BRANCHED α-GLUCAN, α-GLUCOSYL TRANSFERASE FOR PRODUCING THE SAME, MANUFACTURING METHOD AND USE THEREFOR |
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申请号 | JP2010132735 | 申请日 | 2010-06-10 | 公开(公告)号 | JP2010202884A | 公开(公告)日 | 2010-09-16 |
申请人 | Hayashibara Biochem Lab Inc; 株式会社林原生物化学研究所; | 发明人 | WATANABE HIKARU; YAMAMOTO TAKUO; NISHIMOTO TOMOYUKI; TSUZAKI KEIJI; OKU KAZUYUKI; CHAEN HIROTO; FUKUDA SHIGEHARU; | ||||
摘要 | PROBLEM TO BE SOLVED: To provide glucan useful as a water-soluble dietary fiber, manufacturing methods and use therefor. SOLUTION: The branched α-glucan is an α-glucan making glucose as a constitution sugar and has a branched structure with a glucose polymerization degree of 1 or more connected to at least non-reduction terminal end in a linear glucan with a glucose polymerization degree of 3 or more connected through an α-1,4 bond through a bond other than the α-1,4 bond, specifically is the branched α-glucan having the following characteristic in methylation analysis. The branched α-glucan characterized in that (1) a ratio of 2,3,6-trimethyl-1,4,5-triacetylglucitol and 2,3,4-trimethyl-1,5,6-triacetylglucitol is in a range of 1:0.6 to 1:4, (2) a total of 2,3,6-trimethyl-1,4,5-triacetylglucitol and 2,3,4-trimethyl-1,5,6-triacetylglucitol occupies 60% or more of a partially methylated glucitolacetate, (3) 2,4,6-trimethyl-1,3,5-triacetylglucitol is ≥0.5% and COPYRIGHT: (C)2010,JPO&INPIT | ||||||
权利要求 | 糖転移作用を有する酵素とシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼとを、澱粉原料に作用させる工程を含んでなる、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンにおける少なくとも非還元末端にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する分岐α−グルカンの製造方法。 分岐α−グルカンのグルコース重合度が約6乃至620である請求項1記載の分岐α−グルカンの製造方法。 分岐α−グルカンにおける分岐構造の直鎖状グルカンへの結合様式がα−1,6結合である請求項1又は2記載の分岐α−グルカンの製造方法。 糖転移作用を有する酵素が、α−グルコシル転移酵素である請求項1乃至3のいずれかに記載の分岐α−グルカンの製造方法。 糖転移作用を有する酵素とシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼに加えて、澱粉枝切り酵素を更に作用させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分岐α−グルカンの製造方法。 澱粉枝切り酵素が、イソアミラーゼである請求項5記載の分岐α−グルカンの製造方法。 |
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说明书全文 | 本発明は、分岐α−グルカン及びこれを生成するα−グルコシル転移酵素とそれらの製造方法並びに用途に関し、詳細には、グルコースを構成糖とするα−グルカンであって、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンにおける少なくとも非還元末端にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する分岐α−グルカン、より詳細には、メチル化分析において、 食物繊維とは、本来、動物が消化し難いセルロース、リグニン、ヘミセルロース、ペクチンなど植物細胞成分を意味するものの、広義には、アミラーゼで消化されない難消化性の水溶性多糖類も含まれ、これらは水溶性食物繊維と呼ばれている。 近年、食物繊維は、その本来の機能としての整腸作用、血中コレステロール低下作用、血糖調節作用などに加えて、腸内フローラを改善するプレバイオティクスとしての機能も注目されつつある。 しかしながら、食物繊維はカルシウムと並んで日本人の食生活で不足している栄養素と言われており、現在の日本人の平均的な食物繊維摂取量は、平成6年に出された第5次改定「日本人の栄養所要量」において示された食物繊維の目標摂取量20〜25g/日に対し、目標の5〜8割にしか達していないことが指摘されている(例えば、非特許文献1などを参照)。 このような状況下、各種飲食物の原料として利用でき、且つ、水溶性食物繊維として有用な難消化性の多糖類が種々提案されている。 例えば、水溶性食物繊維として、難消化澱粉(湿熱処理ハイアミロースコーンスターチ)、グァーガム分解物、グルコマンナン、低分子アルギン酸など、自然界に存在する多糖を原料とするものが市場に流通している。 しかしながら、これらはいずれも粘性が高く、食品に添加した場合、風味・食感を損なうなどの欠点を有することから、その利用は一部に限定されている。 一方、低粘度の水溶性食物繊維として、ポリデキストロース(米国ファイザー社が開発)や難消化性デキストリンが食品分野で広く利用されている。 ポリデキストロースは、グルコースとソルビトール及びクエン酸を高真空下で加熱し、化学的な反応により重合させて得られる合成多糖であり、グルコースが1,2、1,3、1,4、1,6、1,2,6、1,4,6位などでグルコシド結合した複雑な分岐を有することが知られている。 また、難消化性デキストリンは、化学的な反応により澱粉を分解すると同時に転移や逆合成反応を起こさせ、澱粉が本来有さない、1,2、1,3、1,2,4、1,3,4の各グルコシド結合を導入することにより消化性を低減させた合成多糖である。 この難消化性デキストリンは、澱粉に少量の塩酸を添加し、粉末の状態で加熱して得た焙焼デキストリンを水に溶解し、α−アミラーゼを添加して加水分解して得られた低粘度溶液を精製し、濃縮、噴霧乾燥して製造されている。 難消化性デキストリンには、さらに消化性を低減させる目的で、グルコアミラーゼを添加して可消化部分をグルコースにまで分解し、グルコースを分離除去して同様に精製、噴霧乾燥して製造した製品もある。 しかしながら、難消化性デキストリンは、原料澱粉からの収率が低く、加えて、着色し易く、工業生産する上で大きな欠点となっている。 これらポリデキストロースや難消化性デキストリンに導入された新たなグルコシド結合はα−及びβ−の両アノマー型が共に含まれ、さらに還元末端グルコース残基は部分的に1,6−アンヒドロ−グルコースに変化していると言われている(例えば、非特許文献2などを参照)。 グルカンにおけるグルコースの結合様式であるグルコシド結合(以下、本明細書では「グルコシド結合」を単に「結合」と略称する。)の内、α−1,6結合はα−1,4結合に比べてアミラーゼで分解され難いことから、α−1,6結合を多く含むグルカンにも水溶性食物繊維としての用途が期待できる。 例えば、乳酸菌に属するロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のデキストランスクラーゼ(EC 2.4.1.5)によりスクロースを原料として製造されるデキストランは、グルコースが主にα−1,6結合で重合したグルカンであって、α−1,2結合及びα−1,3結合の分岐を有する場合もある。 ロイコノストック・メセンテロイデス B−512F株由来のデキストランスクラーゼを用いた場合、得られるデキストランにおける結合のα−1,6結合の含量は90%以上にもなり、難消化性であることが期待される。 しかしながら、デキストランは、スクロースからの収率が低く、また、粘性が高いため精製操作が煩雑で、コスト高になることから、水溶性食物繊維として利用しようとする試みはほとんど行われていない。 また、安価な澱粉にアミラーゼを作用させ、主としてα−1,4結合を分解することによりα−1,6結合の含量を高めて水溶性食物繊維を調製しようとする試みも為されている。 特許文献1には、澱粉液化液に、α−アミラーゼとβ−アミラーゼの混合物を作用させた後、残存するデキストリン部を回収することにより、α−1,4結合に対するα−1,6結合の割合を10〜20%に高めた分岐デキストリンを調製する方法が提案されている。 しかしながら、この分岐デキストリンは、澱粉が本来持つ分岐(α−1,6結合)を保持しつつ、グルコースがα−1,4結合で連なった直鎖部分を取り除くことでα−1,6結合の割合を高めるという方法で製造されるため、原料澱粉からの収率が低く、また、大幅な消化性の低減が期待できないなどの課題がある。 また、澱粉部分分解物(デキストリン)に作用しα−1,6結合を導入する酵素として、デキストリンデキストラナーゼ(EC 2.1.1.2)が知られている(例えば、非特許文献3を参照)。 デキストリンデキストラナーゼは、澱粉部分分解物に作用し、主としてα−1,6グルコシル転移反応を触媒することにより、デキストラン構造(グルコースがα−1,6結合で連なった構造)を生成する酵素であるものの、従来から知られている、酢酸菌に属するアセトバクター・カプスラタム(Acetobacter capsulatum)由来のデキストリンデキストラナーゼは、α−1,6結合の導入割合が少ない(例えば、非特許文献4などを参照)こと、また、酵素自体の安定性が低いことなどの問題点があり、現実に使用されるに至っていない。 このような状況下、水溶性食物繊維の選択肢を広げる意味でも、新たな難消化性グルカン及びそれを製造する手段の提供が強く望まれる。 『食物繊維の市場動向を探る』、「食品と開発」、第34巻、第2号、第24乃至27頁(1999年) 『低分子水溶性食物繊維』、食品成分シリーズ「食物繊維の科学」、第116頁乃至131頁、朝倉書店(1997年) 山本一也ら、「バイオサイエンス・バイオテクノロジー・バイオケミストリー」、第56巻、(1992年)、第169頁乃至173頁 鈴木雅之ら、「ジャーナル・オブ・アプライド・グリコサイエンス(Journal of Applied Glycoscience)」、第48巻、第2号、第143頁乃至151頁(2001年) 本発明は、水溶性食物繊維として有用なグルカンとその製造方法並びにその用途を提供することを課題とする。 上記課題を解決するために、本発明者らはマルトース及び/又はグルコース重合度3以上のα−1,4グルカンを原料(基質)とし、分岐(本明細書において、「分岐」とは、グルカンにおけるグルコースの結合様式の内、α−1,4結合以外のグルコースの結合様式を意味する)を比較的多く有する分岐α−グルカンを生成する酵素に期待を込めて、このような酵素を産生する微生物を広く探索した。 その結果、土壌から単離した微生物、PP710株及びPP349株が、マルトース及び/又はグルコース重合度3以上のα−1,4グルカンに作用し、α−1,4、α−1,6、α−1,3、α−1,4,6及びα−1,3,6結合を有する分岐α−グルカンを生成する新規なα−グルコシル転移酵素を菌体外に産生することを見出した。 そして、この新規酵素が澱粉部分分解物などのα−1,4グルカンから、グルコースを構成糖とするα−グルカンであって、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンにおける少なくとも非還元末端にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する分岐α−グルカン、より詳細には、メチル化分析において、 また、本発明者らは、PP710株を培養して得たα−グルコシル転移酵素の粗酵素液には澱粉を分解するアミラーゼが混在しており、この粗酵素液を用いるか、又は単離した当該アミラーゼをα−グルコシル転移酵素と併用することにより、α−グルコシル転移酵素を単独で用いた場合よりも水溶性食物繊維含量を高めた分岐α−グルカンが製造できることを見出した。 さらに、当該アミラーゼのみならず、公知のα−アミラーゼや澱粉枝切酵素などをα−グルコシル転移酵素と併用することによって、得られる分岐α−グルカンの重量平均分子量や水溶性食物繊維含量を調整することができることも見出した。 加えて、本発明者らは、これらの方法によって得られる分岐α−グルカンは、原料α−1,4グルカンに比べα−1,6結合の割合が大幅に増加しており、且つ、α−1,3及びα−1,3,6結合を有し、顕著な難消化性を示すことから水溶性食物繊維として有用であり、血糖上昇抑制作用や生体内脂質低減作用をも有することを見出して本発明を完成した。 すなわち、本発明は、グルコースを構成糖とするα−グルカンであって、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンにおける少なくとも非還元末端にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する分岐α−グルカン、より詳細には、メチル化分析において、 本発明によれば、食品分野をはじめとする様々な分野において、水溶性食物繊維として有用であり、着色の少ない難消化性の分岐α−グルカンを、収率よく大量・安価に製造し、供給することができる。 図1及び図15〜19において、 本発明で言うグルカンとは、グルコースを構成糖とするグルコース重合度3以上のオリゴ糖ないしは多糖を意味する。 本発明の分岐α−グルカンは、グルコースを構成糖とするα−グルカンであって、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンにおける少なくとも非還元末端にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する分岐α−グルカン、詳細には、メチル化分析において、 本発明でいうメチル化分析とは、多糖又はオリゴ糖においてこれを構成する単糖の結合様式を決定する方法として一般的に知られている方法である。 メチル化分析をグルカンにおけるグルコースの結合様式の分析に用いる場合、まず、グルカンを構成するグルコース残基における全ての遊離の水酸基をメチル化し、次いで、完全メチル化したグルカンを加水分解する。 次いで、加水分解により得られたメチル化グルコースを還元してアノマー型を消去したメチル化グルシトールとし、さらに、このメチル化グルシトールにおける遊離の水酸基をアセチル化することにより部分メチル化グルシトールアセテート(以下、本明細書では、「部分メチル化グルシトールアセテート」におけるアセチル化された部位と「グルシトールアセテート」の表記を省略して、「部分メチル化物」と略称する場合がある。)を得る。 得られる部分メチル化物を、ガスクロマトグラフィーで分析することにより、グルカンにおいて結合様式がそれぞれ異なるグルコース残基に由来する各種部分メチル化物は、ガスクロマトグラムにおける全ての部分メチル化物のピーク面積に占めるピーク面積の百分率(%)で表すことができる。 そして、このピーク面積%から当該グルカンにおける結合様式の異なるグルコース残基の存在比、すなわち、各グルコシド結合の存在比率を決定することができる。 本願明細書においては、部分メチル化物についての「比」は、メチル化分析のガスクロマトグラムにおけるピーク面積の比を意味し、部分メチル化物についての「%」はメチル化分析のガスクロマトグラムにおける「面積%」を意味するものとする。 上述した(1)における、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトール(以下、「2,3,6−トリメチル化物」と略称する)とはC−4位が1,4結合にあずかるグルコース残基を意味し、2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトール(以下、「2,3,4−トリメチル化物」と略称する)はC−6位が1,6結合にあずかるグルコース残基を意味する。 そして、「2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある」とは、すなわちメチル化分析における部分メチル化グルシトールアセテートのガスクロマトグラムにおいて、本発明の分岐α−グルカンは、C−1位以外にC−4位のみが結合にあずかるグルコース残基とC−1位以外にC−6位のみが結合にあずかるグルコース残基の合計に対するC−1位以外にC−6位のみが結合にあずかるグルコース残基の割合が37.5乃至80.0%の範囲を示すことを意味する。 上述した(2)における、「2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物との合計が部分メチル化物の60%以上を占める」とは、本発明の分岐α−グルカンは、C−1位以外にC−4位のみが結合にあずかるグルコース残基とC−1位以外にC−6位のみが結合にあずかるグルコース残基の合計がグルカンを構成する全グルコース残基の60%以上を占めることを意味する。 同様に、上述した(3)における、「2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリアセチルグルシトール」(以下、「2,4,6−トリメチル化物」と略称する)とは、C−3位が1,3結合にあずかるグルコース残基を意味し、「2,4,6−トリメチル化物が部分メチル化物の0.5%以上10%未満である」とは、本発明の分岐α−グルカンは、C−1位以外にC−3位のみが結合にあずかるグルコース残基がグルカンを構成する全グルコース残基の0.5%以上10%未満存在することを意味する。 さらに同様に、上述した(4)における「2,4−ジメチル−1,3,5,6−テトラアセチルグルシトール」(以下、「2,4−ジメチル化物と略称する」)とは、C−3位及びC−6位の両方がそれぞれ1,3結合と1,6結合にあずかるグルコース残基を意味し、「2,4−ジメチル化物が部分メチル化物の0.5%以上である」とは、本発明の分岐α−グルカンは、C−1位以外にC−3位とC−6位が結合にあずかるグルコース残基がグルカンを構成する全グルコース残基の0.5%以上存在することを意味する。 上記の(1)乃至(4)の条件を全て充足する本発明の分岐α−グルカンは、これまで知られていない新規なグルカンである。 本発明の分岐α−グルカンは、メチル化分析において、上記(1)乃至(4)の条件を充足する限り、グルコース残基の結合順序は特に限定されない。 本発明の分岐α−グルカンは、通常、グルコース重合度が10以上の様々なグルコース重合度を有する分岐α−グルカンの混合物の形態にある。 また、本発明の分岐α−グルカンにおいて、その重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)は、通常、20未満である。 さらに、本発明の分岐α−グルカンは、グルカンにおけるイソマルトース構造の還元末端側に隣接するα−1,2、α−1,3、α−1,4及びα−1,6結合のいずれの結合であっても加水分解する特徴を有するイソマルトデキストラナーゼ(EC 3.2.1.94)を作用させると、消化物の固形物当たりイソマルトースを、通常、25質量%以上50質量%以下生成する。 また、本発明の分岐α−グルカンは、平成8年5月厚生省告示第146号の栄養表示基準、「栄養成分等の分析方法等(栄養表示基準別表第1の第3欄に掲げる方法)」における第8項、「食物繊維」に記載された、「高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)」に準じて水溶性食物繊維含量を求めると、水溶性食物繊維を、通常、40質量%以上含有する。 上記高速液体クロマトグラフ法(以下、本明細書では「酵素−HPLC法」と略称する)の概略を説明するならば、試料を熱安定α−アミラーゼ、プロテアーゼ及びアミログルコシダーゼ(グルコアミラーゼ)による一連の酵素処理により分解処理し、イオン交換樹脂により処理液から蛋白質、有機酸、無機塩類を除去することにより高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用の試料溶液を調製する。 次いで、ゲル濾過HPLCに供し、クロマトグラムにおける、未消化グルカンとグルコースのピーク面積を求め、それぞれのピーク面積と、別途、常法のグルコース・オキシダーゼ法により求めておいた試料溶液中のグルコース量を用いて、試料の水溶性食物繊維含量を算出する方法である。 本法の詳細については後述の実験の項で説明する。 本発明の分岐α−グルカンは、後述する実験19に示すように、経口摂取しても唾液α−アミラーゼ、膵液α−アミラーゼや小腸粘膜α−グルコシダーゼによる分解を受け難いことから、消化吸収されにくく、血糖を急激に上昇させたり、インスリンの分泌を刺激することの少ない、低カロリーの水溶性食物繊維として利用することができる。 また、当該分岐α−グルカンは、口腔内の微生物によって、酸発酵を起こし難く、スクロースと併用した場合にも歯垢の原因となる不溶性デキストランの生成を抑制する作用を有しているので、低う蝕性又は抗う蝕性糖質としても有利に利用できる。 さらに、本発明の分岐α−グルカンは、マウスを用いた急性毒性試験において、何ら毒性を示さないグルカンである。 さらに、本発明の分岐α−グルカンは、後述する実験20及び21に示すように、通常の澱粉質とともに摂取すると、澱粉質のみを摂取した場合に比べ、血糖値やインスリン量の上昇を抑制することから、血糖上昇抑制剤として使用することもできる。 またさらに、本発明の分岐α−グルカンは、後述する実験22に示すように、摂取することにより生体内の脂質の過剰な蓄積を抑制する作用をも有していることから、生体内脂質低減剤として使用することもできる。 本発明の分岐α−グルカンを上記血糖抑制剤や生体内脂質低減剤として用いる場合、分岐α−グルカンは、水溶性食物繊維含量が高いものほど作用効果に優れていることから、水溶性食物繊維として、通常、40質量%以上、望ましくは、50質量%以上、さらに望ましくは、60質量%以上含有するものが好適に利用できる。 本発明でいうα−グルコシル転移酵素とは、マルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα−1,4グルカンに作用し、実質的に加水分解することなくα−グルコシル転移を触媒することにより、本発明の分岐α−グルカンを生成する酵素を意味する。 本発明のα−グルコシル転移酵素は、加水分解活性が弱い点、低濃度から高濃度まで基質溶液の濃度に依存せず効率の良い転移活性を有する点、及び、α−1,3及びα−1,3,6結合をも生成する点で、従来公知の真菌由来α−グルコシダーゼや酢酸菌由来デキストリンデキストラナーゼとは異なる酵素である。 本発明のα−グルコシル転移酵素の酵素活性は、次のようにして測定することができる。 マルトースを最終濃度1w/v%となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解させて基質液とし、その基質液5mlに、酵素液0.5mlを加え40℃で30分間酵素反応させ、その反応液0.5mlと5mlの20mMリン酸緩衝液(pH7.0)とを混合し、沸騰水浴中で10分間加熱することにより反応停止させた後、反応液中のグルコース量を、常法に従ってグルコース・オキシダーゼ法で測定し、反応によって生成したグルコース量を算出する。 α−グルコシル転移酵素の活性1単位は、上記の条件下で1分間に1μモルのグルコースを生成する酵素量と定義する。 本発明のα−グルコシル転移酵素の1つの具体例としては、例えば、下記の理化学的性質を有するα−グルコシル転移酵素が挙げられる。 本発明のα−グルコシル転移酵素の別の具体例としては、下記の理化学的性質を有するα−グルコシル転移酵素が挙げられる。 本発明のα−グルコシル転移酵素はその給源によって制限されないものの、好ましい給源として微生物が挙げられ、とりわけ、本発明者らが土壌より単離した微生物PP710株又はPP349株が好適に用いられる。 以下、本発明のα−グルコシル転移酵素の産生能を有する微生物PP710株及びPP349株の同定試験において判明した菌学的諸性質を表1及び2にそれぞれ示す。 なお、同定試験は、『微生物の分類と同定』(長谷川武治編、学会出版センター、1985年)に準じて行った。 以上の菌学的性質に基づき、『バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー』(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)、第2巻(1986年)、及び、『リボソーマルデータベース』(URL:http://rdp.cme.msu.edu/index.jsp)を参考にして、微生物PP710株及びPP349株と公知菌との異同をそれぞれ検討した。 その結果、微生物PP710株は、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)に属する微生物であり、微生物PP349株は、アルスロバクター・グロビホルミス(Arthrobacter globiformis)に属する微生物であることが判明した。 本発明者等は、これら2菌株をそれぞれ、新規微生物バチルス・サーキュランス PP710及びアルスロバクター・グロビホルミス PP349と命名し、いずれも平成18年2月1日付で日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託し、それぞれ受託番号 FERM BP−10771及びFERM BP−10770として受託された。 本発明のα−グルコシル転移酵素産生能を有する微生物には、上記菌株はもとより、上記菌株に突然変異を誘発し、選抜して得られる酵素高産生変異株なども包含される。 本発明のα−グルコシル転移酵素産生能を有する微生物の培養に用いる培地は、微生物が生育でき、本発明のα−グルコシル転移酵素を産生しうる栄養培地であればよく、合成培地および天然培地のいずれでもよい。 炭素源としては、微生物が生育に利用できる物であればよく、例えば、植物由来の澱粉やフィトグリコーゲン、動物や微生物由来のグリコーゲンやプルラン、また、これらの部分分解物やグルコース、フラクトース、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、糖蜜などの糖質、また、クエン酸、コハク酸などの有機酸も使用することができる。 培地におけるこれらの炭素源の濃度は炭素源の種類により適宜選択できる。 窒素源としては、例えば、アンモニウム塩、硝酸塩などの無機窒素化合物および、例えば、尿素、コーン・スティープ・リカー、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素含有物を適宜用いることができる。 また、無機成分としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト塩などの塩類を適宜用いることができる。 更に、必要に応じて、アミノ酸、ビタミンなども適宜用いることができる。 本発明のα−グルコシル転移酵素産生能を有する微生物の培養は、通常、温度15乃至37℃でpH5.5乃至10の範囲、好ましくは温度20乃至34℃でpH5.5乃至8.5の範囲から選ばれる条件で好気的に行われる。 培養時間は当該微生物が増殖し得る時間であればよく、好ましくは10時間乃至150時間である。 また、培養条件における培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5乃至20ppmが好ましい。 そのために、通気量を調節したり、攪拌したりするなどの手段を適宜採用する。 また、培養方式は、回分培養、半連続培養又は連続培養のいずれでもよい。 このようにしてα−グルコシル転移酵素産生能を有する微生物を培養した後、本発明のα−グルコシル転移酵素を含む培養物を回収する。 α−グルコシル転移酵素活性は、培養微生物がバチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)及びアルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)のいずれの場合も、主に培養物の除菌液に認められ、除菌液を粗酵素液として採取することも、培養物全体を粗酵素液として用いることもできる。 培養物から菌体を除去するには常法の固液分離法が採用される。 例えば、培養物そのものを遠心分離する方法、あるいは、プレコートフィルターなどを用いて濾過分離する方法、平膜、中空糸膜などの膜濾過により分離する方法などが適宜採用される。 除菌液はそのまま粗酵素液として用いることができるものの、一般的には、濃縮して用いられる。 濃縮法としては、硫安塩析法、アセトン及びアルコール沈殿法、平膜、中空膜などを用いた膜濃縮法などを採用することができる。 さらに、α−グルコシル転移酵素活性を有する除菌液及びその濃縮液を用いて、α−グルコシル転移酵素を斯界において常用されている適宜の方法により固定化することもできる。 固定化の方法としては、例えば、イオン交換体への結合法、樹脂及び膜などとの共有結合法・吸着法、高分子物質を用いた包括法などを適宜採用できる。 上記のように本発明のα−グルコシル転移酵素は、粗酵素液をそのまま又は濃縮して用いることができるものの、必要に応じて、斯界において常用されている適宜の方法、例えば、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、調製用電気泳動などの方法によって、さらに分離・精製して利用することもできる。 本発明のα−グルコシル転移酵素の基質となるグルコース重合度3以上のα−1,4グルカンとしては、澱粉、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲンなどや、それらをアミラーゼまたは酸などによって部分的に加水分解して得られるアミロデキストリン、マルトデキストリン、及びマルトース以上のマルトオリゴ糖などの澱粉部分分解物が挙げられる。 アミラーゼで分解した部分分解物としては、例えば、『ハンドブック・オブ・アミレーシズ・アンド・リレーテッド・エンザイム(Handbook of Amylases and Related Enzymes)(1988年)パーガモン・プレス社(東京)に記載されている、α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)、マルトテトラオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.60)、マルトペンタオース生成アミラーゼ、マルトヘキサオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.98)、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19、以下、本明細書では「CGTase」と略称する)などのアミラーゼを用いて澱粉、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲンなどを分解して得られる部分分解物を用いることができる。 さらには、部分分解物を調製する際、プルラナーゼ(EC 3.2.1.41)、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)などの澱粉枝切酵素を作用させることも随意である。 澱粉は、例えば、とうもろこし、小麦、米など由来の地上澱粉であっても、また、馬鈴薯、さつまいも、タピオカなど由来の地下澱粉であってもよい。 澱粉から本発明のグルカンを製造するに際しては、上記のような原料澱粉を、通常、糊化及び/又は液化して用いるのが好適である。 澱粉の糊化・液化の方法自体は、公知の方法を採用することができる。 さらに、本発明のα−グルコシル転移酵素の基質は、エーテル化澱粉(ヒドロキシプロピル澱粉、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉など)、エステル化澱粉(リン酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉など)及び架橋澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉など)など、澱粉の一部を化学的方法により誘導体化した化工澱粉であってもよい。 本発明のα−グルコシル転移酵素を基質に作用させるに際し、その基質濃度は特に限定されず、例えば、基質濃度0.5%(w/v)の比較的低濃度の溶液を用いた場合でも、本発明のα−グルコシル転移酵素の反応は進行して分岐α−グルカンを生成する。 工業的には、基質濃度は1%(w/v)以上、望ましくは5乃至60%(w/v)、更に望ましくは、10乃至50%(w/v)の範囲から選ばれる濃度が好適であり、この条件下で、本発明の分岐α−グルカンを有利に生成させることができる。 反応温度は反応が進行する温度、すなわち60℃付近までの温度で行えばよい。 好ましくは30乃至50℃付近の温度を用いる。 反応pHは、通常、4乃至8の範囲、好ましくはpH5乃至7の範囲に調整するのがよい。 酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜選択すればよい。 例えば、澱粉又はその部分分解物やアミロースの水溶液に、本発明のα−グルコシル転移酵素を作用させた場合の分岐α−グルカンの生成メカニズムは、以下のように推察される。 また、本発明のα−グルコシル転移酵素産生能を有するバチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)は、その培養物中に本発明のα−グルコシル転移酵素のみならず、ある種のアミラーゼをも同時に産生し、意外にも、α−グルコシル転移酵素とこのアミラーゼを併用してマルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα−1,4グルカンに作用させると、α−グルコシル転移酵素を単独で作用させた場合よりも水溶性食物繊維含量を更に高めた分岐α−グルカンを製造できることが判明した。 バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)が産生するアミラーゼとしては、下記の理化学的性質を有するものが挙げられる。 本発明のα−グルコシル転移酵素とこのアミラーゼを併用して澱粉部分分解物に作用させた場合に得られる分岐α−グルカンの水溶性食物繊維含量が、α−グルコシル転移酵素のみを用いて調製した分岐α−グルカンの場合よりも高い理由としては、α−グルコシル転移酵素の作用で生成する分岐α−グルカンに対し、アミラーゼがさらにグリコシル基を転移し、グルカンにおける分岐の程度(頻度)をさらに高めたものと推察される。 また、酵素反応によって本発明の分岐α−グルカンを調製する際、他の公知のアミラーゼを併用して反応させることにより、分岐α−グルカンの分子量分布を調節することも、また、消化性をさらに低減した分岐α−グルカンにすることも、さらには還元力を低減することも有利に実施できる。 例えば、澱粉液化液に、本発明のα−グルコシル転移酵素とともに、α−アミラーゼやCGTaseなど、澱粉の内部のα−1,4結合を加水分解し、新たな非還元末端グルコース残基を生じさせる酵素を併用して作用させることにより、分子量分布の幅を狭め、粘度を低減させ消化性の低減に寄与するα−1,3、α−1,6及びα−1,3,6結合の割合をさらに増加させることも有利に実施できる。 また、イソアミラーゼなどの澱粉枝切り酵素を併用することにより、分子量分布の幅を狭め、粘度を低減させたり、特開平7−143876号公報などに開示された非還元性糖質生成酵素(別名:マルトオリゴシルトレハロース生成酵素(EC 5.4.99.15))を併用することにより、還元末端部分を部分的にトレハロース構造に変換して還元力を低減させることも有利に実施できる。 また、本発明の分岐α−グルカンは、マルトース及び/又はグルコース重合度3以上のα−1,4グルカンを含有する栄養培地で、本発明のα−グルコシル転移酵素産生能を有する微生物を培養し、培養液中に生成する分岐α−グルカンを採取することによっても製造することができる。 上記の反応又は培養によって得られた分岐α−グルカンは、そのまま分岐α−グルカン製品とすることもできる。 また、必要に応じて、反応液に、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ及びα−グルコシダーゼから選ばれる1種又は2種以上を作用させて、可消化部分を加水分解した後、非消化部分を分画により回収したり、酵母などを用いた発酵処理によりグルコースをはじめとする分解物を除去したりすることにより、消化性のさらに低減した分岐α−グルカンを調製することもできる。 一般的には、分岐α−グルカンを含有する反応液はさらに精製して用いられる。 精製方法としては、糖の精製に用いられる通常の方法を適宜採用すればよく、例えば、活性炭による脱色、H型、OH型イオン交換樹脂による脱塩、アルコールおよびアセトンなど有機溶媒による分別、適度な分離性能を有する膜による分離などの1種または2種以上の精製方法が適宜採用できる。 本発明のα−グルコシル転移酵素は、糊化澱粉や比較的低DE(Dextrose Equivalent)、好ましくはDE20未満の澱粉部分分解物に作用させた場合、グルコースやマルトースなどの低分子オリゴ糖をほとんど生成しないので、得られる反応生成物をカラムクロマトグラフィーなどの精製手段で精製する必要は特にないものの、用途など目的に応じてさらに分画することも随意である。 分画にイオン交換クロマトグラフィーを採用する場合、例えば、特開昭58−23799号公報、特開昭58−72598号公報などに開示されている強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーを有利に用いることができる。 この際、固定床方式、移動床方式、疑似移動床方式のいずれの方式を採用することも随意である。 このようにして得られた本発明の分岐α−グルカンは溶液のまま利用できるものの、保存に有利で、且つ、用途によっては利用しやすいように、乾燥し、粉末品とするのが望ましい。 乾燥には、通常、凍結乾燥、或いは噴霧乾燥やドラム乾燥などの方法を用いることができる。 乾燥物は、必要に応じて、粉砕し粉末化することも、篩別又は造粒して、特定粒度の範囲に整えることも有利に実施できる。 また、本発明の分岐α−グルカンは、浸透圧調節性、賦形性、照り付与性、保湿性、粘度付与性、接着性、他の糖の結晶防止性、難発酵性などの性質を具備している。 従って、本発明の分岐α−グルカン又はこれを含む糖質は、水溶性食物繊維、品質改良剤、安定剤、賦形剤などとして、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、化粧品、医薬品などの各種組成物に有利に利用できる。 本発明の分岐α−グルカンは、例えば、粉飴、ブドウ糖、果糖、異性化糖、砂糖、麦芽糖、トレハロース、蜂蜜、メープルシュガー、ソルビトール、マルチトール、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、ラカンカ甘味物、グリチルリチン、ソーマチン、スクラロース、L−アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、サッカリン、グリシン、アラニンなどのような甘味料と、また、デキストリン、澱粉、デキストラン、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。 また、本発明の分岐α−グルカンの粉末状製品は、そのままで、又は必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体など各種形状に成形して使用することも随意である。 また、本発明の分岐α−グルカンは、経口摂取しても消化され難いので、水溶性食物繊維として一般の飲食物などに有利に利用できる。 例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料への品質改良剤などとして使用することも有利に実施できる。 また、例えば、せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、まんじゅう、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、ヌガー、キャンディーなどの各種洋菓子、アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食品類、福神漬け、べったら漬、千枚漬などの漬物類、たくわん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷらなどの魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、タラ、タイ、エビなどの田麩などの各種珍味類、海苔、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類、煮豆、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜の瓶詰、缶詰類、合成酒、増醸酒、清酒、果実酒、発泡酒、ビールなどの酒類、珈琲、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなどの即席食品、更には、離乳食、治療食、ドリンク剤、ペプチド食品、冷凍食品などの各種飲食物に配合可能な水溶性食物繊維として有利に利用できる。 また、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料、餌料などとして整腸、便秘の改善、肥満の防止目的で使用することもできる。 その他、タバコ、練歯磨、口紅、リップクリーム、内服液、錠剤、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香剤、うがい剤など各種の固形物、ペースト状、液状などの形態で嗜好物、化粧品、医薬品などの各種組成物への品質改良剤、安定化剤などとして有利に利用できる。 品質改良剤、安定化剤としては、有効成分、活性などを失い易い各種生理活性物質又はこれを含む健康食品、機能性食品、医薬品などに有利に適用できる。 例えば、インターフェロン−α、−β、−γ、ツモア・ネクロシス・ファクター−α、−β、マクロファージ遊走阻止因子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、インターロイキンIIなどのリンホカイン含有液、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチン、卵細胞刺激ホルモンなどのホルモン含有液、BCGワクチン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワクチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免疫グロブリンなどの生物製剤含有液、ペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、硫酸カナマイシンなどの抗生物質含有液、チアミン、リボフラビン、L−アスコルビン酸、肝油、カロチノイド、エルゴステロール、トコフェロールなどのビタミン含有液、EPA、DHA、アラキドン酸、などの高度不飽和脂肪酸又はそのエステル誘導体、リパーゼ、エステラーゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼなどの酵素含有液、薬用人参エキス、スッポンエキス、クロレラエキス、アロエエキス、プロポリスエキスなどのエキス類、ウイルス、乳酸菌、酵母などの生菌ペースト、ローヤルゼリーなどの各種生理活性物質も、本発明の分岐α−グルカンを品質改良剤、安定化剤として用いることにより、その有効成分、活性を失うことなく、安定で高品質の液状、ペースト状または固状の健康食品、機能性食品や医薬品などを容易に製造できることとなる。 以上、述べたような各種組成物に、本発明の分岐α−グルカンを含有させる方法としては、その製品が完成するまでの工程において含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、固化など公知の方法が適宜選ばれる。 その量は、組成物の、通常、0.1質量%以上、望ましくは、1質量%以上含有せしめるのが好適である。 また、本発明のα−グルコシル転移酵素は、マルトース及び/又はグルコース重合度3以上のα−1,4グルカンを含んでなる組成物に作用させると、α−1,4グルカンを本発明の分岐α−グルカンに変換することから、マルトース及び/又はグルコース重合度3以上のα−1,4グルカンを含んでなる組成物の改質剤として用いることもできる。 さらに、本発明のα−グルコシル転移酵素は、マルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα−1,4グルカンに作用させると本発明の分岐α−グルカンを生成し、一方、本発明の分岐α−グルカンは、イソマルトデキストラナーゼ(EC 3.2.1.94)により消化するとイソマルトースが基質固形物当たり25質量%以上50質量%以下生成することから、本発明のα−グルコシル転移酵素をマルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα−1,4グルカンを原料として、これら2段階の酵素反応により、イソマルトース又はこれを含む糖質を製造することができる。 以下、実験により本発明を詳細に説明する。 <実験1:バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)由来α−グルコシル転移酵素を用いたグルカンの調製> 500ml容三角フラスコ12本に種培養と同じ組成の液体培地を100mlずつ入れて、加熱滅菌、冷却して温度27℃とした後、種培養液約1mlずつを接種し、温度27℃、24時間回転振盪培養した。 培養後、三角フラスコから培養液を抜き出し、遠心分離(8,000rpm、20分間)して菌体を除去し、得られた培養上清のα−グルコシル転移酵素活性を測定したところ、2.8単位/mlであった。 この培養上清約1Lに、80%飽和となるように硫安を添加、溶解し、4℃、24時間放置することにより塩析した。 沈殿した塩析物を遠心分離(11,000rpm、30分間)にて回収し、これを20mM酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、粗酵素液約20mlを得た。 この粗酵素液を20mM酢酸緩衝液(pH4.5)で平衡化した東ソー株式会社製『CM−トヨパール 650S』ゲルを用いた陽イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル容量20ml)に供した。 非吸着タンパク質を溶出後、食塩濃度0Mから0.5Mのリニアグラジエントで溶出させ、食塩濃度約0.18M付近から0.45M付近に溶出した画分を回収し、20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して透析した。 得られた透析液をα−グルコシル転移酵素標品とした。 <実験1−2:α−グルコシル転移酵素を用いた分岐α−グルカンの調製> <実験2:アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)由来α−グルコシル転移酵素を用いたグルカンの調製> <実験2−1:アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)由来α−グルコシル転移酵素の調製> 500ml容三角フラスコ12本に種培養と同じ組成の液体培地を100mlずつ入れて、加熱滅菌、冷却して温度27℃とした後、種培養液約1mlずつを接種し、温度27℃、24時間回転振盪培養した。 培養後、三角フラスコから培養液を抜き出し、遠心分離(8,000rpm、20分間)して菌体を除き、得られた培養上清のα−グルコシル転移酵素活性を測定したところ、0.53単位/mlであった。 この培養上清約1Lに、80%飽和となるように硫安を添加、溶解し、4℃、24時間放置することにより塩析した。 沈殿した塩析物を遠心分離(11,000rpm、30分間)にて回収し、これを20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析した。 この粗酵素液を20mM酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化した東ソー株式会社製『DEAE−トヨパール 650S』ゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル容量20ml)に供した。 非吸着タンパク質を溶出後、食塩濃度0Mから0.5Mのリニアグラジエントで溶出させ、食塩濃度約0.05M付近から0.2M付近に溶出した画分を回収し、20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して透析した。 得られた透析液をα−グルコシル転移酵素標品とした。 <実験2−2:α−グルコシル転移酵素を用いたグルカンの調製> 以下の実験3及び4では、実験1−2で得たグルカンと実験2−2で得たグルカンを区別する目的で、それぞれを「グルカンA」及び「グルカンB」と呼称する。 <実験3:グルカンA及びBの水溶性食物繊維としての評価> <分析用試料溶液の調製> <高速液体クロマトグラフィー条件> <被験試料の水溶性食物繊維含量の算出> 式1: 式2: 上記の酵素−HPLC法により求めたグルカンA及びグルカンBの水溶性食物繊維含量はそれぞれ42.1質量%及び41.8質量%であった。 一方、対照1の澱粉部分分解物は酵素処理により全てグルコースにまで分解され、水溶性食物繊維含量は0質量%と評価された。 また、対照2の市販の難消化性デキストリン(商品名『パインファイバー』、松谷化学工業株式会社販売)のそれは48.7質量%であった。 これらの結果は、水溶性食物繊維を含まない澱粉部分分解物を基質として本発明のα−グルコシル転移酵素を作用させることにより、市販の難消化性デキストリンとほぼ同等の水溶性食物繊維含量を示すグルカンを容易に調製できることを示している。 <実験4:グルカンA及びBの構造解析> 表3の結果から明らかなように、バチルス・サーキュランス PP710由来及びアルスロバクター・グロビホルミス PP349由来α−グルコシル転移酵素によりそれぞれ調製したグルカンA及びBのメチル化分析の結果を、基質である澱粉部分分解物のそれと比較すると、いずれのグルカンの場合も、2,3,6−トリメチル化物が著しく減少しており、一方、2,3,4−トリメチル化物が30%以上まで著しく増加していた。 このことは、バチルス・サーキュランス PP710及びアルスロバクター・グロビホルミス PP349由来α−グルコシル転移酵素の反応によって、グルコースが主としてα−1,4結合によって重合した構造を有する澱粉部分分解物が、α−1,6結合を30%以上含む分岐α−グルカンに変換されたことを物語っている。 また、2,3,4,6−テトラメチル化物、2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物が増加していることから、非還元末端グルコース、α−1,3結合及びα−1,3,6結合が新たに生成していることも判明した。 グルカンAの部分メチル化物における2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物の含量は、それぞれ1.1%及び0.8%であり、グルカンBの部分メチル化物における2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物の含量は、それぞれ0.9%及び1.1%であった。 さらに、グルカンA及びBにおいて、2,3−ジメチル化物の存在比は基質とほとんど差がないことから、基質に元々存在する分岐であるα−1,4,6結合に大きな変化はないと考えられた。 この結果から、グルカンA及びBは、基質である澱粉部分分解物とは大きく異なり、グルコースの結合様式がα−1,4結合及びα−1,6結合を主体とし、α−1,3結合及びα−1,3,6結合をも僅かに有する分岐グルカン(分岐α−グルカン)であることが判明した。 なお、分岐α−グルカンA及びBを構成するグルコースの1位のアノマー型は、核磁気共鳴(NMR)分析において、 1 H−NMRスペクトルから、全てα型であることが判明した。 <実験4−2:分岐α−グルカンA及びBのイソマルトデキストラナーゼ消化試験> <実験4−3:分岐α−グルカンA及びBのα−グルコシダーゼ及びグルコアミラーゼ消化試験> <実験4−4:分子量分布分析> 基質として用いた澱粉部分分解物が、分子量分布分析においてグルコース重合度499及び6.3に相当する位置に2つのピーク(図1のクロマトグラムaにおける符号1及び2)を有する糖質混合物であるのに対して、分岐α−グルカンAは、グルコース重合度384、22.2、10.9及び1に相当する位置に4つのピーク(図1のクロマトグラムbにおける符号3、4、5及び6)を有する糖質の混合物、また、分岐α−グルカンBは、グルコース重合度433、22.8、10.9及び1に相当する位置に4つのピーク(図1のクロマトグラムcにおける符号7、8、9及び10)を有する糖質の混合物であった。 符号6及び10のピークはグルコースに相当するものの、その含量はごく僅かであることから、バチルス・サーキュランス PP710及びアルスロバクター・グロビホルミス PP349由来酵素の加水分解作用は僅かであることがわかる。 表4から明らかなように、基質である澱粉部分分解物に比べ、グルカンA及びBの数平均分子量及び重量平均分子量は共に60%程度に減少しており、全体として低分子化していた。 また、分子量分布の拡がりの指標である重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)が澱粉部分分解物とグルカンA及びB間でそれほど変化していないことから、バチルス・サーキュランス PP710及びアルスロバクター・グロビホルミス PP349由来α−グルコシル転移酵素は、澱粉部分分解物の非還元末端にのみ作用していると考えられた。 表3の結果から、基質として用いた澱粉部分分解物においてはグルコースの結合様式の約90%がα−1,4結合であり、わずかにα−1,4,6結合を有しているのに対し、グルカンA及びBは、α−1,4結合に対するα−1,6結合の割合が極めて高く、α−1,4,6結合に加えて、α−1,3結合及びα−1,3,6結合をも有する分岐を有するグルカンであることが判明した。 このような構造を有する分岐α−グルカンはこれまで全く知られていない。 メチル化分析の結果に基づいて本発明の分岐α−グルカンの構造を推定し、その構造を模式的に示した図を基質である澱粉部分分解物のそれとともに図2に示した。 図2中、符号1及び2は、それぞれ原料澱粉部分分解物及び本発明の分岐α−グルカンの模式図である。 なお、図2において、符号a、b、c、d、e及びfはそれぞれ、澱粉部分分解物または本発明の分岐α−グルカンにおける、非還元末端グルコース残基、α−1,3結合しているグルコース残基、α−1,4結合しているグルコース残基、α−1,6結合しているグルコース残基、α−1,3,6結合しているグルコース残基及びα−1,4,6結合しているグルコース残基を意味している。 また、同模式図におけるグルコース間の斜め破線、横実線及び縦実線はそれぞれ、α−1,3結合、α−1,4結合及びα−1,6結合を意味している。 <実験5:バチルス・サーキュランス PP710株由来α−グルコシル転移酵素の生産> 容量30Lのファーメンターに種培養と同じ組成の液体培地を約20L入れて、加熱滅菌、冷却して温度27℃とした後、種培養液約200mlを接種し、温度27℃、pH5.5乃至8.0に保ちつつ、24時間通気攪拌培養した。 培養後、ファーメンターから培養液を抜き出し、遠心分離(8,000rpm、20分間)して菌体を除き、培養上清約18Lを得た。 培養液及び培養上清について、α−グルコシル転移酵素活性を測定したところ、培養液の該酵素活性は約2.7単位/ml、培養上清の該酵素活性は約2.6単位/mlであった。 バチルス・サーキュランス PP710によって生産される本発明のα−グルコシル転移酵素はその大部分が菌体外に存在することが判明した。 <実験6:バチルス・サーキュランス PP710由来α−グルコシル転移酵素の精製> 精製したα−グルコシル転移酵素標品を5乃至20w/v%濃度勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動により酵素標品の純度を検定したところ、蛋白バンドは単一であり、純度の高い標品であった。 <実験7:バチルス・サーキュランス PP710由来α−グルコシル転移酵素の性質> <実験7−2:酵素反応の至適温度及び至適pH> <実験7−3:酵素の温度安定性及びpH安定性> <実験7−4:酵素活性に及ぼす金属塩の影響> 表6の結果から明らかなように、本α−グルコシル転移酵素の活性は、Hg 2+イオンで著しく阻害され、Cu 2+イオンで阻害されることが判明した。 <実験8:アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)由来α−グルコシル転移酵素の調製> 容量30Lのファーメンターに種培養と同じ組成の液体培地を約20L入れて、加熱滅菌、冷却して温度27℃とした後、種培養液約200mlを接種し、温度27℃、pH5.5乃至7.0に保ちつつ、24時間通気攪拌培養した。 培養後、ファーメンターから培養液を抜き出し、遠心分離(8,000rpm、20分間)して菌体を除き、培養上清約18Lを得た。 培養液及び培養上清について、α−グルコシル転移酵素活性を測定したところ、培養液の該酵素活性は約0.36単位/ml、培養上清の該酵素活性は約0.42単位/mlであった。 アルスロバクター・グロビホルミス PP349によって生産される本α−グルコシル転移酵素はその大部分が菌体外に存在することが判明した。 <実験9:アルスロバクター・グロビホルミス PP349由来α−グルコシル転移酵素の精製> 精製したα−グルコシル転移酵素標品を5乃至20w/v%濃度勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動により酵素標品の純度を検定したところ、蛋白バンドは単一であり、純度の高い標品であった。 <実験10:アルスロバクター・グロビホルミス PP349由来α−グルコシル転移酵素の性質> <実験10−2:酵素反応の至適温度及び至適pH> <実験10−3:酵素の温度安定性及びpH安定性> <実験10−4:酵素活性に及ぼす金属塩の影響> 表8の結果から明らかなように、本α−グルコシル転移酵素の活性は、Hg 2+イオンで著しく阻害され、Cu 2+イオンで阻害されることが判明した。 <実験11:各種糖質への作用> 表9の結果から明らかなように、本発明のα−グルコシル転移酵素は、試験した糖質のうち、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースによく作用し、また、ニゲロース、イソマルトース、ネオトレハロース、イソマルトトリオース、イソパノースに作用した。 さらに、コージビオースにも僅かに作用した。 作用した糖質からは、いずれも分解生成物と共に、糖転移生成物も認められた。 一方、本発明のα−グルコシル転移酵素は、メチル−α−グルコシド、メチル−β−グルコシド、パラニトロフェニル−α−グルコシド、パラニトロフェニル−β−グルコシド、トレハロース、セロビオース、スクロース、ラクトースなどには作用が認められなかった。 これらの結果及び本α−グルコシル転移酵素が澱粉部分分解物に作用し分岐α−グルカンを生成することより、本酵素はマルトース及びグルコース重合度3以上のα−1,4グルカン又はグルコースから構成されるα−グルコオリゴ糖に幅広く作用することが判明した。 <実験12:作用メカニズム> <実験12−1:マルトースからの生成物> 表10の結果から明らかなように、反応初期(反応1時間)において、本発明のα−グルコシル転移酵素の作用により、基質マルトースから、主としてグルコース、マルトトリオース及びパノースが生成した。 さらに反応2時間及び4時間からグルコース重合度4及び5のオリゴ糖が生成した。 反応が進むと、マルトトリオースは反応2時間(14.4%)をピークに、また、パノースは反応4時間(29.3%)をピークに減少し、その減少とともにイソマルトースの増加が認められた。 さらに、反応48時間までイソマルトース及び重合度4以上のオリゴ糖の増加が認められた。 これらの結果から推察すると、本発明のα−グルコシル転移酵素はマルトースに作用し、反応初期において、α−1,4グルコシル転移とα−1,6グルコシル転移の両グルコシル転移を触媒することにより、グルコース、マルトトリオース及びパノースを生成し、反応の進行にともない、グルコースにα−1,6グルコシル転移したイソマルトースや、そのイソマルトースにα−1,4グルコシル転移及びα−1,6グルコシル転移したイソパノース及びイソマルトトリオースが生成することがわかった。 本実験においては、多種類存在する重合度4以上のオリゴ糖を同定することは困難であることから、実験12−2において、マルトースより重合度の高いマルトペンタオースを基質として、さらに反応メカニズムを解析した。 <実験12−2:マルトペンタオースからの生成物> 表11及び12の結果から明らかなように、反応初期(反応1時間)において、基質マルトペンタオースから、基質よりグルコース重合度が1小さいオリゴ糖とグルコース重合度が1大きいオリゴ糖が優先的に生成したことから、本酵素がグルコシル転移を触媒していることが確認された。 さらに反応が進むと、種々のグルコース重合度を有する反応生成物が生成し、反応24時間後には、グルコース重合度9以上のグルカンが21.1%にも達した。 メチル化分析の結果から、反応が進行するにつれて、反応生成物においては1,4結合したグルコース残基が減少するとともに、1,6結合したグルコース残基が顕著に増加し、また、1,3結合したグルコース残基、1,4,6結合したグルコース残基及び1,3,6結合したグルコース残基が徐々に増加することが判明した。 また、イソマルトデキストラナーゼ消化後の糖組成におけるイソマルトース含量もまた、反応の進行とともに顕著に増加することが判明した。 なお、アルスロバクター・グロビホルミス PP349由来のα−グルコシル転移酵素を用いて同様に試験した場合も、ほぼ同様な結果が得られた。 実験12−1及び12−2の結果から、本発明のα−グルコシル転移酵素の反応メカニズムは以下のように考えられた。 <実験13:α−グルコシル転移反応と反応液の還元力の変化> 表13の結果から明らかなように、本発明のα−グルコシル転移酵素をマルトースに作用させたところ、マルトース濃度が1w/v%と比較的低い場合には、ごく僅かな還元力の増加が認められ、また、マルトース濃度が30w/v%と比較的高い場合には、ほとんど反応液の還元力の増加は認められなかった。 マルトース濃度が1w/v%と比較的低く、且つ、マルトースの残存量が10%以下の場合においても反応液の還元力の増加がごく僅かであることは、本発明のα−グルコシル転移酵素は本質的に転移反応を触媒する酵素であり、反応に際してほとんど加水分解を行わないことを意味している。 本発明のα−グルコシル転移酵素は効率良くα−グルコシル転移を行う酵素であることがわかった。 なお、アルスロバクター・グロビホルミス PP349由来のα−グルコシル転移酵素を用いて同様に試験した場合も、ほぼ同様な結果が得られた。 <実験14:分岐α−グルカンの生成における精製α−グルコシル転移酵素と粗酵素の比較> 表14に示すように、バチルス・サーキュランス PP710由来α−グルコシル転移酵素の粗酵素を用いて調製したグルカンCは、意外にも、メチル化分析において、非還元末端グルコース残基に相当する2,3,4,6−テトラメチル化物と、α−1,6結合したグルコース残基に相当する2,3,4−トリメチル化物の含量がグルカンAに比べ増加していた。 この結果は、グルカンCにはグルカンAに比べて非還元末端が多く、また、α−1,6結合がより多く存在することを物語っている。 さらに、グルカンCでは2,4−ジメチル化物が4.8%と、グルカンAの0.8%に比べ増加していた。 この結果は、1,3結合と1,6結合の両方にあずかるグルコース残基が増加していることを示している。 また、表15から明らかなように、グルカンCは、グルカンAに比べ数平均分子量及び重量平均分子量がいずれも小さく(グルコース重合度が小さく)、遙かに高い水溶性食物繊維含量を示した。 この結果は、バチルス・サーキュランス PP710由来α−グルコシル転移酵素の粗酵素には、α−グルコシル転移酵素とは相違する他の酵素が混在しており、その混在酵素が分岐α−グルカンにおけるα−1,6結合の増加、1,3結合と1,6結合の両方にあずかるグルコース残基の増加、低分子化、及び、水溶性食物繊維含量の増加に寄与していることを示唆するものである。 <実験15:バチルス・サーキュランス PP710由来α−グルコシル転移酵素の粗酵素に混在する酵素の同定と単離・精製> <実験15−1:混在する酵素の同定と活性測定> 混在するアミラーゼの活性は、以下のようにして測定した。 すなわち、短鎖アミロース(商品名「アミロースEX−I」、株式会社林原生物化学研究所販売、平均重合度17)を最終濃度1w/v%となるように1mMの塩化カルシウムを含む50mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解させて基質液とし、その基質液2mlに、酵素液0.2mlを加え35℃で30分間酵素反応させ、その反応液0.2mlを8mlの0.02N硫酸溶液に混合し、反応停止させた後、0.2mlの0.1Nヨウ素溶液を添加し、25℃で15分間保持した後に660nmの吸光度を測定する。 別途反応0時間の反応液について同様に測定し、反応時間当たりのヨウ素呈色の減少を測定する。 アミラーゼの活性1単位は、上記の条件下で20mgの短鎖アミロースの660nmにおける吸光度(ヨウ素呈色)を10%低下させる酵素量の10倍量と定義した。 <実験15−2:混在アミラーゼの単離・精製> 精製したアミラーゼ標品を5乃至20w/v%濃度勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動により酵素標品の純度を検定したところ、蛋白バンドは単一であり、純度の高い標品であった。 <実験16:バチルス・サーキュランス PP710由来アミラーゼの性質> <実験16−2:アミラーゼの至適温度及び至適pH> <実験16−3:アミラーゼの温度安定性及びpH安定性> <実験16−5:アミラーゼの基質特異性> <実験17:α−グルコシル転移酵素とアミラーゼを併用した分岐α−グルカンの調製> 表17の結果から明らかなように、α−グルコシル転移酵素にアミラーゼを併用すると、得られる分岐α−グルカンの分子量は低下し、水溶性食物繊維含量は飛躍的に増加した。 また、アミラーゼの作用量が多くなるにつれて、得られる分岐α−グルカンの数平均分子量及び重量平均分子量は共に低下し、さらに重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)も低下したことから、分子量分布の幅が狭くなることが判明した。 アミラーゼの作用量が固形物1グラム当たり0.5単位の場合、Mw/Mnは2.1まで低下した。 さらに、得られた分岐α−グルカンにおける水溶性食物繊維の含量は、アミラーゼの作用量が固形物1グラム当たり0.5単位以上で約76質量%にまで達した。 この結果から、実験14においてバチルス・サーキュランス PP710由来α−グルコシル転移酵素の粗酵素を用いて得られたグルカンCにおいて、分子量が小さく、食物繊維含量が高くなったのは、粗酵素に混在するアミラーゼに起因することが確認された。 混在するアミラーゼが、基質である澱粉部分分解物およびα−グルコシル転移酵素の産物である分岐α−グルカンを部分的に加水分解することにより分岐α−グルカンの分子量を低下させ、また、グリコシル基をさらに分岐α−グルカンに転移することにより、結果的に食物繊維含量を高めるよう作用しているものと推察される。 さらに、この結果は、アミラーゼを本発明のα−グルコシル転移酵素と組み合わせることにより分子量が小さく、水溶性食物繊維含量を高めた分岐α−グルカンを製造できることを示している。 <実験18:α−グルコシル転移酵素と他の公知のアミラーゼを併用した分岐α−グルカンの調製> <実験18−1:α−グルコシル転移酵素とイソアミラーゼを併用した分岐α−グルカンの調製と得られた分岐α−グルカンの分子量分布と水溶性食物繊維含量> 表18のα−グルコシル転移酵素のみを澱粉部分分解物に作用させた場合の結果から明らかなように、α−グルコシル転移酵素のみでは分子量分布に大きな影響を及ぼさないものの、表18及び図16の結果から明らかなように、イソアミラーゼの作用量が多くなるにつれて、得られる分岐α−グルカンの数平均分子量及び重量平均分子量は共に低下し、さらに重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)も低下したことから、分子量分布の幅が狭くなることが判明した。 イソアミラーゼの作用量が固形物1グラム当たり1000単位の場合、Mw/Mnは1.9まで低下し、分岐α−グルカンは、グルコース重合度20.6にピークを有する分子量分布を示した。 一方、各反応条件により得られた分岐α−グルカンにおける水溶性食物繊維の含量は、イソアミラーゼの作用量にあまり影響されず、40乃至44質量%程度であった。 この結果から、本発明のα−グルコシル転移酵素にさらにイソアミラーゼを併用して澱粉部分分解物に作用させることにより、水溶性食物繊維含量をほとんど変化させることなく、分子量が低下した分岐α−グルカンを製造できることが判明した。 <実験18−2:α−グルコシル転移酵素にα−アミラーゼを併用した分岐α−グルカンの調製と得られた分岐α−グルカンの分子量分布と水溶性食物繊維含量> 図17及び表19の結果から明らかなように、α−アミラーゼの作用量が多くなるにつれて得られる分岐α−グルカンの数平均分子量及び重量平均分子量が共に低下し、さらに重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)も低下したことから、分子量分布の幅が狭くなることが判明した。 α−アミラーゼの作用量が固形物1グラム当たり1.0単位(図17の符号e)の場合、Mw/Mnは2.4まで低下し、分岐α−グルカンは、グルコース重合度11.8にピークを有する分子量分布を示した。 一方、各反応条件により得られた分岐α−グルカンにおける水溶性食物繊維の含量は、α−アミラーゼの作用量が多くなるほど増加する傾向が認められた。 この結果から、本発明のα−グルコシル転移酵素にα−アミラーゼを併用して澱粉部分分解物に作用させることにより、水溶性食物繊維含量が増加し、分子量が低下した分岐α−グルカンを製造できることが判明した。 <実験18−3:α−グルコシル転移酵素とCGTaseを併用した分岐α−グルカンの調製と得られた分岐α−グルカンの分子量分布と水溶性食物繊維含量> 図18及び表20の結果から明らかなように、CGTaseの作用量が多くなるにつれて、数平均分子量及び重量平均分子量が共に低下し、さらに重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)も低下したことから、分子量分布の幅が狭くなることが判明した。 CGTaseの作用量が固形物1グラム当たり1.0単位(図18の符号e)の場合、Mw/Mnは3.2まで低下し、分岐α−グルカンは、グルコース重合度79.1にピークを有する分子量分布を示した。 一方、分岐α−グルカンにおける水溶性食物繊維の含量は、CGTaseの作用量が多くなるほど増加する傾向が認められ、実験18−2のα−アミラーゼを併用した場合よりも顕著に増加し、CGTaseを固形物1グラム当たり1.0単位用いた場合では、水溶性食物繊維含量は70.5質量%に達した。 この結果から、本発明のα−グルコシル転移酵素にCGTaseを併用して澱粉部分分解物に作用させることで、分子量が低下し、水溶性食物繊維含量が顕著に増加した分岐α−グルカンが調製できることが判明した。 CGTaseはα−1,4結合の加水分解作用と共に転移作用をも有していることから、α−アミラーゼと比較して極端に分子量を低下させることなく、非還元末端グルコシル残基を生成するため、α−グルコシル転移酵素の作用頻度が高くなり、α−アミラーゼ添加よりも水溶性食物繊維含量が増加した分岐α−グルカンが得られたものと推察される。 <実験18−4:α−グルコシル転移酵素とイソアミラーゼ及びCGTaseを併用した分岐α−グルカンの調製と得られた分岐α−グルカンの分子量分布と水溶性食物繊維含量> 図19及び表21の結果から明らかなように、本発明のα−グルコシル転移酵素と固形物1グラム当たり1単位のCGTaseを併用して調製した分岐α−グルカンの重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)は3.2まで低下し、さらに固形物1グラム当たり1000単位のイソアミラーゼを併用した場合(図19の符号e)には1.9まで低下した。 α−グルコシル転移酵素とCGTaseを組み合わせて調製した分岐α−グルカンの水溶性食物繊維含量は約70質量%にまで増加し、さらにイソアミラーゼを併用した場合にも低下することなく、高い含量を維持していた。 この結果から、本発明のα−グルコシル転移酵素とイソアミラーゼ及びCGTaseを併用して澱粉部分分解物に作用させることにより、分子量が顕著に低下すると共に水溶性食物繊維含量が顕著に増加した分岐α−グルカンを調製できることが判明した。 <実験19:分岐α−グルカンの機能性> <実験19−1:α−グルコシル転移酵素とイソアミラーゼ及びCGTaseを併用した分岐α−グルカンの精製> 表22及び23の結果から明らかなように、得られた分岐α−グルカンは、メチル化分析において、部分メチル化物である2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物を1対2.4の比で含有し、2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の合計は部分メチル化物の77.5%を占めていた。 また、本分岐α−グルカンにおいて、2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物は、それぞれ部分メチル化物の1.6%及び2.4%を示した。 また、本分岐α−グルカンは、重量平均分子量5,480ダルトン、Mw/Mn2.3を示し、酵素−HPLC法により求めた水溶性食物繊維含量が68.6質量%、イソマルトデキストラナーゼ消化により、糖組成当たりイソマルトースを36.4質量%生成するグルカンであった。 本発明の分岐α−グルカンの有用性を評価する目的で、実験19−1で調製した分岐α−グルカンを用いて、う蝕原性、消化性、血糖値とインスリン量に及ぼす影響、及び急性毒性を実験19−2乃至19−7で調べた。 <実験19−2:分岐α−グルカンのう蝕原性菌による酸発酵性試験> 表24の結果から明らかなように、酸発酵を受けるスクロースの場合はpH約4にまで低下するのに対して、本発明の分岐α−グルカンは、ストレプトコッカス・ソブリナス及びストレプトコッカス・ミュータンスによる酸発酵をほとんど受けず、pHは約6を維持しており、歯のエナメル質が脱灰する臨界pHである5.5より高いpHであった。 本発明の分岐α−グルカンは、う蝕原性が極めて低いことが確認された。 <実験19−3:分岐α−グルカンの消化性試験> 表25の結果から明らかなように、本発明の分岐α−グルカンは、唾液アミラーゼ、人工胃液によっては全く消化されず、膵液アミラーゼでごく僅か分解された。 また、対照の難消化性デキストリンの小腸粘膜酵素による分解率が41.1%であるのに対して、分岐α−グルカンの分解率は16.4%と低く、本発明の分岐α−グルカンは市販の難消化性デキストリンよりもさらに消化され難いことが判明した。 <実験19−4:分岐α−グルカンの摂取が血糖値及びインスリン量に与える影響> 表26及び表27の結果から明らかなように、本発明の分岐α−グルカンは、市販の難消化性デキストリンと同様に、血糖値の上昇及びインスリン量の上昇が、グルコースに比べ低いことが判明した。 <実験19−5:急性毒性試験> <実験20:分岐α−グルカンの血糖上昇抑制作用> <実験20−1:分岐α−グルカンの摂取が澱粉部分分解物摂取時の血糖値及びインスリン量に与える影響> 表28乃至表31の結果から明らかなように、本発明の分岐α−グルカンは、市販の難消化性デキストリン(対照2)と同様に、用量依存的に、糖質(澱粉部分分解物)負荷時の、血糖値、血糖値のAUC値、インスリン量及びインスリン量のAUC値の上昇を、澱粉部分分解物を単独で摂取させた場合(対照1)に比べ抑制することが判明した。 また、これらの上昇抑制効果の程度を比較すると、測定した何れの指標においても、本発明の分岐α−グルカンの方が市販の難消化性デキストリンよりも強い抑制効果を示した。 <実験20−2:澱粉部分分解物摂取時の血糖値及びインスリン量への分岐α−グルカンの分子量の影響> 表32の結果から明らかなように、重量平均分子量が1,168乃至200,000の範囲にある本発明の分岐α−グルカンは、何れも澱粉部分分解物を経口投与した後の血糖値及びインスリン量の上昇を抑制した。 また、この血糖値及びインスリン量の上昇抑制効果の強さの程度で比較すると、分岐α−グルカンの分子量が1,168乃至60,000(水溶性食物繊維含量が58.1乃至80.4質量%)の場合に抑制効果が顕著となり、2,670乃至44,151(水溶性食物繊維含量が64.2乃至80.4質量%)の場合に特に強い抑制効果が認められた。 <実験20−3:分岐α−グルカンの長期摂取が澱粉部分分解物摂取時の血糖値及びインスリン量に与える影響> 表33乃至37の結果から明らかなように、本発明の分岐α−グルカンは、市販の難消化性デキストリン(対照2)と同様に、糖質(澱粉部分分解物)負荷時の、血糖値、血糖値のAUC値、インスリン量及びインスリン量のAUCの上昇を、精製飼料のみで飼育した場合(対照1)に比べ抑制することが判明した。 また、これらの数値上昇の抑制は、飼料に配合した分岐α−グルカンの濃度に依存しており、その効果は固形物として、分岐α−グルカンを2質量%配合した場合に顕著となり、5質量%では特に強い抑制が認められた。 また、市販の難消化性デキストリンを、固形物として5質量%配合した飼料で飼育したラットにおける、これらの指標の抑制の程度は、固形分として分岐α−グルカンを1質量%配合した飼料と同程度の抑制が認められたことから、本発明の分岐α−グルカンは、当該難消化性デキストリンよりも、糖質(澱粉部分分解物)負荷時の、血糖値、血糖値のAUC値、インスリン量及びインスリン量のAUCの上昇抑制効果に優れていることが確認された。 更に、澱粉部分分解物投与前の血糖値及びインスリン量を比較すると、分岐α−グルカンを固形物として2質量%又は5質量%配合した飼料を摂取させた群では、精製飼料のみ或いは難消化性デキストリンを固形物として5質量%含む飼料を摂取させた群よりも低く、本発明の分岐α−グルカンは、長期摂取により空腹時血糖値及び血中インスリン量を、市販の難消化性デキストリンよりも効果的に抑制する作用を有していることも明らかになった。 なお、試験飼料又は対照飼料で飼育4週間及び8週間で、ラットの体重を比較したところ、何れの群間でも、平均体重に差は認められなかったので、本実験で確認された分岐α−グルカンによる血糖値及びインスリン量の上昇抑制作用は、ラットの健康状態には何ら影響を与えないと判断した。 <実験21:分岐α−グルカンの摂取がヒトの血糖値及びインスリン量に与える影響> 表38の結果から明らかなように、本発明の分岐α−グルカンを摂取した場合には、ラットを用いた実験(実験20)と同様に、血糖値、血糖値のAUC値、インスリン量及びインスリン量のAUC値が、澱粉部分分解物を摂取させた場合に比べ有意に低いことが判明した。 <実験22:分岐α−グルカンの生体内脂質低減作用> <実験22−1:分岐α−グルカンの摂取が脂肪吸収に与える影響> 表39の結果から明らかなように、本発明の分岐α−グルカンを、固形物として5%配合した飼料を摂取させると、精製飼料のみで飼育した場合に比して、摂取4週間では、腎臓周囲および睾丸周囲脂肪質量が低値を示し、摂取8週間では、腎臓周囲及び睾丸周囲脂肪のいずれも有意に低値を示し、その低下は、特に睾丸周囲脂肪で顕著であった。 また、摂取4週間及び8週間で腸粘膜質量が有意に増加し、その増加は摂取8週間で顕著となった。 また、摂取8週間で盲腸内pHが有意に低下した。 さらに、血清脂質についてみると、中性脂肪値が摂取8週間で、総コレステロールが摂取4週間及び8週間で、何れも低下傾向を示し、LDL−コレステロールも低下した。 これら以外の測定値は、対照と差は認められなかった。 なお、具体的なデータは示さないが、盲腸内の有機酸濃度は、対照と差は認められなかった。 この結果は、本発明の分岐α−グルカンが、生体内脂質の低減作用を有することを物語っている。 また、腸粘膜の質量増加が認められることから、分岐α−グルカンによる脂質の過剰蓄積の抑制や実験20乃至21で確認された耐糖性の増強には、この試験で確認されたムチン分泌の増大を伴う小腸粘膜層の肥厚に起因する消化酵素の作用性低下や消化されたグルコースや脂肪の消化・吸収阻害、遅延が、重要な役割を果たしていると推察される。 <実験22−2:生体内脂質の過剰蓄積抑制に与える分岐α−グルカンの分子量の影響> 表40の結果から明らかなように、重量平均分子量が異なる本発明の分岐α−グルカンを摂取させた場合、何れの群においても内臓脂肪質量及び血清脂質量が、対照群よりも低値となり、本発明の分岐α−グルカンが内臓脂肪質量及び血清脂質量の上昇を抑制することが分かった。 また、この抑制効果の程度で比較すると、分岐α−グルカンの重量平均分子量が2,670乃至44,151のもので効果が顕著となり、2,670乃至25,618の場合に特に強い効果が認められた。 以上の実験19−2乃至19−5の結果から、本発明の分岐α−グルカンは、経口摂取しても虫歯になり難く、消化吸収され難く、低カロリーの水溶性食物繊維として有利に利用できることが判明した。 また、実験20乃至22の結果から、本発明の分岐α−グルカンは、血糖上昇抑制剤及び生体内脂質低減剤として利用できることも判明した。 以下、本発明のα−グルコシル転移酵素の製造例を実施例1及び2に、本発明の分岐α−グルカンの製造例を実施例3乃至6に示す。 また、本発明の分岐α−グルカンの物理化学的性質を実施例7に例示する。 本発明のα−グルコシル転移酵素を含んでなる品質改良剤を実施例8に、さらに、本発明の分岐α−グルカンを含有せしめた組成物を実施例9乃至22に示す。 バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)を実験5の方法に準じて、ファーメンターで約24時間培養した。 培養後、遠心分離して培養液上清を回収し、80%飽和となるように硫安を添加して4℃、24時間放置することにより塩析した。 塩析物を遠心分離して回収し、これに20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、膜濃縮して濃縮粗酵素液を調製した。 本濃縮粗酵素液のα−グルコシル転移酵素活性は200単位/mlであった。 また、本濃縮酵素液には約25単位/mlのアミラーゼ活性も認められた。 本品は、澱粉質の基質を用いた本発明の分岐α−グルカンの製造に、また、飲食物に含まれる澱粉質の品質改良剤などに有利に利用できる。 アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)を実験8の方法に準じて、ファーメンターで約24時間培養した。 培養後、遠心分離して培養液上清を回収し、80%飽和となるように硫安を添加して4℃、24時間放置することにより塩析した。 塩析物を遠心分離して回収し、これに20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、膜濃縮して濃縮酵素液を調製した。 本濃縮酵素液のα−グルコシル転移酵素活性は50単位/mlであった。 本品は、澱粉質の基質を用いた本発明の分岐α−グルカンの製造に、また、飲食物に含まれる澱粉質の品質改良剤などに有利に利用できる。 澱粉部分分解物(商品名『パインデックス#100』、松谷化学株式会社販売)を濃度30質量%になるよう水に溶解し、これをpH6.0に調整し、実施例1の方法で得た濃縮粗酵素液を、α−グルコシル転移酵素活性として基質固形物1グラム当たり10単位加え、40℃、48時間作用させた。 反応終了後、反応液を95℃に加熱し、10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度50質量%の分岐α−グルカン溶液を得た。 本分岐α−グルカンは、メチル化分析における2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物との比が1対1.3を示し、2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の合計は部分メチル化物の70.3%を占めていた。 また、2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物は、それぞれ部分メチル化物の3.0%及び4.8%であった。 また、本分岐α−グルカンは、重量平均分子量6,220ダルトンであり、重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)は2.2であった。 さらに、本分岐α−グルカンは、イソマルトデキストラナーゼ消化により、消化物の固形物当たりイソマルトースを35.1質量%生成し、酵素−HPLC法により求めた水溶性食物繊維含量は75.8質量%であった。 本品は、非う蝕性、難消化性の性質、適度の粘度を有し、水溶性食物繊維、脂肪代替食品材料、ダイエット用飲食物、品質改良剤、安定剤、賦形剤、増粘剤、増量剤などとして、食品、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。 30%タピオカ澱粉乳に最終濃度0.1質量%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.5に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製造、商品名ターマミール60L)を澱粉グラム当たり0.2質量%になるように加え、95℃で15分間反応させた。 その反応液を、オートクレーブ(120℃)を10分間行った後、40℃に冷却し、これに実施例2の方法で調製したα−グルコシル転移酵素の濃縮粗酵素液を固形物1グラム当たり10単位加え、さらに、バチルス・ステアロサーモフィラス由来のCGTase(株式会社林原生物化学研究所製)を固形物1グラム当たり1単位加え、40℃、pH6.0で72時間作用させた。 その反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮、噴霧乾燥して分岐α−グルカン粉末を得た。 本分岐α−グルカンは、メチル化分析において、2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物との比が1:1.6を示し、2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の合計は部分メチル化物の80.0%を占めていた。 また、2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物は、それぞれ部分メチル化物の1.4及び1.7%を示した。 また、本分岐α−グルカンは、重量平均分子量10,330ダルトンであり、重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)は2.9であった。 さらに、本分岐α−グルカンは、イソマルトデキストラナーゼ消化において、消化物の固形物当たりイソマルトースを40.7質量%生成し、酵素−HPLC法により求めた水溶性食物繊維含量は68.6質量%であった。 本分岐α−グルカンは、非う蝕性、難消化性の性質、適度の粘度を有し、水溶性食物繊維、脂肪代替食品材料、ダイエット用飲食物、品質改良剤、安定剤、賦形剤、増粘剤、増量剤などとして、食品、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。 27.1質量%トウモロコシ澱粉液化液(加水分解率3.6%)に、最終濃度0.3質量%となるように亜硫酸水素ナトリウムを、また、最終濃度1mMとなるように塩化カルシウムを加えた後、50℃に冷却し、これに実施例1の方法で調製した濃縮粗酵素液を固形物1グラム当たり11.1単位加え、さらに、50℃、pH6.0で68時間作用させた。 その反応液を80℃で60分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮、噴霧乾燥して分岐α−グルカン粉末を得た。 本分岐α−グルカンは、メチル化分析において、部分メチル化物である2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の比が1:2.5を示し、2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の合計は部分メチル化物の68.4%を占めていた。 また、2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物は、それぞれ部分メチル化物の2.6及び6.8%を示した。 また、本分岐α−グルカンは、重量平均分子量4,097ダルトンであり、重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)は2.1であった。 さらに、本分岐α−グルカンは、イソマルトデキストラナーゼ消化において、消化物の固形物当たりイソマルトースを35.6質量%生成し、酵素−HPLC法により求めた水溶性食物繊維含量は79.4質量%であった。 本分岐α−グルカンは、非う蝕性、難消化性の性質、適度の粘度を有し、水溶性食物繊維、脂肪代替食品材料、ダイエット用飲食物、品質改良剤、安定剤、賦形剤、増粘剤、増量剤などとして、食品、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。 濃縮粗酵素液に替えて実験6の方法で調製したバチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)由来の精製α−グルコシル転移酵素を用い、シュードモナス・アミロデラモサ由来のイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)を固形物1グラム当たり1,000単位加えた以外は実施例5と同様にして分岐α−グルカン粉末を得た。 本分岐α−グルカンは、メチル化分析において、部分メチル化物である2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の比は1:4を示し、2,3,6−トリメチル化物と2,3,4−トリメチル化物の合計は部分メチル化物の67.9%を占めていた。 また、2,4,6−トリメチル化物及び2,4−ジメチル化物は、それぞれ部分メチル化物の2.3及び5.3%を示した。 また、本分岐α−グルカンは、重量平均分子量2,979ダルトンであり、重量平均分子量を数平均分子量で除した値(Mw/Mn)は2.0であった。 さらに、本分岐α−グルカンはイソマルトデキストラナーゼ消化において、消化物の固形物当たりイソマルトースを40.6質量%生成し、酵素−HPLC法により求めた水溶性食物繊維含量は77質量%であった。 本分岐α−グルカンは、非う蝕性、難消化性の性質、適度の粘度を有し、水溶性食物繊維、脂肪代替食品材料、ダイエット用飲食物、品質改良剤、安定剤、賦形剤、増粘剤、増量剤などとして、食品、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。 実施例5で調製した分岐α−グルカンについて、常法に従って物理化学的性質を調べ、本発明の分岐α−グルカンの性質の一例として表41にまとめた。 <品質改良剤> <餅> <おはぎ> <加糖練乳> <乳酸菌飲料> <粉末ジュース> <カスタードクリーム> <餡> <パン> <粉末ペプチド> <化粧用クリーム> <練歯磨> <流動食用固体製剤> <錠剤> <外傷治療用膏薬> 本発明の分岐α−グルカンは安全性が高く、消化性も市販の難消化性デキストリンと遜色ないことから、水溶性食物繊維としての機能を十分に備えている。 また、本発明の分岐α−グルカンは、血糖上昇抑制作用や生体内脂質の低減作用をも有していることから、健康食品としても有用である。 本発明によれば、従来、化学的な反応や、煩雑で効率の悪い方法により澱粉から製造されていた難消化性デキストリンと同等の難消化性を有する分岐α−グルカンを、澱粉部分分解物を基質として、酵素法で、大量に、且つ、効率良く製造することができる。 難消化性の分岐α−グルカンとその製造方法を提供する本発明は、飲食物、化粧品、医薬品など種々の利用分野に貢献することとなり、その産業的意義はきわめて大きい。 |