決定づけられる信号強度分だけ出力側へバイパスされる。 【0037】また、バイアス電圧VGGをコントロールすることにより、信号増幅用FETQ1のドレインバイアス電流を遮断する。 信号増幅用FETQ1のドレインバイアス電流を遮断すれば、信号増幅用FETQ1は増幅器(能動素子)としてはもはや動作しない。 そして、 信号増幅用FETQ1のゲートとドレインとの間にはゲート-ドレイン間容量Cgdで決定される結合容量しか存在しない。 【0038】しかも、例えばゲート幅400μmのGa AsFETのゲート-ドレイン間容量Cgdは0.1p F程度であることから、800MHz帯の周波数では信号増幅用FETQ1のゲート-ドレイン間経路の信号減衰量は20数dBに達し、信号バイパス用FETQ3のバイパス経路の減衰量を数dB程度に設定すれば、信号増幅用FETQ1による減衰量の寄与分も無視できる。 【0039】以上から、本条件での信号は信号バイパス用FETQ3のドレイン-ソース間オン抵抗とバイパス電力調整用抵抗Rc2とで決定づけられる信号強度分だけ減衰して出力される受動動作であることから、本質的に低歪みである。 また、信号増幅用FETQ1を低バイアスドレイン電流設定にした利得が不安定な能動動作条件を利用していないため、安定動作が実現可能である。 さらに、信号増幅用FETQ1のバイアスドレイン電流を完全に遮断できることから、低消費電流化という点でも優れた構成と言える。 【0040】[第2実施形態]図2は、本発明の第2実施形態に係る半導体集積回路である利得制御高周波増幅回路を示す回路図であり、図中、図1と同等部分には同一符号を付して示している。 本実施形態に係る利得制御高周波増幅回路は、第1実施形態に係る利得制御高周波増幅回路における増幅回路部11および第1,第2のバイパス回路部12,13に加えて、信号増幅用FETQ 1のバイアスドレイン電流を利得減衰ステップに合わせて減ずる制御を行う制御回路部21を新たに構成要素として有する構成となっている。 【0041】なお、増幅回路部11および第1,第2のバイパス回路部12,13の具体的な構成については、 第1実施形態の場合と全く同じであるため、ここではその説明を省略するものとする。 以下、制御回路部21の具体的な回路構成について説明する。 【0042】制御回路部21は、複数個、例えば2個のバイアス電流遮断用FETQ4,Q5、抵抗Rg7,R g8、セルフバイアス抵抗Rs1,Rs2および接地容量Cs2を有する構成となっている。 ここで、バイアス電流遮断用FETQ4,Q5も、信号増幅用FETQ1 および信号バイパス用FETQ2,Q3と同様に、化合物半導体を用いた素子で形成されている。 【0043】信号増幅用FETQ1のソースは、接地容量Cs2を介して接地されている。 この信号増幅用FE TQ1のソースには、バイアス電流遮断用FETQ4, Q5の各ドレインが接続されている。 抵抗Rg7,Rg 8は、バイアス電流遮断用FETQ4,Q5の各ゲートと制御端子22,23との間にそれぞれ接続されており、制御端子22,23に印加されるドレインバイアス電流制御電圧CTL3,CTL4をバイアス電流遮断用FETQ4,Q5の各ゲートに与える。 セルフバイアス抵抗Rs1,Rs2は、バイアス電流遮断用FETQ 4,Q5の各ソースと接地との間に接続されている。 【0044】斯かる構成の第2実施形態に係る利得制御高周波増幅回路では、バイアス入力端子18に印加されるバイアス電圧VGGを固定とし、信号増幅用FETQ 1のソース側に接続された抵抗Rs1,Rs2によるセルフバイアス回路でのバイアス電流の安定化を実現しつつセルフバイアス抵抗値をステップ的に変化させることで、ドレインバイアス電流の制御をステップで行うことを可能としている。 利得制御回路部、即ち第1,第2のバイパス回路部12,13の回路動作については第1実施形態の場合と同じであるため、以下に、制御回路部2 1におけるドレインバイアス電流の制御についてのみ、 高利得時、中利得時、低利得(減衰)時に分けて回路動作を説明する。 【0045】高利得時には、制御端子22,23に印加されるドレインバイアス電流制御電圧CTL3,CTL 4をコントロールすることにより、バイアス電流遮断用FETQ4,Q5を共にオンさせる。 このとき、ドレインバイアス電流は、抵抗Rs1,Rs2の並列合成のセルフバイアス抵抗値、即ちRs1・Rs2/(Rs1+ Rs2)で与えられる値に設定される。 【0046】中利得時には、制御端子22,23に印加されるドレインバイアス電流制御電圧CTL3,CTL 4をコントロールすることにより、バイアス電流遮断用FETQ4をオン、FETQ5をオフさせる。 このとき、ドレインバイアス電流は、抵抗Rs1のみのセルフバイアス抵抗値で与えられる値に減じられる。 当然のことながら、Rs1>Rs1・Rs2/(Rs1+Rs 2)である。 【0047】低利得(減衰)時には、制御端子22,2 3に印加されるドレインバイアス電流制御電圧CTL 3,CTL4をコントロールすることにより、バイアス電流遮断用FETQ4,Q5を共にオフさせる。 このとき、セルフバイアス抵抗値は無限大になるため、ドレインバイアス電流は完全に遮断される。 【0048】上述したように、本実施形態に係る利得制御高周波増幅回路では、制御回路部21においてドレインバイアス電流制御電圧CTL3,CTL4をコントロールすることによってドレインバイアス電流の切り替えを、高利得時、中利得時、低利得時に対応してステップ的に行う構成となっているため、バイアス電圧VGGをコントロールする構成の第1実施形態に係る利得制御高周波増幅回路に比較して、ドレインバイアス電流の切り替えを容易に実現することができる。 【0049】なお、本実施形態に係る制御回路部21では、2個のバイアス電流遮断用FETQ4,Q5を用いてドレインバイアス電流の切り替えを高利得時、中利得時、低利得時に対応して3段階で行うとしたが、必ずしも3段階の切り替えに限られるものではなく、バイアス電流遮断用FETの数を増やしてさらに多段階の切り替えを行うようにすることも可能である。 【0050】[第3実施形態]図3は、本発明の第3実施形態に係る半導体集積回路である利得制御高周波増幅回路を示す回路図である。 【0051】本実施形態に係る利得制御高周波増幅回路は、増幅回路部31、第1,第2のバイパス回路部3 2,33および制御回路部34からなり、入力信号RF inが印加される信号入力端子35、出力信号RFou tが導出される信号出力端子36、バイアス電圧VDD 1,VDD2がそれぞれ印加されるバイアス入力端子3 7,38、バイアス電圧VGG1,VGG2がそれぞれ印加されるバイアス入力端子39,40、外部からバイパス制御電圧CTL1,CTL2がそれぞれ印加されるバイパス制御端子41,42および外部からドレインバイアス電流制御電圧CTL3,CTL4がそれぞれ印加される制御端子43,44を有する構成となっている。 【0052】続いて、増幅回路部31、第1,第2のバイパス回路部32,33および制御回路部34の具体的な回路構成について説明する。 なお、図1と同等の機能を持つ回路素子については同一符号を付して示している。 【0053】増幅回路部31は、信号増幅用FETQ 1、バイアス抵抗Rg1およびチョークコイルLbに加えて、FETQ6、バイパス容量Cs3およびバイアス抵抗Rg9を有している。 FETQ6は信号増幅用FE TQ1とカスコード接続されている。 具体的には、FE TQ6のソースが信号増幅用FETQ1のドレインに接続され、FETQ6のドレインから出力を取り出す構成となっている。 【0054】カスコード接続の増幅回路は、1段のFE T増幅回路に比較してより高利得を得ることが可能である。 FETQ6のゲートは、バイパス容量Cs3を介して接地されている。 このFETQ6のゲートバイアス電圧として、バイアス入力端子40に印加されるバイアス電圧VGG2がバイアス抵抗Rg9を介して与えられる。 【0055】信号増幅用FETQ1、バイアス抵抗Rg 1およびチョークコイルLbの接続関係については第1 実施形態に係る増幅回路部11と同じである。 なお、第2実施形態の場合と同様に、制御回路部34が設けられていることから、信号増幅用FETQ1のソースは、制御回路部34の接地容量Cs2を介して接地されている。 【0056】第1のバイパス回路部32については、信号バイパス用FETQ2、バイパス信号強度調整用抵抗Rc1、抵抗Rg2〜Rg4、結合容量Cb1および接地容量Cs1からなる基本的な構成は第1実施形態に係る第1のバイパス回路部12と同じである。 ただし、信号バイパス用FETQ2がM個(Mは1以上の整数)直列に接続された構成となっている。 【0057】すなわち、1段目のFETQ21のドレインが結合容量Cb1を介して信号増幅用FETQ1のゲートに接続され、そのソースが2段目のFETQ22のドレインに、以下各段同様の接続関係となり、最終的に、M−1段目のFETQ2M−1のソースが最終段のFETQ2Mのドレインに接続されている。 そして、これら各段のFETQ21〜FETQ2Mの各ゲートには、バイパス制御端子41に印加されるバイパス制御電圧CTL1が抵抗Rg21〜抵抗Rg2Mを介して与えられる。 【0058】第1のバイパス回路部32における他の回路素子、即ちバイパス信号強度調整用抵抗Rc1、抵抗Rg3,Rg4、結合容量Cb1および接地容量Cs1 の接続関係については、第1実施形態に係る第1のバイパス回路部12の場合と同じである。 【0059】第2のバイパス回路部33についても、信号バイパス用FETQ3、バイパス電力調整用抵抗Rc 2、抵抗Rg5,Rg6および結合容量Cb2からなる基本的な構成は、第1実施形態に係る第2のバイパス回路部13と同じである。 ただし、信号バイパス用FET Q3がN個(Nは1以上の整数)直列に接続された構成となっている。 【0060】すなわち、1段目のFETQ31のドレインが結合容量Cb1を介して信号増幅用FETQ1のゲートに接続され、そのソースが2段目のFETQ32のドレインに、以下各段同様の接続関係となり、最終的に、N−1段目のFETQ3N−1のソースが最終段のFETQ3Nのドレインに接続されている。 そして、これら各段のFETQ31〜FETQ3Nの各ゲートには、バイパス制御端子42に印加されるバイパス制御電圧CTL2が抵抗Rg51〜抵抗Rg5Nを介して与えられる。 【0061】第2のバイパス回路部33における他の回路素子、即ちバイパス電力調整用抵抗Rc2、抵抗Rg 6および結合容量Cb2の接続関係については、第1実施形態に係る第2のバイパス回路部13と同じである。 【0062】斯かる構成の第3実施形態に係る利得制御高周波増幅回路は、信号バイパス用FETQ2,Q3がそれぞれ複数個直列に接続された構成となっている以外は、第2実施形態に係る利得制御高周波増幅回路の構成と同じである。 したがって、利得制御の基本的な動作についても、第2実施形態に係る利得制御高周波増幅回路のそれと同じである。 ただし、本実施形態に係る利得制御高周波増幅回路は、より高周波帯向けに適用する場合に有利となる。 【0063】なぜなら、FETをオフしたときのドレイン-ソース間抵抗は無限大と仮定して差し支えないものの、ドレインとソース間の容量CoffはGaAsFE Tの場合ゲート幅400μm当たりでは0.1pF程度であるため、信号バイパス用FETQ2,Q3が1段では特により高周波用途において無視できず、接地側および出力側へのバイパスFET(Q2,Q3)の遮断時における最大利得低下を招いてしまうからである。 【0064】したがって、本実施形態に係る利得制御高周波増幅回路のように、信号バイパス用FETQ2,Q 3を多段接続した構成を採ることにより、ドレイン-ソース間の総合容量Coffを低減させることができるため、利得低下の悪影響を避けることが可能となる。 なお、信号バイパス用FETQ2,Q3を多段接続する段数M,Nとしてはそれぞれ任意の数を設定可能であり、 また各段数が同じ(M=N)が同じであっても良い。 【0065】[適用例]以上説明した第1〜第3実施形態に係る利得制御高周波増幅回路は、例えばCDMA方式携帯電話装置におけるRFフロントエンド部の利得制御高周波増幅回路(AGCアンプ)を構成するのに用いられる。 図4は、CDMA方式携帯電話装置におけるR Fフロントエンド部の構成の一例を示すブロック図である。 【0066】図4において、アンテナ41で受信された受信波は、送信/受信に共用される帯域振分けフィルタ42を通過し、AGCアンプ43で信号レベルが一定にされた後ミキサ44に供給される。 ミキサ44では、局部発振器45からの局部発振周波数と混合されることによって中間周波(IF)に変換された後、信号強度検出回路46および後段のベースバンドIC(図示せず)に供給される。 【0067】一方、送信側では、前段のベースバンドI Cから供給されるIF信号がミキサ47に供給され、ここで局部発振器48からの局部発振周波数と混合されてRF信号に変換される。 そして、このRF信号は、パワーアンプ49で増幅された後帯域振分けフィルタ42を経てアンテナ41に供給され、このアンテナ41から電波として送信される。 【0068】上記構成のCDMA方式携帯電話装置のR Fフロントエンド部において、受信側のAGCアンプ4 3として、先述した第1〜第3実施形態に係る利得制御高周波増幅回路が用いられる。 また、信号強度検出回路46は、例えばIF信号に基づいて受信入力信号の信号強度を検出し、その強度に応じた制御信号を、バイパス制御電圧CTL1,CTL2やドレインバイアス電流制御電圧CTL3,CTL4としてAGCアンプ43に与える。 【0069】このように、携帯電話などの低消費電流化の要求が厳しい携帯型無線通信装置における受信フロントエンド部において、AGCアンプ43として第1〜第3実施形態に係る利得制御高周波増幅回路を用いることにより、IIP3特性を劣化させない程度に保ちながら利得減衰時の低消費電流化を図ることができるため、消費電流を従来技術に比較して平均的には半分以下へ低減可能である。 したがって、小型バッテリ駆動が必要である携帯端末に適用することで、長時間動作に大きく貢献できることになる。 【0070】なお、上記適用例では、CDMA方式携帯電話装置に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこの適用例に限定されるものではなく、無線通信装置全般に適用することが可能である。 【0071】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、 少なくとも1段の信号増幅用トランジスタを有する半導体集積回路あるいはこれをRFフロントエンド部に用いた無線通信装置において、入力信号の強度に応じて当該入力信号の一部を接地側へバイパスさせる手段と、入力信号の強度に応じて当該入力信号の一部を出力側へバイパスさせる手段とを設けて利得減衰制御を行うことにより、IIP3特性を劣化させない程度に保ちながら利得減衰時の低消費電流化を図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施形態に係る利得制御高周波増幅回路を示す回路図である。 【図2】本発明の第2実施形態に係る利得制御高周波増幅回路を示す回路図である。 【図3】本発明の第3実施形態に係る利得制御高周波増幅回路を示す回路図である。 【図4】CDMA方式携帯電話装置におけるRFフロントエンド部の構成の一例を示すブロック図である。 【図5】従来例に係る利得制御高周波増幅回路を示す回路図である。 【図6】従来例に係る利得制御高周波増幅回路における非利得減衰時の利得およびIIP3のドレインバイアス電流依存性を示す図である。 【図7】IIP3を一定に保持するための利得減衰時におけるドレインバイアス電流と入力信号減衰量との関係を示す図である。 【符号の説明】 11,31…増幅回路部、12,32…第1のバイパス回路部、13,33…第2のバイパス制御部、21,3 4…制御回路部、Q1…信号増幅用FET、Q2,Q2 1〜Q2M…接地側への信号バイパス用FET、Q3, Q31〜Q3N…出力側への信号バイパス用FET |