【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、動力により窓ガラスを昇降させるパワーウィンドレギュレータ装置、特に詳述すれば、挟み込み防止機能を組込んだパワーウィンドレギュレータ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】パワーウィンドは、電動モータの動力を用いて窓ガラスを、ドアフレームの両側のガイドレールに沿ってケーブルにより昇降させるもの(ケーブル式) や、X型のアーム式を用いて昇降させるもの等いくつかのタイプが提案されているが、いずれのタイプにおいても動力源として電動モータを組込んだウィンドレギュレータ装置が使用される。 一方、窓ガラスの上昇時、窓ガラスとドアフレームとの間に人の手や物が挟まれた際、 これを感知して窓ガラスの上昇を中断し、直ちに下降動作へと窓ガラスの動きを反転させることの必要性から、 パワーウィンドのウィンドレギュレータ装置には挟み込み防止機能が付加される。 【0003】挟み込み防止機能を付加したパワーウィンドレギュレータ装置は、たとえば、実公平7−1886 4号公報に開示される。 これは、電動モータにより回転する入力側回転体の回転トルクをコイルばねを介して出力側回転体に伝達させ、この出力側回転体に伝達された回転トルクがケーブルやX型アームを作動させるものである。 窓ガラスとドアフレームとの間に人の手や物が挟まれると、窓ガラスの上昇がスピードダウンする。 これは、出力側回転体の動きをスピードダウンさせることになるので、定速度の入力側回転体とスピードダウンした出力側回転体との間に相対回転を必然的に生じることになるが、実公平7−18864号公報は、この相対回転を直ちに検出(接触子を接触部材に接触させるよう移動させることで実際には検出)し、検出信号を制御装置に送るものである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】前述した従来例では、 しかしながら、ドアフレームのモールや窓ガラスの縁の温度変化或いは使用年数に応じた摺動抵抗変化を考慮していないことから、たとえば、単に気温が下がり摺動抵抗が増大しただけにも係らず、挟み込みとして誤った検出をなし、窓ガラスを下降させる誤動作が生じる場合もある。 【0005】それ故に、本発明は、前述した従来技術の不具合を解消させることを解決すべき課題とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、前述した課題を解決するために、基本的には、窓ガラスを昇降させる駆動部と、該駆動部からの動力を受ける窓ガラス側の被駆動部との間の相対変位に対応する摺動抵抗が窓ガラス下降中一定値内にあって窓ガラス上昇中に一定値を越えたとき上昇窓ガラスを反転下降させ、該摺動抵抗が窓ガラス下降中一定値を一度でも越えた場合、窓ガラス上昇中駆動部への電流増加量が上昇したとき上昇窓ガラスを反転下降させる技術手段を用いる。 【0007】本発明は、具体的には、電動モータにより回転させられるウオームと、該ウオームと噛合うウオームホイールを有する駆動体と、該駆動体とリングスプリングを介して連結される被駆動体と、該被駆動体に結合された出力軸と、該出力軸と同期するプリント基板体を有し、該プリント基板体には窓ガラス下降時のリングスプリングの変位が一定領域を越えたときの抵抗を検出する第1のスイッチ部分と、窓ガラス上昇時のリングスプリングの変位が一定領域を越えたときの抵抗を検出する第2のスイッチ部分とを設け、さらに、窓ガラス下降時の第1のスイッチからの信号を受け電動モータへの電流増加量を検知する制御部とを備え、第2のスイッチ又は制御部からの信号により窓ガラスを下降させるパワーウィンドレギュレータ装置を提供する。 【0008】さらに、本発明は、車両の窓ガラスを上昇又は下降させる動力部と、窓ガラスの上昇又は下降動作を動力部へ指令する制御部とを有し、制御部が、窓ガラスが下降中か上昇中かを判断する窓ガラス移動判断部と、窓ガラスが挟み込み領域及び下降時摺動抵抗検出領域内に位置するか否かを判断する窓ガラス位置判断部と、窓ガラスの下降上昇中に測定された抵抗の値を判定する抵抗判定部と、および抵抗判定部からの信号に応じ動力部への電流増加量を測定する電流測定部とを有するパワーウィンドレギュレータ装置を提供する。 【0009】 【発明の実施の形態】図1を参照してパワーウィンドレギュレータ装置の一例を説明する。 同装置は、電動モータ1付きの円筒状のハウジング2を有し、このハウジング2内に円形の駆動体3を回転自在に収納する。 駆動体3の外周面のウオームホイール4を電動モータ1の出力軸のウオーム5と噛合せる。 駆動体3の中央のボス部6 は離間した対の溝7、7をその外周面に有す(図2参照)。 駆動体3の内周壁とボス部6との間に、突合せ端面8、8を有するリングスプリング9を配し、端面8を溝7内に位置させる。 【0010】ハウジング2とボス部6を貫通して出力軸10を配す。 出力軸10は、ケーブル式の窓ガラス昇降機のケーブル又はX型アーム式窓ガラス昇降機構のドリブンギヤに連結されるが、リングスプリング9と対向するようテンションプレートからなる被駆動体11を支持する。 出力軸10と被駆動体11とは一体回転する。 被駆動体11は下向きの爪12を有し、この爪12がリングスプリング9の端面8、8間に位置する。 【0011】窓ガラスを上昇又は下降させるべく、電動モータ1が一方向に回転すると、ウオーム5がウオームホイール4を回転させる。 このため、ウオームホイール4と一体の駆動体3の内周突部18がリングスプリング9の端面8に当接しかつ、端面8と爪12が係合することとなり、被駆動体11が回転する。 この被駆動体11 の回転は、出力軸10を同回転させ、窓ガラスを上昇又は下降させる。 窓ガラスの上昇中、窓ガラスとドアフレームとの間に人の手や物が挟まれて窓ガラスに負荷がかゝると、その負荷は、被駆動体11の爪12が一方の端面8を押込み、やがては、駆動体3と被駆動体11との間に相対回転を作る。 【0012】この相対回転は、出力軸10又は被駆動体11に固定されたプリント基板体13によって検知される。 プリント基板体13は、図4に示す如く、円弧状の対の離間したプリント回路からなる第1のスイッチ25 と、この第1のスイッチ25とは周方向に離間しかつ円弧状の対の離間したプリント回路からなる第2のスイッチ26と、両スイッチ25、26との間の非スイッチ部27とを備え、両スイッチ25、26からの信号は両スイッチ25、26とは反対側の面から端子装置19へ入力可能となっている。 駆動体3の中央のボス部6に、被駆動体11の円弧状の孔17を介してプリント基板体1 3に摺動自在なシュー16を配す。 シュー16は、スプリングの付勢力を受け、プリント基板体13の第1のスイッチ25、第2のスイッチ26又は非スイッチ部27 に常時摺接する。 【0013】通常の窓ガラスの昇降中は、駆動部3と非駆動部11との間に相対的変位が少ないことから、シュー16は非スイッチ部27に位置し、端子装置19への電気的信号の入力はない。 このような条件の下で、窓ガラス上昇中シュー16が第2のスイッチ26に接し、第2のスイッチ26をオン状態とさせた信号が端子装置1 9に入ると、制御部が挟み込みを検知し、上昇中の窓ガラスを直ちに下降させる。 一方、冬期等の低温時では、 通常の窓ガラス下降中その摺動抵抗が大きくなっていることから、シュー16が第1のスイッチ25に接し、第1のスイッチ25がオン(ON)状態となったことを知らせる信号が端子装置19に入力されることがある。 この場合、窓ガラスを上昇させると、その摺動抵抗が大きく、挟み込みが無いにも拘らず、第2のスイッチ26がオン(ON)状態となり、上昇中の窓ガラスが下降動作へと反転してしまう。 本例では、窓ガラス下降中に第1 のスイッチ25からの信号を受けると、窓ガラス上昇中の挟み込みを検知する第2のスイッチ26からの信号をキャンセルさせ、挟み込みは電動モータ1への通電量の増加率を測定し、検知する手段を用いる。 【0014】窓ガラスの位置を検出する機構について述べる。 出力軸10の先端ギヤ20を、中間ギヤ21と内歯ギヤ22とを少なくとも有する減速機に結合し、減速機を摩擦板23を介して位置検出プレート24に連結させる。 この機構によれば、例えば、出力軸10の6回転を位置検出プレート24の1回転とすることができる。 位置検出プレート24のプリント回路(図示なし)は端子装置19に電気接続し、位置検出プレート24の回転角信号(窓ガラスの位置信号相当)を外部の制御装置に送ることとする。 この位置信号に応じて、所定の位置まで下降できるよう電動モータ1の回転量とその方向を制御する。 【0015】窓ガラスの上昇中、窓ガラスとドアフレームとの間の挟み込み(人の手や物)があると、上昇中の窓ガラスに加えられる挟み込みによる負荷を窓ガラスの上昇中の摺動抵抗の増加を測定して検知する。 上昇時に窓ガラスが上死点に達すると第2のスイッチ26がオン状態となり、また、下降時に窓ガラスが下死点に到達すると第1のスイッチ25がオン状態となる。 そこで、図6に示す如く、上死点近傍の領域では窓ガラスを閉じきるため挟み込み検出を行わないので、この領域を除いた領域を挟み込み領域とする。 また、下死点近傍の領域では下降時の摺動抵抗の検出ができないので挟み込み領域からこの領域を除いた領域を下降時摺動抵抗検出領域とする。 両領域は位置プレート24により検出する。 【0016】次に、挟み込み検出動作について図5のフローチャートを参照して説明する。 挟み込み検出動作は、先ずは窓ガラスが全閉か否かの判断をステップ10 0にて行い、全閉のときはキャンセルフラグをクリアさせ次のステップ101へ進み、全閉でないときはステップ101へ直接進む。 ステップ101は窓ガラスが下降中か否かを判断し、窓ガラス下降中であれば、図6にて説明した下降時摺動抵抗検出領域内に窓ガラスが位置するか判断するステップ102へ、又、窓ガラス非下降中であればステップ103からステップ104へと進み、 窓ガラスの上昇と窓ガラスの挟み込み検出領域内に位置することの判断をする。 ステップ102が、窓ガラスが下降時摺動抵抗検出領域内にないと判断すれば、スタートへ戻るが、同領域内に位置すると判断すると、ステップ105へ進み、第1のスイッチ25がONかOFFか判断する。 OFFの判断のまゝ、窓ガラスが上昇運動に入り、ステップ104が、窓ガラスが挟み込み検出領域内に位置することを判断すると、後述するステップ10 6を介してステップ107へ進む。 ステップ107は第2のスイッチ26がONかOFFかを判断する。 ONであれば、挟み込みと窓ガラスの下降の処理を行うが、O FFであればスタートへ戻る。 【0017】ステップ105が第1のスイッチ25がO N状態と判断すると、キャンセルフラグのセットを行うが、この状態で下降中の窓ガラスが上昇運動へと移り、 ステップ106の判断へと進むと、このキャンセルに応じステップ108へと進み、電動モータ1への電流増加量が一定値(I)を越えたか否かステップ108で判断する。 ステップ108が電流増加量が一定値(I)を越えると判断すると、挟み込みと窓ガラスの下降の処理を行うが、該一定値(I)を越えていないと判断するとスタートへ戻る。 【0018】図5のフローチャートでは、ステップ10 7が第2のスイッチ26がOFFを判断すると処理をスタートへ戻したが、ステップ108の判断をしてから、 スタート又は挟み込み検知につづく窓ガラス下降の処理をしてスタートへ戻してもよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一例のパワーウィンドレギュレータ装置の分解斜視図である。 【図2】駆動体の平面図である。 【図3】駆動体の断面図である。 【図4】プリント基板体のプリント回路例を示す平面図である。 【図5】挟み込み検出動作を示すフローチャート図である。 【図6】窓ガラスの挟み込み検出領域を示す図である。 【符号の説明】 1 電動モータ 3 駆動体 4 ウオームホイール 5 ウオーム 6 ボス部 7、7 溝 9 リングスプリング 10 出力軸 11 被駆動体 12 爪 13 プリント基板体 16 シュー 20、21、22 ギヤ 24 位置検出プレート フロントページの続き (72)発明者 石川 均 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 鈴木 康明 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 |