ベーンロータリ型空気ポンプ

申请号 JP2005506946 申请日 2004-06-07 公开(公告)号 JPWO2004111460A1 公开(公告)日 2006-07-27
申请人 松下電器産業株式会社; 发明人 達也 中本; 達也 中本; 澤井 清; 澤井  清; 淳 作田; 作田  淳;
摘要 本発明は、ポンプ空間(18)に臨む金属材料部に表面処理を施すことで、ポンプ空間(18)内に湿度の高い空気が流入した場合でも、金属表面への 水 分の付着が妨げられて錆の発生を防止できるようにしたものである。自己潤滑性を有する材質によりなる板状のベーン(12)を用いたベーンロータリ型空気ポンプにおいて、ロータ(8)とフロントプレート(14)の間及びロータ(8)とエンドプレート(16)の間は 接触 摺動しないよう隙間を設け、ポンプ空間(18)に臨む金属材料部にはアルマイト被膜、ニッケルリンめっき被膜、テフロン被膜のうち、1種類又はこれらを組み合わせた表面処理を施す。
权利要求
  • ポンプ機構部と駆動モータとが並設され、軸心から偏心して形成された円筒状内壁を有するシリンダと、該シリンダ内に配置され複数のベーン溝を有する円筒状のロータと、該ロータと一体的に回転する回転軸と、前記複数のベーン溝に摺動自在に挿入され自己潤滑性を有する材質よりなる板状のベーンと、前記ロータと前記ベーンを挟み込むように前記シリンダの両端面に取り付けられたフロントプレートとエンドプレートとにより前記ポンプ機構部を構成して、該ポンプ機構部に複数のポンプ空間を形成し、前記回転軸を前記駆動モータにより駆動することにより前記ポンプ空間の容積を変化させるようにしたオイルレスのベーンロータリ型空気ポンプであって、
    前記ロータと前記フロントプレートとの間及び前記ロータと前記エンドプレートとの間は接触摺動しないようにそれぞれ隙間を設け、前記シリンダ、前記ロータ、前記フロントプレート、前記エンドプレートの少なくとも一つに金属材料を使用し、少なくとも前記ポンプ空間に臨む金属材料部に表面処理を施したことを特徴とするベーンロータリ型空気ポンプ。
  • アルマイト被膜、ニッケルリンめっき被膜、テフロン被膜のうち、1種類もしくはこれらを組み合わせた表面処理を前記金属材料部に施してなる請求項1に記載のベーンロータリ型空気ポンプ。
  • テフロン被膜による表面処理を前記フロントプレート及び前記エンドプレートに施してなる請求項1に記載のベーンロータリ型空気ポンプ。
  • 前記ロータをアルミニウムで形成し、アルマイト被膜による表面処理を前記ロータに施してなる請求項1に記載のベーンロータリ型空気ポンプ。
  • ニッケルリンめっき被膜による表面処理を前記シリンダ内面に施してなる請求項1に記載のベーンロータリ型空気ポンプ。
  • ラッピング処理を前記表面処理部に施してなる請求項1に記載のベーンロータリ型空気ポンプ。
  • 说明书全文

    本発明は、燃料電池を用いたモバイル用情報端末機器の空気供給装置に使用される、潤滑油を用いない所謂オイルレスのベーンロータリ型空気ポンプの構成に関するものである。

    図4及び図5は、従来のオイルレスのベーンロータリ型ポンプを示しており、両端がフロントプレート111及びエンドプレート112で閉鎖された円筒状内壁を有するシリンダ103を備えている。 シリンダ103の内部には、外周の一部がシリンダ103の内壁と小隙間を形成するロータ107が配設されている。
    ロータ107には回転軸110が一体的に取り付けられており、回転軸110は、フロントプレート111に配設されたボール軸受け116と、エンドプレート112に配設されたボール軸受け118とにより回転自在に支持されている。 また、ロータ107には複数のベーン溝108が形成され、各ベーン溝108に自己潤滑性を有する材質よりなる板状のベーン109の一端が摺動自在に挿入されている。 ベーン109は、シリンダ103、ロータ107、フロントプレート111、エンドプレート112とともにポンプ空間104を形成している。 さらに、シリンダ103には、ポンプ空間104と連通する吸入ポート113と吐出ポート114が一体的に形成されている。
    上記構成のベーンロータリ型ポンプにおいて、電動モータ等の駆動源(図示せず)からの動が回転軸110に伝達されると、回転軸110とともにロータ107が一体的に回転し、吸入ポート113からポンプ空間104内に流体が吸入される。 吸入された流体はポンプ空間104内で圧縮された後、吐出ポート114から吐出される(例えば、特許文献1参照。)。
    ベーン109に自己潤滑性を有する材質を使用する場合、ベーン109との摺動部であるシリンダ103、ロータ107、フロントプレート111、エンドプレート112は、金属材料で形成されるのが一般的である。
    また、従来のベーン型圧縮機においては、金属材料に各種の表面処理が施されている(例えば、特許文献2−4参照。)。
    しかしながら、それらはいずれもオイル潤滑が前提であり、表面処理の目的は耐摩耗性の向上である。

    特開平6−185484号公報

    特開平2−136586号公報

    特開昭64−73185号公報

    実開昭63−28891号公報

    上述した従来のベーンロータリ型ポンプは、ポンプ空間104内に湿度の高い空気が流入し、長時間ポンプを停止すると、ベーン溝108内で発生した錆によってベーン109がベーン溝108内で固着し、摺動不能になる場合がある。 ベーン109が摺動不能になると、シリンダ103にベーン109が衝突してロータ107が回転不能となり、ポンプの運転が不可能になる。 また、ポンプの運転が可能であっても、ポンプ空間104に臨むフロントプレート111、エンドプレート112、シリンダ103、ロータ107に発生した錆が抵抗となって運転周波数が低下する。 その結果、吐出流量が減少し、モータへの入力が増加するという問題があった。
    また、防錆対策として、ポンプ空間104に臨むフロントプレート111、エンドプレート112、シリンダ103、ロータ107に表面処理を施した場合、シリンダ103の表面処理の種類によっては、表面処理後の表面が粗くなり、シリンダ103の内面とベーン109の先端部の摺動音が、表面処理前に比べて大きくなるという問題もあった。
    また、従来のベーン型圧縮機においては、仮に表面処理が摺動によって摩滅して下地が露出した場合においても、オイルが介在するため焼き付きは起こらない。 また、基本的には閉じたサイクル内で使用され、外部から分が混入することもないので、露出した下地が腐食することもない。 これに対しオイルレスのポンプでは、表面処理が摩滅した時点で露出した下地の腐食が起こるという問題があった。
    本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプ空間内に発生する錆を防止し、湿度の高い空気が流入した場合でも性能を低下させることなく運転できるとともに騒音を抑えたベーンロータリ型空気ポンプを提供することを目的としている。

    上記目的を達成するため、本発明は、ポンプ機構部と駆動モータとが並設され、軸心から偏心して形成された円筒状内壁を有するシリンダと、該シリンダ内に配置され複数のベーン溝を有する円筒状のロータと、該ロータと一体的に回転する回転軸と、前記複数のベーン溝に摺動自在に挿入され自己潤滑性を有する材質よりなる板状のベーンと、前記ロータと前記ベーンを挟み込むように前記シリンダの両端面に取り付けられたフロントプレートとエンドプレートとにより前記ポンプ機構部を構成して、該ポンプ機構部に複数のポンプ空間を形成し、前記回転軸を前記駆動モータにより駆動することにより前記ポンプ空間の容積を変化させるようにしたオイルレスのベーンロータリ型空気ポンプであって、前記ロータと前記フロントプレート� ��の間及び前記ロータと前記エンドプレートとの間は接触摺動しないようにそれぞれ隙間を設け、前記シリンダ、前記ロータ、前記フロントプレート、前記エンドプレートの少なくとも一つに金属材料を使用し、少なくとも前記ポンプ空間に臨む金属材料部に表面処理を施したことを特徴とする。
    本発明によれば、ポンプ空間に臨む金属材料部に表面処理を施すことで、ポンプ空間内に湿度の高い空気が流入した場合でも、金属表面への水分の付着が妨げられて錆の発生を防ぎ、ポンプロックや運転周波数低下を防止することができる。
    また、アルマイト被膜、ニッケルリンめっき被膜、テフロン被膜のうち、1種類もしくはこれらを組み合わせた表面処理を前記金属材料部に施すと、これらの表面処理は、すずめっきやDLC(Diamond Like Carbon:主に炭素と水素で構成される非晶質のカーボン硬質膜)による表面処理に比べて、ベーンとの摺動による被膜の摩滅がはるかに少なく、長時間使用しても被膜が残存するため、錆の発生を防止することができる。
    さらに、自己潤滑性に優れたテフロン被膜をフロントプレート及びエンドプレートのポンプ空間に臨んだ面に施すと、ロータ端面とフロントプレート及びエンドプレート間の摩擦係数が低減し、運転周波数や吐出流量の低下を防ぐことができ、入力を低減しながら、錆の発生を防止することができる。
    また、ロータをアルミ素材で形成した上で、被膜が硬く摩滅が少ないアルマイト処理をロータに施すようにしたので、コスト面で有利であるばかりでなく、長時間の運転でも被膜が残存し、錆の発生を防止することができる。
    さらに、シリンダ内面にニッケルリンめっき被膜による表面処理を施すと、処理後の表面が滑らかになり、ラッピング処理を表面処理部に施すと、シリンダ内面の表面粗さが改善されるので、騒音発生の大きな割合を占めるベーン先端部とシリンダ内面の摺動音を低減することができる。

    図1は、本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプの縦断面図である。
    図2は、図1のベーンロータリ型空気ポンプの線II−IIに沿った断面図である。
    図3は、シリンダ内面処理の種類と騒音値、表面粗さ、表面硬さの関係を示すグラフである。
    図4は、従来のベーンロータリ型ポンプの縦断面図である。
    図5は、図4の従来のベーンロータリ型ポンプの線V−Vに沿った断面図である。

    以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
    図1及び図2は、本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプを示しており、ポンプ機構部2と直流モータ等の駆動モータ4とを並設して構成している。
    ポンプ機構部2には、軸心から偏心して形成された円筒状内壁を有するアルミニウム等の金属材料製シリンダ6が設けられており、シリンダ6内には、円筒状のロータ8が配置されている。 ロータ8は、その中心軸方向に延びる複数のベーン溝10を有し、これらのベーン溝10には自己潤滑性を有するカーボン等の材質よりなる板状のベーン12が摺動自在に挿入されており、潤滑油は使用されていない。 シリンダ6の両端面には、フロントプレート14とエンドプレート16がロータ8とベーン12を挟み込むように配置されて複数のポンプ空間18を形成している。 なお、フロントプレート14とエンドプレート16もアルミニウム等の金属材料製である。 これらの金属材料部がポンプ空間18に臨む部分には、後で詳細に述べる表面処理を施している。
    また、ロータ8には、エンドプレート16の反対側に配置された駆動モータ4のモータシャフトを兼ねる回転軸20が連結されており、回転軸20はシリンダ6の軸心上に延在し、フロントプレート14に圧入されたボール軸受け22及びエンドプレート16に圧入されたボール軸受け24により回転自在に支持されている。
    さらに、本発明の実施の形態においては、オイルレスの構成とするために、自己潤滑性材料からなるベーン12を用い、ロータ8とフロントプレート14の間及びロータ8とエンドプレート16の間にそれぞれ隙間を設けている。 具体的には、それぞれの隙間が10μm〜30μm程度となるように、ロータ8と回転軸20は固定されている。 固定方法としては圧入、焼きばめ、接着等がある。 また、ロータ8を一方向に保持する付勢手段を設けてもよい。 なお、それぞれの軸受けには潤滑性に優れたグリス封入型ベアリングが用いられる。
    さらに、フロントプレート14には、吸入ポート26と吐出ポート28が形成されており、吐出ポート28には吐出口30が設けられている。 また、エンドプレート16には、吸入ポート26と対向する位置に凹部32が形成されており、吸入ポート26と凹部32は、シリンダ6の軸方向に形成された貫通穴34を介して互いに連通するとともに、貫通穴34は、シリンダ6の中央部に形成された連通路36を介してポンプ空間18と連通している。
    一方、駆動モータ4は、ロータ38と、ロータ38の外周部に対向して配置されたステータ40とを有し、モータシャフトを兼ねる回転軸20は軸受け42及び軸受け44により回転自在に支持されている。
    上記構成の本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプにおいて、ステータ40に給電されると、ロータ38とステータ40間の磁気作用によりロータ38は回転トルクを得て回転運動を行い、ロータ38と一体的に構成されたモータシャフトを兼ねる回転軸20を介してポンプ機構部2に回転力が伝達される。
    ロータ8は回転軸20に連結されていることから、ロータ8は回転軸20とともに一体的に回転し、ロータ8のベーン溝10に挿入されたベーン12が遠心力によりシリンダ6の内面に向かって飛び出すことで、ベーン12の先端部がシリンダ6の内面に当接し、ポンプ空間18を形成する。 このとき、フロントプレート14に形成された吸入ポート26より吸入された空気は、ポンプ空間18に直接流入する経路と、シリンダ6に形成された貫通穴34を通じてエンドプレート16に形成された凹部32からポンプ空間18に流入する経路と、貫通穴34を通じてシリンダ6の中央部に形成された連通路36からポンプ空間18に流入する経路の三つの経路を介してポンプ空間18に流入する。
    ポンプ空間18に流入した空気は、ロータ8の回転にともないポンプ空間18内で圧縮され、吐出ポート28を経て吐出口30より吐出される。 すなわち、ベーンロータリ型空気ポンプにおいては、複数のポンプ空間18の容積変化(伸縮作用)により空気を圧縮している。
    ここで、本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプにおいては、ロータ8とフロントプレート14の間及びロータ8とエンドプレート16の間にそれぞれ隙間を設けているため、ロータ8はフロントプレート14やエンドプレート16と接触摺動しないので、フロントプレート14やエンドプレート16に施した表面処理が摩滅することはない。
    結果として摺動するのは、ベーン12とフロントプレート14、ベーン12とエンドプレート16、ベーン12とロータ8、ベーン8とシリンダ6の内面となり、いずれにおいても自己潤滑性材質からなるベーン12自身が摩耗することになるので、ベーン12の摺動相手となる部品に施した表面処理を摩滅させることはない。 すなわち、外部から水分が混入した場合においても、それぞれの表面処理によって部品が錆びることはなく、長期にわたり安定した性能を確保することができる。
    また、フロントプレート14及びエンドプレート16のポンプ空間18に臨む面に、自己潤滑性に優れたテフロン被膜による表面処理が施されており、万一、異常な負荷等により、ロータ8の端面及びベーン12が、一時的にもフロントプレート14及びエンドプレート16のポンプ空間18に臨む面に接触しても、ロータ8の端面とフロントプレート14及びエンドプレート16間の摩擦係数は低減する。 したがって、運転周波数の低下や、これに伴う吐出流量の低下が防止され、モータ入力を低減しながら、錆の発生を防止することができる。
    次に、各部品の表面処理について詳細に説明する。 本発明の空気ポンプのポンプ機構部2では、接触摺動するのはベーン12のみとなるので、表面処理の種類に関しては、ベーン12の側面(フロントプレート14及びエンドプレート16との対向面)、ベーン溝10との接触面、先端部のそれぞれの摺動状態に適したものを選定する。 選定の基準のひとつとしては運転時の騒音レベルがあり、本実施の形態では騒音レベルによる比較を行って選定した。
    まず、ベーン12の側面の摺動に関しては、フロントプレート14あるいはエンドプレート16との間にクリアランスがあるため、運転時にベーン12が軸方向に移動して、衝突している可能性が高い。 そのため、ベーン12とフロントプレート14又はエンドプレート16との微少衝突音を低減する必要があり、表面処理の種類としては比較的硬度の低いもの、すなわち吸音効果の高いものが望ましい。 そこでフロントプレート14及びエンドプレート16には、テフロン被膜による表面処理を施すのがよい。
    また、ロータ8はアルミニウム製で、その表面にはアルマイト被膜が施されている。 ベーン溝10とベーン12にクリアランスはあるものの、ロータ8は一方向に回転し、更にベーン12にはポンプ空間18の圧力が働くので、ベーン12はベーン溝10内で傾いた状態で摺動している。 ベーン12は回転とともにベーン溝10内を出入りするが、ベーン溝10の開口端エッジ部は常に同じポイントでベーン10と摺動する。 すなわち、ベーン溝10の接触面に関しては、比較的硬度の高いもの、すなわち耐摩耗性に優れているものが望ましい。 そこでロータ8には、アルマイト被膜による表面処理を施すのがよい。
    アルマイト被膜は、ベーン溝10内にも均一に被膜を形成することが可能で、被膜が硬くて摩滅が少ない。 また、アルマイト被膜は低コストで処理可能なため、価格を抑えることができ、長時間の運転でも被膜が残存するため、長期間にわたり錆の発生を防止することができる。
    最後に、ベーン12の先端面に関しては、ベーン12に働く遠心力と背圧力のため、シリンダ6の内面には大きな荷重がかかる。 そこで耐摩耗性を重視した表面処理が望ましい。 しかしながら、一方でシリンダ6の内面の形状や表面粗さが悪いと、ベーン12の摺動性が乱れるベーンジャンピングが発生し、騒音増大を引き起こしてしまう。 すなわち、表面粗さも重視する必要がある。 これらを両立したものとして、ニッケルめっき被膜による表面処理をシリンダ6の内面に施すのがよい。
    図3に示した騒音値は、シリンダ6に各種表面処理を行ったときの測定結果であり、シリンダ6の内面処理の種類と、騒音値、表面粗さ、表面硬さの関係を示している。 なお、騒音値に大きく影響するのはシリンダ内面の表面処理であることは実験的に把握済みである。 下段のグラフは、処理後の表面の硬さをショア硬さで示しており、上段のグラフは、ポンプ運転時の騒音を棒グラフで、処理後の表面の平均表面粗さを折れ線グラフで示している。
    騒音値は、アルマイト被膜及びテフロン被膜に比べて、ニッケルりん被膜が低くなっている。 平均表面粗さに関しても、ニッケルりんめっき被膜は、アルマイト被膜やテフロン被膜に比べて小さい値となっている。 また、騒音値の高いアルマイト被膜やテフロン被膜は、平均表面粗さも大きな値となっている。 さらに、騒音値と表面硬さに相関性はないため、騒音の原因は、被膜の表面粗さであることがわかる。
    そこで、本発明においては、シリンダ6の内面に、ニッケルりん被膜による表面処理を施すことで、錆の発生を防止している。 また、ニッケルりん被膜は、処理後の被膜表面が滑らかなため、ロータ8の回転にともなうベーン12先端とシリンダ6内面の摺動音を低減することができる。
    なお、本実施の形態において、シリンダ6の内面はニッケルりん被膜による表面処理後にラッピング処理を施したが、これにより表面粗さが向上するため、更なる低騒音化を図ることができる。 また、フロントプレート14及びエンドプレート16に施したテフロン被膜による表面処理、ロータ8に施したアルマイト被膜による表面処理に関しても、同様にラッピング処理を施すことで表面粗さは向上するので、騒音低減には効果的である。

    本発明は、燃料電池を用いたモバイル用情報端末機器の空気供給装置に使用される、潤滑油を用いない所謂オイルレスのベーンロータリ型空気ポンプの構成に関する。

    図4及び図5は、従来のオイルレスのベーンロータリ型ポンプを示しており、両端がフロントプレート111及びエンドプレート112で閉鎖された円筒状内壁を有するシリンダ103を備えている。 シリンダ103の内部には、外周の一部がシリンダ103の内壁と小隙間を形成するロータ107が配設されている。

    ロータ107には回転軸110が一体的に取り付けられており、回転軸110は、フロントプレート111に配設されたボール軸受け116と、エンドプレート112に配設されたボール軸受け118とにより回転自在に支持されている。 また、ロータ107には複数のベーン溝108が形成され、各ベーン溝108に自己潤滑性を有する材質よりなる板状のベーン109の一端が摺動自在に挿入されている。 ベーン109は、シリンダ103、ロータ107、フロントプレート111、エンドプレート112とともにポンプ空間104を形成している。 さらに、シリンダ103には、ポンプ空間104と連通する吸入ポート113と吐出ポート114が一体的に形成されている。

    上記構成のベーンロータリ型ポンプにおいて、電動モータ等の駆動源(図示せず)からの動力が回転軸110に伝達されると、回転軸110とともにロータ107が一体的に回転し、吸入ポート113からポンプ空間104内に流体が吸入される。 吸入された流体はポンプ空間104内で圧縮された後、吐出ポート114から吐出される(例えば、特許文献1参照。)。

    ベーン109に自己潤滑性を有する材質を使用する場合、ベーン109との摺動部であるシリンダ103、ロータ107、フロントプレート111、エンドプレート112は、金属材料で形成されるのが一般的である。

    また、従来のベーン型圧縮機においては、金属材料に各種の表面処理が施されている(例えば、特許文献2−4参照。)。

    特開平6−185484号公報

    特開平2−136586号公報

    特開昭64−73185号公報

    実開昭63−28891号公報

    しかしながら、それらはいずれもオイル潤滑が前提であり、表面処理の目的は耐摩耗性の向上である。

    上述した従来のベーンロータリ型ポンプは、ポンプ空間104内に湿度の高い空気が流入し、長時間ポンプを停止すると、ベーン溝108内で発生した錆によってベーン109がベーン溝108内で固着し、摺動不能になる場合がある。 ベーン109が摺動不能になると、シリンダ103にベーン109が衝突してロータ107が回転不能となり、ポンプの運転が不可能になる。 また、ポンプの運転が可能であっても、ポンプ空間104に臨むフロントプレート111、エンドプレート112、シリンダ103、ロータ107に発生した錆が抵抗となって運転周波数が低下する。 その結果、吐出流量が減少し、モータへの入力が増加するという問題があった。

    また、防錆対策として、ポンプ空間104に臨むフロントプレート111、エンドプレート112、シリンダ103、ロータ107に表面処理を施した場合、シリンダ103の表面処理の種類によっては、表面処理後の表面が粗くなり、シリンダ103の内面とベーン109の先端部の摺動音が、表面処理前に比べて大きくなるという問題もあった。

    また、従来のベーン型圧縮機においては、仮に表面処理が摺動によって摩滅して下地が露出した場合においても、オイルが介在するため焼き付きは起こらない。 また、基本的には閉じたサイクル内で使用され、外部から水分が混入することもないので、露出した下地が腐食することもない。 これに対しオイルレスのポンプでは、表面処理が摩滅した時点で露出した下地の腐食が起こるという問題があった。

    本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプ空間内に発生する錆を防止し、湿度の高い空気が流入した場合でも性能を低下させることなく運転できるとともに騒音を抑えたベーンロータリ型空気ポンプを提供することを目的としている。

    上記目的を達成するために、本発明は、ポンプ機構部と駆動モータとが並設され、軸心から偏心して形成された円筒状内壁を有するシリンダと、該シリンダ内に配置され複数のベーン溝を有する円筒状のロータと、該ロータと一体的に回転する回転軸と、前記複数のベーン溝に摺動自在に挿入され自己潤滑性を有する材質よりなる板状のベーンと、前記ロータと前記ベーンを挟み込むように前記シリンダの両端面に取り付けられたフロントプレートとエンドプレートとにより前記ポンプ機構部を構成して、該ポンプ機構部に複数のポンプ空間を形成し、前記回転軸を前記駆動モータにより駆動することにより前記ポンプ空間の容積を変化させるようにしたオイルレスのベーンロータリ型空気ポンプであって、前記ロータと前記フロントプレー� ��との間及び前記ロータと前記エンドプレートとの間は接触摺動しないようにそれぞれ隙間を設け、前記シリンダ、前記ロータ、前記フロントプレート、前記エンドプレートの少なくとも一つに金属材料を使用し、少なくとも前記ポンプ空間に臨む金属材料部に表面処理を施したことを特徴とする。

    また、アルマイト被膜、ニッケルリンめっき被膜、テフロン被膜のうち、1種類もしくはこれらを組み合わせた表面処理を前記金属材料部に施すのが好ましい。

    さらに、テフロン被膜による表面処理を前記フロントプレート及び前記エンドプレートに施したり、前記ロータをアルミニウムで形成し、アルマイト被膜による表面処理を前記ロータに施したり、あるいは、ニッケルリンめっき被膜による表面処理を前記シリンダ内面に施すのがよい。

    ラッピング処理を前記表面処理部に施すと、さらに好ましい。

    本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
    本発明によれば、ポンプ空間に臨む金属材料部に表面処理を施すことで、ポンプ空間内に湿度の高い空気が流入した場合でも、金属表面への水分の付着が妨げられて錆の発生を防ぎ、ポンプロックや運転周波数低下を防止することができる。

    また、アルマイト被膜、ニッケルリンめっき被膜、テフロン被膜のうち、1種類もしくはこれらを組み合わせた表面処理を前記金属材料部に施すと、これらの表面処理は、すずめっきやDLC(Diamond Like Carbon:主に炭素と水素で構成される非晶質のカーボン硬質膜)による表面処理に比べて、ベーンとの摺動による被膜の摩滅がはるかに少なく、長時間使用しても被膜が残存するため、錆の発生を防止することができる。

    さらに、自己潤滑性に優れたテフロン被膜をフロントプレート及びエンドプレートのポンプ空間に臨んだ面に施すと、ロータ端面とフロントプレート及びエンドプレート間の摩擦係数が低減し、運転周波数や吐出流量の低下を防ぐことができ、入力を低減しながら、錆の発生を防止することができる。

    また、ロータをアルミ素材で形成した上で、被膜が硬く摩滅が少ないアルマイト処理をロータに施すようにしたので、コスト面で有利であるばかりでなく、長時間の運転でも被膜が残存し、錆の発生を防止することができる。

    さらに、シリンダ内面にニッケルリンめっき被膜による表面処理を施すと、処理後の表面が滑らかになり、ラッピング処理を表面処理部に施すと、シリンダ内面の表面粗さが改善されるので、騒音発生の大きな割合を占めるベーン先端部とシリンダ内面の摺動音を低減することができる。

    以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
    図1及び図2は、本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプを示しており、ポンプ機構部2と直流モータ等の駆動モータ4とを並設して構成している。

    ポンプ機構部2には、軸心から偏心して形成された円筒状内壁を有するアルミニウム等の金属材料製シリンダ6が設けられており、シリンダ6内には、円筒状のロータ8が配置されている。 ロータ8は、その中心軸方向に延びる複数のベーン溝10を有し、これらのベーン溝10には自己潤滑性を有するカーボン等の材質よりなる板状のベーン12が摺動自在に挿入されており、潤滑油は使用されていない。 シリンダ6の両端面には、フロントプレート14とエンドプレート16がロータ8とベーン12を挟み込むように配置されて複数のポンプ空間18を形成している。 なお、フロントプレート14とエンドプレート16もアルミニウム等の金属材料製である。 これらの金属材料部がポンプ空間18に臨む部分には、後で詳細に述べる表面処理を施している。

    また、ロータ8には、エンドプレート16の反対側に配置された駆動モータ4のモータシャフトを兼ねる回転軸20が連結されており、回転軸20はシリンダ6の軸心上に延在し、フロントプレート14に圧入されたボール軸受け22及びエンドプレート16に圧入されたボール軸受け24により回転自在に支持されている。

    さらに、本発明の実施の形態においては、オイルレスの構成とするために、自己潤滑性材料からなるベーン12を用い、ロータ8とフロントプレート14の間及びロータ8とエンドプレート16の間にそれぞれ隙間を設けている。 具体的には、それぞれの隙間が10μm〜30μm程度となるように、ロータ8と回転軸20は固定されている。 固定方法としては圧入、焼きばめ、接着等がある。 また、ロータ8を一方向に保持する付勢手段を設けてもよい。 なお、それぞれの軸受けには潤滑性に優れたグリス封入型ベアリングが用いられる。

    さらに、フロントプレート14には、吸入ポート26と吐出ポート28が形成されており、吐出ポート28には吐出口30が設けられている。 また、エンドプレート16には、吸入ポート26と対向する位置に凹部32が形成されており、吸入ポート26と凹部32は、シリンダ6の軸方向に形成された貫通穴34を介して互いに連通するとともに、貫通穴34は、シリンダ6の中央部に形成された連通路36を介してポンプ空間18と連通している。

    一方、駆動モータ4は、ロータ38と、ロータ38の外周部に対向して配置されたステータ40とを有し、モータシャフトを兼ねる回転軸20は軸受け42及び軸受け44により回転自在に支持されている。

    上記構成の本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプにおいて、ステータ40に給電されると、ロータ38とステータ40間の磁気作用によりロータ38は回転トルクを得て回転運動を行い、ロータ38と一体的に構成されたモータシャフトを兼ねる回転軸20を介してポンプ機構部2に回転力が伝達される。

    ロータ8は回転軸20に連結されていることから、ロータ8は回転軸20とともに一体的に回転し、ロータ8のベーン溝10に挿入されたベーン12が遠心力によりシリンダ6の内面に向かって飛び出すことで、ベーン12の先端部がシリンダ6の内面に当接し、ポンプ空間18を形成する。 このとき、フロントプレート14に形成された吸入ポート26より吸入された空気は、ポンプ空間18に直接流入する経路と、シリンダ6に形成された貫通穴34を通じてエンドプレート16に形成された凹部32からポンプ空間18に流入する経路と、貫通穴34を通じてシリンダ6の中央部に形成された連通路36からポンプ空間18に流入する経路の三つの経路を介してポンプ空間18に流入する。

    ポンプ空間18に流入した空気は、ロータ8の回転にともないポンプ空間18内で圧縮され、吐出ポート28を経て吐出口30より吐出される。 すなわち、ベーンロータリ型空気ポンプにおいては、複数のポンプ空間18の容積変化(伸縮作用)により空気を圧縮している。

    ここで、本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプにおいては、ロータ8とフロントプレート14の間及びロータ8とエンドプレート16の間にそれぞれ隙間を設けているため、ロータ8はフロントプレート14やエンドプレート16と接触摺動しないので、フロントプレート14やエンドプレート16に施した表面処理が摩滅することはない。

    結果として摺動するのは、ベーン12とフロントプレート14、ベーン12とエンドプレート16、ベーン12とロータ8、ベーン8とシリンダ6の内面となり、いずれにおいても自己潤滑性材質からなるベーン12自身が摩耗することになるので、ベーン12の摺動相手となる部品に施した表面処理を摩滅させることはない。 すなわち、外部から水分が混入した場合においても、それぞれの表面処理によって部品が錆びることはなく、長期にわたり安定した性能を確保することができる。

    また、フロントプレート14及びエンドプレート16のポンプ空間18に臨む面に、自己潤滑性に優れたテフロン被膜による表面処理が施されており、万一、異常な負荷等により、ロータ8の端面及びベーン12が、一時的にもフロントプレート14及びエンドプレート16のポンプ空間18に臨む面に接触しても、ロータ8の端面とフロントプレート14及びエンドプレート16間の摩擦係数は低減する。 したがって、運転周波数の低下や、これに伴う吐出流量の低下が防止され、モータ入力を低減しながら、錆の発生を防止することができる。

    次に、各部品の表面処理について詳細に説明する。 本発明の空気ポンプのポンプ機構部2では、接触摺動するのはベーン12のみとなるので、表面処理の種類に関しては、ベーン12の側面(フロントプレート14及びエンドプレート16との対向面)、ベーン溝10との接触面、先端部のそれぞれの摺動状態に適したものを選定する。 選定の基準のひとつとしては運転時の騒音レベルがあり、本実施の形態では騒音レベルによる比較を行って選定した。

    まず、ベーン12の側面の摺動に関しては、フロントプレート14あるいはエンドプレート16との間にクリアランスがあるため、運転時にベーン12が軸方向に移動して、衝突している可能性が高い。 そのため、ベーン12とフロントプレート14又はエンドプレート16との微少衝突音を低減する必要があり、表面処理の種類としては比較的硬度の低いもの、すなわち吸音効果の高いものが望ましい。 そこでフロントプレート14及びエンドプレート16には、テフロン被膜による表面処理を施すのがよい。

    また、ロータ8はアルミニウム製で、その表面にはアルマイト被膜が施されている。 ベーン溝10とベーン12にクリアランスはあるものの、ロータ8は一方向に回転し、更にベーン12にはポンプ空間18の圧力が働くので、ベーン12はベーン溝10内で傾いた状態で摺動している。 ベーン12は回転とともにベーン溝10内を出入りするが、ベーン溝10の開口端エッジ部は常に同じポイントでベーン10と摺動する。 すなわち、ベーン溝10の接触面に関しては、比較的硬度の高いもの、すなわち耐摩耗性に優れているものが望ましい。 そこでロータ8には、アルマイト被膜による表面処理を施すのがよい。

    アルマイト被膜は、ベーン溝10内にも均一に被膜を形成することが可能で、被膜が硬くて摩滅が少ない。 また、アルマイト被膜は低コストで処理可能なため、価格を抑えることができ、長時間の運転でも被膜が残存するため、長期間にわたり錆の発生を防止することができる。

    最後に、ベーン12の先端面に関しては、ベーン12に働く遠心力と背圧力のため、シリンダ6の内面には大きな荷重がかかる。 そこで耐摩耗性を重視した表面処理が望ましい。 しかしながら、一方でシリンダ6の内面の形状や表面粗さが悪いと、ベーン12の摺動性が乱れるベーンジャンピングが発生し、騒音増大を引き起こしてしまう。 すなわち、表面粗さも重視する必要がある。 これらを両立したものとして、ニッケルめっき被膜による表面処理をシリンダ6の内面に施すのがよい。

    図3に示した騒音値は、シリンダ6に各種表面処理を行ったときの測定結果であり、シリンダ6の内面処理の種類と、騒音値、表面粗さ、表面硬さの関係を示している。 なお、騒音値に大きく影響するのはシリンダ内面の表面処理であることは実験的に把握済みである。 下段のグラフは、処理後の表面の硬さをショア硬さで示しており、上段のグラフは、ポンプ運転時の騒音を棒グラフで、処理後の表面の平均表面粗さを折れ線グラフで示している。

    騒音値は、アルマイト被膜及びテフロン被膜に比べて、ニッケルりん被膜が低くなっている。 平均表面粗さに関しても、ニッケルりんめっき被膜は、アルマイト被膜やテフロン被膜に比べて小さい値となっている。 また、騒音値の高いアルマイト被膜やテフロン被膜は、平均表面粗さも大きな値となっている。 さらに、騒音値と表面硬さに相関性はないため、騒音の原因は、被膜の表面粗さであることがわかる。

    そこで、本発明においては、シリンダ6の内面に、ニッケルりん被膜による表面処理を施すことで、錆の発生を防止している。 また、ニッケルりん被膜は、処理後の被膜表面が滑らかなため、ロータ8の回転にともなうベーン12先端とシリンダ6内面の摺動音を低減することができる。

    なお、本実施の形態において、シリンダ6の内面はニッケルりん被膜による表面処理後にラッピング処理を施したが、これにより表面粗さが向上するため、更なる低騒音化を図ることができる。 また、フロントプレート14及びエンドプレート16に施したテフロン被膜による表面処理、ロータ8に施したアルマイト被膜による表面処理に関しても、同様にラッピング処理を施すことで表面粗さは向上するので、騒音低減には効果的である。

    本発明にかかるベーンロータリ型空気ポンプの縦断面図

    図1のベーンロータリ型空気ポンプの線II−IIに沿った断面図

    シリンダ内面処理の種類と騒音値、表面粗さ、表面硬さの関係を示すグラフ

    従来のベーンロータリ型ポンプの縦断面図

    図4の従来のベーンロータリ型ポンプの線V−Vに沿った断面図

    符号の説明

    2 ポンプ機構部、 4 駆動モータ、 6 シリンダ、 8 ロータ、
    10 ベーン溝、 12 ベーン、 14 フロントプレート、
    16 エンドプレート、 18 ポンプ空間、 20 回転軸、
    22,24 ボール軸受け、 26 吸入ポート、 28 吐出ポート、
    30 吐出口、 32 凹部、 34 貫通穴、 36 連通路、 38 ロータ、
    40 ステータ、 42,44 軸受け。

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