バイオマス材料から揮発性有機化合物を生産する方法

申请号 JP2015512836 申请日 2013-05-16 公开(公告)号 JP6259449B2 公开(公告)日 2018-01-10
申请人 シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ; SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP; 发明人 ハミルトン,フィリップ・ガイ; ラドキ,コーリー・ウィリアム; クライトマン,キース・マイケル;
摘要
权利要求

少なくとも1種の揮発性有機化合物の生産方法であって: 少なくとも約10トンの調製済みバイオマス材料を生成すること、ここで前記調製済みバイオマス材料は、糖含有固体バイオマスに添加された少なくとも1種の添加剤を含み、前記少なくとも1種の添加剤は、微生物、ならびに任意に酸および/または酵素を含む; 調製済みバイオマス材料を、貯蔵施設で少なくとも約24時間貯蔵して、糖の少なくとも一部から少なくとも1種の揮発性有機化合物を生産させること;および 貯蔵された調製済みバイオマス材料を無溶媒回収システムに供給して、貯蔵された調製済みバイオマス材料を、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含む少なくとも蒸気成分と固形成分とに分離することにより、少なくとも1種の揮発性有機化合物を捕捉すること を含み、 前記捕捉工程が、 前記貯蔵された調製済みバイオマス材料を前記回収システムの閉鎖された区画に導入すること、ここで前記貯蔵された調製済みバイオマス材料は1種またはそれより多くの揮発性有機化合物を含有する、 前記貯蔵された調製済みバイオマス材料を前記閉鎖された区画中で過熱蒸気ストリームと接触させて、前記貯蔵された調製済みバイオマス材料中の最初の液状内容物の少なくとも一部を蒸発させて蒸気成分を生成すること、ここで最初の液状内容物が、最初の液状内容物を基準に2wt%〜50wt%のエタノールを含み、前記過熱蒸気ストリームは少なくとも1種の揮発性有機化合物を含む、 前記過熱蒸気ストリームの一部として使用するために前記蒸気成分の少なくとも一部を保持すること、および 前記蒸気成分を収集すること、ここで、収集した蒸気成分が4wt%〜15wt%のエタノールを含有する、 を含む、 上記方法。少なくとも約700トンの調製済みバイオマス材料が、約1〜7ヶ月の範囲の期間で生成される、請求項1に記載の方法。少なくとも約25,000トンの調製済みバイオマス材料が生成される、請求項2に記載の方法。少なくとも約100,000トンの調製済みバイオマス材料が生成される、請求項3に記載の方法。少なくとも約1,200,000トンの調製済みバイオマス材料が生成される、請求項4に記載の方法。調製済みバイオマス材料1トンあたり約14〜16ガロンのエタノールが回収される、請求項1に記載の方法。前記バイオマス材料が、少なくとも1種の発酵性糖産生植物を含む、請求項1に記載の方法。前記少なくとも1種の発酵性糖産生植物が、モロコシ(sorghum)、サトウキビ(sugarcane)、砂糖大根(sugar beet)、エネルギー原料用キビ(energy cane)、およびあらゆるそれらの組み合わせのうち少なくとも1種を含む、請求項7に記載の方法。前記調製済みバイオマス材料が、少なくとも2種の異なるタイプの植物を含み、ここで各タイプの植物は異なる収穫期を有する、請求項7に記載の方法。前記少なくとも1種の糖産生植物が、その潜在的な糖生産量の少なくとも約80%に達したときに、前記植物が収穫される、請求項7に記載の方法。前記固体バイオマスが、少なくとも1種の糖産生植物の茎成分と葉成分を含む、請求項1に記載の方法。前記貯蔵工程が、調製済みバイオマス材料を約72時間〜約700日の範囲の期間貯蔵することを含む、請求項1に記載の方法。前記貯蔵工程が、少なくとも1種の揮発性有機化合物への糖の変換効率が少なくとも約95%になるのに十分な期間、調製済みバイオマス材料を貯蔵することを含む、請求項1に記載の方法。前記貯蔵施設が、無溶媒回収システムから約0.5マイルのところに配置される、請求項1に記載の方法。前記貯蔵工程が、少なくとも約10フィートの高さを有する調製済みバイオマス材料の少なくとも1つのパイルを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。前記少なくとも1つのパイルの形成は、調製済みバイオマス材料の少なくとも一部を締固めして、嫌気性環境の確立を容易にすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。揮発性有機化合物を含有する貯蔵可能な湿潤バイオマスからエタノールを製造する方法であって、 前記方法が、 少なくとも約10トンの固体バイオマスに少なくとも1種の添加剤を添加して調製済みバイオマス材料を生成すること、ここで前記固体バイオマス材料は糖産生植物を含み、前記少なくとも1種の添加剤は、微生物、ならびに場合により酸および/または酵素を含む; 前記調製済みバイオマス中の糖の少なくとも一部を揮発性有機化合物に変換させること、ここで前記バイオマス材料は前記揮発性有機化合物の有意な分解を起こすことなく約700日間保存が可能である; 回収システムの閉鎖された区画に、前記調製済みバイオマス材料を導入すること、ここで前記調製済みバイオマス材料は1種またはそれより多くの揮発性有機化合物を含有する; 前記閉鎖された区画中で、前記調製済みバイオマス材料を過熱蒸気ストリームと接触させて、前記調製済みバイオマス材料中の最初の液状内容物の少なくとも一部を蒸発させて蒸気成分を生成すること、ここで最初の液状内容物が、最初の液状内容物を基準に2wt%〜50wt%のエタノールを含み、前記過熱蒸気ストリームは少なくとも1種の揮発性有機化合物を含む、; 少なくとも一部の前記蒸気成分を前記過熱蒸気ストリームとして使用するために保持すること;および 前記蒸気成分を収集すること、ここで、収集した蒸気成分が4wt%〜15wt%のエタノールを含有する、 を含む、前記の方法。前記固形成分が約30質量%〜約70質量%の範囲で液体を含有する、請求項1に記載の方法。前記回収システムに存在する前記固形成分が約50℃未満の温度である、請求項1に記載の方法。前記回収システムを3psig〜約60psigの範囲の圧力で操作することをさらに含む、請求項1に記載の方法。

说明书全文

本発明の実施態様は、一般的に、バイオマス材料から例えばエタノールなどの揮発性有機化合物を生産する方法に関し、より詳細には、バイオマス材料からのこのような揮発性有機化合物の発酵および回収に関する。

この章は、本発明の典型的な実施態様に関連する可能性がある分野の様々な形態を紹介することが意図されている。この議論は、本発明の特定の形態のより優れた理解を容易にするための枠組みを提供するのに役立つと考えられる。したがって、この章はこの観点で読み取られるべきであり、必ずしも全ての従来技術を容認しているわけではないことが理解されるものとする。

世界の石油供給が減少し続けるにつれて、様々な石油製品、特に輸送燃料と置き換えることができる代替材料への必要性がますます高くなっている。米国では、例えば1990年の大気清浄法(Clean Air Act)などの環境規制が、自動車における含酸素燃料の使用への動機となっている。エタノールまたはメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)がガソリン中の酸素含量を上げ、一酸化炭素の放出を低下させる。エタノールを使用する主要な利点の1つは、再生可能資源から燃料が生産されることである。化石燃料を再生可能燃料で置き換えることにより、温室効果ガスである二酸化炭素の大気レベルを減少させることができる。

現在のところ、例えばトウモロコシ、糖料作物、エネルギー作物、および固体廃棄物などの再生可能なバイオマス材料から得られるバイオエタノールを生産するための多数の試みが進行中である。従来のトウモロコシからのエタノール生産は、典型的には、有用な食料資源と競合しており、この問題はさらに、1年で収穫される作物の量に悪影響を与える干ばつや洪などのますます厳しくなる気候条件により増幅される可能性がある。従来のエタノール生産による競合は、食料の値段を釣り上げる可能性がある。エタノール生産用のバイオマス材料としてその他の作物が利用されてきたが、これらは通常、そのような作物の気候面の必要条件のために地球規模の実施には好適ではない。例えば、エタノールはサトウキビからも効率的に生産できるが、例えばほぼ一年中の収穫を維持できる気候のブラジルなどの世界の所定の地域に限られている。

トウモロコシを使用しない他のエタノール生産法が利用可能であるが、この方法はそれでもなお不十分である。例えば、コロラド州立大学(Colorado State University)のHenkおよびLindenは、モロコシからエタノールの固体状態での生産を調査している(Solid State Production of Ethanol from Sorghum、Linda L. HenkおよびJames C. Linden、Applied Biochemistry and Biotechnology、57/58巻、1996、489〜501頁を参照)。彼らは、サトウモロコシがエタノール生産にうまく使用できると述べているが、解決すべき以下の3つの問題がある: ・炭水化物の貯蔵; ・ヘミセルロースおよびセルロースの酵素加水分解にリグノセルロース画分を利用できるようにすること;および ・サトウモロコシからエタノールを回収するより経済的な手段。

それらのプロセスにおいて、彼らは、サトウモロコシの季節的な利用可能性および貯蔵性が、この再生可能なバイオマスの使用における重要な要因であることを指摘している。エタノール生産の基質としてのサトウモロコシの使用を制限してきた2つの深刻な問題は、糖の抽出と貯蔵性である。従来の適用法は、サトウモロコシパルプから抽出または圧搾された約10〜15%の糖を含有するジュースの使用を想定している。次いでジュースは直接アルコールに発酵させるか、または蒸発させて貯蔵用の糖蜜にする。ジュースからエタノールへの直接的な発酵は季節的なプロセスであり、収穫後の短い間しか達成できない。これには、固体状態での発酵を実験段階から工業的なスケール等のより実用的な段階に規模拡張する際に問題がある。例えば、短い収穫期間は、短期間でピーク量を処理するための貯蔵スペースおよび回収施設への実質的な設備投資を必要とするが、一方で休止期間中は、このようなスペースおよび器具は活用されないかまたは十分に利用されないであろう。

サトウモロコシをエタノールにする問題のいくつかに対するHenkおよびLindenの戦略は、長期にわたりサトウモロコシ中のエタノールを貯蔵する経済的な方法を併用する保存された湿潤固体状態での発酵物の使用を調査することであった。HenkおよびLindenはプロセス全体である程度の改善を示してはいるが、それでもなお彼らが生産できるエタノール量などの多数の短所がある。また彼らは、固体状態での発酵物からエタノールを回収する経済的な方法も提供していない。このような提唱されたシステムは、典型的には費用のかかるメンテナンスを要する高価な器具を必要とするため、バイオエタノール生産をさらに高コストにする傾向がある。HenkおよびLindenはさらに、実験スケールでモロコシの固体状態での発酵の実行可能性を示したが、スケールアップした稼働については詳細を示していない。

例えば、HenkおよびLindenは、バイオマス固体材料からエタノールおよび他の揮発性有機化合物を経済的に回収するいかなる手段も示していない。HenkおよびLindenならびにその他の者は、モロコシの固体状態での発酵によるエタノール生産を、より大きいスケール、特に工業的なスケールで稼働させる場合に経済的に行えるようにするという障害に取り組んでいない。

また、バイオマス固体材料からエタノールおよび他の揮発性有機化合物を経済的に回収するという課題も認識されている。例えば、Websterらは、サトウモロコシ用の飼料収穫機を使用すると急速なジュースの変質が起こり、製糖所に持ち込むためのサトウモロコシとしては不適切な溶液になってしまうことを報告している(Observations of the Harvesting, Transporting and Trial Crushing of Sweet Sorghum in a Sugar Mill、Webster, A.ら、2004 Conference of the Australian Society of Sugar Cane Technologist、クイーンズランド州ブリスベン、オーストラリア(2004年5月)を参照)。AndrzejewskiおよびEgglestonは、米国ではサトウモロコシの収穫期間が比較的短期間であるために、米国産サトウモロコシをエタノールにすること(または他の使用)を可能にするという課題は、ジュースの貯蔵を中心に展開していることを報告している(Development of commercially viable processing technologies for sweet sorghum at USDA-ARS-Southern Regional Research Center in New Orleans、AndrzejewskiおよびEggleston、Sweet Sorghum Ethanol Conference、2012年1月26日を参照)。特に、これらの課題としては、(i)濃縮および/または発酵に適したものにするための生のジュースの清澄化(懸濁粒子及び混濁粒子の除去)、(ii)費用効率が高い季節的な用途のためのジュースまたは部分的に濃縮したジュースの安定化(液体供給材料)、および(iii)貯蔵、年間を通じての供給、および効率的な輸送のためのシロップへのジュースの濃縮(液体供給材料)が挙げられる。

Bellmerは、処理前の固体からのジュースの除去周辺の条件を最適化することによって処理を向上させることを試みている(The untapped potential of Sweet Sorghum as a BioenergyFeedstock、Bellmer, D.、Sweet Sorghum Ethanol Conference、2012年1月26日を参照)。Wuらは、例えば、糖含量が最高となる収穫期間が短いこと、および貯蔵中に迅速に糖が劣化することといった生物燃料へのサトウモロコシの使用に関する技術的課題を確認している(Features of sweet sorghum juice and their performance in ethanol fermentation、X.Wuら、Industrial Crops and Products 31:164〜170、2010を参照)。特に、発酵性糖の20%もの量が3日で失われる可能性があるという研究が示されている。BennetおよびAnnexは、例えば材料の輸送コストや貯蔵性などの、エタノール生産にモロコシを使用することの制約について述べている(Farm-gate productions costs of sweet sorghum as a biocthanol feedstock、Transactions of the American Society of Agricultural and Biological Engineers、51巻(2):603〜613、2008を参照)。BennetおよびAnnexは、酵母を植え付けたエンシレージでの直接的なエタノール生産も認識していたが、彼らは、サイレージからのエタノールの分離、エンシレージ貯蔵の損失(バンカー型のサイロでは最大40%)に関する問題のために、このような直接的な生産方法は非現実的であると結論付けており、さらに代替発酵供給材料としてのサイレージ使用の可能性は、まだ工業スケールでの適用では試験されていない。

ShenおよびLiuは、まず糖を保存するためにサトウモロコシを乾燥させ、次いで年間を通じたエタノール生産のために材料の使用を計画することによって、長期かつ有効に新鮮な茎またはジュースを貯蔵する問題を解決しようと試みているが、それによって湿潤したモロコシを乾燥させたり、乾燥させるために湿潤したモロコシを塗り広げたりするために材料を取り扱うのにかかるコストを増大させ、加えて適度な乾燥を達成するのに十分な気候条件を必要とすることからプロセスに対する制約を増大させている(Research on Solid-State Ethanol Fermentation Using Dry Sweet Sorghum Stalk Particles with Active Dry Yeast、Shen, FeiおよびLiu, R.、Energy & Fuels、2009、23巻、519〜525頁を参照)。ImamおよびCaparedaは、発酵前にジュースを処理すること、および例えばオートクレーブ(熱処理)、フリージングなどの様々な選択肢を使用して発酵速度を高めること、および糖濃度を高めることを試みている(Ethanol Fermentation from Sweet Sorghum Juice、Imam, T.およびCapareda, S.、ASABE、2010 ASABE Annual International Meeting、ペンシルベニア州ピッツバーグ(2010年6月)を参照)。

Bellmer、Huhnke、およびGodseyは、(i)サトウモロコシの炭水化物の貯蔵性、(ii)収穫後における茎中の糖/炭水化物の迅速な劣化、(iii)絞り出されたジュースの短い貯蔵寿命、(iv)シロップ生産(脱水)にコストがかかりすぎること(The untapped potential of sweet sorghum as a bioenergy feedstock、Bellmer, D.、Huhnke、R.、およびGodsey, C、Biofuels 1(4)563〜573、2010を参照)といった、エタノール生産でモロコシを使用する課題について述べている。彼らは固相発酵槽を使用しているが、固相発酵槽は回転式ドラムおよびスクリューオーガーを包含する金属製容器であって、費用がかかる器具を必要とする。さらに、固相発酵槽の使用も、例えばサトウモロコシなどの作物の収穫期間の影響を受ける。同様にNoahおよびLindenは、燃料および化学物質へのサトウモロコシ使用に関する2つの主要な欠点として、貯蔵性と非効率的な糖抽出とを挙げている。

まとめると、発酵性糖を含有するモロコシおよび他の植物の使用における障害としては、それらはある季節に限り利用可能であり、貯蔵にコストがかかるという事実が挙げられ、これらの障害のためにインフラストラクチャーを効率的に利用し、労働計画を立てることが難しくなっている;すなわち腐敗を防ぐために収穫後すぐに変換を始めなければならないことから、糖抽出と貯蔵性とが2つの重要な障害である。

したがって、少なくともこれらの障害に対処した、好ましくは世界の食物源とは競合しないようなバイオマス材料からエタノールおよび他の揮発性有機化合物をラージスケールで生産するプロセスが求められている。

Solid State Production of Ethanol from Sorghum、Linda L. HenkおよびJames C. Linden、Applied Biochemistry and Biotechnology、57/58巻、1996、489〜501頁

Observations of the Harvesting, Transporting and Trial Crushing of Sweet Sorghum in a Sugar Mill、Webster, A.ら、2004 Conference of the Australian Society of Sugar Cane Technologist、クイーンズランド州ブリスベン、オーストラリア(2004年5月)

Development of commercially viable processing technologies for sweet sorghum at USDA-ARS-Southern Regional Research Center in New Orleans、AndrzejewskiおよびEggleston、Sweet Sorghum Ethanol Conference、2012年1月26日

The untapped potential of Sweet Sorghum as a BioenergyFeedstock、Bellmer, D.、Sweet Sorghum Ethanol Conference、2012年1月26日

Features of sweet sorghum juice and their performance in ethanol fermentation、X.Wuら、Industrial Crops and Products 31:164〜170、2010

Farm-gate productions costs of sweet sorghum as a biocthanol feedstock、Transactions of the American Society of Agricultural and Biological Engineers、51巻(2):603〜613、2008

Research on Solid-State Ethanol Fermentation Using Dry Sweet Sorghum Stalk Particles with Active Dry Yeast、Shen, FeiおよびLiu, R.、Energy & Fuels、2009、23巻、519〜525頁

Ethanol Fermentation from Sweet Sorghum Juice、Imam, T.およびCapareda, S.、ASABE、2010 ASABE Annual International Meeting、ペンシルベニア州ピッツバーグ(2010年6月)

The untapped potential of sweet sorghum as a bioenergyfeedstock、Bellmer, D.、Huhnke、R.、およびGodsey, C、Biofuels 1(4)563〜573、2010

本発明の実施態様は、従来のプロセスを超える多数の利点を提供する。本発明の実施態様は、そのうちいくつかが上述された課題、例えばプラントの分散化の必要性、短い収穫期間、迅速な糖の劣化、および多大な器具への投資などの課題に取り組むことによって、発酵性糖を含有する植物からのエタノールおよび他の揮発性有機化合物の経済的な生産を可能にする。

所定の実施形態において、発酵は、1つまたはそれより多くのパイルで調製済みバイオマス材料を貯蔵することによって達成されてもよく、そうすることにより、一般的にはかなりの設備投資を必要とする従来技術の発酵プロセスと比較して高価な器具への必要性を少なくしたり、またはなくしたりすることができる。従来技術の発酵性糖料作物の発酵では腐敗を回避するためにジャストインタイムの収穫を必要とすることが多く、そのため従来技術の操作は時間的制約があるが、本発明の実施態様は、生成物の貯蔵と共に発酵を行うことを可能にする。

本発明の実施態様は、収穫期間とは無関係に、制御された方法で一年中連続的に回収施設を稼働させることを可能にし、それによって、回収施設を設置するのに利用できる地質学的な場所を例えば収穫期間が比較的短い地域なども含めて増やすことができる。例えば、ブラジルのサトウキビ由来エタノールのプラントは典型的には1年のうち約9ヶ月稼働するが、これはその期間がブラジルにおけるサトウキビの収穫期間にあたるためである。米国では、作物が入手できる期間が短いことに加えてジャストインタイムの収穫には必要条件があることから、それと同じプラントは1年のうち約3ヶ月から5ヶ月しか稼働できない。本発明の実施態様は、ジャストインタイムの収穫への必要性をなくすかまたは最小化して、糖料作物の収穫期間に関係なく年間を通したエタノール生産を可能にする。

本発明の実施態様は、揮発性有機化合物の劣化が最小となる700日間までの発酵及び貯蔵期間の制御を提供することにより、作物の潜在的なピーク糖量及びピーク収穫量に最も近くなる短い収穫期間を可能にする。これは、収穫期間をより長くするために、糖の生産レベルと栽培時の産出量を妥協しなければならない場合がある従来のプロセスよりも最適な状態での収穫が可能になる。

さらに本発明の実施態様は、商業化または他の工業的用途にとって十分な量を回収することを包含する、ラージスケールでのエタノールまたは他の揮発性有機化合物の生産を可能にする。

特定の実施態様において、少なくとも1種の揮発性有機化合物の生産方法であって:少なくとも約10トンの調製済みバイオマス材料を生成すること、ここで前記調製済みバイオマス材料は、糖含有固体バイオマスに添加された少なくとも1種の添加剤を含み、前記少なくとも1種の添加剤は、微生物、ならびに場合により酸および/または酵素を含み;調製済みバイオマス材料を、貯蔵施設で少なくとも約24時間貯蔵して、糖の少なくとも一部から少なくとも1種の揮発性有機化合物を生産させること;および無溶媒回収システムに保存されたバイオマス材料を供給して、保存されたバイオマス材料を、少なくとも、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含むガス成分と固形成分とに分離することにより、少なくとも1種の揮発性有機化合物を捕捉すること、を含む上記方法が提供される。

一実施態様において、捕捉する工程は:無溶媒回収システムの閉鎖された区画に調製済みバイオマス材料を導入すること、ここで調製済みバイオマス材料は、1種またはそれより多くの揮発性有機化合物を含有し;調製済みバイオマス材料を、閉鎖された区画中の過熱蒸気ストリームと接触させて、調製済みバイオマス材料中の最初の液状内容物の少なくとも一部を蒸発させること、ここで前記過熱蒸気ストリームは、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含み;調製済みバイオマス材料からガス成分と固形成分とを分離すること、ここで前記ガス成分は、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含み;およびガス成分の少なくとも一部を、過熱蒸気ストリームの一部として使用するために保持すること、を含む。

他の実施態様において、揮発性有機化合物を含有する保存可能な湿潤バイオマスの生産方法が提供され、前記方法は:少なくとも約10トンの固体バイオマスに少なくとも1種の添加剤を添加して、調製済みバイオマス材料を生成すること、ここで前記固体バイオマスは、糖産生植物を含み、前記少なくとも1種の添加剤は、微生物、ならびに場合により酸および/または酵素を含み;および調製済みバイオマス材料中の糖の少なくとも一部を揮発性有機化合物に変換させること;を含み、ここで前記バイオマス材料は、揮発性有機化合物の有意な分解を起こすことなく約700日間保存が可能である。

上記で説明した特徴に加え、本発明の実施態様は、例えば貯蔵および輸送コスト、短い収穫期間、迅速な糖の劣化、および多大な器具への投資などの課題に取り組むことによって、発酵性糖を含有する植物からの、例えばエタノールおよび他の揮発性有機化合物などの代替燃料の経済的な生産を可能にする。本明細書で説明される実施態様の形態は、例えば発酵性糖を含有する植物などのあらゆるバイオマス材料に適用される。本発明の実施態様は、代替燃料および化学物質を生産するために様々な植物を経済的に使用することを可能にし、さらにモロコシや類似の問題を有する他の植物に限定されないことを特徴とする。本明細書ではこのような扱いにくい作物を強調しているが、これは、他の方法およびシステムでは、燃料および化学物質を生産するのにこれらの扱いにくい作物を経済的に使用できていなかったためである。したがって、具体的にはモロコシが述べられているが、これは限定を意図したものではなく、本発明の実施態様の特定の適用の1つを例示したに過ぎない。

以下の詳細な説明から、本発明の実施態様の他の特徴および利点が明らかになると予想される。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は本発明の好ましい実施態様を示すものであるが、この詳細な説明から、本発明の本質および範囲内の様々な変化および改変が当業者には明らかであると予想されることから、単に例証として示されただけであることが理解されよう。

これらの図面は、本発明の実施態様のうちいくつかの所定の形態を例示するものであり、本発明を限定または定義するのに使用されないものとする。

図1は、本発明の所定の形態に従ってバイオマス材料を処理する一実施態様を示す図である。

図2は、本発明の所定の形態に従ってバイオマス材料を処理する他の実施態様を示す図である。

本発明の実施態様は、特により大きいスケールで、例えば商業化または工業的なスケールでの、固体バイオマス材料からのエタノールまたは例えば酢酸などの他の揮発性有機化合物の効率的かつ経済的な生産および回収を提供する。本発明の一形態によれば、本方法は、(a)微生物、場合により酸、および場合により酵素を固体バイオマスに添加することによって、少なくとも約10トンの調製済みバイオマス材料を生成すること;(b)調製済みバイオマス材料を、貯蔵施設で少なくとも約24時間貯蔵して、固体バイオマス中の糖の少なくとも一部から少なくとも1種の揮発性有機化合物を生産させること;および(c)無溶媒回収システムを使用することにより少なくとも1種の揮発性有機化合物を捕捉することを含む。

本明細書で使用される用語「固体バイオマス」または「バイオマス」は、少なくとも生きている、またはごく最近まで生きていた生物からの生物学的な物質を指す。固体バイオマスは、繊維または例えば生物燃料などの他の工業用化学物質に変換できる植物または動物系の物質を包含する。固体バイオマスは、ススキ、アメリカクサキビ、麻、トウモロコシ、熱帯性のポプラ、ヤナギ、モロコシ、サトウキビ、砂糖大根、およびあらゆるエネルギー原料用キビ、ならびにユーカリからアブラヤシ(パーム油)に至る様々な樹種などの多数のタイプの植物または樹木から誘導できる。一実施態様において、固体バイオマスは、少なくとも1種の発酵性糖産生植物を含む。固体バイオマスは、発酵性糖産生植物を包含する2種またはそれより多くの異なる植物種を含んでいてもよい。異なる植物種が、同じ収穫期を有していてもよいし、または異なる収穫期を有していてもよい。好ましい実施態様において、本発明の範囲を制限する意図はないが、生産性の高くない土地でも収量が高く、糖含量も高いことから、モロコシが選択される。

用語「発酵性糖」は、嫌気および/または好気条件条件下で例えばアルコール、有機酸、エステル、およびアルデヒドなどの有機生成物を生産するために微生物によって炭素源として使用できるオリゴ糖および単糖類(例えば、ペントースおよびヘキソース)を指す。このような有機生成物の生産は、一般的には発酵と呼ぶことができる。少なくとも1種の発酵性糖産生植物は、成長周期中のある時点で植物材料の水相に溶解した発酵性糖を含有する。発酵性糖産生植物の非限定的な例としては、モロコシ、サトウキビ、砂糖大根、およびエネルギー原料用キビが挙げられる。特に、サトウキビ、エネルギー原料用キビ、およびモロコシは、発酵性糖の生産が可能な最大値に近いかまたは最大値であるときに(例えば、発酵性糖濃度が最大のときに)、典型的には水相中で約5%から約25%(w/w)の可溶性糖を含有し、湿潤基準で約60%から約80%の間の含水量を有する。

用語「湿潤基準」は、少なくとも質量の一部として水を包含する質量パーセンテージを指す。好ましい実施態様において、糖産生植物は、モロコシである。炭水化物から揮発性有機化合物(VOC)への微生物による変換をもたらすモロコシのあらゆる種または様々な属が使用できる。モロコシを使用する実施態様の場合、この植物は、例えば水効率がよく、加えて干ばつや暑さにも強いといった所定の利点をもたらす。これらの特性により、例えば中国、アフリカ、オーストラリアなどの地球上の様々な場所などの多くの地域で、加えて米国では例えば台地の一部、西部、および南テキサス全域などにおいてもこの作物は好適である。

モロコシを使用する実施態様において、モロコシは、より高い発酵性糖濃度で収穫できるあらゆる種または種の組み合わせを包含していてもよい。好ましい特性を有するモロコシの所定の種は、「サトウモロコシ」と称される場合もある。モロコシとしては、サトウキビ圧搾機の稼働中のジュース化工程を維持するのに十分な水分を包含する種、またはそのような水分を含有しない種が挙げられる。好ましい実施態様において、固体バイオマスとしては、アドバンタ(Advanta)によって商業的に生産されたシュガーT(Sugar T)というモロコシ種、および/またはシュガーTの雄性の親種(これもアドバンタの市販品である)が挙げられる。好ましい実施態様において、使用される作物は、約5から約25のブリックス、好ましくは約10から約20のブリックス、およびより好ましくは約12から約18のブリックスを有する。用語「ブリックス」は、本明細書では、少なくとも水溶液中のグルコース、フルクトース、およびスクロースの含量を指し、ここで1ブリックスとは、溶液100グラム中、グルコース、フルクトース、および/またはスクロースが1グラムであり、重量パーセンテージ(%w/w)として溶液の強度を示す。他の好ましい実施態様において、使用される作物の含水量は、約50%から80%であり、好ましくは少なくとも60%である。

一実施態様において、作物は、約18のブリックス値と約67%の含水量を有するシュガーTの雄性の親種である。他の実施態様において、作物は、約73%の含水量で約12のブリックス値を有するシュガーTである。これらの特定の実施態様において、ブリックス値および含水量値は、手持ち式の屈折計によって決定された。

固体バイオマスに少なくとも1種の添加剤(微生物、場合により酸および/または酵素)が添加された後、その固体バイオマスは、その少なくとも1種の添加剤によって発酵性糖からVOC(例えばエタノールなど)への変換が促進される調製済みバイオマス材料になる。上述したように、さらに以下で説明されるように、調製済みバイオマス材料は、変換プロセスによってより多くのVOCが生成するような所定期間にわたり保存が可能である。次いで、調製済みバイオマス材料から少なくとも1種の揮発性有機化合物が回収される。揮発性有機化合物は、当業者公知である。米国環境保護庁(EPA)は、揮発性有機化合物(VOC)の説明を示しており、そのうち1つは、環境保護庁によってごくわずかな光化学反応性しか有さないと指定されたものを除き、大気の光化学反応に関与する、一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸、金属炭化物または金属炭酸塩を除くあらゆる炭素化合物、および炭酸アンモニウムである(http://www.epa.gov/iaq/voc2.html#definitionを参照)。また揮発性有機化合物またはVOCは、通常の室内の大気温度および大気圧条件下で蒸発が起こるような組成を有するあらゆる有機化学物質であるとも説明されている。これは、科学文献で使用されるVOCの一般的な定義であり、室内の大気品質に関して使用される定義と一致する。通常の室内の大気温度および大気圧条件は、人間によって占有されている建築物内で通常見出される条件の範囲を指し、したがって建築物のタイプやその地理上の位置に応じて異なる可能性がある。典型的な通常の室内の大気条件の1つは、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry;IUPAC)および国立標準技術局(National Institute of Standards and Technology ;NIST)によって示されたものである。IUPACの標準は、0℃(273.15K、32°F)の温度および100kPa(14.504psi)の絶対圧であり、NISTの定義は、20℃(293.15K、68°F)の温度および101.325kPa(14.696psi)の絶対圧力である。

一般的に化合物の揮発性が高ければその沸点温度は低くなるため、有機化合物の揮発性は、それらの沸点で定義され分類されることもある。したがって、VOCは、その沸点によって説明できる。VOCは、約101.3kPaの標準大気圧で測定した場合に約50℃〜260℃の範囲の沸点を有するあらゆる有機化合物である。本発明の実施態様で回収されたVOCから回収され、および/またはさらに加工される可能性がある多くの揮発性有機化合物は、香料および香料産業において用途を有する。このような化合物の例は、エステル、ケトン、アルコール、アルデヒド、炭化水素、およびテルペンであり得る。以下の表1に、調製済みバイオマス材料から回収されたVOCから回収され、および/またはさらに加工される可能性がある揮発性有機化合物の非限定的な例をさらに示す。

エタノールは、好ましい揮発性有機化合物である。したがって、多くの例においてエタノールが具体的に述べられている。しかしながら、このような具体的な言及は、本発明を限定することを意図していない。本発明の形態は他の揮発性有機化合物にも等しく適用されることが理解されるものとする。他の好ましい揮発性有機化合物は、酢酸である。

本発明の実施態様は、調製済みバイオマス材料に含有される揮発性有機化合物において有意な劣化を起こさない固体バイオマス材料の長期保存を実現化し、さらに本発明の実施態様は、VOCの連続生成を可能にする糖の保存も実現化する。「有意な」は、本発明の状況において使用される場合、調製済みバイオマス材料中の揮発性有機化合物の量または濃度を測定した場合に少なくとも誤差の許容範囲内であることを指す。一実施態様において、誤差の許容範囲は、約0.5%である。

したがって、本発明の実施態様は、収穫の長さに頼ることなくVOCを連続生産することを可能にし、それによって従来のジャストインタイムの収穫および回収プロセスにおける回収プラントの休止期間をなくしたり、またはそれを最小化したりすることを可能にする。そのようなものとして、本発明の実施態様は、典型的には例えばピーク時間よりもわずかに収穫を早めるか遅めることで収穫期を延長させるといった妥協をすることなく、ピーク時における作物の収穫を可能にする。すなわち本発明の実施態様は、たとえ収穫期間が短くなったとしても、選択された作物が、揮発性有機化合物に変換可能な発酵性糖のピークの濃度または量に達したときのような、高い収穫量および高い糖濃度での収穫を可能にする。一実施態様において、固体バイオマスは、その可能な最大の発酵性糖濃度が約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%であるときに、収穫または調製される。したがって、本発明の実施態様、特に回収期は、固体バイオマスおよびそれに含有されるVOCが腐敗する恐れによる時間の制約を受けずに年間を通して連続的に稼働させることができる。本発明の実施態様は、糖生産がその可能な最大値に近いかまたは最大値であるときに固体バイオマスの収穫を可能にすると同時に、固体バイオマス材料は、好適な糖の量を含有するとみなされるあらゆる時点で収穫することも可能である。さらに、収穫期間は、作物のタイプと地理的な位置に応じて様々である。例えば、北アメリカにおけるモロコシの収穫期間は、約1ヶ月から7ヶ月の範囲であり得る。しかしながら、ブラジルおよび他の赤道直下および赤道付近の地域では、収穫期間は、最長12ヶ月の場合もある。

固体バイオマスとして植物を使用する実施態様において、当業者公知のあらゆる好適手段を使用して畑から固体バイオマスを収集または収穫できる。一実施態様において、固体バイオマスは、植物の茎の部分と葉の部分を含む。他の実施態様において、固体バイオマスは、穀類の部分をさらに含む。好ましい実施態様において、固体バイオマスは、飼料またはサイレージ収穫機(飼料またはサイレージチョッパー)を用いて収穫される。サイレージ収穫機または飼料収穫機は、サイレージを作製するのに使用される農機具を指し、サイレージとは、小片に細断され、貯蔵サイロ、サイレージバンカー、またはサイレージバッグ中で一まとめに圧縮された牧草、トウモロコシまたは他の植物のことである。サイレージ収穫機(silage harvester)または飼料収穫機(forage harvester)は、ドラム(カッターヘッド)または多数のナイフが固定されたフライホイールのいずれか一方のような切断メカニズムを有し、これは、材料を細断して細断済み材料を収穫機またはそれに沿って稼働する別の運搬具のいずれかに連結された入れ物に移す。飼料収穫機は、サトウキビ収穫機(sugar cane harvester)または乾燥ベールシステム(dry baled system)を超える利点をもたらすことから、飼料収穫機が好ましい。例えば、飼料収穫機は、サトウキビ収穫機よりもより高密度の材料をもたらし、それによって収穫した材料のより効率的な輸送を可能にする。一実施態様において、サトウキビ収穫機を用いて収穫された約300kg/m3の密度を有するサトウキビや、サトウキビ収穫機を用いて収穫された約200kg/m3の密度を有するモロコシと比較して、飼料収穫機の使用により約400kg/m3のかさ密度を有する収穫されたモロコシが得られる。一般的には、材料のかさ密度を高くすることにより、収穫された作物であるサトウキビを供給できる地理上の地域を限定しがちな輸送費を安くできる。

したがって、例えばモロコシなどの選択されたバイオマスを収穫するためには、サトウキビ収穫機または乾燥ベールシステムよりも飼料収穫機が全体的に安価な方法である。理論に縛られることはないが、コスト節約は、部分的に、飼料収穫機によって収穫された固体バイオマスのより高い材料処理能力およびより高いかさ密度に起因すると考えられる。固体バイオマスは、どのような長さに切断されてもよい。一実施態様において、収穫機の細断長さは、約3mm〜約80mmの範囲、好ましくは約3mm〜約20mmの範囲に設定されてもよく、約3mm〜約13mmの細断長さの例が最も好ましい。これらの好ましい細断長さにおいて、飼料収穫機において観察できるほどの水分の放出はなかったことから、損失は最小であった。細断長さを選択すると、収穫機から、選択された細断長さに近い平均サイズまたは長さの分布を有するバイオマスが供給される。一実施態様において、回収システムから出る固形成分の平均粒度分布は、要求に応じて調節が可能であり、これは、収穫機の細断長さを調節することにより行うことができる。

適切な炭水化物から揮発性有機化合物への変換を容易にしたり、および/または促進したりするために、固体バイオマスに少なくとも1種の添加剤が添加される。選択された添加剤(複数可)が添加された後、その固体バイオマスは、調製済みバイオマス材料と称される場合がある。一実施態様において、調製済みバイオマス材料は、上記で列挙した発酵性糖産生植物の少なくとも1種またはそれらのあらゆる組み合わせを含んでいてもよい。好ましい実施態様において、収穫中に収穫機を使用して選択された添加剤(複数可)を添加することが都合がよい場合がある。

本発明の実施態様は、特定の収穫期間で少なくとも約10トンの調製済みバイオマス材料を生成するためにスケールアップした稼働を提供する。飼料収穫機を使用する実施態様に関して、飼料収穫機は、量のスケールアップを達成することに役立つ。一実施態様において、少なくとも約700トン、好ましくは少なくとも約100万トン、例えば少なくとも120万トン、またはより好ましくは少なくとも約500万トンの調製済みバイオマス材料が、具体的な地域の生育状態に基づき特定の収穫期間で生成し、例えばモロコシの場合は北アメリカで約1〜7ヶ月で生成する。一実施態様において、最大1億トンの調製済みバイオマスが、特定の収穫期間で生成される。

収穫プロセス中および/または収穫プロセス後のあらゆる時点で、少なくとも1種の添加剤を添加できる。飼料収穫機を使用する好ましい実施態様において、収穫プロセス中に添加剤を固体バイオマスに添加することにより、調製済みバイオマス材料が生成する。特に、飼料収穫機は、収穫中に固体添加剤と液体添加剤の両方が効率的に添加されるように設計される。上述したように、添加される添加剤としては、少なくとも微生物(例えば酵母)、および場合により酸および/または酵素が挙げられる。好ましい実施態様において、選択された添加剤(複数可)は、溶液として添加される。以下で可能性のある添加剤の追加の詳細をさらに示す。

飼料収穫機または類似の器具を使用する実施態様の場合、選択された添加剤(複数可)は、収穫中の全ての期間で、例えば取り込み用フィードローラーの前に、取り込み中に、細断時に、細断後に、ブロワーを通過中に、ブロワー後に、加速器中で、ブーム(または吐出口)中で、および/またはブーム後に添加できる。酸および酵素が添加される一実施態様において、酸は、取り込み用フィードローラー付近で添加され、微生物および酵素は、ブーム中で添加される。特定の実施態様において、幅約30フィートのヘッダーを有するV12モーターを備えたクローネ(Krone)のビッグX(Big X)飼料収穫機が使用される。クローネシステムを使用する実施態様では、酸は、溶液として、フィードローラーのちょうど前に溶液を吐出するフレキシブルな管材料を介して添加される。この方式では、液体の流れを視覚的にモニターすることが可能であり、それにより細断チャンバー内部で酸溶液および固体バイオマスが迅速に混合される様子が示される。他の実施態様において、酸の添加も、ケースニューホランド(Case New Holland)のFX58飼料収穫機を使用して実施可能であることが実証された。所定の実施形態において、添加剤を内蔵させるための内部搭載型のラックが、使用される飼料収穫機に包含されていてもよく、それにより、収穫中に添加剤の少なくとも1種(複数)が選択されて添加される。他の実施態様において、収穫中に添加される選択された添加剤(複数可)は、トレーラー上で収穫機の後ろに牽引されて存在していてもよい。例えば、一実施態様において、酵母、酵素、および酸の添加剤溶液を含有するタンクを備えた改造ユーティリティートレーラーの採用が、収穫機の通常運転への干渉を最小限にできることが実証され、それによって期待される収穫プロセスのコストと持続時間が実質的に維持される。例えば、約4マイル/時間で走行するサイレージ収穫機を採用した場合の通常の収穫用配置およびバイオマス収量は、一実施態様で上述したような所定の添加剤を備えている場合でも、それと類似した約4マイル/時間の収集速度を維持する。

本発明の実施態様において、調製済みバイオマス材料は最終的に、貯蔵施設に輸送され、そこで、固体バイオマスの発酵性糖の少なくとも一部から少なくとも1種の揮発性有機化合物が生産されるような期間にわたり調製済みバイオマス材料は保存される。以下に貯蔵期の詳細をさらに示す。所定の実施形態において、選択された添加剤(複数可)は貯蔵施設で添加されてもよい。例えば、一実施態様において、固体バイオマスの積み降ろし中に、または固体バイオマスが貯蔵施設で積み降ろされた後に、選択された添加剤(複数可)を添加してもよい。一実施態様において、貯蔵施設で選択された添加剤(複数可)の添加を促進するために、運搬システムが使用される。貯蔵施設で固体バイオマスに添加される添加剤(複数可)は、まだ添加されていない添加剤(複数)であってもよいし、またはすでに添加された添加剤(複数)の追加の量であってもよい。したがって、収穫プロセスの開始時から、貯蔵エリアまたは施設での、例えば材料が移された地点での調製済みバイオマス材料貯蔵の前までのあらゆる時点で、選択された添加剤(複数可)が添加される。

上述したように、本発明の実施態様のための添加剤(複数可)は、少なくとも微生物、ならびに場合により酸および/または酵素を包含する。選択された添加剤(複数可)はあらゆる順番で固体バイオマスに添加できる。好ましい実施態様において、微生物を添加する前に酸を固体バイオマスに添加することにより、微生物にとって魅力的な増殖環境が提供されるように材料を準備する。

好ましい実施態様において、酸を添加することにより、エタノールおよび/または揮発性有機化合物の生産を増加させる選択された自生種の微生物または添加された微生物の増殖を容易にする、および/または促進する範囲に、固体バイオマスのpHを低下させる。また酸は、その後のVOC生産を目的とした発酵性糖を消費する植物の呼吸を止めたりまたは遅くしたりすることも可能である。一実施態様において、酸は、固体バイオマスのpHが、約2.5から約5.0の間、好ましくは約3.7〜約4.3の範囲、より好ましくは約4.2になるまで添加される。使用される酸としては、例えば硫酸、ギ酸、またはリン酸などの公知の酸が挙げられる。以下の表2に、個々にまたは組み合わせて使用できる酸の非限定的な例を示す。

好ましい実施態様において、酸の添加により固体バイオマスが望ましいpHに達した後、微生物が添加される。添加剤が存在する状況下の微生物は、少なくとも、固体バイオマスに添加された、調製済みバイオマス材料に作用し得る、または影響を与え得る生物を指す。添加された微生物(複数可)による作用または影響の典型例の1つとしては、発酵または他の代謝を起こして、セルロース系材料などの様々な源からの発酵性糖をエタノールまたは他の揮発性有機化合物に変換することが挙げられる。他の典型的な作用または影響は、調製済みバイオマス材料中のセルロースを分解して、エタノールまたは他のVOCに代謝させることができる発酵性糖にすることを促進する所定の酵素(複数可)の生産であってもよい。微生物によって提供されるさらに他の典型的な作用または影響としては、動物用飼料として役立つ可能性がある最終的な副産物の品質、すなわち価値を向上させることができるビタミン、補因子、およびタンパク質などの化合物の生産が挙げられる。さらに、微生物活性は、パイルのための熱を供給する。また微生物細胞壁または他の異化生成物もしくは同化生成物の一部も、回収ユニットで回収できる付加価値のある化学物質を供給する可能性がある。これらの影響および作用はまた、固体バイオマスに自生している微生物によって提供される可能性もある。

調製済みバイオマス材料に作用し得る、または影響を与える得るあらゆる微生物を添加することが可能である。好ましい実施態様において、微生物(複数可)としては、サイレージ、動物用飼料、ワイン、および工業用エタノール発酵用途で使用される微生物が挙げられる。一実施態様において、選択された微生物は、用途や製造しようとする有機分子の望ましいプロファイルに従って、酵母、菌類、および細菌を包含していてもよい。好ましい実施態様において、選択された微生物は、酵母である。他の実施態様において、乳酸または酢酸を製造するのに、細菌を添加してもよい。これらの酸を製造するのに所定の菌類も添加してもよい。例えば、酢酸を生成するためには、アセトバクテリウム・アセチイ(Acetobacterium acetii)を添加してもよく;乳酸を生成するためには、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)を添加してもよく;コハク酸を生成するためには、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、マンヘミア・サクシニシプロデュセンス(Mannheimia succiniciproducens)、および/またはアネロビオスピリルム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillumsucciniciproducens)を添加してもよく;アセトンおよびブタノールを生成するためには、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)を添加してもよく;および/またはブタンジオールを生成するためには、アエロバクター・アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)を添加してもよい。

以下の表3に、個々にまたは組み合わせて使用できる好ましい微生物の非限定的な例を示す。

また好ましい微生物としては、高いエタノール濃度に耐えることができ、その各々の微生物集団において強力な競合種であるサッカロミセス・セレビジエ株も挙げられる。微生物は、中温菌であってもよいし、または高温菌であってもよい。高温菌は、約45℃より高い温度で最もよく成長する生物であり、3つ全ての生物界、すなわち細菌、古細菌、および真核生物で見出される。中温菌は、一般的に、約20℃から45℃の間で活性である。サッカロミセス・セレビジエ株を使用する実施態様において、その株は、例えばレサフル(Lesaffre)製のバイオサフ(Biosaf)、フィブロ(Phibro)製のエタノールレッド(Ethanol Red)、およびラレマンド(Lallamand)製の活性化液体酵母などの商業的な供給源に由来するものでもよい。微生物を商業的な供給源から入手する場合、供給元が推奨する割合に従って微生物を添加してもよく、この割合は、典型的には、質量計算に水分を包含する1ウェットトンあたりの期待される糖含量に基づく。用語「ウェットトン」は、少なくとも水分を含めた質量単位を指す。推奨量は、反応条件に従って調節される場合がある。添加された微生物は、特定の微生物の1種の株を含んでいてもよいし、または複数の株を含んでいてもよい。一実施態様において、微生物は、固体バイオマス1ウェットトンあたり最大500mLの割合で添加される。市販の酵母を使用する特定の実施態様において、固体バイオマス1ウェットトンあたり約300mLのラレマンド酵母調製物が添加される。他の実施態様において、追加の酵母株が添加されてもよい。例えば、エタノールレッドは、約0.001kg/ウェットトンから約0.5kg/ウェットトンの間の割合で、特に約0.1kg/ウェットトンの割合で添加されてもよい。さらにその他の実施態様において、別の酵母株、例えばバイオサフなどは、約0.001kg/ウェットトンから約0.5kg/ウェットトンの間の割合で、特に約0.1kg/ウェットトンの割合で添加されてもよい。いずれかの酵母株の追加量が添加されてもよいことが理解される。例えば、供給された微生物量の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、または約3倍が添加されてもよい。

所定の実施形態において、酵素がさらに添加される。酵素は、例えば異なるセルロース系材料などの微生物にとって代謝することがより難しい植物材料からの発酵性糖の生成を補助する酵素であってもよいし、および/または例えば飼料をより消化しやすくすることによって動物用飼料として役立つ最終的な副産物の価値を向上させるための酵素であってもよい。酵素はまた、抗生物質であってもよく、例えば以下でさらに論じられるようなリゾチームなどであってもよい。添加される酵素は、1種の酵素を包含していてもよいし、または複数種の酵素を包含していてもよい。酵素は、市販の酵素調製物から得られるものでもよい。所定の代謝が難しい植物材料を発酵性糖に変換することを補助する酵素の非限定的な例としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、および/またはプロテアーゼなどが挙げられる。追加の例としては、供給材料からの発酵性糖の生産を提供したり、もしくはその提供を補助したりする他の酵素、または最終的な飼料副産物の価値を高める他の酵素のいずれかが挙げられる。

所定の実施形態において、所定の代謝が難しい植物材料を発酵性糖に変換することを補助する酵素は、植物それ自身によって、例えば植物内で(in-plantae)生産されてもよい。セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、および他の植物性高分子を分解する酵素を生産できる植物の例は、成長中の植物中で生産されるものであってもよく、特許公報および特許WO2011057159、WO2007100897、WO9811235、およびUS6818803で説明されており、これらは、植物中で植物細胞壁を解重合させる酵素が生産される可能性があることを示している。他の実施態様において、エンシレージを使用して、このような植物が生産する酵素を活性化し、さらに追加処理のためにバイオマスを調整してもよい。一例が特許公報WO201096510で説明されている。このようなトランスジェニック植物が使用される場合、それらは、収穫物中にどのような量で包含されていてもよい。例えば、所定の実施形態では、植物中で生産された植物界内の酵素を採用してもよく、これは、供給材料として特定のトランスジェニック植物のみを使用することによって、または類似の作物または異なる作物に散在させてトランスジェニック植物を取り入れることによってなされる。

このような植物性高分子を分解する酵素を包含する所定の実施形態において、エタノールは、植物のセルロース画分から生産されてもよい。特定の実施態様において、モロコシ貯蔵システムにノボザイムズ(Novazymes)製のCTEC2酵素が、推奨量より多く、すなわち推奨量よりも約100倍多い量で添加される場合、最初の遊離の糖含量に基づき理論上のエタノール変換効率の約152%が達成された。市販の調合物を使用してこのような酵素量を添加することもできるが、そうすると費用が高くなる可能性がある。一方で、このような酵素量は、これらの酵素を生産するトランスジェニック植物をバイオマス作物中に散布して生育させることによってより費用効率が高い方式で得ることもできる。

例えばサイレージ内で貯蔵期中にセルロースからのエタノール生産が起こり、約102日の貯蔵期間中そのままにし、その後実験を終了させた。これから、その特定の実験条件下で、このような過剰な酵素活性により、セルロースからの発酵性糖を使用して少なくとも約52%のエタノール生産が起こることが実証される。理論に縛られるつもりはないが、所定の実施形態に関して、この実験では収穫中の即時の酸添加によりpHが低下したことによって酵素活性が誘導された可能性があり、これは別の状況では、植物がまだ成長しているときに生産されると植物にダメージを与える可能性がある。

好ましい実施態様において、酵素が添加される場合、酵素は、どのようなセルラーゼファミリーの調製物であってもよい。一実施態様において、使用されるセルロース調製物は、ノボザイムズのセリック(Cellic)CTec2またはCTec3である。他の実施態様において、線維溶解酵素調製物が使用され、特にリキセル(Liquicell)2500が使用される。酵素が使用される場合、植物性高分子を分解するために添加される酵素の量は、植物材料から発酵性糖への望ましい変換を達成できればどのような量であってもよく、例えば推奨量である。特定の実施態様において、バイオマス1ウェットトンあたり約80,000FPU〜約90,000,000FPU、好ましくは約400,000FPU〜約45,000,000FPU、より好ましくは約800,000FPU〜約10,000,000FPUの酵素が添加される。用語「FPU」は、ろ紙単位(Filter Paper Unit)を指し、これは少なくとも、50℃、およそpH4.8で1時間のうちにワットマン(Whatman)番号1の50mgのろ紙片から2mgの還元糖(例えばグルコース)が放出されるのに必要な酵素の量を指す。

所定の他の実施態様において、添加される選択された添加剤(複数可)は、細菌増殖を遅延または制御できる他の物質を包含していてもよい。これらの他の物質の非限定的な例としては、抗生物質(例えば抗生作用のある酵素など)、例えばリゾビン(Lysovin)(リゾチーム)およびラクトロール(Lactrol)(登録商標)(バージニアマイシン、細菌阻害剤)などが挙げられる。細菌増殖を制御することにより、適切な微生物において揮発性有機化合物の生産を促進および/または実現化することが可能になる。抗生物質は、生命を抑制したりまたは殺したりするものを示す一般用語である。抗生物質の例は、細菌阻害剤である。一実施態様において、細菌には作用するが他の微生物には作用しないように意図された選択的な抗生物質が使用される。選択的な抗生物質の一例はラクトロールであり、これは、細菌には影響するが酵母には影響しない。

特定の実施態様において、使用される場合、ラクトロールを、調製済みバイオマス材料の水相に溶解させた場合、約1〜20百万分率(ppm)w/v(ラクトロールの重量/液体の体積)の割合で、例えば約5ppm w/vで添加してもよい。細菌増殖を制御するために酵素を使用する実施態様において、好ましくはリゾチームが使用される。リゾチームは、商業的な供給源に由来するものでもよい。典型的な市販のリゾチーム調製物はリゾビンであり、これは、例えばワインなどの食物で使用できることが公表されているリゾチーム酵素の調製物である。

酵素および/または他の抗生物質材料は、使用される場合、独立して添加してもよいし、または互いにおよび/もしくは微生物と共に添加されてもよい。所定の実施形態において、揮発性有機化合物の生産を容易にする、および/または揮発性有機化合物を供給する微生物への栄養素として役立つ他の化合物を添加剤として添加してもよい。以下の表4に、固体バイオマスに添加できる抗生物質等の物質の非限定的な例を示す。

小さい集合体またはバイオフィルムとして個々に固体に付着する酵母および他の微生物は、阻害化合物に対する耐性を高めることが示されている。理論に縛られるつもりはないが、長期にわたる発酵物の一部は、このような微生物と固体との結合によって起こる、または強化される可能性がある。そのようなものとして、微生物の結合に関して最適化された微生物と、それに加えて微生物と結合する可能性がある添加剤とを包含する調製済みバイオマス材料は、より大きい程度の発酵および/または発酵効率を得る可能性がある。長期にわたる発酵をもたらす、および/または容易にする物質は、発酵速度を高める物質とは異なる。所定の実施形態において、発酵速度の増加は、特に数週間または数ヶ月の期間にわたる長い発酵期間ほど重要な要素ではない。

以下に具体的な一実施態様に適用される添加剤の具体的な量を示す。使用される場合、酸を添加する速度および量は、特定の酸が添加される特定の固体バイオマスの緩衝能力に応じて様々である。硫酸を使用する特定の実施態様において、約4.2のpHを達成するには、9.3%w/wの硫酸が、最大約10リットル/トン(湿潤バイオマス)、例えば約3.8リットル/トン(湿潤バイオマス)の割合で添加される。他の実施態様において、この割合は、酸、液体、ならびに他の内容物の濃度およびタイプ、ならびに特定の固体バイオマスの緩衝能力、ならびに/または望ましいpHに応じて様々であると予想される。この特定の実施態様において、ラクトロールは、約3.2g/ウェットトン(固体バイオマス)の割合で添加される。酵母または他の微生物は、例えば期待される糖含量/ウェットトンに従って供給者からの推奨される割合に従って添加される。1つの特定の実施態様において、ラレマンドという安定化された液体酵母は、約18液量オンス/ウェットトンで添加され、ノボザイムズのセリックCTec2は、約20液量オンス/ウェットトンで添加される。

好ましい実施態様において、上記で説明した本発明の形態に従って収穫する間に、選択された添加剤(複数可)を固体バイオマスストリームに添加して、調製済みバイオマス材料を作製する。好ましくは、調製済みバイオマス材料を貯蔵施設に輸送して、そのまま調製済みバイオマス材料の炭水化物を望ましい量の揮発性有機化合物に変換させて、および/または揮発性有機化合物を回収するために待機させる。あらゆる好適な輸送方法および/またはデバイスを使用でき、このようなものとしては、例えば輸送手段、列車等、および調製済みバイオマス材料を輸送手段の上に置くためのあらゆる好適な方法などが挙げられる。バイオマス材料の輸送に使用できる輸送手段の非限定的な例としては、後部で積み降ろすタイプのダンプトラック(end-unloading dump truck)、サイドで積み降ろすタイプのダンプトラック(side-unloading dump truck)、および自動積み降ろし可能なサイレージトラック(self-unloading silage truck)が挙げられる。好ましい実施態様において、サイレージトラックが使用される。バイオマスを収集するのに飼料収穫機を使用する実施態様において、このような固体バイオマスの輸送は、例えばサトウキビ用ビレット(sugar cane billet)などの従来の手段によって収集された材料の輸送よりも効率的であり、これはなぜなら、飼料収穫機で切断した固体バイオマスのかさ密度のほうが高いためである。すなわち、より小さい断片に細断された材料は、ビレット中の材料よりも高密度にパッキングされる。一実施態様において、サイレージトラック中のかさ密度の範囲は、約150kg/m3と約350kg/m3との間で様々であり、例えば約256kg/m3である。所定の実施形態において、全ての選択された添加剤は、収穫中に、好ましくは収穫機で添加されて、輸送中に微生物とバイオマスとの相互作用を開始させることができるために、この方式における輸送はプロセス全体にとって不利益ではない。

バイオマスは、調製済みかまたはそうでないかにかかわらず、少なくとも1つの貯蔵エリアまたは施設に送達される。貯蔵施設は、収穫場所からどのような距離に配置されていてもよい。添加剤がまだ添加されていない場合、または調製済みバイオマス材料を生成するのに追加の量またはタイプをさらに添加する必要がある場合、選択された添加剤(複数可)を添加してもよい。好ましい実施態様において、調製済みバイオマスは、所定期間にわたり整備された表面上の少なくとも1つのパイルで保存される。このような施設は、人工または天然の構造物を取り入れてもよい。人工の構造は、例えば運河や水処理用の池などの元々サイレージ用に指定されていない場所に既存の構造を取り入れたものでもよい。整備された表面の非限定的な例としては、コンクリート、アスファルト、フライアッシュ、または土壌表面が挙げられる。少なくとも1つのパイルは、どのような寸法または形状を有していてもよく、このような寸法または形状は、例えば利用可能なスペース、バイオマスの量、望ましい貯蔵期間などの稼働条件によって決まる可能性がある。

特定の実施態様において、調製済みバイオマス材料の少なくとも1つのパイルは、約10フィート〜約30フィートの範囲の高さを有するように形成される。他の実施態様において、少なくとも1つのパイルの高さは、30フィートよりも高い。一実施態様において、調製済みバイオマス材料の少なくとも1つのパイルは、少なくとも約10トン(ウェットトンであってもよい)の調製済みバイオマス材料を含有する。他の実施態様において、少なくとも1つのパイルは、25,000トン(またはウェットトン)の調製済みバイオマス材料を含有する。他の実施態様において、調製済みバイオマス材料の少なくとも1つのパイルは、少なくとも約100,000トン(またはウェットトン)の調製済みバイオマス材料を含有する。さらにその他の実施態様において、調製済みバイオマス材料の少なくとも1つののパイルは、少なくとも約1,000,000トン(またはウェットトン)、例えば1,200,000ウェットトンの調製済みバイオマス材料を含有する。一実施態様において、少なくとも1つのパイルは、最大約10,000,000トンを含有し、他の実施態様において、最大100,000,000トン(またはウェットトン)の調製済みバイオマス材料を含有する。

発酵性糖の変換プロセスは、発熱反応である。しかしながら、温度が調製済みバイオマス材料中の微生物にとって致命的な範囲になると、過剰な熱が変換プロセスにとって有害になる可能性がある。しかしながら、約700ウェットトンのバイオマスおよび最大約12フィートへのパイル化を使用する実施態様では、エタノール生産および安定性は十分であった。それゆえに、それよりも大きいパイルでも、過熱の問題を受けない可能性が高いと予想される。一実施態様において、例えば高温菌などのあらゆるタイプの微生物で、パイルの内部の部分は、約20℃〜約60℃の範囲の温度を維持する。高温菌を採用しない一実施態様において、パイルの内部の部分は、約35℃〜約45℃の範囲の温度を維持する。

また貯蔵施設で少なくとも1つのパイルとして保存される調製済みバイオマス材料は、保存された湿式バイオマス集合体と称される場合もある。選択された添加剤(複数可)を添加した後、固体バイオマスの少なくとも一部は揮発性有機化合物に変換され、例えば糖からエタノールに発酵する。一実施態様において、調製済みバイオマス材料は、嫌気的な環境を達成するのに十分な期間保存される。好ましい実施態様において、嫌気的な環境は、約24時間で達成される。他の実施態様において、嫌気的な環境は、約4時間より長い時間で達成される。さらにその他の実施態様において、嫌気的な環境は、最大約72時間で達成される。

パイルは、独立型であってもよいし、または水性の流出液や浸出液を収集するための手段、バイオマス上への防水シートの設置を包含し、効率的な最初のサイレージトラックのバンカーへの積み降ろしと、それに加えて通年のバイオマス除去の両方を容易にする、例えばサイレージを受け入れられるように設計されたサイレージバンカーなどの別の構造中に形成されいてもよい。個々のバンカーは、約700ウェットトン〜100,000,000ウェットトンまたはそれよりも多くの1年の供給材料の要求を支えるおよそのサイズを有していてもよい。例えば、貯蔵施設は、50個のバンカーを有していてもよく、その場合、常に合計で最大約5,000,000ウェットトンの材料が保存されるように、それぞれ個々のバンカーは100,000ウェットトンの調製済みバイオマス材料を受け入れることができる。いずれか1つの貯蔵施設における調製済みバイオマス材料の他の典型的な在庫量としては、少なくとも約10トン、約25,000トン、約100,000トン、約1,000,000トン、約1,200,000トン、約1,500,000トン、約10,000,000トン、および最大約100,000,000トンが挙げられる。選択された揮発性有機化合物がエタノールである好ましい実施態様において、1ウェットトンの調製済みバイオマス材料あたり約14ガロン〜約16ガロンのエタノールが回収される。示された数値は典型的な数値であり、貯蔵施設が収容できる調製済みバイオマス材料の量を限定する意図はない。

特定の実施態様において、貯蔵パイルはさらに、浸出液収集システムを包含する。一実施態様において、この収集システムは、貯蔵パイルから収集された浸出液を除去するのに使用される。例えば、浸出液収集システムは、貯蔵期間中に所定のポイントでパイルからの液体が除去されるように適合されていてもよい。他の実施態様において、浸出液収集システムは、貯蔵パイル中の液体を循環させるように適合されている。例えば、循環は、回収された液体の少なくとも一部を取り、それをパイルの好ましくは頂上部分またはその近くに戻すことを含んでいてもよい。このような再循環は、調製済みバイオマス材料の回収期が始まり、調製済みバイオマス材料の液体以外の成分の部分が回収ユニットに送られるときでも、パイル中の液体の所定量をより長く保持させることを可能にする。より長い保持により微生物の反応時間がより長くなることから、例えばエタノールなどの有機揮発性化合物がより高濃度で得られる。

当業者公知のあらゆる好適な浸出液収集システムを説明されているようにして採用してもよい。特定の実施態様において、浸出液収集システムは、パイルの底部に沿って配置された、好ましくは貯蔵パイルまたはバンカーが使用される場合、その中央の近くに配置された少なくとも1つのトラフを含み、その場合、貯蔵パイルは、調製済みバイオマス材料からの液体をトラフに向かわせて望ましい収集容器に排出させるか、または他の用途に導くように設計されたグレードで製造される。

他の実施態様において、浸出液収集システムは、1本またはそれより多くの穴の開いたコンジットを含み、好ましくはコンジットで収集された液体をパイルの外に向かわせるようにパイルの底部に沿って走る塩化ビニル(PVC)製パイプも含む。

一実施態様において、調製済みバイオマス材料をバンカーに加えたり、または整備された表面の上に載置したりするとき、パッキングしやすくするために、パイル上でトラクターまたは他の重機を繰り返して走行させる。一実施態様において、パッキングは、調製済みバイオマス材料1立方フィートあたり約7lbs/ft3から約50lbs/ft3の範囲である。好ましい実施態様において、パッキングは、約30lbs/ft3から約50lbs/ft3であり、特に約44lbs/ft3である。一実施態様において、パイル中での調製済みバイオマス材料の締固めは、上記で説明した好ましい期間での嫌気的な環境の達成を容易にする、および/または可能にする。他の実施態様において、パッキングが行われた後、またはパッキングが行われている期間中に、空気不浸透性の膜、典型的には目的にあったプラスチック製の防水シートがパイル上に置かれる。特定の実施態様において、防水シートは、実用的な範囲で早くパイル上に置かれる。例えば防水シートは、24時間以内にパイル上に置かれる。

一実施態様において、調製済みバイオマス材料は、例えばエタノールなどの揮発性有機化合物が生産されるように、少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約72時間(または3日)保存される。一実施態様において、調製済みバイオマス材料は、約3日、好ましくは10日、より好ましくは10日より長く保存される。一実施態様において、調製済みバイオマスの貯蔵期間は、約1日〜約700日、好ましくは約10〜700日である。他の実施態様において、バイオマス材料は、最大約3年保存される。一実施態様において、少なくとも1種の揮発性有機化合物への糖の変換効率が、関連する生化学的経路の化学量論的な評価により計算した場合に理論上の生産効率の少なくとも約95%になるのに十分な期間、調製済みバイオマス材料は保存される。他の実施態様において、少なくとも1種の揮発性有機化合物への糖の計算された変換効率が少なくとも約100%になるのに十分な期間、調製済みバイオマス材料は保存される。さらにその他の実施態様において、少なくとも1種の揮発性有機化合物への糖の計算された変換効率が、最初の利用可能な発酵性糖の量に基づく理論値の最大約150%になるように例えば酵素などの所定の添加剤と共に調製済みバイオマス材料は調製される。理論に縛られるつもりはないが、最初に利用可能な発酵性糖と、調製済みバイオマス材料中のセルロース系材料または他の高分子材料由来の発酵性糖との両方から、揮発性有機化合物(複数可)は100%の効率または100%を超える効率で生産され、ここでこの生産は、バイオマスに適用された所定の添加剤(複数可)によって促進される酵素加水分解または酸加水分解によって達成可能であると考えられる。

生産された例えばエタノールなどの揮発性有機生成物は、貯蔵期間中、保存された調製済みバイオマス材料中で安定性を保つ。特に、調製済みバイオマス材料は、揮発性有機化合物への有意な分解を起こすことなく最大700日の保存が可能である。「有意な」は、この状況において、調製済みバイオマス材料中の揮発性有機化合物の量または濃度を測定する際に、少なくとも誤差の範囲内であることを指す。一実施態様において、誤差の範囲は、0.5%である。エタノールは、少なくとも約330日後、有意なエタノールの損失が観察されることなくパイル中で安定性を保つことが実証されている。本発明の実施態様のこの形態は、少なくとも8ヶ月間の安定な貯蔵をもたらし、わずか約4ヶ月の収穫期間で一年中のVOC生産および回収を可能にするため、重要である。本発明の実施態様は、年間4ヶ月の収穫期間しか稼働させることができないであろう従来のジャストインタイムの処理に勝る有意な利点を提供する。すなわち、本発明の実施態様は、わずか4ヶ月の収穫期間を使用してプラントを一年中稼働させることを可能にすることによって、ジャストインタイムの処理に使用されるプラントと同じサイズのプラントにかかる資本コストを削減することができる。

また、防水シートを採用する一実施態様において、防水シートの周りやへりに土壌または他の輸送手段を置いて、1)防水シートを押さえつける重しにしたり;さらに2)パイルからのオフガスのバイオフィルターとして機能させることも想定される。このような実施態様において、バイオフィルターは、有機物質および一酸化炭素の解毒/分解に効率的である。また調製済みバイオマス材料は、パイル、バンカー、サイロ、バッグ、チューブ、または包装されたベールまたは他の嫌気性貯蔵システム上で駆動する圧縮モジュールとして保存してもよい。

一実施態様において、調製済みバイオマス材料のパイルからのオフガスストリームをモニターしたところ、ほんのわずかなレベルの有機物質とさらに極めて低レベルの窒素酸化物が存在していたことを見出した。例えば以下の表5.1、5.2、および5.3は、本発明の所定の実施態様を実施した際の貯蔵期中に収集された様々なオフガスサンプルの分析を示す。記号「BDL」は、検出可能な限界より下の量であることを指す。スーマ(Summa)およびテドラー(Tedlar)は、市販のガスサンプリング用のコンテナを指す。

本発明の実施態様は、比較的バンカーに収容されることはないが、環境に優しいと予想される。そうであったとしても、実際には防水シートの下からのガスは放射状に逸散するため、本発明の所定の形態は、土壌または他の輸送手段をバンカーの周りやその上に配置されたバイオフィルターとして使用することによく適している。そのようなものとして、蒸気は、パイルのエッジと接触するより大きい表面積を有する。バイオフィルターを使用する実施態様において、蒸気相の放出物は、大気中に出る前に、エッジにある物質の近くに配置されたバイオフィルター(例えば土壌または堆肥など)を通過する。バイオフィルターは、貯蔵パイルによって放出された多くの存在し得る環境汚染物質および悪臭を保持し、貯蔵パイルから放出された有害な可能性があるオフガスを除去したり、または大幅に減少させたりする。

一実施態様において、調製済みバイオマス材料は、液体の含有量が約80wt%以下になるまで保存される。調製済みバイオマス材料は、最初の内容量よりも少なくとも約4〜約5%高い内容量になるまで保存される。この段階で、保存された湿式バイオマス集合体は、約20%を超える固体をなお含有するために、まだ「ビール」とはみなされない。一実施態様において、調製済みバイオマス材料は、約2wt%から約50wt%の間のエタノール、好ましくは約4wt%から約10wt%の間のエタノールを含有するまで保存される。液体の残り部分は主として水であるが、例えば酢酸、乳酸などの他の多くの有機化合物を含有していてもよい。

本発明の実施態様では、典型的なサトウキビのジュース化操作よりもかなり短い収穫期間で固体バイオマスを収穫することができ、それにより、 1)施設を設置できる地理的地域を大幅に拡大すること、 2)作物がその最高の生産力を示すときに作物を収穫すること、 3)その最高の糖濃度となり得る状態で作物を収穫すること、 4)それでもなお経済的なより短い収穫期間、および 5)発酵のためにバイオマスからジュースをとる必要性をなくすこと を可能にする。

さらに本発明の形態は、より大きいスケールでの稼働、例えば工業的または商業化の範囲での稼働を可能にする。一実施態様において、少なくとも約10トンの調製済みバイオマス材料は、固体バイオマスに微生物、酸、および場合により酵素を添加することによって生成される。他の量は上記に示した通りである。

また本発明の実施態様のバイオマス材料の調製は、一般的に固体状態での発酵と称される場合もある。調製済みバイオマス材料が望ましい時間保存されたか、および/またはそこに含まれる例えばエタノールなどの揮発性有機化合物が望ましい濃度になったら、その材料を、特定の揮発性有機化合物を回収するための回収システムに送ってもよい。回収システムおよび貯蔵施設は、互いにどのような距離に配置されていてもよい。本明細書で説明されるシステムおよび方法の実施態様は、双方の地理的な場所と互いに関連するそれらの配置の柔軟性をもたらす。特定の実施態様において、回収システムは、貯蔵施設から約0.5〜約2マイルに配置される。あらゆる好適な方法および/または器具を使用して、貯蔵施設から回収システムに調製済みバイオマス材料を移動させることができる。一実施態様において、供給ホッパーが使用される。一実施態様において、サイレージ用フェーサー、フロントエンドローダー、またはペイローダー、スイープオーガーもしくは他のオーガーシステムを使用して、調製済みバイオマス材料を供給ホッパーに入れることができる。これらの材料は、供給ホッパーに直接入れてもよいし、または例えばベルトシステムなどのコンベヤーシステムによって移してもよい。次いで調製済みバイオマス材料を含有する供給ホッパーを運転して、回収システムに向かってもよい。

回収システムは無溶媒であるため、調製済みバイオマス材料中の液体を蒸発させてガス成分にするのに過熱蒸気ストリームを使用してもよく、このガス成分を収集してもよい。過熱蒸気とは、稼働圧力下でその飽和温度を超えて加熱される蒸気である。好ましい実施態様において、回収システムが定常状態に達した後、過熱蒸気ストリームには、それまでに調製済みバイオマス材料から蒸発させた蒸気のみが含まれ、他のガスが導入されないようにすることによって、揮発性有機化合物が燃焼したりおよび/または回収された揮発性有機化合物の生成物ストリームが希釈されたりする危険を低下させる。残りの固形成分はシステムから吐出されるが、このような固形成分はそれに続く様々な用途を有する可能性がある。蒸気の一部は生成物として取り除かれ、その残部は、入ってくる新鮮な調製済みバイオマス材料への熱の移動で使用するために再利用される。過熱蒸気はバイオマスと直接接触して、エネルギーを移動させてそこに存在する液体を蒸発させる。熱または熱エネルギー源は調製済みバイオマス材料と直接接触しない。したがって、VOC回収システムは、「間接的な」熱の接触を提供することと説明される場合もある。

揮発性有機化合物の無溶媒での回収を行うために、回収システムは、過熱蒸気を連続的な方式で、すなわちストリームとして流すことを可能にする区画を含む。一実施態様において、このような区画は、ループの形状を有する。他の実施態様において、このような区画は、回転ドラムを含む。このような区画は、調製済みバイオマス材料を入れるための注入口を有する。一実施態様において、注入口は、気密式回転弁、プラグねじ、または他の類似のデバイスを含んでおり、これらは、調製済みバイオマス材料を分離して過熱蒸気ストリームに晒される表面積を大きくするのに役立つ可能性がある。

さらにその他の実施態様において、本システムは、液体を気化させる前に、調製済みバイオマス材料中の液体の少なくとも一部を除去する脱水メカニズムを含む。液体の除去は、調製済みバイオマス材料を区画に入れる前に行ってもよいし、および/または入れながら行ってもよい。調製済みバイオマス材料からの液体は、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含有し、この化合物は、液体をさらに処理することによって、例えば液体を蒸留塔に供給することによって回収できる。例えば蒸留塔などのさらなる処理ユニットに液体を直接送ってもよい。その代わりに、またはそれに加えて、本システムはさらに、調製済みバイオマス材料から除去された液体を収集するための収集ユニットを包含する。次いで収集された液体のいずれかの部分をさらに処理してもよい。

一実施態様において、脱水メカニズムは、調製済みバイオマス材料からの液体が搾り出されるように適合させた構成要素を含む。このような実施態様において、搾り出しは、調製済みバイオマス材料を区画に供給しながら行うことができる。例えば、注入口は、調製済みバイオマス材料が区画に導入されるときに、それから液体を搾り出すための搾り出しメカニズムを含んでいてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、調製済みバイオマス材料が区画に入る前に、別々に搾り出しを行ってもよい。このような搾り出しメカニズムの非限定的な例は、スクリュープラグフィーダー(screw plug feeder)である。

一実施態様において、液体除去メカニズムは、機械プレスを含む。機械プレスのタイプの非限定的な例としては、ベルトフィルタープレス、V型プレス、リングプレス、スクリュープレス、およびドラムプレスが挙げられる。ベルトフィルタープレスの特定の実施態様において、調製済みバイオマス材料を2つの多孔質のベルトの間に挟み、ローラーの上と下でプレスすることにより、水分が搾り出される。他の特定の実施態様において、ドラムプレスは、内部に回転するプレスロールを含む穴の開いたドラムを含み、このプレスロールにより材料は穴の開いたドラムに押し付けられる。さらにその他の実施態様において、ボウル型遠心分離機の場合、材料は回転する円錐型のボウルに入れられ、その外辺部に固体が蓄積される。

区画は、過熱蒸気ストリームと調製済みバイオマス材料とを接触させて調製済みバイオマス材料からの液体を蒸発させるスペースを提供する。液体の少なくとも一部を蒸発させることにより、調製済みバイオマス材料はガス成分と固形成分とに分けられる。本システムは、ガス成分から調製済みバイオマス材料の固形成分を分離できる分離ユニットをさらに含んでおり、そのため要求に応じてさらなる処理のために各成分を除去できる。一実施態様において、分離ユニットは、遠心捕集器を含む。このような遠心捕集器の例は、高効率のサイクロン器具である。好ましい実施態様において、分離ユニットはまた、固形成分用の流出口としても役立つ。例えば、分離ユニットは、無溶媒回収システムから固形成分を吐出させることができる。例えば蒸留などのさらなる処理のためにガス成分をシステムから出すことができるガス成分用の別々の流出口がある。一実施態様において、分離ユニットはさらに、固形成分を押し出したりまたは吐出させたりするための第二の気密式回転弁または同種のものに連結される。一実施態様において、過熱蒸気は、熱源に連結された熱交換のための構成要素によってその飽和温度より高い目標温度または望ましい温度に維持され、この場合、過熱蒸気は熱源と接触しない。熱源と本システムとの熱伝達は、過熱蒸気への対流を介して起こる。一実施態様において、熱源としては、適切な熱交換器を介した電気的な要素または熱い蒸気が挙げられる。一実施態様において、稼働圧力は、約1psigから約120psigの範囲である。好ましい実施態様において、稼働圧力は、約3psigから約40psigの範囲である。特に好ましい実施態様において、本システムを約60psigの稼働圧力で加圧して、システムから蒸気成分を出す。

一実施態様において、回収システムの始動時に、調製済みバイオマス材料は注入口を介して区画に導入される。最初のうちは水蒸気を過熱蒸気として使用して、まず調製済みバイオマス材料中の液体を蒸発させる。過熱蒸気は連続的に区画を通って移動する。調製済みバイオマス材料が過熱蒸気ストリームに入ると、このような材料は流動化し始めて、流体のように区画を通って流れる。調製済みバイオマス材料が導入されるとき、このような材料は過熱蒸気ストリームと接触した状態になる。過熱蒸気からの熱が調製済みバイオマス材料に移動すると、調製済みバイオマス材料中の液体の少なくとも一部が蒸発し、固形成分から分離されるが、この固形成分はそれでもなお水分を含有する可能性がある。ガス成分は、調製済みバイオマス材料で生産された揮発性有機化合物(複数可)を含有する。好ましい実施態様において、調製済みバイオマス材料からの液体が蒸発し始めると、気化した液体の少なくとも一部を過熱した流体としてシステムで再利用できる。すなわち、いずれか1つのサイクル中、追加の調製済みバイオマス材料がシステムに供給される次のサイクルまで、気化した液体の少なくとも一部は、さらなる処理のために収集されるのではなく、区画中に残留して過熱蒸気として役立つ。

好ましい実施態様において、最初の始動手順の間、過熱蒸気が調製済みバイオマス材料の気化させた液体のみを含む定常状態が達成されるまで、必要に応じて、好ましくは連続的に(断続的に、または常に)過熱した流体をパージしてもよい。ガス成分および固形成分は、それぞれの流出口を介して収集することが可能である。過熱蒸気の温度を維持するために、システム中で望ましい稼働圧力を維持するために、または目標とする蒸発速度を維持するために、熱源に連結された熱交換器を介してシステムに連続的に(断続的に、または常に)熱を加えてもよい。例えば過熱蒸気ストリームの流速、圧力、および温度などの様々なシステムの条件を調節することにより、望ましい液体および/または揮発性有機化合物の除去速度を達成できる。

一実施態様において、収集されたガス成分は、さらなる処理のために濃縮され、例えば精製プロセスに移行させて選択されたより高濃度の揮発性有機化合物(複数可)を得るために濃縮される。好ましい実施態様において、収集されたガス成分を蒸留塔に直接供給して、ガス成分を濃縮するのに使用されないエネルギーを節減できる。他の実施態様において、ガス成分を濃縮して、次の精製工程に液体として供給する。

一実施態様において、回収期に入る前、調製済みバイオマス材料中の最初の液状内容物の含量は、バイオマス材料に基づき少なくとも約10wt%および最大約80wt%である。特定の実施態様において、最初の液状内容物は、バイオマス材料に基づき少なくとも約50wt%である。一実施態様において、最初の液状内容物は、最初の液状内容物に基づき約2から50wt%、好ましくは約4から10wt%のエタノールを含む。

一実施態様において、収集された固形成分は、エタノール除去の目標量に応じて、約5wt%から約70wt%、好ましくは約30wt%から約50wt%の液体を含有する。他の構成要素において、収集されたガス成分は、約1wt%〜約50wt%のエタノール、好ましくは約4wt%〜約15wt%のエタノールを含有する。一実施態様において、回収システムは、調製済みバイオマス材料に含有される揮発性有機化合物の約50%から約100%を回収する。調製済みバイオマスの滞留時間は、例えば揮発性有機化合物除去の目標量など多数の要因に基づき様々である。一実施態様において、区画中の調製済みバイオマス材料の滞留時間は、約1〜約10秒の範囲である。一実施態様において、回収システムは、約0.06barg〜約16bargの間で操作されてもよい。用語「barg」は、当業者により理解されている通りバールゲージ(ゲージ圧)を指し、1barは、0.1メガパスカルに等しい。一実施態様において、回収システム中のガスは、約100℃〜約375℃の範囲、特に約104℃から約372℃の温度を有し、システムから出る固形成分は、約50℃未満の温度を有する。収集された固形成分は他の用途に使用できる。非限定的な例としては、動物用飼料、プロセスエネルギーの供給もしくは発電のためのバイオマス用バーナーへのフィード、もしくはさらにセルロース系エタノールプロセスを用いてエタノールに変換されるフィード(サイレージパイル中での再発酵、またはあらゆるセルロース系エタノールプロセスのための前処理ユニットへのフィードのいずれか)、またはリグノセルロース系バイオマスを必要とする他のあらゆるバイオ燃料プロセスのためのフィードなどが挙げられる。

無溶媒回収システムの稼働条件としては、温度、圧力、流れの速度、および滞留時間のうち少なくとも1つが挙げられる。これらの条件のうちいずれか1つまたはそれらの組み合わせを制御して、例えば除去された最初の液状内容物の量、または回収システムから出た液体成分を分離したものの中に残存する液体の量などの、目標とする、または望ましい除去の目標量を達成してもよい。一実施態様において、少なくとも1つの稼働条件を制御することにより、最初の液状内容物の約10〜90wt%、好ましくは約45〜65wt%、より好ましくは約50wt%の除去が達成される。

好ましい実施態様において、システムの温度を一定圧力で増加させることにより、バイオマス中の液体がより迅速に気化すると予想されるため、所定の滞留時間で、より高いパーセンテージのバイオマス中の液体が蒸発すると予想される。システムから出る蒸気流速は、定常状態を達成するためにバイオマスからの液体の蒸発速度と釣り合うように制御する必要があり、またシステム圧力を制御するためのメカニズムとしても使用できる。システム圧力を増加させることにより、システム中の蒸気相でより多くのエネルギーが保存されると予想され、次いでこのエネルギーは、さらなる処理で役立たせるのに使用してもよいし、または次の下流の処理ユニットへの蒸気の移動を助けるのに使用してもよい。システム中でのバイオマスの滞留時間を長くすることにより、蒸気相からバイオマスにより多くの熱を移動させ、その結果としてより多くの液体を気化させる。

具体的な典型的な実施態様において、回収システムは、閉ループの空気式過熱蒸気乾燥機を含み、これは商業的な供給元から得ることができる。一実施態様において、閉ループの空気式過熱蒸気乾燥機は、GEAバー−ロジン社(GEA Barr-Rosin Inc.)のSSD(商標)モデルである。他の好適な市販の器具としては、過熱蒸気プロセッサー、GEAバー−ロジン社製のSSP(商標)、GEAバー−ロジン社やダップス(Dupps)等のいくつかの会社によるリングドライヤー;ダップス製のエアレス式乾燥機;ダップスエバクサーモ(DuppsEvactherm(商標))製のクアッドパス(QuadPass(商標))回転式ドラム乾燥機、アイリッヒ(Eirich)製の真空過熱蒸気乾燥;スイス・コンビ・エコドライ(Swiss Combi Ecodry)製の過熱蒸気を使用する回転式ドラム乾燥機;およびセラミック・ドライング・システム社(Ceramic Drying Systems Ltd.)製のエアレス式乾燥機が挙げられる。

本プロセスのための揮発性有機物質の回収ユニットとして役立たせることができる間接的な乾燥機のさらにその他のタイプは、バッチ式トレイドライヤー、間接接触式の回転乾燥機、回転バッチ式真空乾燥機、および撹拌乾燥機である。これらの乾燥機の基本原理は、乾燥機が閉められて真空系に連結されることにより、蒸気が生成すると同時に固体から蒸気を除去することである(さらに、真空で圧力を低くすることによっても、揮発物質をより容易に除去できる)。湿潤固体が例えばトレイまたはパドルなどの熱い表面と接触すると、熱が湿潤固体に移行して液体が蒸発するので、この液体を真空系で収集して濃縮してもよい。

図1は、システム100と称される過熱蒸気乾燥機を採用する典型的なVOC回収システムおよびプロセスを例示する。特定の実施態様において、過熱蒸気乾燥機は、GEAバー−ロジン社から入手できる。図1において、サイレージパイル中での固体状態での発酵後にエタノールおよび/または他のVOCを含有する調製済みバイオマス材料1は、インプット2を介して区画3に供給される。示された特定の実施態様において、インプット2は、スクリュー押出機を含む。図1で示されるように、調製済みバイオマス材料1の液体の少なくとも一部は、区画3に入る前に除去される。脱水メカニズムはスクリュープラグフィーダーであってもよく、そこを調製済みバイオマス材料1が通過する。バイオマス材料1から除去された液体の少なくとも一部は、回収システム100を経ずに、ストリーム15を介して蒸留工程11に直接送られてもよい。場合により、デランパー(delumper)が、脱水メカニズムのアウトプットに連結されていてもよく、これは、脱水したバイオマス材料を区画3に導入しやすくするのに使用できる。

図1を参照すると、回収システム100は区画3を含み、ここで区画3は、例えば調製済みバイオマス材料1の滞留時間、過熱蒸気への熱伝達、ならびに稼働圧力および温度などの望ましい稼働条件が達成されるように適合させた適切な直径、長さ、および形状を有するコンジットとして示されており、加圧される場合もある。調製済みバイオマス材料1は、システム100を介して流動している過熱蒸気と望ましい温度または目標温度で接触して、流動化するようになる。上記で説明したように、好ましい実施態様において、過熱蒸気、またはそれらの少なくとも一部は、それまでにVOC回収のためにシステム100に供給された調製済みバイオマス材料から得られた蒸気成分である。流動化したバイオマスは目標とする流速で区画3を通って流れ、調製済みバイオマス材料1から望ましい量の液体を蒸発させるのに十分な目標とする滞留時間にわたり過熱蒸気と接触した状態を保つ。示される実施態様において、システム100を通る過熱蒸気および調製済みバイオマス材料1の流れは、システムファン14によって促進される。システム100は、1つまたはそれより多くのファンを有していてもよい。過熱蒸気およびバイオマス材料1の流速または速度は、システムファン14によって制御可能である。バイオマス材料1は区画3を通ってを流れて分離ユニット4に到達するが、ここで分離ユニット4は好ましくはサイクロンセパレーターであり、そこでバイオマス材料1の蒸気成分と固形成分とが互いに分離される。示した通り、蒸気成分は、オーバーヘッドストリーム5を介して固形成分から離れる進路をとり、バイオマス材料1の残部が固形成分とみなされ、この固形成分は、固形成分7として分離ユニット4から好ましくはスクリュー押出機6により吐出される。吐出した固形成分7の少なくとも一部は、動物用飼料、バーナー燃料、または他のバイオ燃料プロセスのためのバイオマス供給材料として使用できる。

図1を参照すると、ストリーム8と称される蒸気成分の一部は、新たに導入された調製済みバイオマス材料を蒸発させるのに使用される過熱蒸気の一部として保持され再利用される。示された実施態様において、ストリーム8中に保持された蒸気成分は、熱交換器9を経由してそれを目標とする稼働温度に加熱する。熱源としては、水蒸気、電気、熱い煙道ガスまたは当業者公知の他のあらゆる適用可能な加熱源が挙げられる。

好ましい実施態様において、システム中の圧力が目標値で維持されて、望ましい量の液体を蒸発させるのに十分な量のエネルギーが存在するように、温度が制御される。また圧力は、過熱蒸気ストリームの流速および熱交換器9への熱のインプットによっても制御できる。好ましくは、回収システム100は連続的に稼働し、その場合、調製済みバイオマス材料1は望ましい速度で連続供給され、蒸気成分10および固形成分6は連続的な速度で連続除去される。好ましい実施態様において、1回の試行からの「新鮮な」蒸気成分8は、次の試行のための過熱蒸気ストリームとして使用するために、目標速度で連続的に保持される。これらの速度はいずれも、望ましい稼働条件が達成されるように調節できる。述べられているように、システムファン14は、過熱蒸気ストリームをシステム100を介して循環させることにより、目標とする流速または速度が達成されるように調節することが可能である。

図1を参照すると、数字10で表示される蒸気成分ストリーム5の残部は蒸留工程11に送られる。蒸留の配置に応じて、蒸気成分部分10は、さらなる精製の前に濃縮してもよいし、または好ましくは蒸気として蒸留塔に直接供給してもよい。好ましい実施態様において、蒸留工程11からの蒸留生成物は、エタノール約95.6wt%のエタノール含量(エタノール/水の共沸)を有し、これをさらに、工程12として示される一般的なエタノール脱水技術を使用して約99wt%より高く精製してもよい。次いで最終的なエタノール生成物13は、典型的にはガソリンとブレンドするためのバイオ燃料として使用されると予想される。

図2は、別の典型的な回収システムと、様々な製造元が供給しているリングドライヤーの代表例であるシステム200と称される過熱蒸気乾燥機とを採用するプロセスを例示する。調製済みバイオマス材料201を、インプット202を介してシステム200に供給し、ここでインプット202は、好ましくはスクリュー押出機を含む。一実施態様において、調製済みバイオマス材料201の液体の少なくとも一部を、システム200に入る前に除去する。脱水メカニズムはスクリュープラグフィーダーであってもよく、それを介して調製済みバイオマス材料201が通過する。バイオマス材料201から除去された液体の少なくとも一部は、回収システム200を経ないで、直接ストリーム215を介して蒸留工程211に送ってもよい。場合により、デランパーが、脱水メカニズムのアウトプットに連結されていてもよく、これを使用して、脱水したバイオマス材料を区画203に導入しやすくすることができる。

図2を参照すると、回収システム200は区画203を含み、この区画203は、好ましくは、調製済みバイオマス材料201の滞留時間、過熱蒸気への熱伝達、ならびに稼働圧力および温度などのVOC回収のための目標稼働条件をもたらす回転ドラムを含む。調製済みバイオマス材料201は、区画203に入った後、定常状態で稼働する間に、システム200を介して流動する過熱蒸気と稼働温度および流速で接触することにより、流動化するようになる。上記で説明したように、好ましい実施態様において、過熱蒸気、または少なくともそれらの一部は、それまでにVOC回収用にシステム200に供給された調製済みバイオマス材料から得られた蒸気成分である。流動化したバイオマスは、区画203を目標とする流速で介して流れ、目標とする滞留時間にわたり過熱蒸気と接触した状態を保つことにより、バイオマスからの液体の目標とする蒸発が達成される。次いで流動化したバイオマスは分離ユニット204に到達するが、ここで分離ユニット204は好ましくはサイクロンセパレーターであり、蒸気成分と固形成分とが互いに分離される。示した通り、蒸気成分は、オーバーヘッドストリーム205を介して固形成分から離れるような進路を取り、固形成分207は分離ユニット204から吐出される。示した通り、固形成分207は押出機206を介してシステム100から出て、上述したようなそれに続く用途に使用される可能性がある。ストリーム208と称される蒸気成分の一部は、新たに導入された調製済みバイオマス材料を蒸発させるのに使用される過熱蒸気の一部として保持され再利用される。示した通り、保持された蒸気成分208は、熱交換器209を経由してそれを望ましい温度または目標温度に加熱する。熱源または熱エネルギー源としては、水蒸気、電気、熱い煙道ガスまたは他のあらゆる望ましい加熱源が挙げられる。示した通り、熱い煙道ガスが使用される。システム中の圧力が目標値で維持されて、望ましい量の液体を蒸発させるのに十分な量のエネルギーが存在するように、温度が制御される。また圧力は、過熱蒸気ストリームの流速および熱交換器209への熱のインプットによっても制御できる。

図2を参照すると、数字210で表示される蒸気成分ストリーム205の残部は、蒸留工程に送られる。蒸留の配置に応じて、蒸気成分部分210は、さらなる精製の前に濃縮してもよいし、または好ましくは蒸気として蒸留塔に直接供給してもよい。蒸留工程からの生成物を公知のプロセスを使用してさらに濃縮してもよい。

好ましくは、回収システム200は連続的に稼働し、その場合、調製済みバイオマス材料201は望ましい速度で連続供給され、蒸気成分210および固形成分206は連続的な速度で連続除去される。好ましい実施態様において、1回の試行からの「新鮮な」蒸気成分208は、次の試行のための過熱蒸気ストリームとして使用するために、目標速度で連続的に保持される。これらの速度は全て、望ましい稼働条件が達成されるように調節できる。システムファン214は、過熱蒸気ストリームの循環ループを作り出し、目標とする流速が達成されるように調節が可能である。

本発明の形態に従って無溶媒回収システムを使用することにより、好ましい実施態様では、システム中の熱伝達のポイント、すなわちシステムへの熱の添加および調製済みバイオマス材料への熱伝達が蒸気相で起こる。断熱性を有するため悪い伝熱体である調製済みバイオマス材料中での固相の熱伝達(伝導)よりも、蒸気相の熱伝達(対流)は効率的であり、有利である。上述したように、所定の実施形態において、定常状態に達すれば、調製済みバイオマス材料の液体から気化したもの以外の蒸気は、システム中の調製済みバイオマス材料の固形成分およびガス成分と接触しないことから、プロセス水蒸気または過熱蒸気ストリームにつぎ足される他の蒸気の添加に起因すると思われる希釈を予防したりまたは低減させたりする。収集されたガス成分は、望ましい揮発性有機化合物(複数可)を分離するために直接蒸留塔に供給されてもよく、それにより有意にエネルギーを節約できる。このシステムの利点は、湿潤固体と接触する蒸気が、それまでに固体から除去された蒸気のみであるため、希釈または爆発の危険等が生じないという点である。

以下の実施例は、本発明をさらに例示するために記載されたものであるが、これらは、本発明の範囲を限定するものとは解釈されないものとする。

例示的な実施態様 実施例A この実施例において、新鮮な細断済みモロコシの様々なサンプルを表A.1で列挙したような添加された様々な成分と混合して、サイレージチューブ中で258日間保存した。各実験で生産されたエタノールの量を表の一番下の列に示す。選択された添加剤の添加率を表A.2に示す。

実施例Aの実験から、サイレージパイル中でのエタノール生産の原理およびその貯蔵の持続時間が実証された。さらに、これらから、所定の添加剤の作用も実証された。実施例に記載の全てのケースで有意な量のエタノールが生産されたことから、本発明の実施態様は極めて頑健である可能性があることが示される。表A.1において、最後の列以外の全ては、試験にどの添加剤が用いられたかを説明している。下の列は、その実験におけるエタノール生産に関する結果を説明している。一般的には、酸を用いた実験は、酸不使用の実験よりも優れた安定性を示した。それにもかかわらず、酸不使用の実験でもエタノールが生産されたことから、酸の添加剤は任意でよいことが示される。

実施例B 実施例Bにおいて、3種の追加実験を表B.1に示す。選択された添加剤の添加率を表B.2に示す。

実施例Bの実験からも、所定の添加剤の作用、同様にスケールの作用が実証された。実施例Bの実験1および2を同じバンカーで行ったところ、この発酵技術は、工業的な規模で安定且つ効率的であることが実証された。

実施例C これらの実験において、無溶媒回収ユニットとしてGEA SSD(商標)を使用した。以下の表C.1において、上のセクションは、システムに供給された調製済みバイオマス材料の所定の特性を説明している。次のセクションは、無溶媒回収システムから出る固形成分の状態を説明している。第三のセクションは、無溶媒回収システムの稼働条件を示し、最後のセクションは、主要な液体成分:エタノール、酢酸、および水の回収率を記載している。全てのケースにおいてここで示されることは、固体中に存在するエタノールの90%より多く(いくつかの場合では100%)を回収する能力、および無溶媒回収システムの条件に基づきエタノールおよび水の回収量を変更する能力である。また以下のサンプル10、11、および12は有意な量の酢酸も含有することから、このプロセスは効率的な酢酸回収にも使用できることが示される。

実施例D 試験された条件のうちいくつかにおいて、残存するセルロースの一部がバイオマスに変換されるように、揮発物質回収ユニットから生じたバイオマスの十分な前処理を行った。上記の実施例Cのサンプル6および7からの条件によれば、残りの固形成分のサンプルに少量の酵素および酵母を添加して嫌気性環境中で保存したところ統計学的に有意な量のエタノールが生産された。試験された他の条件は、サンプル3、4、8、10、および12による条件である。これらのサンプルは、サンプル6および7と同じ試験条件に置いてもエタノールを生産しなかった。これより、サンプル番号6および7で記載された試験条件下において、本発明の所定の実施態様は、揮発性有機物質回収ユニットからの固形成分のサイロ貯蔵によるそれに続くセルロース系エタノールの生産に使用できると結論付けられる。

実施例E これらの実験において、本発明の形態に従って700トンのパイルを調製し、バンカー中で保存した。バンカー貯蔵の504日目に、パイルの上部、中心、および底部から3つのサンプルを採取したところ、全て類似のレベルの化合物を示した。サンプルを4℃で保存した。

サンプルの調製: サンプルをろ過せずに60mLのシリンジで絞り出し、液体を収集した。

試験条件: 1)5975Cマススペクトロメーターを備えたアジレント(Agilent)7890GCを以下の条件下で用いてサンプルを試験した: ・ヘッドスペースのオプションを有するアジレントCTCオートサンプラー ・2.5mlの加熱したシリンジ、130℃でのS/SLインレットへの1mlのインジェクションサイズ、20:1の分割比 ・1.4μmのフィルムを有する60MのDBを有する624カラム(内径0.25)での分離。

20mlのヘッドスペース用バイアルにサンプル0.25mlを置くことによりサンプルを準備した。60℃で10分平衡化した後、1mlの蒸気を注入した。

2)5973マススペクトロメーターを備えたアジレント6890GCを用いてサンプルを以下の条件下で試験した: ・パーキン・エルマー(Perkin Elmer)製のターボマトリックス(Turbomatrix)40ヘッドスペースオートサンプラー ・60MのDBを有するSMS(内径0.25mm)、1.0μmのフィルム、100:1の分割比。

20mlのヘッドスペース用バイアルにサンプル0.25mlを置くことによりサンプルを準備した。90℃で15分平衡化した後、20秒で蒸気を注入した。

両方の条件下でヘッドスペース中に以下の化合物が同定されたことから、これらの化合物を、無溶媒回収システムを使用して生産したが、所定の実施形態においてさらにそれらを回収して、それに続く蒸留プロセス中に捕捉することも可能であることが示される。

この説明を考慮すれば、本発明の様々な形態のさらなる改変および代替の実施態様は、当業者には明白であると予想される。したがって、この説明は単なる例示と解釈されるものとし、本発明を実行する一般的な方式を当業者に教示することを目的とする。当然のこ とながら、本明細書で示され説明された本発明の形態は、現時点で好ましい実施態様と解釈されるものとする。要素および材料は、本明細書で例示され説明されたもので置き換えてもよいし、部品およびプロセスは逆転させてもよく、本発明の所定の特徴は独立して利用してもよく、いずれも本発明のこの記載の利益を得る当業者には明らかであると予想される。以下の特許請求の範囲で説明されているような本発明の本質および範囲から逸脱することなく、本明細書で説明される要素に変更を施すことができる。 出願時の特許請求の範囲の内容を下記に記載する。 [1] 少なくとも1種の揮発性有機化合物の生産方法であって: 少なくとも約10トンの調製済みバイオマス材料を生成すること、ここで前記調製済みバイオマス材料は、糖含有固体バイオマスに添加された少なくとも1種の添加剤を含み、前記少なくとも1種の添加剤は、微生物、ならびに任意に酸および/または酵素を含む; 調製済みバイオマス材料を、貯蔵施設で少なくとも約24時間貯蔵して、糖の少なくとも一部から少なくとも1種の揮発性有機化合物を生産させること;および 貯蔵されたバイオマス材料を無溶媒回収システムに供給して、貯蔵されたバイオマス材料を、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含むガス成分と固形成分とに少なくとも分離することにより、少なくとも1種の揮発性有機化合物を捕捉すること を含む、上記方法。 [2] 少なくとも約700トンの調製済みバイオマス材料が、約1〜7ヶ月の範囲の期間で生成される、前記1に記載の方法。 [3] 少なくとも約25,000トンの調製済みバイオマス材料が生成される、前記2に記載の方法。 [4] 調製済みバイオマス材料1トンあたり約14〜16ガロンのエタノールが回収される、前記1に記載の方法。 [5] 前記バイオマス材料が、少なくとも1種の発酵性糖産生植物を含む、前記1に記載の方法。 [6] 前記少なくとも1種の発酵性糖産生植物が、モロコシ(sorghum)、サトウキビ(sugarcane)、砂糖大根(sugar beet)、エネルギー原料用キビ(energy cane)、およびあらゆるそれらの組み合わせのうち少なくとも1種を含む、前記5に記載の方法。 [7] 前記調製済みバイオマス材料が、少なくとも2種の異なるタイプの植物を含み、ここで各タイプの植物は異なる収穫期を有する、前記6に記載の方法。 [8] 前記少なくとも1種の糖産生植物が、その潜在的な糖生産量の少なくとも約80%に達したときに、前記植物が収穫される、前記5に記載の方法。 [9] 前記貯蔵工程が、調製済みバイオマス材料を約72時間〜約700日の範囲の期間貯蔵することを含む、前記1に記載の方法。 [10] 前記貯蔵工程が、少なくとも1種の揮発性有機化合物への糖の変換効率が少なくとも約95%になるのに十分な期間、調製済みバイオマス材料を貯蔵することを含む、前記1に記載の方法。 [11] 前記貯蔵施設が、無溶媒回収システムから約0.5マイルのところに配置される、前記1に記載の方法。 [12] 前記貯蔵工程が、少なくとも約10フィートの高さを有する調製済みバイオマス材料の少なくとも1つのパイルを形成することをさらに含む、前記1に記載の方法。 [13] 前記少なくとも1つのパイルの形成は、調製済みバイオマス材料の少なくとも一部を締固めして、嫌気性環境の確立を容易にすることをさらに含む、前記1に記載の方法。 [14] 前記捕捉する工程が: 無溶媒回収システムの閉鎖された区画に、1種またはそれより多くの揮発性有機化合物を含有する調製済みバイオマス材料を導入すること; 閉鎖された区画中で、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含む過熱蒸気ストリームと調製済みバイオマス材料とを接触させて、調製済みバイオマス材料中の最初の液状内容物の少なくとも一部を蒸発させること; 調製済みバイオマス材料から、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含むガス成分と固形成分とを分離すること;および ガス成分の少なくとも一部を、過熱蒸気ストリームの一部として使用するために保持すること を含む、前記1に記載の方法。 [15] 揮発性有機化合物を含有する保存可能な湿潤バイオマスの生産方法であって、前記方法は: 少なくとも約10トンの固体バイオマスに少なくとも1種の添加剤を添加して、調製済みバイオマス材料を生成すること、ここで前記固体バイオマスは、糖産生植物を含み、前記少なくとも1種の添加剤は、微生物、ならびに場合により酸および/または酵素を含む;および 調製済みバイオマス材料中の糖の少なくとも一部を揮発性有機化合物に変換させること; を含み、ここで前記バイオマス材料は、揮発性有機化合物の有意な分解を起こすことなく約700日間保存が可能である、上記方法。 [16] 無溶媒回収システムの閉鎖された区画に、1種またはそれより多くの揮発性有機化合物を含有する調製済みバイオマス材料を導入すること; 閉鎖された区画中で、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含む過熱蒸気ストリームと調製済みバイオマス材料とを接触させて、調製済みバイオマス材料中の最初の液状内容物の少なくとも一部を蒸発させること; 調製済みバイオマス材料から、少なくとも1種の揮発性有機化合物を含むガス成分と固形成分とを分離すること;および ガス成分の少なくとも一部を、過熱蒸気ストリームの一部として使用するために保持すること をさらに含む、前記15に記載の方法。

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