【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する分野】本発明は、例えば、産業用ロボットなどの手持ち操作器等に用いられるデッドマンスイッチに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来のデッドマンスイッチは、図9に示すように構成されている。 図9において、90はケースで、このケース90に凹部91が設けられている。 92 は凹部91に設けられた押板である。 93および94はケース90に取付けたスイッチで、これには、このスイッチ93、94を操作する操作棒93a、94aがそれぞれ設けられ、この操作棒93a、94aの先端にローラが設けられている。 95は下端部に内側へ向けたつば部を有する筒状の受金具で、ケース90に取付けてある。 96は押板92に固定した筒状の操作杆で、中間部につば部96aを設け、先端部に直角のびる操作腕96 b、96cが設けられ、スイッチ93、94の操作棒9 3a、94aのローラを介してスイッチ93、94を開閉路するように構成している。 97はZ字状に構成したカラーで、上端および下端につば部97a、97bが設けられている。 98は操作杆96のつば部96aとカラー97の下端のつば部97bとの間に装架したばねである。 99は受金具95のつば部とカラー97の上端のつば部97aとの間に装架し、ばね98のばね力より強いばね力を有するばねである。 つぎに、このように構成した従来のデッドマンスイッチの動作について説明する。 図9はその初期状態、図10は通常の操作状態、図11 は危険状態になり強い力で操作した状態、図12はそのデッドマンスイッチ装置の回路図である。 図9はスイッチ93およびスイッチ94がOFFの状態を示す。 この状態で、図12の回路図は、スイッチ93およびスイッチ94の各接点S3、S4は共にa側端子に閉じており、したがって電源からの電流は出力側に流れず、デッドマンスイッチの信号は出力しない。 したがって、このデッドマンスイッチに接続された例えば産業用ロボットは動作しない。 この状態から押板92をばね98に抗して操作杆96を矢印F方向に押すと、図10に示すように、操作杆96の操作腕96bがスイッチ93の操作棒93aに作用して図12に示すスイッチ93の接点S3 をa側端子からb側端子に閉路する。 そうすると、電源30からの電流がスイッチ93の接点S3からb側端子、スイッチ94のa側端子、接点S4を経て外部に出力して、デッドマンスイッチが信号を出力する。 これによりこのデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットが動作する。 つぎに、操作者が危険状態になって必要以上に強く握りしめて、さらに押板92を矢印F'方向に押すと、図11に示すように、操作杆96のつば部9 6aがカラー97のつば部97aに当接してカラー97 と一体にばね99のばね力に抗して操作杆96を矢印F'方向に操作する。 操作杆96が矢印F'方向に作動すると、操作杆96の操作腕96bがスイッチ93の操作棒93aからはずれて、図12の接点S3がb側端子からa側端子へ閉じるとともに、操作杆96の操作腕9 6cがスイッチ94の操作棒94aを操作して、図12 の接点S4がa側端子からb側端子へ閉じる。 したがって、電源に接続された回路は接点S4のところでOFF となり、デッドマンスイッチから外部に信号は出力されず、このデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットは動作しない。 【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のデッドマンスイッチは、操作者が非常停止させて危険状態を回避した後、デッドマンスイッチを初期の状態に戻す際にデッドマンスイッチがOFFからONに戻り、このデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットが再び動作してしまうという危険があった。 すなわち、図11の非常停止状態から図9の初期状態に戻すために、押板9 2の押圧力を緩めると、このデッドマンスイッチは図1 0に示す過程を通って図9に戻るため、スイッチ94に接続された接点S4が図12のb側端子からa側端子へ閉じるとともにスイッチ93の接点S3をa側端子からb側端子に閉路するので、デッドマンスイッチが信号を出力する。 これによりこのデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットが動作する状態が生じる。 このように、従来のデッドマンスイッチは、操作者が危険状態になってデッドマンスイッチを必要以上に強く握りしめ非常停止させて危険状態をせっかく回避しても、デッドマンスイッチを初期の状態に戻す際にデッドマンスイッチがOFFからONに戻り、このデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットが再び動作してしまうという危険があった。 そこで、本発明は、非常停止の状態から初期の状態に復帰させるとき、ONにならないようにするデッドマンスイッチを提供することを目的とする。 【0003】 【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために、請求項1記載の3ポジションデッドマンスイッチの発明は、ケースと、該ケースに取り付けたスイッチと、該スイッチを押す回転レバーと、該回転レバーを押さえる押さえ板と、を備え、該押さえ板を押圧しない初期状態で該スイッチが開状態であり、該押さえ板の浅い第1押圧位置で該回転レバーが該スイッチを閉じ、該押さえ板の深い第2押圧位置で該回転レバーが該スイッチを開するデッドマンスイッチにおいて、前記押さえ板が前記第2押圧位置から第1押圧位置を経て初期状態に戻る際、前記回転レバーが前記スイッチを押さないようにしたことを特徴とする。 請求項2記載の発明は、請求項1記載の3ポジションデッドマンスイッチにおいて、前記回転レバーがL字状部材で構成され、その鉤部で軸支され、その一端部が前記押さえ板側に、その他端部が前記スイッチ側に接触可能としたことを特徴とする。 請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のデッドマンスイッチにおいて、操作力を調整できるアシストバネを前記回転レバーに備えたことを特徴とする。 請求項4記載の3ポジションデッドマンスイッチの発明は、ケースと、該ケースに取り付けたスイッチと、該スイッチを押す押さえ板と、操作レバーと、該操作レバーと該押さえ板とを一体化させるため押さえ板および/又は操作レバー側に設けられた一体化機構と、を備え、該操作レバーを押圧しない初期状態で該スイッチが開状態であり、該操作レバーの浅い第1押圧位置で前記一体化機構により一体化された前記押さえ板が前記スイッチを閉じ、該操作レバーの深い第2押圧位置で前記一体化機構が一体化を解除して前記押さえ板を該操作レバーから分離させて前記押さえ板をもとの位置に戻すと共に該スイッチを開するようにしたことを特徴とする。 請求項5記載の発明は、請求項4記載の3ポジションデッドマンスイッチにおいて、前記一体化機構が磁気吸引力を利用したものであることを特徴とする。 以上のような構成により、非常状態の停止位置から初期状態に操作レバー等を戻すため、操作レバーを放しても、ロボットを作動させるスイッチには接しないようになるため、スイッチはOFF状態を維持し、したがって、産業用ロボットは一瞬たりともONの状態とはならないので、安全である。 【0004】 【発明の実施の形態】以下、本発明について図面に基づいて説明する。 図1〜図4は本発明の第1の実施の形態を示すデッドマンスイッチ装置の構成図で、図1はその初期状態、図2は通常の操作状態、図3は危険状態になり強い力で操作した状態、図4は危険を回避して押さえ板を離した状態を示している。 また、図5は、本発明のデッドマンスイッチ装置の回路図である。 図1において、11は押さえ板、12は回転レバーで、これは押さえ板11から力を受けるレバー部12aと押しボタンスイッチ(14)を押すレバー部12bを備えている。 そして後述のように、操作後回転レバー12を初期位置に戻すためのバネを設けている。 13は操作後回転レバー12を初期位置に戻すバネ。 14は押しボタンスイッチで水平方向に押圧されるとスイッチONする。 15は押さえ板11を初期位置に戻すバネである。 このバネ15 はバネ13より強いバネとする。 17はこれらを収納するケースである。 【0005】次に、このデッドマンスイッチの動作について説明する。 図1の初期状態では、押さえ板11は押圧されていないので、回転レバー12のレバー12aも押さえられず、押しボタンスイッチはOFFとなっている。 すなわち、図5の回路図で接点Sが開状態である。 したがって、電源からの電流は接点Sが開路しているので流れず、デッドマンスイッチの信号は出力しない。 それ故、このデッドマンスイッチに接続された例えば産業用ロボットは動作しない。 さて、この状態から押さえ板11をバネ15に抗して通常の力Fで下方に押すと、図2のように押さえ板11の下端部が回転レバー12のレバー12aを押さえる。 このとき回転レバー12が矢印方向に回転し、そのレバー部12bがそれぞれその押しボタンスイッチ14を左右方向に押し、押しボタンスイッチ14がONとなる。 すなわち、図5の接点Sが閉路し、電源からの電流が端子Sを通り外部に出力して、デッドマンスイッチが信号を出力する。 これによりこのデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットが動作する。 さらに、操作者が気を失って押さえ板11の上に倒れたり、危険状態になって必要以上に強く押さえ板11 を押さえたりすると、図3のように矢印F'方向により大きな力で押さえ板11が押されるので、押さえ板11 の下端部によって回転レバー12がさらに回転し、押さえ板11の下端部はレバー部12aを越える。 このときレバー部12aはバネ13を備えているため、初期位置に戻る。 これによって押しボタンスイッチ14はOFF となる。 これを図5の回路図で見ると、接点Sが開き、 電源に接続された回路は開路となり、デッドマンスイッチから外部に信号は出力されず、このデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットは動作しない。 そこで、 初期状態に戻すため、この状態から押さえ板11を放すと、図4のように、バネ15により押さえ板11は元に戻る。 このとき押さえ板11の下端部によりレバー部1 2aはB方向に回転するので押しボタンスイッチ14は何ら影響を受けない。 そしてレバー部12aが押さえ板の下端部を越えるとバネ13の力により初期状態に戻る。 このように初期状態への復帰時、レバー12bは押しボタンスイッチ14を押すことはないので押しボタンスイッチ14はOFF状態のままである。 したがって、 産業用ロボットは、作業者がデッドマンスイッチで危険を回避した後、初期状態に戻す際デッドマンスイッチがONになることがない。 以上述べたように、本発明によれば、強く握りしめたロボット停止の状態から初期状態に復帰させるとき、一瞬たりともONの状態とはならないデッドマンスイッチを提供することができるので安全である。 したがって、例えば、いったんデッドマンスイッチにより停止させた産業用ロボットは再び、操作しない限り危険状態に陥ることはなく、安全に運転することができる。 【0006】次に、本発明の第2の実施の形態を図6〜 図8に基づいて説明する。 図6はその初期状態、図7は通常の操作状態、図8は危険状態になり強い力で操作した状態、図6はまた危険回避後の押さえ板を離した状態をも示している。 また、第2の実施の形態のデッドマンスイッチ装置の回路図は図5と同様である。 図6において61は操作レバーで下部先端に磁石61aが設けられている。 62は磁性体でできた押さえ板で、操作レバー61に設けられた磁石61aによって磁力吸引されることで操作レバー61と一体となり動作する。 バネ63はケース66と押さえ板62との間に挿入された反発バネで、常時、押さえ板62を初期位置(図6)に戻す作用をしている。 バネ64はケース66と操作レバー61の先端部との間に挿入された反発バネで、常時、操作レバー61を初期位置(図6)に戻す作用をしている。 バネ63は磁石7と押さえ板62の着磁力より弱いバネとしている。 したがって、バネ63によって押さえ板62が操作レバー61の先端部から分離することは生じない。 65はスイッチで、上部に接点65aを備えており、押さえ板62の降下によってONする。 66はこれらを収納するケースの一部である。 【0007】次にデッドマンスイッチの動作について説明する。 図6の初期状態では、操作レバー61は押圧されていないので、押さえ板62は下降せず、押さえ板6 2によりスイッチ接点65aが押圧されることはなく、 OFFのままである。 この状態は、図5の回路図では接点Sが開状態である。 したがって、電源からの電流は接点Sが開路しているので流れず、デッドマンスイッチの信号は出力しない。 それゆえ、このデッドマンスイッチに接続された例えば産業用ロボットは動作しない。 さて、この状態から操作レバー61をばね64に抗して通常の力Fで下方に押すと、図7のように、磁石61aにより操作レバー61と一体になっている押さえ板62もこれと共に下降し、押さえ板62によりスイッチ65の接点65aが押されてONになる。 すなわち、図5の回路図の接点Sが閉路し、電源からの電流が端子Sを通り外部に出力して、デッドマンスイッチが信号を出力する。 これによりこのデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットが動作する。 さらに、操作者が気を失って操作レバー61の上に倒れたり、危険状態になって必要以上に強く操作レバー61を押さえたりすると、磁石6 1aと押さえ板62との着磁力より強い力F'で図8のように矢印方向に操作レバー61が押されるため、ケース66の先端によって磁石61aと押さえ板62がはずれ、バネ63の力により押さえ板62は初期位置に戻る。 したがって、スイッチ65の接点65aはOFFとなる。 これを図5の回路図で見ると、接点Sが開き、電源に接続された回路は開路となり、デッドマンスイッチから外部に信号は出力されず、このデッドマンスイッチに接続された産業用ロボットは動作しない。 そこで、初期状態に戻すため、この状態から操作レバー61を放すと、図6のようにバネ64により操作レバー61は元に戻る。 このとき、スイッチ65はOFFの状態を維持している。 したがって、産業用ロボットは、作業者がデッドマンスイッチで危険を回避した後、デッドマンスイッチが初期状態に戻る際デッドマンスイッチがONになることはない。 このように、本発明によれば、ロボットの非常停止状態から初期状態に復帰させるとき、一瞬たりともONの状態とはならないデッドマンスイッチとなるので、安全である。 なお、上記実施の形態では、操作レバー61と押さえ板62とを一体にする磁石61aを操作レバー61側に設けたが、その逆であっても構わないし、双方にあってもよい。 また、磁石の代わりに、例えば、ホック、面ファスナー、粘着剤等の他の一体化手段を用いてももちろんかまわない。 【0008】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、強く握りしめたロボット停止の状態から初期状態に復帰させるとき、一瞬たりともONの状態とはならないデッドマンスイッチを提供することができる。 したがって、例えば、いったんデッドマンスイッチにより停止させた産業用ロボットは再び、操作しない限り危険状態に陥ることはなく、安全に運転することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】第1の実施の形態によるデッドマンスイッチ装置で、初期状態を示す正断面図である。 【図2】図1のデッドマンスイッチ装置の通常操作状態で、正断面図である。 【図3】図1のデッドマンスイッチ装置で、危険作状態になり強い力で操作したときの正断面図である。 【図4】図1のデッドマンスイッチ装置で、危険を回避し、押さえ板を離したときの正断面図である。 【図5】本発明のデッドマンスイッチ装置の回路図である。 【図6】第2の実施の形態によるデッドマンスイッチ装置で、初期状態を示す正断面図であり、同時に危険を回避し、押さえ板を離したときの正断面図でもある。 【図7】図6のデッドマンスイッチ装置で、通常操作状態での正断面図である。 【図8】図6のデッドマンスイッチ装置で、危険状態になり強い力で操作したときの正断面図である。 【図9】従来のデッドマンスイッチ装置で、初期状態を示す正断面図である。 【図10】図9のデッドマンスイッチ装置で、通常操作状態および危険状態を回避し、押さえ板を離したときの正断面図である。 【図11】図9のデッドマンスイッチ装置で、危険状態になり強い力で操作したときの正断面図である。 【図12】図9のデッドマンスイッチ装置の回路図である。 【符号の説明】 11 押さえ板 12 回転レバー 12a 操作時押さえ板により押される回転レバーの突起部 12b 操作時押しボタンスイッチを押さえる回転レバーの突起部 13 回転レバーを初期位置に戻すバネ 14 押しボタンスイッチ 15 押さえ板を初期位置に戻すバネ 17、 66 ケース 61 操作レバー 61a 磁石 62 押さえ板 63 押さえ板を初期位置に戻すバネ 64 操作レバーを初期位置に戻すバネ 65 デッドマンスイッチ信号を出力するスイッチ 65a スイッチ65の接点 |