細胞培養キット、スクリーニング方法、及び細胞培養キットの製造方法 |
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申请号 | JP2010534724 | 申请日 | 2009-10-23 | 公开(公告)号 | JPWO2010047132A1 | 公开(公告)日 | 2012-03-22 |
申请人 | 株式会社クラレ; 公立大学法人横浜市立大学; | 发明人 | 洋子 一丁田; 洋子 一丁田; 剛 田崎; 剛 田崎; 福田 始弘; 始弘 福田; 鶴田 仁志; 仁志 鶴田; 英樹 谷口; 英樹 谷口; | ||||
摘要 | 複数のドナーの生細胞を培養した細胞培養キット及びその製造方法を提供する。細胞培養キットは、細胞培養プレートとその上で培養された生細胞とを有する。細胞培養プレートは、複数のマイクロ容器(33)を有し、複数のマイクロ容器(33)に、複数の異なるドナーに由来する生細胞が表面に接着されている。具体的には、複数のマイクロ容器(33)は、複数の異なるドナーに由来する生細胞D1、D2、D3が表面に接着されている。各マイクロ容器(33)は、一つのドナーに由来する生細胞が培養されていてもよいし、異なる複数のドナーに由来する生細胞が培養されていてもよい。細胞培養キット全体として、複数のドナーに由来する生細胞が接着・培養されることによって、複数のドナーに由来する細胞を用いて試験を行う細胞培養キットを提供できる。 | ||||||
权利要求 | 細胞培養プレートとその上で培養された生細胞とを有する細胞培養キットであって、 前記細胞培養プレートは、複数のマイクロ空間を有し、前記複数のマイクロ空間に複数の異なるドナーに由来する生細胞が表面に接着された細胞培養キット。 前記複数の異なるドナーに由来する生細胞が、2種類以上の細胞であることを特徴とする請求項1記載の細胞培養キット。 各マイクロ空間は、複数の異なるドナーに由来する生細胞と、一つのドナーに由来する生細胞とのいずれかが接着されていることを特徴とする請求項1または2記載の細胞培養キット。 少なくとも二つの隣接するマイクロ空間は、異なるドナーに由来する生細胞が接着されていることを特徴とする請求項1または2記載の細胞培養キット。 少なくとも二つの隣接するマイクロ空間は、同じドナーに由来する生細胞が接着されていることを特徴とする請求項1または2記載の細胞培養キット。 前記複数のマイクロ空間は、所望の細胞数に培養された三次元構造体の細胞集団が隔離される大きさを有すること特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記複数のマイクロ空間は、底部面積が0.01〜0.1mm 2であり、深さが25〜150μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記複数のマイクロ空間は、細胞播種密度が1×10 2 〜1×10 6細胞/cm 2で生細胞が播種されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記複数のマイクロ空間は、生細胞が集積し、細胞塊が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記細胞塊の直径は、30〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記生細胞は、組織前駆細胞、組織幹細胞、ES細胞から分化させた細胞またはiPS細胞から分化させた細胞であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記生細胞が、肝細胞を含む生細胞であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の細胞培養キット。 前記肝細胞が、組織前駆細胞、組織幹細胞、ES細胞から分化させた細胞、またはiPS細胞から分化させた細胞であることを特徴とする請求項12記載の細胞培養キット。 前記肝細胞を含む生細胞が、複数のドナーの肝組織内から分離されたものであることを特徴とする請求項12記載の細胞培養キット。 請求項1乃至14のいずれか一項に記載の細胞培養キットを用いて薬剤の評価を行うスクリーニング方法。 複数のマイクロ空間を有する細胞培養プレートとその上で培養された生細胞とを有する細胞培養キットの製造方法であって、 前記複数のマイクロ空間へ、複数の異なるドナーに由来する生細胞を播種し、 播種した生細胞を培養する細胞培養キットの製造方法。 |
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说明书全文 | 本発明は、生細胞を培養した細胞培養キット、スクリーニング方法、及びその製造方法に関する。 組織から単離した細胞を試験、検査に用いる手法は、バイオテクノロジー関連分野では欠かせない方法となっている。 疾病、病態の診断、新薬の探索及び薬効の判定、あるいは動物検査、植物検査、環境汚染物質の試験などに幅広く用いられている。 そのため、バイオテクノロジー分野で使用される細胞類は、極めて多様化してきている。 単離した細胞は、直ちに試験に用いられる場合もあるが、多くの場合、培養皿や試験管のなかで細胞培養が行われる。 この培養細胞を用いて、種々の検査が行われる。 細胞培養試験に用いられる細胞培養株には、生体内での試験いわゆるin vivo試験と同様の薬剤感受性、毒性反応を示すことが要求される。 すなわち、細胞培養容器の表面で規則性を有して配列された細胞間のネットワークを構築できることが必要とされる。 また、細胞培養試験に用いられる細胞培養株は極めて高額であるため、細胞の生存率及び増殖速度の向上が望まれている。 すなわち、細胞培養容器上で生体内類似の細胞機能が必要とされている。 また、初代細胞を得るための単離操作が煩雑であること、細胞培養試験に用いられる細胞培養株は高額であることから、少ない細胞数での試験方法が望まれている。 近年、創薬開発では、臨床試験段階での開発中断が問題となっている。 これは、薬物動態試験段階での動物種差に起因する。 これまで、前臨床段階における薬物動態試験では、ラット、イヌ、サル等の動物を用い、薬物の体内動態を予測してきた。 しかし、ヒトを用いる臨床試験では、その予測が事実上成立しないことが分かってきている。 従って、薬物動態等のヒトへの予測は、ヒト試料を用いることが最も有効かつ簡便な方法であり、効率的な医薬品開発や安全な臨床試験の実施のために重要である。 例えば、薬物の体内動態を調べる薬物動態試験では、主に肝臓での吸収、代謝、排泄であり、用いられるヒト試料は、肝臓スライス、肝細胞、肝ミクロソーム等である。 この中で肝臓スライスは、入手が困難であり、肝ミクロソームは限られた代謝酵素のみでの代謝試験しか行えない。 そのため、肝細胞の使用が最も効果的であると考えられている。 スクリーニングにおいて、使用される培養皿は樹脂製シャーレや、6ウェル、12ウェル、48ウェル、96ウェルの各プレートである。 これらは、一般に、プレート全体の大きさはほぼ同じであり、ウェル数が大きくなるほど、1ウェルのサイズが小さくなる。 この1ウェルが1培養皿に相当する。 また、最近の微量化への流れから、更に小口径で多数の培養皿からなる384ウェルプレートも使用され始めており、目的のスクリーニング方法に適応したものが使用されている。 これらの培養皿の底部は平坦な平板状であり、この底面を培養面として用いている。 しかしながら、組織細胞の培養に従来の培養容器を用いると、本来の機能を消失させ脱分化してしまう場合や、未分化細胞が分化しない場合があり、目的の細胞機能を発現しないことが問題となっている。 例えば、ヒト新鮮肝細胞は通常の平板プレート上で培養すると単離された際の代謝酵素の機能を1日程度で著しく低下させてしまうため、プレートへ細胞播種後4時間以内に薬物の代謝試験を行うことがある。 すなわち、長時間の培養を行いながら試験に用いることができない問題、長時間の代謝安定性が検討できない問題があった。 上記問題を解決するため、ヒトあるいは動物由来の生体物質(糖タンパク質、タンパク質等)を培養容器表面へコーティングする試み(特許文献1参照)や、高分子ゲル中で培養する試み(特許文献2参照)がなされている。 しかしながら、特許文献1に開示された方法では、コーティングする生体物質が特殊であるため高コストとなること、培養容器内において均一な細胞集合体の形成が困難であること、生体内機能を長期間維持できないことなどの問題があった。 特許文献2に開示された方法でも、細胞集合体の大きさが制御できないこと、顕微鏡観察が容易にできないこと、スクリーニング基板として操作性が煩雑であることなどの問題があった。 更に、いずれの方法も、市販のディッシュやプレートを支持容器として用いるため、必要最小細胞数での効率的なスクリーニングが困難であった。 上述したように、効率的な医薬品開発や安全な臨床試験の実施のため、薬物の毒性・代謝・薬効ではヒト肝細胞を用いた試験や、神経系、腸管上皮系がなどの細胞が多く実施されている。 これらの試験には、細胞株や、初代培養細胞が用いられることが多い。 細胞株の場合は、生体内での機能を反映できないという問題点があった。 一方初代培養細胞は生体内の機能を反映するが、個体差が問題となっていた。 個体差の問題を解決するために、例えば、肝細胞について複数のドナーの肝細胞を含む浮遊細胞を含む生細胞を利用し、平均化したデータの取得が検討されている。 しかし、浮遊細胞の寿命は短く、長期の試験に使用できないという問題があった。 本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、複数のドナーの生細胞を培養した細胞培養キット、スクリーニング方法、及びその製造方法を提供することを目的とする。 本発明にかかる細胞培養キットの一態様は、細胞培養プレートとその上で培養された生細胞とを有する細胞培養キットであって、前記細胞培養プレートは、複数のマイクロ空間を有し、前記複数のマイクロ空間に複数の異なるドナーに由来する生細胞が表面に接着されている。 これにより、一つの細胞培養プレートに複数の異なるドナーに由来する生細胞が接着されたスクリーニング用のキットを提供することができる。 また、前記複数の異なるドナーに由来する生細胞が、2種類以上の細胞であってもよい。 これにより、複数の種類の生細胞からなる組織類似構造がチップ上に再現される。 具体的には、各マイクロ空間は、異なるドナーに由来する複数の生細胞と、一つのドナーに由来する生細胞とのいずれかが接着されている。 例えば、少なくとも二つの隣接するマイクロ空間は、異なるドナーに由来する生細胞が接着されている。 あるいは、少なくとも二つの隣接するマイクロ空間は、同じドナーに由来する生細胞が接着されている。 また、前記複数のマイクロ空間は、所望の細胞数に培養された三次元構造体の細胞集団が隔離される大きさを有することが好ましく、前記複数のマイクロ空間は、底部面積が0.01〜0.1mm 2であり、深さが25〜150μmであることが好ましい。 前記複数のマイクロ空間は、細胞播種密度が1×10 2 〜1×10 6細胞/cm 2で生細胞が播種されたことが好まく、細胞播種密度が1×10 4 〜1×10 6細胞/cm 2であるのがより好ましい。 前記複数のマイクロ空間は、生細胞が集積し、細胞塊が形成されていることが好ましく、より具体的には、前記細胞塊の直径は、30〜200μmであることが好ましい。 前記生細胞は、組織前駆細胞、組織幹細胞、ES細胞から分化させた細胞またはiPS細胞から分化させた細胞であることが好ましい。 また、本発明にかかるスクリーニング方法の一態様は、上述した細胞培養キットを用いて薬剤の評価を行う。 さらに、本発明にかかる細胞培養キットの製造方法の一態様は、複数のマイクロ空間を有する細胞培養プレートとその上で培養された生細胞とを有する細胞培養キットの製造方法であって、前記複数のマイクロ空間へ、複数の異なるドナーに由来する生細胞を播種し、播種した生細胞を培養する。 本発明によれば、複数のドナーの生細胞を培養した細胞培養キット、スクリーニング方法、及び細胞培養キットの製造方法を提供することができる。 本発明に係る細胞培養キットは、細胞培養プレートとその上で培養された生細胞とを有し、細胞培養プレートが有する複数のマイクロ容器を用いる。 複数のマイクロ容器の表面には、複数の異なるドナーに由来する生細胞が接着されている。 細胞機能を維持するように生細胞を培養させるため、生細胞を培養する単位となるマイクロ容器は、細胞培養に適切なものを用いる必要がある。 本発明に係る細胞培養キットに用いる細胞培養容器は、例えば、次のような容器を用いる。 細胞培養容器には凹凸パターンすなわち複数のマイクロ容器が形成されている。 これにより、生体内と同様な立体的な細胞生育が可能であることに加え、各マイクロ容器内において、ばらつき無く細胞が凝集した形態で培養できる。 また、マイクロ容器は、例えば、マイクロ容器を仕切る側壁(凸部)の高さを最適化することで、凝集した生細胞(例えば、肝細胞塊)をマイクロ容器内のみで培養することができる。 ここで、マイクロ空間は、マイクロ容器よって形成される空間であり、より具体的には、平面上に形成された凹凸パターンによって形成される空間を指す。 以降の説明では、マイクロ容器とマイクロ空間とを特に区別しない。 側壁により囲まれたマイクロ容器の寸法は、細胞を培養するために最適な範囲とする必要である。 マイクロ容器の底部面積が大きすぎると、平板上での培養と同様、細胞は薄く伸び、立体構造とならない。 一方、マイクロ容器の底部面積が小さすぎると、細胞を収容できなくなる。 従って、空間の寸法は、培養する細胞種に応じて、一又は複数個が収容できる範囲とすることが好ましい。 例えば、細胞が複数個集積した肝細胞塊を形成させる場合、その肝細胞塊が収納できる範囲とすることが好ましい。 側壁の高さは、マイクロ容器で培養する細胞を隣接するマイクロ容器へ移動させないために最適な範囲とする必要である。 側壁の高さが低すぎると、細胞が側壁を乗り越えてしまい、培養に適さない。 側壁の高さが高すぎると、作製が困難な上、物質拡散がしにくくなり培養環境が悪化してしまう。 従って、側壁の高さは、細胞種に応じて、マイクロ容器内に配置された培養細胞を、そのマイクロ容器内において安定的に培養し続けられる範囲とすることが好ましい。 また、側壁に開口部を設け、複数のマイクロ容器を連通した構造とするにより、細胞への酸素や栄養分の供給及び細胞からの老廃物の除去を効率良く行うことができる。 なお、培養する細胞種に応じ、側壁の高さ、マイクロ容器寸法、開口部の幅を適宜設定することにより、多様な培養系に適用することもできる。 また、本明細書でいう生細胞は、生体組織から分離した細胞(初代培養細胞)の継代していない細胞が含まれる。 また生細胞には、新鮮細胞と凍結細胞が含まれる。 また、株化細胞、その他のES細胞(Enbryonic Stem Cells)等全てが含まれる。 生細胞は、肝細胞(肝実質細胞)、肝星細胞、脂肪細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞、骨細胞、神経細胞、グリア細胞、シュワン細胞、膵ベータ細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、間葉系細胞から選ばれる、1種類もしくは2種類以上の細胞を用いることが好ましい。 これら細胞種は、初代培養細胞であってもよく、または、組織前駆細胞、組織幹細胞、ES細胞から分化させた細胞、及びiPS細胞から分化させた細胞であってもよい。 実施の形態 以下に、本発明の実施の形態について説明する。 ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。 また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。 はじめに実施の形態に係る細胞培養キットに用いる細胞培養容器について説明し、続いて、細胞培養キットの構成例について説明する。 まず、細胞培養容器の構成例を、図1、2を用いて説明する。 図1は、本実施の形態に係る細胞培養容器の構成を示す平面図であり、図2は図1のII−II断面図である。 図1に示すように、細胞培養容器10はマイクロ容器11、側壁12、開口部13を備える。 細胞培養容器10の培養面には、複数の側壁12が網目状に形成されており、この側壁12に四方を囲われた空間がマイクロ容器11となる。 また、各マイクロ容器11の四辺に形成された側壁12の各辺の中央部に、開口部13が形成されている。 図1において、マイクロ容器11の底部の幅a、マイクロ容器11を区画するための側壁12の幅b、高さc、隣接するマイクロ容器11が互いに連通するための開口部13の幅dを示した。 本発明における底部面積とは、マイクロ容器開口水平面(側壁12上面と同一面)に垂直方向に上方から容器底へ平行光を照射した際の投影面積のことをいう。 例えば、マイクロ容器の底がU字形状である場合、その開口面に垂直方向な上方より底に入射した平行光が投影する形状が底部面積となる。 投影底部の長径及び短径とは、円及び楕円の場合、その重心を通る長軸及び短軸と円周との交点の各軸上の距離を長径及び短径といい、多角形の場合、その多角形の面積との差が最小となり各頂点を通る外挿円又は外挿楕円の長径および短径をいい、各頂点を通る外挿円又は外挿楕円を描けない場合は、最も多くの頂点を通る近似円又は楕円の長径および短径をいう。 マイクロ容器11の底部形状は特に制限されるものではなく、正方形、円、多角形以外にも種々の形状を採用することができる。 生体内での肝機能を再現する細胞培養には、この底部面積は0.01mm 2 〜0.1mm 2が好ましい。 また、底部の長径が短径の1〜1.5倍であることが好ましい。 さらに、等方的形状が好ましく、正方形であれば、例えば、相当直径100μmの肝細胞塊を形成させる場合、一辺の長さが100μm〜300μmが好ましい。 マイクロ容器11の水平面と側壁12とがなす角度は、細胞が乗り上げない角度でなければならないため、側面の上部から50%以上の部分は80〜90°が好ましく、特に、85°〜90°であることが好ましい。 側壁12の高さcは、マイクロ容器11で培養する細胞が乗り上げ隣接するマイクロ容器11へ移動しなければよく、例えば、相当直径100μmの肝細胞塊を形成させる場合、50μm〜150μmが好ましい。 隣接するマイクロ容器11を互いに連通するための開口部13の幅dは、培養細胞が最初に播種されたマイクロ容器11から隣接するマイクロ容器11に移動できない程度であればよい。 例えば、培養細胞の相当直径が20μmであれば、5〜15μmであることが好ましい。 なお、開口部13は必須ではなく、図3及び図4に示すように、マイクロ容器11の四辺が側壁12により完全に囲まれていてもよい。 ここで、図3は、本実施の形態に係る他の細胞培養容器の構成を示す平面図であり、図4は図3のIV−IV断面図である。 図3において、マイクロ容器11の底面の幅a、マイクロ容器11を区画するための側壁12の幅b、高さcを示した。 ここで、3μm≦b≦15μm、かつ、c/b≧2とする必要がある。 側壁12の幅bが15μmを越えると、側壁の上面へ細胞が接着してしまい、培養に適さない。 一方、側壁12の幅bが3μm未満では、作製が困難となる。 側壁の高さは低すぎると、細胞が側壁を乗り越えてしまい、培養に適さない。 側壁12の高さcが側壁12の幅bの2倍未満であると、マイクロ容器11で培養する細胞が乗り上げ隣接するマイクロ容器11へ移動してしまうことがある。 また、具体的には、1辺100μmの四角形のマイクロ容器内でヒト胎児肝細胞を重層化させる場合、側壁12の高さcは15μm〜300μmが好ましく、50μm〜150μmがさらに好ましい。 ここで、側壁の高さcが高すぎると、作製が困難な上、物質拡散がしにくくなり培養環境が悪化してしまう。 側壁12は多段階形状であってもよい。 また、細胞培養部は、必要な細胞数を最小にするために、図5及び図6に示すように、1つのスクリーニングに必要なだけの複数のマイクロ容器からなる区画されたスポットを有していても良い。 例えば、分化効率が高い1辺200μmの正方形で高さ50μmのマイクロ容器を用い、スクリーニングに必要な最小細胞数が約1000個であった場合、9個のマイクロ容器が必要となるため、9個のマイクロ容器を区画化するスポットを設け、更に複数のスポットを設けることで同時に複数の試薬や医薬品を検査できるハイスループットスクリーニングが可能となる。 ここで、図5は、本実施の形態に係る他の細胞培養部の構成を示す平面図であり、図6は図5のVI−VI断面図である。 図5には、複数のマイクロ容器を区画化する側壁24とその区画化されたスポット23を示した。 側壁24の高さdは、培養液や反応液等の上清液が乾燥せず保持できる容量であればよく、便宜設定すればよい。 細胞培養容器上の凹凸パターンを作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、モールドを用いた転写成形、3次元光造形、精密機械切削、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザー加工、放電加工等の方法が挙げられる。 細胞培養容器の用途、要求される加工精度、コスト等を考慮してこれらの製造方法を適宜選択することが好ましい。 モールドを用いて転写成形方法の具体例としては、金属構造体を型として樹脂成形で凹凸パターンを形成する方法が挙げられる。 この方法は金属構造体の形状を高い転写率で樹脂へ凹凸パターンに再現することが可能であり、また汎用の樹脂材料を使用することにより材料コストを低くできるので好ましい。 このような金属構造体の型を用いる方法は、低コストであり、高い寸法精度を満足できる点で優れている。 上記金属構造体の製造方法としては、例えば、フォトリソグラフィによって作製されたレジストパターンや3次元光造形によって作製された樹脂パターンへのメッキ処理、精密機械切削、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザー加工、放電加工等が挙げられる。 用途、要求される加工精度、コスト等を考慮して適宜選択すればよい。 上記で得られた金属構造体を型として用いて樹脂へ凹凸パターンを成形する方法としては、例えば、射出成形、プレス成形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト成形、ホットエンボス成形、押出成形によるロール転写等の方法を挙げることができる。 生産性及び型転写性の観点から射出成形を採用することが好ましい。 細胞培養容器を構成する材料としては、自己支持性を有するものであれば特に制限されず、例えば、合成樹脂、シリコン、ガラス等が挙げられる。 コスト面や顕微鏡観察による細胞視認性の観点から、透明な合成樹脂を材料とすることが好ましい。 透明な合成樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、シクロオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のエステル系樹脂、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。 このような樹脂には、透明性を損なわない範囲で着色剤、拡散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。 細胞培養容器は、容器表面の親水性、生体適合性、細胞親和性等を向上させることを目的として、凹凸パターン表面側に表面処理を行い、改質層及び/又はコーティング層が配されていてもよい。 上記改質層を設ける方法としては、自己支持性を失う方法や100μm以上の極端な表面荒れを起こす方法でなければ特に制限はないが、例えば、薬品処理、溶剤処理、表面グラフト重合によるグラフトポリマーの導入等の化学的処理、コロナ放電、オゾン処理、プラズマ処理等の物理的処理等の方法が挙げられる。 またコーティング層を設ける方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、スパッタ、蒸着等のドライコーティング、無機材料コーティング、ポリマーコーティング等のウェットコーティング等の方法が挙げられる。 凹凸パターン上には、気泡の混入することなく培養液を注入するために親水性を付与することが望ましく、均一な親水性膜を形成させる方法として、無機蒸着が好ましい。 また、細胞親和性を考慮した場合には、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン等の細胞親和性タンパク質をコーティングすることがより好ましい。 コラーゲン水溶液等を均一にコートするために、上述の親水性膜を形成させた後、コートすることが好ましい。 通常、肝細胞培養においては、生体内環境を模倣して細胞外マトリックス表面での培養が望ましいため、上記のように均一な親水性無機膜を配した後に、培養細胞に適した細胞外マトリックスからなる有機膜を配することが特に好ましい。 また、上述した細胞培養容器を用いる細胞培養方法は、細胞を培養するマイクロ容器のみに細胞を配置させ、その空間内で生体内に類似した形態や機能を発現させるため、適切な細胞数を播種する必要があり、細胞播種密度1.0×10 2 〜1.0×10 6細胞/cm 2が好ましく、細胞播種密度1.0×10 4 〜1.0×10 6細胞/cm 2がより好ましい。 例えば、マイクロ容器が正方形で、1辺が200μmの場合、5.0×10 4 〜5.0×10 5細胞/cm 2が好ましい。 このような条件のもと、直径が30〜200μmに及ぶ肝細胞塊を得ることができる。 続いて、本実施の形態に係る細胞培養キットの構成例について、図7から図10を用いて説明する。 図7は、細胞培養キットの構成例を示す図である。 細胞培養キット30は、平板の細胞培養プレート32を有し、細胞培養プレート32は、複数の培養皿34を備える。 培養皿34それぞれには、細胞培養容器31が配置される。 一つの細胞培養プレート32に設定される培養皿34の数は、スクリーニングの方法、培養する細胞の種類や試験に用いる細胞の数に応じて決定される。 細胞培養プレート32は、少なくとも一つの細胞培養容器31を有する。 細胞培養容器31は、例えば、図1から図6に示した3種類の構成のいずれであってもよい。 また、上記で説明した凹凸パターンの条件を満たす場合にはその他の構成を有していてもよい。 培養皿34の底部は平坦な平板状であり、細胞培養容器31は、この底面を培養面として用いている。 図8〜図10は、複数のマイクロ容器に生細胞が培養された状態の一例であり、播種される細胞のドナーの違いを示している。 図8から図10において、矩形の一つ一つがマイクロ容器33であり、図8及び図9は、細胞培養容器31に、9個のマイクロ容器33を有する場合を示している。 また、図10は、細胞培養容器31に、18個のマイクロ容器33を有する場合を示している。 また、D1からD3は、培養された細胞であり、図中ではD1、D2、D3それぞれが異なるドナーであることを示すため模様を変えて示している。 図8は、各マイクロ容器33に一つのドナーに由来する細胞が接着され、隣接するマイクロ容器33では、異なるドナーの生細胞が接着されている場合を示している。 図9は、複数のマイクロ容器33のうち、一部は複数のドナーに由来する生細胞が混ざった状態で接着され、他は一つのドナーに由来する生細胞が接着された場合を示している。 ここでは、一つのマイクロ容器33に二つのドナーの生細胞が接着されている場合を一例として示している。 図10は、細胞培養容器31が有する複数のマイクロ容器33を二つに区分し、一方に1種類目のドナーの細胞を接着し、他方に2種類目のドナーの細胞を接着した例を示している。 なお、複数のマイクロ容器33を3以上の区分に分割してもよい。 各区分に所望のドナーの細胞を接着することによって、異なるドナー間の試験結果の相違を容易に確認することができる。 なお、図8から図10は、複数のドナーに由来する生細胞の配置例を示したが、これらの配置に限られるわけではない。 細胞培養キット30が有する複数のマイクロ容器33に複数のドナーに由来する生細胞が表面に接着され、培養されていればこれら以外の配置であってもよい。 具体的には、各マイクロ容器33は、異なるドナーに由来する複数の生細胞が接着された場合であってもよい。 一つのマイクロ容器33に接着される異なるドナーの生細胞の種類は、3種類以上であってもかまわない。 または、マイクロ容器33は、一つのドナーに由来する生細胞が接着され、細胞培養キット30全体として(あるいは一つの細胞培養容器31として)複数のドナーの生細胞を有する場合であってもよい。 あるいは、一つの細胞培養容器31それぞれは一つのドナーに由来する生細胞が接着され、複数の細胞培養容器31全体では異なるドナーに由来する生細胞が接着されている場合であってもよい。 すなわち、細胞培養キット30として、複数の異なるドナーに由来する生細胞が接着されていればよい。 細胞培養キット30の各マイクロ容器33の表面には、複数のドナーに由来する生細胞が接着された状態で培養される。 マイクロ容器内では、生細胞が集積し、細胞塊が形成される。 細胞塊は所望の大きさになるまで培養され、例えば、細胞凝集塊の直径が30〜200μmになるまで培養される。 また、細胞塊の大きさに応じてマイクロ容器の大きさも決定されることになる。 マイクロ容器内で培養される生細胞としては、異なるドナーに由来する実質細胞が用いられる。 かかる実質細胞は、組織前駆細胞、組織幹細胞、ES細胞から分化させた細胞、または、iPS細胞(induced pluripotent stem cells)から分化させた実質細胞、もしくは、生体から分離された実質細胞が用いられる。 複数種類の細胞種を用いる場合は、1種類の実質細胞と他の細胞種を混合し培養する。 この場合の細胞の由来は、例えば、複数ドナーの実質細胞と、単一のドナーに由来する他の細胞種であってもよく、または、1ドナーに由来する実質細胞と実質細胞のドナーと異なるドナーに由来する他の細胞種であってもよい。 他の細胞種としては、肝星細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、間葉系細胞から選択される1種類以上の細胞種が用いられる。 実質細胞、肝星細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、間葉系細胞は、組織前駆細胞、組織幹細胞、ES細胞から分化させた細胞、または、iPS細胞(induced pluripotent stem cells)から分化させた細胞、もしくは、生体内から分離した細胞が用いられる。 培地としては、栄養因子、血清、細胞からの分泌溶液などの栄養分を含む培地が用いられる。 もしくは、細胞からの分泌溶液については、セルカルチャーインサートなどの膜上に細胞を培養した容器を設置する方法などを用いても良い。 以上説明したように、本発明に係る実施の形態の一態様によれば、複数のドナーの生細胞を、1つの容器内(細胞培養キット内)で接着させた状態で培養させた細胞培養キットを提供することができる。 細胞培養キットは、複数のマイクロ容器を有する。 複数のマイクロ容器は、上述したように生細胞の生体内機能を長期間維持できる構造を有する。 従って、生体内類似の細胞機能を有する生細胞を提供することができる。 加えて、複数のドナーの試験結果を一つのチップ上で取得することが可能となる。 これにより、複数の異なるドナーに由来する細胞を用いる試験を長期にわたり、効率よく実施することが可能になる。 <複数のドナーに由来する複数種類の細胞(例えば、実質肝細胞と非実質肝細胞)をマイクロ空間プレートで培養した結果> 1−2. 血管内皮細胞の培養(細胞増殖) 1−3. 細胞懸濁液の作製 上記1−1、1−2で培養した細胞それぞれについて、0.25%トリプシン溶液を用いて剥離し細胞を回収した後、培地に分散させた。 培地は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、ヒトγ−インスリン(1.0μg/ml)、ニコチンアミド(10mmol/L)、デキサメタゾン(1x10 −7 mol/L)、L−グルタミン(2mmol/L)を加えたDMEM栄養混合F−12Ham培地(DMEM/F12 1:1 mixture)を用いた。 それぞれ、トリパンブルーで細胞を染色し生細胞数をカウントした。 2. 培養試験(実施例・比較例) 2−2 <比較例01> 2―4 培養方法 上記2−1から2−3に記載したように細胞を播種した後、37℃の5%CO 2インキュベータで培養した。 培養24時間後、1回/1〜2日の頻度で培地交換を行った。 培地は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、ヒトγ−インスリン(1.0μg/ml)、ニコチンアミド(10mmol/L)、デキサメタゾン(1x10 −7 mol/L)、L−グルタミン(2mmol/L)を加えたDMEM栄養混合F−12Ham培地(DMEM/F12 1:1 mixture)にヒト組換えHGF(50ng/mL)及び、上皮増殖因子(EGF)(10ng/mL)を添加した培地を用いた。 3. 遺伝子発現解析 肝臓の代表的な薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)及びアルブミンの遺伝子発現は、所定日数培養した細胞からRNAを回収し、cDNA合成後、リアルタイムPCRを行うことで評価した。 4. 実験結果(遺伝子発現解析結果) <複数のドナーに由来する肝細胞をマイクロ空間プレートで培養した結果> 2. 培養 培養は、37℃の5%CO 2インキュベータ内で行った。 培養24時間後、1回/1〜2日の頻度で培地交換を行った。 培地は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、ヒトγ−インスリン(1.0μg/ml)、ニコチンアミド(10mmol/L)、デキサメタゾン(1x10 −7 mol/L)、L−グルタミン(2mmol/L)を加えたDMEM栄養混合F−12Ham培地(DMEM/F12 1:1 mixture)にヒト組換えHGF(50ng/mL)及び、上皮増殖因子(EGF)(10ng/mL)を添加した培地を用いた。 3. 分析3−1. 形態観察 倒立顕微鏡を用いて、培養1日、4日、7日、14日、21日、35日に観察した。 4. 結果4−1. 形態観察結果 細胞は最初にフィルム底面に接着し、培養日数を追うごとに、徐々に他のマイクロ空間内(micro cavity)へと伸展してゆき、マイクロ空間内に細胞集合体を形成した。 これは、以下に示した<比較例>と同様の形態であったことから、複数ドナーの細胞も単一ドナーと同じように凝集体形成が可能であることが示された。 図11A〜11Fは、実施例の形態観察結果を示す写真である。 また、図12は、比較例の培養14日目の形態観察結果を示す写真である。 4−2. チトクロームP450(CYP)及びアルブミンの遺伝子発現と、CYP3A4のタンパク発現の結果 主要な薬物代謝酵素CYP3A4、2C19、2C9、1A2、2D6とアルブミン分泌能を測定した。 その結果、培養7日目でこれらCYP遺伝子が発現し、培養21日目で、アルブミンとこれらCYP遺伝子が発現した。 日数が経過した場合も、この機能は維持されていた。 図13は測定結果を示す写真である。 図13において、左側に培養7日目、中央に培養21日目、右側に培養35日目の結果を示している。 4−3. グリコーゲン貯蔵能の結果 ヒト胎児肝臓細胞における分化能(グリコーゲン貯蔵能)を検討した。 その結果、ヒト胎児肝臓細胞においてグリコーゲン貯蔵能が認められた。 さらに、この細胞においては培養21日目で半数以上の細胞が強いPAS陽性を呈した。 上記結果4−1〜4−3から、マイクロ空間に異なるドナーの肝細胞を生着させた状態で、肝機能をもつ、複数ドナーの肝細胞の培養が可能であることが示された。 なお、本発明は上記に示す実施の形態に限定されるものではない。 本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。 10、20 細胞培養容器11 マイクロ容器12 側壁13 開口部23 スポット24 スポットの側壁30 細胞培養キット31 細胞培養容器32 細胞培養プレート33 マイクロ容器34 培養皿D1、D2、D3 細胞 |