ベクトル磁気特性制御材、および、鉄心

申请号 JP2013247727 申请日 2013-11-29 公开(公告)号 JP6215673B2 公开(公告)日 2017-10-18
申请人 東芝産業機器システム株式会社; 国立大学法人 大分大学; 发明人 榎園 正人; 塩田 広; 霜村 英二; 増田 剛;
摘要
权利要求

鋼材の表面に互いに交叉する2方向に連続する線状のスクラッチ処理が施され、前記スクラッチ処理が0.50mm以下の平行間隔で施されているベクトル磁気特性制御材。鋼材の表面に互いに交叉する2方向に連続する線状のスクラッチ処理が施され、前記スクラッチ処理が0.50mm以下の平行間隔で施されているベクトル磁気特性制御材によって構成されている鉄心。三相変圧器の鉄心であって、前記ベクトル磁気特性制御材によって構成されている請求項2に記載の鉄心。三相変圧器の鉄心であって、前記ベクトル磁気特性制御材によってT接続部が構成されている請求項2に記載の鉄心。ギャップを有する鉄心であって、前記ベクトル磁気特性制御材によって構成されている請求項2に記載の鉄心。前記ベクトル磁気特性制御材によってヨーク部が構成されている請求項2に記載の鉄心。前記ベクトル磁気特性制御材によってレグ部が構成されている請求項2に記載の鉄心。回転機の鉄心であって、前記ベクトル磁気特性制御材によって構成されている請求項2に記載の鉄心。

说明书全文

本発明は、方向性電磁鋼材自体に極磁区細分化処理を施したベクトル磁気特性制御材、および、このベクトル磁気特性制御材によって構成される鉄心に関する。

近年、変圧器や回転機における大きな技術動向として、例えば高効率化を定めた規格が制定されるなど、省エネルギー化や効率化が推し進められている。とりわけ、鉄心で発生する電損失である無負荷損、いわゆる「鉄損」を低減するため、各メーカは、鉄心材料の改良や鉄心構造の改良に注力している。 このような事情を背景として、例えば変圧器の鉄心には、損失の低減を図った素材であるいわゆる方向性電磁鋼材が採用されている。そして、その改良を図るための施策として、高配向性付与、磁区細分化制御、薄板化といった施策が展開されてきた。

なかでも磁区細分化制御は、我が国で開発された最新の鉄損低減技術である。即ち、例えば図16に示すように、いわゆる方向性電磁鋼材は結晶構造を有しており、各結晶は、例えば図17に示すように、微細な磁区を有する構造となっている。ここで、方向性電磁鋼材に外部から磁界がかかっていない状態では、並行する磁区は交互に異なる方向に向かう内部磁界を有する状態となる。そのため、方向性電磁鋼材全体として磁界が相互に相殺し、鉄損の発生が抑えられる。

しかし、方向性電磁鋼材に外部から磁界がかけられると、磁区の境目である磁壁が移動して、外部磁界と同じ方向に磁化された領域が広がる。そのため、方向性電磁鋼材全体として磁界を相互に相殺することができなくなり、その結果、鉄損の発生を抑えることができなくなってしまう。特に交流によって方向性電磁鋼材を磁化する場合、磁壁の移動方向が交互に切り替わることから、その磁壁の移動に伴うエネルギーが鉄損として発生しやすくなる。

ここで、鉄損と磁壁の移動速度には明確な相関性が認められており、磁壁の移動速度が大きいほど鉄損が大きくなる。そこで、磁区細分化制御では、この点に着目し、磁区を圧延方向に対して直な方向である幅方向に細分化し、交流の1サイクルにおいて磁壁が移動する距離を短くする。これにより、磁壁の移動速度を小さくすることができ、鉄損の発生を抑えることができる。なお、磁区を細分化するための手法としては、方向性電磁鋼材の表面にレーザやプラズマを照射して局所的な熱ストレスを与える方法、方向性電磁鋼材の表面にギアによって機械的なストレスを与える方法などが実用化されている。このような手法は、一般的に、スクラッチ処理と称されている。

従来のスクラッチ処理は、磁区の幅方向に沿う一方向への細分化を目的としていることから、例えば特許文献1〜6に開示されているように、一方向に線状のレーザ痕などを形成する処理となっている。そのため、磁区を幅方向にしか細分化することができず、方向性電磁鋼材の圧延方向に磁化する場合の鉄損低減には効果を発揮できるが、圧延方向に対して角度を有する方向に磁化する場合の鉄損低減には効果を発揮することができない。そのため、例えば三相変圧器の鉄心、ギャップを有する鉄心、回転機の鉄心など圧延方向RD(Rolling direction)に平行な方向以外の方向例えば圧延方向RDに対して垂直な方向TD(perpendicular to the rolling direction):幅方向にも磁化される部位を有する鉄心を方向性電磁鋼材で構成した場合には、鉄損低減効果が限定されてしまっていた。

特公昭57−2252号公報

特公昭58−26405号公報

特開昭60−192310号公報

特開昭56−60005号公報

特開昭54−84229号公報

特開2008−60353号公報

前述したスクラッチ処理に関する技術の改良は、主として、方向性電磁鋼材の製造メーカ側によって行われており、方向性電磁鋼材を用いて鉄心などを製造するユーザ側では行われていなかった。ところが、製造メーカとしては、製造した方向性電磁鋼材がユーザ側でどのような鉄心のどのような部位にどのような方向で使用されるのかを十分に把握あるいは予測できないという実情がある。そのため、製造メーカとしては、現状の「一方向」のみのスクラッチ処理の改良に注力しており、その一方向のみのスクラッチ処理が施された方向性電磁鋼材をどのように使用するのかはユーザ側に委ねている状況である。

よって、製造メーカ側においては、圧延方向RD(Rolling direction)に対して角度を有する方向に磁化する場合を想定した技術を改良しようとする動機および発想を得る機会が皆無であった。

そこで、本発明者は、従来と全く異なるベクトル磁気特性理論に基づく視点からの発明を提供する。すなわち、従来の考えでは磁場Hが小さい場合に限られていたが、磁場Hが大きくなっても、磁束密度Bと磁場Hのベクトル間の位相差角を減少させれば損失を大幅に減少させることができるとする観点に基づき、方向性電磁鋼材自体にベクトル磁気特性制御処理、即ち極磁区細分化処理をして大幅な材料改善をしたものである。

本発明のベクトル磁気特性制御材は、方向性電磁鋼材自体の表面に互いに交叉する2方向の線状のスクラッチ処理を施して極磁区細分化したものである。 即ち、本発明のベクトル磁気特性制御材は、方向性電磁鋼材の主たる開発者であった方向性電磁鋼材の製造メーカが全く想定していなかった着想に基づきなされた発明であり、方向性電磁鋼材にいわゆるベクトル磁気特性が制御されたベクトル磁気特性制御材である。

本発明のベクトル磁気特性制御材は、鉄損のヒステリシス損と渦電流損を大幅に低減する。後述の各実施態様で紹介するように、渦電流損を12.9〜30.5%低減することができる。これは、従来の一方向のスクラッチ処理を施した方向性電磁鋼材の鉄損低減率が6.7〜7.5%程度であるのに対して、想定をはるかに超えた極めて顕著な低減率である。

本発明の前記ベクトル磁気特性制御材の用途は極めて広範囲に亘るもので、例えば、限定されるものではないが、三相変圧器の鉄心におけるT接続部、ギャップを有する部分、ヨーク部、レグ部等に適用することが出来る。また回転電機等の電磁固定子や電磁回転子に適用して鉄損を大幅に低減して、変圧器や回転電機等の機能の高位安定と大幅な電力節減および寿命の長期化を実現するものである。

第1実施形態に係る方向性電磁鋼材の平面図

鉄損(過電流損)低減率の実測結果の一例を示す図

方向性電磁鋼材を回転磁界で励磁したときに発生する磁束の状況の一例を示す図

方向性電磁鋼材表面の拡大写真を示す図

スクラッチ処理した線状の平行間隔を変更した場合における鉄損低減率の実測結果の一例を示す図

スクラッチ処理の平行間隔に応じた鉄損低減率の変化の一例を示す図

鉄損低減率の計測エリアの一例を示す図1相当図

レーザ照射装置の動作条件の一例を示す図

第2実施形態に係る図1相当図

第1実施形態に係る方向性電磁鋼材の鉄損低減率と第2実施形態に係る方向性電磁鋼材の鉄損低減率との比較結果の一例を示す図(その1)

第1実施形態に係る方向性電磁鋼材の鉄損低減率と第2実施形態に係る方向性電磁鋼材の鉄損低減率との比較結果の一例を示す図(その2)

第1実施形態に係る方向性電磁鋼材の鉄損低減率と第2実施形態に係る方向性電磁鋼材の鉄損低減率との比較結果の一例を示す図(その3)

三相変圧器の鉄心の構成例を概略的に示す図

T接続部に回転磁界が発生することを概略的に示す図

ギャップ入り鉄心の構成例を概略的に示す図

方向性電磁鋼材の結晶構造の一例を概略的に示す図

方向性電磁鋼材の各結晶が微細な磁区を有していることを概略的に示す図

以下、方向性電磁鋼材自体の表面に互いに交叉する2方向の線状のスクラッチ処理を施して極磁区細分化した本発明のベクトル磁気特性制御材の前記極磁区細分化処理の実施形態と適用実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。

(第1実施形態) 例えば図1に示すように、本第1実施形態に係る方向性電磁鋼材1への極磁区細分化処理は、従来の1方向線のみのスクラッチ処理とは異なり、当該鋼材の表面の圧延方向RD及び圧延方向RDに対して垂直な方向TDに沿って互いに交叉する第1方向線rd-1と第2方向線td-1のスクラッチ処理Sが施されている。この場合、第1方向線rd-1は、方向性電磁鋼材1の圧延方向RDと完全に同一あるいはほぼ同一の方向で設定されている。また、第2方向線td-1は、方向性電磁鋼材1の圧延方向RDに対して完全に垂直な方向TDあるいはほぼ直角な方向で設定されている。そして、第1方向線rd-1と第2方向線td-1は、相互に完全に直角あるいはほぼ直角となる関係である。なお、第1方向線rd-1は、圧延方向RDに対して所定の変位角度を有する方向で設定してもよい。また、第2方向線td-1は、方向性電磁鋼材1の圧延方向TDに垂直な方向TDに対して所定の変位角度を有する方向で設定してもよい。また、この第1方向線rd-1と第2方向線td-1は、相互に直角となる関係でなくてもよく、一方が他方に対して所定の変位角度を有して傾いている関係となるように設定してもよい。

例えば図2に示す実測結果は、本第1実施形態に係る第1方向線rd-1と第2方向線td-1のスクラッチ処理Sを施した方向性電磁鋼材1を実際に作成し、全ての磁化方向に対する鉄損を比較するために、その方向性電磁鋼材1を有効な回転磁界で励磁したときの鉄損と従来の方向性電磁鋼材を有効な回転磁界で励磁したときの鉄損とを比較した結果を示している。なお、従来の方向性電磁鋼材として、圧延方向RDに対して垂直な方向TDのみの第2方向線td-1のスクラッチ処理を施した従来構成1と、圧延方向RDのみの第1方向線rd-1のスクラッチ処理を施した従来構成2を用いた。また、例えば図3には、方向性電磁鋼材を回転磁界で励磁したときに発生する磁束の状況を示している。即ち、回転磁界で励磁することにより、例えば図3(a)に示すような交番磁束および図3(b)に示すような回転磁束が発生する。

なお、今回の実測では、最大磁束密度(Bmax)は1.0[T]であった。但し、最大磁束密度は、例えば0.1〜1.1[T]の範囲で変動し得る。また、傾斜角度(θB)は0[deg]であった。また、軸比率(α)は1.0であった。軸比率(α)は、最少磁束密度(Bmin)を最大磁束密度(Bmax)で除算した値(α= Bmin/Bmax)である。

以上の条件で実施した図2に例示する実測結果によれば、圧延方向RDに対して垂直な方向TDのみの第2方向線td-1のスクラッチ処理を施した従来構成1の方向性電磁鋼材では、その鉄損低減率は僅か6.7[%]にとどまった。また、圧延方向RDのみの第1方向線rd-1のスクラッチ処理を施した従来構成2の方向性電磁鋼材では、その鉄損低減率は僅か7.5[%]にとどまった。これに対して、本第1実施形態に係る第1方向線rd-1と第2方向線td-1のスクラッチ処理Sを施した方向性電磁鋼材1では、その鉄損低減率は12.9[%]であった。即ち、本実施形態に係る方向性電磁鋼材1によれば、従来の1方向線のみのスクラッチ処理を施した方向性電磁鋼材に対して、著しく高い鉄損低減率が実現されていることが確認された。

例えば図4には、方向性電磁鋼材表面の拡大写真を示している。図4(a)は第1方向線rd-1と第2方向線td-1の何れもスクラッチ処理を施していない方向性電磁鋼材(Without laser)の表面、図4(b)は圧延方向RDに垂直な方向TDのみに沿った第2方向線td-1にスクラッチ処理を施した方向性電磁鋼材(Laser scratches in the TD)の表面、図4(c)は圧延方向RDに平行な第1方向線rd-1のみにスクラッチ処理を施した方向性電磁鋼材(Laser scratches in the RD)の表面、図4(d)は圧延方向RDに平行な方向線rd-1と圧延方向RDに垂直な方向TDに平行な方向線td-1を交叉してスクラッチ処理を施した方向性電磁鋼材(Laser scratches in the TD+RD)の表面を拡大して示している。即ち、図4(d)に示す方向性電磁鋼材、つまり、本実施形態に係る方向性電磁鋼材によれば、図4(a)〜(c)に示す従来の方向性電磁鋼材に比べ、磁区が最も微細に分割されていることが確認できる。

また、本第1実施形態に係る前記第1方向線rd-1と第2方向線td-1のスクラッチ処理は、各方向線の何れにおいても所定の平行間隔を有して施されている。この場合、この所定の平行間隔は、0[mm]を含まない2[mm]以下の平行間隔で設定することが好ましい。例えば図5に示す実測結果は、スクラッチ処理において各方向線rd-1、td-1の所定の平行間隔を2[mm]〜0.25[mm]の範囲で変更した場合において、回転磁界により励磁したときの鉄損の変化を示すものである。そして、図6には、スクラッチ処理の間隔に応じた鉄損低減率の変化の一例を示している。即ち、スクラッチ処理の各方向線rd-1、td-1の平行間隔PL(Laser scratches Pitch)を2.00[mm]で設定した場合の鉄損低減率は12.9[%]であった。また、スクラッチ処理の各方向線rd-1、td-1の平行間隔PLを1.00[mm]で設定した場合の鉄損低減率は19.0[%]であった。また、スクラッチ処理の各方向線rd-1、td-1の平行間隔PLを0.50[mm]で設定した場合の鉄損低減率は30.5[%]であった。また、スクラッチ処理の各方向rd-1、td-1線の平行間隔PLを0.25[mm]で設定した場合の鉄損低減率は28.6[%]であった。このように、今回の実測結果によれば、スクラッチ処理の各方向線rd-1、td-1の平行間隔PLを0.50[mm]で設定した場合に鉄損低減率が最も高くなることが確認された。また、スクラッチ処理の各方向線rd-1、td-1の平行間隔PLが狭い方が、鉄損低減率が高くなる傾向があることが確認された。

今回の実測により、スクラッチ処理の各方向線rd-1、td-1の平行間隔PLを2.00[mm]〜0.25[mm]とした場合に有意な鉄損低減が得られることが確認できた。なお、今回の実測では、方向RDに沿うスクラッチ処理の方向線rd-1、td-1の平行間隔と方向TDに沿うスクラッチ処理の方向線rd-1、td-1の平行間隔とを同じ間隔で設定した。しかし、方向RDに沿うスクラッチ処理の方向線rd-1、td-1の平行間隔と方向TDに沿うスクラッチ処理の方向線rd-1、td-1の平行間隔とを異ならせて設定してもよい。また、方向TD,RDのうち少なくとも1方向のスクラッチ処理の方向線rd-1、td-1の平行間隔のみを、0[mm]を含まない2[mm]以下の平行間隔、より好ましくは、2.00[mm]〜0.25[mm]の範囲の平行間隔で設定するようにしてもよい。

なお、本第1実施形態では、例えば図7に示すように、例えば80[mm]×80[mm]の方向性電磁鋼材1のほぼ中央部に設定した計測エリアRにおいて発生する鉄損の低減を測定した。また、本実施形態では、例えばガルバノスキャナなどで構成される図示しない周知のレーザ照射装置により方向性電磁鋼材1にスクラッチ処理を施した。この場合、例えば図8に示すように、レーザの照射出力(Laser power)は20[W]、レーザの照射速度(Laser speed)は8000[mm/s]、レーザの照射モード(Laser mode)は波形が連続する連続波形モード(Continuous wave mode)、レーザの照射方向(Scratch direction)は方向TDおよび方向RDの2方向で設定した。

本第1実施形態に係る方向性電磁鋼材1によれば、当該鋼材の表面に相互に交叉する第1方向線rd-1と第2方向線td-1のスクラッチ処理が施されていることにより、磁区が、当該鋼材の圧延方向RDに対して垂直な方向TDである幅方向だけでなく、当該鋼材の圧延方向RDに沿う方向である長さ方向にも細分化された極めて微細な磁区構造が実現される。即ち、複数の粒状に近い磁区に分割されたような磁区構造となる。これにより、磁区が並ぶ方向に対して傾斜した磁界に対しても、該長さ方向に並ぶ磁区のそれぞれにおいて磁界の傾斜に応じて磁壁が移動するようになる。そのため、磁壁の移動がスムーズとなり、当該鋼材の圧延方向RDに対して所定の角度を有する方向に磁化する場合であっても鉄損を低減することができる。

(第2実施形態) 例えば図9に示す方向性電磁鋼材2への極磁区細分化処理は、従来とは異なり、交叉する第1と第2の2つの方向線rd-2、td-2に沿って線状のスクラッチ処理Sが施されている。この場合、第1方向線rd-2は、方向性電磁鋼材1の圧延方向RDに対して所定角度A傾斜させた方向で設定されている。この場合、所定角度Aは45[°]で設定されている。また、第2方向線td-2は、方向性電磁鋼材1の圧延方向RDに対して所定角度B傾斜させた方向で設定されている。この場合、所定角度Bは135[°]で設定されている。そして、第1方向線rd-2と第2方向線td-2は、相互に完全に直角あるいはほぼ直角となる関係で交叉してある。なお、第1方向線rd-2の所定角度Aは、適宜変更して実施することができる。また、第2方向線td-2の所定角度Bは、適宜変更して実施することができる。また、第1方向線rd-2と第2方向線td-2は、相互に直角となる関係で交叉していなくてもよく、一方が他方に対して傾いている関係となるように設定してもよい。また第1方向線rd-2と第2方向線td-2のスクラッチ処理の平行間隔も適宜変更して実施することができる。

例えば図10には、第1実施形態に係る方向性電磁鋼材1の鉄損低減率(a)と第2実施形態に係る方向性電磁鋼材2の鉄損低減率(b)とを比較して示している。即ち、方向性電磁鋼材2によっても方向性電磁鋼材1とほぼ同等の鉄損低減率が実現されることが確認された。なお、この比較試験において、回転磁界の最大磁束密度(Bmax)は0.1〜1.8[T]であり、傾斜角度(θB)は0[deg]であり、軸比率(α)は0であった。

また、例えば図11には、第1実施形態に係る方向性電磁鋼材1の鉄損低減率(a)と第2実施形態に係る方向性電磁鋼材2の鉄損低減率(b)とを比較して示している。即ち、方向性電磁鋼材2によっても方向性電磁鋼材1とほぼ同等の鉄損低減率が実現されることが確認された。なお、この比較試験において、回転磁界の最大磁束密度(Bmax)は0.1〜1.0[T]であり、傾斜角度(θB)は90[deg]であり、軸比率(α)は0であった。

また、例えば図12には、第1実施形態に係る方向性電磁鋼材1の鉄損低減率(a)と第2実施形態に係る方向性電磁鋼材2の鉄損低減率(b)とを比較して示している。即ち、方向性電磁鋼材2によっても方向性電磁鋼材1とほぼ同等の鉄損低減率が実現されることが確認された。なお、この比較試験において、回転磁界の最大磁束密度(Bmax)は0.1〜1.0[T]であり、傾斜角度(θB)は0[deg]であり、軸比率(α)は1であった。

本第2実施形態に係る方向性電磁鋼材2によっても、相互に交叉する2方向のスクラッチ処理により極磁区細分化処理が施されていることにより、磁区が、圧延方向RDに対して垂直(直角)な方向TDである幅方向だけでなく、圧延方向RDに沿う方向である長さ方向にも細分化された極めて微細な磁区構造が実現される。即ち、複数の粒状に近い磁区に分割されたような磁区構造となる。これにより、磁区が並ぶ方向に対して傾斜した磁界に対しても、該長さ方向に並ぶ磁区のそれぞれにおいて磁界の傾斜に応じて磁壁が移動するようになり、磁壁の移動がスムーズとなって、圧延方向RDに対して角度を有する方向に磁化する場合であっても鉄損を低減することができる。

(第3実施形態) この第3実施形態は、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成される鉄心に係る実施形態である。即ち、例えば図13に示すように、三相変圧器の鉄心3は、L型に接続されるコーナ部3aやT型に接続されるいわゆるT接続部3bを有する構成である。これらコーナ部3aやT接続部3bでは、当該部分を構成する方向性電磁鋼材の圧延方向に対して角度を有する方向にも磁化される。そのため、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって鉄心3を構成することにより、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。

(第4実施形態) この第4実施形態は、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって少なくとも一部分が構成される鉄心に係る実施形態である。即ち、三相変圧器の鉄心3において、特にT接続部3bでは、例えば図14に示すように、回転磁界が発生することが認められており、当該部分を構成する方向性電磁鋼材の圧延方向に対して角度を有する方向にも磁化される。そのため、特にT接合部3bでは、回転磁界による大きな鉄損が生じていた。

そこで、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって鉄心3のT接合部3bを構成することにより、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。また、鉄心3の一部分であるT接合部3bのみを方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成することにより、方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2の使用量を抑えることができ、スクラッチ処理に要するコストを抑制しつつ、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。

(第5実施形態) この第5実施形態は、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成される鉄心に係る実施形態である。即ち、例えば図15に示すギャップを有する鉄心5は、例えばリアクトルや一部の変換装置用の変圧器などに採用される鉄心である。なお、ギャップとなる空隙には、図示しない絶縁性材料などが充填される。この種の鉄心5において、例えばギャップの近傍部分5aあるいは近傍部分5bなどでは、当該部分を構成する方向性電磁鋼材の圧延方向に対して角度を有する方向にも磁化される。そのため、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって鉄心5を構成することにより、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。

(第6実施形態) この第6実施形態は、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって少なくとも一部分が構成される鉄心に係る実施形態である。即ち、例えば鉄心3あるいは鉄心5において、特にコイルが巻回されないヨーク部では、当該部分を構成する方向性電磁鋼材の圧延方向に対してほぼ直角な方向に磁化される傾向が強い。

そこで、コイルが巻回されないヨーク部の全体あるいは少なくとも一部を上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成することにより、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。また、鉄心の一部分であるヨーク部のみを方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成することにより、方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2の使用量を抑えることができ、スクラッチ処理に要するコストを抑制しつつ、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。

(第7実施形態) この第7実施形態は、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって少なくとも一部分が構成される鉄心に係る実施形態である。即ち、例えばギャップを有する鉄心5では、コイルが巻回されるレグ部が複数のブロック鉄心5cで構成されている。そのため、ギャップ部分において生じる磁束の広がり、いわゆるフリンジングにより、ブロック鉄心5cは、当該ブロック鉄心5cを構成する方向性電磁鋼材の圧延方向以外の方向にも磁化される。

そこで、レグ部を形成するブロック鉄心5cを上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成することにより、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。また、鉄心の一部分であるレグ部のみ、さらには当該レグ部を構成するブロック鉄心5cのみを方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成することにより、方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2の使用量を抑えることができ、スクラッチ処理に要するコストを抑制しつつ、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。さらに、複数のブロック鉄心5cのうち上端および下端のブロック鉄心5cのみを方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成することにより、スクラッチ処理に要するコストを一層抑制しつつ、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。

(第8実施形態) この第8実施形態は、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって構成される鉄心に係る実施形態である。即ち、回転電機の鉄心は、その殆どの部位において、方向性電磁鋼材の圧延方向に対して傾斜した方向にも磁化される。そのため、上述した方向性電磁鋼材1あるいは方向性電磁鋼材2によって回転電機の鉄心を構成することにより、上述した作用や効果を効果的に得ることができる。

(その他の実施形態) 本実施形態は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形または拡張することができる。 例えば、周知のプラズマ照射装置によって、方向性電磁鋼材に、交叉する2方向のスクラッチ処理による極磁区細分化処理を施してもよい。また、図示しない微小なギアによって、方向性電磁鋼材に、交叉する2方向のスクラッチ処理による極磁区細分化処理を施してもよい。また、スクラッチ処理による極磁区細分化処理を施すための方法は、レーザ照射による方法、プラズマ照射による方法、ギアによる機械的な方法に限られるものではない。

以上に説明した本実施形態に係るベクトル磁気特性制御材は、方向性電磁鋼材の表面に互いに交叉する2方向にスクラッチ処理による極磁区細分化処理が施されている。また、以上に説明した本実施形態に係る鉄心は、該交叉する2方向のスクラッチ処理による極磁区細分化処理が施されている方向性電磁鋼材によって構成されている。よって、本実施形態に係るベクトル磁気特性制御材あるいはベクトル磁気特性制御材を適用した鉄心によれば、圧延方向RDに対して角度を有する方向に磁化する場合であっても鉄損を低減することができる。

なお、ベクトル磁気特性制御材とその用途を説明した前記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。前記各実施形態およびその変形は、前記特徴として記載した技術条件の範囲に含まれる。

図面中、1は方向性電磁鋼材、2は方向性電磁鋼材、3は三相変圧器の鉄心(鉄心)、5はギャップを有する鉄心(鉄心)を示す。

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