Piezoelectric driving type mems element

申请号 JP2009082270 申请日 2009-03-30 公开(公告)号 JP2010238737A 公开(公告)日 2010-10-21
申请人 Toshiba Corp; 株式会社東芝; 发明人 NISHIGAKI MICHIHIKO; NAGANO TOSHIHIKO; ONO HIROSHI; KAWAKUBO TAKASHI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To reduce an increase in Q value of a varicap, or transmission loss of a switch in a piezoelectric driving type MEMS (Micro-electro-mechanical System) element. SOLUTION: The piezoelectric driving type MEMS element includes: a substrate; a fixed portion fixing one end of a beam onto the substrate to hold at least a portion of the beam with a gap above the substrate; the beam having a lower electrode film, a lower piezoelectric film formed on the lower electrode film, a middle electrode film formed on the lower piezoelectric film, an upper piezoelectric film formed on the middle electrode film, and an upper electrode film formed on the upper piezoelectric film; a power source portion applying a voltage among the lower electrode film, upper electrode film, and middle electrode film of the beam; and fixed electrode arranged at the end of the beam on the opposite side from the fixed portion and on the substrate constituting an electric circuit. Any one or two electrode films of the lower electrode film, the middle electrode film and the upper electrode film are thicker than the other electrode thereof. COPYRIGHT: (C)2011,JPO&INPIT
权利要求
  • 基板と 前記基板上に梁の一方の端部を固定して、梁の少なくとも一部を中空状に保持する固定部と、
    下部電極膜と,前記下部電極膜上に形成された下部圧電膜と,前記下部圧電膜上に形成された中間電極膜と,前記中間電極膜上に形成された上部圧電膜と,前記上部圧電膜上に形成された上部電極膜とを有する梁と,
    前記梁の下部電極膜及び上部電極膜と,中間電極膜との間に電圧を印加する電源部と,
    前記梁の固定部とは反対側の端部と電気回路を構成する基板上に配置された固定電極とを備え,
    前記下部電極膜,前記中間電極膜,前記上部電極膜のうちいずれか1つ又は2つの電極膜が他の前記電極膜より厚いことを特徴とする圧電駆動型MEMS素子。
  • 前記下部電極膜を前記固定部側と前記固定電極側に分離する分離部を備え、
    前記中間電極膜が前記下部電極膜及び前記下部電極膜より厚く、
    前記中間電極膜と前記分離部によって分離された前記固定電極側の下部電極膜が電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 前記中間電極膜より前記下部電極膜が厚く、
    前記下部電極膜を前記固定部側と前記固定電極側に分離する分離部がないことを特徴とする請求項1に記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 前記下部電極膜を前記固定部側と前記固定電極側に分離する分離部を備え、
    前記下部電極膜又は前記下部電極膜の少なくともどちらかが前記中間電極膜より厚く、
    前記上部電極膜と前記分離部によって分離された前記固定電極側の下部電極膜が前記中間電極膜とは接触しないように電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 基板と 前記基板上に梁の一方の端部を固定して、梁の少なくとも一部を中空状に保持する固定部と、
    下部電極膜と,前記下部電極膜上に形成された下部圧電膜と,前記下部圧電膜上に形成された中間電極膜と,前記中間電極膜上に形成された上部圧電膜と,前記上部圧電膜上に形成された上部電極膜とを備えた梁と,
    前記梁の一方の端部を固定する基板上に配置された固定部と、
    前記梁の下部電極膜及び上部電極膜と,中間電極膜との間に電圧を印加する電源部と,
    前記梁の固定部とは反対側の端部と電気回路を構成する基板上に配置された固定電極とを備え,
    前記下部電極膜と前記上部電極膜が前記中間電極膜とは接触しないように接続されたことを特徴とする圧電駆動型MEMS素子。
  • 前記下部電極膜と前記上部電極膜が前記中間電極膜とは接触しないように接続する配線が、前記梁の固定電極側の端部からに4分の1以下の位置に備えられていることを特徴とする請求項5に記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 基板と、
    下部電極膜と,前記下部電極膜上に形成された下部圧電膜と,前記下部圧電膜上に形成された中間電極膜と,前記中間電極膜上に形成された上部圧電膜と,前記上部圧電膜上に形成された上部電極膜とを備え、かつ、線対称に配置された往路梁及び復路梁と、
    前記往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と前記復路梁の中間電極膜を接続し、かつ、前記往路梁の中間電極膜と前記復路梁の上部電極膜及び下部電極膜を接続、
    又は、
    前記往路梁の中間電極膜と前記復路梁の上部電極膜及び下部電極膜を接続し、かつ、前記往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と前記復路梁の中間電極膜を接続する接続部と、
    前記往路梁の前記接続部とは反対側の端部を固定する前記基板に配置され、前記基板上に梁の一方の端部を固定して、梁を中空状に保持する固定部と、
    前記復路梁の前記接続部とは反対側の端部と電気回路を形成する固定電極と、
    往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と中間電極膜間の間に電圧を印加する電源部とを備え、
    前記中間電極膜の膜厚が前記上部電極膜及び下部電極膜より厚いことを特徴とする圧電駆動型MEMS素子。
  • 復路梁を線対称に配置された二部の前記圧電駆動型MEMS素子と、
    前記両圧電駆動型MEMS素子の復路梁の固定電極側の端部を接続したことを特徴とする請求項8記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 前記往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と前記復路梁の中間電極膜を接続し、かつ、前記往路梁の中間電極膜と前記復路梁の上部電極膜及び下部電極膜が接続され、
    前記復路梁の下部電極膜と上部電極膜が前記復路梁の中間電極膜と接触しないように電気的に接続されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 前記往路梁の中間電極膜と前記復路梁の上部電極膜及び下部電極膜を接続し、かつ、前記往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と前記復路梁の中間電極膜が接続され、
    前記復路梁の下部電極膜を前記固定電極側と前記接続部側に分離する分離部と、
    前記分離部によって分離された固定電極側の下部電極膜と復路梁の中間電極膜が接続されていることを特徴とする請求項7又は8記載の圧電駆動型MEMS素子。
  • 说明书全文

    本発明は、圧電薄膜を使用した圧電駆動機構を有するMEMS(Micro−electro−mechanical System)素子に関する。

    近年、MEMS技術で作製されたアクチュエータを使用し、MEMS可変キャパシタ、及びMEMSスイッチを作製する技術に関心が集まっている。 特に、携帯電話や自動車電話などをはじめとした高周波向けの用途としては、従来から使用されている可変キャパシタや半導体スイッチと比較して、MEMS可変キャパシタについてはQ値が高く、MEMSスイッチについてはオン時の低い損失,及びオフ時の高い絶縁特性を備えているなどの理由から、これらのMEMS可変キャパシタ、及びMEMSスイッチの利用が期待されている。

    特許文献1には残留歪みによる梁の反りを低減するためにスリットのない圧電アクチュエータが記載されている。 下部電極膜のスリットがない構造を採用することで梁の強度が増加して、梁が反りにくくなる。 しかし、梁の強度が増した分、作動電圧が高くなるという問題がある。
    また、特許文献2には折り返し梁構造を備えた圧電アクチュエータが記載されている。 折り返した構造を用いることによって、梁の反りを相殺することが可能となる。 しかし、梁を折り返す分、電極膜の距離が増加し、電極膜の抵抗により、出される信号の損失が大きくなりQ値が低下してしまうといった問題点がある。

    バリキャップの損失やスイッチの通過損失を低減するために電極膜の抵抗値を低くすることが考えられる。
    その具体的な方法は、導体の抵抗値を表すR=ρ・(L/w・t)より、圧電駆動型MEMS素子の電極膜の抵抗値を下げる方法としては、電極膜材料の抵抗率(ρ)の低いものを用いる、電極膜の長さ(L)を短くする、電極膜の幅を広くする(w)、電極膜の厚さを増やす(t)ことが挙げられる。

    しかし、MEMS製造プロセスや物性の制限から電極膜材料はAl、Cu、Mo等が用いられており、その自由度は少ない。 また、電極膜の長さを短くすると、アクチュエータの作動電圧は電極膜の長さの二乗に比例して高くなる。 また、電極膜の幅を広げると電極膜の幅方向の反りが生じ易くなって梁の屈曲性が悪くなる。 また、電極膜の厚さに比例して作動電圧が高くなるといった問題点がある。 これら上記理由により、電極膜の抵抗値を下げるとバリキャップやスイッチの特性が低下してしまう恐れがある。 したがって、電極膜の抵抗値を下げて、圧電駆動型MEMS素子のQ値を上げることは難しかった。

    特開2007−259669号広報

    特開2008−005642号広報

    本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、信号を出力する電極膜の総抵抗率(Ω/m)を下げることで、圧電駆動型MEMS素子の、バリキャップのQ値の増加、又はスイッチの通過損失の低減を目的とする。

    第1の発明にかかる圧電駆動型MEMS素子は基板と前記基板上に梁の一方の端部を固定して、梁の少なくとも一部を中空状に保持する固定部と、下部電極膜と,前記下部電極膜上に形成された下部圧電膜と,前記下部圧電膜上に形成された中間電極膜と,前記中間電極膜上に形成された上部圧電膜と,前記上部圧電膜上に形成された上部電極膜とを有する梁と,前記梁の下部電極膜及び上部電極膜と,中間電極膜との間に電圧を印加する電源部と,前記梁の固定部とは反対側の端部と電気回路を構成する基板上に配置された固定電極とを備え,前記下部電極膜,前記中間電極膜,前記上部電極膜のうちいずれか1つ又は2つの電極膜が他の前記電極膜より厚いことを特徴とする。

    第2の発明にかかる圧電駆動型MEMS素子は基板と前記基板上に梁の一方の端部を固定して、梁の少なくとも一部を中空状に保持する固定部と、下部電極膜と,前記下部電極膜上に形成された下部圧電膜と,前記下部圧電膜上に形成された中間電極膜と,前記中間電極膜上に形成された上部圧電膜と,前記上部圧電膜上に形成された上部電極膜とを備えた梁と,前記梁の一方の端部を固定する基板上に配置された固定部と、前記梁の下部電極膜及び上部電極膜と,中間電極膜との間に電圧を印加する電源部と,前記梁の固定部とは反対側の端部と電気回路を構成する基板上に配置された固定電極とを備え,前記下部電極膜と前記上部電極膜が前記中間電極膜とは接触しないように接続されたことを特徴とする。

    第3の発明にかかる圧電駆動型MEMS素子は基板と、下部電極膜と,前記下部電極膜上に形成された下部圧電膜と,前記下部圧電膜上に形成された中間電極膜と,前記中間電極膜上に形成された上部圧電膜と,前記上部圧電膜上に形成された上部電極膜とを備え、かつ、線対称に配置された往路梁及び復路梁と、前記往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と前記復路梁の中間電極膜を接続し、かつ、前記往路梁の中間電極膜と前記復路梁の上部電極膜及び下部電極膜を接続、又は、前記往路梁の中間電極膜と前記復路梁の上部電極膜及び下部電極膜を接続し、かつ、前記往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と前記復路梁の中間電極膜を接続する接続部と、前記往路梁の前記接続部とは反対側の端部を固定する前記基板に配置され、前記基板上に梁の一方の端部を固定して、梁を中空状に保持する固定部と、前記復路梁の前記接続部とは反対側の端部と電気回路を形成する固定電極と、往路梁の上部電極膜及び下部電極膜と中間電極膜間の間に電圧を印加する電源部とを備え、前記中間電極膜の膜厚が前記上部電極膜及び下部電極膜より厚いことを特徴とする。

    本発明の構成を備えた圧電駆動型MEMS素子はその損失を低下させることが可能となる。

    図1は実施例1の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図1(A)のA−A'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図1(A)のB−B'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図2は比較例1の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図2(A)のC−C'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)である。

    図3は変形例1の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図3(A)のD−D'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図3(A)のE−E'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図4は実施例1と変形例1における電極膜の厚さに対する1Vあたりの梁の変位量を示すグラフである。

    図5は実施例2の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図5(A)のF−F'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図5(A)のG−G'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図6は変形例2の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図6(A)のH−H'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図6(A)のI−I'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図8は下部電極膜と上部電極膜を接続する位置とその位置における実施例2の形態の圧電駆動型MEMS素子のQ値を示すグラフである。

    図7は実施例3の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図8(A)のJ−J'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図8(A)のK−K'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図9は実施例3の圧電駆動型MEMS素子の上部電極膜の接続部における概念図(A)、中間電極膜の接続部における概念図断面図(B)と下部電極膜の接続部における概念図断面図(C)である。

    図10は変形例4の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図10(A)のL−L'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)である。

    図11は比較例2の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図11(A)のM−M'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図11(A)のN−N'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図12は実施例4の圧電駆動型MEMS素子の平面概念図(A)、図12(A)のO−O'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(B)と図12(A)のP−P'線で切断した圧電駆動型MEMS素子の断面図(C)である。

    図12は実施例4の圧電駆動型MEMS素子の上部電極膜の接続部における概念図(A)、中間電極膜の接続部における概念図断面図(B)と下部電極膜の接続部における概念図断面図(C)である。

    信号を出力する電極膜を厚くして抵抗値を下げること、又は、信号を出力する電極膜を並列にすることにより抵抗値を下げることのどちらかまたは両方によって、バリキャップのQ値を増加、又は、スイッチの損失を低減した。

    まず、圧電駆動型MEMS素子の構成について簡単に説明する。
    矩形型の圧電駆動型MEMS素子は、基板上に固定電極と梁(アクチュエータと可動電極)を備え、圧電アクチュエータ及び可動電極部は下部電極膜、下部圧電膜、中間電極膜、上部圧電膜、上部電極膜を主な構成要素とし、この可動電極は固定部によって基板に中空状に備えられている。 その圧電膜に印加された電圧により、圧電膜が伸縮して、圧電アクチュエータが屈曲変位し、固定電極と可動電極の距離を変位させ、バリキャップ又はスイッチとして動作する。

    また、別の圧電駆動型MEMS素子の構成について簡単に説明する。
    折り返し型の圧電駆動型MEMS素子は、基板上に固定電極と往路梁(圧電アクチュエータ)及び復路梁(圧電アクチュエータと可動電極)を備える。 そして、梁は並んで配置されている。 そして、これらのアクチュエータの端部を接続する接続部を備える。 アクチュエータ及び可動電極部は下部電極膜、下部圧電膜、中間電極膜、上部圧電膜、上部電極膜を主な構成要素とし、往路梁のアクチュエータの他端は固定部に接続されている。 なお、折り返し型の圧電駆動型MEMS素子は同様の構造のアクチュエータ等を線対称に平行に配置したものでもよい。

    上記のような圧電駆動型MEMS素子の梁は、その圧電膜に電圧を印加することにより、梁が屈曲変位し、可動電極と固定電極との距離を変位させる。
    このような変位により、固定電極及び可動電極を両電極とするバリキャップまたはスイッチとして機能する。

    次に、MEMS素子のバリキャップのQ値及びスイッチ損失の特性を向上させる電極膜の条件について説明する。
    電極膜を厚くすることで、電極膜の抵抗を小さくすることができる。 この場合は、信号を出力する電極膜の抵抗が出力される信号の損失に関係するので、その電極膜を厚くすることが好ましい。 信号を出力しない電極膜の膜厚も厚くすると、信号を出力する電極膜の抵抗が小さくなる影響だけでなく、梁の屈曲性が低下して駆動電圧が高くなることが好ましくない。 しかし、複数の電極膜を備えたアクチュエータの場合は電極膜の膜厚を変える場合、圧電駆動による梁の動作性を考慮して、信号を出力しない電極膜も厚くしてもよい。

    信号を出力する電極膜を複数(並列)にすることで、電極膜の電気抵抗の総和を小さくすることができる。 この場合は、アクチュエータの回路を考慮して、例えばバイモルフ型のMEMSの場合は、上部電極膜と下部電極膜を短絡して両電極膜から信号を出力して、信号を出力する配線の抵抗の総和を小さくする。
    接続位置の限定

    往路及び復路梁を有する折り返し構造の梁を備えた圧電駆動型MEMS素子において、例えば、往路の信号を出力する電極膜を複数にし、さらに復路の電極膜を厚くすることで、信号を出力する配線の抵抗の総和を小さくすることができる。 この場合は、アクチュエータの回路を考慮して、例えばバイモルフ型のMEMSの場合は、往路において、上部電極膜と下部電極膜を短絡して両電極膜から信号を出力して、復路は中間電極膜から信号を出力し、この電極膜を厚くして、往路、復路ともに、信号を出力する配線の抵抗の総和を小さくする。 なお、往路と復路の信号を出力する電極膜は上記に示した例の逆でもよい。

    電極膜や電極膜を接続する配線に用いる材料は圧電駆動型MEMS素子の特性を考慮してAl、Cu、Moのいずれかであることが好ましい。

    固定電極に用いる導電性材料はある程度導電性があるものであればよい。 具体的には、遷移金属(Ti,Ni,Fe,Cu,Mo,W,Ta等)、貴金属(Ag,Au,PT、Ir等)、酸化物薄膜(ITO,YBCO,ReO 等)や有機導電性ポリマー等の有機膜等が挙げられる。 圧電材料はAlNやポリフッ化ビニリデンなど公知の圧電材料を用いることが出来る。

    信号を出力する電極膜を厚くする場合、それ以外の電極膜の厚さを薄くすることが好ましい。 信号を出力しない電極膜を薄くすることで、Q値の低下を防いで、梁の屈曲性の低下を低減することができる。 また、信号を出力する電極膜を厚くする場合、例えば、電極膜の厚さは、例えば、全ての電極膜の厚さが同じである圧電駆動型MEMS素子の電極膜の1.5倍以上の厚さであると、電極膜の抵抗率の低下によるQ値への影響が顕著であって好ましい。 信号を出力しない電極膜と信号を出力する電極膜の膜厚との比は1:1.5以上であることが好ましい。 これよりも比が小さいと、電極膜を厚くすることによる効果が小さいことが好ましくない。

    次に、電極膜を厚くする場合の、圧電駆動型MEMS素子の構成を簡単に説明する。 なお、以下の説明においてはバイモルフ型の圧電駆動型MEMS素子を例にとり、中間電極膜を、又は、上部及び下部電極膜を厚くした場合の構成について説明する。 厚くする電極膜については、圧電駆動型MEMS素子の形態等に応じて、変更しても構わない。

    なお、梁に下部電極膜を分離する分離部がなければ可動電極部も圧電アクチュエータと同様に屈曲する。 梁に下部電極膜を分離する分離部があると、可動電極部の下部電極膜と上部電極膜は下部圧電層を伸縮させる回路を構成しない。

    中間電極膜を上部電極膜及び下部電極膜に比べて厚くした圧電駆動型MEMS素子の概念図を図1に示す。 この図1の圧電駆動型MEMS素子11は固定電極104上の絶縁膜108と可動電極の下部電極膜123の間をバリキャップ又はスイッチとし、可動電極の下部電極膜123、接続配線105、中間電極膜122、アクチュエータの中間電極膜122を介して信号を出力する。 下部電極膜は分離部106によって可動電極側とアクチュエータ側に隔てられていて、アクチュエータ側の上部電極膜131,下部電極膜133にはバリキャップ又はスイッチからの信号が流れない構成になっている。 なお、接続配線105は複数あっても構わない。 図1に示したような圧電駆動型MEMS素子11では中間電極膜122,132を厚くして、中間電極膜122,132の抵抗率を下げている。 そして、中間電極膜122,132を介して信号を出力するため、このような圧電駆動型MEMS素子11の出力信号の損失を小さくすることが出来る。 例えば、中間電極膜の厚さが2t の圧電駆動型MEMS素子(バリキャップ)のQ値は中間電極膜の厚さがt のものに比べて、約1.4倍となる。 また、中間電極膜の厚さが増加しても、作動電圧の増加が比較的小さいので、3Vや5V以下でバリキャップやスイッチとして動作させる場合でも、作動電位への影響が小さい。

    上部電極膜及び下部電極膜を中間電極膜に比べて厚くした圧電駆動型MEMS素子の概念図を図3に示す。 この図3の圧電駆動型MEMS素子13は固定電極104上の絶縁膜108と可動電極の下部電極膜123の間をバリキャップ又はスイッチとし、可動電極の下部電極膜123、接続配線105、上部電極膜121、アクチュエータの上部電極膜131を順に介して信号を出力する。 下部電極膜は分離部106によって可動電極側とアクチュエータ側に隔てられていて、可動電極側の中間電極膜122,アクチュエータ側の中間電極膜132,下部電極膜133には信号が流れない構成になっている。 なお、接続配線105は複数あっても構わないが、いずれの接続配線も中間電極膜122,123には接続しない。 図3に示したような圧電駆動型MEMS素子13では上部電極膜121,131の厚さが増すと、上部電極膜121,131の抵抗率が低下する。 従って、上部及び下部電極膜を厚くすることで、圧電駆動型MEMS素子13の信号損失を減少させることが出来る。 なお、接続配線の位置や数によって、その圧電駆動型MEMS素子の信号の損失の程度は異なることがある。 また、信号の出力にかかわらない下部電極膜123,133を厚くしない場合、そのMEMS素子の屈曲の対称性は低下するが、同様に信号の損失を小さくすることが出来る。

    上部電極膜や下部電極膜を中間電極膜に比べて厚くした圧電駆動型MEMS素子の場合、中間電極膜を厚くした場合に比べて、電極膜を厚くすることを原因とする梁の屈曲性の低下が大きいが、この場合は、中間電極膜を薄くすることで、梁の屈曲性の低下を小さくすることができる。

    圧電駆動型MEMS素子の信号を出力する電極膜が上部、中間、下部電極膜のいずれか1つの電極膜ではなく、上部及び下部の両電極膜とした圧電駆動型MEMS素子の概念図を図5に示す。 この図5の圧電駆動型MEMS素子14は固定電極204上の絶縁膜208と可動電極の下部電極膜223の間をバリキャップ又はスイッチとし、可動電極の下部電極膜223と上部電極膜221が接続配線205によって接続されている。 そして、バリキャップ又はスイッチを介した信号はアクチュエータの上部電極膜231及び下部電極膜233の並列の電極膜を介して信号を出力する。 中間電極膜222,232は上部電極膜221,231、下部電極膜223,233及び接続配線205とは分離した構成になっている。 なお、接続部は複数あっても構わないが、いずれの接続配線も中間電極膜には接続しない。 信号の出力にかかわる電極膜が並列の電極膜であるため、信号を出力する配線(電極膜)の総抵抗が低下する。 従って、このような圧電駆動型MEMS素子14は出力信号の損失が小さくなる。 この図5の圧電駆動型MEMS素子14において、上部電極膜及び下部電極膜を厚くして、信号を出力する電極膜の抵抗率を低下させてもよい。 また、中間電極膜の厚さを薄くして、梁の屈曲性を向上させてもよい。

    往路梁及び復路梁を持つ折り返し構造の圧電駆動型MEMS素子において、往路梁の信号を出力する電極膜を上部及び下部電極膜より厚い中間電極膜とし、復路梁の信号を出力する電極膜を上部及び下部の両電極膜とした圧電駆動型MEMS素子の概念図を図8に示す。 この図8の圧電駆動型MEMS素子16は基板301上の固定部306、307に一方の端部が固定された往路梁(アクチュエータ304、305)と復路梁(可動電極部317,318、アクチュエータ302,303)を接続する接続部327.328と、固定電極308を備える。 接続部327,328では、往路梁のアクチュエータの上部及び下部電極膜351,353,361,363と復路梁のアクチュエータの中間電極膜372,382とを、往路梁の中間電極膜352,362を復路梁の上部及び下部電極膜371,373,381,383とを信号にかかる回路及び圧電膜に電圧を印加する回路が動作するように接続する。 このような構成にすることで、圧電膜残留歪みを解消しやすくし、信号を出力する配線の抵抗値を小さくすることが可能となる。 そして、接続部327,328にて信号を出力する配線を交換しても、2通りの電極膜の抵抗を小さくする手段を採用することで、往路、復路の両梁での信号の損失を小さくすることが可能となる。 往路と復路に信号を出力する電極膜の抵抗値を小さくする異なる手段を採用することで、相乗的に信号の損失を小さくすることができる。 なお、往路又は復路のどちらかのみに信号を出力する電極膜の抵抗値を小さくする異なる手段を採用しても、信号の損失を小さくすることができる(本構成の図は省略)。

    往路梁及び復路梁を持つ折り返し構造の圧電駆動型MEMS素子において、往路梁の信号を出力する電極膜を上部及び下部の両電極膜とし、復路梁の信号を出力する電極膜を上部及び下部電極膜より厚い中間電極膜電極膜とした圧電駆動型MEMS素子の概念図を図12に示す。 この図12の圧電駆動型MEMS素子19においてそれぞれの往路と復路の梁に採用する信号を出力する電極膜の抵抗を小さくする手段が逆のものである。 さらに、接続部における配線も逆であること以外は、図8の圧電駆動型MEMS素子と構成は同様である。 本構成においても往路と復路に信号を出力する電極膜の抵抗値を小さくする異なる手段を採用することで、相乗的に信号の損失を小さくすることができる。 上記構成においても、往路又は復路のどちらかのみに信号を出力する電極膜の抵抗値を小さくする異なる手段を採用しても、信号の損失を小さくすることができる(本構成の図は省略)。

    なお、電極膜を厚くする場合、最も厚い電極膜が1.0μmを超えると圧電駆動型MEMS素子の動作電圧が大きくなることが好ましくない。 特に、携帯電話等の小型バッテリーで長時間駆動することが要求される無線装置の周波数変調回路に本発明の圧電駆動型MEMS素子を用いる場合は小型、低電圧動作、低損失、低消費電力であることが要求される。 そこで、さらに好ましくは、信号を出力する電極膜の膜厚は、0.6μm以下であることが好ましい。 このような条件を満たす圧電駆動型MEMS素子は、従来型の圧電駆動型MEMS素子と同様に低電圧動作が可能で、さらに、出力信号の損失を大きく軽減することが出来るため好ましい。

    以下、実施の形態により本発明をより詳細に説明する。 なお、以下の実施例や、本発明の構成を満たす圧電駆動型MEMS素子はいずれもバリキャップ(可変キャパシタ)、スイッチのどちらの用途として用いてもよい。

    (実施例1)
    図1は,実施例1の圧電駆動型MEMS素子の構成を例示する模式平面図である。
    図1Bは,図1AのA−A'線断面図である。
    図1Cは,図1AのB−B'線断面図である。
    図1の概念図に示したように,本発明の第1の実施形態に係る圧電駆動型MEMS素子11は,基板101の主面上に梁が設けられ,固定部107から可動電極部103まで延在した圧電アクチュエータ102を備える。 そして,固定部107と基板101は連結されており,基板101の主面上方に間隙115を設けて圧電アクチュエータ102,及び可動電極部は支持されている。 また,基板101の主面上には固定電極部104が可動電極部103と対向して形成されており,更に固定電極部104上には絶縁膜108が形成されている。

    圧電アクチュエータ102は下部電極膜133,下部電極膜133上に形成された下部圧電膜135,下部圧電膜135上に形成された中間電極膜132,中間電極膜132上に形成された上部圧電膜134,上部圧電膜134上に形成された上部電極膜131により形成されており,電源109により,下部電極膜133,及び上部電極膜131と,中間電極膜132の間に電圧を印加することにより,基板101の主面に対して垂直方向に屈曲変位する。 また,圧電アクチュエータ102の屈曲変位に応じて可動電極部103も屈曲変位する。 ここで可動電極部103、圧電アクチュエータ102の中間電極膜122,132は,下部電極膜123,133,及び上部電極膜121,131と比較して電極膜厚が2倍大きくなっている。

    可動電極部103は圧電アクチュエータ102と同様の積層構造となっているが,可動電極103内の接続配線105において,下部電極123と中間電極133が電気的に接続されている。 また,可動電極部103の下部圧電膜125は圧電アクチュエータ102の下部圧電膜135に接続されており,可動電極部103の中間電極膜122は圧電アクチュエータ102の中間電極膜132に接続されており,可動電極部103の上部圧電膜124は圧電アクチュエータ102の上部圧電膜134に接続されており,可動電極部103の上部電極膜121は圧電アクチュエータ102の上部電極膜131と接続されている。 一方で,可動電極部103の下部電極膜123は圧電アクチュエータ102の下部電極部133と分離部106によって分離されており,圧電アクチュエータ102の下部電極膜133と中間電極膜132が短絡されないようにしている。

    それぞれの構造は,圧電アクチュエータ102の長さ400μm,幅60μm,可動電極部103の長さ100μm,幅60μm,固定電極部の長さ120μm,幅60μm,固定部107の長さ40μm,幅60μm,下部電極膜123,133の電極膜厚0.2μm,下部圧電体膜125,135の圧電体膜厚0.5μm,上部圧電体膜124,134の圧電体膜厚0.5μm,上部電極膜厚121、131の電極膜厚0.2μm,絶縁膜108の膜厚0.1μmであり,中間電極膜の膜厚は0.4μm,接続配線105は20μm,分離部106の幅は10μmである。 なお,下部電極膜123,133,中間電極膜122、132,上部電極膜121,131,及び固定電極部104はアルミニウムにより形成されており,下部圧電体膜125,135,上部圧電体膜124,134,及び絶縁膜108は窒化アルミニウムにより形成されている。

    前述の通り,固定電極部104と可動電極部103は間隙115を介して対向して配置されているため,固定電極部104と可動電極部103の下部電極膜123との間にはキャパシタが形成される。 また,圧電アクチュエータ102の変位に応じて可動電極部103も変位するため,可動電極部103の下部電極膜123によって形成されるキャパシタは可変キャパシタとして機能することが可能となる。

    圧電駆動型MEMS素子11の信号の流れは,まず,固定電極部104に入力された信号が,可動電極部103の下部電極膜123によって形成されるキャパシタを介して可動電極部103の下部電極膜123,接続配線105,可動電極部103の中間電極膜122,圧電アクチュエータ102の中間電極膜132を通って外部へ出力される。

    ここで,前述のように,中間電極膜122、132は,下部電極膜123,133,及び上部電極膜121,131と比較して電極膜厚が大きくなっているため,電極抵抗は最も小さい。 更に本実施例において,圧電駆動型MEMS素子10に入力された信号は,圧電アクチュエータ102の中間電極膜132を通って外部へ出力されるため,圧電アクチュエータ102の下部電極膜133,或いは上部電極膜131外部へ出力される場合と比較して,信号の損失は小さくなり,可変キャパシタとして使用した場合,Q値の低下を抑制することが可能となり,スイッチとして使用した場合,ON時の挿入損失の増加を抑制することが可能となる。
    なお、実施例1の形態の圧電駆動型MEMS素子の中間電極膜を0.1〜1.0μmまで変えたものも圧電駆動型MEMS素子も作成した。

    (比較例1)
    図2は,出力信号の損失を軽減する手段を講じていない圧電駆動型MEMS素子構成を例示する概念図である。
    図2Bは,図2AのC−C'線断面図である。
    図2の概念図に示したように,比較例1に係る圧電駆動型MEMS素子12は,中間電極膜の厚さ0.2μmであること、分離部106がないこと、接続部が無いこと以外は実施例1の圧電駆動型MEMS素子11と同じである。

    圧電駆動型MEMS素子20の信号の流れは,まず,固定電極部104に入力された信号が,可動電極部103の下部電極膜123によって形成されるキャパシタを介して可動電極部103の下部電極膜123,圧電アクチュエータ102の下部電極膜133を通って外部へ出力される。 即ち,実施例1と比較例1の異なる点は,入力された信号が圧電アクチュエータ102の中間電極膜132か,下部電極膜133のどちらかを通過するかである。
    ここで,前述のように,圧電駆動型MEMS素子12の圧電アクチュエータ102の中間電極膜132は,下部電極膜133,及び上部電極膜131と同じ電極膜厚であるため,電極抵抗はほぼ同じである。

    (実施例1と比較例1の比較)
    表1は,実施例1の圧電駆動型MEMS素子11と比較例1の圧電駆動型MEMS素子12で可変キャパシタ(バリキャップ)を形成したときの,2GHzにおけるQ値の比較を行ったものである。 なお,可変キャパシタの静電容量はどちらとも約0.4pFである。
    なお,それぞれのQ値は(2)式により算出している。

    Q=Im(Y)/Re(Y) (2)
    ここで,Im(Y)は圧電駆動型MEMS素子のアドミッタンスの虚部,Re(Y)はアドミッタンスの実部である。
    表1に示されているように,実施例1の形態の圧電駆動型MEMS素子11のQ値は,比較例1の圧電駆動型MEMS素子12と比較して,可動電極部103が圧電アクチュエータの最も電極厚の大きな箇所,即ち,中間電極膜112に接続されているため,Q値が二倍近く増加している。 従って,実施例1の形態に示した圧電駆動型MEMS素子11は信号を出力する電極膜の厚さを厚くすることで、可変キャパシタのQ値の増加に効果があることが分かる。 なお,同様の構成で形成可能なスイッチについても,同様にON時の挿入損失の増加を抑制することに効果があることは明らかである。
    なお、実施例1の中間電極膜をより厚くした場合はその圧電駆動型MEMS素子の信号の損失をさらに小さくすることが出来る。

    (変形例1)
    図3は,実施例1の圧電駆動型MEMS素子11の変形例を示した圧電駆動型MEMS素子13の構成を例示する概念図である。
    図3Bは,図3AのD−D'線断面図である。
    図3Cは,図3AのE−E'線断面図である。
    第1の変形例に係る圧電駆動型MEMS素子13は,圧電アクチュエータ102,及び可動電極部103の下部電極膜123,133,及び上部電極膜121,131の膜厚が中間電極膜122,132と比較して大きくなっており,更に,可動電極部103において,下部電極膜123と上部電極膜121が接続配線105によって電気的に接続されていること以外は実施例1の圧電駆動型MEMS素子11と同じである。

    そして,圧電駆動型MEMS素子13に入力された信号は,固定電極部104,固定電極104と可動電極部103との間に形成される可変キャパシタ,可動電極部103の下部電極膜123,接続配線105,可動電極部103の上部電極膜121,圧電アクチュエータ102の上部電極膜131を通じて出力される。

    実施例1の形態の圧電駆動型MEMS素子と同様に入力された信号は,圧電アクチュエータ102の最も厚い電極膜を通過する構成であるため,可変キャパシタとして使用した場合,Q値の低下を抑制することが可能となり,スイッチとして使用した場合,ON時の挿入損失の増加を抑制することが可能となる。

    (実施例1と変形例1の比較)
    ただし,電極膜厚の増加は圧電アクチュエータ102の変位量を抑制する方向に作用する。 図9のグラフは,実施例1と変形例1の、それぞれ信号を出力する電極膜の厚さを0.1〜1.0μmまで変えた圧電駆動型MEMS素子の、信号を出力する電極膜の厚さと、駆動電圧1Vでの変位量の関係を比較したものである。 図9のグラフから明らかなように,下部電極膜,及び上部電極膜の電極膜厚の増加は,中間電極膜の電極膜厚の増加と比較して,圧電アクチュエータ102の変位量の減少に大きく寄与する。 そのため,圧電アクチュエータ102の1Vあたりの変位量を考慮すると,信号を出力する電極膜を中間電極膜として、その中間電極膜を厚くした圧電駆動型MEMS素子とした方が望ましい。

    また,変形例1の形態の圧電駆動型MEMS素子では下部電極膜123,133,及び上部電極膜121,131の電極膜厚を中間電極膜122,132と比較して大きくしたが,下部電極膜123,133,或いは上部電極膜121,131の電極膜厚のどちらかを大きくし,電極膜厚の大きな電極膜に入力された信号が通過するようにしても問題はない。 ただし,圧電アクチュエータ102の積層膜構造が基板101の垂直方向に対して非対称になるため,圧電アクチュエータ102の上方への変位,及び下方への変位の変形量が異なってくることに注意する必要がある。

    (実施例2)
    図5は,本発明の第2の実施形態に係る圧電駆動型MEMS素子14の構成を例示する模式平面図である。
    図5Bは,図5AのF−F'線断面図である。
    図5Cは,図5AのG−G'線断面図である。
    本発明の第2の実施形態に係る圧電駆動型MEMS素子14は,実施例1の圧電駆動型MEMS素子11と比較して、電極膜厚がいずれも同じであること、分離部がないこと、可動電極部にて下部電極膜223と上部電極膜221が接続配線205によって接続されていること以外は同じである。

    圧電駆動型MEMS素子14の信号の流れは,まず,固定電極部204に入力された信号が,可動電極部203の下部電極膜223によって形成されるキャパシタを介して可動電極部203の下部電極膜223と上部電極膜221,圧電アクチュエータ202の下部電極膜233と上部電極膜231を通って外部へ出力される。 即ち,入力された信号は圧電アクチュエータ202の下部電極膜233と上部電極膜231を通るため,圧電アクチュエータ202の電極膜抵抗は低下する。

    (実施例2と比較例1の比較)
    表2は,比較例1と実施例2との可変キャパシタでのQ値を比較したものである。 表2に示されているように,実施例2の圧電駆動型MEMS素子14のQ値は,比較例の圧電駆動型MEMS素子12と比較して,可動電極部203が圧電アクチュエータ202の下部電極膜233,及び上部電極膜231に接続されているため,Q値が増加している。 従って,実施例2の形態に示した圧電駆動型MEMS素子14は可変キャパシタのQ値低下を抑制することに効果があることが分かる。 なお,同様の構成で形成可能なスイッチについても,同様にON時の挿入損失の増加を抑制することに効果があることは明らかである。

    (変形例2)
    図6は,実施例2の圧電駆動型MEMS素子14の変形例2を示した圧電駆動型MEMS素子15の構成を例示する概念図である。
    図6Bは,図6AのH−H'線断面図である。
    図6Cは,図6AのI−I'線断面図である。
    図6に示したように,変形例2に係る圧電駆動型MEMS素子15は,実施例2の圧電駆動型MEMS素子14と比較して,下部電極膜と上部電極膜との接続位置が異なる。 具体的には,第2の実施形態の圧電駆動型MEMS素子14は可動電極203の下部電極膜223と上部電極膜221が接続されていたのに対し,変形例2の圧電駆動型MEMS素子15は圧電アクチュエータ202の下部電極膜233と上部電極膜231が接続されていて、接続位置をアクチュエータの先端(固定電極204の固定部側の端部)から固定部207側に0〜400μm移動させた。

    図7は圧電アクチュエータ202の下部電極膜233と上部電極膜231の接続位置に対する可変キャパシタのQ値の変化を示したものである。 図7より,圧電アクチュエータ202の下部電極膜233と上部電極膜231の接続位置が固定部側207に近づくにつれてQ値が低下することがわかる。 変形例2において,Q値の低下の抑制を,第2の実施例と比較例1のQ値の中間を下限とすると,圧電アクチュエータ202で下部電極膜233と上部電極膜231を接続する位置は,圧電アクチュエータ202の先端から4分の1の長さの場所までの範囲であることが望ましい。

    (実施例3) 図8、9は,実施例3の圧電駆動型MEMS素子の構成を例示する概念図である。
    図8Bは,図8AのL−L'線断面図である。
    図8Cは,図8AのM−M'線断面図である。
    図9A〜Cは図8の接続部327,328における電極膜の接続を例示した概念図である。

    図8の概念図に示したように,本発明の第3の実施形態に係る圧電駆動型MEMS素子16は,基板301の主面上に設けられ,固定部306から接続部327まで延在した圧電アクチュエータ305,及び接続部327から可動電極部320まで延在した圧電アクチュエータ303,及び固定部307から接続部328まで延在した圧電アクチュエータ304,及び接続部328から可動電極部318まで延在した圧電アクチュエータ304を備える。 そして,圧電アクチュエータ303の一端は圧電アクチュエータ305の一端と接続部327により接続されており,圧電アクチュエータ302の一端は圧電アクチュエータ304の一端と接続されており,更に圧電アクチュエータ303の一端と可動電極部317は接続されており,圧電アクチュエータ302の一端と可動電極部318は接続部326により接続されており,更に可動電極部317と可動電極部318は接続されている。 そして,固定部306,及び固定部307と基板301は連結されており,基板301の主面上方に間隙315を設けて圧電アクチュエータ302〜305,及び可動電極部317,318は支持されている。 また,基板301の主面上には固定電極部308が可動電極部317,及び可動電極部318と対向して形成されており,更に固定電極部318上には絶縁膜316が形成されている。

    圧電アクチュエータ302〜305と可動電極部317,318は、下部電極膜333,343,353,363,373,383,下部電極膜上に形成された下部圧電膜335,345,355,365,375,385,下部圧電膜上に形成された中間電極膜332,342,352,362,372,382,中間電極膜上に形成された上部圧電膜334,344,354,364,374,384,上部圧電膜上に形成された上部電極膜331,341,351,361,371,381と接続配線313,314により形成されている。

    そして,接続部327において、図9A〜Cのように圧電アクチュエータ303の下部電極膜310,及び上部電極膜314と圧電アクチュエータ305の中間電極312が接続配線323により電気的に接続されて、圧電アクチュエータ303の中間電極膜312と圧電アクチュエータ305の下部電極膜310,及び上部電極膜314が接続配線322により電気的に接続されている。 接続部328において、も同様に図9A〜Cのように電極膜が接続されている。 電気的に接続されている。 そのため,電源309により,下部電極膜310,及び上部電極膜314と,中間電極膜312の間に電圧を印加することにより,圧電アクチュエータ302〜305は基板301の主面に対して垂直方向に屈曲変位が,圧電アクチュエータ303,および圧電アクチュエータ302と圧電アクチュエータ304,及び圧電アクチュエータ305の変位方向が逆向きとなるため,圧電アクチュエータ302,及び圧電アクチュエータ303の先端に接続された可動電極部317,及び可動電極部318も基板301の主面に対して垂直方向に変位する。

    ここで圧電アクチュエータ302〜305の中間電極膜は下部電極膜,及び上部電極膜と比較して電極膜厚が大きくなっている。
    可動電極部317,及び可動電極部318は圧電アクチュエータ302〜305と同様の積層構造となっているが,可動電極317内,及び可動電極部318内において,下部電極膜333,343と上部電極膜331,341が電気的に接続されている。

    前述の通り,固定電極部308と可動電極部317,及び可動電極部318は間隙315を介して対向して配置されているため,固定電極部308と可動電極部317,及び可動電極部318の下部電極膜310との間にはキャパシタが形成される。 また,圧電アクチュエータ302,および圧電アクチュエータ303の変位に応じて可動電極部317,及び可動電極部318も変位するため,固定電極部308と可動電極部317,及び可動電極部318によって形成されるキャパシタは可変キャパシタとして機能することが可能となる。 可変キャパシタは同時にスイッチとしても機能することが可能である。

    圧電駆動型MEMS素子16の信号の流れは,まず,固定電極部308に入力された信号が,可動電極部317,及び可動電極部318の下部電極膜333,343によって形成されるキャパシタを介して可動電極部317,及び可動電極部318の下部電極膜333,343,接続配線313,314及び上部電極膜331,341,そして、圧電アクチュエータ302,及び圧電アクチュエータ303の下部電極膜353,363,及び上部電極膜353,361,接続部327,及び接続部328の接続配線323,及び接続配線325を通り,圧電アクチュエータ304,及び圧電アクチュエータ305の中間電極膜372、383を通って出力される。 即ち,入力された信号は抵抗の小さい電極膜又は並列配線を通る。

    (変形例3)
    変形例3の圧電駆動型MEMS素子は中間電極膜の厚さを下部電極膜,上部電極膜と同じにしたこと以外は実施例3の形態の圧電駆動型MEMS素子16と同じである。

    (変形例4)
    変形例4の圧電駆動型MEMS素子17は図10の概念図に例示したように実施例3の圧電駆動型MEMS素子16の接続配線313,314を省略した構成である。 接続配線313、314がないため、固定電極308と可動電極部317,318間の信号が、復路梁の上部及び下部電極を通らないこと以外は、実施例3の圧電駆動型MEMS素子16と同じである。

    (比較例2)
    変形例4の圧電駆動型MEMS素子18は図11の概念図に例示したように、中間電極膜の厚さが、上部及び下部電極膜の厚さと同じであること以外は変形例4の圧電駆動型MEMS素子18と同じである。

    (実施例4)
    図12の概念図に例示された実施例4の圧電駆動型MEMS素子19は実施例3の圧電駆動型MEMS素子16と比較して、接続部413,414が可動電極部417,418の下部電極膜と中間電極膜を接続し、下部電極膜が分離部411,412によって可動電極部側と圧電アクチュエータ側に分離されて、接続部427,428で、往路梁の下部電極膜及び上部電極膜が、復路梁の中間電極膜と接続配線で接続され、往路梁の中間電極膜と復路梁の上部電極膜及び下部電極膜が接続配線423,425で接続されている以外は同じである。

    圧電駆動型MEMS素子19の信号の流れは,まず,固定電極部408に入力された信号が,可動電極部417,及び可動電極部418の下部電極膜によって形成されるキャパシタを介して可動電極部417,及び可動電極部418の下部電極膜433,443,接続配線413,414及び中間電極膜432,442,そして、圧電アクチュエータ402,及び圧電アクチュエータ403の中間電極膜452,462,接続部427,及び接続部428の接続配線422,及び接続配線424を通り,圧電アクチュエータ404,及び圧電アクチュエータ405の上部電極膜471,481及び下部電極膜473,483を通って出力される。 即ち,入力された信号は抵抗の小さい電極膜又は並列配線を通る。

    表3は,2GHzで観測した可変キャパシタの静電容量が0.4pFにおける実施例3、変形例3、変形例4、比較例2、実施例4の圧電駆動型MEMS素子(バリキャップ)のQ値を示したものである。 比較例2に比べ実施例3、変形例3、変形例4、比較例2、実施例4の圧電駆動型MEMS素子はその出力信号の損失を抑制した。 また、第1,及び第2の実施形態の公正を組み合わせた実施例3,4の圧電駆動型MEMS素子は特に,キャパシタの信号の損失を相乗的に抑制することが可能となる。 なお,同様の構成で形成可能なスイッチについても,同様にON時の挿入損失の増加を抑制することに効果があることは明らかである。

    上記の実施形態に係る圧電駆動型MEMS素子により作成した可変キャパシタを組み込んで,周波数が可変のフィルタを内蔵する電子回路を作成できる。 また,上記MEMSの可変キャパシタを組み込んだ電子回路は,例えば携帯電話等の各種電子機器に用いることができる。

    11…実施例1の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 12…比較例1の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 13…変形例1の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 14…実施例2の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 15…変形例2の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 16…実施例3の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 17…変形例3の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 18…比較例2の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 19…実施例4の実施形態の圧電駆動型MEMS素子 101…基板 102…圧電アクチュエータ 103…可動電極部 104…固定電極部 105…接続配線 106…分離部 107…固定部 108…絶縁膜 109…電源 110…間隙 121…上部電極膜(可動電極部)
    122…中間電極膜(可動電極部)
    123…下部電極膜(可動電極部)
    124…上部圧電膜(可動電極部)
    125…下部圧電膜(可動電極部)
    131…上部電極膜(圧電アクチュエータ)
    132…中間電極膜(圧電アクチュエータ)
    133…下部電極膜(圧電アクチュエータ)
    134…上部圧電膜(圧電アクチュエータ)
    135…下部圧電膜(圧電アクチュエータ)
    201…基板 202…圧電アクチュエータ 203…可動電極部 204…固定電極部 205…接続配線 206…分離部 207…固定部 208…絶縁膜 209…電源 210…間隙 221…上部電極膜(可動電極部)
    222…中間電極膜(可動電極部)
    223…下部電極膜(可動電極部)
    224…上部圧電膜(可動電極部)
    225…下部圧電膜(可動電極部)
    231…上部電極膜(圧電アクチュエータ)
    232…中間電極膜(圧電アクチュエータ)
    233…下部電極膜(圧電アクチュエータ)
    234…上部圧電膜(圧電アクチュエータ)
    235…下部圧電膜(圧電アクチュエータ)
    301…基板 302、303,304,305…圧電アクチュエータ 306,307…固定部 309…電源 313、314…接続配線 315…間隙 316…絶縁膜 317、318…可動電極部 322、323,324,325…接続配線 327,328…接続部 331、341,351,361,371,381…上部電極膜 332、342,352,362,372,382…中間電極膜 333、343,353,363,373,383…上部電極膜 334、344,354,364,374,384…上部圧電膜 335、345,355,365,375,385…下部圧電膜 401…基板 402、403,404,405…圧電アクチュエータ 406,407…固定部 409…電源 411,412…分離部 413、414…接続配線 415…間隙 416…絶縁膜 417、418…可動電極部 422、423,424,325…接続配線 427,428…接続部 431、441,451,461,471,481…上部電極膜 432、442,452,462,472,482…中間電極膜 433、443,453,463,473,483…上部電極膜 434、444,454,464,474,484…上部圧電膜 435、445,455,465,475,485…下部圧電膜

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