【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、流体を高圧にする増圧装置に関し、特に、高圧になった流体を、対向するノズルから噴出させ、噴出させた流体同士を衝突させる装置に適した増圧装置に関する。 【0002】 【従来の技術】水と油のような混じり合わない複数の液体の混合物を乳化したり、スラリー内の固体の粒子を微細化したりする場合、これらの流体を高圧にして、対向するノズルから噴射させ、噴射させた流体同士を衝突させて粒子を微細化する方法が知られている。 【0003】図2は、このような粒子を微細化するシステムの全体構成を簡略化した図である。 同図において、 Aは低圧側流体で、Bは高圧側流体であるが、便宜的に、低圧側流体Aの流れる管路は実線で示し、高圧側流体Bの流れる管路は点線で示している。 【0004】タンク1には低圧側流体Aとしてオイルが貯留されている。 この低圧側流体Aは圧力ポンプ2により汲み上げられる。 圧力ポンプ2から吐出された低圧側流体Aは、レギュレータ3で所定の圧力に調整されて2 つの切換弁4,4'に達する。 レギュレータ3に達する低圧側流体Aのうち、余った流体は、レギュレータ3にあるリリーフ弁によってタンク1に還元される。 【0005】各切換弁4,4'には、それぞれ2本ずつの吐出管路が接続されている。 切換弁4,4'は、これらのいずれか一方の管路に低圧側流体Aを供給するか、 あるいはどちらにも低圧側流体Aを供給しない閉止状態かのいずれかに切換できる。 切換弁4に接続された吐出管路は、増圧機5に接続され、切換弁4'に接続された吐出管路は増圧機5'に接続されている。 【0006】図3は、増圧機5の拡大断面図である。 増圧機5は、上下2つのケース51,52を重ねたもので、内部には、低圧側シリンダ53と、高圧側シリンダ54の2つの円筒形状をした空間がある。 これらの内部には、ピストン55が嵌装されている。 ピストン55 は、大径のピストンと小径のピストンとが一体になったもので、円板に丸棒が付いたような形状である。 円板の部分が大径のピストン、すなわち低圧側ピストン55a で、これが低圧側シリンダ53を一次側空間53aと二次側空間53bとに分割している。 丸棒の部分は小径のピストン、すなわち高圧側ピストン55bで、これは高圧側シリンダ54内で進退するようになっている。 【0007】圧力ポンプ2が作動して低圧側流体Aが一次側空間53aに供給され、一次側空間53aの圧力が上昇するとピストン55は矢印a方向に移動し、高圧側シリンダ54内の高圧側流体Bを加圧して外部に押し出す。 切換弁4が切り替わって低圧側流体Aが二次側空間53bに流れ込み、逆に二次側空間53bの圧力が上昇すると、ピストン55は矢印b方向に移動し、高圧側シリンダ54内に高圧側流体Bを吸入する。 【0008】低圧側シリンダ53の断面積と、高圧側シリンダ54の断面積とは、増圧機5の増圧比の逆比になっている。 たとえば、増圧比が20倍であれば、高圧側シリンダ54の断面積の方が低圧側シリンダ53の断面積の1/20ということになる。 【0009】もう一方の増圧機5'も増圧機5と全く同じ構造であるから、「'」を付して増圧機5'の対応する構成を示すことにする。 たとえば、55a'は増圧機5'の低圧側ピストンを示すという具合である。 【0010】図2に戻り、一次側空間53a,53a' には、切換弁4,4'の吐出管路の一方が接続され、二次側空間53b,53b'には、吐出管路の他方が接続されている。 高圧側シリンダ54,54'には、高圧側流体Bの管路が接続され、それぞれ逆止弁6,6'に接続される。 逆止弁6,6'は、図の矢印方向の流体は流すが、逆方向へは流さない構成である。 【0011】タンク7には、高圧側流体Bが貯留されている。 高圧側流体Bとは、上述した水と油のような混ざり合わない複数の液体の混合体や、各種のスラリーのことを指す。 タンク7内の高圧側流体Bは、タンク7の下から出ている管路を通ってエアーポンプ8に達し、エアーポンプ8によって送り出され、2つの管路に分かれて逆止弁6,6'に達する。 【0012】ピストン55,55'が下降して増圧機5,5'が加圧中であれば、エアーポンプ8からの高圧側流体Bは、逆止弁6,6'を通過できないが、ピストン55,55'が上昇して増圧機5,5'が減圧中であれば、エアーポンプ8側の高圧側流体Bの圧力の方が高くなり、高圧側流体Bは高圧側シリンダ54,54'内に進入する。 【0013】符号9は、高圧流体の噴流が衝突する噴流衝突部である。 ここの構成の詳細は、特開平6−472 64号に記載されている。 要点を説明すると、逆止弁6,6'を通過して来た高圧の流体が、この噴流衝突部9で、2つの流路に分流され、各流路の端末に対向して設けられたノズル91,91から噴射される。 そして、 一方のノズルから噴射された流体が他方のノズルから噴射された流体と衝突することで、スラリーに含まれる粒子が粉砕されたり、水と油の粒子が細かくなって乳化することになる。 噴流衝突部9で衝突させられた高圧側流体Bは、再びタンク7に戻り、循環して所望の乳化度や粒子径になるまで繰り返し衝突させられる。 【0014】上記の構成において、2台の増圧機5, 5'を用いているのは、これらの増圧機で高圧側流体B を交互に加圧して、噴流衝突部9では常時噴流の衝突を行わせられるようにするためである。 【0015】 【発明が解決しようとする課題】ところで、圧力ポンプ2で2台の増圧機5,5'を交互に駆動して高圧側流体Bを加圧する場合、一方の増圧機の加圧が終わり、次の増圧機の加圧が開始するまでの間、圧力の加わらない時間が生じると、高圧側流体Bに脈動が起こる。 脈動はノズル91で乳化又は微粒子化させるときの圧力変動となる。 すなわち、ノズル91での通過流速が一時的に減速されることになり、衝突時の破砕能力が低下するので、 均一な乳化物または微粒子化物が得られない。 【0016】そこで、従来は、一方の増圧機の加圧の終了前に他方の増圧機の加圧を開始させ、双方の加圧時間をオーバーラップさせることで脈動を抑制していた。 ところで、増圧される高圧側流体Bは、一般的に非圧縮性流体であるが、高圧領域になると非圧縮性流体と言えども、圧縮率は無視できなくなる(200MPaにおける水の圧縮率は約8.5%である)。 したがって、上記のオーバーラップ時間には、高圧側流体Bを圧縮する時間も必要となるので、その分長くなる。 このような理由から、圧力ポンプ2の能力としては、2台の増圧機5, 5'を同時に増圧できる吐出圧と吐出量が必要とされ、 圧力ポンプ2が大型化していた。 【0017】逆に、増圧機の一方だけが加圧している間は、余分な低圧側流体Aが圧力ポンプ2から吐出されることになるので、それだけ無駄があることになる。 また、圧力ポンプ2から吐出された低圧側流体Aは、レギュレータ3のリリーフ弁からタンク1に戻されるのであるが、加圧されたときに加わったエネルギーが熱エネルギーに変換され、タンク1へ戻されるためにタンク1は温度上昇を続けるので、中間に冷却器を設け冷却する必要が生じる。 この冷却機は、戻される流量が大きいことから冷却器も大型化し、無駄が多い。 また、切換弁4, 4'は、ソレノイド弁であるが、切り換える際に大きな音が発生して、騒音の原因となる。 【0018】本発明は、上記の事実から考えられたもので、ポンプを小型化し、かつ切換時の脈動を軽減することができる増圧装置を提供することを目的としている。 また、本発明の他の目的は、切換弁が不要で、騒音が少なく耐久性の高い増圧装置を提供することにある。 【0019】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明の増圧装置は、複数の増圧機と、増圧機に駆動用の低圧側流体を供給する複数のポンプとを有し、該ポンプの1つが上記複数の増圧機の1つに低圧側流体を供給し、他の増圧機には低圧側流体を供給しないように各増圧機とポンプとを結合したことを特徴としている。 【0020】上記増圧機が、低圧側シリンダと、高圧側シリンダと、該低圧側シリンダを一次側空間と二次側空間とに分割する低圧側ピストンと、該低圧側ピストンと一体に形成され上記高圧側シリンダ内で進退する高圧側ピストンとを有し、上記各ポンプが正転・逆転自在で、 上記各低圧側シリンダの一次側空間に接続され、各低圧側シリンダの二次側空間が1又は2以上の加圧器に接続されている【0021】上記ポンプが上記低圧側流体内に設けられている構成としたり、上記増圧機を2つとし、両増圧機の上記高圧側シリンダを、並列配置された第1逆止弁群と第2逆止弁群の両端に接続し、、上記第1逆止弁群は両高圧側シリンダからの流れを許容する方向に接続され、中間から高圧側流体を吐出可能とし、上記第2逆止弁群は両高圧側シリンダからの流れを阻止する方向に接続され、中間から高圧側流体の供給を可能にした構成とすることができる。 【0022】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を図面によって説明する。 図1は、本発明の増圧装置の構成を示す図である。 増圧機5,5'、エアーポンプ8、噴流衝突部9などの従来例と同じ構成のものについては、同じ符号を付けて説明は省略する。 【0023】タンク10及び10'には、低圧側流体A が充填されている。 タンク10には圧力ポンプ11が、 タンク10'には圧力ポンプ11'があり、それぞれが液中に浸漬されている。 なお、タンク10,10'は、 2つのタンクに分ける必要はなく、1つのタンク内に2 つの圧力ポンプ11,11'を浸漬してもよい。 【0024】また、圧力ポンプ11,11'をこのように、低圧側流体Aとしてのオイルに浸漬させることで、 圧力ポンプの小型化と防音化を図ることができる。 また、防爆エリアでの油圧増圧式高圧ポンプの使用は、耐圧防爆か、本質安全防爆の仕様が絶対条件となるが、本実施例のようにオイルに浸漬させる構成にすれば、計装部位を除けば電気接点等の火花の出る箇所は全て作動油中に存在するので、必然的にこの必要が無くなるという利点がある。 【0025】圧力ポンプ11の吐出口は増圧機5の低圧側シリンダ53の一次側空間53aに接続され、圧力ポンプ11'の吐出口は増圧機5'の低圧側シリンダ5 3'の一次側空間53a'に接続される。 圧力ポンプ1 1,11'の吐出圧は圧力計12,12'でモニタされ、所定の圧力になるように図示しない制御装置でコントロールされる。 【0026】低圧側シリンダ53,53'の二次側空間53b,53b'は、加圧器13に接続されている。 加圧器13としては、本発明の実施例では、ガスと流体とが封入されたアキュムレータを使用している。 ただし、 加圧器13として、第3の圧力ポンプを用いることもできる。 【0027】増圧機5のピストン55を下降させるには、圧力ポンプ11を正方向に回転し、圧力計12で吐出圧をモニターしながら低圧側流体Aを増圧機5の一次側空間53aに送り込む。 これによって、ピストン55 が下降し、高圧側シリンダ54に入っている高圧側流体Bが高圧に加圧され送り出される。 また、二次空間53 bに入っていたガスは圧縮され、加圧器13に収容される。 【0028】増圧機5のピストン55を上昇させるには、圧力ポンプ11を逆方向に回転する。 これによって、一次側空間53aに充満している低圧側流体Aが抜き取られる。 この抜き取られるときの負圧でピストン5 5は上昇する。 さらに、二次空間53bの圧力が下がるので加圧器13に入っていた流体が、ガスに押されてがここに戻り、ピストン55を押し上げる。 以上の作用は、増圧機5'のピストン55'の上昇・下降についても、同様である。 【0029】増圧機5と増圧機5'とは、一方の増圧機における高圧側流体Bの圧縮行程が終了する少し前から他方の増圧機が圧縮を開始するようにし、高圧側流体B の圧力変動や脈動が生じないようにされる。 したがって、加圧器13は、概ね、一方の増圧機の二次側空間から圧縮されたガスを受け取り、他方の二次側空間へガスを供給する状態を反転させながら繰り返すことになる。 【0030】以上の構成にあっては、圧力ポンプ11, 11'と増圧機5,5'とは一本の管路のみで接続され、油圧回路が単純化される。 また、切換弁が不要となるので、切換時に発生する音が出なくなった。 また、配管長も短くなるので、作動油圧を高く設定することが可能となる。 さらに、圧力ポンプ11,11'は増圧機5,5'が必要とする量の低圧側流体Aのみを供給することになるので、リリーフ弁で余分の低圧側流体Aを戻す管路が不要となり、戻す管路に設けられていた熱交換機も不要となる。 【0031】増圧機5,5'の高圧側シリンダ54,5 4'は、並列に接続された第1逆止弁群14と第2逆止弁群15との両側に接続される。 第1逆止弁群14は、 2つの逆止弁14a,14aを有し、これらは共に、高圧側シリンダ54,54'からの高圧側流体Bの流れを許容する方向になっている。 そして、2つの逆止弁14 a,14aの中間に管路があり、この管路は噴流衝突部9に通じている。 すなわち、ピストン55,55'の下降している方の高圧側シリンダ54,54'から吐出された高圧側流体Bは、逆止弁14aを通過して噴流衝突部9に送られ、対向配置されたノズル91,91から高圧に加圧された高圧側流体Bを噴射して衝突させる。 【0032】第2逆止弁群15は、2つの逆止弁15 a,15aを有し、これらは共に、高圧側シリンダ5 4,54'からの高圧側流体Bの流れを阻止する方向となっている。 そして、2つの逆止弁15a,15aの中間に管路があり、この管路にタンク7から高圧側流体B がエアーポンプ8により供給される。 すなわち、高圧側流体Bが、ピストン55,55'の上昇している方の高圧側シリンダ54,54'に供給される。 第1逆止弁群14と第2逆止弁群15とをこのように配置し、管路を形成することによって、高圧側流体Bの流れる管路を簡略化することができる。 【0033】増圧機毎に圧力ポンプを配置したので、それぞれの圧力ポンプの作動力は自由に制御できることになり、圧力ポンプを切り換えての連続運転時における切り換時の圧力変動を最小限に制御することが可能となる。 また、圧力ポンプごとに圧力の設定が可能であるから、増圧機5,5'に加える低圧側流体Aの圧力を相違させることができる。 このことは、次の点から重要である。 増圧機の増圧比は、高圧側シリンダ54と低圧側シリンダ53の断面積の比により決定される。 しかしながら、これらは機械加工により製造されるもので、任意の2つの増圧機について、等しい断面積の比に製造するのは困難である。 正確に増圧比が等しくない2つの増圧機を使用すると、噴流衝突部9において、増圧機5が作動したときと、増圧機5'が作動したときとの圧力が相違することになる。 これに対し、本発明の実施例であれば、それぞれの低圧側流体Aの圧力を相違させることができるので、噴流衝突部9における圧力変動を小さく抑えることが可能になる。 【0034】さらに、従来は、一方の増圧機が故障しても、どちらが故障したのかの判断は簡単ではなかった。 しかし本発明では、増圧機ごとに油圧発生装置としてのポンプを保有させるので、高圧側のシールや逆止弁などに消耗や不具合が発生したとき、不具合のある増圧機を簡単に特定できることになる。 【0035】 【発明の効果】以上に説明したように本発明は、複数の増圧機と、増圧機に駆動用の低圧側流体を供給する複数のポンプとを有し、該ポンプの1つが上記複数の増圧機の1つに低圧側流体を供給し、他の増圧機には低圧側流体を供給しないように各増圧機とポンプとを結合した構成なので、 ポンプの無駄を排除してポンプを小型化することができる。 各ポンプの作動力を自由に制御できるので、ポンプを切り換えての連続運転時における切り換時の圧力変動を最小限に制御することが可能となる。 ポンプごとに圧力の設定が可能であるから、増圧機に加える低圧側流体の圧力を相違させ、各高圧側シリンダにおける高圧側流体の圧力を正確に一致させることができる。 一の増圧機が故障しても、どれが故障したのかの判断が簡単にできる。 【0036】上記増圧機が、低圧側シリンダと、高圧側シリンダと、該低圧側シリンダを一次側空間と二次側空間とに分割する低圧側ピストンと、該低圧側ピストンと一体に形成され上記高圧側シリンダ内で進退する高圧側ピストンとを有し、上記各ポンプが正転・逆転自在で、 上記各低圧側シリンダの一次側空間に接続され、各低圧側シリンダの二次側空間が1又は2以上の加圧器に接続されている構成とすれば、 配管を単純にすることができる。 切換弁が不要となるので、切換時の騒音を無くすことができる。 【0037】上記ポンプが上記低圧側流体内に設けられている構成とすれば、ポンプの小型化と防音化を図ることができる。 上記増圧機を2つとし、両増圧機の上記高圧側シリンダを、並列配置された第1逆止弁群と第2逆止弁群の両端に接続し、、上記第1逆止弁群は両高圧側シリンダからの流れを許容する方向に接続され、中間から高圧側流体を吐出可能とし、上記第2逆止弁群は両高圧側シリンダからの流れを阻止する方向に接続され、中間から高圧側流体の供給を可能にした構成とすれば、高圧側流体の管路も単純かすることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の増圧装置の構成を示す図である。 【図2】従来の増圧装置の構成を示す図である。 【図3】増圧機の構成を示す断面図である。 【符号の説明】 A 低圧側流体B 高圧側流体5,5' 増圧機10,10' タンク11,11' ポンプ13 加圧器14 第1逆止弁群15 第2逆止弁群53,53' 低圧側シリンダ54,54' 高圧側シリンダ55,55' ピストン55a,55a' 低圧側ピストン55b,55b' 高圧側ピストン53a,53a' 一次側空間53b,53b' 二次側空間 |