オーディオアンプおよびオーディオパワーアンプ

申请号 JP2017029215 申请日 2017-02-20 公开(公告)号 JP2018137537A 公开(公告)日 2018-08-30
申请人 オンキヨー株式会社; 发明人 川口 剛; 北川 範匡; 岡 拓也;
摘要 【課題】本発明は、オーディオアンプにおけるバイアス電圧またはバイアス電流を安定化することを目的とする。 【解決手段】第1回路ユニット22は、前段入 力 端子 1に接続された第1エミッタフォロワと、前段入力端子2に接続された第2エミッタフォロワと、第1エミッタフォロワの出力経路および第2エミッタフォロワの出力経路に接続された本体トランジスタQ7と、第1エミッタフォロワの出力経路と直流電圧源E1との間に設けられ、直列に接続された第1抵抗器R16および第2抵抗器R14と、第1抵抗器R16および第2抵抗器R14の直列接続点に接続されたツェナーダイオードD3とを備える。第2回路ユニット24は、第1回路ユニット22に対して相補的な回路構成を有する。一方の回路ユニットにおける第1エミッタフォロワおよび第2エミッタフォロワを構成する各トランジスタのコレクタに至る経路が、他方の回路ユニットにおける直列接続点に接続されている。 【選択図】図2
权利要求

互いに相補的な第1回路ユニットおよび第2回路ユニットを備えるオーディオアンプにおいて、 前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれは、 前記オーディオアンプの第1入端子に接続された第1エミッタフォロワと、 前記オーディオアンプの第2入力端子に接続された第2エミッタフォロワと、 前記第1エミッタフォロワの出力経路にベースが接続され、前記第2エミッタフォロワの出力経路にエミッタが接続され、コレクタから信号が出力される本体トランジスタと、 前記第1エミッタフォロワの出力経路と直流電圧源との間に設けられ、直列に接続された第1抵抗器および第2抵抗器と、 前記第1抵抗器および前記第2抵抗器の直列接続点に接続された定電圧発生器と、を備え、 前記第1回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワおよび前記第2エミッタフォロワを構成する各トランジスタのコレクタに至る経路が、前記第2回路ユニットにおける前記直列接続点に接続され、 前記第2回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワおよび前記第2エミッタフォロワを構成する各トランジスタのコレクタに至る経路が、前記第1回路ユニットにおける前記直列接続点に接続され、 前記第1回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワの出力経路、および、前記第2回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワの出力経路に、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットに対するバイアス設定回路が設けられていることを特徴とするオーディオアンプ。請求項1に記載のオーディオアンプにおいて、 前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれは、 前記第1エミッタフォロワが備えるトランジスタのエミッタに至る経路にエミッタが接続され、前記本体トランジスタのベースに至る経路にコレクタが接続された補助トランジスタと、 前記補助トランジスタのコレクタとベースとの間に接続された第3抵抗器と、を備え、 前記オーディオアンプは、さらに、 前記第1回路ユニットが備える前記補助トランジスタのベースと、前記第2回路ユニットが備える前記補助トランジスタのベースとの間に設けられた第4抵抗器を備え、 前記第4抵抗器と、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれにおける前記補助トランジスタおよび前記第3抵抗器とが、前記バイアス設定回路を構成することを特徴とするオーディオアンプ。請求項1に記載のオーディオアンプにおいて、 前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれは、 前記第1エミッタフォロワが備えるトランジスタのエミッタに至る経路にエミッタが接続され、前記本体トランジスタのベースに至る経路にベースおよびコレクタが接続された補助トランジスタと、 前記第1エミッタフォロワが備えるトランジスタのエミッタに至る経路に設けられたバイアス抵抗器と、を備え、各前記補助トランジスタと、各前記バイアス抵抗器とが前記バイアス設定回路を構成することを特徴とするオーディオアンプ。請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオーディオアンプと、 前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットにおける各前記本体トランジスタのコレクタから引き出された各経路に接続され、前記直流電圧源から電源電力が供給される増幅回路と、 を備えることを特徴とするオーディオパワーアンプ。

说明书全文

本発明は、オーディオアンプおよびオーディオパワーアンプに関し、特に、バイアス電圧またはバイアス電流の安定化に関する。

音響信号を増幅するオーディオアンプが広く用いられている。オーディオアンプが備える各トランジスタには、バイアス電圧またはバイアス電流(以下、これらを総じてバイアスという。)が与えられ、オーディオアンプに音響信号が入されていないときの各トランジスタの状態がバイアスによって定まる。この動作状態は、例えば、ベース、コレクタあるいはエミッタに流れるバイアス電流や、これらの端子間のバイアス電圧によって表される。オーディオアンプに音響信号が入力されると、音響信号が入力されていないときの動作状態を基準として、各トランジスタにおける各端子の電圧および電流が音響信号に応じて変化する。オーディオアンプからは、所定の端子の電圧または電流が、増幅後の音響信号として出力される。

以下の特許文献1および2には、オーディオアンプが記載されている。これらの特許文献に記載されているオーディオアンプでは、増幅用トランジスタTR5およびTR6のベースエミッタ間のバイアス電圧が、一対の入力端子に設けられたエミッタフォロワ用トランジスタTR1〜TR4、バイアス設定用トランジスタTR7およびTR8のそれぞれのベースエミッタ間の電圧によって安定化されている。また、増幅用トランジスタTR5およびTR6のコレクタに流れる電流が、バイアス設定用の定電流源によって制限されない回路が用いられており、増幅後の信号に含まれる歪みが抑制される。

特開2012−109932号公報

特開2012−249206号公報

特許文献1および2に記載されているオーディオアンプは、周波数0から可聴周波数に及ぶ周波数帯で信号を増幅するDCアンプである。DCアンプでは、前段の増幅回路が信号の交流成分のみならず直流成分をも増幅し、後段の電力増幅回路に出力する。電力増幅回路は、前段の増幅回路から出力された直流成分を増幅する。したがって、前段の増幅回路に含まれるトランジスタのバイアスが不安定となり、DCオフセット電圧が発生した場合、電力増幅回路はそのDCオフセット電圧を増幅して出力してしまう。特許文献1および2に記載のオーディオアンプでは、各トランジスタのバイアスを安定化する回路が採用されているものの、直流電圧源の出力電圧の変動等によってバイアスが不安定となることがあった。

本発明は、オーディオアンプにおけるバイアス電圧またはバイアス電流を安定化することを目的とする。

本発明は、互いに相補的な第1回路ユニットおよび第2回路ユニットを備えるオーディオアンプにおいて、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれは、前記オーディオアンプの第1入力端子に接続された第1エミッタフォロワと、前記オーディオアンプの第2入力端子に接続された第2エミッタフォロワと、前記第1エミッタフォロワの出力経路にベースが接続され、前記第2エミッタフォロワの出力経路にエミッタが接続され、コレクタから信号が出力される本体トランジスタと、前記第1エミッタフォロワの出力経路と直流電圧源との間に設けられ、直列に接続された第1抵抗器および第2抵抗器と、前記第1抵抗器および前記第2抵抗器の直列接続点に接続された定電圧発生器と、を備え、前記第1回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワおよび前記第2エミッタフォロワを構成する各トランジスタのコレクタに至る経路が、前記第2回路ユニットにおける前記直列接続点に接続され、前記第2回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワおよび前記第2エミッタフォロワを構成する各トランジスタのコレクタに至る経路が、前記第1回路ユニットにおける前記直列接続点に接続され、前記第1回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワの出力経路、および、前記第2回路ユニットにおける前記第1エミッタフォロワの出力経路に、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットに対するバイアス設定回路が設けられていることを特徴とする。

望ましくは、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれは、前記第1エミッタフォロワが備えるトランジスタのエミッタに至る経路にエミッタが接続され、前記本体トランジスタのベースに至る経路にコレクタが接続された補助トランジスタと、 前記補助トランジスタのコレクタとベースとの間に接続された第3抵抗器と、を備え、前記オーディオアンプは、さらに、前記第1回路ユニットが備える前記補助トランジスタのベースと、前記第2回路ユニットが備える前記補助トランジスタのベースとの間に設けられた第4抵抗器を備え、前記第4抵抗器と、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれにおける前記補助トランジスタおよび前記第3抵抗器とが、前記バイアス設定回路を構成する。

望ましくは、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットのそれぞれは、前記第1エミッタフォロワが備えるトランジスタのエミッタに至る経路にエミッタが接続され、前記本体トランジスタのベースに至る経路にベースおよびコレクタが接続された補助トランジスタと、前記第1エミッタフォロワが備えるトランジスタのエミッタに至る経路に設けられたバイアス抵抗器と、を備え、各前記補助トランジスタと、各前記バイアス抵抗器とが前記バイアス設定回路を構成する。

望ましくは、前記オーディオアンプと、前記第1回路ユニットおよび前記第2回路ユニットにおける各前記本体トランジスタのコレクタから引き出された各経路に接続され、前記直流電圧源から電源電力が供給される増幅回路と、を備える。

本発明によれば、オーディオアンプにおけるバイアス電圧またはバイアス電流を安定化することができる。

本発明の実施形態に係るオーディオパワーアンプの構成を示す図である。

前段回路および後段回路の具体的な構成を示す図である。

実験結果を示す図である。

DCオーディオパワーアンプの変形例を示す図である。

(1)DCオーディオパワーアンプの構成および動作の概要 図1には本発明の実施形態に係るDCオーディオパワーアンプの構成が示されている。DCオーディオパワーアンプは、前段回路10、後段回路12、電力増幅回路14および負帰還回路18を備えている。電力増幅回路14には負荷としてスピーカ16が接続されている。DCオーディオパワーアンプは、周波数0から可聴周波数までの周波数帯で信号を増幅する。

前段回路10は、前段入力端子1から入力された音響信号を、位相を反転して増幅して後段入力端子3および後段入力端子4に出力する。また、前段回路10は前段入力端子2から入力された音響信号を、同位相で増幅して後段入力端子3および後段入力端子4に出力する。

後段回路12は後段入力端子3から入力された音響信号を、位相を反転して増幅し、電力増幅入力端子5に出力する。また、後段入力端子4から入力された音響信号を、位相を反転して増幅し、電力増幅入力端子6に出力する。

電力増幅回路14は、電力増幅入力端子5に入力された音響信号の電圧が正極であるときに、電力増幅回路14からスピーカ16に流出する電流を流し、電力増幅入力端子6に入力された音響信号の電圧が負極であるときに、スピーカ16から電力増幅回路14に流入する電流を流す。

電力増幅回路14がA級またはAB級で動作する増幅回路である場合には、電力増幅回路14は、電力増幅入力端子6に入力される音響信号の電圧が正極であるときにも、電力増幅回路14からスピーカ16に流出する電流を流し、電力増幅入力端子5に入力された音響信号の電圧が負極であるときにも、スピーカ16から電力増幅回路14に流入する電流を流す。

このような構成によって、前段入力端子1に入力された音響信号と同位相の音響信号が電力増幅回路14からスピーカ16に出力され、前段入力端子2に入力された音響信号と逆位相の音響信号が電力増幅回路14からスピーカ16に出力される。

スピーカ16と前段入力端子2との間には負帰還回路18が接続されている。負帰還回路18は、スピーカ16に出力される電圧を所定の割合で分圧し、前段入力端子2に出力する。これによって、スピーカ16に出力される電圧の一部が前段回路10に逆位相で帰還される。このような負帰還回路18を設けない場合において、前段入力端子1からスピーカ16に至るまでの利得が十分大きい場合には、負帰還回路18が設けられたときの利得は、スピーカ16に出力される電圧を負帰還する割合によって定まる。

前段入力端子1に音響信号が入力されると、前段回路10、後段回路12および電力増幅回路14は、負帰還回路18によって定まる利得で音響信号を増幅し、スピーカ16に音響信号を出力する。

(2)前段回路の構成 図2には、前段回路10および後段回路12の具体的な構成が示されている。前段回路10は、互いに相補的な第1回路ユニット22および第2回路ユニット24を備えている。2つの回路が互いに相補的であるとは、構造の上で対称な位置に現れるバイアス電圧が同一値かつ逆極性であり、構造の上で対称な経路に流れるバイアス電流が同一値かつ逆向きであるような関係をいう。相補的な2つの回路が接続される各節点の電位は理想的には0である。互いに相補的な回路構成を実現するため、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24には、互いに相補的な半導体素子および同一抵抗値の抵抗器(抵抗素子)が用いられている。

第1回路ユニット22は、トランジスタQ1、Q3、Q5、Q7、抵抗器R1、R11、R14、R16、およびツェナーダイオードD3を備えている。第2回路ユニット24は、トランジスタQ2、Q4、Q6、Q8、抵抗器R2、R13、R15、R17、およびツェナーダイオードD4を備えている。トランジスタQ1、Q4、Q5およびQ8はPNP型であり、トランジスタQ2、Q3、Q6およびQ7はNPN型である。

第1回路ユニット22の回路構成について説明する。トランジスタQ1のベースは前段入力端子1に接続されている。トランジスタQ1のエミッタは、トランジスタQ3のエミッタに接続されている。トランジスタQ3のコレクタは、トランジスタQ7のベースに接続されている。トランジスタQ3のコレクタとベースとの間には抵抗器R11が接続されている。

トランジスタQ5のベースは前段入力端子2に接続されている。トランジスタQ5のエミッタには、抵抗器R1の一端が接続され他端はトランジスタQ7のエミッタに接続されている。トランジスタQ7のコレクタには後述する第3回路ユニット26のバイアスダイオードD1のカソードが接続され、バイアスダイオードD1のアノードと直流電圧源E1の正極との間には後述する第3回路ユニット26の抵抗器R3が接続されている。

直流電圧源E1の負極は接地導体に接続されている。直流電圧源E1の正極とトランジスタQ7のベースとの間には、直列接続された抵抗器R16およびR14が接続されている。抵抗器R16およびR14の直列接続点にはツェナーダイオードD3のカソードが接続され、ツェナーダイオードD3のアノードは接地導体に接続されている。

第2回路ユニット24の回路構成について説明する。トランジスタQ2のベースは前段入力端子1に接続されている。トランジスタQ2のエミッタは、トランジスタQ4のエミッタに接続されている。トランジスタQ4のコレクタは、トランジスタQ8のベースに接続されている。トランジスタQ4のコレクタとベースとの間には抵抗器R13が接続されている。

トランジスタQ6のベースは前段入力端子2に接続されている。トランジスタQ6のエミッタには、抵抗器R2の一端が接続され他端はトランジスタQ8のエミッタに接続されている。トランジスタQ8のコレクタには後述する第4回路ユニット28のバイアスダイオードD2のアノードが接続され、バイアスダイオードD2のカソードと直流電圧源E2の負極との間には後述する第4回路ユニット28の抵抗器R4が接続されている。

直流電圧源E2の正極は接地導体に接続されている。直流電圧源E2の負極とトランジスタQ8のベースとの間には、直列接続された抵抗器R17およびR15が接続されている。抵抗器R17およびR15の直列接続点にはツェナーダイオードD4のアノードが接続され、ツェナーダイオードD4のカソードは接地導体に接続されている。

第1回路ユニット22と第2回路ユニット24との接続について説明する。第1回路ユニット22が備えるトランジスタQ3のベースと、第2回路ユニット24が備えるトランジスタQ4のベースとの間には抵抗器R12が接続されている。第1回路ユニット22が備えるトランジスタQ1およびQ5のそれぞれのコレクタは、第2回路ユニット24が備えるツェナーダイオードD4のアノードに接続されている。第2回路ユニット24が備えるトランジスタQ2およびQ6のそれぞれのコレクタは、第1回路ユニット22が備えるツェナーダイオードD3のカソードに接続されている。

第1回路ユニット22および第2回路ユニット24の相補性が完全であれば、前段入力端子1および前段入力端子2に現れるDCオフセット電圧は0となる。しかし、実際には、各回路素子の電気的特性にばらつきがあるため、DCオフセット電圧は0でない値となることが多い。そこで、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24における抵抗器R1およびR2の組、抵抗器R11およびR13の組等、互いに相補的な関係にある抵抗器の抵抗値に相違を持たせることで相補性を調整し、DCオフセット電圧を0に近付け、あるいは0に一致させてもよい。

(3)前段回路が備える各トランジスタのバイアス 前段回路10が備える各トランジスタのバイアスについて説明する。以下の説明では、各抵抗器に付された符号は各抵抗器の抵抗値を表すものとする。各トランジスタのバイアスは、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24が互いに相補的であること、各トランジスタのベースエミッタ間電圧が一般的な値であること、ツェナーダイオードD3およびD4に現れる端子間電圧が一定であること等の条件下で定まる。ここでは、各トランジスタのバイアスとして、コレクタ電流、エミッタ電流およびベース電流について説明する。また、PNPトランジスタについてはエミッタベース間電圧と称されることもあるが、表現を簡略化するため、ここではベースエミッタ間電圧に表現を統一する。

最初にトランジスタQ1〜Q4のそれぞれのベースエミッタ間電圧に着目する。トランジスタQ3のベースと、トランジスタQ4のベースとの間の電圧Vaは、トランジスタQ3、Q1、Q2およびQ4のベースエミッタ間電圧を加算合計したものとなる。すなわち、トランジスタQ4のベースを基準としたエミッタの電圧、トランジスタQ2のエミッタを基準としたベースの電圧、トランジスタQ1のベースを基準としたエミッタの電圧、および、トランジスタQ3のエミッタを基準としたベースの電圧を加算合計したものが電圧Vaである。

一般に、トランジスタのベースエミッタ間電圧Vbeは0.6V〜0.7Vであり変化が小さい。これによって抵抗器R12には、Ia=Va/R12=4・Vbe/R12の電流が流れる。すなわち、抵抗器R12に流れる電流Iaは(数1)に従って定まる。

(数1)Ia=4・Vbe/R12

トランジスタQ3およびQ4のベースに流れる電流は微小であるため、抵抗器R11およびR13には、抵抗器R12に流れる電流Iaとほぼ同一値の電流が流れる。したがって、抵抗器R11、R12およびR13の直列接続部分の電圧降下が定まり、トランジスタQ7のベースとトランジスタQ8のベースとの間の電圧Vbが定まる。すなわち、電圧Vbは(数2)に従って定まる。

(数2)Vb=(R11+R12+R13)・Ia =4・Vbe・(R11+R12+R13)/R12

このように、トランジスタQ1〜Q4、抵抗器R11、R12およびR13は、トランジスタQ7のベースとトランジスタQ8のベースとの間の電圧Vbを安定化させる電圧安定化回路を構成している。

次にトランジスタQ5〜Q8のそれぞれのベースエミッタ間電圧に着目する。トランジスタQ7、Q5、Q6およびQ8のそれぞれのベースエミッタ間電圧もまた、0.6V〜0.7Vであり変化が小さい。さらに、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24が互いに相補的であり、前段入力端子2の電位(接地導体を基準とした電圧)が0であるとすれば、抵抗器R1およびR2のそれぞれに印加される電圧Vrは等しくなり、Vr=Vb/2−2・Vbeである。すなわち、抵抗器R1およびR2のそれぞれに印加される電圧Vrは(数3)に従って定まる。

(数3)Vr=Vb/2−2・Vbe

ここで、電圧Vbは(数2)に従って定まる値である。抵抗器R1およびR2の抵抗値は等しいため、これらに流れる電流は等しく、Vr/R1=Vr/R2である。この電流は、トランジスタQ5〜Q8のエミッタ電流Ieに等しい。

したがって、トランジスタQ5〜Q8のエミッタ電流Ieは(数4)に従って定まる。

(数4)Ie=(Vb/2−2・Vbe)/R1=(Vb/2−2・Vbe)/R2

なお、トランジスタQ5〜Q8のコレクタ電流Icは、それぞれのエミッタ電流Ieにほぼ等しい。すなわち、Ic=Ieと考えてよい。

次に、ツェナーダイオードD3およびD4に現れる端子間電圧に着目し、トランジスタQ1〜Q4のコレクタ電流およびエミッタ電流について説明する。ツェナーダイオードD3には、直流電圧源E1の正極から抵抗器R16を介して逆方向バイアス電圧が与えられる。ダイオードD3は定電圧発生器として機能し、端子間にカソード側を正として一定の電圧Vz3が現れる。ツェナーダイオードD4には、直流電圧源E2の負極から抵抗器17を介して逆方向バイアス電圧が与えられる。ダイオードD4は定電圧発生器として機能し、端子間にアノード側を負として一定の電圧Vz4が現れる。

第1回路ユニット22および第2回路ユニット24は互いに相補的であるため、トランジスタQ7のベースの電位、すなわち、トランジスタQ3のコレクタの電位はVb/2である。ツェナーダイオードD3のカソードの電位はVz3であるため、ツェナーダイオードD3のカソードとトランジスタQ3のコレクタとの間に接続された抵抗R14に流れる電流I14が(数5)に従って定まる。

(数5)I14=(Vz3−Vb/2)/R14

抵抗器R14に流れる電流は、トランジスタQ3のコレクタおよび抵抗器R11に分流する。そのため、トランジスタQ3のコレクタ電流Ic3は、(数6)に示されるように、電流I14から上記の電流Iaを引いた値となる。

(数6)Ic3=I14−Ia

トランジスタQ3およびQ1のエミッタ電流、およびトランジスタQ1のコレクタ電流は、トランジスタQ3のコレクタ電流Ic3にほぼ等しい。したがって、トランジスタQ1およびQ3のコレクタ電流およびエミッタ電流は、(数6)に従って定まると考えてよい。

第1回路ユニット22および第2回路ユニット24は互いに相補的であるため、トランジスタQ4のコレクタ電流Ic4は、コレクタ電流Ic3と同様の原理によって定まる。すなわち、抵抗R15に流れる電流I15は(数7)に従って定まり、コレクタ電流Ic4は(数8)に従って定まる。

(数7)I15=(Vz4−Vb/2)/R15

(数8)Ic4=I15−Ia

また、トランジスタQ2およびQ4のコレクタ電流およびエミッタ電流は、(数8)に従って定まると考えてよい。

なお、各トランジスタQ1〜Q8のベース電流は、各トランジスタのコレクタ電流を、各トランジスタに固有の電流増幅率hfeで除した値となる。

このように、トランジスタQ1〜Q8のバイアスは、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24が互いに相補的であるという条件の下で、各トランジスタのベースエミッタ間電圧Vbe(=0.6V〜0.7V)と、ツェナーダイオードD3およびD4に現れる端子間電圧によって定まっている。したがって、トランジスタQ1〜Q8のバイアスは、直流電圧源E1およびE2の出力電圧の変動による影響を受け難い。

なお、直流電圧源E1およびE2の出力電圧の変動に応じて、トランジスタQ7およびQ8のコレクタの電位が変動するが、これらのコレクタ電位の変動が、前段入力端子1および前段入力端子2に現れるDCオフセット電圧に与える影響は小さい。その理由は、トランジスタQ7およびQ8のコレクタ電位が変動したとしても、各トランジスタのベースエミッタ間電圧Vbeと、ツェナーダイオードD3およびD4に現れる端子間電圧によってトランジスタQ1〜Q8のバイアスが定まるためである。

(4)前段回路の増幅動作 第1回路ユニット22による増幅動作について説明する。トランジスタQ1は、コレクタが交流的に接地されたエミッタフォロワを構成する。後述のようにトランジスタQ3のコレクタエミッタ間は交流的に短絡されていると考えてよく、トランジスタQ1のエミッタには抵抗器R14およびトランジスタQ7が接続されているといえる。ここで、交流的に接地または短絡されているとは、音響信号に応じて電流が変動したとしても、電位または端子間電圧が変動しないことをいう。

前段入力端子1からトランジスタQ1のベースに入力された音響信号は、トランジスタQ1のエミッタから抵抗器R14およびトランジスタQ7のベースに出力される。抵抗器R14とツェナーダイオードD3との接続点は交流的に接地されており、抵抗器R14に生じる電圧に応じてトランジスタQ7のベースに音響信号が伝達される。

トランジスタQ7のコレクタに接続されたバイアスダイオードD1は順方向バイアス状態であるため、交流的に短絡されていると考えてよく、トランジスタQ7のコレクタには抵抗器R3とトランジスタQ9のベースが接続されているといえる。

トランジスタQ7は、ベースから入力された音響信号に応じて、抵抗器R3およびトランジスタQ9のベースに増幅後の音響信号を出力する。すなわち、抵抗器R3と直流電圧源E1との接続点は交流的に接地されており、抵抗器R3に生じる電圧に応じてトランジスタQ9のベースに音響信号が伝達される。

トランジスタQ5は、トランジスタQ1と同様、コレクタが交流的に接地されたエミッタフォロワを構成する。トランジスタQ5のエミッタには、抵抗器R1を介してトランジスタQ7のエミッタが接続されている。トランジスタQ5がエミッタフォロワを構成しているため、抵抗器R1からトランジスタQ5側を見たインピーダンスは小さい。したがって、トランジスタQ7は、トランジスタQ1が構成するエミッタフォロワに対し、エミッタと接地導体との間に抵抗器R1が挿入されたエミッタ接地増幅回路を構成する。そのため、前段入力端子1に入力されエミッタフォロワによって伝達された音響信号は、このエミッタ接地増幅回路によって位相が反転された上で増幅され、トランジスタQ9のベースに音響信号が伝達される。

前段入力端子2からトランジスタQ5のベースに入力された音響信号は、抵抗器R1を介してトランジスタQ7のエミッタに出力される。トランジスタQ7は、エミッタから入力された音響信号に応じて、抵抗器R3およびトランジスタQ9のベースに増幅後の音響信号を出力する。抵抗器R3に生じる電圧に応じてトランジスタQ9のベースに音響信号が伝達される。

トランジスタQ1はエミッタフォロワを構成しているため、トランジスタQ7からトランジスタQ1側を見たインピーダンスは小さい。したがって、トランジスタQ7は、トランジスタQ5が構成するエミッタフォロワに対し、ベース接地増幅回路を構成する。そのため、前段入力端子2に入力されエミッタフォロワによって伝達された音響信号は、このベース接地増幅回路によって同位相で増幅され、トランジスタQ9のベースに音響信号が伝達される。

次に、第2回路ユニット24による増幅動作について説明する。第2回路ユニット24は第1回路ユニット22に対して相補的である。そのため、前段入力端子1および前段入力端子2に入力された音響信号に対して第1回路ユニット22と同様の増幅動作をし、増幅後の音響信号をトランジスタQ10のベースに出力する。

前段入力端子1からトランジスタQ2のベースに入力された音響信号は、トランジスタQ2のエミッタから抵抗器R15およびトランジスタQ8のベースに出力され、抵抗器R15に生じる電圧に応じてトランジスタQ8のベースに音響信号が伝達される。前段入力端子2からトランジスタQ6のベースに入力された音響信号は、抵抗器R2を介してトランジスタQ8のエミッタに出力される。

トランジスタQ8は、各エミッタフォロワによって伝達されベースおよびエミッタに入力された音響信号に応じて、抵抗器R4およびトランジスタQ10に音響信号を出力する。抵抗器R4に生じる電圧に応じてトランジスタQ10のベースに音響信号が伝達される。

トランジスタQ8は、トランジスタQ2が構成するエミッタフォロワに対してエミッタ接地増幅回路を構成するため、前段入力端子1に入力されエミッタフォロワによって伝達された音響信号は、位相が反転された上で増幅され、トランジスタQ10のベースに音響信号が伝達される。

また、トランジスタQ8は、トランジスタQ6が構成するエミッタフォロワに対してベース接地増幅回路を構成するため、前段入力端子2に入力された音響信号は、同位相で増幅され、トランジスタQ10のベースに音響信号が伝達される。

このように、トランジスタQ1およびQ2は、前段入力端子1の入力インピーダンスを大きくするためのエミッタフォロワを構成し、トランジスタQ5およびQ6は、前段入力端子2の入力インピーダンスを大きくするためのエミッタフォロワを構成する。トランジスタQ7およびQ8は、前段入力端子1から入力された音響信号を位相を反転した上で増幅し、前段入力端子2から入力された音響信号を同位相で増幅する本体トランジスタとしての機能を有する。

トランジスタQ3およびQ4はバイアス設定用の補助トランジスタであり、これらのコレクタエミッタ間は交流的に短絡されていると考えてよい。前段入力端子1から入力された音響信号に応じて、トランジスタQ1およびQ2は、トランジスタQ3およびQ4のエミッタに同振幅同位相の音響信号を出力する。トランジスタQ3およびQ4のベースは抵抗器R12によって接続されているが、トランジスタQ3およびQ4のエミッタにおける音響信号が同振幅同位相であるため、抵抗器R12の両端には、音響信号に基づく電圧は現れない。したがって、トランジスタQ3およびQ4のベースエミッタ間およびコレクタエミッタ間には、音響信号に応じて変化する電圧は現れないため、これらのコレクタエミッタ間は、音響信号に対して短絡、すなわち、交流的に短絡としてよい。

このように、トランジスタQ1が構成するエミッタフォロワの出力経路と、トランジスタQ2が構成するエミッタフォロワの出力経路には、音響信号に与える影響が小さいバイアス設定回路が設けられている。このバイアス設定回路は、トランジスタQ3、抵抗器R11、抵抗器R12、抵抗器R13およびトランジスタQ4を備え、トランジスタQ1およびQ4と共に、上述の電圧安定化回路を構成する。

(5)後段回路の構成 後段回路12は、互いに相補的な第3回路ユニット26および第4回路ユニット28を備えている。第3回路ユニット26は、トランジスタQ9、Q11、抵抗器R3、R5、R7およびR9、およびバイアスダイオードD1を備えている。第4回路ユニット28は、トランジスタQ10、Q12、抵抗器R4、R6、R8、およびR10、およびバイアスダイオードD2を備えている。トランジスタQ9およびQ11はPNP型であり、トランジスタQ10およびQ12はNPN型である。なお、後段回路12の具体的構成は、図示する回路構成に限られるものではない。

第3回路ユニット26の回路構成について説明する。トランジスタQ9のベースは後段入力端子3をなす。トランジスタQ9のベースは、第1回路ユニット22が備えるトランジスタQ7のコレクタに接続されている。トランジスタQ9のエミッタと直流電圧源E1の正極との間には抵抗器R5が接続されている。トランジスタQ9のコレクタは接地導体に接続されている。トランジスタQ11のベースはトランジスタQ9のエミッタに接続されている。トランジスタQ11のエミッタと直流電圧源E1の正極との間には、抵抗器R7が接続されている。トランジスタQ11のコレクタと接地導体との間には、抵抗器R9が接続されている。

第4回路ユニット28の回路構成について説明する。トランジスタQ10のベースは後段入力端子4をなす。トランジスタQ10のベースは、第2回路ユニット24が備えるトランジスタQ8のコレクタに接続されている。トランジスタQ10のエミッタと直流電圧源E2の負極との間には、抵抗器R6が接続されている。トランジスタQ10のコレクタは接地導体に接続されている。トランジスタQ12のベースはトランジスタQ10のエミッタに接続されている。トランジスタQ12のエミッタと直流電圧源E2の負極との間には抵抗器R8が接続されている。トランジスタQ12のコレクタと接地導体との間には、抵抗器R10が接続されている。

第3回路ユニット26および第4回路ユニット28では、直流電圧源E1の出力電圧、直流電圧源E2の出力電圧、トランジスタQ9〜Q12のそれぞれのベースエミッタ間電圧、ダイオードD1およびD2の順方向電圧が所定値を有する。そのため、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24が備える各トランジスタのバイアスと共に、第3回路ユニット26および第4回路ユニット28が備える各トランジスタのバイアスが定まる。

(6)後段回路の増幅動作 第3回路ユニット26の増幅動作について説明する。トランジスタQ9は、ベースに入力された音響信号に応じた電流を抵抗器R5に流す。抵抗器R5に現れた電圧に応じて音響信号がトランジスタQ11のベースに伝達される。

トランジスタQ11は、ベースに伝達された音響信号に応じた電流を抵抗器R7および抵抗器R9に流す。抵抗器R9に現れた電圧に応じて音響信号が第3回路ユニット26から出力される。

トランジスタQ9はエミッタフォロワを構成し、トランジスタQ11はエミッタと直流電圧源E1(音響信号に対する接地導体)との間に抵抗器R7が接続されたエミッタ接地増幅回路を構成する。したがって、第3回路ユニット26は、エミッタフォロワとエミッタ接地増幅回路とを縦続接続したものとなり、後段入力端子3に入力された音響信号は、位相が反転された上で増幅され、第3回路ユニット26から出力される。

第4回路ユニット28は第3回路ユニット26に対して相補的である。そのため、第3回路ユニット26と同様の増幅動作をし、増幅後の音響信号を第4回路ユニット28から出力する。すなわち、トランジスタQ10はエミッタフォロワを構成し、トランジスタQ12はエミッタと音響信号に対する接地導体との間に抵抗器R8が接続されたエミッタ接地増幅回路を構成する。したがって、第4回路ユニット28は、エミッタフォロワとエミッタ接地増幅回路とを縦続接続したものとなり、後段入力端子4に入力された音響信号は、位相が反転された上で増幅され、第4回路ユニット28から出力される。

(7)電力増幅回路 電力増幅回路14には、直流電圧源E1およびE2から電源電力が供給されている。第3回路ユニット26から出力された音響信号は、電力増幅入力端子5に入力される。第4回路ユニット28から出力された音響信号は、電力増幅入力端子6に入力される。電力増幅回路14は、各電力増幅入力端子に入力された音響信号に応じてスピーカ16に電流を流す。

上述のように、前段入力端子1から入力された音響信号は、同位相でスピーカ16に出力され、前段入力端子2から入力された音響信号は、逆位相でスピーカ16に出力される。スピーカ16と前段入力端子2との間には負帰還回路18が接続されており、前段入力端子2に入力される信号と、スピーカ16に出力される信号の位相関係により、スピーカ16に出力される電圧の一部は前段回路10に負帰還される。

(8)効果 一般に、オーディオパワーアンプでは直流電圧源に安定化電源回路が用いられない。すなわち、商用電源からの交流電圧がトランスによって降圧され、ダイオードによって整流され、レギュレータICが用いられずに、コンデンサよって平滑された電圧が直流電圧源として用いられることが多い。

図2に示されるDCオーディオパワーアンプにおいて安定化電源回路を用いない場合、直流電圧源E1およびE2に大電流が流れることによって、直流電圧源E1およびE2の出力電圧が低下することがある。

上述のように本実施形態に係るDCオーディオパワーアンプでは、トランジスタQ1〜Q8のバイアス電流、ベース電位およびエミッタ電位は、直流電圧源E1およびE2の出力電圧の変動に起因する変動が小さい。これによって、前段入力端子1および前段入力端子2に現れるDCオフセット電圧の変動が抑制され、ひいては、後段回路12および電力増幅回路14で増幅され、電力増幅回路14から出力されるDCオフセット電圧の変動も抑制される。DCアンプは、周波数0から可聴周波数までの周波数帯で信号を増幅するため、前段の増幅回路で発生したDCオフセット電圧は、後段の増幅回路によって増幅されスピーカに出力されてしまう。本実施形態によれば、前段回路10でDCオフセット電圧の変動を抑制することで、後段側に現れるDCオフセット電圧の変動が抑制される。

(9)実験結果 図3には、直流電圧源E1およびE2の出力電圧と、スピーカが接続される出力端子に現れるDCオフセット電圧との関係を示したものである。直流電圧源E1およびE2の出力電圧は等しいものとしている。横軸は、直流電圧源E1およびE2の出力電圧を示し、縦軸は、出力端子に現れるDCオフセット電圧を示している。破線で結ばれた測定点は、特許文献2に記載の技術を用いたDCオーディオパワーアンプについての実験結果を示し、実線で結ばれた測定点は、本実施形態に係るDCオーディオパワーアンプについての実験結果を示している。

(10)バイアス設定回路の変形例 図4には、DCオーディオパワーアンプの変形例が示されている。このDCオーディオパワーアンプは、図2におけるトランジスタQ3、抵抗器R11、R12、R13およびトランジスタQ4によって構成されるバイアス設定回路を変形したものである。

トランジスタQ1のエミッタとトランジスタQ3のエミッタとの間には、バイアス抵抗器R18が接続されている。トランジスタQ3のコレクタはベースに接続されている。トランジスタQ3のベースは、トランジスタQ7のベースおよび抵抗器R14の一端に接続されている。

同様に、トランジスタQ2のエミッタとトランジスタQ4のエミッタとの間には、バイアス抵抗器R19が接続されている。トランジスタQ4のコレクタはベースに接続されている。トランジスタQ4のベースは、トランジスタQ8のベースおよび抵抗器R15の一端に接続されている。

トランジスタQ3のベースと、トランジスタQ4のベースとの間の電圧V34は、次のように定まる。すなわち、前段入力端子1の電位を0とすれば、トランジスタQ1のベースエミッタ間電圧、バイアス抵抗器R18の端子間電圧、トランジスタQ3のベースエミッタ間電圧、および抵抗器R14の端子間電圧を合計した電圧は、ツェナーダイオードD3の端子間電圧Vz3に等しい。したがって、次の(数9)が成立し、これをI14について解くことで(数10)が得られる。

(数9)Vz3=(R14+R18)・I14+2・Vbe

(数10)I14=(Vz3−2・Vbe)/(R14+R18)

すなわち、抵抗器R14およびR18の各抵抗値を定めることで、(数10)に従い、トランジスタQ1およびQ3のコレクタ電流およびエミッタ電流が定まる。

また、トランジスタQ3のベース電位は、ツェナーダイオードD3の端子間電圧Vz3からR14の端子間電圧R14・I14を引いたものである。したがって、トランジスタQ3のベース電位Vb3が(数11)に従って定まる。

(数11)Vb3=Vz3−R14・I14 =(R18・Vz3+2・R14・Vbe)/(R14+R18)

同様に、トランジスタQ4のベース電位Vb4が(数12)に従って定まる。

(数12)Vb4=−(R19・Vz4+2・R15・Vbe)/(R15+R19)

トランジスタQ3のベースと、トランジスタQ4のベースとの間の電圧V34は、(数11)から(数12)を減算することで求まる。

(数13)V34=(R18・Vz3+2・R14・Vbe)/(R14+R18) +(R19・Vz4+2・R15・Vbe)/(R15+R19) =2・(R18・Vz3+2・R14・Vbe)/ (R14+R18) =2・(R19・Vz4+2・R15・Vbe)/ (R15+R19)

したがって、抵抗器R14、R18、R15およびR19の各抵抗値が定まっていれば、トランジスタQ3のベースと、トランジスタQ4のベースとの間の電圧V34が定まる。さらに、このV34を(数4)のVbに代入した式に従い、トランジスタQ5〜Q8のコレクタ電流およびエミッタ電流が定まる。

このように、トランジスタQ3、抵抗器R18、トランジスタQ1、トランジスタQ2、抵抗器R19、およびトランジスタQ4は、電圧V34を安定化させる電圧安定化回路を構成している。トランジスタQ3とトランジスタQ7の温度特性、トランジスタQ1とトランジスタQ5の温度特性、トランジスタQ2とトランジスタQ6の温度特性、およびトランジスタQ4とトランジスタQ8の温度特性を近似させることで、温度変化に対する電圧V34の変動が抑制される。

なお、温度特性の変動が問題とならない場合、トランジスタQ3およびトランジスタQ4をダイオードに置き換えてもよい。この場合、トランジスタQ7のベースの側をアノードとして、トランジスタQ7のベースと抵抗器R18との間にダイオードが挿入され、トランジスタQ8のベースの側をカソードとして、トランジスタQ8のベースと抵抗器R19との間にダイオードが挿入される。

次に、音響信号に対する動作について説明する。トランジスタQ3およびQ4は、コレクタエミッタ間が、順方向バイアス状態のダイオードと同様の電圧電流特性を有している。したがって、トランジスタQ3およびQ4のコレクタエミッタ間は、音響信号に対して短絡と扱ってもよい。

音響信号に対しては、トランジスタQ1が構成するエミッタフォロワの負荷は、抵抗器R14およびトランジスタQ7に抵抗器R18がシリーズ接続されたものになる。同様に、トランジスタQ2が構成するエミッタフォロワの負荷は、抵抗器R15およびトランジスタQ8に抵抗器R19がシリーズ接続されたものになる。

(11)その他の変形例 上記では、前段回路10における定電圧発生器として、ツェナーダイオードを用いた例について説明した。定電圧発生器としては、ツェナーダイオードに代えて直流電圧源やバッテリが用いられてもよい。この直流電圧源は、商用電源からの交流電圧をトランスによって降圧し、ダイオードによって整流し、さらにレギュレータICによって安定化して出力するものであってもよい。

また、前段回路10より後段は、必ずしもスピーカを接続するための回路でなくてもよい。例えば、携帯電話等においてアナログ信号を増幅する汎用のアンプとして前段回路10が用いられてもよい。

上記では前段回路10より後段の回路を、後段回路12および電力増幅回路14の2段構成とした。このような構成に代えて、コンプリメンタリ・シングルエンド・プッシュプル増幅回路が前段回路10よりも後段に設けられてもよい。すなわち、同位相信号を入力する2つの端子からの入力信号に対し、シングルモード(不平衡モード)で信号を出力する増幅回路が設けられてもよい。

上記では、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24が互いに相補的であることを条件として回路動作が示された。各実施形態では、第1回路ユニット22および第2回路ユニット24における抵抗器R1およびR2の組、抵抗器R11およびR13の組等、互いに相補的な関係にある抵抗器の値に相違を持たせることで相補性を調整し、DCオフセット電圧を調整してもよい。

1,2 前段入力端子、3,4 後段入力端子、5,6 電力増幅入力端子、10 前段回路、12 後段回路、14 電力増幅回路、16 スピーカ、18 負帰還回路、22 第1回路ユニット、24 第2回路ユニット、26 第3回路ユニット、28 第4回路ユニット。

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