ブタノールまたはアセトンの製造方法

申请号 JP2013517538 申请日 2011-06-30 公开(公告)号 JP5818887B2 公开(公告)日 2015-11-18
申请人 セルティック リニューアブルス リミテッド; CELTIC RENEWABLES LIMITED; 发明人 サマンサ ジェーン ホワイト; ケネス アレクサンダー リーパー; マーティン タングニー; サンドラ メッセンジャー;
摘要
权利要求

少なくとも: ドラフ、またはその誘導体、およびポットエールを含む基質を処理する工程であって、当該処理は、前記基質を加分解して、処理された基質を与え、前記ドラフは、本質的に大麦麦芽からなるビール粕を含む工程;および ブタノール−および/またはアセトン−形成生物の培養菌の存在下、5.0〜6.0の範囲の初期pHで、かつ、20μM未満の遊離銅イオンの濃度で、前記処理された基質を発酵させる工程であって、当該発酵は、ブタノールおよび/またはアセトンを含む発酵生成物を与える工程を含む、ブタノールおよび/またはアセトンの製造方法。前記初期pHが、5.3〜5.7の範囲にある、請求項1に記載の方法。前記発酵工程が、それから固形物を除去することなく行われる、請求項1または2に記載の方法。前記ドラフおよび/またはポットエールが、モルトウィスキー製造の副産物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。前記ビール粕が、100%大麦麦芽からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。前記処理工程および発酵工程が、同時に行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。前記処理工程および発酵工程が、連続して行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。前記基質が、前記遊離銅イオンの濃度を少なくとも前記発酵工程の間、15μM未満とするために、希釈される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。さらに、 でんぷんを含む大麦麦芽を製粉する工程であって、当該製粉は、すりつぶされた大麦麦芽を与える工程; 前記すりつぶされた大麦麦芽を水と混合する工程であって、当該混合は、水とすりつぶされた大麦麦芽とを含む麦芽汁を与える工程; 前記麦芽汁の前記すりつぶされた大麦麦芽中の前記でんぷんの少なくとも一部を加水分解する工程であって、当該加水分解は、ドラフと麦汁とを与え、前記ドラフは廃麦芽粕固形物を含み、前記麦汁は、水と、グルコースおよびグルコースのオリゴ糖からなる群より選択される1種以上の炭水化物とを含む工程;および 前記ドラフを前記麦汁から分離する工程により、前記ドラフが与えられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。さらに、 前記麦汁に酵母を添加する工程; 前記麦汁を発酵させる工程であって、当該発酵は、水と1種以上のアルコールとを含むウォッシュを与える工程;および 前記ウォッシュを銅製の蒸留容器内で蒸留する工程であって、当該蒸留は、1種以上のアルコールを含むローワイン蒸留物と、ポットエールの蒸留残渣とを与える工程により、前記ポットエールが与えられる、請求項9に記載の方法。前記基質を加水分解するために前記基質を処理する工程が、 水と水素イオンまたは水と水酸化物イオンの存在下、前記基質を加水分解する工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。前記基質を加水分解するために前記基質を処理する工程が、 硫酸の水溶液の存在下、前記基質を加水分解する工程を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。前記基質を加水分解するために前記基質を処理する工程が、 1種以上の酵素で前記基質を処理する工程を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。前記ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物の培養菌が、クロストリジウム属のバクテリアを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。前記発酵生成物が、さらに、エタノール、二酸化炭素、水素、アセテートおよびブチレートからなる群より選択される化合物の1種以上を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。前記モルトウィスキーが、スコッチモルトウィスキーである、請求項4〜15のいずれかに記載の方法。

说明书全文

本発明は、バイオ燃料および再生可能な化学物質の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、ブタノールの製造方法に関する。本発明は、さらに、アセトンの製造方法に関する。

近年、原油価格の高騰、燃料供給の枯渇および環境への懸念により、バイオマス由来の燃料(「バイオ燃料」)の製造に新たな関心が持たれている。バイオブタノールは、バクテリア、通常は、クロストリジウム属を用いたバイオマスの発酵により製造される。ブタノールに加えて、これらの有機体は、重要な溶媒であるアセトン、およびエタノールも生産するため、当該方法は、しばしば、「ABE法」(アセトン/ブタノール/エタノール法)と呼ばれることがある。現在使用されている原料または基質は、麦わらおよびトウモロコシの茎等の農業副産物と同様に、サトウダイコン、サトウキビ、トウモロコシ穀粒および小麦等のエネルギー作物を含む。燃料としてのバイオブタノールの使用は、エタノールの使用に対して、いくつかの利点を有する。しかしながら、現在、バイオブタノール製造は、エタノール製造よりも高価であるため、それは大規模に商業化されていない。

モルトウィスキーとは、大麦麦芽のみからなる穀物から製造されたウィスキーをいう。モルトウィスキーの製造は、大麦をに浸すことによる大麦の麦芽製造から始まる。麦芽製造は、前記穀物中のでんぷんを分解して、それらを糖に変換する酵素を放出する。所望の発芽状態に達したときに、前記大麦麦芽は乾燥される。当該乾燥された大麦麦芽は、糖化槽内ですりつぶされる。糖化では、前記麦芽製造過程の間に成長した前記酵素が、前記大麦でんぷんを糖に変換または加水分解する。その結果得られた前記糖を含む液体は、麦汁と呼ばれる。これは、ウォッシュバックと呼ばれる大きな容器に移され、そこで、それは、冷却され、発酵されて、「ウォッシュ」を形成する。前記可溶性の糖または麦汁の抽出後に残る残渣は、ドラフとして知られている。これは、廃麦芽粕固形物またはビール粕を含む。

前記ウォッシュは、銅製の蒸留容器またはウォッシュスチルとして知られている単式蒸留釜内で蒸留され、ローワインとして知られているアルコール含有蒸留液を生じる。最初の蒸留酒の蒸留後に、前記単式蒸留釜内に残っている蒸留残渣または液体は、ポットエールまたは蒸留かすとして知られている。前記ローワインは、再留釜内で2回および時には3回蒸留されて生一本を生じ、当該生一本は、オーク製の樽内で熟成され、モルトウィスキーを生じる。2回目およびそれ以降の蒸留で残っている液体は、スペントリースと呼ばれる。

したがって、モルトウィスキーの製造の副産物は、ドラフ、ポットエールおよびスペントリースを含む。ドラフは、原料の大麦の非でんぷん成分を含み、通常、糖化槽に加えられる大麦麦芽の総量の約25%に相当する。それは、可消化繊維に豊富で、大麦麦芽由来の濃縮されたタンパク質およびオイルを含む。それは、全ての種類の反すう家畜に受け入れられる。ポットエールは、固形内容物の総量が少なく、死滅した酵母細胞、酵母残渣、可溶性タンパク質、可溶性栄養素、炭水化物ならびに前記発酵および糖化工程由来の他の材料を含む。それは、前記釜それ自体からのかなりの量の銅を含むこともある。ポットエールは、栄養素が豊富であり、多くの反すう家畜のための飼料として使用されることがある。しかしながら、その高い銅含有量のために、それはヒツジには適していない。ドラフおよびポットエールは、現在、経済的な価値が低いものとして分類されている。

本願の発明者らは、ドラフ、ポットエールおよび/またはスペントリース等のモルトウィスキー製造の経済的価値の低い副産物を利用する、ブタノール、アセトンおよび/または他の再生可能な化学物質の製造方法を開発した。

本発明の第1の態様によれば、少なくとも: ドラフ、またはその誘導体、およびポットエールを含む基質を処理する工程であって、当該処理は、前記基質を加水分解して、処理された基質を与え、前記ドラフは、本質的に大麦麦芽からなるビール粕を含む工程;および ブタノール−および/またはアセトン−形成生物の培養菌の存在下、5.0〜6.0の範囲の初期pHで、かつ、20μM未満の遊離銅イオンの濃度で、前記処理された基質を発酵させる工程であって、当該発酵は、ブタノールおよび/またはアセトンを含む発酵生成物を与える工程を含む、ブタノールおよび/またはアセトンの製造方法が提供される。

さらなる態様では、本発明は、水、スペントリースおよび他の発酵由来の廃液等のポットエール以外の希釈剤の使用に及ぶ。

よって、本発明の第2の態様によれば、少なくとも: ドラフ、またはその誘導体、および希釈剤を含む基質を処理する工程であって、当該処理は、前記基質を加水分解して、処理された基質を与え、前記ドラフは、本質的に大麦麦芽からなるビール粕を含む工程;および ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物の培養菌の存在下、5.0〜6.0の範囲の初期pHで、前記処理された基質を発酵させる工程であって、当該発酵は、ブタノールおよび/またはアセトンを含む発酵生成物を与える工程を含む、ブタノールおよび/またはアセトンの製造方法が提供される。

所定の実施形態では、前記希釈剤は、ポットエール、水、スペントリースおよび他の発酵由来の廃液からなる群より選択されるか、またはこれらの組み合わせである。特に、前記希釈剤は、水であってもよい。

さらなる態様では、本発明は、ドラフ以外のバイオマス基質の使用に及ぶ。バイオマス基質の例は、これらに限定されないが、都市ごみ、産業生物学的廃棄物、農作物および作物残渣、木くずおよび林業廃棄物、海洋バイオマスならびにバイオエネルギー作物を含む。具体例は、紙、紙製造からのスラッジ、酒造家および醸造者由来のビール粕等のビール粕、果物くずおよび野菜くず、製パン工業からの廃棄物、海藻、海藻抽出物、木質チップおよび他の林業誘導体、穀物および作物残渣等の食用作物、チョコレート、藻類(大型藻類および微細藻類)、非食用作物(および残渣)ならびにスイッチグラス等のエネルギー作物を含む。

よって、本発明の第3の態様によれば、少なくとも: バイオマス基質、またはその誘導体、および希釈剤を処理する工程であって、当該処理は、前記基質を加水分解して、処理された基質を与える工程;および ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物の培養菌の存在下、5.0〜6.0の範囲の初期pHで、前記処理された基質を発酵させる工程であって、当該発酵は、ブタノールおよび/またはアセトンを含む発酵生成物を与える工程を含む、ブタノールおよび/またはアセトンの製造方法が提供される。

所定の実施形態では、前記基質は、古紙等の紙である。前記希釈剤は、ポットエール、水、スペントリースおよび他の発酵由来の廃液からなる群より選択されるか、またはこれらの組み合わせであってもよい。特に、前記希釈剤は、ポットエールであってもよい。

よって、本発明の第4の態様によれば、少なくとも: バイオマス基質、またはその誘導体、およびポットエールを処理する工程であって、当該処理は、前記基質を加水分解して、処理された基質を与える工程;および ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物の培養菌の存在下、5.0〜6.0の範囲の初期pHで、かつ、20μM未満の遊離銅イオンの濃度で、前記処理された基質を発酵させる工程であって、当該発酵は、ブタノールおよび/またはアセトンを含む発酵生成物を与える工程を含む、ブタノールおよび/またはアセトンの製造方法が提供される。

所定の実施形態では、前記基質は、古紙等の紙である。

本発明のさらなる態様によれば、本発明の前記態様のいずれかの方法に従って製造されたブタノールおよび/またはアセトンを含むバイオ燃料が提供される。

本発明のさらなる態様によれば、発酵によるブタノールおよび/またはアセトンの製造における、モルトウィスキー製造の1種以上の副産物の使用が提供される。所定の実施形態では、モルトウィスキー製造の1種以上の前記副産物は、ドラフ、ポットエールおよび/またはスペントリースを含む。

図1は、ポットエール中の酸と酵素で前処理されたドラフの、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824による発酵における初期pHの影響を示す。ドラフは、0.08Mの硫酸で前処理されて、そのpHは、酵素の添加の前にpH5.0〜6.0の間に調節された。酵素加水分解後に、前記pHは、発酵のために4.5、4.8、5.0、5.5、6.0または6.5に調節された。図1(a)は、酸および酵素処理による糖を示し、図1(b)は、発酵後の残留糖を示し、図1(c)は、発酵由来のABE生成物を示し、そして、図1(d)は、ドラフからのブタノールとABEの収率を示す。

図2は、水またはポットエール中のいずれかでの酸前処理されたドラフからのC.アセトブチリカム ATCC 824によるABE製造を対比する。酸処理後に、そのpHは、pH5.5に調節され、酵素および微生物が添加された。

図3は、1Lスケールでのドラフからの、C.アセトブチリカム ATCC 824とC.ベイジェリンキ(beijerinckii)NCIMB 8052とによるABE製造を示す。

図4は、水または50%ポットエールのいずれかに溶解された(a)白色事務用紙および(b)新聞紙由来の、C.サッカロペルブチルアセトニカム(saccharoperbutylacetonicum)NCIMB 12606によるABE製造を示す。

発明の詳細な説明 本発明の所定の実施形態は、ドラフ、ポットエール、スペントリースおよび/または古紙等の他のバイオマス基質を利用する。特に、本発明者らは、驚くべきことに、ポットエールの存在下で発酵を行うことができることを見出した。前記銅製の蒸留釜由来のポットエール中の高い銅含有量が、クロストリジウム属のバクテリア等のブタノール−および/またはアセトン−形成微生物を阻害すると予期されていた。しかしながら、本発明者らは、前記基質が20μMより低い遊離銅イオンの低濃度に希釈された場合、阻害効果がないことを示した。

ブタノール、アセトンおよび/または他の再生可能な化学物質の製造におけるポットエールの使用は、いくつかの関連した利点を有する。ポットエールは、現在、経済的な価値が低いものとして分類されている。本発明におけるポットエールの使用は、ポットエールの経済的価値を増大させることができる。さらに、前記ポットエールは、前記基質を溶解するための溶媒として作用する。したがって、ポットエールが使用される際には、必要な水または他の希釈剤の量が低減される。加えて、ポットエールは、前記発酵および基質から生成物への全体の変換を向上させる前記微生物に必須栄養素を与える。

ブタノール、アセトンおよび/または他の再生可能な化学物質の製造において、ドラフ、スペントリースおよび/または他のバイオマス基質の使用することもまた、それがこれらの基質の廃棄に解決法を提供するため、有利である。ドラフは、特に、現在、経済的な価値が低いものとして分類されている。

所定の実施形態では、前記ドラフ、ポットエールおよび/またはスペントリースは、モルトウィスキー製造の副産物である。したがって、本発明におけるこれら副産物の使用は、経済的価値の低い副産物の再利用を可能とし、モルトウィスキー製造のこれら副産物の廃棄に特有の解決法を提供する。

所定の態様では、本発明は、紙、特に古紙等のバイオマス基質を利用する。したがって、本発明は、さらに、古紙、例えば、古新聞紙または使用済みコピー用紙の廃棄に解決法を提供する。

前記基質は、それを加水分解するために処理されなければならず、したがって、前記基質を発酵に適した形態に分解する。よって、所定の実施形態では、前記基質は、それを加水分解するための1種以上の処理工程、例えば、すりつぶし、加熱、酸またはアルカリの添加、酵素の添加、またはこれらの組み合わせ、にかけられる。所定の実施形態では、それを加水分解するための前記基質の処理は、水および水素イオンまたは水および水酸化物イオンの存在下、前記基質を加水分解する工程を含む。所定の実施形態では、それを加水分解するための前記基質の処理は、前記基質を加水分解することが可能な任意の適した酸の存在下で行われる。適した酸の例は、硫酸および硝酸を含む。硫酸は、本発明で使用する酸の好適な例である。所定の実施形態では、それを加水分解するための前記基質の処理は、セルラーゼおよびヘミセルラーゼ等の1種以上の酵素の添加を含む。所定の実施形態では、発酵に適した形態の処理された基質を与えるために、処理の組み合わせ、例えば、酸と酵素の両方の添加、を利用してもよい。処理の組み合わせは、同時にまたは連続して適用されてもよい。

所定の実施形態では、前記基質は、ドラフであり、前記希釈剤は、水であり、前記処理は、酵素の添加を含んでいてもよい。他の実施形態では、前記基質は、ドラフであり、前記希釈剤は、ポットエールであり、前記処理は、酸および酵素の添加を含んでいてもよい。

前記処理された基質の発酵は、5.0〜6.0の範囲、好適には、5.3〜5.7の範囲、さらに好適には、5.5の初期pHで行われる。このpH範囲の使用は、ブタノールおよび/またはアセトンの高収率を与えることが示された。さらに、このpH範囲によって、それから固形物を除去する必要なく、発酵が行われることが可能となり、したがって、コスト削減と固形物の除去の必要に起因する何らかの技術的な問題を回避することができる。このpH範囲は、ブタノールおよび/またはアセトン製造を最大化する一方、前記処理された基質からの何らかの潜在毒性を防ぐ。

発酵は、ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物の培養菌の存在下で行われる。前記ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物は、ブタノールおよび/またはアセトンを形成するために前記基質を発酵させることが可能な任意の溶媒製造微生物から選択することができる。好適な微生物は、溶媒を製造するために改変された微生物を含む。好適な微生物の例は、ABE(アセトン/ブタノール/エタノール)製造に現在使用されているもの、特に、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)、C.ベイジェリンキ(beijerinckii)、C.サッカロペルブチルアセトニカム(saccharoperbutylacetonicum)およびC.サッカロブチリカム(saccharobutylicum)等のクロストリジウム属のバクテリア、を含む。特定の実施形態では、前記ブタノール−および/またはアセトン−形成微生物は、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)を含む。

発酵は、20μM未満の遊離銅イオンの濃度で行われる。これが、前記銅イオンの存在が有する負の効果を無くす/最小にすることを確実にする。所定の実施形態では、遊離銅イオンの濃度を20μM遊離銅イオンよりも低くするために、水または他の水溶液が加えられてもよい。所定の実施形態では、少なくとも前記発酵工程の間、前記遊離銅イオンの濃度は、19,18,17,16,15,14,13,12,11,10,9,8,7,6または5μM遊離銅イオン未満である。所定の実施形態では、前記遊離銅イオンの濃度は、15μM未満である。所定の実施形態では、前記遊離銅イオンの濃度は、10μM未満である。

所定の実施形態では、前記処理工程および発酵工程は、同時に行われる。これは、必要な時間量、含まれる工程数、および関連する製造コストを削減する。

別の実施形態では、前記処理工程および発酵工程は、連続して行われる。例えば、ドラフは、発酵の前に、2つの工程で、最初に酸で、次いで酵素で、前処理されてもよい。

所定の実施形態では、前記発酵生成物は、さらに、エタノール、二酸化炭素、水素、アセテートおよびブチレートからなる群より選択される化合物の1種以上を含む。ブタノールおよび/またはアセトンは、従来の分離技術を用いて、前記発酵生成物から取り出されてもよい。あるいは、前記発酵生成物は、燃料として、またはさもなければ、更なる精製なしで、使用されてもよい。

所定の実施形態では、ドラフが利用され、前記ビール粕は、100%大麦麦芽からなる。

所定の実施形態では、前記基質がモルトウィスキー製造の副産物を含み、前記モルトウィスキーは、スコッチモルトウィスキーである。

本明細書で使用される用語「バイオブタノール」は、バイオマスから製造されたブタノールをいう。

本明細書で使用される用語「ドラフ」は、モルトウィスキーの製造で液体(麦汁)が抽出された後の糖化槽内に残る廃麦芽粕固形物およびビール粕の組成物をいう。

本明細書で使用される用語「ポットエール」は、モルトウィスキー製造において、最初の蒸留後に前記ウォッシュスチル(銅釜)内に残っている液体をいう。それは、ローワインの蒸留による抽出後の前記ウォッシュの残渣である。

本明細書で使用される用語「スペントリース」は、モルトウィスキー製造において、2回目およびそれ以降の蒸留後に前記蒸留容器内に残っている液体をいう。それは、生一本の蒸留による抽出後の前記ローワインの残渣である。

用語「本質的に大麦麦芽からなる」は、本明細書において、大麦麦芽以外の穀物の種類を含まない基質、または、ごく少量のみを含む基質をいうものと理解される。したがって、それは、モルトウィスキー製造の副産物を包含する。それは、穀物の他の種類以外の少量の不純物を含む大麦麦芽穀物を包含することを意図している。

用語「遊離銅イオンの濃度」は、固形物と結びついていない銅イオンの濃度、すなわち、上澄みの銅イオンの濃度をいう。ポットエール内の銅の総濃度は、死滅した酵母細胞等の固形物に結びついて残っている一部の銅としての遊離銅イオンの濃度よりも高くなる。

本明細書で使用される用語「スコッチウィスキー」は、スコットランドで製造されたウィスキーをいう。別の実施形態では、前記モルトウィスキーは、アイルランドまたはインド等の他の国で製造されたモルトウィスキーであり、ここで、その国でのモルトウィスキーの製造方法は、スコッチモルトウィスキーの製造のためにスコットランドで用いられている方法と類似または同一である。

次に、本発明を以下の例を参照して説明するが、これは説明目的のために提供されるものであり、本発明を限定するものと解釈されることを意図したものではない。

一般的方法 以下の有機体を用いた:C.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824、C.ベイジェリンキ(beijerinckii)NCIMB 8052およびC.サッカロペルブチルアセトニカム(saccharoperbutylacetonicum) NCIMB 12606。クロストリジウムを、4℃で胞子懸濁として保持した。胞子に、熱ショックを80℃で10分間加え、そして、補強されたクロストリジウム培地(RCM、Oxoid社、Cambridge、UK)に植菌した。培養菌を24時間培養して、次いで、全ての実験で開始培養菌(5%v/v)として使用する前に、グルコースを含むトリプトン−酵母エキス−酢酸アンモニウム培地(TYA)培地に二次培養した。TYAは、トリプトン、6g/l;酵母エキス、2g/l;酢酸アンモニウム、3g/l;KH2PO4、0.5g/l;MgSO4・7H2O、0.3g/l;5%グルコースが補充されたFeSO4・7H2O、0.01g/l、から構成される。全てのクロストリジウム培養菌を、33℃、N2−H2−CO2(80:10:10)雰囲気下の嫌気性のワークステーション内で培養した。1Lスケールについて、発酵を発酵槽(Biostat A Plus、Sartorius Stedim社、Surrey、UK)内で行った。クロストリジウムの植菌の前に、1時間、無酸素の窒素で発酵槽内で前記培地を、散布することにより、無酸素状態を達成した。全ての1Lの発酵について、撹拌は、200rpmおよび温度33℃に設定した。

ウェットドラフは、蒸留所から受け取った際、75〜80%の含水率であった。述べるところでは、ドラフは、含水率が約4%となるまで80℃で乾燥され、さらなる処理の前に製粉された。

フレームイオン化検出器と、長さ10mおよび直径0.32mmのCP SIL 5CBカラム(全てChrompack、Middelburg、オランダ)とを備えたChrompack 9001ガスクロマトグラフを用いて、溶媒(エタノール、アセトンおよびブタノール)を分析した。分析前に全てのサンプルを0.2μm酢酸セルロースシリンジフィルターを通してろ過し、濃度は、エタノール、アセトンおよびブタノール標準品を参照して決定した。

酸(酢酸および酪酸)ならびに単糖(グルコース、キシロースおよびアラビノース)分析のため、サンプルを0.2μmシリンジフィルターを通してろ過し、硫酸で酸性にした。UV−VIS二波長と屈折率検出器が組み込まれて装着されたVarian 920 LC(Varian社、Oxford、UK)を用いたHPLCにより、サンプルを分析した。Rezex ROA有機酸H+8% 300×7.8mmカラム(Phenomenex社、Cheshire、UK)で、0.005N硫酸、移動相の流速0.5ml/分で、成分を室温で分離した。酸は、210nmで検出し、一方、糖は、前記RI検出器で検出し、そして、濃度は、対応する標準品を参照して決定した。

例1 ドラフの組成 ドラフは、スコットランドの3つの異なる麦芽蒸留所から集めた。前記ドラフの単糖組成を、構造性炭水化物の分析のためのNational Renewable Energy Labにより開発された実験室的分析手順(Laboratory Analytical Procedure)(Sluiterら、2008.NREL.バイオマスにおける構造性炭水化物およびリグニンの決定のための実験室的分析手順、NREL/TP-510-42618)に従い、分析した。その分析結果を表1に示す。グルコース、キシロースおよびアラビノースが、主たる糖であり、ガラクトースは、非常に低いレベル(2%未満)であり、そして、マンノースは、検出されなかった。異なる蒸留所からのドラフの糖組成に差異はほとんどなかった。これらの値に基づいて、ドラフ(以下に述べる実験において用いたような10.5%乾燥ドラフ(w/v))の完全な加水分解は、約50g/lの単糖を生ずる。

例2 クロストリジウムによる溶媒製造におけるpH制御の効果 C.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824によるTYA培地でのグルコースの発酵におけるpHの効果を調査した。発酵を1Lスケールで行い、pH4.5〜6.5の間の設定点の範囲で、アルカリまたは酸のいずれかを自動で添加することによりそのpHを制御した。pH4.5では、グルコースの利用、酸またはABE製造は、検出されなかった。他の全ての発酵について、グルコースは48時間以内に完全に消費され、酸(酪酸および酢酸)と溶媒(アセトン、ブタノールおよびエタノール)とが製造された(表2)。ABE製造は、pH4.8と5.0で最も高く、対応する収率は、それぞれ、ABE(g)/糖(g)が0.34と0.30である。pH5.5〜6.5の間で、糖のABEへの変換の減少と対応して、酸製造が増大した。pH6.5では、酸のみが、それぞれ、7.8および12.8g/lの酢酸および酪酸の最終濃度で製造された。

例3 成長培地としてのポットエール スコットランドの麦芽蒸留所からポットエールを回収し、銅含有量について分析した。そのポットエールは、合計、71.8μMの銅を有し、そのうち21.1μMは、上澄み中の「遊離」銅として利用可能であり、残りは固形物に結びついていると決定した。この銅濃度がC.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824に有毒かどうかを評価するために、銅の異なる濃度で補充された100mlTYA培地での5%グルコースの発酵を比較した(表3)。銅は、5と10μMでは、ABE濃度が約12g/lと、銅のない対照のそれと同様で、ABE製造に影響が無かった。より高い銅濃度では、ABE濃度は、8.6g/lまで減少し、この濃度では、銅がクロストリジウムを阻害していることを示している。前記ポットエールが、21.1μMの「遊離」銅の含有量を有するため、阻害レベル未満に前記Cu濃度を減少させるために、半分の濃度のポットエールでクロストリジウム発酵を試験することを決定した。グルコース補充した半分濃度のポットエールは、824の成長に十分な栄養素を与え、前記TYA対照と同様のABE製造を与えた(表3)。

例4 加水分解されたドラフの発酵における初期pHの影響 前処理されたドラフの発酵における初期pHの効果を調査した。乾燥し、製粉されたドラフを、50%ポットエール中で0.08M硫酸を用いて250mlのデュラン瓶に10.5%(w/v)を添加することにより前処理を行い、121℃で15分間殺菌した。冷却後、そのpHを、10M水酸化ナトリウムを添加することによりpH5.0〜6.0の間に調節し、33℃で24時間、セルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素と共に培養した。発酵のため、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824の植菌の前に、前記溶液のpHを4.5,4.8,5.0,5.5,6.0または6.5のいずれかに調節した。発酵前にその初期糖濃度を測定し、発酵後のその残余の糖、ABE濃度およびABE収率を計算した(図1)。糖の初期濃度は、全てのサンプルについて同様であり、約9.6、11.2、および9.9g/lのグルコース、キシロースおよびアラビノースだった。pH5.0以下では、成長またはガス製造が無いことが明らかであり、糖の利用はなかった。ABE製造は、pH5.5で最大(14.2g/l)であり、13.2g/ドラフ100gの収率だった。これは、pH6.0では、ABE9.3g/ドラフ100gに減少した。pH6.5では、約半分の糖が利用されたが、最終濃度2.3g/lとABEへの変換は乏しかった。

例5 ポットエールまたは水における酸前処理されたドラフの発酵 乾燥し、製粉されたドラフ(10.5%w/v)を、250mlのデュラン瓶内で水またはポットエールのいずれかにおいて0.08M硫酸を用いて、121℃で15分間殺菌することにより、前処理した。冷却後、そのpHを、10M水酸化ナトリウムを添加することにより5.5に調節した。セルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素ならびに接種C.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824を添加して、33℃で瓶を培養した。発酵後、ABE濃度を決定した(図2)。水中のドラフについて、ABE収率はABE14.0g/ドラフ100gであるのに対し、ポットエール中では、収率は、ABE14.9g/ドラフ100gであった。

例6 1Lスケールでのドラフのブタノールとアセトンへの変換 ドラフ(10.5%w/v)を、1L発酵槽内の50%ポットエール中で0.08M硫酸を用いて、121℃で15分間殺菌することにより、前処理した。この例では、ドラフはウェットで、前記蒸留所から受け取ったまま、何らさらなる処理をすることなく、使用した。33℃まで冷却した後、10M水酸化ナトリウムを添加することにより、そのpHをpH5.5に調節し、前記発酵槽に窒素を散布した。脱気した後、酵素と824または8052のいずれかを添加して、発酵の終了時に溶媒を分析した。C.アセトブチリカム(acetobutylicum)ATCC 824とC.ベイジェリンキ(beijerinckii)NCIMB 8052による発酵では、それぞれ、ABEレベルは、11.3と12.8g/lとなった(図3)。これは、それぞれ、ABE10.6g/ドラフ100gとABE12.1g/ドラフ100gの変換率に相当した。

例7 古紙のブタノールとアセトンへの変換方法 白色事務用紙と新聞紙を5mm幅の細長い切れに細かく刻み、250mlデュラン瓶中で、水または50%ポットエールのいずれかで6.7%(w/v)を混合し、そのpHをpH5.5に調節した。殺菌後、前記瓶を冷却し、セルラーゼとC.サッカロペルブチルアセトニカム(saccharoperbutylacetonicum) NCIMB 12606を添加した。発酵後、そのABE濃度を決定した(図4)。水における紙のABEへの変換は、ポットエールに比べて乏しく、追加の栄養素を与えるためにポットエールが必要であることを実証した。ポットエール中では、C.サッカロペルブチルアセトニカム(saccharoperbutylacetonicum)を用いた発酵後のそのABE収率は、ABE24.8g/事務用紙100gとABE16.8g/新聞紙100gであった。

特定の好適な実施形態に関連して本発明を説明したが、請求項に係る本発明は、斯かる特定の実施形態に不当に制限されないことが理解される。実に、当業者にとって自明な形態であって、本発明を実行するために記載された形態の様々な変更は、本発明に含まれることが意図されている。

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