【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はCRTを含む表示装置に関する。 【0002】 【従来の技術】図4に従来の一般的なCRT表示装置の構成を示す。 同図において、14はCRT、2はカソード、3はG1電極、4はG2電極、6はG3電極、7はアノード、9はビデオ回路、15はフライバックトランス(FBT)、16は可変抵抗である。 G1電極、G2 電極、G3電極は、カソードからの電子の引き出し、プリフォーカシング等を行うために電子銃内に配置される円筒状の電極である。 G3電極以降に配置されるフォーカス電極等は、説明を簡単にするため図示を省略している。 【0003】図4の装置の動作を説明する。 映像信号はビデオ回路9で増幅され、カソード2に与えられる。 アノード7には、不図示の水平偏向出力回路で生成される水平帰線パルスをFBT15により昇圧し整流して作り出された約25kVの高圧が印加されている。 G2電極4には、この高圧を可変抵抗16で分圧して得られる約700V〜1000Vの電圧が印加されている。 G2電極4に流れる電流はごく僅かであるため、高圧を分圧するための抵抗16は100MΩ程度の抵抗値を有する。 G2電極4に印加する電圧を調整することにより、スクリーン調整と呼ばれる、電子がアノード側に流れ、スクリーンに当たり発光が開始される点の粗調整を行うことができる。 【0004】CRT表示装置には、通常、ブライトネスを調整する機能及びコントラストを調整する機能が備えられている。 ブライトネス調整機能は、映像の黒レベルとスクリーンの光り始める点を使用者の好みに合わせることを可能にする機能である。 このブライトネス調整機能は、通常、カソードに与えるビデオ信号の黒バイアス電圧の値を変化させることにより得られる。 また、コントラスト調整機能は、画面の最も暗い部分と最も明るい部分の輝度の比を使用者の好みに合わせることを可能にする機能である。 このコントラスト調整機能は、通常、 カソードに与えるビデオ信号の振幅を変化させることにより得られる。 【0005】一方、CRT表示装置に対する輝度及び解像度の向上の要求が近年高まっているが、特開平11− 224618号公報にはこのような要求に応える高輝度・高解像度のCRT(以下Hi−Gm管という)が開示されている。 このHi−Gm管は、G2電極とG3電極との間に新たに変調用のGm電極を配置した電子銃を使用することを特徴としている。 【0006】図5は、Hi−Gm管に用いられる電子銃の構成を示している。 同図において、17はG1電極、 18はG2電極、19はG3電極、20はカソード、2 1はカソードの表面に設けられた電子放射物質、22はGm電極である。 G3電極以降に配置される他のフォーカス電極等の構成は従来の電子銃と同じである。 【0007】図6は、Hi−Gm管の電子銃内のカソード近傍の電位分布を示すグラフである。 このグラフにおいて、横軸はカソード面からの距離(mm)、縦軸は電位(V)をそれぞれ表し、曲線23は、カソード近傍の回転軸対称の電位分布の様子を示している。 また、24 で示す矢印は、カソード面から約0.5mmの距離にあるGm電極22の存在範囲を示している。 図6では、例えば、G1電極には0V、G2電極には500V、G3 電極には5.5KV、Gm電極には80V、アノードには25KVの高圧がそれぞれ印加されている。 【0008】Gm電極22の電位は80Vに設定されており、Gm電極22の存在範囲24内に電位が極小となる位置25が存在する。 破線で示したカソード20の電位がこの位置25の電位より低ければ、電子は位置25 を通過してスクリーンに向かうが、高ければ電子は位置25通過できずスクリーンに流れない。 【0009】図6のグラフから分かるように、カソード20と位置25の間には、電子が常時豊富に存在しており、また、位置25の後方の電位勾配は、10 6 (V/ m)のオーダーである。 これは、従来のカソードとG1 電極との間の電位勾配と比較し一桁程度大きい。 従って電子がGm電極22を通過した後は、多くの電子は空間電荷の影響を受けることなくそのままスクリーンに向かうことができ、スクリーンに流れる電子ビームの強度は、電位が極小となる位置25を通過する電子の量により決定される。 【0010】このような理由から、上記のHi−Gm管において、カソード電位をある一定の値だけ変動させた時のビーム電流の変化は、従来のCRTに比べ約2倍になる。 即ち、Hi−Gm管では、ビーム電流をある値だけ変化させるのに必要なカソード電位の変動幅を従来の半分以下にすることができ、また、カソード電位の変動幅が同じであれば、従来のCRTに比べビーム電流の変化量を2倍以上にすることができる。 従ってHi−Gm 管を用いれば高周波数のビデオ信号に容易に対応することができ、高輝度・高解像度の表示装置が得られる。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】上述したように、CR T表示装置においては、従来、カソードに与えるビデオ信号の黒バイアス電圧の値を変化させることにより映像のブライトネスを調整しているが、この場合、R、G、 Bの3チャンネルの各バイアス電圧をそれぞれ制御する必要がある。 また、従来、カソードに与えるビデオ信号の振幅を変化させることにより映像のコントラストを調整しているが、この場合、高コントラストを得るためには、増幅率の高い高価な増幅器及び出力電圧の高い高価な電源が必要になる。 【0012】本発明の課題は、Hi−Gm管の上記の特性を利用し、ブライトネスを簡単な構成の回路で制御できる表示装置を提供することである。 本発明の別の課題は、Hi−Gm管の上記の特性を利用し、映像を高コントラストで表示できる表示装置を低コストで提供することである。 【0013】 【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、カソードと、該カソードから電子を引き出すためのG1電極、G2電極、G3電極をこの順に備え、更に該G2電極とG3電極との間に変調用のGm電極が配置された電子銃を有するCRTを含むCRT表示装置において、該CRTの画面の映像のブライトネスを制御するために前記Gm電極に印加される電圧値を制御する手段を備えたことを特徴とするCRT表示装置により解決される。 【0014】前記制御手段は、入力されるブライトネス制御信号の値に応じた値の電圧を生成し、前記Gm電極に印加する電圧源から構成することができる。 【0015】本発明の上記別の課題は、カソードと、該カソードから電子を引き出すためのG1電極、G2電極、G3電極をこの順に備え、更に該G2電極とG3電極との間に変調用のGm電極が配置された電子銃を有するCRTを含むCRT表示装置において、該CRTの画面の映像のコントラストを制御するために前記G2電極に印加される電圧値を制御する手段を備えたことを特徴とするCRT表示装置により解決される。 【0016】前記制御手段は、入力されるコントラスト制御信号の値に応じた値の電圧を生成し、前記G2電極に印加する電圧源から構成することができる。 【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に従い、具体的に説明する。 実施の形態1. 図1は本発明のCRT表示装置の実施の形態1の構成を示すブロック図である。 ここでCRT表示装置とは、CRTを用いた表示装置を意味し、テレビ受像機、パソコン用モニターディスプレイ等を含む。 同図において、図4に示した装置の要素と同じ、あるいは対応する要素には同じ符号を付している。 【0018】図1において、1はHi−Gm管、2はカソード、3はG1電極、4はG2電極、5はGm電極、 6はG3電極、7はアノード、9はビデオ回路、10はGm電極電圧源である。 G3電極以降に配置される他のフォーカス電極等の構成は従来の電子銃と同じであり、 説明を簡単にするため図示を省略している。 【0019】映像信号はビデオ回路9で反転増幅され、 カソード2に与えられる。 Gm電極電圧源10は、Gm 電極5に印加する電圧を生成する電圧源である。 この電圧源10は、該電圧源に入力される後述の制御信号の値に応じた値の電圧を生成するように構成されている。 実施の形態1では、例えば、G1電極3には0V、G2電極4には500V、G3電極6には5.5KV、Gm電極5には80V、アノード7には25KVの高圧がそれぞれ印加されている。 【0020】Gm電極5に印加される電圧の値は、電子がスクリーンに向かって流れ、発光が開始される点を規定しており、カソード電圧がGm電極5の電圧値を下回ると、ビーム電流が流れ始め、電子がスクリーンの蛍光体に当たり、発光が開始される。 Hi−Gm管では、カソード2に与えられる黒バイアス電圧をGm電極電圧に等しくすることにより、発光が開始される点と映像の黒レベルとを合わせることができる。 【0021】黒が沈みすぎ、映像が全体的に暗くて見難い場合には、Gm電極電圧源10に入力される制御信号の値を大きくし、Gm電極5に印加される電圧を上げる。 これにより、発光が開始される点の電圧値も上がり、黒レベルが上がるので映像が明るくなる。 即ちブライトネスが上がる。 これと反対に、黒が浮きすぎてしまりのない映像の場合、制御信号の値を小さくし、Gm電極5に印加される電圧を下げる。 この制御信号は、例えばキャラクタジェネレータ等で示されるモニターのユーザー調整メニューで表示されるブライトネス調整で、ユーザーがキーを押し、その表示値に応じてマイコンの出力ポートから出力される電圧信号とすることができる。 また、その他の手法により、マイコンやスイッチ等のハードウェアにより生成してもよく、あるいはソフトウェア処理により生成してもよい。 【0022】従来のCRT表示装置では、ブライトネス制御は、R、G、B3チャンネルのそれぞれのカソードバイアス電圧を同じように変化させることにより行っているが、本実施形態の表示装置では、Gm電極に印加される電圧値を変化させるだけでブライトネス制御を行うことができ、回路構成が簡単になる。 【0023】図2は、CRTの電子銃の一般的なカソード電圧−ビーム電流特性を示すグラフである。 このグラフにおいて、実線はHi−Gm管の電子銃の特性であり、点線は通常のCRTの電子銃の特性を示している。 【0024】このグラフに示すように、Hi−Gm管の場合、Gm電極に印加する電圧の値をAに設定したとき、カソード電圧がAを超えている間はビーム電流が流れず、カソード電圧がAを下回るとビーム電流が流れ始め、通常のCRTの電子銃の特性に漸近するように増加して行く。 【0025】ここで、Gm電極電圧をAからBに下げた場合、カソードに供給されるのビデオ信号が同じであるとすると、発光が開始される点の電圧が低下し、黒レベルが下がる。 しかし、これと同時に、ビーム電流曲線の立ち上がりの勾配が急峻になり、その結果、中間輝度でのコントラスト感が増加する。 逆に、Gm電極電圧をA からCに上げた場合、カソードに供給されるビデオ信号が同じであるとすると、黒レベルが上がる。 しかしこれと同時に、ビーム電流曲線の立ち上がりの勾配がなだらかになり、その結果、中間輝度のコントラスト感が減少する。 【0026】上述したように、Gm電極電圧の制御によってコントラスト感を上げる場合には、Gm電極電圧を下げるが、このように制御すると黒レベルが下がり黒が沈む。 この場合、従来のブライトネス調整のようにカソードバイアス電圧を下げ、黒レベルを再調整することで黒レベルを適正にすることができる。 逆に、Gm電極電圧を上げ、コントラスト感を下げた場合もカソードバイアス電圧を上げて黒レベルを適正にすることができる。 【0027】このように、Gm電極に印加する電圧を制御して、ブライトネス調整を行うと、ブライトネスが変化するのみならず、中間輝度でのコントラスト感も変化するので、従来のブライトネス調整にはない、新たな画質調整効果が得られる。 【0028】実施の形態2. 図3は本発明のCRT表示装置の実施の形態2の構成を示すブロック図である。 ここでCRT表示装置とは、CRTを用いた表示装置を意味し、テレビ受像機、パソコン用モニターディスプレイ等を含む。 図3において、図1の要素と同じ構成の要素には同じ参照符号を付している。 実施の形態2は、制御信号が、Gm電極電圧源10ではなく、G2電極電圧源12に入力される点で実施の形態1と異なる。 G2電極電圧源12は、入力される制御信号の値に応じた値の電圧を生成するように構成されている。 【0029】既に述べたように、通常のCRTを備える表示装置では、G2電極に印加される電圧を調整することにより、スクリーン調整と呼ばれるカソード電圧に対する画面が光り始める点(カットオフ点)の粗調整を行っている。 また、カットオフ点の微調整はカソードに与えられる黒バイアス電圧を調整することにより、行っている。 【0030】通常のCRTでは、G2電極電圧を上げると、カソードとG2電極間の電位差が増大しビーム電流の値が増加するが、このとき、黒レベルも浮く。 これに対し、Hi−Gm管ではG2電極電圧を上げると、通常のCRTの場合と同様、カソードとG2電極間の電位差が増大しビーム電流の値が増加するが、ビームがスクリーンに流れ、発光が開始される点はGm電極に印加される電圧の値で決定されるため、G2電極電圧の上げ幅がそれほど大きくなければ、黒レベルは変わらない。 従って、Hi−Gm管では、G2電極電圧を上げると、黒レベルが一定に保たれた状態でビーム電流の値が増加するので、コントラスト増加の効果が得られる。 【0031】従って、上記の特性を有するHi−Gm管を備える実施形態2の表示装置では、例えばG2電極電圧源12に制御信号として入力される直流電圧の値を高くし、これによりG2電極4に印加される電圧を上げてビーム電流の値を増加させることによりコントラストを増大させることができる。 逆に、この直流電圧の値を低くし、G2電極4に印加される電圧を下げ、ビーム電流の値を減少させることによりコントラストを低下させることができる。 この制御信号は、例えばキャラクタジェネレータ等で示されるモニターのユーザー調整メニューで表示されるブライトネス調整で、ユーザーがキーを押し、その表示値に応じてマイコンの出力ポートから出力される電圧信号とすることができる。 また、その他の手法により、マイコンやスイッチ等のハードウェアにより生成してもよく、あるいはソフトウェア処理により生成してもよい。 【0032】また、実施形態2の表示装置では、ある期間だけ振幅が大きくなる矩形波を制御信号としてG2電極電圧源12に入力することにより、映像の輝度を部分的に上げることも可能である。 例えば、ビデオ信号の波形から低輝度の部分を検知し、その部分に対応してG2 電極に印加される電圧を上げることにより、その部分の輝度を上げることができる。 このようにG2電極電圧を制御することにより、低輝度部分を持ち上げ、コントラストを増加させることもでき、ガンマ補正のような効果が得られる。 また、動画ウィンドウ等の高輝度表示したい部分がある場合、その部分に対応してG2電極電圧を上昇させるように矩形波をG2電極電圧に重畳することにより、高輝度で動画ウィンドウを表示することが可能になる。 【0033】既に述べたように、従来の表示装置では、 コントラストを調整するためには、R、G、Bの3チャンネルの各アンプの増幅率を制御する必要がある。 これに対し、上記実施形態2の表示装置では、G2電極に印加される電圧を制御することにより、3チャンネル分のビームを全て同じように制御し、コントラストを調整することができる。 また、従来の表示装置の場合、高コントラスト表示を行うためには、増幅率の高い高価なビデオアンプ及び高価な高出力電圧の電源が必要となるが、 実施形態2の表示装置では、そのようなビデオアンプ及び電源を用いることなく、簡単な回路構成で高コントラスト映像を表示することが可能になる。 【0034】 【発明の効果】請求項1及び2に記載の発明によれば、 Hi−Gm管の特性を利用し、ブライトネスをGm電極に印加する電圧の値で制御するので、ブライトネス制御回路の構成が簡単になる。 また、ブライトネスを変化させると中間輝度のコントラストも変化するので従来にない画質調整効果が得られる。 【0035】請求項3及び4に記載の発明によれば、H i−Gm管の特性を利用し、コントラストをG2電極電極に印加する電圧の値で制御するので、高増幅率のビデオアンプ、高出力電圧の電源が不要であり、高コントラストの表示装置を低コストで提供できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のCRT表示装置の実施の形態1の構成を示すブロック図である。 【図2】 CRTのカソード電圧−ビーム電流特性を示すグラフである。 【図3】 本発明のCRT表示装置の実施の形態2の構成を示すブロック図である。 【図4】 従来のCRT表示装置の構成を示すブロック図である。 【図5】 Hi−Gm管の電子銃のカソード近傍の構造の説明図である。 【図6】 Hi−Gm管の電子銃内の電位分布を説明するグラフである。 【符号の説明】 1 Hi−Gm管、 2 カソード、 3 G1電極、 4 G2電極、 5Gm電極、 6 G3電極、 7 アノード、 9 ビデオ回路、 10 Gm電極電圧源、 12 G2電極電圧源、 14 CRT、 15 フライバックトランス、 16 可変抵抗、 17 G1電極、 18 G2電極、 19G3電極、 20 カソード、 21 電子放射物質、 22 Gm電極、23 電位分布曲線、 24 Gm電極が存在する範囲、 25 電位の低い位置。 |