破壊検知センサ、破壊検知システムおよび構造物

申请号 JP2014016414 申请日 2014-01-31 公开(公告)号 JP2015143624A 公开(公告)日 2015-08-06
申请人 飛栄建設株式会社; 发明人 近藤 司;
摘要 【課題】建築物などの各種の構造物の構造用部材に取り付けたとき、この構造用部材、ひいては構造物の破壊が起きる前に破壊の危険性を容易に検知することができ、しかも構成が簡単で安価に実現することができる破壊検知センサを提供する。 【解決手段】破壊検知センサは、第1部材10と、一端が第1部材10に固定または拘束され、他端が第1部材10に固定または拘束されていない状態で第1部材10と並列に設けられ、かつ第1部材10の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材20とを有する。第1部材10および第2部材20は例えば丸棒または 角 棒であり、第1部材10は例えば中空棒である。第2部材20は上記の一端と上記の他端との間に応 力 集中部位となる切欠き24を有する。第2部材20は脆性材料からなる。 【選択図】図1
权利要求

第1部材と、 一端が上記第1部材に固定または拘束され、他端が上記第1部材に固定または拘束されていない状態で上記第1部材と並列に設けられ、かつ上記第1部材の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材とを有する破壊検知センサ。上記第2部材は上記一端と上記他端との間に応集中部位を有する請求項1記載の破壊検知センサ。上記応力集中部位は上記第2部材の外周面に設けられた切欠き部である請求項2記載の破壊検知センサ。上記第2部材は脆性材料または素脆化が起き得る鉄鋼材料からなる請求項1〜3のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記脆性材料は鋳鉄、ガラス、セラミックス、プラスチックまたはコンクリートである請求項4記載の破壊検知センサ。上記第1部材が、上記第1部材が弾性変形または塑性変形を起こしたときに上記第2部材を上記一端から上記他端に向かう方向に押圧する押圧部を有し、上記第2部材が、上記押圧部により押圧される被押圧部を有する請求項1〜5のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記第2部材の上記他端に上記一端と反対側に引張力を加える付勢機構を有する請求項1〜6のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記付勢機構は、上記第2部材が破断したときに破断片を上記一端から上記他端に向かう方向に移動させる請求項7記載の破壊検知センサ。上記付勢機構は、ばねの復元力を用いた機構または磁力を用いた機構からなる請求項7または8記載の破壊検知センサ。上記ばねの復元力を用いた機構は圧縮コイルばね、板ばねまたは空気ばねである請求項9記載の破壊検知センサ。上記第2部材の少なくとも上記他端側の一部が強磁性体からなり、上記磁力を用いた機構は上記第1部材に設けられた永久磁石または電磁石である請求項9記載の破壊検知センサ。上記第1部材は中空棒からなり、上記第2部材は上記中空棒の中空部に挿通された内側棒からなる請求項1〜11のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記中空棒の上記中空部は上記一端から上記他端に向かう方向に順に第1部分、第2部分および第3部分を有し、 上記内側棒は上記一端から上記他端に向かう方向に順に第4部分および第5部分を有し、 上記中空棒の上記中空部の上記第1部分および上記第2部分に上記内側棒の上記第4部分が収容され、 上記中空棒の上記中空部の上記第3部分に上記内側棒の上記第5部分および上記第4部分の上記第5部分側の一部が収容されている請求項12記載の破壊検知センサ。上記中空棒の上記中空部は上記一端から上記他端に向かう方向に順に第1部分および第3部分を有し、 上記内側棒は上記一端から上記他端に向かう方向に順に第4部分および第5部分を有し、 上記中空棒の上記中空部の上記第1部分および上記第3部分に上記内側棒の上記第4部分が収容され、 上記中空棒の上記中空部の上記第3部分に上記内側棒の上記第5部分および上記第4部分の上記第5部分側の一部が収容されている請求項12記載の破壊検知センサ。上記中空棒および上記内側棒は丸棒または棒である請求項12〜14のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記中空棒の上記中空部の上記第1部分と上記内側棒の上記第5部分との間の空間に上記内側棒の上記第4部分が貫通した圧縮コイルばね、板ばねまたは空気ばねが圧縮された状態で収容されている請求項13〜15のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記中空棒の、上記内側棒の上記第5部分側の一端にばね保持具が設けられており、このばね保持具に板ばねまたはコイルばねが保持され、上記内側棒の上記第5部分に引張力を加えている請求項14または15記載の破壊検知センサ。上記破壊検知センサは引張破壊、圧縮破壊、せん断破壊、曲げ破壊またはねじり破壊を検知する請求項1〜17のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記破壊検知センサは、上記第2部材の破断および/または変位を検出する破断および/または変位検出装置を有する請求項1〜18のいずれか一項記載の破壊検知センサ。上記破壊検知センサは、上記破断および/または変位検出装置により上記第2部材の破断および/または変位を検出したときに破断および/または変位の情報を外部に報知および/または表示する報知および/または表示装置を有する請求項19記載の破壊検知センサ。第1部材と、 一端が上記第1部材に固定または拘束され、他端が上記第1部材に固定または拘束されていない状態で上記第1部材と並列に設けられ、かつ上記第1部材の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材とを有する破壊検知センサと、 上記第2部材の破断および/または変位を検出する破断および/または変位検出装置と、 上記破断および/または変位検出装置により検出された上記第2部材の破断および/または変位の情報を外部に報知および/または表示する報知および/または表示装置とを有する破壊検知システム。一つまたは複数の破壊検知センサを有し、 少なくとも一つの上記破壊検知センサが、 第1部材と、 一端が上記第1部材に固定または拘束され、他端が上記第1部材に固定または拘束されていない状態で上記第1部材と並列に設けられ、かつ上記第1部材の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材とを有する破壊検知センサである構造物。上記構造物は建築物、橋、トンネルまたは塔である請求項22記載の構造物。

中空部を有する六角ボルト状の第1部材と、 上記第1部材の上記中空部に挿通された、ポテンショメータを挟んで設けられた前部と後部とからなる丸棒状の第2部材とを有し、 上記ポテンショメータの可動部は上記第1部材に設けられた貫通孔に嵌め込まれていて上記第1部材と一体になっており、 上記第2部材の上記前部の一端が上記第1部材に固定または拘束され、上記第2部材の上記後部の他端が上記第1部材に固定または拘束されていない破壊検知センサ。

说明书全文

この発明は、破壊検知センサ、破壊検知システムおよび構造物に関し、例えば、建築物などの各種の構造物の接合部の破壊の危険性を検知するのに用いて好適なものである。

建築物、橋、トンネルなどの各種の構造物の構造用部材の接合(連結あるいは締結を含む広義の接合)には、溶接、リベット、ボルト・ナットなどによる様々な接合技術が用いられている。その構造用部材の接合部の破壊は構造物の損壊と密接に繋がっているため、構造物の安全性の観点から、接合部の損傷を調べる必要があり、定期的に検査を行わなければならない。このための従来の一般的な検査方法は打音検査や目視検査がほとんどである。しかしながら、特に打音検査は測定者の勘や熟練が必要であるため、測定者が限られてしまう。さらに、一般に構造用部材の接合部は高所または人間の目に直接触れにくい場所にあることが多いため、打音検査や目視検査には困難が伴う。また、高所作業車を使った検査作業は時間と手間のかかる非効率的な作業であり、危険性も高い。このため、短時間で、かつ無人で24時間、接合部の破壊の危険性を検知し、報知する技術が求められている。

このような目的で、物体を固定しているボルトの破断を生じた場合または取り付けられた物体が脱落した場合に即座に検知する監視方法が知られている(特許文献1参照。)。これによれば、物体を固定しているボルトまたは構造物に取り付けられた物体の状態を非接触で常時監視し、ボルトが破断した場合または取り付けられた物体が脱落した場合に即座に検知し警報を発するようにしている。また、所定の軸であるいは塑性域に達する軸力で被締結物を締結でき、ボルトが塑性変形前のものか塑性変形域のものかを簡単に選別できる軸力管理ボルトが知られている(特許文献2参照。)。この軸力管理ボルトは、軸部とねじ部とを備え、軸方向に作用する軸力を管理することができるものであって、そのボルトの軸方向のひずみ量が所定値を超えたときに破壊する軸力検知物質をボルトの少なくとも軸部の外表面に付着し、その軸力検知物質は、予めボルトに軸方向の張力をかけた状態で付着されたものである。さらに、高力ボルトの内部軸方向に、この高力ボルト素材より伸びが大きく、両端部のそれぞれで端面近傍から端部に向かって漸次断面積が増大する素材を備えた飛散防止性に優れた高力ボルトが知られている(特許文献3参照。)。

特開2011−164080号公報

特開2012−57709号公報

特開2004−183817号公報

しかしながら、特許文献1に記載の監視方法は、ボルトが破断した場合または構造物に取り付けられた物体が脱落した場合にそれを検知するものに過ぎず、ボルトが破断する前または構造物に取り付けられた物体が脱落する前に検知することができない。また、特許文献2に記載の軸力管理ボルトは、ボルトの軸力しか管理することができないため、引張破壊しか検知することができず、せん断破壊、曲げ破壊、ねじり破壊などを検知することはできない。さらに、特許文献3に記載された高力ボルトは、ボルトの飛散落下に起因する事故を未然に防止するためのものに過ぎない。

そこで、この発明が解決しようとする課題は、建築物などの各種の構造物の構造用部材に取り付けたとき、この構造用部材、ひいては構造物の破壊が起きる前に破壊の危険性を容易に検知することができ、破断信号を容易に検出することが可能であるためこの破断信号を用いて短時間で、かつ無人で24時間、破壊の危険性を検知し、報知することが可能であり、しかも構成が簡単で安価に実現することができる破壊検知センサおよびこの破壊検知センサを用いた破壊検知システムを提供することである。

この発明が解決しようとする他の課題は、上記の破壊検知センサを用いた建築物などの構造物を提供することである。

上記課題を解決するために、この発明は、 第1部材と、 一端が上記第1部材に固定または拘束され、他端が上記第1部材に固定または拘束されていない状態で上記第1部材と並列に設けられ、かつ上記第1部材の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材とを有する破壊検知センサである。

この破壊検知センサは、第1部材が弾性変形または塑性変形を起こしたときに第2部材にこの第2部材を破断する力が働くように構成されている。第1部材の弾性変形または塑性変形中のいずれの時点で第2部材が破断するかは必要に応じて決められる。第2部材が破断する位置は特に限定されないが、第2部材が破断する位置を予め決めておく方が破壊検知センサの設計が容易となるため、好適には、第2部材はその一端と他端との間に応力集中部位を有する。応力集中部位は、典型的には、第2部材の外周面に設けられた切欠き部である。切欠き部の形状や深さ(切欠き量)は、破壊検知センサの破壊感度などを考慮して適宜選ばれる。また、切欠き部は、第2部材の外周面の全周に亘って設けられてもよいし、一部に設けられてもよく、必要に応じて選ばれる。応力集中部位は、切欠き部に限定されるものではなく、例えば、第2部材の内部に設けられた空洞、第2部材の外周部あるいは内部に設けられた、第2部材の母材と弾性率が異なる物質からなる部分などであってもよい。第2部材は、破壊検知センサが取り付けられる構造物の構造用部材の材料や第1部材に使用する材料などに応じて適宜決められる材料を用いて構成されるが、破壊検知センサの破壊感度の向上を図る観点から、典型的には、脆性材料からなる。脆性材料は、例えば、鋳鉄、ガラス、セラミックス、プラスチック、コンクリートなどであるが、これに限定されるものではない。プラスチックとしては、例えば、アクリルなどの熱可塑性プラスチックが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、例えば、構造物の構造用部材が素脆化が起き得る鉄鋼材料により構成される場合において、第2部材も、水素脆化が起き得る鉄鋼材料により構成することにより、事故などにより構造用部材および破壊検知センサが水素を含む雰囲気に晒されたとき、第2部材が水素脆化により脆性を有するようになるため、水素脆化による構造用部材の破壊の危険性を破壊検知センサにより検知することができる。また、構造物の構造用部材が低温脆性が起き得る鉄鋼材料により構成される場合において、第2部材も、低温脆性が起き得る鉄鋼材料により構成することにより、何らかの原因で構造用部材および破壊検知センサが低温になったとき、第2部材が低温脆性により脆性を有するようになるため、低温脆性による構造用部材の破壊の危険性を破壊検知センサにより検知することができる。また、第2部材の外周面に切欠き部が設けられる場合には、第2部材は、切欠脆化が起き得る延性の鉄鋼材料などにより構成してもよい。第1部材の材質は必要に応じて選ばれる。第1部材は、一般的には第2部材より延性が高い材料により構成され、例えば、鉄鋼材料、木材、プラスチックなどにより構成されるが、これに限定されるものではない。

引張破壊の検知に好適な破壊検知センサでは、典型的には、第1部材は、第1部材が弾性変形または塑性変形を起こしたときに第2部材をその一端から他端に向かう方向に押圧する押圧部を有し、第2部材は、この押圧部により押圧される被押圧部を有する。こうすることで、第1部材が弾性変形または塑性変形を起こしたときにその押圧部が第2部材の被押圧部を押圧するため、第2部材にこの第2部材を破断する力が働く。せん断破壊、圧縮破壊、曲げ破壊およびねじり破壊の検知に好適な破壊検知センサでは、第1部材の押圧部および第2部材の被押圧部は不要であるが、備えていてもよい。これらの破壊検知センサは、好適には、第2部材の上記の他端に上記の一端と反対側に引張力を加える付勢機構を有する。付勢機構は、第2部材が破断したときに破断片を上記の一端から上記の他端に向かう方向に移動させる。付勢機構は、例えば、ばねの復元力を用いた機構または磁力を用いた機構からなるが、これに限定されるものではない。ばねの復元力を用いた機構は、典型的には、圧縮コイルばね、板ばねまたは空気ばねであるが、これに限定されるものではない。また、磁力を用いた機構を用いる場合は、例えば、第2部材の少なくとも上記の他端側の一部が強磁性体あるいは永久磁石からなり、磁力を用いた機構は第1部材に設けられた永久磁石または電磁石である。この場合、第2部材の強磁性体からなる部分と永久磁石または電磁石との間にそれらが互いに引き付け合う力が働くようにする。

典型的には、第1部材は中空棒からなり、第2部材は中空棒の中空部に挿通された内側棒からなる。これらの中空棒および内側棒は互いに同軸に設けられてもよいし、同軸に設けられなくてもよく、必要に応じて選ばれる。引張破壊の検知に好適な破壊検知センサでは、典型的には、中空棒の中空部は、上記の一端から上記の他端に向かう方向に順に第1部分、第2部分および第3部分を有し、内側棒は上記の一端から上記の他端に向かう方向に順に第4部分および第5部分を有する。そして、中空棒の中空部の第1部分および第2部分に内側棒の第4部分が収容され、中空棒の中空部の第3部分に内側棒の第5部分および第4部分の第5部分側の一部が収容される。この場合、例えば、中空棒の中空部の第2部分と第3部分との段差面を上記の押圧部、内側棒の第5部分の第4部分側の端面を上記の被押圧部とすることができる。せん断破壊、圧縮破壊、曲げ破壊およびねじり破壊の検知に好適な破壊検知センサでは、中空棒の中空部の第2部分を省略することができる。この場合、中空棒の中空部の第1部分および第3部分に内側棒の第4部分が収容され、中空棒の中空部の第3部分に内側棒の第5部分および第4部分の第5部分側の一部が収容される。中空棒および内側棒は、好適には、丸棒または棒である。角棒の横断面形状は必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば、三角形、四角形(長方形または正方形)、五角形、六角形、八角形などである。例えば、中空棒の中空部の第1部分と内側棒の第5部分との間の空間に内側棒の第4部分が貫通した圧縮コイルばね、板ばねまたは空気ばねが圧縮された状態で収容される。あるいは、中空棒の、内側棒の第5部分側の一端にばね保持具が設けられ、このばね保持具に板ばねまたはコイルばねが保持され、内側棒の第5部分に引張力を加えるようにしてもよい。この場合、ばね保持具に保持された板ばねまたはコイルばねの一端は内側棒の第5部分に固定され、他端がばね保持具に固定される。この状態で板ばねまたはコイルばねが自然の状態に比べて引き伸ばされていることにより、内側棒の第5部分に引張力が加わる。

破壊検知センサは、引張破壊、圧縮破壊、せん断破壊、曲げ破壊またはねじり破壊を検知するもの、あるいは、それらの二つ以上が複合した複合破壊を検知するもののいずれであってもよい。

破壊検知センサは全体をボルト状に構成することもできる。この場合、第1部材を外周面に雄ねじが切られた軸部と頭部とからなる形状とし、第1部材に設けられた中空部に第2部材を挿通させる。頭部の形状は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば六角形である。このボルト状の破壊検知センサは、通常のボルトと同様に、接合しようとする構造用部材に設けられた貫通孔に通し、この貫通孔から外側に出た軸部の雄ねじにナットを嵌めて締め付けることにより構造用部材に取り付けることができる。あるいは、接合しようとする構造用部材の一方または両方の貫通孔の内周面に雌ねじを切り、このボルト状の破壊検知センサの軸部を、接合しようとする構造用部材の貫通孔に通し、この軸部の雄ねじをこの貫通孔の内周面に切られた雌ねじにねじ込むことにより、ナットを用いないでも破壊検知センサを構造用部材に取り付けることができる。このボルト状の破壊検知センサは、この意味で破壊センサ付きボルトと言い換えることもできる。

破壊検知センサは、必要に応じて、第2部材の破断および/または変位を検出する破断および/または変位検出装置を有する。破壊検知センサは、好適には、さらに、この破断および/または変位検出装置により第2部材の破断および/または変位を検出したときにその破断および/または変位の情報を外部に報知および/または表示する報知および/または表示装置を有する。

また、この発明は、 第1部材と、 一端が上記第1部材に固定または拘束され、他端が上記第1部材に固定または拘束されていない状態で上記第1部材と並列に設けられ、かつ上記第1部材の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材とを有する破壊検知センサと、 上記破壊検知センサの上記第2部材の破断および/または変位を検出し、検出した上記第2部材の破断および/または変位の情報を外部に報知および/または表示する報知および/または表示装置とを有する破壊検知システムである。

また、この発明は、 一つまたは複数の破壊検知センサを有し、 少なくとも一つの上記破壊検知センサが、 第1部材と、 一端が上記第1部材に固定または拘束され、他端が上記第1部材に固定または拘束されていない状態で上記第1部材と並列に設けられ、かつ上記第1部材の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する第2部材とを有する破壊検知センサである構造物である。

構造物は、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、建築物、橋、トンネル、塔などである。建築物は、具体的には、例えば、ビルディング、マンション、戸建住宅、アパート、駅舎、校舎、庁舎、競技場、球場、病院、教会、工場、倉庫、火力発電所、水力発電所、原子力発電所、焼却炉、化学プラント、溶鉱炉などである。構造物は、各種の機械(例えば、工作機械などの各種産業用機械、クレーンなど)、各種の車両(例えば、クレーン車、ブルドーザー、ショベルカーなど)、各種の船舶、各種の航空機、広告塔、表示塔などであってもよい、

上記の破壊検知システムおよび構造物の各発明においては、その性質に反しない限り、上記の破壊検知センサの発明に関連して説明したことが成立する。

この発明によれば、破壊検知センサを構造物の構造用部材に取り付けた場合、この構造物に何らかの力が働いて第1部材が弾性変形または塑性変形を起こしたとき、第2部材が破断および/または変位するため、この破断および/または変位を検出することにより第1部材が破断し、あるいは、第1部材が過度に変位していることを検知することができ、それによってこの構造用部材、ひいては構造物の破壊が起きる前に破壊の危険性を容易に検知することができる。また、例えば、第2部材が破断したときに第1部材から第2部材の破断片が飛び出すように構成し、この飛び出しを検出したりすることにより破断信号を容易に検出することが可能であるため、この破断信号を用いて短時間で、かつ無人で24時間、破壊の危険性を検知し、報知することが可能である。しかも、この破壊検知センサは第1部材と第2部材とにより構成することができるため、構成が簡単で安価に実現することができる。また、この破壊検知センサを用いた破壊検知システムによれば、構造物の破壊が起きる前に破壊の危険性を外部に報知および/または表示することができるので、構造物の破壊を防止する対策を施したり、構造物から退避したりすることができ、人的および物的な損害を未然に防止することができる。さらに、この破壊検知センサの構造物に対する取り付け方を選ぶことにより、引張破壊、せん断破壊、圧縮破壊、曲げ破壊、ねじり破壊などのいずれも検知することができる。

この発明の第1の実施の形態による破壊検知センサを示す正面図、左側面図、右側面図、縦断面図および横断面図である。

この発明の第1の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第1の実施の形態による破壊検知センサを構造物の接合部に取り付けた状態を示す断面図である。

図3に示す構造物の接合部に引張荷重が加わったときの接合部および破壊検知センサの様子を示す断面図である。

図3に示す構造物の接合部により強い引張荷重が加わったときの接合部および破壊検知センサの様子を示す断面図である。

図3に示す構造物の接合部にせん断荷重が加わったときの接合部および破壊検知センサの様子を示す断面図である。

図3に示す構造物の接合部に強いせん断荷重が加わったときの接合部および破壊検知センサの様子を示す断面図である。

この発明の第2の実施の形態による破壊検知センサを示す正面図、左側面図、右側面図、縦断面図および横断面図である。

この発明の第2の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第4の実施の形態による破壊検知センサを示す正面図、左側面図、右側面図、縦断面図および横断面図である。

この発明の第4の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第4の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態を示す縦断面図および斜視図である。

この発明の第4の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態で構造物に強い曲げモーメントが働いた状態を示す縦断面図および斜視図である。

この発明の第5の実施の形態による破壊検知センサを示す縦断面図である。

この発明の第5の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態を示す斜視図である。

この発明の第5の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態で強いねじれモーメントが働いた状態を示す斜視図である。

この発明の第5の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態で強いねじれモーメントが働いて第2部材が破断した状態を示す縦断面図である。

この発明の第6の実施の形態による破壊検知センサを示す正面図、左側面図および右側面図である。

この発明の第6の実施の形態による破壊検知センサを示す縦断面図および横断面図である。

この発明の第6の実施の形態による破壊検知センサを図3に示す構造物の接合部に取り付けた状態を示す断面図である。

この発明の第7の実施の形態による破壊検知センサを示す正面図、左側面図、右側面図、縦断面図および横断面図である。

この発明の第7の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材、第3部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第8の実施の形態による破壊検知センサを示す縦断面図である。

この発明の第9の実施の形態による破壊検知センサを示す縦断面図である。

この発明の第10の実施の形態による破壊検知センサを構造物の接合部に取り付けた状態を示す断面図である。

この発明の第11の実施の形態による破壊検知センサを示す正面図、左側面図、右側面図、縦断面図および横断面図である。

この発明の第11の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第11の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態を示す縦断面図および斜視図である。

この発明の第11の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態で構造物に強い曲げモーメントが働いた状態を示す縦断面図および斜視図である。

この発明の第12の実施の形態による破壊検知センサを示す縦断面図である。

この発明の第12の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第12の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態および構造物に強い圧縮荷重が加わった状態を示す断面図および斜視図である。

この発明の第13の実施の形態による破壊検知センサを示す縦断面図である。

この発明の第13の実施の形態による破壊検知センサを構成する第1部材および第2部材を示す縦断面図である。

この発明の第13の実施の形態による破壊検知センサを構造物に取り付けた状態および構造物に強い圧縮荷重が加わった状態を示す断面図および斜視図である。

この発明の第14の実施の形態による破断検知システムを示す略線図である。

この発明の第15の実施の形態による破壊検知センサを示す略線図である。

この発明の第15の実施の形態による破壊検知センサの動作を説明するための略線図である。

この発明の第1〜第15の実施の形態のいずかによる破壊検知センサを用いて建物を監視する監視システムを示す略線図である。

実施例で作製した引張破壊検知用破壊検知センサを構成する部品を示す図面代用写真である。

実施例で作製した引張破壊検知用破壊検知センサを示す図面代用写真である。

図41に示す引張破壊検知用破壊検知センサを用いた引張破壊実験装置を示す図面代用写真である。

図42に示す引張破壊実験装置を構成する部品を示す図面代用写真である。

図42に示す引張破壊実験装置を引張試験機に取り付けて引張試験を行っている様子を示す図面代用写真である。

図42に示す引張破壊実験装置を引張試験機に取り付けて引張試験を行っている様子を示す図面代用写真である。

図42に示す引張破壊実験装置の引張試験の結果を示す略線図である。

図42に示す引張破壊実験装置の引張試験の結果を示す略線図である。

図42に示す引張破壊実験装置の引張試験の結果を示す略線図である。

図42に示す引張破壊実験装置の引張試験の結果を示す略線図である。

実施例で作製した曲げ破壊検知用破壊検知センサを構成する部品を示す図面代用写真である。

実施例で作製した曲げ破壊検知用破壊検知センサを示す図面代用写真である。

図51に示す曲げ破壊検知用破壊検知センサを曲げ試験機に取り付けて3点曲げ試験を行っている様子を示す図面代用写真である。

図51に示す曲げ破壊検知用破壊検知センサを曲げ試験機に取り付けて3点曲げ試験を行っている様子を示す図面代用写真である。

図51に示す曲げ破壊検知用破壊検知センサを曲げ試験機に取り付けて3点曲げ試験を行っている様子を示す図面代用写真である。

図51に示す曲げ破壊検知用破壊検知センサを曲げ試験機に取り付けて3点曲げ試験を行っている様子を示す図面代用写真である。

実施例で作製した、ポテンショメータを用いて変位を測定する破壊検知センサに用いたポテンショメータを示す図面代用写真である。

実施例で作製した、ポテンショメータを用いて変位を測定する破壊検知センサを示す図面代用写真である。

図57に示す破壊検知センサの一部を拡大して示す図面代用写真である。

実施例で作製した、ポテンショメータを用いて変位を測定する破壊検知センサの変位測定試験片を示す図面代用写真である。

図57に示す破壊検知センサを用いて変位の測定を行った結果を示す略線図である。

圧縮コイルばねの代わりに板ばねを用いて第2部材に引張力を加える破壊検知センサの一例を示す縦断面図である。

以下、発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について説明する。 〈1.第1の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図1A〜Eは第1の実施の形態による破壊検知センサを示し、図1Aは正面図、図1Bは左側面図、図1Cは右側面図、図1Dは縦断面図、図1Eは図1AのE−E線に沿っての横断面図である。この破壊検知センサは、特に引張破壊を検知するのに用いて好適なものである。

図1A〜Eに示すように、この破壊検知センサは、中空部11を有する六角ボルト状の第1部材10と、第1部材10の中空部11に挿通された丸棒状の第2部材20とを有する。第2部材20は、第1部材10の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する。

図2Aに第1部材10の詳細、図2Bに第2部材20の詳細を示す。第1部材10の全長をL、第2部材20の全長をlとすると、典型的にはL

図2Aに示すように、第1部材10は、直径がDの円柱状の軸部12とこの軸部12より太い六角柱状の頭部13とからなる。軸部12の外周面の軸部12の先端から長さL1 の範囲に亘って雄ねじ14が切られている。この雄ねじ14は、この破壊検知センサを破壊検知を行う対象となる構造物に固定する際にナットを嵌めたり、構造物に設けられた孔の内周面に切られた雌ねじにねじ込んだりするために用いられる。第1部材10の中空部11の横断面形状はどの位置でも第1部材10の中心軸を中心とする円形である。中空部11は、軸部12の先端から順に、直径がD1 (ただし、D1

2 の第1部分11aと、直径がD

2 (ただし、D

2 >D

1 )で長さがL

3 の第2部分11bと、直径がD

3 (ただし、D>D

3 >D

2 )で長さがL

4 の第3部分11cとからなる。ただし、L

2 +L

3 +L

4 =Lである。

図2Bに示すように、第2部材20は、直径がd1 で長さがl1 の円柱状の軸部21と直径がd2 (ただし、d2 >d1 )で長さがl2 の円柱状の頭部22とからなる。ただし、l1 +l2 =lである。また、l1 >L2 +L3 であり、l2

4 である。第1部材10の中空部11の第1部分11aにおいて第2部材20の軸部21がその長手方向に移動可能とするため、軸部21の直径d

1 は、第1部材10の中空部11の第1部分11aの直径D

1 より小さく選ばれている。すなわち、d

1

1 である。第1部分11aにおける軸部21の遊びを小さくするために、典型的には、例えば、第1部分11aの内周面と軸部21との間の隙間の大きさ(D

1 −d

1 )/2が第1部分11aの直径D

1 の5%以内になるようにする。すなわち、典型的には(D

1 −d

1 )/2≦0.05D

1 に選ばれる。軸部21の外周面の軸部21の先端から長さl

3 の範囲に亘って雄ねじ23が切られている。また、軸部21の外周面には、応力集中部位となるV溝状の切欠き24が全周に亘って設けられている。この切欠き24の切欠き角度はθである。頭部22の直径d

2 は、第1部材10の中空部11の第3部分11cの直径D

3 より小さく選ばれている。すなわち、d

2

3 である。第3部分11cにおける頭部22の遊びを小さくするために、典型的には、例えば、第3部分11cの内周面と頭部22との間の隙間の大きさ(D

3 −d

2 )/2が第3部分11cの直径D

3 の5%以内になるようにする。すなわち、典型的には(D

3 −d

2 )/2≦0.05D

3 に選ばれる。

図1A〜Eに示すように、第2部材20の軸部21が第1部材10の中空部11の第1部分11aおよび第2部分11bに挿通されており、軸部21の先端が第1部材10の端面から突出している。そして、軸部21の先端の雄ねじ23にナット30が嵌められている。

第2部材20の頭部22および軸部21の頭部22側の一部は第1部材10の中空部11の第3部分11cに収容されている。第2部材20の軸部21の頭部22側の部分には圧縮コイルばね40が、軸部21が貫通した状態で設けられている。圧縮コイルばね40は、第1部材10の中空部11の第2部分11bおよび第3部分11cに圧縮された状態で収容されている。圧縮コイルばね40の直径は第2部分11bの直径D2 より小さい。圧縮コイルばね40が圧縮されていることによる復元力が働くことにより、圧縮コイルばね40の一端は、第1部分11aと第2部分11bとの間の円環状の段差面S1 を押圧し、他端は第2部材20の頭部22の軸部21側の円環状の端面S2 を押圧している。圧縮コイルばね40の復元力により頭部22の端面S2 が押圧されていることにより、第2部材20の軸部21は頭部22側に引っ張られている。これによって、第2部材20の先端部が第1部材10の先端部に拘束されている。第1部材10の中空部11の第2部分11bと第3部分11cとの間の円環状の段差面S3 は押圧部を構成し、第2部材20の頭部22の軸部21側の円環状の端面S2 は被押圧部を構成する。

この破壊検知センサの各部の寸法(L、L1 〜L4 、l、l1 〜l3 、D、D1 〜D3 、d、d1 、d2 、θなど)は、破壊検知センサを取り付ける構造物などに応じて適宜選ばれる。

第1部材10の材質は、この破壊検知センサにより破壊検知を行う構造物の構造用部材の材質などに応じて適宜選ばれるが、例えば、鉄鋼、木材、プラスチックなどである。第2部材20は、第1部材10の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する材料からなり、例えば、鋳鉄、ガラス、セラミックス、プラスチック、コンクリートなどの脆性材料からなる。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(第1部材10の許容変形量)は、第2部材20の切欠き24の形状および深さ(切欠き量)、言い換えると切欠き24の先端の部分の切欠き角度θおよび切欠き24の先端の部分の軸部21の直径dと、第1部材10の中空部11の第2部分11bと第3部分11cとの間の段差面S3 と第2部材20の頭部22の軸部21側の端面S2 との間の距離tとにより制御することができる。dは、第2部材20が変形し始めてから破断に至るまでの変位量(伸び)δに応じて決められる。距離tは、第1部材10の弾性変形または塑性変形により段差面S3 が第2部材20の端面S2 に接触して押圧し始めるまでの距離であり、第2部材20の変形開始位置を決めるものである。tが大きいほど、この破壊検知センサの破壊感度が悪くなり、第1部材10の許容変形量が大きくなる。

[破壊検知センサの使用方法] 図3に示すように、構造物の破壊検知を行う構造用部材51、52がボルト・ナット、リベット、溶接などで接合されたものである場合を考える。構造用部材51、52に、破壊検知センサの第1部材10の軸部12の直径Dより少し大きい直径の円形の貫通孔53を設ける。そして、軸部12を頭部13が構造用部材52に当たるまで貫通孔53に通し、構造用部材51の外部に軸部12の先端部を出す。次に、ボルトとナットとにより締結を行う一般的な場合と同様に、軸部12の雄ねじ14にナット60を嵌め、頭部13あるいはナット60あるいは双方を六角スパナなどで回して締め付ける。破壊検知センサが確実に構造用部材51、52に固定されるように十分な締め付けトルクで締め付けを行う。

まず、図3に示すように、構造用部材51、52がそれらを互いに離すような引張荷重を受ける場合について説明する。図4に示すように、構造用部材51、52が引張荷重を受けると、構造用部材51、52間が離れ、それによって第1部材10の軸部12も伸びる。構造用部材51、52がより大きな引張荷重を受けると、軸部12の伸びはより大きくなる。軸部12の伸びがtに達すると、第1部材10の中空部11の第2部分11bと第3部分11cとの間の段差面S3 (押圧面)が、第2部材20の頭部22の軸部21側の端面S2 (被押圧面)と接触して押圧し始め、軸部12の伸びがさらに大きくなるにつれてより強く押圧するようになる。こうして第1部材10の段差面S3 が第2部材20の端面S2 を押圧すると第2部材20は軸方向に引張荷重を受け、伸びる。そして、図5に示すように、軸部12の伸びがδ+tとなった時点で、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により破断片70の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。逆に言えば、圧縮コイルばね40は、自然長になったときに頭部22が外部に突出するように自然長を決めておく。

以上のようにして破断片70の頭部22が第1部材10の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材51、52が引張荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

この破壊検知センサは、図6に示すように、構造用部材51、52がせん断荷重を受ける場合にせん断破壊を検知するのに用いることもできる。この場合、好適には、第2部材20の切欠き24が構造用部材51、52の接合部に位置するように切欠き24の位置を選ぶが、必ずしもそのようにする必要はなく、切欠き24の位置は必要に応じて選ぶことができる。今、構造用部材52が構造用部材51に対してずれるようなせん断荷重を受ける場合を考える。図7に示すように、構造用部材51、52がせん断荷重を受けてせん断変形が起きると、第1部材10もせん断荷重を受けて弾性変形または塑性変形のせん断変形が起き、それによって第2部材20もせん断荷重を受けてせん断変形が起きる。この結果、第2部材20は切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、破断片70の頭部22が第1部材10から外部に突出する。こうして第2部材20の頭部22が第1部材10の外部に突出したことを、例えば外部から視認することにより、構造用部材51、52がせん断荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

以上のように、この第1の実施の形態によれば、破壊検知センサを構造物の構造用部材51、52に取り付けた場合、この構造物に何らかの力が働いて第1部材10が弾性変形または塑性変形を起こしたとき、第2部材20が破断または変位するため、この破断または変位を検出することにより第1部材10が破断し、あるいは、第1部材10が過度に変位していることを検知することができ、それによってこの構造用部材51、52、ひいては構造物の破壊が起きる前に破壊の危険性を容易に検知することができる。また、後述のように、第2部材20が破断したときに第1部材10から破断片70の頭部22が突出することにより破断信号を容易に検出することが可能であるため、この破断信号を用いて短時間で、かつ無人で24時間、破壊の危険性を検知し、報知することが可能である。しかも、この破壊検知センサは第1部材10と第2部材20とにより構成することができるため、構成が簡単で安価に実現することができる。

〈2.第2の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図8A〜Eは第2の実施の形態による破壊検知センサを示し、図8Aは正面図、図8Bは左側面図、図8Cは右側面図、図8Dは縦断面図、図8Eは図8AのE−E線に沿っての横断面図である。図9Aに第1部材10の詳細、図9Bに第2部材20の詳細を示す。

図8A〜Eならびに図9AおよびBに示すように、この破壊検知センサにおいては、第1部材10の軸部12の中空部11の内周面に、軸部12の先端から長さL5 の範囲に亘って雌ねじ15が切られている。また、第2部材20の軸部21の外周面には、軸部21の先端から第1の実施の形態より大きい長さl3 の範囲に亘って雄ねじ23が切られている。そして、第2部材20の軸部21の外周面の雄ねじ23が、第1部材10の軸部12の中空部11の内周面の雌ねじ15にねじ込まれており、これによって第2部材20の先端部が第1部材10の先端部に固定されている。

この破壊検知センサの上記以外のことは、第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈3.第3の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 第3の実施の形態による破壊検知センサにおいては、第2部材20の軸部21の雄ねじ23に嵌められたナット30が、溶接、接着、鑞付けなどにより第1部材10の先端部に固定されており、これによって第2部材20の先端部が第1部材10の先端部に固定されている。

この破壊検知センサの上記以外のことは、第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈4.第4の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図10A〜Eは第4の実施の形態による破壊検知センサを示し、図10Aは正面図、図10Bは左側面図、図10Cは右側面図、図10Dは縦断面図、図10Eは図10AのE−E線に沿っての横断面図である。この破壊検知センサは、特に曲げ破壊を検知するのに用いて好適なものである。

図10A〜Eに示すように、この破壊検知センサは、中空部81を有する直方体状の第1部材80と、第1部材80の中空部81に挿通された丸棒状の第2部材20とを有する。第2部材20は、第1部材80の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する。

図11Aに第1部材80の詳細、図11Bに第2部材20の詳細を示す。第1部材80の全長をL、第2部材20の全長をlとすると、典型的にはL

図10A〜Eおよび図11Aに示すように、第1部材80は、長さがL、幅がW、厚さがTである。第1部材80の中空部81は、第1部材80の一端から他端に向かって順に、第11部分81a、第12部分81b、第13部分81c、第14部分81dおよび第15部分81eからなる。第11部分81aは第1部材80の一端の外壁82に設けられた直径がD1 の円柱状の孔である。第12部分81bは直方体状の形状を有する。第13部分81cは、中空部81の仕切り壁83に設けられた直径がD1 の円柱状の孔である。第14部分81dは直方体状の形状を有する。第15部分81eは第1部材80の他端の外壁84に設けられた円柱状の孔である。第12部分81bおよび第14部分81dの横断面形状はどの位置でも長方形である。第11部分81a、第13部分81cおよび第15部分81eは互いに同軸に設けられている。第12部分81bの天井にはこの天井面に垂直に二つの突起85、86が第1部材80の長手方向の互いに離れた位置に設けられている。これらの突起85、86の先端(下端)は第11部分81aおよび第13部分81cの最上端よりわずかに低い高さに位置し、第2部材20の軸部21の上端と接触し、あるいは近接している。また、第12部分81bの底面にはこの底面に垂直に突起87が設けられている。この突起87は、例えば、突起85と突起86との間を二等分する面上に位置するように設けられるが、これに限定されるものではない。この突起87の先端は第11部分81aおよび第13部分81cの最下端よりわずかに高い高さに位置し、第2部材20の軸部21の下端と接触し、あるいは近接している。図10Eに示すように、突起87は第1部材80の中心軸と垂直な面内に延在しており、第1部材80の中心軸の方向から見ると長方形の形状を有する。突起85、86も同様である。

図11Bに示すように、第2部材20は、第1の実施の形態と同様に、直径がd1 で長さがl1 の円柱状の軸部21と直径がd2 (ただし、d2 >d1 )で長さがl2 の円柱状の頭部22とからなる。軸部21の外周面には、応力集中部位となるV溝状の切欠き24が軸部21の上部に水平に設けられている。切欠き24の位置は、好適には、突起87の先端の位置とほぼ一致させるが、これに限定されるものではない。

図10A〜Eに示すように、第2部材20の軸部21が第1部材80の中空部81の第11部分81a、第12部分81b、第13部分81c、第14部分81dおよび第15部分81eに挿通されており、軸部21の先端が第1部材80の端面から突出している。そして、軸部21の先端の雄ねじ23にナット30が嵌められている。

第2部材20の頭部22は第1部材80の中空部81の第14部分81dに収容されている。第2部材20の軸部21の頭部22側の部分には圧縮コイルばね40が、軸部21が貫通した状態で設けられている。圧縮コイルばね40は、第1部材80の中空部81の第14部分81dに圧縮された状態で収容されている。圧縮コイルばね40の直径は第14部分81dの高さより小さい。圧縮コイルばね40が圧縮されていることによる復元力が働くことにより、圧縮コイルばね40の一端は、第13部分81cと第14部分81dとの間の段差面S1 を押圧し、他端は第2部材20の頭部22の軸部21側の端面S2 を押圧している。圧縮コイルばね40の復元力により頭部22の端面S2 が押圧されていることにより、第2部材20の軸部21は頭部22側に引っ張られている。これによって、第2部材20の先端部が第1部材80の先端部に拘束されている。

この破壊検知センサの各部の寸法(L、l、l1 〜l3 、d1 、d2 、θなど)は、破壊検知センサを取り付ける構造物などに応じて適宜選ばれる。

この破壊検知センサの上記以外の構成は第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(許容変形量)は、第2部材20の切欠き24の形状および深さ(切欠き量)、言い換えると切欠き24の先端の部分の切欠き角度θおよびこの切欠き24の先端の部分の垂直方向の高さや、第1部材80の中空部81の第11部分81aおよび第13部分81cの内周面と第2部材20の軸部21との間の隙間の大きさΔ=D1 −d1 などにより制御することができる。ここで、Δが大きいと、第1部材80の曲げ変形が起きてから第2部材20に影響を及ぼし始めるまでの開始時間が遅くなり、破壊感度が低くなる。また、切欠き24の形状および深さは第2部材20の曲げ強度に影響する。

[破壊検知センサの使用方法] 図12AおよびBに示すように、破壊検知を行う構造用部材51に破壊検知センサを取り付けて固定する。破壊検知センサの取付方法は、構造用部材51に機械的変形が起きたときに破壊検知センサが構造用部材51から剥がれない程度の十分な強度で固定することができればよく、種々の方法を用いることができるが、例えば、ねじ止め、溶接などである。

構造用部材51がこの構造用部材51を上に凸に湾曲させるような曲げモーメントを受ける場合について説明する。構造用部材51が曲げモーメントを受けると、構造用部材51が上に凸になるように湾曲し、それに伴い第1部材80も上に凸になるように湾曲する。これによって、第2部材20が突起85〜87の各先端からなる3点を支持点として曲げられる。すなわち、第2部材20は、3点曲げを受ける。構造用部材51がより大きな曲げモーメントを受けると、構造用部材51、従って第1部材80はより大きく湾曲し、湾曲の度合いがある程度大きくなると、図13AおよびBに示すように、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材80による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により破断片70の頭部22が第1部材80の中空部81の第14部分81dおよび第15部分81eの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。

以上のようにして破断片70の頭部22が第1部材80の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材51が曲げモーメントを受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

以上のように、この第4の実施の形態によれば、構造物の曲げ破壊に関し、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈5.第5の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図14は第5の実施の形態による破壊検知センサを示す。この破壊検知センサは、特にねじり破壊、せん断破壊、曲げ破壊、圧縮破壊などを検知するのに用いて好適なものである。

図14に示すように、破壊検知センサは、第1部材20がボルト状の形状を有するのではなく、四角柱状の外形を有すること、および、第1部材10の中空部11が第1部分11aおよび第3部分11cのみからなることが、第1の実施の形態による破壊検知センサと異なる。また、この場合、圧縮コイルばね40は、第3部分11cに収容されている。その他の構成は第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(許容変形量)は、第2部材20の切欠き24の形状および深さ(切欠き量)、言い換えると切欠き24の先端の部分の切欠き角度θおよびこの切欠き24の先端の部分の軸部21の直径dや、第1部材10の中空部11の第1部分11aの内周面と第2部材20の軸部21との間の隙間の大きさΔ=D1 −d1 などにより制御することができる。ここで、Δが大きいと、第1部材10のねじれ変形などが起きてから第2部材20に影響を及ぼし始めるまでの開始時間が遅くなり、破壊感度が低くなる。また、切欠き24の形状および深さは第2部材20の曲げ強度に影響する。

[破壊検知センサの使用方法] 一例として、この破壊検知センサをねじり破壊の検知に適用する場合について説明するが、せん断破壊や曲げ破壊や圧縮破壊の検知に適用することもできる。図15に示すように、破壊検知を行う構造物の構造用部材51に垂直に円柱状の構造用部材52が設けられている。構造用部材52は構造用部材51を固定端とする片持ち梁である。この構造用部材52の外周面に図14に示す破壊検知センサをその長手方向が構造用部材52の長手方向に一致し、かつ構造用部材52の中心軸に平行になるように取り付けて固定する。破壊検知センサの取付方法は、構造用部材52にねじれ変形が起きたときに破壊検知センサが構造用部材52から容易に剥がれない程度の十分な強度で固定することができればよく、種々の方法を用いることができるが、例えば、ねじ止め、溶接などである。

図15に示すように、構造用部材52がこの構造用部材52をその中心軸の周りにねじろうとするねじれモーメントを受ける場合について説明する。図16に示すように、構造用部材52がねじれモーメントを受けると、破壊検知センサの第1部材10もねじれモーメントを受け、ねじれる。構造用部材52のねじれ量は構造用部材51側からその他端に向かって大きくなる。構造用部材52がより大きなねじれモーメントを受けると、第1部材10もより大きなねじれモーメントを受け、それに伴って第2部材20は先端から他端へ向かって曲げ変形を起こす。図16および図17に示すように、第1部材10のねじれがある程度大きくなった時点で、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により破断片70の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。この場合、第2部材20の全周に亘って切欠き24が形成されているため、第1部材10のねじれの方向によらず、また、第2部材20がどのように曲げられるかによらず、第2部材20の切欠き24の部分で確実に破断する。

以上のようにして破断片70の頭部22が第1部材10の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材52がねじれモーメントを受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

以上のように、この第5の実施の形態によれば、構造物のねじり破壊あるいはせん断破壊や曲げ破壊や圧縮破壊の検知に関し、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈6.第6の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図18A〜Cならびに図19AおよびBは第6の実施の形態による破壊検知センサを示し、図18Aは正面図、図18Bは左側面図、図18Cは右側面図、図19Aは縦断面図、図19Bは図18AのE−E線に沿っての横断面図である。この破壊検知センサは、互いに破壊感度が異なる2種類の破壊検知センサが並列に設けられて一体化されたものである。

図18A〜Cならびに図19AおよびBに示すように、この破壊検知センサは、第1の実施の形態による破壊検知センサが、一つの六角ボルト状の第1部材10に一体に作り込まれたものである。すなわち、この破壊検知センサは、互いに平行な二つの中空部11を有する一つの六角ボルト状の第1部材10と、第1部材10の二つの中空部11にそれぞれ挿通された二つの丸棒状の第2部材20とを有する。第2部材20は、第1部材10の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する。二つの中空部11は第1部材10の横断面の一つの直径方向において第1部材10の中心軸を挟んでこの中心軸から同じ距離の位置に設けられている。以下においては、二つの中空部11のうち、図18A〜Cならびに図19AおよびBに示す上側の中空部11に第2部材20が挿通されたものを上側破壊検知センサ、下側の中空部11に第2部材20が挿通されたものを下側破壊検知センサと称する。これらの上側破壊検知センサおよび下側破壊検知センサはいずれも第1の実施の形態による破壊検知センサと同様な構成を有するが、第2部分11bと第3部分11cとの間の円環状の段差面S3 の位置が互いに異なっており、上側破壊検知センサに比べて下側破壊検知センサの方が段差面S3 の位置が第1部材10の頭部13側に寄っている。従って、上側破壊検知センサの第1部材10の段差面S3 と第2部材20の頭部22の端面S2 との間の距離をt1 、下側破壊検知センサの第1部材10の段差面S3 と第2部材20の頭部22の端面S2 との間の距離をt2 とすると、t2

1 となっている。すなわち、上側破壊検知センサと下側破壊検知センサとは互いに破壊感度が異なっており、上側破壊検知センサに比べて下側破壊検知センサの方が破壊感度が高くなっている。この結果、第1部材10に弾性変形または塑性変形が起きたとき、下側破壊検知センサの第2部材20が最初に破断し、上側破壊検知センサの第2部材20が次に破断する。すなわち、この破壊検知センサでは、2段階に亘って破壊検知を行うことができる。

この破壊検知センサの上記以外のことは第1の実施の形態と同様である。

[破壊検知センサの使用方法] 図20に示すように、破壊検知を行う構造用部材51、52に、第1の実施の形態と同様にして破壊検知センサを取り付ける。

第1の実施の形態による破壊検知センサと同様に、構造用部材51、52が引張荷重を受けると、構造用部材51、52間が離れ、それによって第1部材10の軸部11も伸びる。構造用部材51、52がより大きな引張荷重を受けると、軸部11の伸びはより大きくなる。軸部11の伸びがある程度大きくなると、まず、下側破壊検知センサの第1部材10の段差面S3 (押圧面)が、第2部材20の端面S2 (被押圧面)と接触して押圧し始め、軸部11の伸びがさらに大きくなるにつれてより強く押圧するようになる。こうして、下側破壊検知センサの第1部材10の段差面S3 が第2部材20の端面S2 を押圧すると第2部材20は軸方向に引張荷重を受けて伸び、軸部11の伸びがt2 +δとなった時点で応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により第2部材20の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。構造用部材51、52が受ける引張荷重がさらに大きくなると、上側破壊検知センサの第1部材10の段差面S3 (押圧面)が、第2部材20の端面S2 (被押圧面)と接触して押圧し始め、軸部21の伸びがさらに大きくなるにつれてより強く押圧するようになる。こうして第1部材10の段差面S3 が第2部材20の端面S2 を押圧すると第2部材20は軸方向に引っ張り荷重を受けて伸び、軸部11の伸びがt1 +δとなった時点で、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により第2部材20の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。

以上のようにして二つの第2部材20の頭部22が第1部材10の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、2段階に亘って、構造用部材51、52が引張荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

この第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、破壊検知を2段階に亘って行うことができるので、引張荷重により構造物に発生する機械的変形をより正確に判定することができ、より正確な危険性の検知を行うことができるという利点を得ることができる。

〈7.第7の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図21A〜Eは第7の実施の形態による破壊検知センサを示し、図21Aは正面図、図21Bは左側面図、図21Cは右側面図、図21Dは縦断面図、図21Eは図21AのE−E線に沿っての横断面図である。この破壊検知センサは2重構造を有し、2段階に亘って破壊検知を行うことができるものである。

図21A〜Eに示すように、この破壊検知センサは、中空部11を有する六角ボルト状の第1部材10と、中空部101を有する棒状の第3部材100と、丸棒状の第2部材20とを有する。第3部材100は第1部材10の中空部11に挿通され、第2部材20は第3部材100の中空部101に挿通されている。これらの第1部材10、第3部材100および第2部材20は互いに同軸に設けられている。第2部材20および第3部材100は、第1部材10の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する。

図22Aに第1部材10の詳細、図22Bに第3部材100の詳細、図22Cに第2部材20の詳細を示す。第1部材10の全長をL、第2部材20の全長をl、第3部材100の全長をsとすると、典型的にはL

図22Aに示すように、第1部材10は、直径がDの円柱状の軸部12とこの軸部12より太い六角柱状の頭部13とからなる。軸部12の外周面の軸部12の先端から長さL1 の範囲に亘って雄ねじ14が切られている。この雄ねじ14は、この破壊検知センサを破壊検知を行う対象となる構造物に固定する際にナットを嵌めたり、構造物に設けられた孔の内周面に切られた雌ねじにねじ込んだりするために用いられる。第1部材10の中空部11の横断面形状はどの位置でも第1部材10の中心軸を中心とする円形である。中空部11は、軸部12の先端から順に、直径がD1 (ただし、D1

2 の第1部分11aと、直径がD

2 (ただし、D

2 >D

1 )で長さがL

3 の第2部分11bと、直径がD

3 (ただし、D>D

3 >D

2 )で長さがL

4 の第3部分11cとからなる。ただし、L

2 +L

3 +L

4 =Lである。

図22Bに示すように、第3部材100は、外径がD4 の前端部100aと外径がD5 の中間部100bと外径がD6 の頭部100cとからなる。これらの前端部100a、中間部100bおよび頭部100cの長さはそれぞれs1 、s2 、s3 である。ただし、s1 +s2 +s3 =sである。前端部100aの外周面の前端部100aの先端から長さs4 の範囲に亘って雄ねじ102が切られている。この雄ねじ102は、第3部材100を拘束するためにナットを嵌める際に用いられる。第3部材100の中空部101の横断面形状はどの位置でも第3部材100の中心軸を中心とする円形である。中空部101は、前端部100aの先端から順に、直径がD7 (ただし、D7

4 )で長さがs

5 の前部101aと、直径がD

8 (ただし、D

8

5 )で長さがs

6 の中間部101bと、直径がD

9 (ただし、D

9 >D

5 )で長さがs

7 の後部101cとからなる。また、前端部100aの外周面には、応力集中部位となるV溝状の切欠き103が全周に亘って設けられている。切欠き103の切欠き角度はΘである。

図22Cに示すように、第2部材20は、第1の実施の形態の第2部材20と同様な構成を有する。

図21A〜Eに示すように、第3部材100が第1部材10の中空部11に挿通されており、前端部100aの先端が第1部材10の端面から突出している。そして、前端部100aの先端の雄ねじ102にナット110が嵌められている。また、第2部材20の軸部21が第3部材100の中空部101に挿通されており、軸部21の先端が第3部材100の端面から突出している。そして、軸部21の先端の雄ねじ23にナット30が嵌められている。

第3部材100の前端部100aは第1部材10の中空部11の第1部分11aに収容されている。第3部材100の中間部100bの頭部100c側の部分には圧縮コイルばね120が、中間部100bが貫通した状態で設けられている。圧縮コイルばね120は、第1部材10の中空部11の第3部分11cに圧縮された状態で収容されている。圧縮コイルばね120の直径は第3部分11cの直径D3 より小さい。圧縮コイルばね120が圧縮されていることによる復元力が働くことにより、圧縮コイルばね120の一端は、第2部分11bと第3部分11cとの間の円環状の段差面S4 を押圧し、他端は第3部材100の頭部100cの中間部100b側の円環状の端面S5 を押圧している。圧縮コイルばね120の復元力により頭部100cの端面S5 が押圧されていることにより、第3部材100の前端部100aは頭部100c側に引っ張られている。これによって、第3部材100の先端部が第1部材10の先端部に拘束されている。

第2部材20の頭部22は第3部材100の中空部101の後部101cに収容されている。第2部材20の軸部21の頭部22側の部分には圧縮コイルばね40が、軸部21が貫通した状態で設けられている。圧縮コイルばね40は、第3部材100の中空部101の中間部101bに圧縮された状態で収容されている。圧縮コイルばね40の直径は中間部101bの直径D8 より小さい。圧縮コイルばね40が圧縮されていることによる復元力が働くことにより、圧縮コイルばね40の一端は、前部101aと中間部101bとの間の円環状の段差面S6 を押圧し、他端は第2部材20の頭部22の軸部21側の円環状の端面S2 を押圧している。圧縮コイルばね40の復元力により頭部22の端面S2 が押圧されていることにより、第2部材20の軸部21は頭部22側に引っ張られている。これによって、第2部材20の先端部が第3部材100の先端部に拘束されている。

この破壊検知センサの各部の寸法(L、L1 〜L4 、l、l1 、l2 、s、s1 〜s7 、D、D1 〜D9 、d、d1 、d2 、θ、Θなど)は、破壊検知センサを取り付ける構造物などに応じて適宜選ばれる。

第1部材10の材質は、この破壊検知センサにより破壊検知を行う構造物の構造用部材の材質などに応じて適宜選ばれるが、例えば、鉄鋼材料である。第2部材20および第3部材100は、第1部材10の弾性変形または塑性変形中に破断する破断特性を有する材料からなり、例えば、鋳鉄、ガラス、セラミックス、プラスチック、コンクリートなどの脆性材料からなる。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(許容変形量)は、2段階に設定することができる。すなわち、まず、第1段階の破壊感度は、第2部材20の切欠き24の形状および切欠き量(深さ)、言い換えると切欠き24の先端の部分の切欠き角度θおよび軸部21の直径dと、第3部材100の段差面S7 と第2部材20の端面S2 との間の距離tとにより制御することができる。次に、第2段階の破壊感度は、第3部材100の切欠き103の形状および切欠き量(深さ)、言い換えると切欠き103の先端の部分の切欠き角度Θ、切欠き量および前端部100aの直径D4 と、第1部材10の段差面S1 と第3部材100の段差面S8 との間の距離t3 とにより制御することができる。ただし、図21A〜Eにおいては、t=t3 =0の場合が示されている。

[破壊検知センサの使用方法] この破壊検知センサを第1の実施の形態と同様に、破壊検知を行う構造用部材51、52に設けた貫通孔53に通し、固定する。

構造用部材51、52がそれらを互いに離すような引張荷重を受け、引張荷重がある程度大きくなると、まず、第1部材10の段差面S1 (押圧面)が、第3部材100の段差面S8 (被押圧面)と接触して押圧し始め、それに伴って、第3部材100の段差面S7 が第2部材20の端面S2 を押圧し始める。引張荷重がより大きくなると、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第3部材100による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により第2部材20の頭部22が第3部材100の中空部101の後部101cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。次に、引張荷重がさらに大きくなると、第1部材10の段差面S1 (押圧面)が、第3部材100の段差面S8 (被押圧面)をさらに強く押圧し、ある程度の引張荷重になった時点で、第3部材100は応力集中部位である切欠き103の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第3部材100のうちこの破断部より頭部100c側の部分に相当する破断片は、第3部材100の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね120の復元力によりこの破断片の頭部100cが第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部100cが外部に突出する。

以上のようにして破断片70の頭部22および第3部材100の破断により形成された破断片の頭部100cが第1部材10の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、2段階に亘って、構造用部材51、52が引張荷重を受けていることによる破壊の危険性を判断することができる。

この第7の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈8.第8の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図23は第8の実施の形態による破壊検知センサを示す。この破壊検知センサは、第6の実施の形態による破壊検知センサとほぼ同様な構成を有するが、上側破壊検知センサのt1 と下側破壊検知センサのt2 とが互いに等しく選ばれており、その代わりに、上側破壊検知センサの第2部材20に比べて、下側破壊検知センサの第2部材20の方が破断しやすい破断特性を有するように設定されている。具体的には、上側破壊検知センサの第2部材20に比べて下側破壊検知センサの第2部材20の方が破断しやすくなるように、上側破壊検知センサおよび下側破壊検知センサの第2部材20の材質、切欠き24の切欠き角度θや深さなどが選ばれる。例えば、上側破壊検知センサおよび下側破壊検知センサの第2部材20の材質および切欠き24の切欠き角度θを互いに同一として、上側破壊検知センサの第2部材20の切欠き24の深さに比べて下側破壊検知センサの第2部材20の切欠き24の深さが大きく設定される。その他のことは、第6の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

[破壊検知センサの使用方法] この破壊検知センサの使用方法は、第6の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

この第8の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈9.第9の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図24は第9の実施の形態による破壊検知センサを示す。この破壊検知センサは、第1の実施の形態による破壊検知センサとほぼ同様な構成を有するが、第2部材20の頭部22が互いに直径が異なる2段構造となっていて先端部の直径が小さくなっていること、および、第1部材10の頭部13にキャップ250が取り付けられていることが異なる。キャップ250の中心には、第2部材20の頭部22の先端部の直径よりも少し大きく、頭部22の先端部以外の部分(根元の部分)の直径よりも小さい直径の孔250aが設けられている。その他のことは、第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

[破壊検知センサの使用方法] この破壊検知センサの使用方法は、第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。この破壊検知センサを第1の実施の形態と同様に、構造用部材51、52に設けられた貫通孔53に取り付けた場合、構造用部材51、52が引張荷重を受けたとき、最終的に第1部材10の段差面S3 が第2部材20の頭部22の端面S2 に当たって押圧し始め、遂には第2部材20が破断すると図24中一点鎖線で示すように、破断片70の頭部22が移動してその先端部がキャップ250の孔250aから外部に突出する。この際、頭部22の根元の部分の直径はキャップ250の孔250aの直径よりも大きいため、頭部22の根元の部分がキャップ250の内面に当たった時点で移動が停止する。

この第9の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈10.第10の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図25は第10の実施の形態による破壊検知センサを示す。この破壊検知センサは、第1の実施の形態による破壊検知センサとほぼ同様な構成を有するが、第1部材10の軸部12の外周面に切られた雄ねじ14の長さが第1の実施の形態による破壊検知センサのそれに比べて大きくなっている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。

[破壊検知センサの使用方法] 図25に示すように、この第10の実施の形態においては、破壊検知を行う構造物を構成する構造用部材51、52に破壊検知センサの第1部材10の軸部12の直径Dより少し大きい直径の円形の貫通孔53を設けるとともに、構造用部材51、52の一方、例えば構造用部材51の貫通孔53の内周面に第1部材10の軸部12の雄ねじ14をねじ込むことができる雌ねじ51aを切る。そして、第1部材10の軸部12を貫通孔53に通し、頭部13を六角スパナなどで回して軸部12の雄ねじ14を頭部13が構造用部材52に当たるまで構造用部材51の雌ねじ51aにねじ込む。破壊検知センサが確実に構造用部材51、52に固定されるように十分な締め付けトルクで締め付けを行う。

構造用部材51、52に一定以上の引張荷重が加わったときに第2部材20が破断することは第1の実施の形態と同様である。

この第10の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈11.第11の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図26A〜Eは第11の実施の形態による破壊検知センサを示し、図26Aは正面図、図26Bは左側面図、図26Cは右側面図、図26Dは縦断面図、図26Eは図26AのE−E線に沿っての断面図である。また、図27Aは第1部材10の詳細、図27Bは第2部材20の詳細を示す。この破壊検知センサは、特に曲げ破壊、ねじり破壊、せん断破壊、圧縮破壊を検知するのに用いて好適なものである。

図26A〜Eならびに図27AおよびBに示すように、破壊検知センサは、第1部材20がボルト状の形状を有するのではなく、四角柱状の外形を有すること、および、第1部材10の中空部11が第1部分11aおよび第3部分11cのみからなることが、第1の実施の形態による破壊検知センサと異なる。また、この場合、圧縮コイルばね40は、第3部分11cに収容されている。その他の構成は第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(許容変形量)の制御方法は第5の実施の形態と同様である。

[破壊検知センサの使用方法] 一例として、この破壊検知センサを曲げ破壊の検知に適用する場合について説明するが、ねじり破壊やせん断破壊や圧縮破壊の検知に適用することもできる。図28AおよびBに示すように、破壊検知を行う構造用部材51に破壊検知センサを取り付けて固定する。破壊検知センサの取付方法は、構造用部材51に機械的変形が起きたときに破壊検知センサが構造用部材51から剥がれない程度の十分な強度で固定することができればよく、種々の方法を用いることができるが、例えば、ねじ止め、溶接などである。

構造用部材51がこの構造用部材51を上に凸に湾曲させるような曲げモーメントを受ける場合について説明する。構造用部材51が曲げモーメントを受けると、構造用部材51が上に凸になるように湾曲し、それに伴い第1部材10も上に凸になるように湾曲する。構造用部材51がより大きな曲げモーメントを受けると、構造用部材51、従って第1部材10はより大きく湾曲し、湾曲の度合いがある程度大きくなると、図29AおよびBに示すように、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により破断片70の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。この場合、第2部材20の全周に亘って切欠き24が形成されているため、第1部材10の曲げの方向によらず、また、第2部材20がどのように曲げられるかによらず、第2部材20の切欠き24の部分で確実に破断する。

以上のようにして破断片70の頭部22が第1部材10の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材51が曲げモーメントを受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

以上のように、この第11の実施の形態によれば、構造物の曲げ破壊あるいはねじり破壊やせん断破壊や圧縮破壊の検知に関し、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈12.第12の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図30は第12の実施の形態による破壊検知センサを示す。また、図31Aは第1部材10の詳細、図31Bは第2部材20の詳細を示す。この破壊検知センサは、特に圧縮破壊を検知するのに用いて好適なものである。

図30ならびに図31AおよびBに示すように、破壊検知センサは、第1部材10がボルト状の形状を有するのではなく、円柱状の外形を有すること、および、第1部材10の中空部11が第1部分11aおよび第3部分11cのみからなることが、第1の実施の形態による破壊検知センサと異なる。また、この場合、圧縮コイルばね40は、第3部分11cに収容されている。その他の構成は第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(許容変形量)の制御方法は第5の実施の形態と同様である。

[破壊検知センサの使用方法] この破壊検知センサを圧縮破壊の検知に適用する場合について説明する。図32AおよびBに示すように、破壊検知を行う構造用部材51、52間に破壊検知センサをその中心軸が構造用部材51、52に対して垂直となるように設置し、破壊検知センサの両端を構造用部材51、52間に挟む。構造用部材51、52にはそれぞれ貫通孔53a、53bが互いに同軸に形成されている。構造用部材51は構造物の他の部分に固定され、構造用部材52は固定されていないとする。貫通孔53aの直径は、第1部材10の直径Dよりも十分に小さく、ナット30の大きさよりも十分に大きく選ばれている。貫通孔53bの直径は、第1部材10の直径Dよりも十分小さく、第1部材10の第3部分11cの直径D3 以上に選ばれ、この例では直径D3 と等しく選ばれている。構造用部材51の貫通孔53aの周囲の部分が破壊検知センサの第1部材10の一方の端面と接触し、構造用部材52の貫通孔53bの周囲の部分が破壊検知センサの第1部材10の他方の端面と接触している。

図32Aに示すように、構造用部材52が圧縮荷重を受ける場合について説明する。構造用部材52が圧縮荷重を受けると、破壊検知センサの第1部材10も圧縮荷重を受ける。構造用部材52が受ける圧縮荷重がある程度大きくなると、図32Bに示すように、第1部材10は座屈を生じ、曲げ変形を起こす。その結果、第2部材20も曲げ変形を起こし、曲げ変形がある程度大きくなると、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により破断片70の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動し、頭部22が外部に突出する。この場合、第2部材20の全周に亘って切欠き24が形成されているため、第1部材10の曲げの方向によらず、また、第2部材20がどのように曲げられるかによらず、第2部材20の切欠き24の部分で確実に破断する。

以上のようにして破断片70の頭部22が第1部材10の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材52が圧縮荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

以上のように、この第12の実施の形態によれば、構造物の圧縮破壊あるいは曲げ破壊やせん断破壊やねじり破壊の検知に関し、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈13.第13の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図33は第13の実施の形態による破壊検知センサを示す。また、図34Aは第1部材10の詳細、図34Bは第2部材20の詳細を示す。この破壊検知センサは、特に圧縮破壊を検知するのに用いて好適なものであるが、曲げ破壊やせん断破壊やねじり破壊の検知に用いることもできる。

図33ならびに図34AおよびBに示すように、破壊検知センサの第1部材10および第2部材20は第12の実施の形態とほぼ同様に構成されているが、第1部材10の中空部11の第3部分11cの出口側の部分にこの出口を塞ぐようにノズル280が取り付けられ、このノズル280の第2部材20の頭部22側の一端面に頭部22と対向するように固形の着色したジェル物質290が取り付けられている点が第12の実施の形態と異なる。第1部材10の外周部には中空部11の第3部分11cに達する貫通孔10aが形成されている。ノズル280には、ノズル280の頭部22側の一端面の中心と第1部材10の外周部の貫通孔10aとの間を結ぶL形の通路281が形成されている。この通路281はジェル物質290の通路となるものである。その他の構成は第12の実施の形態と同様である。

[破壊検知センサの破壊感度の制御方法] この破壊検知センサの破壊感度(許容変形量)の制御方法は第5の実施の形態と同様である。

[破壊検知センサの使用方法] この破壊検知センサを圧縮破壊の検知に適用する場合について説明する。図35AおよびBに示すように、破壊検知を行う構造用部材51、52間に破壊検知センサを第12の実施の形態と同様に設置する。ただし、この場合、構造用部材52には貫通孔53bは形成されていない。

図35Aに示すように、構造用部材52が圧縮荷重を受ける場合について説明する。構造用部材52が圧縮荷重を受けると、破壊検知センサの第1部材10も圧縮荷重を受ける。構造用部材52が受ける圧縮荷重がある程度大きくなると、図35Bに示すように、第1部材10は座屈を生じ、曲げ変形を起こす。その結果、第2部材20も曲げ変形を起こし、曲げ変形がある程度大きくなると、第2部材20は応力集中部位である切欠き24の部分で破断し、二つに分かれる。このとき、第2部材20のうちこの破断部より頭部22側の部分に相当する破断片70は、第2部材20の一端での第1部材10による機械的な拘束がなくなるため、圧縮コイルばね40の復元力により破断片70の頭部22が第1部材10の中空部11の第3部分11cの中を外部に向かって移動する。そして、頭部22の先端がジェル物質290を押圧することにより、ジェル物質290がノズル280の通路281の一端から中に入り込み、他端から押し出され、第1部材10の外周部の貫通孔10aから外部に飛び出す。

以上のようにしてジェル物質290が第1部材10の外部に飛び出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材52が圧縮荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。

以上のように、この第13の実施の形態によれば、構造物の圧縮破壊あるいは曲げ破壊やせん断破壊やねじり破壊の検知に関し、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

〈14.第14の実施の形態〉 [破壊検知システム] 図36は第14の実施の形態による破壊検知システムを示す。この破壊検知システムは第1の実施の形態による破壊検知センサを用いたものである。

図36に示すように、第1の実施の形態による破壊検知センサの第1部材10の頭部13に第2部材破断検出装置300が取り付けられている。第2部材破断検出装置300では、第2部材20の破断による機械的信号を電気的導通/非導通の信号に変え、これを破断信号とする。具体的には、例えば、第1部材10の頭部13の先端部の近傍に電源と抵抗とを含む閉回路を形成し、その際、この閉回路の配線の一部が第1部材10の中空部11の第3部分11cの出口を例えば直径方向に横断するように配線を構成する。こうすることで、最初は閉回路に電流が流れ、抵抗の両端間の電圧が検出されるのに対し、第2部材20の破断により破断片70の頭部22の先端が飛び出たときには、この頭部22が当たって配線が切られるため、閉回路がオープンとなり、電流が流れなくなるため抵抗の両端間の電圧が0となる。このように、閉回路の抵抗の両端間の電圧を検出することにより、第2部材20の破断を検出することができる。あるいは、第1部材10の頭部13の先端部の近傍に電源と抵抗と押しボタン式のスイッチとを直列に接続した回路を形成する。押しボタン式のスイッチとしては、押されると接点が閉じる常開スイッチまたは押されると接点が開く常閉スイッチを用いる。この回路のスイッチは頭部13の先端部にその操作部が位置するように設置する。例えば、スイッチとして常開スイッチを用いる場合には、通常は回路は開いていて電流が流れていないが、第2部材20の破断により破断片70の頭部22の先端が飛び出たときには、この頭部22がスイッチの操作部に当たってスイッチの接点が閉じるため、閉回路となって電流が流れる。そこで、このときの閉回路の抵抗の両端間の電圧を検出することにより、第2部材20の破断を検出することができる。あるいは、第2部材20の頭部22の少なくとも一部、例えば先端部を強磁性体からなる永久磁石により形成するとともに、第1部材10の頭部13の先端部の近傍に頭部22よりも大きいコイルを例えば頭部13の先端面に平行に設置する。この場合には、第2部材20の破断により破断片70の頭部22が第1部材10から外部に突出すると、頭部22がコイルを貫くことによりコイルを貫く磁束が増加するため、コイルにはこの磁束の増加を妨げるように電流(誘導電流)が流れる。このため、この誘導電流あるいは誘導起電力を検出することにより第2部材20の破断を検出することができ、破断信号を容易に取り出すことができる。なお、場合によっては、頭部22の少なくとも一部を永久磁石により形成する代わりに、頭部22の先端部に電磁石を設けてもよい。

第2部材破断検出装置300で検出された破断信号は破断状態表示装置310および破断情報送信装置320にそれぞれ送られるようになっている。これらの破断状態表示装置310および破断情報送信装置320は、第2部材破断検出装置300の近くに設置してもよいし、第2部材破断検出装置300から離れた場所に設置してもよい。破断状態表示装置310および破断情報送信装置320への破断信号の送信は、有線通信で行っても無線通信で行ってもよい。破断状態表示装置310では、破断信号の受信により、例えば、第2部材20が破断したことを示すメッセージや画像などをディスプレイに表示したり、ランプを点灯あるいは点滅させたりする。この表示の際には、注意喚起のため、アラーム音を同時に鳴動させるようにしてもよい。破断情報送信装置320では、破断信号の受信により、破断情報をアンテナ321から外部に送信する。アンテナ321から送信された破断情報は外部に設けられた受信装置330で受信される。受信装置330としては、例えば、受信機能付きのパーソナルコンピュータを用いることができる。

[破壊検知システムの使用方法] 破壊検知センサを第1の実施の形態と同様に、破壊を検知する構造物の構造用部材51、52に設けられた貫通孔53に取り付ける。また、破断状態表示装置310、破断情報送信装置320および受信装置330は所定の位置に設置する。

構造用部材51、52が引張荷重を受けて破壊検知センサの第2部材20が破断したら、第2部材破断検出装置300により破断信号が検出される。この破断信号は、破断状態表示装置310に送られる。破断信号が送られた破断状態表示装置310では、必要に応じてアラーム音とともに、例えば「破壊の危険あり」とのメッセージを表示し、さらに必要に応じてメッセージを点滅させたり、ランプを点灯あるいは点滅させたりして、構造物の管理者に注意を喚起する。破断状態表示装置310に表示されたメッセージやランプの点灯あるいは点滅を見た管理者は、構造用部材51、52の状態を調べて必要な措置を講ずることができる。また、破断信号が送られた破断情報送信装置320では、破断情報をアンテナ321から外部に送信する。この場合も、受信装置330がアンテナ321から送信された破断情報を受信したら、管理者が構造物の設置場所に出向いて構造用部材51、52の状態を調べて必要な措置を講ずることができる。

この第14の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、構造物から離れた場所から構造用部材51、52の破壊の検知を容易に行うことができるという利点も得ることができる。

〈15.第15の実施の形態〉 [破壊検知センサ] 図37は第15の実施の形態による破壊検知センサを示す。図37に示すように、この破壊検知センサは、中空部11を有する六角ボルト状の第1部材10と、第1部材10の中空部11に挿通された、ポテンショメータ400を挟んで設けられた前部20aと後部20bとからなる丸棒状の第2部材20とを有する。ポテンショメータ400の可動部400aは第1部材10に設けられた貫通孔に嵌め込まれており、第1部材10と一体になっている。

図37に示すように、第1部材10は、第1の実施の形態による破壊検知センサの第1部材10とほぼ同様に構成されている。

第1部材10の中空部11の第2部分11bおよび第3部分11cには、全体としてボルト状のばね受け410が取り付けられている。ばね受け410の軸部411の外周面には雄ねじが切られており、この雄ねじが、第1部材10の中空部11の第2部分11bの内周面に切られた雌ねじにねじ込まれることにより、ばね受け410が第1部材10に取り付けられている。ばね受け410の頭部412は第1部材10の中空部11の第3部分11cに収容されている。ばね受け410の軸部411の先端と第2部材20の後部20bの前端部との間の空間に圧縮コイルばね40が、後部20bにより貫通され、かつ圧縮された状態で取り付けられている。第2部材20の前部20aが第1部材10の中空部11の第1部分11aに挿通されており、前部20aの先端が第1部材10の端面から突出している。そして、前部20aの先端の雄ねじ23にナット30が嵌められている。

第1部材10の材質は、例えば第1の実施の形態と同様に選ばれる。第2部材20の材質は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば第1の実施の形態と同様に選ばれる。

[破壊検知センサの使用方法] この破壊検知センサを第1の実施の形態と同様に、破壊検知を行う構造用部材51、52に設けられた貫通孔53に通して固定する。この状態におけるポテンショメータ400の一端と可動部400aとの間の長さをL’、そのときにポテンショメータ400により計測される抵抗をRとする。

図38に示すように、まず、構造用部材51、52が引張荷重を受けると、第1部材10が引張荷重を受け、軸部12も伸びる。軸部12が伸びて、ポテンショメータ400の一端と可動部400aとの間の長さがL’1 になったとし、そのときにポテンショメータ400により計測される抵抗をR1 とする。このとき、第1部材10の頭部13の変位量L’1 −L’は、(L’1 −L’)α=R1 −Rで求められる。ただし、αは比例係数である。

第1部材10の頭部13の変位量L’1 −L’が予め決められた許容値を超えた時点で、構造用部材51、52が引張荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。なお、頭部13の変位量は、可動部400aの位置を第1部材10の外部から観察することによって測定することもできる。

この第15の実施の形態によれば、第1部材10の弾性変形または塑性変形に伴う変位を抵抗の変化として検出することができ、これによって引張破壊の検知を行うことができる。

次に、上述の第1〜第15の実施の形態による破壊検知センサの具体的な使用例について説明する。

(1)引張破壊検知のための破壊検知センサの使用例 例えば、道路の高架橋下においては、道路の土台の底面および側面に鉄板を設置し、その鉄板に補強用の鉄板をボルトやリベットで固定して補強を行うことがある。この場合、鉄板間に引張力が加わるため、長年の使用により経時劣化が生じて引張破壊が起きるおそれがある。このような場合に、必要な強度が得られる範囲で、少なくとも一つのボルトまたはリベットの代わりに、上述のいずれかの破壊検知センサを用いて両鉄板に設けた貫通孔に取り付け、破壊検知を行う。ボルトまたはリベットはそのままにして、破壊検知センサを取り付ける貫通孔をボルトまたはリベット以外の部分の両鉄板に設け、この貫通孔に破壊検知センサを取り付けてもよい。

また、例えば、工場では、天井を支えるために天井の下に水平にH型鋼を張り渡し、その際、2本のH型鋼を継ぎ合わせることがある。この場合、2本のH型鋼に跨がるように補強用の鉄板をH型鋼の上下の面および側面にボルトとナットで接合することが多い。この場合、鉄板間に引張力が加わるため、長年の使用により経時劣化が生じて引張破壊が起きるおそれがある。このような場合に、必要な強度が得られる範囲で、少なくとも一つのボルトの代わりに、上述のいずれかの破壊検知センサを用いて両鉄板に設けた貫通孔に取り付け、破壊検知を行う。ボルトはそのままにして、破壊検知センサを取り付ける貫通孔をボルト以外の部分の両鉄板に設け、この貫通孔に破壊検知センサを取り付けてもよい。

(2)曲げ破壊検知のための破壊検知センサの使用例 例えば、道路標識は、道路に垂直に立てた支柱に横方向の円柱を互いに平行に2本、ボルトとナットにより取り付け、これらの円柱に標識ボードを取り付けることがある。この場合、これらの円柱は片持ち梁であり、長年の使用により経時劣化が生じて曲げ破壊が起きるおそれがある。そこで、これらの円柱の外周面に例えば第4の実施の形態による破壊検知センサを取り付けることにより、曲げ破壊の危険性を判断することができる。

(3)せん断破壊検知のための破壊検知センサの使用例 例えば、鉄塔では、多数の等辺山型鋼(取り分け、断面がV字型またはL字型のもの)をボルトとナットで接合することにより骨組み構造が構成されることが多い。この場合、これらの接合部ではせん断力が働くため、長年の使用により経時劣化が生じてせん断破壊が起きるおそれがある。そこで、これらの接合部に例えば第1の実施の形態による破壊検知センサを取り付けることにより、せん断破壊の検知を行うことができる。

また、例えば、橋の橋脚では、地面に設置したコンクリート製の土台の側面に鉄鋼製の支持体を取り付け、この支持体を構成する一つの側面板に、橋脚の下部に取り付けられた鉄鋼製の支持体の側面板をボルトとナットで接合する。この場合、この接合部ではせん断力が働くため、長年の使用により経時劣化が生じてせん断破壊が起きるおそれがある。そこで、この接合部に例えば第1の実施の形態による破壊検知センサを取り付けることにより、せん断破壊の検知を行うことができる。

次に、破壊検知センサを用いて建物の破壊を集中して監視する監視システムについて説明する。破壊検知センサとしては、例えば上述の第1〜第15の実施の形態のいずれかによる破壊検知センサを用いることができる。

この監視システムを図39に示す。図39Aに示すように、いま、地面に建てられた建物500を考える。図39Bに示すように、建物500の大引き(床板を支える横材)501は、地面に据えられた束石(礎石)502の上に立てられた床束(床下の柱)503によって支持されている。この床束503は圧縮や曲げ変形を受ける。そこで、この床束503の側面に破壊検知センサ504をその長手方向が床束503の長手方向と一致するように取り付ける。こうすることで、図39Cに示すように、大引き501に重量物505による重量が加わったときの床束503の破壊の危険性を破壊検知センサ504により判断することができる。次に、図39Dに示すように、建物500の基礎506の上に土台507が載っているが、基礎506と土台507との間にせん断力や曲げモーメントが働く。そこで、これらの基礎506および土台507の側面にこれらの基礎506および土台507に跨がるように破壊検知センサ508をその長手方向が鉛直方向と一致するように取り付ける。こうすることで、図39Eに示すように、基礎506と土台507との間でせん断破壊が起きる危険性を破壊検知センサ508により判断することができる。次に、図39Fに示すように、建物500の横架台(あるいは土台)509上に柱510が鉛直方向に立てられ、この横架台509と柱510との間に斜めの補強金具511が設けられている場合に、補強金具511が引っ張りや圧縮変形を受ける。そこで、補強金具511の側面に破壊検知センサ512をその長手方向が補強金具511の長手方向と一致するように取り付ける。こうすることで、図39Gに示すように、補強金具511に引張破壊や圧縮破壊が起きる危険性を破壊検知センサ512により判断することができる。次に、図39Hに示すように、建物500の梁513が鉛直方向の柱514で支えられ、この梁513と柱514との間に斜めの補強金具515が設けられている場合に、補強金具515が引っ張りや圧縮変形を受ける。そこで、補強金具515の側面に破壊検知センサ516をその長手方向が補強金具515の長手方向と一致するように取り付ける。こうすることで、図28Iに示すように、補強金具515に引張破壊や圧縮破壊が起きる危険性を破壊検知センサ516により判断することができる。

図示は省略するが、上記の各破壊検知センサ504、508、512、516は、第14の実施の形態による破壊検知システムと同様に第2部材破断検出装置を備えている。そして、各破壊検知センサ504、508、512、516の第2部材破断検出装置により検出された破断信号は、監視システム600に送られる。こうして、各破壊検知センサ504、508、512、516により建物500の各部の破壊を集中的に監視することができる。一例として、監視システム600には、図39Aに示す建物500の数字1〜6を示した部位の破壊検知センサによる破断信号を○、×で示した。○は破断していないこと、×は破断していることを示す。

引張破壊検知用の破壊検知センサおよび曲げ破壊検知用の破壊検知センサを作製した。 (1)引張破壊検知用破壊検知センサ 図40に破壊検知センサを構成する第1部材、第2部材および圧縮コイルばねの写真、図41にこれらの部品を用いて破壊検知センサを組み立てた状態の写真を示す。破壊検知センサの構成は第1の実施の形態と同様である。第1部材の各寸法は、L=90mm、L1 =40mm、L2 =65mm、L3 =10mm、L4 =15mm、D=20mm、D1 =6mm、D2 =12mm、D3 =16mmである。第1部材の頭部は直径が40mm、厚さが20mmである。第2部材の各寸法は、l=100mm、l1 =85mm、l2 =15mm、l3 =30mm、d=4mm、θ=60°、第2部材の先端から切欠きまでの長さは70mmである。第1部材の材質は構造用炭素鋼、第2部材の材質は脆性材料である鋳鉄である。

引張破壊の実験に用いた引張破壊実験装置を図42に示す。この引張破壊実験装置は、第1部材の両端を互いに反対方向に引っ張るためのものであり、頭部の係合部を中に含む頭部引張部材、この頭部引張部材と締結して引張試験機のチャック部によりチャックするための第1チャック部材、第1部材の軸部の雄ねじが嵌め込まれる第2チャック部材を含む。この引張破壊実験装置を構成する部品を図43に示す。

図44はこの引張破壊実験装置を引張試験機に取り付けた状態を示す。図45はこの引張破壊実験装置に150〜160kNの引張荷重を加えて引っ張った状態を示す。図45より、第2部材が破断した結果、第1部材の中空部に収容された第2部材の頭部が第1部材の外部に突出していることが分かる。

図46〜図49は四つの破壊検知センサの引張試験を行ったときの荷重−伸び曲線を示す。図46〜図49の縦軸は引張荷重である試験力(kN)、横軸は引張破壊実験装置全体の伸びを示すストローク(mm)である。図46、図48および図49に示す荷重−伸び曲線では、ストロークが約6mmになったときに降伏点(YP)が現れ、YP点で第2部材が破断した。その後、最大荷重Maxに達して破断した。図47に示す荷重−伸び曲線では、最終的に第2部材が破断したが、YP点は観測されなかった。

(2)曲げ破壊検知用破壊検知センサ 図50に破壊検知センサを構成する第2部材および圧縮コイルばねの写真、図51にこれらの部品と中空部を有する直方体状の第1部材とを用いて破壊検知センサを組み立てた状態の写真を示す。破壊検知センサの構成は第11の実施の形態と同様である。第1部材の材質は構造用炭素鋼、第2部材の材質は脆性材料である鋳鉄である。

図52に示すように、この曲げ破壊検知用破壊検知センサを曲げ試験機に取り付け、この曲げ破壊検知用破壊検知センサの中央部に下向きの荷重を加えて曲げた。図52は第2部材の破断が開始する直前の状態である。図53は第2部材の破断が始まった直後の状態を示し、第2部材が伸び始めた結果、第1部材の中空部に収容された第2部材の頭部が第1部材の外部に突出し始めている。このときの荷重は45kN(約4.5t)である。さらに曲げ続けると、図54に示すように、第2部材の頭部が第1部材からより突出した。さらに曲げると、図55に示すように、第2部材が破断した結果、第1部材の中空部に収容された第2部材の頭部が第1部材の外部に突出した。

(3)引張破壊検知用破壊検知センサ 第15の実施の形態による破壊検知センサを作製した。図56は使用したポテンショメータを示す。図57は破壊検知センサを構成する部品を示す。図58は第1部材の内部に収容されたポテンショメータの可動部が第1部材に設けられた貫通孔に嵌め込まれて外部に突出している様子を示す。図59は破壊検知センサを組み立てた状態を示す。図60は第1部材に引張力を加えながら変位を測定した結果を示す。図60に示すように、第1部材は、引張力を加えて約100秒間は弾性変形し、その後、塑性変形することが分かる。第1部材に引張力を加えて変形が開始すると、第1部材と一体となったポテンショメータの可動部が時間とともに移動することが観察された。変位量は、既に述べたように、ポテンショメータで測定された抵抗より、(L’1 −L’)α=R1 −Rの式に基づいて求められたものである。

以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。

例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、形状、構造、材質などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、形状、構造、材質などを用いてもよい。

また、上述の第1〜第14の実施の形態においては、第2部材20の軸部21に通された圧縮コイルばね40により第2部材20の頭部22に引張力を加えているが、第2部材20の頭部22に引張力を加えるためには、例えば次のようにしてもよい。すなわち、図61Aに示すように、この破壊検知センサは、第1部材10の中空部11が第1部分11aおよび第3部分11cのみからなること、圧縮コイルばね40が設けられていないことが、第1の実施の形態による破壊検知センサと異なる。ボルト状の第1部材10の頭部13の先端に板ばね701が保持されたばね保持具702が設けられている。ばね保持具702は、板ばね701による引張力が加わっても頭部13から剥がれないように、溶接、接着、ねじ止めなどにより十分な強度で頭部13に固定されている。この例では、ばね保持具702は箱状に形成されている。板ばね701の一端は第2部材20の頭部22に固定され、他端がばね保持具702の天井702aの内面に固定されている。この状態で板ばね701は、自然の状態に比べて引き伸ばされた状態にある。このため、この板ばね701により、第2部材20の頭部22に引張力が加わっていることにより、第2部材20の軸部21は頭部22側に引っ張られている。これによって、第2部材20の先端部が第1部材10の先端部に拘束されている。第2部材20の頭部22は先端に直径が小さい突起部22aを有する。この突起部22aは、第1部材10の中空部11の第3部分11cの外部に突出しており、ばね保持具702の内部に位置している。この破壊検知センサのその他の構成は第1の実施の形態による破壊検知センサと同様である。この破壊検知センサの使用方法は次の通りである。この破壊検知センサを第1の実施の形態と同様に、構造用部材51、52に設けられた貫通孔53に挿入して取り付ける。図61Bに示すように、第1部材10の弾性変形または塑性変形により第2部材20が切欠き24の部分で破断すると、板ばね701による引張力により、破断片70の頭部22が外側(図61Bの上方)に引っ張られる。ばね保持具702の天井702aには孔702bが設けられており、この孔702bから頭部22の突起部22aが突出する。このように突起部22aがばね保持具702の外部に突出したことは、例えば外部から容易に視認することができるので、この結果から、構造用部材51、52が引張荷重を受けていることにより破壊する危険性があると判断することができる。板ばね701の代わりにコイルばねを用いてもよい。さらに、突起部22aがばね保持具702の外部に突出することを利用して電磁誘導により破断信号を容易に検出することができる。すなわち、例えば、突起部22aの少なくとも一部、例えば先端部を強磁性体からなる永久磁石により形成するとともに、ばね保持具702の天井702aの突起部22aの上方の部分にこの天井702aに平行に孔702bより大きいコイルを設置する。この場合には、第2部材20の破断により突起部22aがこの孔702bから外部に突出すると、突起部22aがコイルを貫くことによりコイルを貫く磁束が増加するため、コイルにはこの磁束の増加を妨げるように電流(誘導電流)が流れる。このため、この誘導電流あるいは誘導起電力を検出することにより第2部材20の破断を検出することができ、破断信号を容易に取り出すことができる。

10…第1部材、11…中空部、11a…第1部分、11b…第2部分、11c…第3部分、12…軸部、13…頭部、14…雄ねじ、20…第2部材、21…軸部、22…頭部、23…雄ねじ、24…切欠き、30…ナット、40…圧縮コイルばね、51、52…構造用部材、53…貫通孔、60…ナット、70…破断片、80…第1部材、81…中空部、81a…第11部分、81b…第12部分、81c…第13部分、81d…第14部分、81e…第15部分、85〜87…突起、100…第3部材、100a…前端部、100b…中間部、100c…頭部、101…中空部、101a…前部、101b…中間部、101c…後部、120…圧縮コイルばね、250…キャップ、280…ノズル、290…ジェル物質、300…第2部材破断検出装置、310…破断状態表示装置、320…破断情報送信装置、330…受信装置、400…ポテンショメータ、400a…可動部、500…建物、701…板ばね、702…ばね保持具

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