摩擦ローラ式伝動装置

申请号 JP2009550518 申请日 2009-01-20 公开(公告)号 JPWO2009093570A1 公开(公告)日 2011-05-26
申请人 日産自動車株式会社; 发明人 淳弘 森; 淳弘 森; 永悟 坂上; 永悟 坂上;
摘要 クランクシャフト41の回転による制御下で摩擦ローラ32を摩擦ローラ31に向け径方向へ押し付け、これらローラ31,32間でのトルク伝達を可能にする。ローラ間径方向押し付け反 力 がベアリングサポート23,25で内力として消失し、ハウジング11に入力されることがない。ベアリングサポート23,25の両端軸受嵌合部間における中央部に、ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部を設ける。
权利要求
  • 一対の摩擦ローラを互いに、直接的または間接的に径方向に押し付けて摩擦接触させ、これにより該摩擦ローラ間で動力の受け渡しが可能となるようにした摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記摩擦ローラの一方をクランクシャフトに対して偏心軸線を中心に回転自在に支持して、該クランクシャフトの回転位置制御により前記摩擦ローラ間の径方向押し付け力を加減し得るようになし、
    前記摩擦ローラ対を挟んでその軸線方向両側に配置したベアリングサポートにそれぞれ、前記一方の摩擦ローラに係わるクランクシャフト、および、他方の摩擦ローラに係わる摩擦ローラ軸を軸受嵌合することにより、前記摩擦ローラ間の径方向押し付け反力を前記両ベアリングサポートで受け止めるようになし、
    前記各ベアリングサポートの両端軸受嵌合部間における中央部に、前記摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部を設けた摩擦ローラ式伝動装置。
  • 請求項1に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記括れ部は、前記ベアリングサポートの中央部に、前記軸受嵌合部の中心軸線方向へ延在する厚さ方向溝を設けて設定した摩擦ローラ式伝動装置。
  • 請求項1または2に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記括れ部は、前記ベアリングサポートの中央部に、前記両端軸受嵌合部の中心軸線を含む面を横切る方向へ延在する幅方向溝を設けて設定した摩擦ローラ式伝動装置。
  • 前記一対の摩擦ローラを互いに直接径方向に押し付けて摩擦接触させた、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記一対の摩擦ローラの半径の合計を、前記一方の摩擦ローラに係わるクランクシャフト、および、他方の摩擦ローラに係わる摩擦ローラ軸間の軸間距離よりも大きくした摩擦ローラ式伝動装置。
  • 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記摩擦ローラ間径方向押し付け力の制御に用いる前記クランクシャフトの摩擦ローラ間径方向押し付け力増大方向における回転角最大値を、クランクシャフトの回転に必要なクランクシャフト回転駆動トルクの変化割合が逆転する変極点のクランクシャフト回転角よりも大きくした摩擦ローラ式伝動装置。
  • 第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
    前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の摩擦ローラの前記回転軸から第2の方向上に位置し、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
    前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
    前記第1の摩擦ローラ軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1及び第2の方向に共に垂直な方向の寸法が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
    を有する摩擦ローラ式伝動装置。
  • 第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
    前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
    前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
    前記第1の摩擦ローラ軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1の方向の寸法が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
    を有する摩擦ローラ式伝動装置。
  • 請求項6又は7のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記第1及び第2の摩擦ローラは互いに直接接触してトルク伝達を行い、
    前記第1及び第2の摩擦ローラの半径の合計が、前記クランクシャフトの回転軸及び前記第1の摩擦ローラの前記回転軸間の距離よりも大きい、
    摩擦ローラ式伝動装置。
  • 請求項6乃至8のいずれか1項に記載の摩擦ローラ式伝動装置において、
    前記クランクシャフトの回転に必要なトルクが、前記クランクシャフトの制御回転範囲の両端以外で変化割合が逆転する変極点をもつ、
    摩擦ローラ式伝動装置。
  • 说明书全文

    本発明は、四輪駆動車両のトランスファー(駆動配分装置)等に用いるのに有利な摩擦ローラ式伝動装置に関するものである。

    発明の背景

    四輪駆動車両のトランスファー(駆動力配分装置)としては通常、例えば特許文献1に記載のようなものが用いられる。
    この文献に記載の駆動力配分装置は、遊星歯車組を用いた四輪駆動車両のトランスファーで、
    遊星歯車組のキャリアに変速機からのトルクを入力し、このトルクをキャリアから、サンギヤおよびリングギヤを経て主駆動輪および従駆動輪に分配出力することにより、主従駆動輪間の駆動力配分を決定するものである。

    特開2005−337442号公報

    発明の概要

    しかし、上記のものに代表されるように従来の駆動力配分装置は、遊星歯車組などの歯車組を用いて主従駆動輪間での駆動力配分を行うものであるため、
    主駆動輪へのトルク(主駆動輪トルク)と、従駆動輪へのトルク(従駆動輪トルク)の配分比が、歯車諸元(特許文献1の構成では、サンギヤ歯数およびリングギヤ歯数)で一義的に決まってしまう。

    従って、主駆動輪トルクと従駆動輪トルクの配分比が、全トルク域に亘って同じになり、駆動力配分装置への入力トルクが大きくなると、主駆動輪トルクが大きくなるのは勿論であるが、それに応じて従駆動輪トルクも大きくなる。

    ところで昨今は、地球温暖化や燃料費の高騰から車両の燃費向上が社会的な重要課題となっており、燃費向上の対策としては車両の軽量化が有効な手だてとして知られている。
    そして、かかる車両の軽量化を実現しようとすると、車両のコンパクト化を避けて通れず、そのため、四輪駆動車両における従駆動輪の駆動系も、その強度を必要最小限のものにして小型化する必要がある。

    しかし従来の駆動力配分装置のように、主従駆動輪トルク配分比が全トルク域に亘って同じで、駆動力配分装置への入力トルクが大きくなると、主駆動輪トルクと同様の傾向をもって従駆動輪トルクも大きくなるのでは、
    大トルク入力時に従駆動輪トルクが、上記の理由から小型化せざるを得ない従駆動輪駆動系の強度を越えてしまうことになる。

    従って従来の歯車式駆動力配分装置は、車両のコンパクト化などの要求から従駆動輪駆動系を小型化せざるを得なくなった四輪駆動車両のトランスファーとして用いることができないという問題を有する。

    本発明は、上記の実情に鑑み、従駆動輪へのトルクを上限設定可能な駆動力配分装置等として有用な摩擦ローラ式伝動装置を提供し、もって、上述した問題を解消することを第1の目的とする。

    そこで本発明は、一対の摩擦ローラを互いに径方向に押し付けて摩擦接触させ、これにより該摩擦ローラ間で動力の受け渡しが可能となるような摩擦ローラ式伝動装置を前提とするが、
    本発明は更に、かかる摩擦ローラ式伝動装置を、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御により伝達トルク容量を制御可能にして一層有用なものにすると共に、摩擦ローラ間径方向押し付け反力がハウジングに入力されることのないようにしてハウジングの軽量化を実現し、併せて、上記摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)の制御精度を向上させることを目的とする。

    この目的のため、本発明による摩擦ローラ式伝動装置は、
    一対の摩擦ローラを互いに、直接的または間接的に径方向に押し付けて摩擦接触させ、これにより該摩擦ローラ間で動力の受け渡しが可能となるようにしたものであって、
    前記摩擦ローラの一方をクランクシャフトに対して偏心軸線を中心に回転自在に支持して、該クランクシャフトの回転位置制御により前記摩擦ローラ間の径方向押し付け力を加減し得るようになし、
    前記摩擦ローラ対を挟んでその軸線方向両側に配置したベアリングサポートにそれぞれ、前記一方の摩擦ローラに係わるクランクシャフト、および、他方の摩擦ローラに係わる摩擦ローラ軸を軸受嵌合することにより、前記摩擦ローラ間の径方向押し付け反力を前記両ベアリングサポートで受け止めるようになし、
    前記各ベアリングサポートの両端軸受嵌合部間における中央部に、前記摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部を設けたことを特徴とするものである。

    また、本発明による摩擦ローラ式伝動装置は、
    第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
    前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の摩擦ローラの前記回転軸から第2の方向上に位置し、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
    前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
    前記第1の摩擦ローラ軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1及び第2の方向に共に垂直な方向の寸法が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
    を有するものである。

    また、本発明による摩擦ローラ式伝動装置は、
    第1の方向の回転軸を有する第1の摩擦ローラと、
    前記第1の摩擦ローラと摩擦によるトルク伝達可能に配置された第2の摩擦ローラであって、前記第1の方向に略平行の回転軸を有する該第2の摩擦ローラと、
    前記第2の摩擦ローラを偏心軸線を中心に回転自在に支持するクランクシャフトであって、回転によって前記第1及び第2の摩擦ローラ間の径方向押し付け力を変化させる該クランクシャフトと、
    前記第1の摩擦ローラ軸支する第1の軸受支持部、及び前記クランクシャフトを軸支する第2の軸受支持部を有するベアリングサポートであって、該軸受支持部間に、前記第1の方向の寸法が該軸受支持部と比較して小さい中央部を有する該ベアリングサポート、
    を有するものである。

    本発明の一実施例になる摩擦ローラ式伝動装置を駆動力配分装置として用いた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。

    図1における駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)の縦断側面図である。

    図2のIII-III線上で断面とし、矢の方向に見て示す、第2摩擦ローラから出力軸への駆動力伝達部の縦断正面図である。

    図1における駆動力配分装置の別の構成を示す縦断側面図である。

    図4に示す駆動力配分装置で用いたクランクシャフトを示す縦断正面図である。

    図2に示す駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)の摩擦ローラ間径方向押し付け力に対する摩擦ローラ間伝達トルク容量の変化特性を示す特性線図である。

    図2に示す駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)のクランクシャフト回転に対する摩擦ローラ間径方向押し付け力の変化特性を、図2の対策が行われていない場合における変化特性と比較して示す特性線図である。

    図2に示す駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)のベアリングサポートを示し、(a)は、これに設けた軸受嵌合部の軸線方向に見て示す正面図、(b)は、その側面図である。

    本発明の他の実施例を示す、図8と同様なベアリングサポートの図面で、(a)は、該ベアリングサポートの正面図、(b)は、該ベアリングサポートの側面図である。

    本発明の更に他の実施例を示す、図8と同様なベアリングサポートの図面で、(a)は、該ベアリングサポートの正面図、(b)は、該ベアリングサポートの側面図である。

    本発明の更に別の実施例を示す、図8(a)と同様なベアリングサポートの正面図である。

    本発明の更に別の実施例を示す、図9(b)と同様なベアリングサポートの側面図である。

    図2に示す駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)における第1,2摩擦ローラ間の径方向押し付け力制御要領を示す説明図で、(a)は、第1,2摩擦ローラの半径の和値を入出力軸間距離と同じにした場合の摩擦ローラ間径方向押し付け力制御要領を示す説明図、(b)は、第1,2摩擦ローラの半径の和値を入出力軸間距離よりも大きくした場合の摩擦ローラ間径方向押し付け力制御要領を示す説明図である。

    図2に示す駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)のクランクシャフト回転角と、クランクシャフト回転駆動トルクおよび摩擦ローラ間伝達トルク容量との相関関係を示す特性線図である。

    詳細な説明

    本発明の摩擦ローラ式伝動装置によれば、
    一対の摩擦ローラ間で摩擦接触により動力の受け渡しを行うことから、摩擦ローラ間径方向押し付け力で決まる伝達トルク容量の範囲を越えた大きなトルクがローラ間で受け渡されることがなく、
    四輪駆動車両の駆動力配分装置として用いた場合において、従駆動輪へのトルクを上限設定し得ることとなる。

    よって、摩擦ローラ式伝動装置への入力トルクが大きくなっても、従駆動輪トルクが上記の上限を越えて大きくなることはなく、
    本発明の摩擦ローラ式伝動装置は、車両コンパクト化などの要求から従駆動輪駆動系を小型化せざるを得なくなった四輪駆動車両においても、その駆動力配分装置として用いることができる。

    また本発明の摩擦ローラ式伝動装置によれば、
    前記摩擦ローラの一方をクランクシャフトに対して偏心軸線を中心に回転自在に支持して、該クランクシャフトの回転位置制御により前記摩擦ローラ間の径方向押し付け力を加減し得るようになしたから、
    摩擦ローラ間径方向押し付け力で決まる伝達トルク容量を自由に制御することができ、この伝達トルク容量に関する広範な要求に自由に応え得て大いに有用である。

    更に本発明の摩擦ローラ式伝動装置によれば、
    摩擦ローラ対の軸線方向両側に配置したベアリングサポートが、摩擦ローラ間径方向押し付け反力を受け止めてハウジングに伝達しないため、ハウジングの軽量化を実現することができる。

    ところで、上記の目的のため摩擦ローラ対の軸線方向両側に設けたベアリングサポートは、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する大きな支持剛性故に、前記したクランクシャフトの回転位置制御による摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に際し、クランクシャフトの回転角に対する摩擦ローラ間径方向押し付け力変化割合(伝達トルク容量変化割合)を急なものとなし、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフトの回転角範囲が狭くなり、当該制御の精度が悪くなる傾向にある。

    しかして本発明によれば、各ベアリングサポートの両端軸受嵌合部間における中央部に、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部を設けたため、
    摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポートの撓み量が大きくなり、その分だけ、クランクシャフトの回転角に対する摩擦ローラ間径方向押し付け力変化割合(伝達トルク容量変化割合)が緩やかで、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフトの回転角範囲が広くなり、当該制御の精度を向上させることができる。

    以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
    図1は、本発明の一実施例になる摩擦ローラ式伝動装置を駆動力配分装置(トランスファー)1として具えた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。

    図1の四輪駆動車両は、エンジン2からの回転を変速機3による変速後、リヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5を経て左右後輪6L,6Rに伝達される後輪駆動車をベース車両とし、
    左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を、駆動力配分装置1の摩擦伝動より、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を経て左右前輪(従駆動輪)7L,7Rへ伝達することにより、四輪駆動走行が可能となるようにした車両である。

    駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)1は、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)7L,7Rへ分配して出力することにより、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分を決定するもので、本実施例においては、この駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)1を図2に示すように構成する。

    図2において、ハウジング11内に長い入力軸12、および、短い出力軸13と、この出力軸13にニードルベアリング42を介し同軸突き合わせ状態で相対回転可能に軸受嵌合したクランクシャフト41とよりなる軸ユニットを、相互に平行に配して横架する。
    入力軸12は、その両端をハウジング11の軸貫通孔11a,11bに挿通し、該入力軸12の両端と、ハウジング11の軸貫通孔11a,11bとの間にボールベアリング14,15を介在させ、これらボールベアリング14,15を介し入力軸12の両端をハウジング11に回転自在に支持する。

    出力軸13およびクランクシャフト41とよりなる軸ユニットは、該軸ユニットの両端をハウジング11の軸貫通孔11c,11dに挿通し、該軸ユニットの両端と、ハウジング11の軸貫通孔11c,11dとの間にボールベアリング16,17を介在させ、これらボールベアリング16,17を介し上記軸ユニットの両端をハウジング11に回転自在に支持する。

    上記のごとくハウジング11内に回転自在に横架して支承した入力軸12および軸ユニット(出力軸13およびクランクシャフト41)のうち、入力軸12には、ハウジング11内に配したローラベアリング18,19を嵌合し、軸ユニット13,41には、同じくハウジング11内に配したローラベアリング21,22を嵌合する。
    ローラベアリング18,21はそれぞれ、出力軸13およびクランクシャフト41の同軸突き合わせ軸受嵌合部に介在させたニードルベアリング42とほぼ同じ軸直角面内に位置させ、ローラベアリング19,22は、ローラベアリング18,21から軸線方向に離間した別の軸直角面内に位置させる。

    ニードルベアリング42とほぼ同じ軸直角面内に位置させた、入出力軸12,13用のローラベアリング18,21をそれぞれ、共通な第1のベアリングサポート23の軸受嵌合部23a,23b内に抱持し、このベアリングサポート23をハウジング11の対応する内側面に沿うよう配置し、
    また、別の軸直角面内に位置させた、入力軸12およびクランクシャフト41用のローラベアリング19,22をそれぞれ、共通な第2のベアリングサポート25の軸受嵌合部25a,25b内に抱持し、このベアリングサポート25をハウジング11の対応する内側面に沿うよう配置する。

    入力軸12の両端をそれぞれ、該入力軸12の両端とハウジング11の軸貫通孔11a,11bとの間に介在させたシールリング27,28による液密封止下でハウジング11から突出させ、該入力軸12の図中左端を変速機3(図1参照)の出力軸に結合し、図中右端はリヤプロペラシャフト4(図1参照)を介してリヤファイナルドライブユニット5に結合する。
    出力軸13の図中左端を、該出力軸13とハウジング11の軸貫通孔11cとの間に介在させたシールリング29による液密封止下でハウジング11から突出させ、該出力軸13の突出左端はフロントプロペラシャフト7(図1参照)を介してフロントファイナルドライブユニット8に結合する。

    入力軸12の軸線方向中程には、第1摩擦ローラ31を同心に一体成形して設ける。
    従って入力軸12は、第1摩擦ローラ31の軸(摩擦ローラ軸)をも構成する。
    クランクシャフト41は、両端回転支承部17,42間に半径がRの偏心軸部41aを有し、この偏心軸部41aは、その軸心O 3をクランクシャフト41(出力軸13)の回転軸線O 2からεだけオフセットさせると共に、入力軸12上の第1摩擦ローラ31と同じ軸直角面内に位置させる。
    そして、クランクシャフト41の偏心軸部41a上にローラベアリング44を介し、第2摩擦ローラ32を回転自在に、しかし軸線方向位置決め状態で取り付け、クランクシャフト41と出力軸13とよりなる軸ユニットは、第2摩擦ローラ32の軸(摩擦ローラ軸)をも構成する。

    上記の構成によって、第2摩擦ローラ32の回転軸線は偏心軸部41aの軸心O 3と同じになり、クランクシャフト41の回転位置制御により第2摩擦ローラ回転軸線O 3 (偏心軸部41aの軸心)を、クランクシャフト回転軸線(出力軸回転軸線)O 2の周りに回転させることで、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32の軸間距離L1(第1摩擦ローラ31の回転軸線O 1および第2摩擦ローラ32の回転軸線O 3間の距離)を加減すれば、
    第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力(第1,2摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量)を自在に制御することができる。

    この摩擦ローラ間伝達トルク容量制御を可能にするため、出力軸13から遠いクランクシャフト41の図中右端は、該クランクシャフト41の右端とハウジング11の軸貫通孔11dとの間に介在させたシールリング43による液密封止下でハウジング11から外部に露出させる。
    そして、クランクシャフト41の露出端面に、ローラ間押し付け力制御モータ45の出力軸45aをセレーション嵌合などにより駆動結合し、このローラ間押し付け力制御モータ45をハウジング11に取着する。

    上記のモータ45による制御下で第2摩擦ローラ32を第1摩擦ローラ31に向け径方向へ押し付けることにより、これらローラ31,32の外周面同士が符号31a,32aで示す箇所において摩擦接触し、この摩擦接触部31a,32aを経て第1摩擦ローラ31から第2摩擦ローラ32へトルクを伝達することができる。
    これにより回転される第2摩擦ローラ32の回転を、第2摩擦ローラ32の摩擦ローラ軸である出力軸13へ伝達し得るようにするため、出力軸13の内端にフランジ部13aを一体成形して設け、該フランジ部13aの直径を第2摩擦ローラ32と軸線方向に対面する大きさにする。

    第2摩擦ローラ32と対面する出力軸フランジ部13aに、第2摩擦ローラ32へ向けて突出する複数個の駆動ピン46を固設し、これら駆動ピン46を図3に示すごとく同一円周上に等間隔に配置する。
    出力軸フランジ部13aと対面する第2摩擦ローラ32の端面には、駆動ピン46が個々に貫入して第2摩擦ローラ32から出力軸13(フランジ部13a)へのトルク伝達を可能にするための複数個の孔47を穿設する。
    そして、これら駆動ピン貫入孔47を図3に明示するごとく、駆動ピン46の直径よりも大径の円孔とし、その直径は、出力軸13の回転軸線O 2および第2摩擦ローラ32の回転軸線O 3間の偏心量εを吸収しつつ上記した第2摩擦ローラ32から出力軸13(フランジ部13a)へのトルク伝達を可能にするのに必要な直径とする。

    上記した図1乃至3に示す摩擦ローラ式伝動装置(駆動力配分装置)1の作用を以下に説明する。
    変速機3からの出力トルクは図2の左端から軸12へ入力され、一方では、この入力軸12からそのままリヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5を経て左右後輪6L,6R(主駆動輪)に伝達される。
    他方で駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)1は、左右後輪6L,6Rへのトルクの一部を、第1摩擦ローラ31から、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32間の摩擦接触部31a,32a、第2摩擦ローラ32、駆動ピン46、出力軸フランジ13aを順次経て出力軸13に向かわせ、
    その後このトルクを、出力軸13の図2中左端から、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を経て左右前輪(従駆動輪)7L,7Rへ伝達する。
    かくして車両は、左右後輪6L,6R(主駆動輪)および左右前輪(従駆動輪)7L,7Rの全てを駆動しての四輪駆動走行が可能である。

    ところで駆動力配分装置(摩擦ローラ式伝動装置)1は、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)7L,7Rへ分配して出力することにより、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分を決定するに際し、
    前記した第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力(摩擦ローラ間径方向押し付け力)に応じた伝達トルク容量の範囲を越えた大きなトルクを第1摩擦ローラ31から第2摩擦ローラ32へ伝達させることがない。

    よって、左右前輪(従駆動輪)へのトルクの上限値を、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32間の径方向押し付け力に応じた値に設定し、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分特性を、入力トルクが或る値以上に大きくなると左右前輪(従駆動輪)へのトルクが上記の上限値に保たれるような特性にすることができる。

    従って、駆動力配分装置1への入力トルクが大きくなっても、左右前輪(従駆動輪)へのトルクが上記の上限値を越えて大きくなることはなく、
    駆動力配分装置1は、車両コンパクト化などの要求から左右前輪(従駆動輪)の駆動系を小型化せざるを得なくなった四輪駆動車両においても、左右前輪(従駆動輪)駆動系の強度不足を気にすることなく、当該四輪駆動車両の駆動力配分装置として用いることができる。

    また本実施例においては、ローラ間押し付け力制御モータ45によりクランクシャフト41の軸線O 2周りにおける回転位置を制御することで、
    第2摩擦ローラ回転軸線O 3 (偏心軸部41aの軸心)が、クランクシャフト回転軸線(出力軸回転軸線)O 2の周りに回転され、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32の軸間距離L1を加減することができる。

    かように第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32の軸間距離L1を変更制御することで、第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力を変更制御することができ、結果として第1,2摩擦ローラ間の伝達トルク容量を自在に制御することができる。
    ちなみに、第1摩擦ローラ31および第2摩擦ローラ32間の径方向押し付け力Frに対し摩擦ローラ間伝達トルク容量Trは、例えば図6に示すような比例関係をもって変化する。
    従って、左右前輪(従駆動輪)へのトルクの上限値を、モータ45によるクランクシャフト41の回転位置制御(第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向押し付け力制御)により自在に変更することができ、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分特性を、いつも運転状況に応じた最適なものにすることができる。

    更に本実施例においては、第2摩擦ローラ32に駆動係合させた出力軸13と、クランクシャフト41の対応軸端との同軸突き合わせ軸受嵌合部(ローラベアリング42)を含む軸直角面内に配設した第1のベアリングサポート23に、第2摩擦ローラ32に係わる摩擦ローラ軸(出力軸)13、および、第1摩擦ローラ31に係わる摩擦ローラ軸(入力軸)12をそれぞれ、軸受21,18を介して嵌合すると共に、
    第2摩擦ローラ32を挟んで第1のベアリングサポート23と反対の側における軸直角面内に配設した第2のベアリングサポート25に、第2摩擦ローラ32に係わるクランクシャフト41、および、第1摩擦ローラ31に係わる摩擦ローラ軸(入力軸)12をそれぞれ、軸受22,19を介して嵌合することから、
    第1摩擦ローラ31に対し第2摩擦ローラ32を径方向に押し付けて相互に摩擦接触させる時に発生する摩擦ローラ間径方向押し付け反力を第1および第2ベアリングサポート23,25で受け止めることとなる。
    よって、摩擦ローラ間径方向押し付け反力がベアリングサポート23,25内で内力として消失し、この摩擦ローラ間径方向押し付け反力がハウジング11にそのまま入力されることがなく、ハウジング11の強度を大きくする必要がなくなる分だけハウジング11を軽量化することができる。

    摩擦ローラ式伝動装置は図4及び図5に示されるように構成してもよい。 すなわち、中実インナーシャフト型式のクランクシャフト41に代え、一対1組の中空アウターシャフト型式のクランクシャフト51L,51Rを用い、これらのクランクシャフト51L,51Rの回転変位により第2ローラ32の径方向変位を惹起して、第1ローラ31および第2ローラ32の軸間距離L1の変更を行うようにしたものである。

    このため、第2ローラ32を出力軸13に一体的に形成し、上記中空のクランクシャフト51L,51Rを、第2ローラ32の軸線方向両側に配置する。
    第2ローラ32の軸線方向両側から突出する出力軸13の両端にそれぞれ、クランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra(半径Ri)を嵌合し、この嵌合部に軸受52L,52Rを介在させて出力軸13をクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra内で、これらの中心軸線O 2の周りに自由に回転し得るよう支持する。

    クランクシャフト51L,51Rには図5に明示するごとく、中心孔51La,51Ra(中心軸線O 2 )に対し偏心した外周部51Lb,51Rb(半径Ro)を設定し、これら偏心外周部51Lb,51Rbの中心軸線O 3は中心孔51La,51Raの軸線O 2から、両者間の偏心分εだけオフセットしている。
    クランクシャフト51L,51Rの偏心外周部51Lb,51Rbはそれぞれ、軸受53L,53Rを介して対応する側におけるベアリングサポート23,25内に回転自在に支持し、
    この際、クランクシャフト51L,51Rをそれぞれ、第2ローラ32と共に、スラストベアリング54L,54Rで軸線方向に位置決めする。

    クランクシャフト51L,51Rの相互に向き合う隣接端にそれぞれ、同仕様のリングギヤ51Lc,51Rcを一体に設け、
    これらリングギヤ51Lc,51Rcに、共通のクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させる。
    なおこの噛合に当たっては、クランクシャフト51L,51Rを両者の偏心外周部51Lb,51Rbが円周方向において相互に整列する回転位置にした状態で、リングギヤ51Lc,51Rcにクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させる。

    クランクシャフト駆動ピニオン55はピニオンシャフト56に結合し、ピニオンシャフト56の両端を軸受56a,56bによりハウジング11に回転自在に支持する。
    図4の右側におけるピニオンシャフト56の右端をハウジング11の外に露出させ、
    該ピニオンシャフト56の露出端面には、ハウジング11に取着して設けたローラ間押し付け力制御モータ45の出力軸45aをセレーション嵌合などにより駆動結合する。

    よって、ローラ間押し付け力制御モータ45によりピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御するとき、出力軸13および第2ローラ32の回転軸線O 2が図5に破線で示す軌跡円に沿って旋回し、ローラ軸間距離L1の変更により第1ローラ31に対する第2ローラ32の径方向押圧力を任意に制御することができる。
    従って、ローラ間押し付け力制御モータ45、ピニオン55およびクランクシャフト51L,51Rは、ベアリングサポート23,25と共に本発明におけるローラ間径方向押圧部を構成する。

    クランクシャフト51Lおよび出力軸13をそれぞれ図4の左側においてハウジング11から突出させ、該突出部においてハウジング11およびクランクシャフト51L間にシールリング57を介在させると共に、クランクシャフト51L および出力軸13間にシールリング58を介在させ、
    これらシールリング57,58により、ハウジング11から突出するクランクシャフト51Lおよび出力軸13の突出部をそれぞれ液密封止する。

    なおシールリング57,58の介在に際しては、これらシールリング57,58を位置させるクランクシャフト51Lの端部においてその内径と外径の中心を、出力軸13の支持位置と同様に偏心させ、
    クランクシャフト51Lの上記端部外径とハウジング11との間にシールリング57を介在させ、クランクシャフト51Lの上記端部内径と出力軸13との間にシールリング58を介在させる。
    かかるシール構造によれば、出力軸13の上記旋回によりその回転軸線O 2が旋回変位するにもかかわらず、出力軸13をハウジング11から突出する箇所において良好にシールすることができる。

    上記以外は、図2、図3の構成と同様であるため、対応する部分を同一符号で示すにとどめ、重複説明を避けた。

    ところで、かかる目的のため第1,2摩擦ローラ31,32の軸線方向両側に設けたベアリングサポート23,25は、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性が大きいため、クランクシャフト41の回転角制御による摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に際し、本来なら図7に一点鎖線で例示するごとくクランクシャフトの回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力(Fr)変化割合(伝達トルク容量変化割合)を急なものとなし、
    結果として、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフトの回転角範囲がθ1までの狭い範囲となり、当該制御の精度が悪くなる傾向にある。

    この問題を解決するために図1乃至3の実施例では、図8(a),(b)に示すように、ベアリングサポート23の両端軸受嵌合部23a,23b間における中央部に、軸受嵌合部23a,23bの中心軸線O 1 , O 2方向へ延在する厚さ方向溝23c,23dを設けて括れ部23eを設定する。 すなわち、ベアリングサポート23の中央部の幅Wは軸受支持部の最大幅W1, W2よりも小さく設定されている。
    この括れ部23eは、ベアリングサポート23の両端軸受嵌合部23a,23b間における中央部の横断面積を減ずる結果、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート23の支持剛性を低下させることとなり、
    摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23の対応方向撓み量が大きくなる。

    ベアリングサポート25についても同じく図8(a),(b)に示すように、ベアリングサポート25の両端軸受嵌合部25a,25b間における中央部に、軸受嵌合部25a,25bの中心軸線O 1 , O 2方向へ延在する厚さ方向溝25c,25dを設けて括れ部25eを設定する。 すなわち、ベアリングサポート25の中央部の幅Wは軸受支持部の最大幅W1, W2よりも小さく設定されている。
    この括れ部25eは、ベアリングサポート25の両端軸受嵌合部25a,25b間における中央部の横断面積を減ずる結果、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート25の支持剛性を低下させることとなり、
    摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート25の対応方向撓み量が大きくなる。

    かように、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部に、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部23eおよび25eを設けたことで、
    本実施例においては、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23,25の対応方向撓み量が大きくなり、その分だけ図7に実線で例示するごとく、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)が緩やかで、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2まで拡大することができ、当該制御の精度を向上させることができる。

    この作用効果は、図9(a),(b)に示すごとく、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部にそれぞれ、軸受嵌合部23a,23bの中心軸線O 1 , O 2を含む面および軸受嵌合部25a,25bの中心軸線O 1 , O 2を含む面を横切る方向へ延在する幅方向溝23f,23gおよび25f,25gを設けて括れ部23hおよび25hを設定することによっても達成し得る。 すなわち、ベアリングサポート23, 25の中央部の厚みTは軸受支持部の最大厚みT1, T2よりも小さく設定されている。
    これら括れ部23hおよび25h はそれぞれ、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部の横断面積を減ずる結果、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート23および25の支持剛性を低下させることとなり、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23および25の対応方向撓み量が大きくなる。

    かように、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部に、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対する支持剛性を低下させるための括れ部23hおよび25hを設けた図9の実施例においても、
    摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23,25の対応方向撓み量が括れ部23hおよび25hの設定により大きくなり、その分だけ図7に実線で例示するごとく、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)が緩やかで、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2まで拡大することができ、当該制御の精度を向上させることができる。

    図10(a),(b)は、ベアリングサポート23(25)の両端軸受嵌合部23a,23b間(25a,25b間)における中央部に、図8におけると同様な厚さ方向溝23c,23d(25c,25d)、および、図9におけると同様な幅方向溝23f,23g(25f,25g)を設けて括れ部23i(25i)を設定したものである。 すなわち、ベアリングサポート23(25)の中央部の幅Wは軸受支持部の最大幅W1, W2よりも小さく設定されており、中央部の厚みTは軸受支持部の最大厚みT1, T2よりも小さく設定されている。
    これら括れ部23iおよび25i はそれぞれ、ベアリングサポート23および25の両端軸受嵌合部23a,23b間および25a,25b間における中央部の横断面積を、図8,9における実施例よりも更に減じて、摩擦ローラ間径方向押し付け反力に対するベアリングサポート23および25の支持剛性を更に低下させることとなり、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23および25の対応方向撓み量が更に大きくなる。

    よって、図10の実施例においては、摩擦ローラ間径方向押し付け反力によるベアリングサポート23,25の対応方向撓み量が更に大きくなる分だけ、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲を図7のθ2よりも更に大きな回転角まで拡大することができ、
    当該摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)の精度を更に向上させることができる。

    なお、図8におけるベアリングサポート23(25)の厚さ方向溝23c,23d(25c,25d)は図11に示すごとく、軸線方向に見た形状が連続的に曲率変化して軸受嵌合部23a,25a(23b,25b)の外周円形に滑らかに連続するような形状にすることができる。 図11においても、ベアリングサポート23(25)の中央部の厚みTは軸受支持部の最大厚みT1, T2よりも小さく設定されている。
    また、図9におけるベアリングサポート23(25)の幅方向溝23f,23g(25f,25g)は図12に示すごとく、溝底部の断面形状をU字状として溝底部に角部が存在しない形状にすることができる。 図12においても、ベアリングサポート23(25)の中央部の厚みTは軸受支持部の最大厚みT1, T2よりも小さく設定されている。
    これら図11,12に示す溝形状は勿論組み合わせて用いることも可能で、これら溝形状によれば、角部が存在しないことによって、ベアリングサポート23(25)の強度低下を防止しつつ前記の作用効果を達成することができる。

    なお、ベアリングサポート中央部は軸受支持部の間に存在すればよく、回転軸O 1 , O 2間方向の中央部の位置は回転軸O 1 , O 2間の中央(中心位置)だけに限定されるものではなく、中央からオフセットした位置でもよい。

    以下、摩擦ローラ31,32間の径方向押し付け力制御について付言する。
    図13は、摩擦ローラ31,32間の径方向押し付け力制御の概念図で、
    (a)は、摩擦ローラ31の半径R1と摩擦ローラ32の半径R2との和値を、入出力軸12,13間の軸間距離L0、つまり、入力軸12の軸線O 1および出力軸13(カウンターシャフト41)の軸線O 2間の距離L0と同じにした場合の摩擦ローラ間径方向押し付け力制御の概念図、
    (b)は、摩擦ローラ31の半径R1+αと摩擦ローラ32の半径R2+βとの和値を、入出力軸12,13間の軸間距離L0よりもα+βだけ大きくした場合の摩擦ローラ間径方向押し付け力制御の概念図を示す。

    図13 (a)のように摩擦ローラ31の半径R1と摩擦ローラ32の半径R2との和値を入出力軸12,13間の軸間距離L0と同じにした場合、クランクシャフト41の回転角θが第2摩擦ローラ32を実線で示す位置となす回転角(θ=90度)である時、第2摩擦ローラ32が丁度第1摩擦ローラ31と接触する。 しかし、摩擦ローラ31,32間に未だ径方向押し付け力は発生しておらず、両者間の伝達トルク容量も0である。

    クランクシャフト41を上記の回転位置から矢A1で示す方向へ回転させると(カウンターシャフト回転角θを上記の90度から増大させると)、第2摩擦ローラ32の軸線O 3がカウンターシャフト軸線O 2周りで破線上を対応方向へ変位することから、第2摩擦ローラ32が実線位置から破線位置に向け変位する。
    これにより、第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向オーバーラップ量δが0から漸増し、この摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δに応じて大きくなる摩擦ローラ間径方向押し付け力が発生して、摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量が0から漸増する。

    そしてカウンターシャフト41を、第2摩擦ローラ32が破線位置となるまで回転させたとき(カウンターシャフト回転角θを180度にしたとき)、摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δが最大値δmaxになり、これに応じた最大の摩擦ローラ間径方向押し付け力が発生して、摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量を最大となし得る。
    以上のことから明らかなように、カウンターシャフト41の軸線O 2から、第2摩擦ローラ32を回転自在に支持するカウンターシャフト偏心軸部41aの軸線(第2摩擦ローラ32の回転軸線)O 3までの偏心量εは、要求される摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量最大値に応じて決まる摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxと同じにする必要がある。

    ところで図13(b)のごとく、摩擦ローラ31の半径R1+αと摩擦ローラ32の半径R2+βとの和値を、入出力軸12,13間の軸間距離L0よりもα+βだけ大きくした場合、クランクシャフト41の回転角θが第2摩擦ローラ32を実線で示す位置となす回転角(θ=0度)である時、第2摩擦ローラ32が丁度第1摩擦ローラ31と接触する。
    しかし、摩擦ローラ31,32間に未だ径方向押し付け力は発生しておらず、両者間の伝達トルク容量も0である。

    クランクシャフト41を上記の回転位置から矢A2で示す方向へ回転させると(カウンターシャフト回転角θを上記の0度から増大させると)、第2摩擦ローラ32の軸線O 3がカウンターシャフト軸線O 2周りで破線上を対応方向へ変位することから、第2摩擦ローラ32が実線位置から破線位置に向け変位する。
    これにより、第1摩擦ローラ31に対する第2摩擦ローラ32の径方向オーバーラップ量δが0から漸増し、この摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δに応じて大きくなる摩擦ローラ間径方向押し付け力が発生して、摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量が0から漸増する。

    そしてカウンターシャフト41を、第2摩擦ローラ32が破線位置となるまで回転させたとき(カウンターシャフト回転角θを180度にしたとき)、摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δが最大値δmaxになり、これに応じた最大の摩擦ローラ間径方向押し付け力が発生して、摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量を最大となし得る。

    以上のことから明らかなように、摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxは、摩擦ローラ31の半径R1+αと摩擦ローラ32の半径R2+βとの和値、および入出力軸間距離L0間の寸法差(α+β)で決まり、
    この寸法差(α+β)は、要求される摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量最大値に応じた摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxと一致するよう定める。

    また、図13(a)の場合と異なり図13(b)の場合は、カウンターシャフト41を回転角θ=0度の位置と、θ=180度の位置との間の広範囲に亘り回転させて摩擦ローラ間径方向押し付け力(摩擦ローラ間伝達トルク容量)を制御することになるから、
    カウンターシャフト41の軸線O 2から、第2摩擦ローラ32を回転自在に支持するカウンターシャフト偏心軸部41aの軸線(第2摩擦ローラ32の回転軸線)O 3までの偏心量εが、要求される摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量最大値に応じて決まる摩擦ローラ間径方向最大オーバーラップ量δmaxの半分でよく、クランクシャフト41の小径化により構成のコンパクト化を実現することができる。

    更に、図13(b)のような構成により、カウンターシャフト41を回転角θ=0度の位置と、θ=180度の位置との間の広範囲に亘り回転させて摩擦ローラ間径方向押し付け力(摩擦ローラ間伝達トルク容量)を制御する構成にあっては、
    図7に実線で例示した、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)を更に緩やかなものにし得て、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2よりも更に大きな回転角まで拡大することができ、当該制御の精度を更に向上させることができる。

    なお、図13 (a)のように摩擦ローラ31,32の半径の和値を入出力軸間距離L0と同じにするか、図13(b)のように摩擦ローラ31,32の半径の和値を入出力軸間距離L0よりも大きくするかに関わらず、
    クランクシャフト41の回転角制御に当たってこれを回転させるのに必要なクランクシャフト回転駆動トルクTcは、図13(b)のように摩擦ローラ31,32の半径の和値を入出力軸間距離L0よりも大きくした場合につき代表的に示した図14の一点鎖線特性のごとく、
    クランクシャフト回転角θが180度(第2摩擦ローラ32の回転軸線O 3を第1摩擦ローラ31の回転軸線O 1に最接近させる回転角)の手前側におけるθ=θrであるとき最大となり、
    クランクシャフト回転角θがこのθrを越えると、クランクシャフト回転角θの増大につれクランクシャフト回転駆動トルクTcは低下する。
    つまりクランクシャフト回転駆動トルクTcは、クランクシャフト回転角θがθ=θrであるときに最大となる変極点(極大点)を持った特性を呈する。

    一方で摩擦ローラ31,32間の伝達トルク容量Trは、第2摩擦ローラ32の回転軸線O 3が第1摩擦ローラ31の回転軸線O 1に接近するほど(図13に付き前述した摩擦ローラ間径方向オーバーラップ量δが大きくなるほど)大きくなることから、
    クランクシャフト回転角θが増大するにつれ、θ>θrの領域においても図14に実線で示すごとく確実に大きくなる。

    上記のようなクランクシャフト回転角θと、クランクシャフト回転駆動トルクTcおよび摩擦ローラ間伝達トルク容量Trとの相関関係に鑑み、本実施例においては、
    摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(摩擦ローラ間伝達トルク容量制御)に用いるクランクシャフト41の摩擦ローラ間径方向押し付け力増大方向における回転角最大値を、クランクシャフト回転駆動トルクTcの変化割合が正から負へと逆転する変極点のクランクシャフト回転角θrよりも大きくし、好ましくは180度にするのがよい。

    かようにすることで本実施例においては、図7に実線で例示した、クランクシャフト41の回転角θに対する摩擦ローラ間径方向押し付け力Frの変化割合(伝達トルク容量の変化割合)を更に緩やかなものにし得て、摩擦ローラ間径方向押し付け力制御(伝達トルク容量制御)に用い得るクランクシャフト41の回転角範囲をθ2よりも更に大きな回転角まで拡大することができ、当該制御の精度を更に向上させることができるだけでなく、
    クランクシャフト回転角θをθrよりも大きくする領域において、クランクシャフト回転駆動トルクTcが低下するのに摩擦ローラ間伝達トルク容量Trを増大させることができ、
    ローラ間押し付け力制御モータ45(図2参照)の駆動負荷を抑制しつつ摩擦ローラ間伝達トルク容量Trを増大させ得るという優れた作用効果をも奏し得る。

    なお、上記では摩擦ローラ式伝動装置(駆動力配分装置)1が、第1,2摩擦ローラ31,32を接触部31a,32aにおいて直接に摩擦接触させるようにしたものである場合について説明したが、
    遊転ローラを介し第1,2摩擦ローラ31,32を間接的に摩擦接触させるようにした摩擦ローラ式伝動装置である場合についても、本発明の前記した着想は同様の考え方により適用可能であること勿論であり、この場合も前記したと同様な作用効果が奏し得られることは言うまでもない。

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