【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は微粒の多成分混合物から任意の粒径の複合ガラス粉末を製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】電気部品および電子部品、例えば、バリスタをコーティングするために、複合ガラス粉末が使用される。 好適な液体中に懸濁した複合ガラス粉末がスプレーガンによる吹付けまたはその他の好適な方法により電気部品または電子部品に一つの層として適用され、そしてその後のつや出し焼付けによりバリスタにおいて、 その成分と共に固体の化合物、例えば、ZnOセラミックを形成する。 純粋のガラス粉末を使用してコーティングの所要の機械的特性、電気的特性および化学的特性を得ることはしばしば不可能であるので、複合ガラス粉末が使用される。 【0003】複合ガラス粉末は、約60−70重量%のベースガラス、一般的には、硼酸鉛ガラスと、膨脹率に適合した約15−20重量%の少なくとも一種類の充填剤と、コーティングの特定の電気的特性を得るための5 −13重量%の化合物と、流れ特性を改良するための約7−13重量%のSiO 2とからなっている。 ベースガラスは固体のコーティングを形成しかつコーティング中にその他の化合物を均質混合させることを目的とするものである。 【0004】15−20重量%の量で添加される充填剤はコーティングの膨脹率をベースガラスの膨脹率と調和させることを目的としている。 好適な充填剤は、例えば、ベーター・ユークリプタイト、菫青石、ムライト、 珪酸ジルコニウムまたはその他の耐火性物質、チタン酸鉛、珪酸亜鉛鉱ならびに例えばSnO 2 −TiO 2のような固溶体と呼ばれる物質である。 これらの充填剤は天然にまたは合成により得られる。 充填剤としては、ベーター・ユークリプタイトおよび菫青石が特に好ましい。 【0005】この混合物は、さらに、ある電気的特性、 例えば、電流−電圧特性を調節することができる5−1 3重量%の化合物を含んでいる。 このような化合物は、 例えば、炭酸銅、酸化第二銅、酸化クロム、炭酸銀、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガンである。 炭酸銅を使用することが特に有利である。 その理由は、 炭酸銅がコーティングプロセス中にこの場合に得られる温度の下で大きい比表面積を有する酸化第二銅に分解し、それ故にベースガラス中に特に良好に均質混合させることができるからである。 【0006】複合ガラス粉末は、別の添加剤として、流れ特性を改良するために、7−13重量%のSiO 2を含む。 SiO 2は複合ガラス粉末内に石英粉末の形態で存在し、また発熱性の珪酸の形態で存在する。 【0007】ベース粉末ならびに充填剤および添加剤は複合ガラス粉末中に非常に微細な粒度で存在する。 コーティングの膨脹率をコーティングされる物体の膨脹率と調和させ、そして一般的には膨脹率を低下させるために添加される充填剤の膨脹率は、通常、ベースガラスの膨脹率から非常に大きく変動する。 もしも添加剤が大きすぎる粒度で使用されると、つや出し層に微小な亀裂が生じ、その結果つや出し層の機械的特性および電気的特性が劣化する。 それ故に、膨脹率と適合させるために使用される充填剤は、通常、15μmよりも小さい平均粒度で使用される。 また、ベースガラスは複合ガラス粉末中に4−15μmの平均粒度、特に6−12μmの粒度で存在する。 その理由は、ベースガラスの粒度をこの範囲に保たなければ、充填剤および添加剤を均質に混合させるために好適でないからである。 【0008】電気的特性を改良するために使用される化合物ならびに流れ特性を改良するために添加されるSi O 2はつや出し中にベースガラスと反応し、すなわち、 ベースガラス中に少なくとも部分的に溶解する。 この溶解のために必要な時間が短い程、これらの化合物の粒度がより小さくなり、すなわち、これらの粒子の比表面積がより大きくなる。 これらの添加剤のベースガラス粉末との反応が不十分でありまたは緩慢である程、添加剤の粒度がより微細でなければならない。 SiO 2の粉末は比較的に良好に溶解するので、最大で10μmの平均粒度のSiO 2を使用することができる。 その他の添加剤、例えば、電気的特性を調節するために使用される化合物、特にCuOは、ベースガラス内の溶解度が不十分であるので、最大で4μmの平均粒度のみにおいて使用することができる。 これらの僅か溶解する化合物においては、もしもこれらの化合物が酸化物としてではなく、 つや出し温度よりも低い温度で分解可能な化合物の形態で添加されることが好ましい。 その理由は、これらの化合物が分解により比表面積の大きい反応性の非常に高い粉末を生じ、それによりベースガラス内の溶解度の改良に大きく貢献する。 ベースガラスの溶解中に電気的特性を改良する添加剤の添加は、ベースガラスの分離および結晶化を生ずるので、一般的には不可能である。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】電気的特性を改良するために添加される分解性の化合物はつや出し焼付け中に加熱により分解される。 しかし、この反応には時間を要し、したがって、つや出し焼付け中に、これらの化合物が非常に緩慢に加熱されなければならないかまたは化合物の分解温度において停止工程を行わなければならず、 それにより焼付け工程が長びくことは明らかである。 焼付け工程が非常に長いと、サイクル時間が長くなるのみでなく、またコーティングしようとする部品の品質をも劣化させる。 既知の複合ガラス粉末の別の一つの欠点は、容易に処理できる、例えば、吹付けできるスリップを生成するためのベースガラスおよび添加剤の粉末度のために、複合ガラス粉末を多量の懸濁媒、例えば、水と混合しなければならないことにある。 この多量の懸濁媒の添加は重大な欠点をもたらす。 スリップが吹き付けられた層、すなわち、浸漬またはその他の好適な方法により適用された層を乾燥する場合に、非常に大きい乾燥収縮が起こり、それと共に乾燥亀裂が発生する大きなおそれがある。 しかし、乾燥亀裂が発生すると、コーティングに欠陥が生ずる。 さらに、多量の懸濁媒を含むスリップにより十分に厚い層を形成することは、多量の懸濁媒のために層が流出する傾向を生ずるので、不可能である。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明の目的は、良好な物理的特性および電気的特性が失われないようにして、 大きい平均粒度で製造することができる複合ガラス粉末を得ることにある。 この目的は請求項1に記載の方法により達成される。 【0011】粒度が非常に小さい多成分混合物はベースガラスが10 5 −10 6.5 dPaの粘度を有するような温度において10分ないし60分の間焼結される。 この場合には、ベースガラス中に溶解できる成分はベースガラスにより部分的に溶解され、そしてベースガラスならびにすべてのその他の充填剤および添加剤が焼結されて、多孔性の焼結されたガラスケークが生ずる。 10 5 dPaの粘度に相当する温度を超えてはならない。 その理由は、この温度以下に保たなければ、合成ガラス粉末の個々の成分がベースガラス中に溶解する度合が過大になり、それにより物理的特性の劣化が起こるからである。 他方、ベースガラスの10 6.5 dPaの粘度に相当する温度を超えてはならない。 その理由は、この温度以下に保たなければ、ベースガラスと充填剤および添加剤との反応が過小になり、ベースガラスとこれらの物質との結合が不十分になるからである。 【0012】10 6.5 dPaないし10 5 dPaの粘度に相当する温度範囲内では多孔性の焼結されたケークが得られ、それにより当初の物質の良好な物理的特性および電気的特性を有し、しかも当初の成分の粉末度から生ずる欠点のない合成ガラス粉末を好適な粉砕により製造することができる。 膨脹率を改良する添加剤は、その他の化合物との反応が十分に小さいので、十分に効果的な状態に保たれる。 もしも添加剤中に、ガスの放出中に反応性の添加剤、例えば、炭酸銅に変換される添加剤があれば、焼結しようとする多成分混合物が先づ焼結温度よりも低い温度まで加熱されると好適であり、この温度においてこの化合物がガスの放出中に分解され、混合物は分解性の化合物が分解するまでこの温度に保たれ、その後においてのみ焼結温度まで加熱される。 このように分解温度に保つことにより、発生するその他の時間反応を損なうことなく分解性の化合物を分解させることができる。 【0013】バリスタをコーティングするための複合ガラス粉末を製造する場合には、この方法を使用することが特に好適である。 このような複合ガラスの粉末を製造するためには、60−70重量%の15μmよりも小さい平均粒度を有する硼酸鉛ガラス粉末と、15−20重量%の15μmよりも小さい平均粒度を有する充填剤と、5−13重量%の5μmよりも小さい平均粒度を有する炭酸銅と、7−13重量%の10μmよりも小さい平均粒度を有するSiO 2との混合物が炭酸銅を分解させるために30分ないし60分の間220℃ないし32 0℃の温度に保たれ、その後10糞ないし60分の間1 0 5 dPaないし10 6.5 dPaのベースガラスの粘度に相当する温度において焼結される。 【0014】硼酸鉛ガラスとして、次の組成(酸化物をベースとして重量%で示した)のガラスを使用することが好ましい。 SiO 2 0−5 B 2 O 3 5−20 PbO 60−90 Al 2 O 3 0−5 ZnO 0−30 BaO 0−5 F 0−3 0−2重量%のSiO 2と、13−16重量%のB 2 O 3と、82−87重量%のPbOと、0−2重量%のA l 2 O 3とを含む組成のガラスにより、特に良好な結果が得られる。 また、86重量%のPbOと14重量%のB 2 O 3とを含む組成のガラスは非常に良好に使用することができる。 【0015】熱膨脹率を改良する充填剤として、好ましくは、ベーター・ユークリプタイトおよび/または菫青石および/またはムライトが使用される。 もしも銅が炭酸銅の形態ではなく、非常に微細に粉砕された酸化第二銅の形態で添加されると、炭酸銅を分解するための停止工程を省くことができ、そして酸化第二銅を直ちに所望された任意の速度で焼結温度まで加熱することができる。 焼結後、得られた多孔性の焼結されたケークが粉砕されて、好適の粒度分布の焼結された粉末が得られる。 例えば、吹付けまたは浸漬により粉末の良好な処理適性を保証するため、7−15μmの平均粒度とすることが好ましい。 これらの粒度範囲においては、層が流出する傾向を生ずることなく、非常に厚い層を付着させることができる。 さらに、焼結により、コーティング時間を予め焼結されていない粉末によるコーティング時間と比較して約50%だけ短縮することができ、それによりコーティングされる部品の熱応力をかなり低くすることができる。 【0016】この方法は、微粒状の個々の成分の助けによってのみ生成することができる複合ガラス粉末が処理上の理由からより大きい粒度で必要である場合に、そして/または複合ガラス粉末がある物質またはこれらの物質からつや出し中に生成されたある化合物を含有しなければならない場合に常に使用することができる。 しかしながら、前記の物質または化合物は、後程行われるつや出しのために必要な成分の総数を主としてガラスとして融解させることができないときにガラスの形成に対して悪影響をおよぼすので、融解中にガラス中に導入することができない。 【0017】 【実 施 例】86重量%のPbOおよび14重量%のB 2 O 3を含む組成でありかつ12μmの平均粒度を有する63重量%の硼酸鉛ベースガラスと、充填剤として8μmの平均粒度を有する19重量%のベーター・ユークリプタイトと、9μmの平均粒度を有する9重量%の石英粉末と、3μmの平均粒度を有する9重量%のCu CO 3との混合物が調製された。 この混合物は260℃ の温度まで加熱され、そしてCuCO 3をCuOに分解するためにこの温度に30分間保たれた。 次にこの混合物は450℃に加熱され、この温度に20分間維持されたベースガラスはこの温度において10 5 dPaの粘度を有している。 その後、得られた焼結されたケークが冷却され、そして粉砕されて12μmの平均粒度を有する粉末が得られた。 そして、その粉末に脱イオン水を添加することにより、72重量%の複合ガラス粉末を含有する懸濁液が調製された。 この懸濁液は円筒形のパリスタ素子の表面上に吹き付けられ、その結果、200μmの厚さの吹き付けられた層が得られた。 この層は、乾燥させた後、600℃において焼付けられ、そして20分の停止時間の経過後、優れた質のつやが得られた。 比較のために、もしもコーティングのために焼結されていない粉末の混合物が使用されれば、吹付け可能な懸濁液を調製するためにかなり多量の水を粉末に添加しなければならず、その結果、懸濁液の固体部分が60−65重量% にすぎなくなる。 この懸濁液を使用して円筒形のバリスタ素子の表面に吹き付けた場合には、最大の厚さが70 μmである層しか得られなかった。 この層を600℃の温度で焼付ける場合、停止時間を2−3時間に延長しなけばならなかった。 得られたつや出し層は部分的にぬか泡を含んでおり、その結果バリスタの電気的な数値(フラッシュオーバ抵抗値)が劣化した。 |