【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、配線用回路しゃ断器,漏電しゃ断器などを実施対象とした回路しゃ断器のトリップクロスバーに関する。 【0002】 【従来の技術】まず、頭記した回路しゃ断器として、特開平8−50844号公報,特開平9−35608号公報などに開示されている開閉機構を図2に示す。 図において、1は開閉機構の組立フレームとしてしゃ断器ケース内に組み込まれるサイドプレート、2は固定接触子、 3は板ばね式の可動接触子片、4は開閉操作ハンドル、 4aはハンドル4に結合した揺動レバー式の支持金具、 4bはその支軸ピン、5はハンドル1の駆動ばね、6は丸棒材をU字形に屈曲してその一端を前記支持金具4a に軸支連結し、他端をサイドプレート1に開口した長穴に嵌合したU字リンク、7は両サイドの耳部をU字リンクの軸に嵌合して揺動自在に連結した板金製のラッチ、 8はラッチ7と可動接触子3との間に介装した上下可動なスライド式アクチュエータ片、9が図示されてない過電流引外し装置と前記ラッチ7との間を連係してサイドプレート1に組付けたトリップクロスバーである。 なお、前記のハンドル支持金具4a,U字リンク6,および駆動ばね5でトグルリンク機構を構成している。 【0003】ここで、トリップクロスバー9は、その上半部が回路しゃ断器に組み込まれた各極の過電流引外し装置(例えばバイメタル式の熱動式過電流引外し装置) に跨がる板状の樹脂モールド品(エンジニアリングプラスチック製)として作られたものであり、その下端部の両端に突き出し形成した軸部9aをサイドプレート1に開口した軸穴にはめ込んで揺動自在に軸支し、復帰ばね(捩じりコイルばね)9bにより反時計方向にばね付勢して起立姿勢に保持されている。 また、トリップクロスバー9の板面中央には前記したラッチ7の爪先端と係合し合う凸状のラッチ受け部9cが膨出形成されており、 さらに上端部には調整ねじ9dを取付けて各極の過電流引外し装置に対向させた構成になる。 【0004】かかる構成で、図示のように操作ハンドル4をON位置にセットした状態ではU字リンク6が下降位置にあって駆動ばね5のばね力を受け、U字リンク6 に連結したラッチ7がアクチュエータ8を介して可動接触子片3を押し下げて接点を閉成している。 このON状態から操作ハンドル4をOFF位置に向けて時計方向に揺動操作すると、U字リンク6が引き上げられ、この動きに伴いラッチ7がトリップクロスバー9のラッチ受け部9cとの係合点を支点に時計方向に揺動する。 これにより、アクチュエータ8の拘束が解かれてフリーとなって板ばね式の可動接触子片3が弾性復帰し、可動接点は固定接触子2の接点から開離して回路しゃ断器がOFF となる。 また、主回路に過電流が流れて過電流引外し装置が作動すると、過電流引外し装置から操作力を受けてトリップクロスバー9が支軸9aを支点に時計方向に揺動変位し、ラッチ7とラッチ受け部9cとの係合を外す。 これにより、前記トグルリンク機構が反転動作し、 ラッチ7は駆動ばね5のばね力により上方に引き上げられて接点を開極し、回路しゃ断器がトリップ動作(OF F)する。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記のように、回路しゃ断器のトリップ動作時には、トリップクロスバー9が揺動してラッチ7とラッチ受け部9cとの係合を外すようにしている。 この場合に回路しゃ断器のON状態ではラッチ7に駆動ばね5のばね力が加わってその先端爪部をラッチ受け部9cに強く押圧している。 【0006】このことから、ラッチ7とラッチ受け部9 cとの間に大きな摺動摩擦抵抗が働くとラッチ7の釈放動作が円滑に行われず、その結果としてトリップ動作特性が変動するおそれがある。 そこで、従来ではラッチ受け9cの表面にグリースなどの潤滑剤を塗布してラッチ7との間の摩擦抵抗を低めるような対策を施している。 【0007】しかしながら、グリースなどの潤滑剤は経時的に劣化して潤滑性能が低下するほか、しゃ断器の開閉動作に伴うラッチ7とラッチ受け9cの摺動に起因してしゃ断器内部に飛散した潤滑剤が開閉部の接点に付着し、これが基で主回路接点の導通不良を引き起こすことがある。 そのために、しゃ断器の健全性を維持するには保守,点検時に開閉部接点の清掃,およびグリース替えなどの面倒なメンテナンス作業が必要となる。 【0008】なお、グリースなどの潤滑剤を塗布せずにラッチ受け部9cの摩擦抵抗を低めるために、樹脂モールド品であるトリップクロスバーを表面摩擦抵抗の小さなフッ素系樹脂などを形成材料としたモールド品で製作することも考えられるが、フッ素樹脂などは一般のエンジニアリングプラスチックと比べて材料費が高くてコスト高となるほか、成形性も低く、このままでは実用化には難がある。 【0009】本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、グリースなどの潤滑剤を使用することなしに安定したトリップ動作特性が確保でき、しかも成形性を損なわず、かつ大幅なコスト増加を招くことなしにモールド成形ができるよう改良した回路しゃ断器のトリップクロスバーを提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明によれば、回路しゃ断器の開閉機構に組付けて過電流引外し装置と開閉機構のラッチとの間を連係するトリップクロスバーであり、樹脂モールド品としてなるクロスバーの基体に前記ラッチと係合し合う凸状のラッチ受け部を形成したものにおいて、ラッチ受け部を自己潤滑性のある固体潤滑材の独立部品となし、該ラッチ受け部をエンジニアリングプラスチックを成形材料とする基体と一体にインサート成形して構成する(請求項1)ものとし、具体的には前記ラッチ受け部を、フッ素樹脂などを固体潤滑材料としてベース材料に混入した樹脂モールド品として製作する(請求項2)。 【0011】上記の構成によれば、ラッチ受け部にグリースなどの潤滑剤を塗布する必要なしに、開閉機構のラッチとの間の摩擦抵抗を低めてトリップ動作時のラッチ釈放を円滑に行えてトリップ動作特性の安定化が図れる。 また、製作面でもラッチ受け部を単独部品として自己潤滑性のあるフッ素樹脂などをブレンドした固形潤滑材で作製し、これをエンジニアリングプラスチックを成形材料としてクロスバーの基体をモールド成形する際にインサート形成することで、接着性の低い固形潤滑材のラッチ受け部を接着剤を使用せずにクロスバー基体と一体化できる。 しかも、材料費の高い固形潤滑材はラッチ受け部として部分的に使用するだけであるのでコストアップも低く抑えられる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1 (a),(b) に示す実施例で説明する。 なお、実施例の図中で図2に対応する部材には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。 すなわち、図示実施例において、トリップクロスバー9の構造は図2に示した従来のものと同一であるが、ラッチ受け部10はクロスバーの基体9e とは別な独立部品として自己潤滑性のある固形潤滑材で作製し、これを一般のエンジニアリングプラスチックを成形材料としてモールド成形するクロスバーの基体9e と一体にインサート成形してトリップクロスバー9を構成している。 【0013】ここで、固形潤滑材製のラッチ受け部10 は、例えば表面摩擦抵抗の低いフッ素樹脂を潤滑材として耐磨耗性の高いベース材料にブレンドしたモールド成形品で構成する。 なお、フッ素樹脂は成形性,接着性が低いが、ラッチ受け部10の形状が単純であることから加圧成形法などで成形でき、かつクロスバーの基体9e にインサート成形することで接着剤を使わずに一体成形が可能である。 【0014】このようにして製作したトリップクロスバー9を採用して図2で述べた回路しゃ断器の開閉機構に組付けることにより、従来のようにラッチ受け部にグリースなどの潤滑剤を塗布することなしにラッチ7との間で良好な潤滑性を確保することができる。 【0015】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、樹脂モールド品としてなるクロスバーの基体に開閉機構のラッチと係合し合う凸状のラッチ受け部を形成したものにおいて、前記ラッチ受け部を自己潤滑性のある固体潤滑材で作られた独立部品となし、該部品をエンジニアリングプラスチックを成形材料とするクロスバーの基体と一体にインサート成形して構成したことにより、ラッチ受け部にグリースなどの潤滑剤を塗布する必要なしに、 開閉機構のラッチとの間の摩擦抵抗を低めてトリップ動作時のラッチ釈放を円滑に行えてトリップ動作特性の安定化が図れる。 【0016】また、製作面でもラッチ受け部を単独部品として自己潤滑性のあるフッ素樹脂などをブレンドした固形潤滑材で作製し、これをエンジニアリングプラスチックを成形材料としてクロスバーの基体をモールド成形する際にインサート成形することで、接着性の低い固形潤滑材のラッチ受け部を接着剤を使用せずにクロスバー基体と一体化できる。 しかも、材料費の高い固形潤滑材はラッチ受け部として部分的に使用するだけであるのでコストアップも低く抑えられるなど、機能性,並びに製作面でも優れた効果を発揮する実用的価値の高いトリップクロスバーを提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例によるトリップクロスバーの構成図であり、(a) は正面図、(b) は(a) 図の矢視A−A 断面図 【図2】本発明の実施対象となる回路しゃ断器の開閉機構の構成図 【符号の説明】 2 固定接触子 3 可動接触子 4 操作ハンドル 7 ラッチ 9 トリップクロスバー 10 固形潤滑材製のラッチ受け部 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 雅晴 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 Fターム(参考) 5G030 FC15 XX16 |