【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば産業用ロボットなどに使用される可搬型の教示操作盤に関し、特に、デッドマンスイッチに関連する構成について、これを改良した教示操作盤に関する。 【0002】 【従来の技術】産業用ロボットに対して教示作業を行う場合、一般に、作業者は可搬型の教示操作盤を片手または両手で把持し、両手の親指または把持していない手の指で教示操作盤上の操作キーを押すことにより操作を行っている。 この教示操作盤には、教示に必要となる操作キーの他に、デッドマンスイッチと呼ばれる押釦型の安全装置が設けられている。 このデッドマンスイッチの機能は、教示作業の際に、作業者がデッドマンスイッチを押している時のみ、ロボット本体の動作を可能にするというものである。 この機能により、偶然に操作キーなどに手が触れたことによるロボット動作を防止することができるとともに、デッドマンスイッチを押すという余分な作業を行うことにより、ロボットの教示操作を行うことを作業者が自覚することができ、作業者自身の不注意による事故の発生を防止することができる。 【0003】ところで、産業用ロボットに対する教示作業は、一般にロボット本体の近くで行うため、ロボットが何らかの原因で暴走した時、あるいはロボットが作業者の意図した動作とは異なる動作をした時には、作業者を保護するためにロボットを急停止させる必要がある。 前述したように、デッドマンスイッチは作業者がこれを押している時のみロボット本体の動作を可能にしているので、前述のロボットが暴走した場合などには、作業者がデッドマンスイッチから手を離せばロボットの動作は停止するわけである。 しかし、ロボットが暴走した場合などにおける作業者の心理状態を考えたとき、作業者の瞬間の動作としては、教示操作盤から手を離すこともあるが、これとは逆に教示操作盤を強く握り締めることもある。 ところが、前述のように、手を離したときにのみロボット動作が停止するようにされたデッドマンスイッチでは、教示操作盤を強く握り締めた場合はロボット動作が停止せず、よってデッドマンスイッチはその目的を果たさないという欠点があった。 【0004】そこで、この欠点を解消するための技術として、特開平6−134685号では、操作外力が印加されない時にはOFF、操作外力が軽く印加された時にはONとなり、さらに強く印加するとOFFになるスイッチ機構を搭載したデッドマンスイッチが開示されている。 係る構成によれば、教示操作盤から手を離す動作の他に、教示操作盤を強く握り締める動作においても、非常時にロボットの動作を停止させるというデッドマンスイッチの目的を果たすことができるとされている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、実際の教示操作においては、右利きの人であれば、左手で教示操作盤を把持しながら右手で教示操作盤上の操作キーを押すという使用形態が一般的であろう。 この場合、デッドマンスイッチは左手で教示操作盤を把持したときの指の位置に配置されていればよいことになる。 しかし、作業者の中には左利きの人がいることを想定すると、デッドマンスイッチは右手で教示操作盤を把持したときの指の位置にも配置されていた方がよいことになる。 このようにデッドマンスイッチを2箇所に設けた場合は、図6に示すように、2個のデッドマンスイッチでOR回路を構成することになる。 これにより、2個のデッドマンスイッチのいずれか一方がON状態にあれば、再終端出力はO Nとなり、その結果作業者は教示操作を行えることになる。 なお、もし2個のデッドマンスイッチでAND回路を構成したならば、2個のデッドマンスイッチのいずれもON状態にないと教示操作は行えないので、これでは両手の指がデッドマンスイッチを押すことに使われてしまい、作業者が教示操作盤上の操作キーを押すことが困難となり、不都合である。 【0006】しかし、2個のデッドマンスイッチでOR 回路を構成した場合は、以下にあげる不具合が生ずる。 すなわち、どちらか一方のデッドマンスイッチが強く印加されOFF状態にあった場合、他方のデッドマンスイッチが軽く印加されON状態になった後に強く印加している方の印加が無くなると、図6に示す再終端出力はO Nとなってしまい、その結果ロボットが動作してしまうという安全上問題となる状況が生じる恐れがあった。 【0007】本発明は、前述の従来技術の課題を解決するためになされたものであり、デッドマンスイッチを付勢するための複数の印加部(作業者の指などから力を印加される部分)を有する教示操作盤において、デッドマンスイッチが確実に機能するような教示操作盤を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】前述の目的を達成するために、本発明では、1つのデッドマンスイッチと、外部からの力を印加部に受けることによりデッドマンスイッチをそれぞれ独立して付勢可能にされた複数個の操作子と、を有し、前記デッドマンスイッチは、複数個の操作子のうちのいずれの操作子の印加部も付勢されていない状態のときはOFFとなり、この付勢されていない状態から複数個の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部が第1の付勢力において付勢された状態になったときはONとなり、この第1の付勢力において付勢された状態から複数個の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部が前記第1の付勢力よりも大きい第2の付勢力において付勢された状態になったときはOFFとなり、この第2の付勢力において付勢された状態にあるときは、一旦複数個の操作子のすべての操作子の印加部が付勢されていない状態になった後でなければ、印加部が前記第1の付勢力において付勢されても再度ONにはならないことを特徴とする教示操作盤を提供した。 【0009】ここで、本発明に係る前述の構成について補足説明を行う。 印加部とは、操作子において作業者の指などから力を印加される部分であり、作業者が教示操作盤を把持したときに、五指のうち少なくとも一指により力を印加可能な位置に設けられている。 第1の付勢力とは、作業者が教示操作を行う際に、教示操作を行うことを意識して印加部に付勢する力の大きさである。 一方、第2の付勢力とは、ロボットの暴走等により作業者が無意識に教示操作盤を強く握り締めたときに印加部に付勢される力の大きさであり、前述の第1の付勢力よりも大きい力である。 【0010】係る構成としたことにより、教示操作を行う際、作業者は教示操作盤を把持し、教示操作を行うことを意識して複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して指により力(第1の付勢力)を付勢する。 これにより、デッドマンスイッチはONとなり、教示操作盤上の操作キーへの入力が可能な状態になる。 教示操作の途中すなわち作業者が第1の付勢力により複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して指により力を付勢しているときに、ロボットの暴走等により作業者が無意識に教示操作盤を強く握り締めたときには、複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して作業者の指により強い力(第2の付勢力)が付勢される。 これにより、デッドマンスイッチはOFFとなり、教示操作盤上の操作キーへの入力が不可能な状態になる。 なお、ロボットの暴走等により作業者がすべての操作子の印加部から手を離したときにも、デッドマンスイッチはOFFとなり、教示操作盤上の操作キーへの入力が不可能な状態になる。 【0011】さらに、デッドマンスイッチは、第2の付勢力において付勢された状態にあるときは、一旦付勢されていない状態になった後でなければ、その後付勢されても再度ONにはならないようにされている。 これにより、複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して第2の付勢力において付勢された状態にあるときは、一旦すべての操作子の印加部が付勢されていない状態になった後でなければ、複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して第1の付勢力において付勢された状態になっても、デッドマンスイッチはONにはならない。 そのため、例えば、教示操作盤が2つの操作子を有するものであったとして、いずれか一方の操作子の印加部に対して第2の付勢力において付勢された状態にあり、これによりデッドマンスイッチがOFFとなっている場合、他方の操作子の印加部に対して第1の付勢力において付勢された後に前記一方の操作子の印加部が付勢されない状態になったとしても、デッドマンスイッチはONにはならず、その結果ロボットが不意に動作してしまうような状況は発生しない。 【0012】このように、本発明のデッドマンスイッチ機構は1つのデッドマンスイッチと複数個の操作子の組合せにより構成されているので、デッドマンスイッチを複数個設け、これらをOR回路で構成したことにより生じる前述の従来技術のような問題は発生しない。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。 まず、図1を参照して、 本発明の一実施形態に係る教示操作盤1の構造について説明する。 図1は、本発明の一実施形態に係る教示操作盤1の内部構造を示す、裏面から見たときの断面図である。 図1において、Sはデッドマンスイッチ、L1は右手用操作子、L2は左手用操作子、12は右手用操作子L1の印加部、22は左手用操作子L2の印加部、13 は右手用把持部、23は左手用把持部である。 デッドマンスイッチSは所謂3ポジションの構造となっている。 すなわち、外力が加わらない状態ではOFFとなり、外力がある程度加わるとONとなり、さらに強い外力が加わるとOFFとなるようにされている。 また、デッドマンスイッチSは、強い外力が加わってOFFになった場合は、一旦外力が加わらない状態になった後でないと、 再度外力がある程度加わってもONとはならないようにもされている。 【0014】右手用操作子L1は、その印加部12に外力が加わると、支点A1を中心にして時計回りに回転し、その結果、支点A1から見て印加部12とは反対側にある凸部11がデッドマンスイッチSを印加することになる。 同様にして、左手用操作子L2は、その印加部22に外力が加わると、支点A2を中心にして反時計回りに回転し、その結果、支点A2から見て印加部22とは反対側にある凸部21がデッドマンスイッチSを印加することになる。 【0015】作業者は、右手で右手用把持部13を、または左手で左手用把持部23を、あるいは両手で両把持部13、23を掴むことにより、教示操作盤1を把持する。 右手用操作子L1の印加部12は右手で右手用把持部13を掴んだときに指に触れる位置にあり、一方、左手用操作子L2の印加部22は左手で左手用把持部23 を掴んだときに指に触れる位置にあるので、教示の際、 作業者は、右手用操作子L1の印加部12または左手用操作子L2の印加部22あるいは両印加部12、22に対して、把持した手の指で付勢しながら空いている指で教示操作盤1の表面に設けられている各種操作キーを操作し、これにより教示作業を行うことになる。 【0016】次に、図2〜5を参照して、本発明に係る1つのデッドマンスイッチと複数個の操作子からなるデッドマンスイッチ機構について説明する。 図2は操作子L1、L2の印加部12、22が共に付勢されていない状態、また図3は右手用操作子L1の印加部12が第1 の付勢力で付勢された状態、さらに図4は右手用操作子L1の印加部12が第2の付勢力で付勢された状態、さらにまた図5は左手用操作子L2の印加部22が第1の付勢力で付勢された状態における、操作子L1、L2とデッドマンスイッチSとの位置関係をそれぞれ示す概念図である。 【0017】図2に示すように、例えば作業者が教示操作盤1の把持部13、23を把持していない場合など、 操作子L1、L2の印加部12、22が共に付勢されていない状態においては、操作子L1、L2の凸部11、 21は共にデッドマンスイッチSを印加していないので、デッドマンスイッチSはOFFの状態となり、この場合、作業者が教示操作盤1の表面に設けられている各種操作キーを操作してもキー入力は受け付けされず、したがってロボットが動作することはない。 【0018】図3に示すように、作業者が教示操作を行う場合など、右手用操作子L1の印加部12が第1の付勢力で付勢された状態においては、右手用操作子L1のの凸部11がデッドマンスイッチSを弱い力で印加するので、デッドマンスイッチSはONの状態となり、この場合、作業者が教示操作盤1の表面に設けられている各種操作キーを操作することによりキー入力が受け付けされ、したがってロボットはキー入力による指令にしたがい動作することになる。 なお、第1の付勢力とは、作業者が教示操作を行う際に、教示操作を行うことを意識して印加部(この場合印加部12)に付勢する力の大きさである。 【0019】図4に示すように、例えばロボットの暴走等により作業者が無意識に教示操作盤を強く握り締めた場合など、右手用操作子L1の印加部12が第2の付勢力で付勢された状態においては、右手用操作子L1のの凸部11がデッドマンスイッチSを強い力で印加するので、デッドマンスイッチSはOFFの状態となり、この場合、作業者が教示操作盤1の表面に設けられている各種操作キーを万一操作してもキー入力は受け付けされず、したがってロボットが動作することはない。 なお、 第2の付勢力とは、ロボットの暴走等により作業者が無意識に教示操作盤を強く握り締めたときに印加部に付勢される力の大きさであり、前述の第1の付勢力よりも大きい力である。 【0020】図5は、前述の図4に示された状態すなわち右手用操作子L1の印加部12が第2の付勢力で付勢された状態から、この状態に左手用操作子L2の印加部22が第1の付勢力で付勢された状態が加わり、この後この状態から右手用操作子L1の印加部12だけが付勢されないようになり、結局、左手用操作子L2の印加部22のみが第1の付勢力で付勢された状態となったときを示したものである。 前述したように、デッドマンスイッチSは、強い外力が加わってOFFになった場合は、 一旦外力が加わらない状態になった後でないと、再度外力がある程度加わってもONとはならないようにもされている。 したがって、前述のような過程で図5に示した状態に移行した場合は、この移行の間デッドマンスイッチSは一度も外力が加わらない状態になっていないので、左手用操作子L2の印加部22のみが第1の付勢力で付勢された状態となった場合でもデッドマンスイッチSはONにはならず、したがってロボットが動作することはない。 【0021】一方、もし図5が、前述の図4に示された状態すなわち右手用操作子L1の印加部12が第2の付勢力で付勢された状態から、右手用操作子L1の印加部12への付勢がなくなり、これによりデッドマンスイッチSが一旦外力が加わらない状態になり、この後左手用操作子L2の印加部22が第1の付勢力で付勢された状態となったときを示したものであるならば、デッドマンスイッチSは再度ONとなり、したがってロボットは作業者の操作キーへの入力による指令にしたがい動作することになる。 【0022】以上、本発明の一実施形態について説明した。 本実施形態では右手用操作子L1の印加部12が印加された後、左手用操作子L2の印加部22が印加される場合を説明したが、これとは逆に左手用操作子L2の印加部22が印加された後、右手用操作子L1の印加部12が印加される場合も同様である。 また、本実施形態では操作子が2つある場合を説明したが、操作子が3つ以上ある場合についても、各操作子の印加部を付勢することにより、各操作子が互いに独立して1つのデッドマンスイッチを付勢可能にされていれば、本実施形態と同様となる。 【0023】 【発明の効果】本発明によれば、1つのデッドマンスイッチと、外部からの力を印加部に受けることによりデッドマンスイッチをそれぞれ独立して付勢可能にされた複数個の操作子と、を有する教示操作盤において、複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して通常の教示操作における把持力よりも強い力で付勢され、これによりデッドマンスイッチがOFFの状態にあるときは、一旦すべての操作子の印加部が付勢されていない状態になった後でなければ、複数の操作子のうちの少なくとも1つの操作子の印加部に対して通常の教示操作における把持力で付勢された状態になっても、デッドマンスイッチはONにはならない。 そのため、1つの操作子の印加部に対して通常の教示操作における把持力よりも強い力で付勢された状態にあり、これによりデッドマンスイッチがOFFとなっている場合、他の操作子の印加部に対して通常の教示操作における把持力で付勢された後に前記1つの操作子の印加部が付勢されない状態になったとしても、デッドマンスイッチはONにはならず、ロボットが不意に動作してしまうような状況は発生しなくなり、その結果、デッドマンスイッチが確実に機能するような教示操作盤を提供できるものとなった。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施形態に係る教示操作盤1の内部構造を示す裏面から見たときの断面図である。 【図2】操作子L1、L2の印加部12、22が共に付勢されていない状態における、操作子L1、L2とデッドマンスイッチSとの位置関係を示す概念図である。 【図3】右手用操作子L1の印加部12が第1の付勢力で付勢された状態における、操作子L1、L2とデッドマンスイッチSとの位置関係を示す概念図である。 【図4】右手用操作子L1の印加部12が第2の付勢力で付勢された状態における、操作子L1、L2とデッドマンスイッチSとの位置関係を示す概念図である。 【図5】左手用操作子L2の印加部22が第1の付勢力で付勢された状態における、操作子L1、L2とデッドマンスイッチSとの位置関係を示す概念図である。 【図6】2個のデッドマンスイッチをOR回路で接続した場合の回路図である。 【符号の説明】 1 教示操作盤 L1 右手用操作子 L2 左手用操作子 11 右手用操作子L1の凸部 12 右手用操作子L1の印加部 13 右手用把持部 21 左手用操作子L2の凸部 22 左手用操作子L2の印加部 23 左手用把持部 A1 右手用操作子L1の支点 A2 左手用操作子L2の支点 S デッドマンスイッチ |