【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はアクセル操作装置(以下、単に操作装置という)に関する。 さらに詳しくは、 芝刈機などに用いられる、たがいに干渉することがない3系統以上の操作系を備えている操作装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、芝刈機などの作業機械では、そこに搭載されるエンジンのスロットルバルブの制御はコントロールケーブル(以下、単にケーブルという)の引き操作によって行っている。 すなわち、そのための操作装置は、特開昭58−210336号公報、実開昭60− 87725号公報、特公平2−61054号公報または特公平3−21732号公報に開示されるごとく、3個のケーブル巻取りプーリが同心状に、かつそれぞれが回転自在に一本の取付軸に枢支されており、前記3個のプーリのうちの真中の1個(以下、出力プーリという)からはスロットバルブに連結された出力ケーブルが送り出され、出力プーリの一方側に隣接する1個のプーリ(以下、第1プーリという)からはアクセルペダルに連結された第1操作用ケーブル(以下、第1ケーブルという) が送り出され、さらに出力プーリの他方側に隣接する1 個のプーリ(以下、第2プーリという)からは作業レバーなどに連結される第2操作用ケーブル(以下、第2ケーブルという)が送り出されるように構成されたものである。 一般に第1プーリと第2プーリには操作力解除後にもとの位置に戻すためのリターンスプリングが設けられている。 【0003】ここで作業レバーとは、芝刈刃などの作業用器具にエンジン出力を伝達するためのPTO軸にエンジンの出力部を連結するためのものであり、かかる連結と連動して芝刈作業などのためにエンジン回転数を上昇させるべく操作するためのレバーである。 【0004】そして、出力プーリと第1プーリとの連結および出力プーリと第2プーリとの連結はそれぞれ係合突起と係合孔のとの係合によりなされる。 そして係合孔は、たとえば係合突起がその中を干渉することなく所要ストローク移動しうる円弧状にされている。 それにより、アクセルペダルで第1ケーブルを介して第1プーリを回転させるときは、第2プーリと干渉することなく出力プーリを同時回転させることができ、一方、作業レバーで第2ケーブルを介して第2プーリを回転させるときは、第1プーリと干渉することなく出力プーリを同時回転させることができる。 回転させられることにより出力プーリは出力ケーブルを引き、スロットルバルブを開くことになる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記従来の操作装置はいずれも2本の操作用ケーブルによって個別に出力プーリを介して出力ケーブルを引き操作することによりエンジン制御するものである。 すなわち、2入力系および1 出力系のみで構成されたものであり、それ以上の入力系を既存の2入力系と干渉させずに組み込むことはきわめて困難であり、実現はおろか提案すらされていなかった。 したがって、スロットバルブの開度が、フルアクセルよりさらに開いた位置にチョークポジションを設定するようなエンジンには従来の操作装置は適用できないという問題があった。 【0006】本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、プーリの外周部を利用することにより3系統以上の入力系を組み込むことを可能にした操作装置の提供を目的とする。 しかも、追加される入力系について、操作者が加えた操作力を解除したあとでもスロットバルブの開度を所望位置に保持しうる機構を内蔵しうる装置の提供をも目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明のアクセル操作装置は、ケーシングと、該ケーシングに固定された取付軸と、該取付軸にそれぞれ回転自在にその順序で枢支される第1プーリ、出力プーリおよび第2プーリと、前記第1プーリに巻き取りかつ送り出される第1コントロールケーブルと、前記出力プーリに巻き取りかつ送り出される、エンジン制御操作用の出力コントロールケーブルと、前記第2プーリに巻き取りかつ送り出される第2コントロールケーブルと、前記第1プーリを、第1コントロールケーブルを巻き取る方向に付勢するための第1リターンスプリングと、前記第2プーリを、第2コトロールケーブルを巻き取る方向に付勢するための第2リターンスプリングと、前記ケーシングに回転自在に枢支されるアクセルレバーとからなり、前記出力プーリの外周部に係止片が突設されており、第1プーリと出力プーリとのうちいずれか一方に第1係合突起が形成され、他方に第1係合突起が係合する第1係合孔が形成され、第2プーリと出力プーリとのうちいずれか一方に第2係合突起が形成され、他方に第2係合突起が係合する第2係合孔が形成されており、該両係合孔はそれぞれ、前記両係合突起のそれぞれが干渉することなく少なくとも所定のストローク回動しうる大きさの円弧状を呈しており、前記アクセルレバーが前記係止片と係止しうる舌片を備えていることを特徴としている。 【0008】そして、前記アクセルレバーが、摩擦部材を介して前記ケーシングに回転自在に枢支されることにより、所望の傾倒位置に保持されるのが好ましい。 【0009】 【作用】本発明の操作装置では、アクセルペダルなどの操作により第1ケーブルを引き操作すると第1プーリが回転させられる。 このとき、たとえば第1プーリの第1 係合孔の端部に出力プーリの第1係合突起が係合するため出力プーリが回転させられて出力ケーブルを引くのでスロットルバルブが開かれる。 このとき出力プーリの第2突起は、第2プーリの円弧状の第2係合孔内を干渉することなく移動するため第2プーリは回転させられない。 逆に、作業レバーなどの傾倒に伴って第2ケーブルが引かれたばあいでも、前記と同様に第1プーリが回転することなく、第2プーリの回転により出力プーリが回転させられるためスロットバルブが開かれる。 前記いずれのばあいも、アクセルペダルや作業レバーによる操作力を解除すればそれぞれのリターンスプリングの復元力によって第1プーリおよび第2プーリは共にもとの位置に戻る。 そうすれば、一般にエンジン側に備えられた他のリターンスプリングにより出力ケーブルが引かれて出力プーリはもとの位置にもどされ、スロットルバルブはたとえばアイドル位置にもどる。 【0010】つぎに、アクセルレバーを傾倒させると、 その舌片が出力プーリ外周部の係止片に係止するので出力プーリが直接回転させられるため、出力ケーブルが引かれてスロットルバルブが開かれる。 すなわち、第3の入力系による操作である。 このとき、出力プーリの第1 係合突起および第2係合突起はそれぞれ第1プーリの係合孔および第2プーリの係合孔内を干渉することなく移動するので第1、第2のプーリは回転させられない。 このように、いずれの入力系を用いて操作しようとも他の入力系と干渉することなくエンジン制御を行なうことができる。 なお、叙上のごとく、出力プーリの外周部を利用すればさらに第4、第5の入力機構を同様の構成で組み込むことができる。 【0011】 【実施例】つぎに添付図面を参照しながら本発明の操作装置を詳細に説明する。 【0012】図1は本発明の操作装置の一実施例を示す組立前斜視図、図2は組立後の図1の操作装置の断面図、図3は組立後の図1の操作装置の平面図、図4は図1の操作装置におけるリターンスプリングの取付状態を示す説明図、図5〜7はそれぞれ図1の操作装置におけるプーリ同士の位置関係を示す説明図である。 【0013】図1〜3において、1が操作装置であり、 ケーシング2と後板3とによって挟持された軸4に、第1プーリ5と出力プーリ6と第2プーリ7とアクセルレバー8と滑りクラッチの機能を奏する摩擦板9とがその順序で、それぞれが回転しうるように枢支されたものである。 【0014】なお、図2に示すごとく前記軸4にはその段部4aを介して太径部4bと細径部4cとが形成されており、前記プーリ5、6、7は太径部4bに、アクセルレバー8と摩擦板9とは細径部4cに挿通されている。 そして、ケーシング2の外側に突出した軸4の細径部4cの先端近辺に形成されたねじに皿バネ10と回り止めワッシャ11とを介してナット12がねじ込まれている。 それにより、軸4の段部4aとケーシング2との間で摩擦板9とアクセルレバー8とがほぼ一定の力で挟圧され、その結果アクセルレバー8はケーシング2に対して任意の傾倒位置に保持されうる。 【0015】第1プーリ5には、その一端がアクセルペダル(図示されていない)に連結された第1ケーブル13 が巻き止められており、出力プーリ6には、その一端がエンジンのスロットルバルブ(図示されていない)に連結された出力ケーブル14が巻き止められており、さらに第2プーリ7には、その一端が作業レバー(図示されていない)に連結された第2ケーブル15が巻き止められている。 なお、出力ケーブル14だけは第1ケーブル13および第2ケーブル15とは逆向きに巻き止められている(図3参照)。 【0016】出力プーリ6の両端面にはそれぞれ第1係合突起16と第2係合突起17とが突設されている。 一方第1プーリ5には、前記第1係合突起16が係合され、かつ干渉することなく第2プーリ7の所定ストローク角度以上に長い円弧状の第1係合孔18が穿設され、第2プーリ7には、前記第2係合突起17が係合されかつ干渉することなく第1プーリ5の所定のストローク角度以上に長い第2係合孔19が穿設されている。 【0017】また、出力プーリ6の外周部には係止片20 が突設されており、一方、前記アクセルレバー8の基部には前記係止片20と当接しうるように舌片21が延設されている。 【0018】第1プーリ5および第2プーリ7それぞれの端面とケーシング2と間には、第1ケーブル13および第2ケーブル15の引き操作によってプーリ5、7が回転する方向と逆方向に付勢するリターンスプリング22、23 が張設されている。 【0019】リターンスプリング22、23の取付姿勢は、 図4に実線で示されるごとく、プーリ5、7の回転に伴う張力の変化をできるだけ少ない状態にしている。 すなわち、図4中2点鎖線で示される従来のリターンスプリング(特開昭58−210336号公報参照)Aは、ストローク前後のリターンスプリング係止部Bの位置を結ぶ直線にほぼ沿っているが、本操作装置1におけるリターンスプリング22、23は上記直線に対してできる範囲で小角をなすように取り付られている。 したがって、係止部Bの移動距離にほぼ等しい伸び量変化を伴う従来のリターンスプリングAに対し、本リターンスプリング2 2、23は伸び量変化がはるかに少なくなるため操作力も大きく変化せず、良好な操作フィーリングがえられる。 【0020】以上説明した構成によって、アクセルペダル、作業レバーまたはアクセルレバーのうちのいずれの入力系統によって操作しようとも、他の入力系統と干渉することはない。 このことを図5〜7を参照しつつ説明する。 【0021】すなわち、図5に示すアイドル状態からアクセルペダルによって第1ケーブル13の引き操作を行なえば第1プーリ5が回転し、同時にその第1係合孔18の端部が出力プーリ6の第1係合突起16と係合するので出力プーリ6も同期的に同一方向に回転する(図6参照)。 それにより出力ケーブル14が引かれてスロットバルブが開かれる。 このとき、出力プーリ6の第2係合突起17は第2プーリ7の円弧状の第2係合孔19(図6において破線で示す)内を干渉することなく円形移動するため第2プーリ7は回転させられない。 また出力プーリ6 の係止片20は今まで当接されていたアクセルレバー8の舌片21(図6においてハッチングで示す)から離れるように円形移動するためアクセルレバー8も傾倒させられない。 【0022】アクセルペダルの操作を解除するとリターンスプリング22の復元力によって第1プーリ5がもとの位置に戻るため出力プーリ6ももとの位置にもどる。 すなわち、出力ケーブル14のスロットルバルブ側には別途リターンスプリング(図示されていない)が備えられているため、出力プーリ6は出力ケーブル14に引かれて戻るのである。 そしてスロットルバルブはアイドリング開度となる。 【0023】一方、作業レバーを操作したばあいも、前記と同様に(このばあいは第2プーリ7、出力プーリ6 を介して操作される)、第1プーリ6を回転させることなく出力ケーブル14が引き操作される。 【0024】つぎにアクセルレバー8を傾倒操作したばあい、図5の状態からその舌片21が出力プーリ6の係止片20と係止した状態で直接出力プーリ6を同期的に同一方向に図7の状態まで回転させることにより、出力ケーブル14を介してスロットルバルブを開く。 このときも前記と同様に、第1係合突起16および第2係合突起17がそれぞれ第1係合孔18および第2係合孔19内を干渉せずに円形移動するため、第1プーリ5および第2プーリ7共に回転することはない。 また前述のごとく、摩擦板9が備えられているため、操作者がアクセルレバー8を離せばその位置で保持されるため、出力プーリ6、出力ケーブル14およびスロットルバルブの開度も保持される。 もちろん出力ケーブル14の出力端側の前記リターンスプリングの復元力により大きい静摩擦力を生じるように構成する必要がある。 【0025】なお、前記第1係合突起16を第1プーリ5 に、第1係合孔18を出力プーリ6に設けてもよく、さらに第2係合突起17を第2プーリに、第2係合孔19を出力プーリ6に設けてもよいことはもちろんである。 【0026】また、必要に応じてアクセルレバーの本数を増加してもよい。 もちろんそのばあいは出力プーリ6 の外周部に対応する係止片を増設する必要がある。 【0027】本操作装置1において、アクセルレバー8 の傾倒ストロークおよびそれに対応する出力プーリ6の回転ストロークを第1プーリ5および第2プーリ7の回転ストロークよりも大きくしておけば、アクセルレバー8によって、アクセルペダルや作業レバーでは操作しえない(事故防止のため)チョーク操作を行なうことができる。 【0028】 【発明の効果】本発明の操作装置は、1出力系統と3系統以上の入力系統とを備えており、各入力系統によって、他の入力系統と干渉することなく1出力系統を操作することができ、それによって、たとえば芝刈機などのエンジン始動時のチョーク操作、通常走行または芝刈作業などを容易に、かつ誤操作なく行ないうる。 また、少なくとも2入力系統については操作力を解除すればスロットバルブが即時もとの位置(たとえばアイドル位置) に戻るので便利である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の操作装置の一実施例を示す組立前斜視図である。 【図2】組立後の図1の操作装置の断面図である。 【図3】組立後の図1の操作装置の平面図である。 【図4】図1の操作装置におけるリターンスプリングの取付状態を示す説明図である。 【図5】図1の操作装置におけるプーリ同士の位置関係を示す説明図である。 【図6】図1の操作装置におけるプーリ同士の他の位置関係を示す説明図である。 【図7】図1の操作装置におけるプーリ同士のさらに他の位置関係を示す説明図である。 【符号の説明】 1 操作装置 2 ケーシング 4 軸 5 第1プーリ 6 出力プーリ 7 第2プーリ 8 アクセルレバー 9 摩擦板 13 第1ケーブル 14 出力ケーブル 15 第2ケーブル 16 第1係合突起 17 第2係合突起 18 第1係合孔 19 第2係合孔 20 係合片 21 舌片 22、23 リターンスプリング ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 箕浦 章 大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボ タ堺製造所内 |