Overcurrent relay

申请号 JP4805693 申请日 1993-03-09 公开(公告)号 JP2809963B2 公开(公告)日 1998-10-15
申请人 三菱電機エンジニアリング株式会社; 三菱電機株式会社; 发明人 祐嗣 佐古;
摘要
权利要求 (57)【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 電流に応動して湾曲するバイメタルの動きをトグル機構からなる反転機構部に伝達し、連動手段によって常閉接点または常開接点を連動動作させ、前記常閉接点または常開接点そのもの、あるいはその連結部品を前記動作と反対方向に作動部材により移動させて前記常閉接点または常開接点を動作させる過電流継電器において、 前記作動部材の移動操作速度あるいは該作動部材により移動させられる前記常閉接点または常開接点の移動速度を加速する加速機構を具備することを特徴とする過電流継電器。
  • 【請求項2】 前記加速機構は、前記作動部材に押圧斜面を形成し、該押圧斜面により前記常閉接点または常開接点、あるいはその連結部品を押圧するように構成するとともに前記押圧斜面に段差を設けたものであることを特徴とする請求項1記載の過電流継電器。
  • 【請求項3】 前記加速機構は、前記常閉接点または常開接点、あるいはその連結部品を前記作動部材により押圧、引っ張り、回動 よって移動させ前記常閉接点または常開接点をリセットするように構成し、前記作動部材がその移動動作の途中で、その移動方向の動作に引っ掛かりが発生するようガイドする部材および前記作動部材に係合部を設けたものであることを特徴とする請求項1
    記載の過電流継電器。
  • 【請求項4】 前記加速機構は、前記作動部材の移動速度に対し、該作動部材そのものの速度を加速するように前記作動部材にトグル式の板バネあるいは線バネを設けたものであることを特徴とする請求項1記載の過電流継電器。
  • 【請求項5】 前記作動部材と前記板バネあるいは線バネを一体的に形成したことを特徴とする請求項4記載の過電流継電器。
  • 【請求項6】 前記加速機構は、前記作動部材をガイドする部分の途中に設けられた係合部と、前記係合部を乗り越えるときの惰性を発生させる前記作動部材に設けられた弾性変形部とを有するものであることを特徴とする請求項1記載の過電流継電器。
  • 【請求項7】 前記加速機構は、回動運動によりリセット操作を行う前記作動部材と、前記作動部材の手動操作部分が弾性的に変形するように前記作動部材あるいは該作動部材のガイド部分に係合部を設けたものであることを特徴とする前記請求項1記載の過電流継電器。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【産業上の利用分野】この発明は、モータ等を過負荷による焼損事故から保護する過電流継電器における接点復帰機構部分の構造に関するものである。

    【0002】

    【従来の技術】図18〜図24は、従来における熱動式過電流継電器の概略構成を示すものであり、図18は、
    カバー2を取り外した状態を示す正面図、図19は、その平面図、図20は、図18に示した切断線A−Aで切断した場合のA−A断面図、図21は、同じく図18に示した切断線B−Bで切断した場合のB−B断面図、図22は、同じく図18に示した切断線C−Cで切断した場合のC−C断面図、図23は、図19に示した切断線D−Dで切断した場合のD−D断面図、また、図24はリセットバーおよび反転機構部分を示す要部分解斜視図である。

    【0003】上記各図において、1はケース、2はカバー、3は各相毎に設けられたバイメタルで、主回路電流が流れて発熱するヒータ4が巻回されており、該ヒータ4により加熱され、図18に図示された破線のように湾曲変形する。 5はバイメタル支持部材であり、その舌部5aにはバイメタル3の上端を溶接等により電気的・機械的に接合固定しており、また、その下部5bは固定ネジ6によりケース1に固定されている。 7は負荷側主回路端子であり、図22に示すとおりL字形状をなしており、そのL字形状の一端7aには負荷側主回路(外部回路)接続用の端子ネジ8が螺着され、他端7bは溶接等によりバイメタル支持部材5に電気的・機械的に接合固定している。

    【0004】電源側主回路端子9は、図22に示す通り略コの字形状を有しており、コの字の上部9aには電源側主回路(外部回路)接続用の端子ネジ8が螺着されて、コの字の下部の突設9bにはヒータ4の上端部4a
    が溶接等により電気的に接続されている。 また、ヒータ4の下端4bはバイメタル3の下端3aに溶接等により電気的に接続されている。

    【0005】連動板10は各極のバイメタル3の先端に当接し、バイメタル3の変形動作を伝達する。 そして、
    図18に示す連動板10の左端部では周囲温度補償バイメタル11の下端部を押圧するように配置されている。
    作動レバー12は温度補償バイメタル11の上端部を固着し、軸13の回りに回転自在に配置されている。 上記軸13はレバー支持部材14によって、図21に示すように、その両端部を支えられている。 レバー支持部材1
    4はそのL字状曲げ内側14aでケース1のエッジ部1aに当接し、そこで支点支持されており、第1の舌部14bで調整ネジ15に押圧当接されている。

    【0006】また、第2の舌部14cは板ばね16によって、図18に示す左方向に付勢を受けている。 したがって、調整ネジ15の上方に設けられた調整つまみ1
    7を回転させることにより、レバー支持部材14はエッジ部1aを中心とした回動動作を行う。 そして、レバー支持部材14に取り付けた軸13は、図18において略左右方向の位置変化を行い、ヒータ4の電流により湾曲するバイメタル3の湾曲量に応じて、動作電流の調整を行う。

    【0007】常閉接点可動接触子18は導電性を有する金属板よりなり、その下部のエッジ18aが常閉接点可動側端子19の第1の支持部19aに当接され、この支持部19aを中心とした回動動作が可能なように支持されている。 常閉接点可動側端子19に設けられた第2の支持部19bには動作板20のエッジ20aが当接支持されている。 動作板20の上部に設けられた穴20b
    と、常閉接点可動接触子18の中央部に設けられた穴1
    8bとの間には、引っ張りコイルばね21が引張架設されている。 動作板20のエッジ20aと穴20bの略4
    半上部には作動レバー12のL字状の先端12aが当接すべく対向位置に配設されている。 また、常閉接点可動側端子19はその外部突出舌部19cに外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8を螺着しており、また、図2
    0に示すとおり、締め付けネジ22によりケース1に固定されている。

    【0008】図23に示す23は常閉接点固定側端子であり、導電性・弾性を有する金属薄板よりなる常閉接点固定側接触子24を溶接あるいはカシメ等により電気的・機械的に結合している。 また、常閉接点固定側接触子24にカシメあるいは溶接等により取り付けられた接点24aは、同様に常閉接点可動接触子18に取り付けられた接点18cと互いに接離するよう対向位置に配設されており、常閉接点を構成している。 なお、常閉接点固定側端子23は締め付けネジ22により、ケース1に螺着固定されており、外部突出舌部23aには外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8が螺着されている。

    【0009】図23に示す25は常開接点可動側端子であり、導電性・弾性を有する金属薄板よりなる常開接点可動接触子26を溶接あるいははカシメ等により電気的・機械的に結合している。 なお、常開接点可動側端子2
    5は締め付けネジ22により、ケース1に螺着固定されており、外部突出舌部25aには外部回路(図示せず)
    接続用の端子ネジ8が螺着されている。

    【0010】図23に示す27は常開接点固定側端子であり、導電性・弾性を有する金属薄板よりなる常開接点固定側接触子28を溶接あるいはカシメ等により電気的・機械的に結合している。 また、常開接点固定側接触子28にカシメあるいは溶接等により取り付けられた接点28aは、同様に常開接点可動接触子26に取り付けられた接点26aと互いに接離するよう対向位置に配設されており、常開接点を構成している。 なお、常開接点固定側端子27は締め付けネジ22により、ケース1に螺着固定されており、外部突出舌部27aには外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8が螺着されている。

    【0011】常閉接点可動接触子18には図20に示すとおり、樹脂などの絶縁性の材料からなる操作レバー2
    9が嵌合あるいは接着などにより固定されており、常閉接点可動接触子18と同じ動作をするように構成されている。 操作レバー29の下部に設けられた操作突部29
    aは常開接点可動接触子26の背面26bを押圧すべく配置されている。 また、上部には円弧状の復帰用突設2
    9bが設けられている。

    【0012】30はリセットバーを示し、図18における上下方向に移動自在にケース1により案内されている。 また、リセットバー30は、圧縮コイルばねからなる戻しばね31により図18の上方向に付勢されている。 リセットバー30の下部には停止平面30aが操作レバー29の復帰用突設29bと対向するように配設されており、この停止平面30aの上部にはこの停止平面30aに連なる押圧斜面30bが設けられている。

    【0013】ケース1の上面には表装カバー32が装着されている。 表装カバー32の上面には調整つまみ用穴32a、リセットバー用穴32bや動作表示窓32cが設けられており、さらに動作電流調整用の目盛32dが印刷されている。 33は表示レバーであり、その中央部33aでケースに軸支持されており、その下部のU字状部33bで常閉接点可動接触子18の上部に遊びをもって係合している。 またその上部に設けた表示片33cは表装カバーの動作表示窓32cを通じて外部(上面)より目視できるよう配置されている。

    【0014】次に、動作について説明する。 図22において、主回路電流は電源側主回路端子9からヒータ4を通りバイメタル3を経てバイメタル支持部材5、負荷側主回路端子7へと通電される。 負荷側主回路端子7の1
    端7aに螺着された端子ネジ8には電線(図示せず)が接続されていて、その先は、電動機等の負荷(図示せず)に接続されている。 したがって、上記主回路電流は負荷電流と同一となる。 そして、主回路電流がヒータ4
    およびバイメタル3において発生するジュール熱によって、バイメタル3は加熱されて図18において破線で示すように湾曲させられる。

    【0015】上記の負荷が過負荷の状態になると、主回路電流は増大し、図18の破線図で示したバイメタル3
    の湾曲はさらに大きくなる。 このため、連動板10はバイメタル3の先端に押圧されて図18の左方向に移動する。 連動板10が左方向に移動すると、その左端部に押圧されて温度補償バイメタル11と作動レバー12の連結体は軸13を中心として時計方向に回動させられ、作動レバー12のL字状の先端12aは動作板20を押圧する。 これにより、動作板20はエッジ20aを中心として反時計方向に回動させられる。 この回動により、動作板の穴20bが、常閉接点可動接触子の穴18bと常閉接点可動側端子の第1の支持部19aとを結んだ直線より左に移動すると、引っ張りコイルばね21が常閉接点可動接触子18を付勢する力の方向が、図18の右向きから左向きに反転するため、常閉接点可動接触子18
    は常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として反時計方向に急速に反転する。

    【0016】したがって、常閉接点可動接触子の接点1
    8cと、常閉接点固定側接触子の接点24aとの当接により、電気的導通を保っていた常閉接点は開離し遮断状態となる。 また、常閉接点可動接触子18に固定された操作レバー29も同様に、常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として反時計方向に急速に反転し、
    操作レバーの操作突部29aが常開接点可動接触子の背面26bを押圧し、図23において右方向に常開接点可動接触子26を変位させる。 その結果、常開接点可動接触子の接点26aは常開接点固定側接触子の接点28a
    と当接して、常開接点は電気的に導通状態になる。 なお、操作レバーの復帰用突設29bがリセットバーの停止平面30aに当接して、常閉接点可動接触子18および操作レバー29の反転動作は停止する。

    【0017】したがって、前記常閉接点を主回路電流を開閉する電磁接触器(図示せず)の操作コイル回路に直列に接続することにより、電動機等の負荷(図示せず)
    が過負荷となったときに主回路を遮断して保護することができる。 また、前記常開接点に直列に警報ランプ等の回路を接続することにより、過負荷の警報信号を出力することができる。

    【0018】主回路電流が遮断され、バイメタル3が元の状態に戻った後、前記常開/常閉接点を元に戻すには、外部より手動操作により、リセットバー30を図1
    8の下方向へ押し下げることにより行う。 リセットバー30を手動により図18の下方向へ戻し、ばね31の付勢力に抗しながら押し下げると、操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18は、操作レバーの円弧状の復帰用突設29bがリセットバーの押圧斜面30bに押されることにより、図18,図23において常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として時計方向に回動する。 そして、常閉接点可動接触子の穴18bの位置が、常閉接点可動側端子の第2の支持部19bと第1の支持部19aを結んだ直線を右に越えると、引っ張りコイルばね21が常閉接点可動接触子18
    を付勢する力の方向が図18,図23の左向きから右向きに反転するため、常閉接点可動接触子18は常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として時計方向に急速に反転し、復帰する。 これにより常閉接点は電気的に導通し、常開接点は開離して遮断状態となり、元の状態に復帰する。

    【0019】その他、この発明に関連する参考技術文献として、特開昭57−185641号公報に開示されている「熱動過電流継電器」、特開平2−270244号公報に開示されている「熱動過電流継電器」、実開昭6
    2−191148号公報に開示されている「サーキットプロテクタ」、実開昭61−75046号公報に開示されている「回路遮断器の引き外し装置」、実開昭60−
    62753号公報に開示されている「多極型回路しゃ断器」、実開昭61−177330号公報に開示されている「リミットスイッチ」がある。

    【0020】

    【発明が解決しようとする課題】従来における過電流継電器にあっては、以上のように構成されているため、バイメタルが元の状態に戻る前にリセット動作を行ったとき、異常動作が発生する恐れがあった。 すなわち、従来における熱動式過電流継電器は係る条件でリセット動作を行うと、常閉接点可動接触子が中立状態(リセット状態でも動作状態でもない中間位置)に停止し、その後、
    リセットバーの押圧を取り除き、さらに、その後バイメタル3が元の状態に戻ると常閉接点可動接触子がリセットされるという異常動作が発生する恐れがあった。 この異常動作は、オペレータにとって意図せずにリセット動作が内部の機構によって記憶されたこととなる。

    【0021】すなわち、オペレータにとっては、リセットされないためリセット操作を中断(リセットバーの押圧をやめる)しており、リセットが記憶されているという意識がないため、過電流継電器の動作の原因調査のため、電動機の調査を行っていたとすると、バイメタルが冷却されてリセットされる該異常動作が発生すると、急に電動機が回りはじめるという不都合があった。

    【0022】上記問題点の発生メカニズムを図面を用いて、さらに詳細に説明する。 図25〜図28は、上記の従来におけるトグル式の反転機構の模式図を示している。 すなわち、図18における常閉接点可動接触子1
    8、動作板20、引っ張りコイルばね21を模式化したもので、図25において、G−E1で示す直線(実線)
    は常閉接点可動接触子18に相当し、G点の回りに回動自在となっている。 また、J1−Kで示す直線(実線)
    は動作板20を表し、エッジ20aを模式化したK点の回りに回動自在となっている。 点J1は動作板の穴20
    bに、点F1は常閉接点可動接触子の穴18bに相当しており、点J1とF1の間の点線は引っ張りコイルばねに相当する。 G−H1で示す一点鎖線は操作レバー29
    を模式化したもので、点H1は常開接点可動接触子26
    に当接する操作レバーの操作突部29aに相当する。 なお、一点鎖線G−H1と実線G−E1は連結されて点G
    の回りに回動自在となっている。 そして、点Gは常閉接点可動側端子の第1の支持部19aに、点Kは第2の支持部19bに相当しており、両点の位置は動かない。

    【0023】図25は、反転機構が動作、すなわち、トリップした状態を示しており、図中の矢印Rはリセットバーにより常閉接点可動接触子の先端E1点が移動させられる方向、すなわちリセット方向を示し、反対に、図中矢印Tはトリップ方向を示す。 リセットバーによりE
    1点はE2点まで移動させられる。 図25に示したトリップ状態での常閉接点可動接触子に働く回転モーメントについて考える。 図中の引っ張りコイルばねの張力P1
    と直線G−F1のなす角度がβ1であるため、F1−G
    間の距離をL1とすると、引っ張りコイルばねの張力P
    1はQ1×L1なるモーメントとなって矢印T(トリップ)方向に働く。 ここで、Q1=P1×sinβ1が成立する。 また、図中に矢印S1で示す常開接点可動接触子がたわめられた力は、G−H1間の距離をL2とすると、S1×L2なる矢印R(リセット)方向のモーメントとして常閉接点可動接触子に働く。

    【0024】次に、図25においてリセット操作が行われたとき、すなわち、E1点がE2点まで移動させられたときのモーメントについて考える。 まずは、J1点の拘束がない、すなわち、バイメタルが完全に冷却された状態でリセット操作が行われたときについて説明する。
    この状態での模式図を図26に示す。 E1点がE2までリセットバーにより移動させられると、点F1もF2まで移動し、H1はH2まで移動する。 J1点は拘束がないため、K点とF2点を直線でつないだ線上のJ2点まで移動する。 このとき引っ張りコイルばねの張力P2
    は、Q2×L1なるリセット方向のモーメントとなって働く。 ここに、Q2=P2×sinβ2が成立する。

    【0025】また、常開接点可動接触子の力は、H1がH2点まで移動したためたわみ量がS2と小さく成っているが、S2×L2のモーメントでリセット方向に働いている。 上記図25から図26にいたる操作(バイメタルが冷却された状態でのリセット操作)の過程でのモーメントを力線図に描くと図29のとおりとなる。 図中実線は引っ張りコイルばねによる回転モーメント、破線は常開接点可動接触子の力による回転モーメントであり、
    一点鎖線はこれら2つのモーメントの合成、すなわち、
    常閉接点可動接触子が受けるモーメントを示す。 E2点まで移動させられたときの合成モーメントは完全にリセット方向に働いており、常閉接点可動接触子がリセット方向に駆動される。

    【0026】図25において、J1点が拘束された状態(トリップ直後のバイメタルが全く冷却されていない状態)でリセット操作が行われた場合について同様の計算を行う。 このリセット状態の模式図は図27のとおりとなる。 図25から図27への移行において、E1点がE
    2点まで移動させられ、F1点がF2点に、H1がH2
    まで移動させられるのは、図26と同じである。 しかし、この場合は、動作板の先端がJ1点で拘束されているため、図26のように右に移動できず固定されたままである。

    【0027】したがって、引っ張りコイルばねの張力P
    3はQ3×L1なるトリップ方向のモーメントとなって働く(ここで、Q3=P3×sinβ3で成り立つ)。
    なお、常開接点可動接触子の力でリセット方向に働くモーメントS2×L2は、図26の場合と同一である。 よって、モーメントの力線図を描くと図30のとおりとなる。 図中実線は引っ張りコイルばねによる回転モーメント、破線は常開接点可動接触子の力による回転モーメントであり、一点鎖線はこれら2つのモーメントの合成すなわち、常閉接点可動接触子が受けるモーメントを示す。 E2点まで移動させられたときの合成モーメントはトリップ方向に働いており、このためリセット操作を除去すると常閉接点可動接触子はトリップ方向に駆動されてE1の位置に戻る。

    【0028】次に、図27と図26の中間状態で動作板が拘束された状態(バイメタルの冷却が完全でない状態)について説明する。 この状態での模式図を図28に示す。 動作板の先端は図26のJ2と図29のJ1の中間点J4から右へ移動できないよう拘束されるため、引っ張りコイルばねの張力P4はQ4×L1なるトリップ方向のモーメントとなる(ここで、Q4=P4×sin
    β4が成立するが、β4が小さいため非常に小さな力となっている)。

    【0029】また、常開接点可動接触子の力でリセット方向に働くモーメントS2×L2は図26の場合と同一である。 よって、モーメントの力線図を描くと図31のとおりとなる。 図中、実線は引っ張りコイルばねによる回転モーメント、破線は常開接点可動接触子の力による回転モーメントであり、一点鎖線はこれら2つのモーメントの合成、すなわち、常閉接点可動接触子が受けるモーメントを示す。 図中、二点鎖線により示すのは、図1
    8に示した常閉接点可動接触子の下部のエッジ18aと常閉接点可動側端子の第1の支持部の間、あるいは操作レバーの操作突部29aと常開接点可動接触子との間の摩擦力で、動きを引き留める方向に+δあるいは−δのほぼ一定値で働く。

    【0030】合成の回転モーメント(一点鎖線)はE2
    の位置でこの摩擦力δより小さいため、リセット操作を除去しても常閉接点可動接触子は、図28の状態から動かない。 そして、バイメタルが冷却されてJ4点の拘束が解けると図26の状態となりリセットに至る。 すなわち、リセットしたときにはリセットせず(中間位置で止まり)、リセットを除去後、バイメタルが冷却されると、オペレータの意図に関係なくリセット動作が起こるという異常現象が発生する。

    【0031】図31において説明した異常現象は、常開接点による回転モーメント(破線)が大きいと合成モーメント(一点鎖線)の傾きが小さくなり、摩擦力を脱し切れないJ4の範囲が広がることが図よりわかる。 そのため、従来の装置においてはこの常開接点の力を小さくする、あるいは引っ張りコイルばねによる回転モーメントの傾きを大きくすべく引っ張りコイルばねの力を大きくするなどでこの異常現象の軽減を図ってきた。 また、
    その摩擦力を軽減するべく対策を講じてきた。 しかしこれらは、この異常現象を皆無にするものではなく、単に、軽減するのみであった。

    【0032】この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、リセットバーの移動動作でリセットを行うあらゆるリセット機構について、リセット動作がトグル機構に記憶されるという異常動作を皆無にし、その安全性を向上させる過電流継電器を得ることを目的とする。

    【0033】

    【課題を解決するための手段】この発明に係る過電流継電器は、電流に応動して湾曲するバイメタルの動きをトグル機構からなる反転機構部に伝達し、連動手段によって常閉接点または常開接点を連動動作させ、前記常閉接点または常開接点そのもの、あるいはその連結部品を前記動作と反対方向に作動部材により移動させて前記常閉接点または常開接点を動作させる過電流継電器において、前記作動部材の移動操作速度あるいは該作動部材により移動させられる前記常閉接点または常開接点の移動速度を加速する加速機構を具備するものである。

    【0034】また、前記加速機構は、前記作動部材に押圧斜面を形成し、該押圧斜面により前記常閉接点または常開接点、あるいはその連結部品を押圧するように構成するとともに前記押圧斜面に段差を設けたものである。

    【0035】また、前記加速機構は、前記常閉接点または常開接点、あるいはその連結部品を前記作動部材により押圧、引っ張り、回動によって移動させ前記常閉接点または常開接点をリセットするように構成し、前記作動部材がその移動動作の途中で、その移動方向の動作に引っ掛かりが発生するようガイドする部材および前記作動部材に係合部を設けたものである。

    【0036】また、前記加速機構は、前記作動部材の移動速度に対し、該作動部材そのものの速度を加速するように前記作動部材にトグル式の板バネあるいは線バネを設けたものである。

    【0037】また、前記作動部材と前記板バネあるいは線バネを一体的に形成したものである。

    【0038】また、前記加速機構は、前記作動部材をガイドする部分の途中に設けられた係合部と、前記係合部を乗り越えるときの惰性を発生させる前記作動部材に設けられた弾性変形部とを有するものである。

    【0039】また、前記加速機構は、回動運動によりリセット操作を行う前記作動部材と、前記作動部材の手動操作部分が弾性的に変形するように前記作動部材あるいは該作動部材のガイド部分に係合部を設けたものである。

    【0040】

    【作用】この発明によれば、リセットバーの押圧斜面に設けた段差により、リセットバーの緩慢な押圧動作でも、その引っかかりにより押圧される常閉接点または常開接点の俊敏な動きが得られ、また、押圧される常閉接点または常開接点の動き量にオーバーランが生じる。

    【0041】また、リセットバーの押圧動作の途中で引っかかりが発生するようガイドする部材とリセットバーに凸部を設けたので、押圧操作が緩慢でも、引っかかり以降のリセットバーの動作は俊敏となり、押圧される常閉接点または常開接点の俊敏な動きとオーバーランが得られる。

    【0042】

    【実施例】〔実施例1〕 以下、この発明による第1の実施例を図1〜図7に基づいて説明する。 図1は、カバー2を取り外した状態を示す正面図、図2は、その平面図、図3は、図1に示した切断線W−Wで切断した場合のW−W断面図、図4は、
    同じく図1に示した切断線X−Xで切断した場合のX−
    X断面図、図5は、同じく図1の切断線Y−Yで切断した場合のY−Y断面図、図6は、図2に示した切断線Z
    −Zで切断した場合のZ−Z断面図、また、図7は、リセットバーおよび反転機構部分を示す要部分解斜視図である。

    【0043】図において、1はケース、2はカバー、3
    は各相毎に設けられたバイメタルであり、主回路電流が流れて発熱するヒータ4が巻回されていて、該ヒータ4
    により加熱され、図1に示した破線のように湾曲変形する。 5はバイメタル支持部材でその舌部5aにはバイメタル3の上端を溶接等により電気的・機械的に接合固定しており、また、その下部5bは固定ネジ6によりケース1に固定されている。 7は負荷側主回路端子で図5に示すとおりL字形状を有しており、そのL字形状の一端7aには負荷側主回路(外部回路)接続用の端子ネジ8
    が螺着されており、他端7bは溶接等によりバイメタル支持部材5に電気的・機械的に接合固定している。

    【0044】電源側主回路端子9は図5に示すとおり略コの字形状を有しており、コの字の上部9aには電源側主回路(外部回路)接続用の端子ネジ8が螺着されており、コの字の下部の突設9bにはヒータ4の上端部4a
    が溶接等により電気的に接続されている。 また、ヒータ4の下端4bはバイメタル3の下端3aに溶接等により電気的に接続されている。

    【0045】連動板10は、各極のバイメタル3の先端に当接し、バイメタル3の変形動作を伝達する。 そして、図1に示す連動板10の左端部では温度補償バイメタル11の下端部を押圧するように配置されている。 作動レバー12は温度補償バイメタル11の上端部を固着し、軸13の回りに回転自在に配置されている。 上記軸13はレバー支持部材14によって、図4に示すように、その両端部を支えられている。 レバー支持部材14
    はそのL字状曲げ内側角14aでケース1のエッジ部1
    aに当接し、そこで支点支持されており、第1の舌部1
    4bで調整ネジ15に押圧当接されている。

    【0046】また、第2の舌部14cは板ばね16によって、図1に示す左方向に付勢力を受けている。 したがって、調整ネジ15の上方に設けられた調整つまみ17
    を回転させることにより、レバー支持部材14はエッジ部1aを中心とした回動動作を行う。 そして、レバー支持部材14に取り付けた軸13は、図1において略左右方向の位置変化を行い、ヒータ4の電流により湾曲するバイメタル3の湾曲量に応じて、動作電流の調整を行う。

    【0047】常閉接点可動接触子18は導電性を有する金属板よりなり、その下部のエッジ18aが常閉接点可動側端子19の第1の支持部19aに当接され、この支持部19aを中心とした回動動作が可能なように支持されている。 常閉接点可動側端子19に設けられた第2の支持部19bには動作板20のエッジ20aが当接支持されている。 動作板20の上部に設けられた穴20b
    と、常閉接点可動接触子18の中央部に設けられた穴1
    8bとの間には、引っ張りコイルばね21が引張架設されている。 動作板20のエッジ20aと穴20bの略4
    半上部には作動レバー12のL字状の先端12aが当接すべく対向位置に配設されている。 また、常閉接点可動側端子19はその外部突出舌部19cに外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8を螺着しており、また、図3
    に示すとおり、締め付けネジ22によりケース1に固定されている。

    【0048】図6に示す23は常閉接点固定側端子であり、導電性・弾性を有する金属薄板よりなる常閉接点固定側接触子24を溶接あるいはカシメ等により電気的・
    機械的に結合している。 また、常閉接点固定側接触子2
    4にカシメあるいは溶接等により取り付けられた接点2
    4aは、同様に常閉接点可動接触子18に取り付けられた接点18cと互いに接離するよう対向位置に配設されており、常閉接点を構成している。 なお、常閉接点固定側端子23は締め付けネジ22により、ケース1に螺着固定されており、外部突出舌部23aには外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8が螺着されている。

    【0049】図6に示す25は常開接点可動側端子であり、導電性・弾性を有する金属薄板よりなる常開接点可動接触子26を溶接あるいはカシメ等により電気的・機械的に結合している。 なお、常開接点可動側端子25は締め付けネジ22により、ケース1に螺着固定されており、外部突出舌部25aには外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8が螺着されている。

    【0050】図6に示す27は常開接点固定側端子であり、導電性・弾性を有する金属薄板よりなる常開接点固定側接触子28を溶接あるいはカシメ等により電気的・
    機械的に結合している。 また、常開接点固定側接触子2
    8にカシメあるいは溶接等により取り付けられた接点2
    8aは、同様に常開接点可動接触子26に取り付けられた接点26aと互いに接離するよう対向位置に配設されており、常開接点を構成している。 なお、常開接点固定側端子27は締め付けネジ22により、ケース1に螺着固定されており、外部突出舌部27aには外部回路(図示せず)接続用の端子ネジ8が螺着されている。

    【0051】常閉接点可動接触子18には図3に示すとおり、樹脂などの絶縁性の材料からなる操作レバー29
    が嵌合あるいは接着などにより固定されており、常閉接点可動接触子18と同じ動きをするよう構成されている。 操作レバー29の下部に設けられた操作突部29a
    は常開接点可動接触子26の背面26bを押圧すべく配置されている。 また、上部には円弧状の復帰用突設29
    bが設けられている。

    【0052】130はリセットバーを示し、図1における上下方向に移動自在にケース1により案内されている。 またリセットバー130は、圧縮コイルばねからなる戻しばね31により図1の上方向に付勢されている。
    リセットバー130の下部には停止平面130aが操作レバー29の復帰用突設29bと対向するように配設されており、この停止平面130aの上部にはこの停止平面130aに連なる押圧斜面130bが設けられている。 また、この押圧斜面130bの途中には、段差13
    0cが設けられている。

    【0053】ケース1の上面には表装カバー32が装着されている。 表装カバー32の上面には調整つまみ用穴32a、リセットバー用穴32bや動作表示窓32cが設けられており、さらに、動作電流調整用の目盛32d
    が印刷されている。 33は表示レバーで、その中央部3
    3aでケースに軸支持されており、その下部のU字状部で常閉接点可動接触子18の上部に遊びをもって係合している。 また、その上部に設けた表示片33cは表装カバーの動作表示窓32cを通じて外部(上面)より目視できるよう配置されている。

    【0054】次に、動作を説明する。 図5において、主回路電流は電源側主回路端子9からヒータ4を通りバイメタル3を経てバイメタル支持部材5、負荷側主回路端子7へと通電される。 負荷側主回路端子7の1端7aに螺着された端子ネジ8には電線(図示せず)が接続されていて、その先は、電動機等の負荷(図示せず)に接続されている。 したがって、上記主回路電流は負荷電流と同一となる。 そして、主回路電流がヒータ4およびバイメタル3において発生するジュール熱によって、バイメタル3は加熱されて図1に破線で示すように湾曲させられる。

    【0055】上記の負荷が過負荷の状態になると、主回路電流は増大し、図1の破線図で示したバイメタル3の湾曲はさらに大きくなる。 このため、連動板10はバイメタル3の先端に押圧されて図1の左方向に移動する。
    連動板10が左方向に移動すると、その左端部に押圧されて温度補償バイメタル11と作動レバー12の連結体は軸13を中心として時計方向に回動させられ、作動レバー12のL字状の先端12aは動作板20を押圧する。 これにより、動作板20はエッジ20aを中心として反時計方向に回動させられる。 この回動により、動作板の穴20bが、常閉接点可動接触子の穴18bと常閉接点可動側端子の第1の支持部19aとを結んだ直線より左に移動すると、引っ張りコイルばね21が常閉接点可動接触子18を付勢する力の方向が、図1の右向きから左向きに反転するため、常閉接点可動接触子18は常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として反時計方向に急速に反転する。

    【0056】したがって、常閉接点可動接触子の接点1
    8cと、常閉接点固定側接触子の接点24aとの当接により、電気的導通を保っていた常閉接点は開離し遮断状態と成る。 また、常閉接点可動接触子18に固定された操作レバー29も同様に、常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として反時計方向に急速に反転し、
    操作レバーの操作突部29aが常開接点可動接触子の背面26bを押圧し、図6において右方向に常開接点可動接触子26を変位させる。 この結果、常開接点可動接触子の接点26aは常開接点固定側接触子の接点28aと当接して、常開接点は電気的に導通状態になる。 なお、
    操作レバーの復帰用突設29bがリセットバーの停止平面130aに当接して、常閉接点可動接触子18および操作レバー29の反転動作は停止する。

    【0057】したがって、前記常閉接点を主回路電流を開閉する電磁接触器(図示せず)の操作コイル回路に直列に接続することにより、電動機等の負荷(図示せず)
    が過負荷となったときに主回路を遮断して保護することができる。 また、前記常開接点に直列に警報ランプ等の回路を接続することにより、過負荷の警報信号を出力することができる。

    【0058】主回路電流が遮断され、バイメタル3が元の状態に戻った後、前記常開/常閉接点を元に戻すには、外部より手動操作により、リセットバー130を図1の下方向へ押し下げる。 リセットバー130を手動により図1の下方向へ戻し、ばね31の付勢力に抗しながら押し下げると、操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18は、操作レバーの円弧状の復帰用突設29bがリセットバーの押圧斜面130bに押されることにより、図1,図6において常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として時計方向に回動する。

    【0059】そして、押圧斜面130bの途中に設けた段差130cに操作レバーの円弧状の復帰用突設29b
    が当る位置までリセットバーを押圧すると、そこで一旦押圧動作に対して引っかかりが出るが、これに抗してさらに押圧すると、復帰用突設29bが摩擦力の堰をきって段差130cを乗り越える惰性で操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18は、図1において、支持部19aを中心とした時計方向に急速に回転する。 そして、この時計方向の回転量は、その惰性によるオーバーランにより、従来における装置のように段差130cのない場合の回転量よりも大きくなる。

    【0060】このため、常閉接点可動接触子の穴18b
    の位置が、常閉接点可動側端子の第2の支持部19bと第1の支持部19aを結んだ直線を右に越え、引っ張りコイルばね21が常閉接点可動接触子18を付勢する力の方向が図1,図6の左向きから右向きに反転するため、常閉接点可動接触子18は常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として時計方向に急速に反転し、復帰する。 これにより常閉接点は電気的に導通し、
    常開接点は開離して遮断状態となり、元の状態に復帰する。

    【0061】この復帰動作における操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18の動作は、
    バイメタル3が元に戻らない状態でリセットバー130
    を押し下げたときにも同様である。 したがって、従来の装置なら常閉接点可動接触子18が中立点で停止してしまうような条件でも、上記した急速な回転動作と、オーバーランによる大きな回転量で、その中立点を乗り越えリセットに至るようになる。 よって、反転機構によるリセット動作の記憶という異常現象の発生が防止できる。

    【0062】〔実施例2〕 次に、この発明の第2の実施例を図8,図9を用いて説明する。 図8は、カバー2を取り外した状態を示す正面図、図9は、図8に示した切断線V−Vで切断した場合のV−V断面図である。

    【0063】130はリセットバーを示し、図8,図9
    における上下方向に移動自在にケース1のガイド穴1b
    により案内されている。 また、リセットバー130は、
    圧縮コイルばねからなる戻しばね31により図1の上方向に付勢されている。 リセットバー130の下部には停止平面130aが操作レバー29の復帰用突設29bと対向するように配設されており、この停止平面130a
    の上部にはこの停止平面130aに連なる押圧斜面13
    0bが設けられている。

    【0064】図9に示した上記ガイド穴1bの内壁の途中にはガイド穴凸部1cが設けられており、また、リセットバー130にも130dなる凸部が形成され、相対峙するよう配置されている。 なお、その他の構成は第1
    の実施例と実質的に同一であるので、その説明を省略する。

    【0065】第2の実施例のリセット動作は、第1の実施例と同様外部より手動操作により、リセットバー13
    0を図1の下方向へ押し下げることにより行う。 リセットバー130を手動により図8,図9の下方向へ戻しばね31の付勢力に抗しながら押し下げると、操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18
    は、操作レバーの円弧状の復帰用突設29bがリセットバーの押圧斜面130bに押されることにより、図8において常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として時計方向に回動する。

    【0066】そして、ガイド穴凸部1cにリセットバーの凸部130dが当る位置までリセットバーを押圧すると、そこで一旦押圧動作に対して引っかかりが出るが、
    これに抗してさらに押圧すると、リセットバーの凸部1
    30dが摩擦力の堰をきってガイド穴凸部1cを乗り越える惰性でリセットバー130は急速に下降する。 この急速なリセットバーの運動により、押圧斜面130bに押された操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18も急速な時計方向の回転と、その惰性によるオーバーランにより、従来の装置のようにガイド穴凸部1cやリセットバーの凸部130dのない場合より大きな回転量を得る。

    【0067】このため、常閉接点可動接触子の穴18b
    の位置が、常閉接点可動側端子の第2の支持部19bと第1の支持部19aを結んだ直線を右に越え、引っ張りコイルばね21が常閉接点可動接触子18を付勢する力の方向が図8の左向きから右向きに反転するため、常閉接点可動接触子18は常閉接点可動側端子の第1の支持部19aを中心として時計方向に急速に反転し、復帰する。 これにより常閉接点は電気的に導通し、常開接点は開離して遮断状態となり、元の状態に復帰する。

    【0068】この復帰動作における操作レバー29およびこれに連結された常閉接点可動接触子18の振舞いは、バイメタル3が元に戻らない状態でリセットバー1
    30を押し下げたときにも同様である。 したがって、従来における装置なら常閉接点可動接触子18が中立点で停止してしまうような条件でも、上記した急速な回転動作と、オーバーランによる大きな回転量で、その中立点を乗り越えリセットに至るようになる。 よって、反転機構によるリセット動作の記憶という異常現象の発生が防止できる。

    【0069】図8,図9に開示した第2の発明の実施例は、押圧斜面130bを利用してリセットを行う方式となっているが、この方式のみならず、例えば、図8においてリセットバーが左右方向にスライド可能な横長形状とし、これにより常閉接点可動接触子を押圧あるいは引っ張る構成として、このリセットバーとガイド部分に同様の引っ掛かり凸部を設けても同様の効果が得られる。
    さらに、リセットバーが並進運動でなく回転運動を行うことによりリセットする方式においても同様の効果を発揮する引っ掛かり凸部を設けることができる。

    【0070】図1〜図7に開示した第1の発明の実施例および図8,9に開示した第2の発明の実施例においては、リセットバーは常閉接点を移動させてリセットする構成となっているが、リセットバーが常開接点あるいは常開接点と常閉接点の両方を移動させるようなリセット機構にも、同様の効果をもって第1および第2の実施例が適用可能である。

    【0071】〔実施例3〕 次に、この発明による第3の実施例を図10,図11を用いて説明する。 図において、リセットバー230が、
    停止面230a、押圧斜面230bを有するのは、上記第1の実施例と同様であるが、首下230cに板バネ1
    31が組み込まれている。 板バネ131のバネ片131
    a,131bと首下230cによりトグル機構を構成しており、リセットバー230を押し込むと、トグルの死点をこえた点から急激にリセットバー230が下降する。

    【0072】〔実施例4〕 次に、この発明による第4の実施例を図12,図13を用いて説明する。 図において、上記第3の実施例において示した板バネが、リセットバー230に一体的に組み込まれている。 図中、230dが板バネの代替えとなる。

    【0073】〔実施例5〕 次に、この発明による第5の実施例を図14を用いて説明する。 図において、リセットバー130には、弾性変形部130dが設けられており、この先端部がリセットバー130押圧の途中においてケース1の凸部1dに当たる。 さらに、摩擦力に抗して押し上げると弾性変形部130dは左にたわみ、リセットバー130は急激に下降する。

    【0074】〔実施例6〕 次に、この発明による第6の実施例を図15〜図17を用いて説明する。 図において、330はリセットバーであり、停止平面330aを有しており、軸部330bがケース1の軸1fに挿通されて回動自在に構成されている。 331はひねりコイルバネであり、リセットバー3
    30を時計方向に付勢している。 リセットバー330の反時計方向の回転に対して、リセットバー330の凸部330cがカバー2の凸部2a(ガイド部分の凸部)に当接する。

    【0075】リセット操作は、リセットバーの手動操作部を反時計方向に操作する。 このとき、リセットバー3
    30の凸部330cとカバー2の凸部2aが引っ掛かっている状態で、さらに反時計方向に力を加えると、手動操作部は図17に示す破線のようにたわむ。 そして、さらに力を加えるとリセットバー330の凸部330cがカバー2の凸部2aを乗り越えて反時計方向に回転するが、そのときは、上記変形により、この手動操作部がためた力が開放され、リセットバー330は急速回転する。

    【0076】

    【発明の効果】以上説明したように、この発明よれば、
    電流に応動して湾曲するバイメタルの動きをトグル機構からなる反転機構部に伝達し、連動手段によって常閉接点または常開接点を連動動作させ、常閉接点または常開接点そのもの、あるいはその連結部品を上記動作と反対方向に作動部材により移動させて常閉接点または常開接点を動作させる過電流継電器において、作動部材の移動操作速度あるいは該作動部材により移動させられる常閉接点または常開接点の移動速度を加速する加速機構を具備するため、作動部材(リセットバー)の移動動作でリセットを行うあらゆるリセット機構について、リセット動作がトグル機構に記憶されるという異常動作を皆無にし、その安全性を向上させることができる。

    【0077】また、上記効果(リセット動作がトグル機構に記憶されるという異常動作を排除すること)に加えて、その加速機構は、作動部材に押圧斜面を形成し、該押圧斜面により常閉接点あるいは常開接点、あるいはその連結部品を押圧するように構成すると共に、前記押圧斜面に段差を設けることにより構成されており、作動部材(リセットバー)の押圧動作時にのみ係合が発生し、
    作動部材(リセットバー)が戻しバネにより復帰されるときには、係合が発生せず、作動部材(リセットバー)
    の戻り不良がなく、信頼性の高い機構を提供できる。 また、押圧斜面の角度や段差の大きさにより作動部材(リセットバー)押圧時における引っ掛かり具合が自在に設計できるため、最適なリセット操作感の機構を得ることができる。

    【0078】また、その加速機構は、常閉接点あるいは常開接点、あるいはその連結部品を作動部材により押圧、引っ張り、回動により移動させ、上記常閉接点あるいは常開接点をリセットするように構成し、上記作動部材がその移動動作の途中において、その移動方向の動作に引っ掛かりが発生するようにガイドする部材および上記移動部材に係合部を設けることにより構成されており、従来のものの部材に係合部分(凹部、凸部等)を形成させるだけで、何ら部品の追加なしに、すなわち、製品価格を上昇させることなく、リセット動作がトグル機構に記憶されるという異常動作を排除することを達成することができる。 また、係合部分はガイドする部材および作動部材の係合部分における単純穴寸法あるいは単純径寸法により係合量を決定しているため、係合具合の調整、量産時における管理が極めて容易であり、その結果、それらの操作力の調整にかかる費用を最小にでき、
    安価な装置を供給できる。

    【0079】さらに、その加速機構は、作動部材にトグル式の板バネあるいは線バネを設け、上記板バネあるいは線バネにより上記作動部材の移動速度に対し、該作動部材そのものの速度を加速するように構成されており、
    係合あるいは引っ掛かりなどを利用しないので、引っ掛かり部、係合部分の摩耗などによる加速機構の性能劣化がなく、長寿命の機構を提供できる。

    【0080】また、トグル式の板バネあるいは線バネを作動部材と一体に形成しており、かつ、その部分が樹脂により構成されているので、板バネあるいは線バネと作動部材との擦れ合う部分、および板バネあるいは線バネとケースとの擦れ合う部分の摩耗がなくなり、さらに長寿命の機構を提供できる。 さらに、バネを一体化することによりバネの製作、組み付けに要する費用を節約でき、極めて安価な装置が供給できる。

    【0081】また、その加速機構は、作動部材に弾性変形部を設け、該作動部材をガイドする部分の途中に設けた係合部を上記弾性変形部が乗り越えるときの惰性を利用しており、係合部分が弾性変形しないものに比べて、
    その係合を押し切るための作動部材の操作力(リセット操作力)を小さくすることができ、また、弾性変形部の厚みなど弾性変形部の変形力を調整することで上記操作力を最適に設計でき、良好な操作感が得られる機構を実現できる。

    【0082】さらに、その加速機構は、作動部材が回動運動によりリセット操作を行う構成であり、上記作動部材あるいは該作動部材のガイド部分に係合部を設けるとともに上記作動部材の手動操作部分が弾性的に変形するように構成されている。 したがって、手動操作部分が弾性変形しないものに比べて作動部材の係合部に対する係合時において、引っ掛かったという違和感のある操作感を消滅させることができる。 また、係合部の摩擦力を越えるまで手動操作部が変形した後、この変形力が開放されるので、係合部を乗り越えたあとの作動部材の速度は、手動操作の速度に関係なく一定値となり、極めて安定したリセット操作性能(リセット動作がトグル機構に記憶されるという異常動作を排除する性能)が得られる。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】 この発明による過電流継電器(実施例1)のカバーを取り外した状態を示す正面図である。

    【図2】 図1に示した過電流継電器の構成を示す平面図である。

    【図3】 図1に示したW−W線断面図である。

    【図4】 図1に示したX−X線断面図である。

    【図5】 図1に示したY−Y線断面図である。

    【図6】 図2に示したZ−Z線断面図である。

    【図7】 この発明による過電流継電器のリセットバーおよび反転機構部を示すの要部分解斜視図である。

    【図8】 この発明による過電流継電器(実施例2)のカバーを取り外した状態を示す正面図である。

    【図9】 図8に示したV−V線断面図である。

    【図10】 この発明による過電流継電器(実施例3)
    の構成を示す断面図である。

    【図11】 図10に示したリセットバーと板バネの構成を示す説明図である。

    【図12】 この発明による過電流継電器(実施例4)
    の構成を示す断面図である。

    【図13】 図12に示したリセットバーの構成を示す説明図である。

    【図14】 この発明による過電流継電器(実施例5)
    の構成を示す断面図である。

    【図15】 この発明による過電流継電器(実施例6)
    のカバーを取り外した状態を示す正面図である。

    【図16】 図15に示したY−Y線断面図である。

    【図17】 図15に示した過電流継電器の分解斜視図である。

    【図18】 従来における過電流継電器のカバーを取り外した正面図である。

    【図19】 従来における過電流継電器の構成を示す平面図である。

    【図20】 図18に示したA−A線断面図である。

    【図21】 図18に示したB−B線断面図である。

    【図22】 図18に示したC−C線断面図である。

    【図23】 図19に示したD−D線断面図である。

    【図24】 従来における過電流継電器のリセットバーおよび反転機構部分を示す要部斜視図である。

    【図25】 反転機構部分においてトリップ状態を示す模式図である。

    【図26】 反転機構部分においてバイメタル冷却後のリセット操作時を示す模式図である。

    【図27】 反転機構部分においてトリップ直後におけるリセット操作時を示す模式図である。

    【図28】 反転機構部分においてバイメタルが冷却途中でのリセット操作時を示す模式図である。

    【図29】 バイメタル冷却後のリセット操作時を示すグラフである。

    【図30】 トリップ直後のリセット操作時を示すグラフである。

    【図31】 バイメタルが冷却途中でのリセット操作時を示すグラフである。

    【符号の説明】

    1c ガイド穴凸部,1d 凸部,2 カバー,3 バイメタル,18 常閉接点可動接触子,18c 接点,
    19 常閉接点可動側端子,19a 第1の支持部,1
    9b 第2の支持部,20 動作板,21 引っ張りコイルばね,23常閉接点固定側端子,24 常閉接点固定側接触子,24a 接点,25 常開接点可動側端子,26 常開接点可動接触子,26a 接点,27
    常開接点固定側端子,28 常開接点固定側接触子,2
    8a 接点,29 操作レバー,29b 復帰用突設,
    30 リセットバー,30b 押圧斜面,31 戻しばね,130 リセットバー,130b 押圧斜面,13
    0c 段差,130d 凸部。

    フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭46−227(JP,A) 特開 昭57−185641(JP,A) 特開 昭63−195929(JP,A) 特開 平2−270244(JP,A) 実開 昭58−148847(JP,U) 実開 昭60−62753(JP,U) 実開 昭61−75046(JP,U) 実開 昭61−99941(JP,U) 実開 昭61−161854(JP,U) 実開 昭61−177330(JP,U) 実開 昭62−191148(JP,U) 実開 昭63−65938(JP,U) 特公 昭50−12790(JP,B1) 米国特許4814737(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl. 6 ,DB名) H01H 5/00 - 5/30 H01H 61/00 - 61/08 PCI(DIALOG) WPI(DIALOG)

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