【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はタービンエンジン部品の分野に関する。 特に、本発明は、超合金溶接(用) 組成物および超合金溶接組成物を用いて修復された部品に関する。 【0002】 【従来の技術】ガスタービンエンジンの効率は、タービンのブレードまたはバケットとエンジンのタービンセクションのシュラウドとの間の燃焼ガスの漏れの量または程度にある程度依存する。 その間隙を最小にするために先端は通常正確な機械加工にかけられる。 しかし、機械加工公差、部品間の熱膨張の差、および動的作用のため、通常先端とシュラウドとの間である程度の摩擦が起こる。 【0003】たとえば実際に長時間使用した後などには、摩擦接触によりブレードの母材が露出し、通常ブレードの腐食および/または酸化が起こる。 広範囲の腐食または酸化により、ブレードとシュラウドとの間の漏れが増大し、その結果性能と効率が損なわれる。 ブレードやバケットのようなタービン部品はかなり高価であるため、交換に代わる費用効果的な選択として摩耗した部品を修復することが一般的になって来ている。 公知の修復技術では、溶接可能な超合金組成物で形成された溶接ワイヤを「ビルドアップ(肉盛り)」プロセスに用いてブレードをその当初のまたは当初に近い幾何学的形状に再生する。 たとえば、タングステンアーク溶接プロセスをニッケル基超合金ブレードの先端領域に多数回施すことによってニッケル基超合金溶接ワイヤを用いることができる。 溶接の後先端領域を機械加工する。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】溶接修復用合金が多数市販されてはいるが、さらに改良された溶接用合金、特にニッケル基超合金部品用のニッケル基溶接用合金が相変わらず求められている。 この点に関し、本発明者らは、室温で(すなわち、修復する部品をあらかじめ加熱することなく)溶接することが可能な優れた延性、良好な耐酸化性、および必要な高温引張強さとクリープ耐性を有するニッケル基超合金に対するニーズを認識した。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明のひとつの実施形態では、約10重量%までのCo、約18〜約22重量%のCr、約0.2〜約0.7重量%のAl、合計で約15〜約28重量%の耐火性元素類、約0.09重量% までのC、約0.06重量%までのZr、約0.015 重量%までのB、約0.4〜約1.2重量%のMn、約0.2〜約0.45重量%のSi、および残部のNiを含む固溶体強化された超合金溶接組成物を必要とする。 【0006】本発明の別の実施形態は修復された領域と無処理(すなわち当初のままの)領域とを有する修復されたタービンエンジン部品に関する。 この修復された領域は上記組成を有する。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の実施形態は修復されたタービンエンジン部品およびタービンエンジン部品を修復するための溶接用組成物を提供する。 タービンエンジン部品は通常、たとえば引張強さ、クリープ耐性、耐酸化性および耐腐食性で高温性能が知られている超合金材料で形成されている。 超合金部品は、通常、超合金中重量で単一で最大の元素がニッケルであるニッケル基合金で形成されている。 代表的なニッケル基超合金は、少なくとも約40重量%のNiと、コバルト、クロム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、チタンおよび鉄より成る群の中の少なくとも1種の成分とを含んでいる。 ニッケル基超合金の例は、Inconel(登録商標)、Nimon ic(登録商標)、Rene(登録商標)(たとえば、Rene (登録商標)80-、Rene(登録商標)95、Rene(登録商標)142およびRene(登録商標)N5合金)、およびUdime t(登録商標)という商品名のものであり、方向性凝固した超合金と単結晶超合金が包含される。 【0008】タービンエンジン部品の形態は燃焼器ライナ、燃焼器ドーム、シュラウド、バケットもしくはブレード、ノズルまたはベーンのように各種のものがある。 最も典型的な場合、この部品は、ノズルやベーンのような静止翼形およびブレードやバケットを含めた回転翼形を始めとする翼形である。 本明細書中でブレードとバケットは互換性をもって使用されており、典型的には、ブレードは航空機タービンエンジンの回転翼であり、バケットは陸上の発電用タービンエンジンの回転翼である。 ブレードやバケットの場合、修復される領域は、通常、 周囲のシュラウドとの摩擦接触により摩耗し易い先端領域である。 ノズルやベーンの場合、修復される領域は、 通常、高温のエンジン内で最高速のガスに暴露される結果摩耗し易い前縁である。 修復溶接用組成物は、充填材料として単独で用いてもよいし、あるいは、ノズルやベーンの前縁に沿って所定の位置に溶接される輪郭プレートのようなインサートと組み合わせて用いてもよい。 【0009】図1に、修復された翼形、特に発電用タービンエンジンの修復されたバケット10を示す。 バケット10は翼形部分12とダブテール部分14とをもっている。 翼形部分12は当初のままの領域16と修復された領域18とをもっている。 修復に先立って、バケットをタービンエンジンから取り外し、慣用の方法で洗浄して付着した異物および酸化物や腐食生成物を取り除く。 洗浄したコーティングを先端近くの領域から除き、その先端を先端キャビティー近くまで研削した後、溶接技術によって修復する。 通常はタングステンアーク不活性ガス(TIG)溶接を使用するが、ガス−金属アーク溶接、抵抗溶接、電子ビーム溶接、プラズマ溶接およびレーザー溶接のような他の溶接技術を用いてもよい。 TI G溶接プロセスでは工作物、たとえばバケット10の先端とタングステン電極との間で熱を発生させる。 本明細書に記載した組成を有するニッケル基溶接ワイヤを充填材金属として使用する。 先端の周辺に多数回の処理を施すことによりほぼ当初の幾何学的形状までその先端に肉盛りする。 この修復プロセスは、追加の機械加工、ならびにバケットをさらに保護するための皮膜形成工程(たとえば、オーバーレイコーティング、拡散皮膜、断熱皮膜)で完了する。 【0010】本発明の第一の実施形態によると、固溶体強化された溶接用合金組成物は、約10〜約15重量% のCo、約18〜約22重量%のCr、約0.5〜約1.3重量%のAl、約3.5〜約4.5重量%のT a、約1〜約2重量%のMo、約13.5〜約17.0 重量%のW、約0.08重量%までのC、約0.06重量%までのZr、約0.015重量%までのB、約0. 4〜約1.2重量%のMn、約0.1〜約0.3重量% のSi、および残部のNiを含んでいる。 特定の組成物では、Cが約0.02重量%以上の量で存在し、Zrが約0.01重量%以上の量で存在し、Bが約0.005 重量%以上の量で存在する。 好ましい形態では、組成物が、約13.5重量%のCo、約20重量%のCr、約0.8重量%のAl、約4重量%のTa、約1.5重量%のMo、約15.5重量%のW、約0.05重量%のC、約0.03重量%のZr、約0.01重量%までのB、約0.7重量%のMn、約0.2重量%のSi、および残部のNiを含む。 本組成物は通常の不純物を含有していてもよい。 【0011】本発明の第二の実施形態によると、固溶体強化された溶接用合金組成物は、約10重量%までのC o、約18〜約22重量%のCr、約0.2〜約0.7 重量%のAl、合計で約15〜約28重量%の耐火性元素類、約0.09重量%までのC、約0.06重量%までのZr、約0.015重量%までのB、約0.4〜約1.2重量%のMn、約0.2〜約0.45重量%のS i、および残部のNiを含む。 通常耐火性元素類はT a、MoおよびWの群の中から選択される。 1つの例では耐火性元素類がMoとWを含んでおり、MoとWは合計で約16〜20重量%の範囲内である。 好ましい形態では耐火性元素類が、約17〜19重量%の量で存在するWのみからなる。 第一の実施形態と同様に、第二の実施形態の1つの特定の例は、約0.02重量%以上の量でCを、約0.01重量%以上の量でZrを、そして約0.005重量%以上の量でBを含有している。 本組成物は通常の不純物を含有していてもよい。 【0012】第二の実施形態の特定の形態では、組成物が、約21重量%のCr、約0.4重量%のAl、約1 8重量%のW、約0.07重量%のC、約0.03重量%のZr、約0.01重量%までのB、約0.7重量% のMn、約0.35重量%のSi、および残部のNiを含む。 通常、第二の実施形態はランタンを含有しない。 というのは、この元素は合金組成物の性質に望ましくない影響を与えることが判明しているからである。 したがって、第二の実施形態の合金は通常、ランタンを含まず、実質的に上記の成分のみから成る。 【0013】 【実施例】本発明の第一の実施形態による組成物(A)、本発明の第二の実施形態によるいくつかの組成物(B〜HおよびJ〜M)、および市販の組成物IN6 25(X)を比較して後掲の表に示す。 合金J〜Mは、 CoとMnの含量を変えた点でB〜Hの組成物とは異なっている。 【0014】本発明の実施形態による溶接合金を、寸法15cm×3cm×1cmの矩形のインゴットに鋳造し方向性凝固(DS)させるか、または、直径約2cmのロッドに熱間押出した。 次に、放電加工法(EDM)によって酸化ピンを形成し、等温酸化処理にかけた。 選択した合金の結果を図2と3に示す。 y軸の重量変化は酸化の程度を示す。 サンプルの重量は処理中規則的に(ほぼ一日に一回)測定した。 プロットに明白に示されているように、本発明の実施形態による合金は、市販合金X と比較して、酸化に対する耐性が明らかに優れていた。 1900°F、600時間で、合金AとDは酸化のための重量損失が40mg/cm 2未満、特に30mg/c m 2未満であった。 特に、合金Dは同じ条件で重量損失が10mg/cm 2未満であった。 【0015】方向性凝固した試験片の破断寿命を評価するために溶接合金を試験した。 いくつかの合金に対しては方向性凝固を実施して試験片の結晶粒組織の差の影響を排除した。 他のものは熱間変形して完全な微細結晶粒等軸組織を生成させた。 組成物Aは、組成物Xと比べて、2000°F、3ksiでほぼ3倍の破断寿命の改善を示した。 組成物Dは組成物Xと比べて4倍以上の寿命の改善を示した。 本発明の実施形態による他の合金組成物でも同様な結果が立証された。 【0016】また、本発明の実施形態による溶接合金のいくつかを突き合わせ溶接試験にかけた。 ここでは、合金を、TIG溶接工程において2つのニッケル基超合金プレート間の充填材料として用いた。 比較試験で立証されたところによると、合金組成物Aは、2000°F、 3ksiで市販の合金IN617と比べてほぼ30%の破断寿命の増大を、また1900°F、5ksiでIN 617と比べて600%の破断寿命の増大を示した。 同様に、組成物Dは2000°F、3ksiで合金IN6 17と比べてほぼ40%の破断寿命の増大を、また19 00°F、5ksiでIN617と比べて35%の破断寿命の増大を示した。 以上の結果は、これらの合金がバケットやブレードの先端の修復用途に対して充分なクリープ破断特性をもっていることを示している。 【0017】さらに、室温における引張強さ試験では、 これらの合金が室温で容易に溶接可能であるのに充分な降伏強さ、極限引張強さおよび伸び特性をもっていることが示された。 すなわち、これらの合金は必要な室温延性をもっている。 これら合金は一般に、少なくとも約4 0ksiの降伏強さ、少なくとも約75ksi、特に少なくとも約80〜90ksiの極限引張強さをもっていた。 さらに、高温引張試験では、これらの合金がブレードやバケットの先端の修復用途に対して充分な引張強さをもっていることが示された。 すなわち、組成物は18 00°Fで20〜25ksiの程度の引張強さをもっていた。 【0018】本発明の実施形態により、必要とされる室温溶接可能性、高温強さ、高温クリープ破断特性、および高温酸化耐性を有する固溶体強化合金組成物が提供された。 本発明の実施形態について特に説明して来たが、 当業者はこれらに対して修正を加えることができ、それらの修正はやはり特許請求の範囲に入るものと理解されたい。 【0019】 【表1】 【図面の簡単な説明】 【図1】タービンエンジンの高圧段の修復されたタービンバケットの透視図である。 【図2】本発明のいくつかの合金組成物と市販合金の1 900°Fにおける等温酸化を示すプロットである。 【図3】本発明のいくつかの合金組成物と市販合金の2 000°Fにおける等温酸化を示すプロットである。 【符号の説明】 10 修復されたバケット 16 当初のままの領域 18 修復された領域 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 メルビン・ロバート・ジャクソン アメリカ合衆国、ニューヨーク州、ニスカ ユナ、ニスカユナ・ドライブ、2208番 (72)発明者 アーロン・トッド・フロスト アメリカ合衆国、ニューヨーク州、ボール ストン・スパ、ミドルライン・ロード、 863番 (72)発明者 アドリアン・モーリス・ベルトラン アメリカ合衆国、ニューヨーク州、ボール ストン・スパ、ピーサブル・ストリート、 1162番 |