【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、流動層方式による燃焼あるいは焼却、乾燥あるいは蒸発、および熱分解を行なわしめる諸設備に用いる外部循環式流動層炉を製造する際に採用される外部循環式流動層炉の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般的に、外部循環式流動層炉(以下、 流動層炉と称す)は、熱媒体である固体粒子を加熱筒(ライザー)に収容して流動層を形成し、この熱媒体を介して原料を加熱して燃焼、乾燥、蒸発、及び熱分解等を行なわしめるとともに、この熱媒体を、ライザーの上端に接続された導出管より導出し、さらにこの導出管の他端に設けられた固気分離用のサイクロンと、このサイクロンの排出部と上記ライザーの下部を連通するダウンカマーを介して循環させることにより、円滑な加熱・反応の促進や生成物の排出を行うようにしている。 このような流動層炉における共通した課題は、熱媒体のスムースな循環と循環量の制御であり、スムースな循環を実現してのみ循環量の制御が可能となる。 このスムースな循環を実現するための最大の要因は、ダウンカマーのデザインの良否にある。 すなわち、まず第1に、ダウンカマーがライザーの下部領域に開口する接続口のレベルの選定であり、次にそのレベルに対応したダウンカマーサイズの決定が重要である。 【0003】従来、このダウンカマー接続口のレベルの選定、およびそのレベルに対応したダウンカマーサイズの決定はそれぞれ別個の概念により求められていた。 すなわち、前者は熱媒体の張り込み量から求められ、後者は仮定された熱媒体循環量等から決定されている。 このようなダウンカマー接続口のレベルの妥当性は、ライザー内において熱媒体を流動せしめたときに、当該部位における熱媒体密度によって評価されるが、当該部位における熱媒体密度は熱媒体粒度、比重量、ライザー内ガス流速等により変化するために、一義的には決定されない。 すなわち、当該部位における圧力ないし圧力損失レベルがダウンカマー接続口のレベルの妥当性を決定する。 一方、ダウンカマーサイズの妥当性は、上述の仮定された熱媒体循環量のほかに、ダウンカマー内通過流速により評価される。 それらも熱媒体粒度、比重量等により変化するために最適化のためにはかなりの困難性を伴う。 従来の技術においては以上のような煩雑さを避ける意味からもダウンカマーの途中に熱媒体を貯留する部分を設け、ここに熱媒体を一旦貯留すると共に、この貯留部の外方からガスを吹き込むことにより熱媒体をライザー内に送り込む方法を多用している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の流動層炉においては、以下のような問題点があった。 すなわち、接続口レベルを熱媒体の張り込み量から求め、ダウンカマーサイズを仮定された熱媒体循環量等から決定する場合、これらが、上述したように一義的に定めにくいことから、妥当な値が得にくい。 従って、例えば、ダウンカマーサイズが小さ過ぎる場合に起こる熱媒体の閉塞、あるいは大き過ぎる場合に起こるライザー下部からダウンカマーを経由してサイクロンにいたるガスの流れ(以下ガスの逆流と称す)の発生による熱媒体の循環の低下等の問題が発生する。 また、ダウンカマーの途中に熱媒体貯留部を設ける方式にあっては、 ガスを吹き込むことにより体積流量が増えるため、必然的にダウンカマーサイズが大きくなってしまうと共に、 静止ないしは極めて低流速状態にある熱媒体を所要の流速に持ち上げるため、貯留部の熱媒体をライザーに返送するために多量のエネルギーを必要とすることになる。 【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ダウンカマーに熱媒体貯留部を設けることなく、ダウンカマーサイズ等の適切な選定を行うことにより、所望する熱媒体の循環量や原料の特性に応じて、熱媒体の閉塞、あるいはガスの逆流を防止することができる外部循環式流動層炉を製造する方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、ライザーの下端に空気吹込み口が設けられ、該ライザーの外部に、上記ライザーの上端より導出される導出管と、この導出管の他端に設けられた固気分離用のサイクロンと、このサイクロンの排出部より下降するダウンカマーとが設けられた外部循環式流動層炉において、ライザー断面積当りの固体粒子の所要循環量をWs(kg/m 2・s)としたとき、ダウンカマー径をd、ライザー径をD、これらの比をX(=d/D)とすると、Xを、 Ws=12500X 5 −12080X 4 +4370X 3 − 600X 2 +36X と、 Ws=5800X 4 +1600X 3 −580X 2 +44X とで挟まれた範囲内に設定するものである。 【0007】請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、上記外部循環式流動層炉にサイクロンあるいはダウンカマーに補助気体を吹き込む補助気体吹き込み管を連結し、補助気体量をFa、全気体量をFt、これらの比をF(=Fa/Ft)とすると、補助気体の吹込みがない場合のダウンカマー径daと補助気体無しの時のダウンカマー径doとの比r(=da/do)を、 r=−2.8F+1 (0≦F<0.1) r=−0.7F+0.79 (0.1≦F) とで構成される折れ線と、 r=−3F+0.877 (0≦F<0.02) r=−2.7F+0.871 (0.02≦F<0.1) r=−0.33F+0.81 (0.1≦F) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲内に設定するようにしたものである。 【0008】請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記外部循環式流動層炉のライザーの下部領域に開口されたダウンカマー接続口の基準レベルからの高さをH、この高さHとライザー半径D/2との比をL[=H/(D/2)]とすると、基準ダウンカマー径と上記場合のダウンカマー径の比yを、 y=−0.5L+0.75 (−1.3≦L<−0.715) y=−0.15L+1.0 (−0.715≦L<0) y=−0.3L+1.0 (0≦L<0.5) y=−0.05L+0.875 (0.5≦L≦1.5) とで構成される折れ線と、 y=−0.4L+1.0 (−1.3≦L<0) y=−0.05L+1.0 (0≦L≦1.5) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲内に設定するものである。 【0009】請求項4に記載の発明は、請求項1の発明において、上記外部循環式流動層炉に供給される原料あるいは焼却物中にアルカリを含む場合に、これらに含有されるアルカリを換算して得られる換算アルカリ塩濃度をAとすると、この場合に用いられるダウンカマー径と基準値との比xを、 A=714x 3 −2256x 2 +2424x−882 と、 A=169.7x 2 −346.8x+177.1 とで挟まれた範囲内に設定するようにしたものである。 【0010】 【作用】本発明の外部循環式流動層炉においては、図1 に示すように、ライザー1の下部領域に2段に分けて流動化のためのガス19、20が吹き込まれ、この流動化ガス19、20によりライザー1内に張り込まれた熱媒体は浮遊状態にされる。 浮遊状態にされた熱媒体はライザー1内を上昇し、ライザー1の上端に設けられた導出管2を経てサイクロン5に送り込まれる。 サイクロン5 において熱媒体と流動化ガスは遠心力を利用して分離され、熱媒体はサイクロン5の下部に集められる。 その熱媒体はダウンカマー4を下降し、ライザー1の下部領域に設けられた導入管3を経てライザー1内に再供給される。 【0011】そして、請求項1の発明にあっては、ダウンカマー径dとライザー径Dとの比X(=d/D)およびライザー断面積当りの固体粒子の循環量Wsの関係を所定の範囲内に設定することにより、サイクロン下部、 あるいは導入管部において生じ易い熱媒体の詰まり、あるいはガスの逆流等を防止し、熱媒体を安定的に循環させる。 【0012】また、請求項2の発明にあっては、流動化を変化せしめる何等かの条件の変更による熱媒体循環量の変化時においては、サイクロン下部、導入管部のいずれかあるいは両者からガスを吹き込む際に、補助空気量をFa、全空気量をFt、これらの比をF(=Fa/F t)とすると、補助空気有りの時のダウンカマー径da と補助空気無しの時のダウンカマー径doとの比r(= da/do)を、 r=−2.8F+1 (0≦F<0.1) r=−0.7F+0.79 (0.1≦F) とで構成される折れ線と、 r=−3F+0.877 (0≦F<0.02) r=−2.7F+0.871 (0.02≦F<0.1) r=−0.33F+0.81 (0.1≦F) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲内に設定することにより、安定的な循環が実施される。 【0013】さらに、請求項3の発明にあっては、ライザー下部領域に開口されたダウンカマー接続口の基準レベルからの高さHとライザー半径D/2との比L[=H /(D/2)]およびダウンカマー径の変化を基準値に対する比で表わした値yの関係を所定の範囲内に設定することにより、ライザー下部領域に接続するダウンカマーの適正な径が規定される。 【0014】さらにまた、請求項4の発明にあっては、 反応により生成するアルカリ塩濃度Aとダウンカマー径の変化を基準値にたいする比で表わした値xとの関係を所定の範囲内に設定することにより、適正なダウンカマー径が規定される。 【0015】 【実施例】以下、図1ないし図6及び表1ないし表4に基づいて本発明の一実施例を説明する。 この実施例は、 図1及び図2に示す流動層炉を工場廃棄物としての廃液およびスラッジの焼却に使用したものである。 【0016】図1ないし図2において、ライザー1は耐火物で内張りされた円筒状の炉体であり、上端には導出管2が連結され、この導出管2は固気を分離する装置であるサイクロン5に連結され、サイクロンの下部の排出口には垂直管であるダウンカマー4が連結されている。 上記ダウンカマー4の下部は、傾斜して上記ライザー1 の下部領域に接続される導入管3となっている。 この接続口3aは、後述する2次空気吹込み管11の中心から一定の高さHに開口するようになっている。 また、上記サイクロン5の下部と導入管3のライザー1寄りには、 それぞれ、補助空気10を供給する補助空気吹き込み管6、8がそれぞれ流量調節弁7、9を備えて設けられている。 そして、上記ライザー1の下部には、炉底からの高さを違えて2段に配置された空気吹き込み管11、1 2がそれぞれ流量調節弁13、14を備えて設けられており、これらの空気吹き込み管12、11を介して一次空気20と二次空気19がライザー1内に吹き込まれるようになっている。 さらに、上記ライザー1の中間部および下端には、それぞれ、原料投入口15および抜き出し弁18が設けられている。 なお、図中符号16は、サイクロン5の排気管であり、17はその排気管16の排気口を示している。 【0017】上記のように構成された流動層炉にあっては、熱媒体があらかじめライザー1内に張り込まれており、熱媒体の流動および焼却のために各空気吹き込み管12、11から所定の空気が供給される。 そして、焼却物は原料投入口15からライザー1内に供給される。 ここで、全空気量はライザー1内のガス流速に応じて焼却物が完全に燃焼するという条件から決定され、主となる空気吹込み管11,12及び補助空気吹込み管6,8からの総和である。 補助空気が吹込まれない場合、主空気吹込み管11,12からの空気量のうちの一次空気量、 すなわち炉底に近い1次空気吹込み管12から吹込まれる空気の量はほぼ一定量であり、空気流量の変化の大部分は、2次空気吹込み管11からの二次空気量によって行う。 また、この全空気量に従って、熱媒体の単位時間当たり、単位断面積当たりの循環量Wsも概ね定まる。 【0018】上述した状態において、ライザー1内の熱媒体は、まず、一次空気により攪拌混合されると共に上方に持ち上げられる。 そのとき、固形状態にある焼却物は熱媒体から熱を奪い、この熱によって焼却物中の水分が激しく蒸発させられ、同時に焼却物が熱媒体の衝撃力により解砕される。 この解砕された焼却物は周囲の空気により燃焼しながら熱媒体と共に上方に持ち上げられる。 次いで、この持ち上げられた熱媒体および焼却物は二次空気吹き込み管11から吹き込まれた空気により加速されると共に、焼却物はその空気を取り込んで活発に燃焼しながら熱媒体と共にライザー1の上端に送られる。 そして、ライザー1の上端に至るまでに焼却物はほぼ完全に焼却され、焼却物中の残渣、すなわち灰分は熱媒体と共に導出管2を経てサイクロン5に送り込まれる。 このサイクロン5においては、遠心力を利用して高温排ガス中から熱媒体が分離される。 この分離された熱媒体は下降し、サイクロン5の下部から、ダウンカマー4を経てライザー1に返送される。 一方、サイクロン5 において熱媒体を除かれた高温排ガスと灰分は排気管1 6から系外に排出される。 【0019】この流動層炉において、焼却物中にNa、 K等の化合物を含有している場合、ライザー1を上昇する間にこれらの塩類が形成される。 この塩類の大部分は単独、ないしは灰分に付着して微小粒子として存在し、 一部が熱媒体表面に付着するが、場合によっては熱媒体と反応して新たな化合物を作る。 これらの付着した塩類あるいは新たな化合物は低融点のものが多く、従って、 熱媒体どうしの表面の癒着、熱媒体とダウンカマー4等の内壁との癒着により、流動性を著しく阻害することになる。 この流動状況は、ダウンカマー4のサイズおよび導入管3のレベルにより熱媒体の流動状況は大きく異なる。 また、流量調節弁7、9を介してガス吹き込み管6、8からガスを吹き込むことにより、上述のサイズ、 レベルの適合範囲が拡大することが実験により確認されている。 すなわち、ダウンカマーサイズが小さい場合、 導出管2より送り込まれた熱媒体はダウンカマー4から円滑に排出することができずにサイクロン5の下部に堆積し、そのためサイクロン5における熱媒体の分離が悪化するほか、ライザー1内の熱媒体量が減少するために安定運転が困難になる。 反対に、ダウンカマーサイズが大きい場合、ダウンカマー4の断面において熱媒体の下降流のほかに導入管3からダウンカマー4を経てサイクロン5に至るガスの流れ(ガスの逆流)が発生する。 このガスの逆流により、本来ダウンカマー4を下降すべき熱媒体の一部は、上昇しあるいは下降に至らず排気管1 6から系外に排出される。 これらの不具合は、上記ガス吹き込み管6、8からガスを吹き込むことにより解消、 ないし低減させることができる。 【0020】このように構成された流動層炉において、 所定の条件下で最適な操業条件を得るため、いくつかの因子を変えて、コールドモデル、すなわち加熱をしないで実験を行い、また、一部アルカリ塩の影響を調べる場合には加熱して実験した。 これらの結果をまとめて表1 〜表4に示す。 実験は、ライザー径Dを0.3mおよび0.32mの2種に設定し、ダウンカマー径dを0.0 33〜0.1mまで種々の値に設定し、全空気量を48 0〜1720Nm 3 /hの間で種々設定し、また、その内の補助空気量を0〜350Nm 3 /hの範囲で変えた。 導入管3の高さレベルH、すなわち、2次空気吹込み管11の中心から導入管3の接続口の中心までのレベル差は、0.15〜0.525mに設定した。 また、操業条件が妥当であるか否かは、ダウンカマー4または導入管3における詰りの有無、排気管16から飛散する量、及び熱媒体の循環量Ws(kg/m 2・s)等により評価した。 これらのデータを整理し、検討を行った結果、以下に示す特性式と図3ないし図6に示すような特性図を得た。 表1は、ライザー1からダウンカマー4を経由してサイクロン5に至るガス流れ(逆流)の存在を固体粒子の循環量で評価した場合のダウンカマー径Dとライザー径dの比の関係を示したものである。 すなわち、流動層炉において、ライザー径D、導入管3の2次空気吹込み口11の中心からの高さHを一定とし、ダウンカマー径dを変化させた複数の実験において、補助空気の吹込みをせずに、全空気量を変化させてWsを変化させ、排気管16からの飛散量及びダウンカマー4または導入管3 における詰り有無を調査した。 図3には、この表1に基づき、飛散量が少なく、詰りも無い範囲が示されている。 【0021】 【表1】 これにより、ガスの逆流の発生を抑制し、かつ順調な固体粒子の下降(すなわち循環)を保証する範囲が存在していることがわかる。 この範囲は、ダウンカマー径をd、ライザー径をD、これらの比をX(=d/D)とすると、ライザー断面積(πD2 /4)当りの固体粒子の循環量Ws(kg/m 2・s)が、 Ws=12500X 5 −12080X 4 +4370X 3 − 600X
2 +36X と、 Ws=5800X 4 +1600X 3 −580X 2 +44X とで挟まれた範囲である。 ただし、0≦Ws≦50である。 この図は、Xが上限より大きい場合にはサイクロンの排出口から上昇する空気の逆流が起り飛散量が増大することを示し、また、Xが下限より小さい場合はダウンカマーにおいて詰りを生じることを示している。 【0022】この図3に基づき、ライザー径Dが定められた流動層炉において、以下の方法によりダウンカマー径dが定められる。 まず、全空気量が、ライザー1内のガス流速に応じて焼却物が完全に燃焼するという条件から決定され、これに基づき熱媒体の循環量Wsも定まる。 次に、図3により、このWsに対応する比Xを求め、この値とライザー径Dとから、適正操業が可能なダウンカマー径dが求められる。 また、表2は、Dを一定とし、ダウンカマー径dをd0=0.06m から変化させた炉を構成し、全空気量をほぼ一定にしてWsも一定となるようにした。 ここで、ガス吹き込み管6、8からも補助空気を吹き込み、この補助空気量Faの全空気量Ftに対する比率Fを変化せしめた場合に、飛散が少なく詰りの無い条件を求めた。 図4は、この条件を、ダウンカマー径dのd0=0.06m(表2において*で示す。)を基準値とした変化の幅として示したものである。 【0023】 【表2】 これを特性式で表すと、補助空気量をFa、全空気量(補助空気量+流動空気量+燃焼空気量)をFt、これらの比をF(=Fa/Ft)とするとき、補助空気有りの時のダウンカマー径daと補助空気無しの時のダウンカマー径doとの比r(=da/do)は、 r=−2.8F+1 (0≦F<0.1) r=−0.7F+0.79 (0.1≦F) とで構成される折れ線と、 r=−3F+0.877 (0≦F<0.02) r=−2.7F+0.871 (0.02≦F<0.1) r=−0.33F+0.81 (0.1≦F) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲に設定される。 この図から、吹き込み空気量(補助空気流量)により、
かなりの程度ダウンカマー径dを小さくし得ることがわかる。 従って、ダウンカマー径dを設定する場合に、補助空気の吹込みを行う場合には、図3で求めたダウンカマー径に対して図4によりこれを補正すればよい。
【0024】表3は、接続口3aの高さが、製造上の諸条件に応じて変化する場合にどのような補正を行うかを明確にするための実験の結果を示すもので、上述したH とdとを種々に変えた実験を行った。 【表3】 図5は、この表3に基づいて、ダウンカマー4をライザー1の変位と、ダウンカマー径との関連で最適な条件を求めたものである。 これによれば、基準レベル(表3において*で示す。)より下方領域(濃厚層領域)に固体粒子を返送するためにはダウンカマー径をかなり大きくする必要があることがわかる。 これを式の形で表すと、 ライザー下部領域に開口されたダウンカマー接続口の基準レベルからの高さをH、この高さHとライザー半径D
/2との比をL[=H/(D/2)]とするとき、ダウンカマー径の
基準値(基準ダウンカマー径)に対する比 yは、 y=−0.5L+0.75 (−1.3≦L<−0.715) y=−0.15L+1.0 (−0.715≦L<0) y=−0.3L+1.0 (0≦L<0.5) y=−0.05L+0.875 (0.5≦L≦1.5) とで構成される折れ線と、 y=−0.4L+1.0 (−1.3≦L<0) y=−0.05L+1.0 (0≦L≦1.5) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲である。
【0025】これによれば、Hが標準値(H0=0.3 m)に対して変化するときには、図5に基づいて補正すればよい。 表4は、D=0.32mの炉において、80 0℃に加熱した条件下アルカリを含む原料を用いて行った結果である。 【0026】 【表4】 図6は、この加熱実験により得たデータをもとに、焼却物のアルカリ塩濃度とダウンカマー径との関連で最適条件を求めたものである。 これを式の形で表すと、原料あるいは焼却物中のアルカリ量を以下の方法によりアルカリ塩濃度に換算した値Aは、ダウンカマー径の基準値に
対する比をxとすると、 A=714x 3 −2256x 2 +2424x−882 と、 A=169.7x 2 −346.8x+177.1 とで挟まれた範囲である。 ただし、0≦A≦20である。 ここで、Aは、焼却物中のNa,KがNa 2 CO 3 , K
2 CO 3になったとした場合に生成される塩の重量と、 原焼却物(ドライベース、すなわち含有水分を差し引いた重量)との比として算出されるもので、例えば、水分を50重量%含む焼却物に、Na,Kがそれぞれ2重量%、0.5重量%含まれているときのAは、 A=0.02×(Na
2 CO 3の分子量)/2(Naの分子量) +0.005×(K 2 CO 3の分子量)/2(Kの分子量) =0.02×2.304+0.005×1.767 =0.055 である。 【0027】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1 は、ライザーの下端に空気吹込み口が設けられ、該ライザーの外部に、上記ライザーの上端より導出される導出管と、この導出管の他端に設けられた固気分離用のサイクロンと、このサイクロンの排出部より下降するダウンカマーとが設けられた外部循環式流動層炉において、ライザー断面積当りの固体粒子の所望循環量をWs(kg/m 2・s)としたとき、ダウンカマー径をd、ライザー径をD、これらの比をX(=d/D)とすると、Xを、 Ws=12500X 5 −12080X 4 +4370X 3 − 600X 2 +36X と、 Ws=5800X 4 +1600X 3 −580X 2 +44X とで挟まれた範囲内に設定するようにしたものであるから、ダウンカマーに熱媒体貯留部を設けることなく、サイクロン下部、あるいは導入管部において生じ易い熱媒体の詰まり、あるいはガスの逆流等を防止でき、熱媒体を安定的に循環させることができる。 【0028】また、本発明の請求項2は、上記外部循環式流動層炉に、サイクロンあるいはダウンカマーに補助気体を吹き込む補助気体吹き込み管が連結し、補助気体量をFa、全気体量をFt、これらの比をF(=Fa/ Ft)とすると、補助気体の吹込みがない場合の補助空気有りの時のダウンカマー径daと補助空気無しの時のダウンカマー径doとの比r(=da/do)を、 r=−2.8F+1 (0≦F<0.1) r=−0.7F+0.79 (0.1≦F) とで構成される折れ線と、 r=−3F+0.877 (0≦F<0.02) r=−2.7F+0.871 (0.02≦F<0.1) r=−0.33F+0.81 (0.1≦F) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲内に設定するようにしたものであるから、流動化を変化せしめる何等かの条件の変更による熱媒体循環量の変化時において、サイクロン下部、導入管部のいずれかあるいは両者からガスを吹き込むことにより、このガスの作用を充分発揮せしめ、安定的な循環を実施することができる。 【0029】さらに、本発明の請求項3は、ライザー下部領域に開口されたダウンカマー接続口の基準レベルからの高さをH、この高さHとライザー半径D/2との比をL[=H/(D/2)]としたとき、ダウンカマー径の基準値に対する比yを、 y=−0.5L+0.75 (−1.3≦L<−0.715) y=−0.15L+1.0 (−0.715≦L<0) y=−0.3L+1.0 (0≦L<0.5) y=−0.05L+0.875 (0.5≦L≦1.5) とで構成される折れ線と、 y=−0.4L+1.0 (−1.3≦L<0) y=−0.05L+1.0 (0≦L≦1.5) とで構成される折れ線とで挟まれた範囲内に設定するようにしたものであるから、ライザー下部領域に接続するダウンカマーの径を適正に規定することができる。 【0030】さらにまた、本発明の請求項4は、原料あるいは焼却物中にアルカリを含む場合において、反応により生成するアルカリ塩濃度(原料あるいは焼却物に対する換算アルカリ塩濃度)A とすると 、ダウンカマー径 と基準値との比 x を 、 A=714x 3 −2256x 2 +2424x−882 と、 A=169.7x 2 −346.8x+177.1 とで挟まれた範囲内に設定するようにしたものであるから、反応により生成するアルカリ塩濃度Aに応じて、適正なダウンカマー径を設定することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図である。 【図2】本発明の流動層炉の底部の寸法関係を示す図である。 【図3】ダウンカマー径dとライザー径Dとの比X(= d/D)およびライザー断面積当りの固体粒子の循環量Wsの関係を示す特性図である。 【図4】補助空気量Faと全空気量(補助空気量+流動空気量+燃焼空気量)Ftとの比F(=Fa/Ft)および補助空気有りの時のダウンカマー径daと補助空気無しの時のダウンカマー径doとの比r(=da/d o)の関係を示す特性図である。 【図5】ライザー下部領域に開口されたダウンカマー接続口の基準レベルからの高さHとライザー半径D/2との比L[=H/(D/2)]およびダウンカマー径の変化yの関係を示す特性図である。 【図6】反応により生成するアルカリ塩濃度(原料あるいは焼却物に対する換算アルカリ塩濃度)Aとダウンカマー径の変化xとの関係を示す特性図である。 【符号の説明】 1 ライザー 2 導出管 4 ダウンカマー 5 サイクロン 6・8 ガス吹き込み管 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上條 泰彦 東京都中央区佃2丁目17番15号 月島機 械株式会社内 (72)発明者 佐藤 吉信 東京都中央区佃2丁目17番15号 月島機 械株式会社内 (72)発明者 上村 敏雄 東京都中央区佃2丁目17番15号 月島機 械株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) F23C 10/02 |