【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本考案は、車載用音響装置などの電気部品に付設され、該電気部品より突出する操作軸を押し込むとき該操作軸をロック位置に保ち、再度押し込むとき操作軸のロック状態を解除するようにしたプッシュロック装置に関する。 【0002】 【従来の技術】一般にプッシュロック装置は、回転操作型の可変抵抗器やロータリースイッチなどの電気部品に付設されたケースと、このケースに移動可能に収納され、いわゆるハートカムと称されるカム溝を有するスライド体と、一端が該スライド体に連結され、前記電気部品に挿通された操作軸と、前記スライド体を該操作軸の方向に付勢する戻しばねと、一端が前記ケースに支持され、他端が前記カム溝をトレース可能な作動ピンとを備えている。 【0003】このようなプッシュロック装置では、電気部品より突出する操作軸を戻しばねの付勢力に抗して押し込む際、スライド体が移動して移動端まで接近すると、該スライド体のカム溝を作動ピンがトレースして該カム溝の所定位置で係止され、その結果、スライド体が前記作動ピンを介してロック位置に保持される。 次いで、前記操作軸を再度押し込むと、前記作動ピンが前記カム溝の所定位置より外れて、前記スライド体のロック状態が解除される。 これによって、操作軸をパネル面などの内部に収納することができるので、車載用音響装置などの美観を向上できるとともに、必要に応じて操作軸の突出状態をなくすことにより該操作軸に衝突したり、 引っかかる事故を防止することもできる。 【0004】 【考案が解決しようとする課題】ところで上述した従来のプッシュロック装置では、ロック位置にある操作軸を再度押し込んで手放すとき、戻しばねの付勢力により操作軸およびスライド体が急速に押し戻されて、該スライド体の移動端で突き当たることから衝撃音が発生したり、操作軸の先端に嵌合したつまみが抜け出すという問題があった。 【0005】本考案はこのような従来技術における実情に鑑みてなされたもので、その目的は、スライド体がロック位置からロック解除位置まで急速に戻ることを防止できるプッシュロック装置を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本考案は、ケースと、このケースに移動可能に収納され、カム溝を有するスライド体と、該スライド体に連結された操作軸と、前記スライド体を該操作軸の軸線方向に付勢する戻しばねと、一端が前記ケースに支持され、 他端が前記カム溝をトレース可能な作動ピンとを備え、 前記操作軸を前記戻しばねの付勢力に抗して押し込むとき、前記作動ピンが前記カム溝の所定位置で係止することにより前記スライド体をロック位置に保ち、前記操作軸を再度押し込むとき、前記スライド体のロック状態を解除するようにしたプッシュロック装置において、前記スライド体の移動にブレーキをかけるダンパー機構を設け、前記ダンパー機構は前記スライド体の移動方向に沿 って配設され、非直線状の連続した溝を設けた非直線状 溝部材と、該非直線状溝部材を回転可能に支持する支持 体と、前記スライド体に設けられ、前記非直線状溝部材 の前記溝と係合する突起部とを有する構成にしてある。 【0007】 【作用】本考案は上記のように構成したので、 スライド 体の復帰は戻しばねによってもたらされるが、該復帰の エネルギーは、突起部と非直線状の溝の摺動抵抗、及び 非直線状の連続した溝を設けた非直線状溝部材を駆動す るためのエネルギーに吸収され、結果としてスライド体 にブレーキがかかる。 これによって、このスライド体がロック位置からロック解除位置まで急速に戻ることを防止できる。 【0008】 【実施例】以下、本考案の実施例を図に基づいて説明する。 図1は本考案の第1の実施例に係るプッシュロック装置を示す軸方向の断面図、図2は図1のプッシュロック装置を示す軸方向と直交する方向の断面図、図3は図1のプッシュロック装置に備えられる板体を示す斜視図、図4は図1のプッシュロック装置に備えられるスライド体のロック状態を示す軸方向の断面図である。 【0009】図1に示す本実施例のプッシュロック装置は、電気部品1に設けられたケース2と、このケース2 に移動可能に収納され、図1の上部にカム溝3を有するスライド体4と、一端が該スライド体4に連結され、前記電気部品1に挿通された操作軸5と、前記スライド体4を該操作軸5の方向に付勢する戻しばね6と、一端が前記ケース2に支持され、他端が前記カム溝3をトレース可能な作動ピン7と、この作動ピン7を前記カム溝3 の方向に付勢する板ばね8と、前記スライド体4の移動にブレーキをかけるダンパー機構9とからなっている。 前記操作軸5の他端には図示せぬつまみが嵌合されており、このつまみは図1に示すロック解除状態で図示せぬパネル面より突出し、図3に示すロック解除状態で該パネル面内に収納される。 【0010】前記ケース2の開口端2aはふた体11により覆われ、このふた体11を介して該ケース2が電気部品1に一体化されている。 該ケース2内の両側部には、図2に示すように、前記スライド体4の移動方向に沿って形成された1対のガイド溝12、13が設けられている。 前記ケース2の底部2bには、図1に示すように、操作軸5と同軸上に配置された円筒状の突出部14 が設けられている。 前記ふた体11は、操作軸5が挿通される挿通孔15と、この挿通孔15の周囲に設けられ、前記突出部14と対向する他の突出部16とを有している。 これらのケース2の底部2bとふた体11との間には、スライド体4の移動方向に沿って板体17が配設されている。 該板体17の両端の折曲部18、19には、前記突出部14、16がそれぞれ挿入される丸孔2 0、21が設けられるとともに、該板体17には、図3 に示すように、その長手方向に沿って波状溝22が形成されている。 さらに、前記ケース2の底部2bと前記折曲部19との間には、ゴムリング23が介設されている。 【0011】前記スライド体4は、前記上部のカム溝3 と、両側方へそれぞれ突出し、前記ガイド溝12、13 に係合するガイド部24、25と、下方に突出して前記波状溝22に係合する突起部26と、図1に示すように、前記戻しばね6の一端を受けるばね受け部27とを備えている。 前記作動ピン7は、一端が上方へ直角に折曲げられて支持体28に固定され、抜止め用突起29を有しており、他端が下方へ直角に折曲げられている。 なお、上述した突出部14、16によって、板体17の両端の折曲部18、19を回動可能に支持する支持手段が構成されている。 さらに、上述した板体17、突出部1 4、16、突起部26およびゴムリング23によって、 ダンパー機構9が構成されている。 【0012】この第1の実施例にあっては、スライド体4が図1に示すロック解除状態にあるときに、操作軸5 を戻しばね6の付勢力に抗して押し込むと、前記スライド体4がガイド溝12、13によって案内されながら前進し、その際、該記スライド体4の突起部26が板体1 7の波状溝22内を摺動して該板体17が揺動する。 また、作動ピン7が板ばね8によりスライド体4方向へ付勢されていることから、該作動ピン7の自由端が前記スライド体4のカム溝3をトレースし、該スライド体4が移動端まで到達したときに操作軸5の押圧状態を解除すると、戻しばね6の付勢力によりスライド体4が少しだけ押し戻されて、図4に示すように、作動ピン7の自由端がカム溝3の所定位置で係止される。 その結果、該作動ピン7を介してスライド体4がロック位置に保持される。 【0013】一方、スライド体4が図4に示すロック状態にあるときに、前記操作軸5を再度押し込むと、作動ピン7がカム溝3の所定位置より外れてスライド体4のロック状態が解除されるので、該スライド体4は戻しばね6の付勢力により、図4に示すロック位置から図1に示すロック解除位置まで押し戻される。 このとき、スライド体4の突起部26が板体17の波状溝22内を摺動し、該板体17は揺動されるので、突起部26と波状溝22間の摺動抵抗と、折曲部18とふた体11間の摺動抵抗、および折曲部19とゴムリング23間の摺動抵抗、および板体17を揺動させるためのエネルギーが、 戻しばね6の付勢力による戻しエネルギーを吸収し、その結果、スライド体4の移動にブレーキがかけられる。 【0014】このように構成した第1の実施例では、ダンパー機構9によりスライド体4の移動にブレーキがかけられるので、該スライド体4が図4に示すロック位置から図1に示すロック解除位置まで急速に戻ることを防止できる。 そして、スライド体4が図4に示すロック位置にある場合、戻しばね6は充分に圧縮され弾発力が強くなっているので、この状態からスライド体4を戻す際の戻り不良を防止できる。 一方、スライド体4が図1に示すロック解除位置にある場合、戻しばね6の弾発力は図4のロツク位置に比べると弱くなっているので、この状態で操作軸5を押し込む際に大きな力を要することがなく、該操作軸5の操作性を阻害することがない。 【0015】図5は本考案の第2の実施例に係るプッシュロック装置を示す軸方向の断面図、図6は図5のプッシュロック装置を示す軸方向と直交する方向の断面図、 図7は図6のプッシュロック装置に備えられる円筒体を示す正面図、図8は図5のプッシュロック装置に備えられるスライド体のロック状態を示す軸方向の断面図であり、前述した図1〜図4に示すものと同等のものには同一符号を付してある。 すなわち、1は電気部品、3はカム溝、4はスライド体、6は戻しばね、7は作動ピン、 8は板ばね、12、13はガイド溝、24、25はガイド部、26は突起部、27はばね受け部、28は支持体、29は抜止め用突起である。 【0016】図5に示す本実施例のプッシュロック装置では、前述した第1の実施例の場合と比べて、スライド体4の移動にブレーキをかけるダンパー機構31が、該スライド体4の移動方向に沿って配設され、突起部26 と係合するスパイラル溝32が形成された円筒体33 と、この円筒体33の両端の突起軸34、35を回動可能に支持する支持手段、例えばケース36の底部の孔3 7およびふた体38の孔39と、前記円筒体33の一端およびふた体38間に介設されたゴムリング40とを有している。 前記スパイラル溝32の傾斜角は、図7に示すように、ケース36の開口側(図7の左側)から底部側(図7の右側)にかけて次第に大きくなるように設定されており、すなわちケース36の開口側の傾斜角θ 1 よりも、ケース36の底部側の傾斜角θ 2が大きくなるように設定されている。 【0017】この第2の実施例にあっても、図5に示すロック解除状態で操作軸5を戻しばね6の付勢力に抗して押し込むと、スライド体4がガイド溝12、13によって案内されながら前進し、その際、スライド体4の突起部26が円筒体33のスパイラル溝32内を摺動して該円筒体33が回動する。 このとき、該円筒体33がケース36の底部方向へ押圧されるので、ケース36の開口部側に配置されたゴムリング40を押圧する力が減少し、該ゴムリング40とふた体38間の摺動抵抗が比較的小さくなる。 また、作動ピン7が板ばね8によりスライド体4方向へ付勢されていることから、該作動ピン7 の自由端が前記スライド体4のカム溝3をトレースし、 該スライド体4が移動端まで到達したときに操作軸5の押圧状態を解除すると、戻しばね6の付勢力によりスライド体4が少しだけ押し戻されて、図8に示すように、 作動ピン7の自由端がカム溝3の所定位置で係止される。 その結果、該作動ピン7を介してスライド体4がロック位置に保持される。 【0018】一方、スライド体4が図4に示すロック状態にあるときに、前記操作軸5を再度押し込むと、作動ピン7がカム溝3の所定位置より外れてスライド体4のロック状態が解除されるので、該スライド体4は戻しばね6の付勢力により、図8に示すロック位置から図5に示すロック解除位置まで押し戻され、スライド体4の突起部26が円筒体33のスパイラル溝32内を摺動する。 これに伴い、前記円筒体33は、ケース36の開口部方向へ駆動されるとともに回転し、前記ゴムリング4 0を押圧する力が増大して、該ゴムリング40の摺動抵抗は比較的大きくなる。 このとき、該ゴムリング40の摺動抵抗や、突起部26とスパイラル溝32間の摺動抵抗、および円筒体33を回転させるためのエネルギー が、戻しばね6の付勢力による戻しエネルギーを吸収 し、その結果、スライド体4の移動にブレーキがかけられる。 【0019】このように構成した第2の実施例では、ダンパー機構31によりスライド体4の移動にブレーキがかけられるので、該スライド体4が図8に示すロック位置から図5に示すロック解除位置まで急速に戻ることを防止できる。 そして、スライド体4が図8に示すロック位置にある場合、戻しばね6は充分に圧縮されてその弾発力が強くなっているので、この状態からスライド体4 をロック解除位置に戻す際の戻り不良を防止できる。 一方、前記スライド体4が図5に示すロック解除位置にある場合、戻しばね6の弾発力が弱くなるとともに、スパイラル溝32の傾斜角が比較的小さいため摺動抵抗が少なく、かつ、上記のようにゴムリング40の摺動抵抗が小さいことから、円筒体33の回転に要する力が少なくて済むので、操作軸5を押し込む際に該操作軸5の操作性を阻害することがない。 さらに、前記スパイラル溝3 2の傾斜角を任意の値に設定することによって、戻しばね6の弾発力との釣り合いを取ることができる。 【0020】 【考案の効果】 以上説明したように、本考案は、スライ ド体の復帰は戻しばねによってもたらされるが、該復帰 のエネルギーは、突起部と非直線状の溝の摺動抵抗、及 び非直線状の連続した溝を設けた非直線状溝部材を駆動 するためのエネルギーに吸収されるので、寸法のバラツ キによる影響を受けずにスライド体に所定のブレーキ力 を安定して与えることができ、また、使用によるブレー キ力の変動も少なく、スライド体がロック位置からロッ ク解除位置まで急速に戻ることを防止できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本考案の第1の実施例に係るプッシュロック装置を示す軸方向の断面図である。 【図2】図1のプッシュロック装置を示す軸方向と直交する方向の断面図である。 【図3】図1のプッシュロック装置に備えられる板体を示す斜視図である。 【図4】図1のプッシュロック装置に備えられるスライド体のロック状態を示す軸方向の断面図である。 【図5】本考案の第2の実施例に係るプッシュロック装置を示す軸方向の断面図である。 【図6】図5のプッシュロック装置を示す軸方向と直交する方向の断面図である。 【図7】図6のプッシュロック装置に備えられる円筒体を示す正面図である。 【図8】図5のプッシュロック装置に備えられるスライド体のロック状態を示す軸方向の断面図である。 【符号の説明】 1 電気部品 2 ケース 3 カム溝 4 スライド体 5 操作軸 6 戻しばね 7 作動ピン 9 ダンパー機構 14、16 突出部(支持手段) 17 板体 22 波状溝 26 突起部 31 ダンパー機構 32 スパイラル溝 33 円筒体 36 ケース 37、39 孔(支持手段) |