Silica gel composition, membrane electrode assembly with proton-exchange membrane and fuel cell

申请号 JP2003432663 申请日 2003-12-26 公开(公告)号 JP2004307814A 公开(公告)日 2004-11-04
申请人 Fuji Photo Film Co Ltd; 富士写真フイルム株式会社; 发明人 ONO MICHIO; WARIISHI KOJI; NOMURA KIMIATSU; KIKUCHI WATARU;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a membrane electrode assembly with a proton-exchange membrane having a high ionic conductivity and a low methanol crossover, and to provide a fuel cell with a high output using the assembly. SOLUTION: The proton-exchange membrane is specific in using a sol obtained by hydrolysis and polycondensation of precursors expressed by formulae (X) and (XI) in the presence of water and an oxidizing agent [in formula (X) L 1 is a (p+1)-valent linking group; R 14 and R 15 are each an alkyl group or an aryl group; n9 is 2 or 3; and p is an integer of 1-3, and in formula (XI) L 2 and L 3 are each a divalent linking group; R 16 -R 19 are each an alkyl group or an aryl group; n10 and n11 are each 2 or 3; and q is an integer of 2-4]. The assembly comprising the same membrane and the fuel cell using the assembly, are also provided. COPYRIGHT: (C)2005,JPO&NCIPI
权利要求
  • 下記一般式(X):
    (一般式(X)中、L 1は(p+1)価の連結基を表し、R 14及びR 15はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n9は2又は3を表し、少なくとも一つのR 14は炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、R 14は同じでも異なっていてもよく、pは1〜3の整数を表す。)、及び下記一般式(XI):
    (一般式(XI)中、L 2及びL 3はそれぞれ2価の連結基を表し、R 16 〜R 19はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n10及びn11はそれぞれ2又は3を表し、少なくとも一つのR 16及び少なくとも一つのR 19はそれぞれ炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、qは2〜4の整数を表す。)で表される前駆体の少なくとも一種を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られることを特徴とするシリカゾル組成物。
  • メソゲンを含む有機分子鎖及びプロトン供与性基を含む基が、ケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合した構造を有し、前記有機分子鎖の少なくとも一部が配向してなる集合体を含有することを特徴とするプロトン交換膜。
  • 請求項2に記載のプロトン交換膜において、下記一般式(I):
    (一般式(I)中、A 11はメソゲンを含む有機原子団を表し、R 1はアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、m 11は1〜3の整数を表し、n 11は1〜8の整数を表し、n 12は0〜4の整数を表し、*はケイ素原子に結合する位置を表し、**は、有機高分子鎖に結合する位置を表す)で表される部分構造を含むことを特徴とするプロトン交換膜。
  • 下記一般式(III):
    (一般式(III)中、B 1は脂肪族基及び/又は芳香族基を含む連結基を表し、R 3はアルキル基又はアリール基を表し、E 1はプロトン供与性基を表し、m3は1〜3の整数を表し、n3は1〜4の整数を表し、*はケイ素原子に結合する位置を表す。)で表される構造により前記プロトン供与性基が前記ケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合していることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載のプロトン交換膜。
  • 請求項2〜4のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(IV):
    (一般式(IV)中、A 3はメソゲンを含む有機原子団を表し、R 4はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R 5は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Yは重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、m 41は1〜3の整数を表し、n 41は1〜8の整数を表し、n 42は0〜4の整数を表し、m 41が2以上のときR 4は同一でも異なってもよい)で表される有機ケイ素化合物を前駆体としたゾル−ゲル反応により得られることを特徴とするプロトン交換膜。
  • 請求項2〜5のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(IV):

    (一般式(IV)中、A 3はメソゲンを含む有機原子団を表し、R 4はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Yは重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、m 41は1〜3の整数を表し、n 41は1〜8の整数を表し、n 42は0〜4の整数を表し、m 41が2以上のときR 4は同一でも異なってもよい)で表される有機ケイ素化合物と、下記一般式(VI)及び/又は(VII):
    (一般式(VI)及び(VII)中、B 2及びB 3はそれぞれ脂肪族基及び/又は芳香族基を含む連結基を表し、R 8及びR 10はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、m6及びm7はそれぞれ1〜3の整数を表し、n6及びn7はそれぞれ1〜4の整数を表し、R 9及びR 11はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、m6又はm7が2以上のときR 9又はR 11はそれぞれ同一でも異なってもよい)で表される有機ケイ素化合物とを含む溶液を酸化処理して得られるスルホン酸ゾルを用いたことを特徴とするプロトン交換膜。
  • 請求項2〜5のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(VIII):
    (一般式(VIII)中、A 5はメソゲンを含む有機原子団を表し、Z 1はゾル−ゲル反応において変化しない置換基または水素原子を表し、n 81は1〜8の整数を表し、n 82は0〜4の整数を表し、Y 2は重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、n 81が2以上の時、Z 1は同一でも異なってもよい。)で表される化合物を、
    下記一般式(IV):
    (一般式(IV)中、A 3はメソゲンを含む有機原子団を表し、R 4はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R 5は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Yは重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、m 41は1〜3の整数を表し、n 41は1〜8の整数を表し、n 42は0〜4の整数を表し、m 41が2以上のときR 4は同一でも異なってもよい)で表される化合物のモル数に対し、1モル%から50モル%用いたゾル−ゲル反応により得られることを特徴とするプロトン交換膜。
  • 請求項2〜5のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(XX):
    (一般式(XX)中、L 4は2価の連結基を表す)で表される前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られるゾルを用いたことを特徴とするプロトン交換膜。
  • 請求項2〜4のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(X)及び一般式(XI)で表される前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られるゾルを用いたことを特徴とするプロトン交換膜。
    一般式(X)
    (一般式(X)中、L 1は(p+1)価の連結基を表し、R 14及びR 15はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n9は2又は3を表し、少なくとも一つのR 14は炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、R 14は同じでも異なっていてもよく、pは1〜3の整数を表す。)
    一般式(XI)
    (一般式(XI)中、L 2及びL 3はそれぞれ2価の連結基を表し、R 16 〜R 19はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n10及びn11はそれぞれ2又は3を表し、少なくとも一つのR 16及び少なくとも一つのR 19はそれぞれ炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、R 16及びR 19はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、qは2〜4の整数を表す。)
  • 請求項2〜9のいずれかに記載のプロトン交換膜を有することを特徴とする電極膜複合体。
  • 請求項2〜9のいずれかに記載のプロトン交換膜を有することを特徴とする燃料電池。
  • 说明书全文

    本発明は、シリカゲル組成物並びにプロトン交換膜電極膜複合体及びそれを用いた燃料電池に関する。

    近年、固体高分子型燃料電池は地球環境にやさしいクリーンな発電装置として、家庭用電源、車載用電源等への実用化が期待されている。 これらの固体高分子型燃料電池では、素と酸素を燃料として使用するものが主流となっている。 また、最近では、燃料として水素の替わりにメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)が提案され、リチウム2次電池に代わる携帯機器用高容量電池として期待され、活発に研究されている。

    固体高分子型燃料電池用電解質膜(プロトン交換膜)の重要な機能は、正極触媒電極に供給される燃料(水素、メタノール水溶液等)と負極に供給される酸化剤ガス(酸素等)を物理的に絶縁すること、正極と負極を電気的に絶縁すること、及び正極上で生じるプロトンを負極に伝達することである。 これらの機能を満たすためには、ある程度の機械的強度と高いプロトン伝導性が要求される。

    固体高分子型燃料電池電解質膜には、一般にナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられている。 これらの電解質膜はイオン伝導度に優れ、機械的強度も比較的高いものであるが、以下のような改善すべき点がある。 すなわち、これらの電解質膜では膜に含まれる水とスルホン酸基により生成したクラスターチャンネルの中で水を介してプロトンが伝導するため、イオン伝導度が電池使用環境の湿度による膜含水率に大きく依存する。 固体高分子型燃料電池は、COによる触媒電極の被毒低減と触媒電極の高活性化の観点から、100〜150℃の温度領域で作動させるのが好ましい。 しかし、このような中温度領域では電解質膜の含水率の低下とともにイオン伝導度が低下するため、期待した電池特性が得られない。 また、電解質膜の軟化点が120℃付近にあり、この温度域で作動させた場合には電解質膜の機械的強度に乏しい。 一方、これらの電解質膜をDMFCに用いた場合、本質的に含水し易く、燃料のメタノール対するバリヤ性が低いため、正極に供給したメタノールが電解質膜を透過し負極に到達してしまう。 これが原因となり電池出が低下する、いわゆるメタノールクロスオーバー現象が生じ、DMFC実用化のための解決すべき重要な課題の一つとなっている。

    このような状況下、ナフィオン(登録商標)に代わるプロトン伝導材料を開発する機運が高まり、幾つかの有望な電解質材料が提案されている。 無機材料の特性を活かしながら製膜を容易にするための方策として、一つには高分子材料と複合化したナノコンポジッド材料が提案されている。 例えば、スルホン酸基を側鎖に有する高分子化合物と、ケイ素酸化物及びプロトン酸との複合化によりプロトン交換膜を作製する方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。 他には有機ケイ素化合物を前駆体とし、プロトン酸存在下のゾル−ゲル反応により生成する有機−無機ナノハイブリッド型のプロトン伝導材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。 これらの有機−無機コンポジッド及びハイブリッド型プロトン伝導材料は、ケイ酸とプロトン酸からなりプロトン伝導部位である無機成分と材料に柔軟性を付与する有機成分とにより構成されるが、膜のプロトン伝導度を高めるために無機成分を増やすと膜の機械的強度が低下し、柔軟性を得るために有機成分を増やすとプロトン伝導度が低下するため、2つの特性を満足する材料を得ることが困難である。 また、DMFC用途として重要な特性であるメタノール透過性に関しては、十分な記載がない。

    特開平10-69817号公報

    特開平11-203936号公報

    特開2001-307752号公報

    特許第3103888号公報

    本発明の目的は、スルホ化された有機ケイ素化合物からなる安定性の良好なシリカゾル組成物、及びこれらを用いたDMFC用として好適なメタノール透過性の低いプロトン交換膜、電極膜複合体、及びそれを用いた燃料電池を提供することである。

    本発明者は、特定の構造を有する化合物を水及び酸化剤存在下で、加水分解及び重縮合反応して得られるシリカゾル組成物が従来のシリカゾル組成物に比べ長期間高い安定性を示すことを発見し、本発明に想到した。

    さらに、本発明者は、メソゲン構造により自己組織化力を付与した有機ケイ素化合物からなるゾル−ゲル反応前駆体と、プロトン供与性基を有するゾル−ゲル反応前駆体を複合化することにより、メソゲンを含む有機分子鎖とプロトン伝導経路となるプロトン供与性基が結合したケイ素−酸素マトリックス部がナノサイズで相分離し、好ましくは有機分子鎖が膜断面に水平に配向することにより、プロトン伝導経路が膜断面に垂直な方向で形成された有機−無機ナノハイブリッド材料が構築できることを発見し、本発明に想到した。

    すなわち、一般式(IV)で表される有機ケイ素化合物とプロトン供与性基を有するゾルを組み合わせたゾル−ゲル反応により得られる有機−無機ハイブリッド型プロトン交換膜は、有機分子鎖が配向してなる集合体を形成することが偏光顕微鏡観察により判明した。 この場合、プロトン伝導経路となるプロトン供与性基が結合したケイ素−酸素ネットワークは、必然的に有機分子集合体の配向方向と直交する方向に形成される。 従って、有機分子鎖の配向方向を膜断面に水平に制御することにより、膜断面に垂直のプロトン伝導経路が構築できる。

    本発明の目的は、より具体的には、下記の構成により達成することができる。
    (1)下記一般式(X):

    (一般式(X)中、L

    1は(p+1)価の連結基を表し、R

    14及びR

    15はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n9は2又は3を表し、少なくとも一つのR

    14は炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、R

    14は同じでも異なっていてもよく、pは1〜3の整数を表す。)、及び下記一般式(XI):


    (一般式(XI)中、L

    2及びL

    3はそれぞれ2価の連結基を表し、R

    16 〜R

    19はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n10及びn11はそれぞれ2又は3を表し、少なくとも一つのR

    16及び少なくとも一つのR

    19はそれぞれ炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、qは2〜4の整数を表す。)で表される前駆体の少なくとも一種を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られることを特徴とするシリカゾル組成物。

    (1−1)さらに、上記(1)において、一般式(X)又は(XI)中、R 16 〜R 19は、炭素数4〜10のアルキル基が好ましい。
    (1−2)上記(1)において、L 1 、L 2及びL 3は、アルキレン基、アリーレン基又はこれらを組み合わせてなる連結基が好ましい。
    (1−3)上記(1)において、酸化剤は、水溶性の酸化剤が好ましい。
    (1−4)上記(1)において、 酸化剤は、過酸化水素又は過酢酸が好ましい。
    (1−5)上記(1)において、qは2が好ましい。

    (2)メソゲンを含む有機分子鎖及びプロトン供与性基を含む基が、ケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合した構造を有し、前記有機分子鎖の少なくとも一部が配向してなる集合体を含有することを特徴とするプロトン交換膜。
    (3)(2)に記載のプロトン交換膜において、下記一般式(I):

    (一般式(I)中、A

    11はメソゲンを含む有機原子団を表し、R

    1はアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、m

    11は1〜3の整数を表し、n

    11は1〜8の整数を表し、n

    12は0〜4の整数を表し、*はケイ素原子に結合する位置を表し、**は、有機高分子鎖に結合する位置を表す)で表される部分構造を含むことを特徴とするプロトン交換膜。

    (4)下記一般式(III):

    (一般式(III)中、B

    1は脂肪族基及び/又は芳香族基を含む連結基を表し、R

    3はアルキル基又はアリール基を表し、E

    1はプロトン供与性基を表し、m3は1〜3の整数を表し、n3は1〜4の整数を表し、*はケイ素原子に結合する位置を表す。)で表される構造により前記プロトン供与性基が前記ケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合していることを特徴とする(2)又は(3)のいずれかに記載のプロトン交換膜。

    (5)(2)〜(4)のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(IV):


    (一般式(IV)中、A

    3はメソゲンを含む有機原子団を表し、R

    4はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R

    5は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Yは重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、m

    41は1〜3の整数を表し、n

    41は1〜8の整数を表し、n

    42は0〜4の整数を表し、m

    41が2以上のときR

    4は同一でも異なってもよい)で表される有機ケイ素化合物を前駆体としたゾル−ゲル反応により得られることを特徴とするプロトン交換膜。

    (6)下記一般式(IV):

    (一般式(IV)中、A

    3はメソゲンを含む有機原子団を表し、R

    4はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Yは重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、m

    41は1〜3の整数を表し、n

    41は1〜8の整数を表し、n

    42は0〜4の整数を表し、m

    41が2以上のときR

    4は同一でも異なってもよい)で表される有機ケイ素化合物と、下記一般式(VI)及び/又は(VII):


    (一般式(VI)及び(VII)中、B

    2及びB

    3はそれぞれ脂肪族基及び/又は芳香族基を含む連結基を表し、R

    8及びR

    10はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、m6及びm7はそれぞれ1〜3の整数を表し、n6及びn7はそれぞれ1〜4の整数を表し、R

    9及びR

    11はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、m6又はm7が2以上のときR

    9又はR

    11はそれぞれ同一でも異なってもよい)で表される有機ケイ素化合物とを含む溶液を酸化処理して得られるスルホン酸ゾルを用いたことを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載のプロトン交換膜。

    (7)(2)〜(5)のいずれかに記載のプロトン交換膜において、下記一般式(VIII):

    (一般式(VIII)中、A

    5はメソゲンを含む有機原子団を表し、Z

    1はゾル−ゲル反応において変化しない置換基または水素原子を表し、n

    81は1〜8の整数を表し、n

    82は0〜4の整数を表し、Y

    2は重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、n

    81が2以上の時、Z

    1は同一でも異なってもよい。)で表される化合物を、


    下記一般式(IV):


    (一般式(IV)中、A

    3はメソゲンを含む有機原子団を表し、R

    4はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R

    5は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Yは重合により炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、m

    41は1〜3の整数を表し、n

    41は1〜8の整数を表し、n

    42は0〜4の整数を表し、m

    41が2以上のときR

    4は同一でも異なってもよい)で表される化合物のモル数に対し、1モル%から50モル%用いたゾル−ゲル反応により得られることを特徴とするプロトン交換膜。

    (8)下記一般式(XX)

    (一般式(XX)中、L

    4は2価の連結基を表す)で表される前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られるゾルを用いたことを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載のプロトン交換膜。


    (8−2)(2)〜(5)のいずれかに記載のプロトン交換膜において、一般式(IV)で表される有機ケイ素化合物と、一般式(XX)で表される有機ケイ素化合物とを水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られるゾルを用いたことを特徴とするプロトン交換膜。

    (9)下記一般式(X)及び/又は(XI):
    一般式(X)

    (一般式(X)中、L

    1は(p+1)価の連結基を表し、R

    14及びR

    15はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n9は2又は3を表し、少なくとも一つのR

    14は炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、R

    14は同じでも異なっていてもよく、pは1〜3の整数を表す。)


    一般式(XI)


    (一般式(XI)中、L

    2及びL

    3はそれぞれ2価の連結基を表し、R

    16 〜R

    19はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、n10及びn11はそれぞれ2又は3を表し、少なくとも一つのR

    16及び少なくとも一つのR

    19はそれぞれ炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を表し、R

    16及びR

    19はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、qは2〜4の整数を表す。)で表される前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られるゾルを用いたことを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のプロトン交換膜。


    (10)(2)〜(9)のいずれかに記載のプロトン交換膜を有することを特徴とする電極膜複合体。


    (11)(2)〜(9)のいずれかに記載のプロトン交換膜を有することを特徴とする燃料電池。

    本発明では、前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合するので、非常に安定なシリカゾル組成物を得ることが可能である。 さらに、本発明のプロトン交換膜は、メソゲンを含む有機分子鎖及びプロトン供与性基が、ケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合し、有機分子鎖の少なくとも一部が配向してなる集合体が形成されているので、室温でのイオン伝導度が高く、かつメタノール水溶液に対する耐性が高くメタノールクロスオーバーが低減されている。 そのため、直接メタノール型燃料電池に用いた場合には、従来のプロトン交換膜より高い出力を得ることが可能である。

    [1] シリカゾル組成物
    [1−1]シリカゲルゾル組成物の前駆体 本発明のシリカゾル組成物は、メルカプト基及び/又は−(S) q −基、並びに少なくとも炭素数3以上のアルコキシ基又はアリールオキシ基を含有する加水分解性のケイ素アルコキシドからなる前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られる。 前駆体としては、下記一般式(X)及び/又は一般式(XI)で表される化合物を用いる。

    一般式(X)中、R 14及びR 15で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。 アルキル基の好ましい例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
    14及びR 15で表されるアリール基は縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜24のアリール基である。 アリール基の好ましい例としてはフェニル基、4−メチルフェニル基、3−シアノフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
    14及びR 15で表されるアルキル基及びアリール基はさらに置換基を有していてもよい。 置換基の例としては以下の基が挙げられる。

    1. アルキル基 好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i-プロピル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等である。

    2. アリール基 アリール基は縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜24のアリール基であり、例えばフェニル基、4-メチルフェニル基、3-シアノフェニル基、2-クロロフェニル基、2-ナフチル基等である。

    3. 複素環基 複素環基は縮環していてもよく、含窒素複素環基のときは環中の窒素が4級化していてもよい。 好ましくは炭素数2〜24の複素環基であり、例えば4-ピリジル基、2-ピリジル基、1-オクチルピリジニウム-4-イル基、2-ピリミジル基、2-イミダゾリル基、2-チアゾリル基等である。

    4. アルコキシ基 好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、-O(CH 2 CH 2 O)nCH 3等である。

    5. アシルオキシ基 好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基等である。

    6. アルコキシカルボニル基 好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基等である。

    7. カルバモイルオキシ基 例えば、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N-ジ-n-オクチルアミノカルボニルオキシ基、Nn-オクチルカルバモイルオキシ基等である。

    8. アルコキシカルボニルオキシ基 例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基等である。

    9. アリールオキシカルボニルオキシ基 例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p-メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、pn-ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等である。

    10. アミノ基 例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基等である。

    11. アシルアミノ基 例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5-トリ-n-オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等である。

    12. アミノカルボニルアミノ基 例えば、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等である。

    13. アルコキシカルボニルアミノ基 例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ基等である。

    14. アリールオキシカルボニルアミノ基 例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、mn-オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等である。

    15. スルファモイルアミノ基 例えば、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、Nn-オクチルアミノスルホニルアミノ基等である。

    16. アルキル及びアリールスルホニルアミノ基 例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p-メチルフェニルスルホニルアミノ基等である。

    17. スルファモイル基 例えば、N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、N-ベンゾイルスルファモイル基、N-(N'-フェニルカルバモイル)スルファモイル基等である。

    18. アルキル及びアリールスルフィニル基 例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p-メチルフェニルスルフィニル基等である。

    19. アルキル及びアリールスルホニル基 例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p-メチルフェニルスルホニル基等である。

    20. アシル基 例えば、アセチル基、ピバロイル基、2-クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、pn-オクチルオキシフェニルカルボニル基等である。

    21. アリールオキシカルボニル基 例えば、フェノキシカルボニル基、o-クロロフェノキシカルボニル基、m-ニトロフェノキシカルボニル基、pt-ブチルフェノキシカルボニル基等である。

    22. カルバモイル基 例えば、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基等である。

    23. シリル基 好ましくは炭素数3〜30のシリル基であり、例えばトリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、トリアセトキシシリル基等である。

    24. シアノ基
    25. フルオロ基
    26. メルカプト基
    27. 水酸基等が挙げられる。 これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。

    n9は2又は3を表し、複数個あるOR 14基のR 14は同じでも異なっていてもよい。 R 14のうち少なくとも一つのR 14は炭素数が3以上のアルキル基又はアリール基である。 R 14はアルキル基がより好ましく、特に好ましくは炭素数が4〜10のアルキル基である。 pは1〜3の整数を表す。
    L 1は(p+1)価の連結基を表す。 連結基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子又はアルキル基を表す。)、−SO 2 −、これらを2つ以上組み合わせてなる連結基等が挙げられる。 L 1はアルキレン基、アリーレン基及びこれらを組み合わせてなる連結基であるのが好ましい。

    一般式(X)において、−Si(OR 14 ) n9 (R 15 ) 3-n9で表される置換基は加水分解性の置換基であり、ゾル−ゲル反応において加水分解及び縮合反応により重合体を形成し、ゾル及びこれに引き続きゲルを生成しうるものである。 ゾル−ゲル反応については、例えば作花済夫著, 「ゾル−ゲル法の科学」, アグネ承風社に詳しく記載されている。

    次に下記一般式(XI)について説明する。

    一般式(XI)中、R 16及びR 19で表されるアルキル基又はアリール基は、上記R 14で表されるアルキル基又はアリール基と同義であり、好ましい例も同様である。 n9及びn13はそれぞれ2又は3を表し、複数個あるOR 16基及びOR 19基の少なくとも一つのR 16及び少なくとも一つのR 19の炭素数が3以上である。 R 17及びR 18で表されるアルキル基又はアリール基は、上記R 15で表されるアルキル基又はアリール基と同義であり、好ましい例も同様である。 L 2及びL 3で表される連結基は、L 1で表される連結基と同義であり、好ましい例も同様である。 qは2〜4の整数を表し、好ましくは2である。

    SH基又は−(S) q −基は、酸化剤によって酸化されてスルホ基に変換されうる置換基である。 変換されたスルホ基はゾル−ゲル反応の触媒となり反応を促進することができる。

    以下、本発明のシリカゾル組成物に用いる一般式(X)及び一般式(XI)で表される前駆体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。

    [1−2] シリカゾル組成物の作製法 本発明では、一般にゾル−ゲル法と呼ばれる金属アルコキシドの加水分解、及び重縮合によってゾルを得る方法を用いる。 例えば、作花済夫著, 「ゾル−ゲル法の科学」, アグネ承風社等に記載されている方法を用いることができるが、ここでは典型的な方法を述べる。 上記[1−1]に記載した前駆体を任意の溶媒に溶解し、そこに、水と酸化剤を添加することにより、前駆体に含まれるSH基及び/又は−(S) q −基が酸化剤によって酸化されてスルホ基に変換される。 生成したスルホ基はゾル−ゲル反応の触媒となり反応を促進する。 このため、従来用いてきた塩酸等の酸触媒を特に添加する必要はないが、必要に応じて添加することもできる。 ゾル−ゲル反応の進行により反応液の粘度が徐々に増し、流動性を有するゾルが得られる。

    SH基又は−(S) q −基の酸化反応に用いる酸化剤としては、「実験化学講座」, 丸善(株)等に記載されている硫黄化合物を酸化可能な酸化剤が挙げられる。 例えば、ヨウ素、臭素等のハロゲン化合物、過酢酸、3-クロロ-過安息香酸、モノ過フタル酸等の有機過酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。 酸化剤としては水溶性の酸化剤が好ましく、好ましい例としては過酸化水素、過酢酸等が挙げられる。

    ゾル−ゲル反応に用いる溶媒は、前駆体を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3-メチル-2-オキサゾリジノン、N-メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、水等を用いることができる。 中でも、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等がより好ましく、水溶性の溶媒が特に好ましい。 これらの溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。 全溶媒量は、前駆体化合物1gに対し好ましくは0.1〜100 gであり、より好ましくは1〜10 gである。

    ゾル−ゲル反応における前駆体の反応性を制御する目的で、金属原子にキレート化しうる化学改質剤を用いてもよい。 化学改質剤としては、例えばアセト酢酸エステル類(アセト酢酸エチル等)、1,3-ジケトン類(アセチルアセトン等)、アセトアセタミド類(N,N'-ジメチルアミノアセトアセタミド等)等が挙げられる。

    ゾル−ゲル反応に添加する加水分解水の量は、前駆体中のシリル基が完全に加水分解される理論量より多くても少なくてもよい。 反応液に用いられる溶媒と添加する水が分離することがなければ添加量の上限はない。 好ましくはケイ素原子に置換しているアルコキシ基に対し0.1モル当量以上であり、より好ましくは0.5モル当量以上である。

    上記酸化剤の添加量は、SH基及び/又は−(S) q −基を酸化してスルホ基に変換するための理論量に対し1〜10倍が好ましく、1〜5倍がより好ましい。

    反応液にはゾル−ゲル反応を促進させるため酸触媒として、無機又は有機のプロトン酸を用いることができる。 無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸等が挙げられ、有機プロトン酸としては、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。 これらのプロトン酸を2種以上併用することも可能である。

    ゾル−ゲル反応の反応温度は反応速度に関連し、前駆体及び酸化剤の種類、及びそれらの量に応じて選択することができる。 好ましくは−20〜150℃であり、より好ましくは0〜80℃であり、さらに好ましくは20〜60℃である。

    [2] メソゲン含有有機ケイ素化合物及びスルホン酸基含有前駆体 本発明のプロトン交換膜は、メソゲンを含む有機分子鎖及びプロトン供与性基を含む基がケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合した構造を有する。 プロトン交換膜中に含まれる上記一般式(I)で表される部分構造は、
    一般式(I)

    で表される部分構造において、R 1で表されるアルキル基、アリール基又はへテロ環基は、上記R 4で表されるアルキル基、アリール基又はへテロ環基と同義であり、A 11で表されるメソゲンを含む有機原子団は、上記A 3で表されるメソゲンを含む有機原子団と同義である。 また、m11は上記m41と同義であり、n11は上記n41と同義である。

    従って、一般式(I)は、例えば、一般式(IV)で表されるメゾゲンを含む有機ケイ素化合物のゾル−ゲル反応により形成することができる。 以下これらの有機ケイ素化合物の構造及び一般式(III)で表される部分構造を形成するための前駆体について詳しく説明する。

    [2−1] メソゲン含有有機ケイ素化合物 一般式(IV)で表される有機ケイ素化合物

    において、R

    4はアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。 R

    4で表されるアルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられ、R

    4で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、R

    4で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換又は無置換のへテロ6員環(ピリジル、モルホリノ基等)、置換又は無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基等)等が挙げられる。 また、R

    5で表されるシリル基の好ましい例としては、炭素数1〜10のアルキル基から選ばれた3つのアルキル基で置換されたシリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等)、又はポリシロキサン基(−(Me

    2 SiO)

    n H(n=10〜100)等)が挙げられる。

    5は、水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、アルキル基、アリール基の好ましい例は、上記R 4と同じである。

    3は、メソゲンを含む有機原子団であり、メソゲン基の好ましい例としては、Dietrich Demus 及び Horst Zaschkeによる 「Flussige Kristalle in Tabellen II」, 1984年, p.7−18に記載されているものが挙げられる。 中でも、下記一般式(XIII)で表されるものが好ましい。

    一般式(XIII)中、Q

    11及びQ

    12は2価の連結基又は単結合を表す。 2価の連結基としては、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−COO−、−COS−、−CONH−、−COCH

    2 −、−CH

    2 CH

    2 −、−OCH

    2 −、−CH

    2 NH−、−CH

    2 −、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−(CH

    2 )

    1

    3 −、−CH=CH−COO−、−CH=CH−CO−、−(C≡C)

    1

    3 −、これらの組合せ等が好ましく、−CH

    2 −、−CO−、−O−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、これらの組合せ等がより好ましい。 これらの2価の連結基は水素原子が他の置換基で置換された基であってもよい。 Q

    11及びQ

    12は単結合であるのが特に好ましい。

    Yは2価の4〜7員環の置換基、又はそれらから構成される縮合環の置換基を表し、m9は1〜3の整数を表す。 Yは好ましくは6員環の芳香族基、4〜6員環の飽和又は不飽和脂肪族基、5又は6員環の複素環基、又はそれらの縮合環である。 Yの好ましい具体例としては、以下に示す(Y−1)〜(Y−28)で表される置換基、及びこれらの組合せが挙げられる。 これらの置換基の中でより好ましくは(Y−1)、(Y−2)、(Y−18)、(Y−19)、(Y−21)及び(Y−22)であり、さらに好ましくは(Y−1)、(Y−2)及び(Y−21)である。

    有機ケイ素化合物は、分子の配向性を高めるために、メソゲンとともに炭素数5以上のアルキル基又はアルキレン基を含むのが好ましい。 アルキル基又はアルキレン基の炭素数は5〜25が好ましく、6〜18がより好ましい。 有機ケイ素化合物に含まれるアルキル基又はアルキレン基は置換基を有していてもよい。 好ましい置換基としては以下の基が挙げられる。

    1. アルキル基 アルキル基としては、例えば、上述の[1]シリカゲルゾル組成物のところで開示したアルキル基等である。
    2. アリール基 アリール基としては、例えば、上述の[1]シリカゲルゾル組成物のところで開示したアルキル基等である。
    3. 複素環基 複素環基としては、例えば、上述の[1]シリカゲルゾル組成物のところで開示したアルキル基等である。

    4. アルコキシ基 より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基等である。
    5. アシルオキシ基 より好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等である。
    6. アルコキシカルボニル基 より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等である。
    7. シアノ基8. フルオロ基9. アルコキシカルボニル基 Yは、炭素−炭素又は炭素−酸素結合を形成し重合体を生成しうる重合性基であり、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エチニル基、アルキレンオキシド基(エチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基等)等が挙げられる。 中でもアクリロイル基、メタクリロイル基、エチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基等が好ましい。

    一般式(IV)中、シリル基(−Si(O−*) m41 (R 4 ) 3-m41 、又は−Si(OR 7 ) m5 (R 6 ) 3-m5 )は、有機原子団A 3を構成するメソゲン基、アルキル基又はアルケニル基に直接結合するか、連結基を介して結合する。 連結基は炭素数1〜15のアルキレン基であるか、それらのアルキレン基とメソゲンの連結基Q 11 、Q 12との組合せであるのが好ましい。 シリル基はアルキレン基に結合しているのが好ましい。
    m41はそれぞれ3であるのが好ましく、n41はそれぞれ1〜3であるのが好ましい。 以下に有機ケイ素化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。



    [2−2] プロトン供与性基含有前駆体 本発明のプロトン交換膜では、好ましくは上記一般式(III)で表される部分構造によりプロトン供与性基E 1を含む基がケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合する。 一般式(III)で表される部分構造は、下記一般式(IX)で表される化合物のゾル−ゲル反応により形成することができる。

    一般式(IX)において、プロトン供与性基E 2は、pKa4以下の酸残基が好ましい。 プロトン供与性基E 2の好ましい例としては、−SO 3 H、−P(O)(OH)、−OP(O)(OH) 2 、−COOH等が挙げられ、特に好ましい例としてはpKaの低い−SO 3 H基が挙げられる。 R 12 、R 13 、m8及びn8は、それぞれ一般式(IV)におけるR 4 、m41及びn41と同義である。 連結基B 4は、脂肪族基及び/又は芳香族基を含む有機原子団で構成され、それらの例としては炭素数1〜12のアルキレン基、フェニレン基等、これらを組み合わせた基等が挙げられ、これらの連結基の間に一般式(XIII)中のQ 11で挙げた2価の連結基を含んでいてもよい。 連結基B 4はさらに置換基を有していてもよい。

    (1)一般式(IX)で表される前駆体は、それ自身の酸で縮合しゲル化し易いため、下記一般式(VI)及び/又は(VII)で表されるスルフィド又はジスルフィド化合物を含む溶液を使用時に酸化処理し、本発明のプロトン交換膜作製のための前駆体ゾルとして用いるのが好ましい。

    一般式(VI)及び(VII)中、B 2及びB 3はそれぞれ脂肪族基及び/又は芳香族基を含む連結基を表し、R 8及びR 10はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、m6及びm7はそれぞれ1〜3の整数を表し、n6及びn7はそれぞれ1〜4の整数を表し、R 9及びR 11はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、m6又はm7が2以上のときR 9又はR 11はそれぞれ同一でも異なってもよい。

    より具体的には、一般式(VI)及び(VII)におけるB 2及びB 3 、R 8及びR 10 、R 9及びR 11 、m6及びm7、並びにn6及びn7は、それぞれ一般式(IX)におけるB 4 、R 12 、R 13 、m8及びn8と同義である。 また、一般式(III)におけるE 1 、B 1 、R 3 、m3及びn3は、それぞれ一般式(IX)におけるE 2 、B 4 、R 12 、m8及びn8と同義である。 一般式(VI)及び(VII)のB 2及びB 3として特に好ましい連結基は、プロピレン基、メチレン基及びフェニレン基であり、少なくとも一つのR 9及び少なくとも一つのR 11が炭素数4以上であるのが好ましい。 m6及びm7はそれぞれ2又は3が好ましく、n6及びn7はそれぞれ1が好ましい。

    (2)また、メルカプト基及び/又は−(S) q −基、並びに少なくとも炭素数3以上のアルコキシ基又はアリールオキシ基を含有する加水分解性のケイ素アルコキシドからなる前駆体を水及び酸化剤の存在下で加水分解及び重縮合して得られるゾルを本発明のプロトン交換膜作製のための前駆体ゾルとして用いるのも好ましい。 ケイ素アルコキシドからなる前駆体としては、具体的には、上記(X)及び/又は一般式(XI)で表される化合物を用いることができる。

    上記(1)及び/又は(2)に記載の一般式(VI)、(VII)、(X)及び/又は(XI)で表される化合物としては、例えば、上述の[1−1]シリカゲルゾル組成物の前駆体のところで述べた化合物や下記化合物等が該当する。 さらに、一般式(XX)で表される化合物も採用できる。 ここで、一般式(XX)中、L 4は2価の連結基を表し、例えば、炭素数1〜15(好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基、炭素数6〜15(好ましくは6〜10)のアリーレン基、またはそれらの組み合わせが好ましい。
    もちろん、例示した化合物以外を除外するものでないことは言うまでもない。

    [3] 有機−無機ハイブリッド型プロトン交換膜の作製法
    [3−1] ゾル−ゲル法 本発明では、一般にゾル−ゲル法と呼ばれる金属アルコキシドの加水分解、縮合、乾燥、(場合によっては焼成)等によって固体を得る方法を用いる。 例えば、特開2000−272932号公報、特開2000−256007号公報、特開2000−357524号公報、特許第3103888号公報及び「Electrochimica Acta」, 1998年, 第43巻, 第10−11号, p.1301等に記載されている方法を用いることができる。 また、上記[1−2]で述べた作製法を利用することができる。 一般には、縮合のために酸触媒を用いるが、上記[1−1]で述べた化合物や[2−2]で述べた素化合物を前駆体として用いる本発明では、[1−2]で述べたとおり前駆体自身が酸触媒となるため、別途酸を添加しなくてもよい。

    本発明のプロトン交換の典型的な作製方法は、一般式(VI)及び/又は(VII)で表される化合物を任意の溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)に溶解した後酸化剤を添加し、-SH基又は-SS-基を-SO 3 H基に変換する。 得られたゾルを、任意の溶媒に溶解した[2−1]に記載した有機ケイ素化合物と混合し、アルコキシシリル基の加水分解と縮重合(以後「ゾル−ゲル」反応という)を進行させる。 あるいは、一般式一般式(VI)及び/又は(VIII)で表される化合物と[2−1]に記載した有機ケイ素化合物を任意の溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)に溶解した後酸化剤を添加し、-SH基又は-SS-基を-SO 3 H基に変換後、ゾル−ゲル反応を進行させる。 その際必要に応じ加熱してもよい。 反応混合液(ゾル)の粘度は、徐々に増し、溶媒を留去、乾燥すると固体(ゲル)が得られる。 流動性がある段階で、ゾルを所望の容器に流し込むか、塗布した後、溶媒留去、乾燥することにより膜状の個体を得ることができる。 生成するSi-O−Si結合のネットワークをより緻密にするため、必要に応じ乾燥後さらに加熱することも可能である。

    ゾル−ゲル反応の進行を速める目的で酸触媒を用いてもよい。 酸触媒としては無機又は有機のプロトン酸が好ましい。 無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸、リン酸類(H 3 PO 4 、H 3 PO 3 、H 427 、H 5310 、メタリン酸、ヘキサフルオロリン酸等)、硼酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸、固体酸(タングストリン酸、タングステンペルオキソ錯体等)等が挙げられる。 有機プロトン酸としては、リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30のリン酸エステル類であり、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステル等)、亜リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30の亜リン酸エステル類であり、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジドデシルエステル等)、スルホン酸類(例えば炭素数1〜15のスルホン酸類であり、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヘキサフルオロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等)、カルボン酸類(例えば炭素数1〜15のカルボン酸類であり、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、置換安息香酸等)、イミド類(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸、トリフルオロメタンスルホニルトリフルオロアセトアミド等)、ホスホン酸類(例えば炭素数1〜30のホスホン酸類であり、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、1,5−ナフタレンビスホスホン酸等)等の低分子化合物、又はナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート(特開2001−114834号公報)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(特開平6−93111号公報)、スルホン化ポリエーテルスルホン(特開平10−45913号公報)、スルホン化ポリスルホン(特開平9−245818号公報)等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物等のプロトン酸部位を有する高分子化合物が挙げられる。 これらを2種以上併用することも可能である。

    ゾル−ゲル反応における前駆体の反応性を制御する目的で、金属原子にキレート化しうる化学改質剤を用いてもよい。 化学改質剤としては、例えばアセト酢酸エステル類(アセト酢酸エチル等)、1,3−ジケトン類(アセチルアセトン等)、アセトアセタミド類(N,N'−ジメチルアミノアセトアセタミド等)等が挙げられる。
    ゾル−ゲル反応の反応温度は反応速度に関連し、前駆体の反応性と選択した酸の種類及び量に応じて選択することができる。 好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは0℃〜80℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。

    [3−2] 重合性基Yによる重合 重合性基Yが、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エチニル基等の炭素−炭素不飽和結合である場合、大津隆行・木下雅悦共著, 「高分子合成の実験法」,化学同人や大津隆行著, 「講座重合反応論1ラジカル重合(I)」, 化学同人に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合法を用いることができる。 ラジカル重合法として、熱重合開始剤を用いる熱重合法と光重合開始剤を用いる光重合法を使用することができる。 熱重合開始剤の好ましい例としては、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が挙げられ、光重合開始剤の好ましい例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号及び同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許244828号明細書)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許3046127号及び同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許35493676号明細書)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報及び米国特許4239850号明細書)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書)が挙げられる。

    重合開始剤は、上記[3−1]のゾル−ゲル反応前に反応液に添加しても、ゾル−ゲル反応後反応液を塗布する直前に添加しても良い。 重合開始剤の添加量はモノマー総量に対し好ましくは0.01〜20質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。
    Yで表される重合性基がエチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基等のアルキレンオキシド基の場合、重合触媒としてはプロトン酸(上記[3−1]で挙げたプロトン酸)やルイス酸(好ましくは三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)を用いることができる。 プロトン酸としてゾル−ゲル反応のプロトン酸を用いる場合には、重合性基Yの重合用に特に添加する必要はない。 重合触媒を添加する場合には、塗布する直前に反応液に添加するのが好ましい。 通常、重合は塗布後に加熱又は光照射により膜中で進行させる。 これにより分子の配向状態が固定され、また膜の強度も向上する。

    [3−3] 他のケイ素化合物との併用 材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて、上記[2−1]及び[2−2]に記載した2種以上の前駆体を混合して用いてもよい。 例えば、一般式(IV)で表される前駆体におけるm41又はm5がそれぞれ3と2の化合物を混合するか、一般式(IX)で表される前駆体におけるm8が3と2の化合物を混合するか、あるいはこれらを組み合わせることよってより柔軟な膜を形成することができる。 これらの前駆体にさらに他のケイ素化合物を添加してもよい。 他のケイ素化合物の例としては、下記一般式(XII)で表される有機ケイ素化合物又はそれらをモノマーとするポリマーが挙げられる。
    一般式(XII)

    一般式(XII)中、R 20は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R 21は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、m10は0〜4の整数を表し、m10又は4−m10が2以上のとき、R 20又はR 21はそれぞれ同一でも異なってもよい。 また、R 20又はR 21の置換基により互いに連結し、多量体を形成してもよい。
    一般式(XII)のm10は0又は1が好ましく、R 20はアルキル基が好ましい。 さらにm10が0のときの好ましい化合物の例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等が挙げられ、m10が1のときの好ましい化合物の例としては以下の化合物が挙げられる。

    一般式(XII)で表される化合物を併用する場合、前駆体の有機ケイ素化合物に対して1〜50モル%の範囲で用いるのが好ましく、1〜20モル%の範囲で用いるのがより好ましい。

    [3−4] 可塑剤化合物 本発明のプロトン交換膜では、一般式(VIII)で表される、ゾル−ゲル反応において変化しない化合物を可塑剤として添加することにより、膜に柔軟性を付与することができる。 添加量は、一般式(IV)で表される化合物のモル数に対し、1モル%から50モル%であり、好ましくは5モル%から20モル%である。

    一般式(VIII)中、A 5はメソゲンを含む有機原子団であり、[2−1]で述べた一般式[IV]で表されるメソゲン含有有機ケイ素化合物中のA 3とそれぞれ同義であり、そこに含まれるメソゲンは、本発明のプロトン交換膜作成時に用いるメソゲン含有有機ケイ素化合物中のメゾゲンと同一のものが特に好ましい。 Z 1はゾル−ゲル反応において変化しない置換基または水素原子を表し、好ましい置換基の例としては、前述[2−1]で述べた
    1.アルキル基、2.アリール基、3.複素環基、4.アルコキシ基、5.アシルオキシ基、6.アルコキシカルボニル基、7.シアノ基、8.フルオロ基、9.アルコキシカルボニル基の他に、水酸基、及びカルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基などの酸残基、ビニル基などが挙げられ、これらの中で特に水素原子、水酸基、酸残基、ビニル基が好ましい。 n 81はそれぞれ1〜6の整数を表し、1または2が特に好ましい。 n 82は0〜4の整数を表し、1または2が特に好ましい。 Y 2は重合により炭素−炭素結合又は炭素い−酸素結合を形成しうる重合性基を表し、[2−1]で述べた一般式[IV]で表される有機ケイ素化合物中のY 1と同義であり、特に、本発明のプロトン交換膜作成時に用いるメソゲン含有有機ケイ素化合物のY 1と同一のものが好ましい。 n 82が2以上の時、Z 1は同一でも異なってもよい。

    以下に、一般式(VIII)で表される化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。

    [3−5]高分子化合物の添加 本発明のプロトン交換膜には、(1)膜の機械的強度を高める目的、及び(2)膜中の酸濃度を高める目的で種々の高分子化合物を含有させてもよい。 (1)機械的強度を高める目的には、分子量10,000〜1,000,000程度で本発明のプロトン伝導材料と相溶性のよい高分子化合物が適する。 例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリなど、及びこれらの共重合体が好ましく、含有量としては1〜30質量%の範囲が好ましい。 (2)酸濃度を高める目的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などのプトロン酸部位を有する高分子化合物などが好ましく、含有量としては1〜30質量%の範囲が好ましい。

    [3−6] 製膜方法 本発明において、ゾル−ゲル反応混合物を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板、高分子フイルム、反射板等を挙げることができる。 高分子フイルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系高分子フイルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のエステル系高分子フイルム、PTFE(ポリトリフルオロエチレン)等のフッ素系高分子フィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。 塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。

    有機ケイ素化合物前駆体を用いたゾル−ゲル反応は、ゾル−ゲル反応混合物を塗布した後、有機ケイ素化合物の有機部位が配向しながら進行する。 ゾル−ゲル組成物の配向を促進させるために、様々な手法を採用することができる。 例えば、前述の支持体等に事前に配向処理を施すことができる。 配向処理としては種々の一般的な方法を採用できるが、好ましくは各種ポリイミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等の液晶配向層を支持体等の上に設け、ラビング等の配向処理行う方法、支持体上のゾル−ゲル組成物に磁場や電場等を印加する方法、加熱する方法等を用いることができる。

    有機-無機ハイブリッド型プロトン交換膜の配向状態は、偏光顕微鏡により光学異方性を観察することにより確認することができる。 観察方向は任意でよいが、クロスニコル下でサンプルを回転させ、明暗が切り替わる部分があれば異方性があるといえる。 配向状態は異方性を示す状態であれば特に制限はない。 液晶相と認識できるテクスチャーが観察される場合は相を特定することができ、リオトロピック液晶相でもサーモトロピック液晶相でもよい。 配向状態はリオトロピック液晶相の場合はヘキサゴナル相、キュービック相、ラメラ相、スポンジ相、ミセル相が好ましく、特に室温でラメラ相もしくはスポンジ相を示すことが好ましい。 サーモトロピック液晶相ではネマチック相、スメクチック相、クリスタル相、カラムナー相およびコレステリック相が好ましく、特に室温でスメクチック相、クリスタル相を示すことが好ましい。 また、これらの相における配向が固体状態で保持されている配向状態も好ましい。 ここでいう異方性とは分子の方向ベクトルが等方的ではない状態をいう。

    支持体より剥離して得られる有機−無機ハイブリッド型プロトン交換膜の厚さは、10〜500μmが好ましく、25〜100μmが特に好ましい。

    [3−7] 細孔膜への充填 本発明のプロトン伝導材料を、多孔質基材の細孔に含浸させて膜を形成することが可能である。 細孔を有する基材上に本発明のゾル−ゲル反応液を塗布含浸させるか、基材をゾル−ゲル反応液に浸漬し、細孔内にプロトン伝導材料を満たして膜を形成してもよい。 細孔を有する基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミドなどが挙げられる。

    [3−8]プロトン交換膜への触媒金属の添加 本発明のプロトン交換膜には、アノード燃料とカソード燃料の酸化還元反応を促進させる活性金属触媒を添加してもよい。 これにより、プロトン交換膜中に浸透した燃料が他方極に到達すること無くプロトン交換膜中で消費され、クロスオーバーを防ぐことができる。 用いられる活性金属種は、電極触媒として機能するものであれば制限は無いが、白金または白金を基にした合金が適している。

    [4] 燃料電池
    [4−1]電池の構成 本発明のプロトン交換膜を用いた燃料電池について説明する。 図1は電極膜複合体(以下「MEA」という)10の構成を示す。 MEA10は、プロトン交換膜11と、それを挟んで対向するアノード電極12及びカソード電極13を備える。
    アノード電極12とカソード電極13は、多孔質導電シート(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。 触媒層12b、13bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。 触媒層12b、13bをプロトン交換膜11に密着させるために、多孔質導電シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものを、プロトン交換膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm 2 )で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、プロトン交換膜11に転写しながら圧着した後、多孔質導電シート12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。

    [4−2]触媒材料 アノード電極及びカソード電極には、カーボン材料に白金などの活性金属粒子を担持した触媒が用いられる。 通常用いられる活性金属の粒子径は、2〜10nmの範囲であり、粒子径が小さい程単位質量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが、小さすぎると凝集させずに分散させることが難しくなり、2nm程度が限度といわれている。
    水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極(水素極)に比べ、カソード極(空気極)が大きい。 これは、アノード極に比べ、カソード極の反応(酸素の還元)が遅いためである。 酸素極の活性向上を目的として、Pt-Cr、Pt-Ni、Pt-Co、Pt-Cu、Pt-Feなどのさまざまな白金基二元金属を用いることができる。 アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制することが重要である。 この目的のために、Pt-Ru、Pt-Fe、Pt-Ni、Pt-Co、Pt-Moなどの白金基二元金属、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Co、Pt-Ru-Fe、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Cu、Pt-Ru-Sn、Pt-Ru-Auなどの白金基三元金属を用いることができる。
    活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC-72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。

    [4−3]触媒層の構成と材料 触媒層の機能は、(1)燃料を活性金属に輸送すること(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンをプロトン伝導膜に輸送すること、である。 (1)のために触媒層は、液体及び気体燃料が奥まで透過できる多孔質性であることが必要である。 (2)は[3−2]で述べた活性金属触媒が、(3)は同じく[3−2]で述べたカーボン材料が担う。 (4)の機能を果たすために、触媒層にプロトン伝導材料を混在させる。

    触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、プロトン伝導膜に用いられる酸残基を有する高分子化合物(例えばナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性芳香族高分子のスルホン化物など)、酸が固定された有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料(特許文献1〜8、非特許文献1〜3)などが好ましく用いられる。 本発明のプロトン交換膜に用いる前駆体をゾル−ゲル反応して得られるプロトン伝導材料を触媒層に用いることも可能である。 この場合、プロトン伝導膜と同種の材料であるため、プロトン伝導膜と触媒層との密着性が高まり有利である。
    活性金属の使用量は、0.03〜10mg/cm 2の範囲が電池出力と経済性の観点から適している。 活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の質量に対して、1〜10倍が適している。 プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの質量に対して、0.1〜0.7倍が適している。

    [4−4] 多孔質導電シート(電極基材)
    電極基材、拡散層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能及び水がたまりガスの拡散が悪化するのを防ぐ役割を担う。 通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにPTFE処理を施したものを使用することもできる。

    [4−5] MEA(電極膜複合体)の作成
    MEAの作製には、次の4つの方法が好ましい。
    (1)プロトン交換膜塗布法:活性金属担持カーボン、プトロン伝導材料、溶媒を基本要素とする触媒ペースト(インク)をプロトン交換膜の両側に直接塗布し、多孔質導電シートを(熱)圧着して5層構成のMEAを作製する。
    (2)多孔質導電シート塗布法:触媒ペーストを多孔質導電シート表面に塗布し、触媒層を形成させた後、プロトン交換膜と圧着し、5層構成のMEAを作製する。
    (3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層を形成させた後、プロトン交換膜に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
    (4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクをプロトン交換膜、多孔質導電シートあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該膜に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。 触媒層を形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEAを作製する。

    [4−6] 燃料及び供給方法 固体高分子膜を用いる燃料電池の燃料として用いることのできるのは、アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタンなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられる。 カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
    直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度3〜64質量%のメタノール水溶液が使用される。 アノード反応式(CH 3 OH+H 2 O→CO 2 +6H + +6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64質量%に相当する。 メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の質量及び体積が小さくできる利点がある。 しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールがプロトン伝導膜を透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象、が顕著となり、出力が低下するため、用いるプロトン伝導膜のメタノール透過性により、最適濃度が決められる。 直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2O 2 +6H + +6e→H 2 O)であり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。

    上記、アノード燃料及びカソード燃料を、それぞれの触媒層に供給する方法には、(1)ポンプ等の補機を用いて強制循環させる方法(アクティブ型)と、(2)補機を用いない方法(例えば、液体の場合には毛管現象や自然落下により、気体の場合には大気に触媒層を晒し供給するパッシブ型)の2通りがあり、アノード及びカソードに対し、これらを組み合わせることも可能である。 組み合わせを採用すると、アクティブ型のカソードで生成する水を循環させることにより燃料として高濃度のメタノールが使用可能、空気供給による高出力化が可能であるなどの利点を利用しつつ、燃料供給系を備える事により小型化を容易にすることができる。 アクティブ型では、小型化が可能な利点を利用しつつ、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくくなるのをより効果的に防止することができる。

    [4−7] セルのスタッキング 燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。 スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」及び、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレーターを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。 前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。 この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。

    [5]燃料電池のアプリケーション 燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能である、充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。 例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイなどが挙げられる。 好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動(アシスト)自転車などが挙げられる。 また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。 さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。

    図2は燃料電池単セルの一例を示す。 燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17及びパッキン14とを有する。 アノード極側のセパレータ21にはアノード極側開口部15が設けられ、カソード極側のセパレータ22にはカソード極側開口部16が設けられている。 アノード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料又はアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。

    本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。

    実施例1
    (1)前駆体(T−3)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−3) 3.22 gをメタノール10.3 gに溶解し、30%過酸化水素水5gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−3)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-1)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で10日間安定(ゲル化せずに均一系の溶液)であった。

    (2)前駆体(T−1)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−1) 2.94 gをメタノール9.0 gに溶解し、30%過酸化水素水6gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−1)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-2)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で7日間安定であった。

    (3)前駆体(T−15)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−15) 3.65 gを2-プロパノール12 gに溶解し、30%過酸化水素水6gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−15)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-3)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で10日間安定であった。

    (4)前駆体(T−4)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−4) 2.64 gをメタノール6gに溶解し、30%過酸化水素水6gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−4)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-4)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で6日間安定であった。

    (5)前駆体(T−2)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−2) 2.36 gをメタノール6gに溶解し、30%過酸化水素水6gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−2)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-5)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で5日間安定であった。

    (6)前駆体(T−9)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−9) 3.56 gを2-プロパノール10 gに溶解し、30%過酸化水素水6gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−9)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-6)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で5日間安定であった。

    (7)前駆体(T−20)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−20) 3.22 gをメタノール8gに溶解し、30%過酸化水素水10 gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−20)の-SS-結合の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-7)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で10日間安定であった。

    (8)前駆体(T−25)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−25) 2.63 gをメタノール6gに溶解し、30%過酸化水素水7gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−25)の-SS-結合の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-8)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で6日間安定であった。

    (9)前駆体(T−3)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−3) 3.22 gを20%エタノール水6gに溶解し、9%過酢酸溶液38 gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−3)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-9)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で10日間安定であった。

    (10)前駆体(T−3)及び前駆体(T−4)を用いたシリカゾル組成物の調製 前駆体(T−3) 3.22及び前駆体(T−4) 2.64 gをメタノール15 gに溶解し、30%過酸化水素水10 gを添加した。 この混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRにより前駆体(T−3)及び前駆体(T−4)の-SH基の消失と-SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL-10)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で8日間安定であった。

    (11)前駆体(T−29)のみを用いたシリカゾルの調製(比較例1)
    前駆体として下記構造の前駆体(T−29)のみ 1.96 gをメタノール10.3 gに溶解し、30%過酸化水素水5gを添加した。 この混合物を室温で1時間撹拌すると固体の析出物が生成し、安定なゾル液は得られなかった。

    (12)前駆体(T−30)のみを用いたシリカゾルの調製(比較例2)
    前駆体として下記構造の前駆体(T−30)1.8 gをメタノール10.3 gに溶解し、30%過酸化水素水5gを添加した。 この混合物を室温で30分間撹拌すると固体の析出物が生成し、安定なゾル液は得られなかった。

    (13)前駆体(T−29)及び前駆体(T−30)を用いたシリカゾルの調製(比較例3)
    前駆体として前駆体(T−29)1.96 g及び前駆体(T−30)1.8 gをメタノール20.6 gに溶解し、30%過酸化水素水10 gを添加した。 この混合物を室温で10分間撹拌すると固体の析出物が生成し、安定なゾル液は得られなかった。

    (結果)
    以上のように本発明のシリカゾル組成物は、比較例のシリカゾル組成物と比べ経時によるゲル化又は固体の析出が少なく非常に安定であることがわかった。

    実施例2
    有機ケイ素化合物S−1、S−10及びS−13を以下のスキーム1〜3に示す工程により合成した。
    (1) S−1の合成(スキーム1)

    (1−1) 中間体M−2の合成 p−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール(M−1、関東化学(株)製)(24.6 g, 100 mmol)をDMF100 mlに溶解し、炭酸カリウム25 gを加え、80 ℃に加熱攪拌しながら、11−ブロモ−1−ウンデセン(24.5 g, 105 mmol)を10分間で滴下した。 3時間加熱攪拌した後、反応混合物を300 mlの水に注ぎ、結晶を捕集した。 得られた粗結晶をメタノールで再結晶し、36.4 gのM−2を得た。

    (1−2) S−1の合成 中間体M−2(3.99 g, 10 mmol)とトリエトキシシラン(1.8 g, 11 mmol)を反応容器中でトルエンに溶解し、反応容器内を窒素置換した。 反応液を80℃に保ち、塩化白金酸(5mg)を加え、3時間加熱した。 反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.1 gのS−1(無色油状物)を得た。

    (2) S−10の合成(スキーム2)

    (2−1) 中間体M−5の合成 4,4'−ジヒドロキシ−ビフェニルモノアセチル体(M−3)(45.6 g, 200 mmol)をDMF1000 mlに溶解し、炭酸カリウム20 gを添加し、そこに11−ブロモ−1−ウンデセン(47.2 g, 200 mmol)を滴下した。 反応液を80℃で5時間加熱し、室温まで冷却した後、水に注ぎ、析出した結晶をろ集した。 粗結晶を加熱したメタノールで洗浄、乾燥後、72 gのM−4を得た。 M−4(50.8 g, 133.5 mmol)をメタノール100 mlに分散させ、水酸化カリウム水溶液(KOH12 g/水10 ml)を加え、40℃で1時間、80℃で20分間加熱した後、反応液を水に注ぎ、析出した結晶をろ過し、加熱したメタノールで洗浄、乾燥し44 gのM−5を得た。

    (2−2) 中間体M−7の合成 M−5(20.3 g, 60 mmol)を塩化メチレン400 mlに溶解し、0.5Mの炭酸水素ナトリウム水溶液120 mlを添加し、攪拌しながらm−クロロ過安息香酸(純度69%, 16.5 g, 66 mmol)を10分間で添加した。 7時間攪拌した後、反応液に水と少量の亜硫酸水素ナトリウムを加え、水洗し、塩化メチレンを留去して粗結晶を得た。 粗結晶を加熱したアセトニトリルで洗浄し、12 gのM−6を得た。 次にM−6(11 g, 31 mmol)をジメチルホルムアミド50 mlに溶解し、10 gの炭酸カリウムを加え、攪拌しながらヨウ化アリル(5.2 g, 31 mmol)を滴下した。 室温で2時間攪拌した後、50℃で1時間攪拌した。 反応液を水に注ぎ、析出した結晶をメタノールで再結晶し、12.1 gのM−7を得た。

    (2−3) S−10の合成 M−7(5g, 12.7 mmol)とトリエトキシシラン(3.13 g, 19.05 mmol)をトルエン50 mlに溶解し、80℃、窒素気流中で塩化白金酸10 mgを添加した。 反応液を80〜90℃に保ち1時間反応させた後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3.2 gのS−10を得た。

    (3) S−13の合成(スキーム3)

    (3−1) 中間体M−11の合成 4,4'−ジヒドロキシビフェニルM−8(76.2 g, 410 mmol)をジメチルアセトアミド400 mlに溶解し、炭酸カリウム(42.2 g)とヨウ化カリウム(24.1 g)を加えたところに、8−クロロオクタノール(47.2 g, 287 mmol)を添加した。 反応液を110℃で5時間攪拌し、室温に戻した後、反応液を水に注ぎ、析出した結晶をろ過した。 得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、63.8 gのM−9を得た。 得られたM−9(10 g, 31.8 mmol)をジメチルアセトアミド40 mlに溶解し、炭酸カリウム(3.3 g)を添加し、50℃で攪拌しながら、ヨウ化物M−10 (7.42 g, 35 mmol)を滴下した。 80℃で3時間反応を行った後、反応混合物を水に注ぎ、得られた粗結晶をアセトニトリルで2回再結晶し、11.7 gのM−11を得た。

    (3−2) 中間体M−12の合成 M−11(10 g, 24.2 mmol)を脱水テトラヒドロフランに溶解し、60℃に加温し、攪拌しながら水素化ナトリウム(60%in oil)(1.2 g, 30 mmol)を少しずつ添加すると発泡した。 発泡が収まった後、ヨウ化アリル(5.4 g, 32.2 mmol)を5分間で滴下した。 反応混合物を60℃で3時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、カラムクロマトグラフィーにより精製したところ、10.6 gのM−12(白色固体)を得た。

    (3−3) S−13の合成 M−12(10 g, 22 mmol)とトリエトキシシラン(10.9 g, 66 mmol)をトルエン50 mlに溶解し、80℃、窒素気流中で塩化白金酸100 mgをベンゾニトリル3mlに溶解した溶液を滴下した。 反応液を80〜90℃に保ち30分間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、5.2 gのS−13(無色粘性液体)を得た。

    (4)S-25の合成有機ケイ素化合物S-25を以下のスキーム4に示す工程により合成した。
    (スキーム4)

    (4−1) 中間体M-4の合成
    4、4'-ジヒドロキシナフタレンM-14 (23,5 g、143 mmol) をジメチルアセトアミド 8 mlに溶解し、炭酸カリウム (11.1 g、80 mmol) とヨウ化カリウム(6.7 g)を加えたところに、8-クロロオクタノール (71.8 g、72 mmol) を添加した。 反応液を110℃で9時間攪拌し室温に戻した後、反応液を水に注ぎ析出した結晶をろ過した。 得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、16.3 gのM-15を得た。 得られたM-15 (10 g、34.7 mmol) をジメチルアセトアミド40 mlに溶解し、炭酸カリウム (9.6 g) を添加し、50℃で攪拌しながらヨウ化物M-16 (9.4 g、41.6 mmol) を滴下した。 100℃で4時間反応を行った後、反応混合物を水に注ぎ、得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、4.2 gのM-17を得た。

    (4−2)中間体M-5の合成
    M-17 (3.6 g、9.4 mmol) を脱水テトラヒドロフランに溶解し、60℃に加温し攪拌しながら水素化ナトリウム (60%in oil) (0.5 g、12.2 mmol) を少しずつ添加すると発泡した。 発泡が収まった後、ヨウ化アリル(2.4 g、14.1 mmol) を滴下した。 反応混合物を60℃で3時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、カラムクロマトグラフィーにより精製したところ、2.1 のM-18を得た。

    (4−3) S-25の合成
    M-18 (1.5 g、3.4 mmol) とトリエトキシシラン (2.4 g、14.3 mmol) をトルエン10 mlに溶解し、80℃、窒素気流中で塩化白金酸10 mgをベンゾニトリル0.5 mlに溶解した溶液を滴下した。 反応液を80℃で1時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.76 gのS-25を得た。

    (5)S-26の合成有機ケイ素化合物S-26を以下のスキーム4に示す工程により合成した。
    (スキーム5)

    (5−1) 中間体M-24の合成 テトラブチルアンモニウムブロミド (3.0 g) を50%水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、3-エチル-3-オキセタンメタノールM-19 (19 g、0.16 mol) と1、8-ジブロモオクタンM-20 (136 g、0.5 mol) を添加した。 反応液を加熱還流下3.5時間攪拌した後、反応混合物を氷冷し、水600 mlを加え、酢酸エチルで抽出した。 減圧蒸留により、過剰のブロミドM-20を除去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、36 gのM-21を得た。 得られたM-21 (33 g、0.107 mol) をジメチルアセトアミド120 mlに溶解し、4-ヒドロキシ安息香酸エチルM-22 (17 g、0.102 mol)と炭酸カリウム (23 g) を添加した。 80℃で8時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、カラムクロマトグラフィーで精製したところ、35 gのM-23を得た。 得られたM-23 (35.4 g、90.2 mmol)をエタノール60mlに溶解し、水酸化ナトリウム (7.2 g、180 mmol) と水20mlを加え、60℃で3時間攪拌した。 反応混合物に濃塩酸 (15.4 ml、85.8 ml/mol) を加え中和した後、酢酸エチルで抽出し、カラムクロマトグラフィーで精製し、33 gのM-24を得た。

    (5−2) 中間体M-26の合成 ジヒドロキシビフェニルM-25 (25 g、134 mmol) をアセトン100 mlに溶解し、炭酸カリウム (20 g、145 mmol) 加え、60℃で攪拌しながら、アリルブロミド (16.2 g、134 mmol) をアセトン100 mlで溶解した溶液を滴下した。 60℃で7時間攪拌した後、析出した塩をろ過により除去した。 濾液に、水、希塩酸および塩化ナトリウムを加え酢酸エチルで抽出し、濃縮して得られた粗結晶をエタノールで再結晶し、6 gのM-26を得た。

    (5−3) 中間体M-27の合成
    M-24 (10.5 g、31.2 mmol) をクロロホルム100 mlに溶解し、M-26 (6.4 g、28.4 mmol)とジメチルアミノピリジン (5.2 g、42.6 mmol) を加えた。 反応液を0℃に冷やした後、ジシクロヘキシルカルボジイミド (5.8 g、45.4 mmol) をクロロホルム20 mlで溶解した溶液を滴下し、0℃で1時間攪拌した。 析出した塩をろ過した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、11.9 gのM-27を得た。

    (5−4) S-26の合成
    M-27 (5.7 g、10 mmol) とトリエトキシシラン (5.0 g、30 mmol) をトルエン25 mlに溶解し、80℃、窒素気流中で塩化白金酸17 mgをベンゾニトリル0.5 mlに溶解した溶液を滴下した。 反応液を80℃で1時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3.2 gのS-26を得た。

    実施例3
    1. プロトン交換膜の作製
    (1) プロトン交換膜(E−1)の作製 T−3(1.94 g)をメタノール(6.2 g)に溶解し、30%過酸化水素水(2g)を添加した。 混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRによりT−3の−SH基消失と−SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL−1)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で5日間安定であった。
    S−13(0.4 g)を溶解した2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(1.2 ml)の溶液に、SOL−1(1.1 g)及びキシレン(0.2 ml)を添加し、50℃で3時間加熱攪拌した。 当該混合物をポリイミド膜(ユーピレックス−75S、宇部興産(株)製)上に流延し、室温で24時間乾燥した後、固化した塗布物をポリイミド膜より剥離し、厚さ110μmの白色の膜を得た。 偏光顕微鏡により光学異方性のある微細なドメインを確認した。 これによりS−13のメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることがわかった。

    (2) プロトン交換膜(E−2)の作製 T−1(1.0 g)をメタノール(2.4 g)に溶解し、30%過酸化水素水(1.2 g)を添加した。 混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRによりT−1の−SH基消失と−SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL−2)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で3日間安定であった。
    前駆体S−21(0.455 g)を溶解したイソプロパノール(1ml)溶液に、SOL−2(0.86 g)及びキシレン(0.2 ml)を添加し、50℃で2時間加熱攪拌した。 当該混合物をポリイミド膜(ユーピレックス−75S、宇部興産(株)製)上に流延し、室温で24時間乾燥した後、固化した塗布物をポリイミド膜より剥離し、厚さ115μmの白色の膜を得た。 偏光顕微鏡により光学異方性のあるドメインを確認した。 これによりS−21のメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることがわかった。

    (3) プロトン交換膜(E−3)の作製 前駆体S−21(0.455 g)を前駆体S−21(0.274 g)及び前駆体S−23(0.181 g)に代えた以外、(2)と同様の方法により厚さ108μmの白濁した膜(E−3)を得た。

    (4) プロトン交換膜(E−4)の作製 T−4(1.6 g)をメタノール(4.7 g)に溶解し、30%過酸化水素水(2.05 g)を添加した。 混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRによりT−4の−SH基消失と−SO 3 H基の生成を確認した。 このようにして調製したゾル(SOL−3)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で5日間安定であった。
    SOL−2(0.86 g)をSOL−3(0.90 g)に代えた以外、(2)と同様の方法により厚さ112μmの白濁した膜(E−4)を得た。

    (5) プロトン交換膜(E−5)の作製 SOL−1(1.1 g)をSOL−1(0.5 g)及びSOL−3(0.5 g)に代えた以外、(1)と同様の方法により厚さ108μmの白濁した膜(E−5)を得た。

    (6)プロトン交換膜(E-6)の作製
    T-3 (0.097g)とS-13(0.185g)をキシレン(0.3ml)/イソプロパノール(1.0ml)に溶解し、30%過酸化水素水(0.204ml)を添加した。 60℃で5時間加熱攪拌した後、反応液850μLを、ポリイミド膜(ユーピレックス#75S:宇部興産製)上に180μm厚のテプロンテープで作製した3cm×3cmの正方形の枠内に流し込んだ。 溶媒が室温下で、10時間かけて蒸発するように隙間を調整した蓋を施し、放置した。 20時間後、更に、60℃で3時間した後、ポリイミド膜から膜状に固化した塗布物を剥離し、水洗乾燥して、厚さ125μmのプロトン交換膜を得た。

    (7)プロトン交換膜(E-7)
    上記、E-6作製時のS-4(0.185g)をS-4(0.176g)及びK-10(0.0077mg:S-4に対して5モル%)に置き換えた他は同様の方法にて、厚さ131μmのプロトン交換膜(E-7)を得た。

    (8)プロトン交換膜(E-8)
    上記、E-7作製時のS-4(0.176g)及びK-10(0.0077mg:S-4に対して5モル%)をS-4(0.167g)及びK-10(0.0154mg:S-4に対して10モル%)に置き換えた他は同様の方法にて、厚さ128μmのプロトン交換膜(E-7)を得た。

    (9)プロトン交換膜(E-9)
    上記、E-6作製時のS-4(0.185g)をS-26(0.221g)に置き換えた他は同様の方法にて、厚さ130μmのプロトン交換膜(E-9)を得た。

    (10)プロトン交換膜(E-10)
    上記、E-9作製時のS-26(0.221g)をS-26(0.199g)及びK-6(0.0155mg:S-26に対して10モル%)に置き換えた他は同様の方法にて、厚さ132μmのプロトン交換膜(E-10)を得た。

    (11)プロトン交換膜(E-11)
    上記、E-10作製時のS-26(0.199g)及びK-6(0.0155mg:S-26に対して10モル%)をS-25(0.156mg)及びK-10(0.0185mg)に置き換えた他は同様の方法にて、厚さ122μmのプロトン交換膜(E-11)を得た。

    (12)プロトン交換膜(E-12)
    T-3(0.145g)とS-31(0.199g)をキシレン(0.3ml)/イソプロパノール(1.0ml)に溶解し、30%過酸化水素水(0.204ml)を添加した。 50℃で20分間加熱攪拌した後、反応液850μLを、ポリイミド膜(ユーピレックス#75S:宇部興産製)上に180μm厚のテプロンテープで作製した3cm×3cmの正方形の枠内に流し込んだ。 溶媒が室温下で、10時間かけて蒸発するように隙間を調整した蓋を施し、放置した。 20時間後、更に、60℃で3時間した後、ポリイミド膜から膜状に固化した塗布物を剥離し、水洗乾燥して、厚さ124μmのプロトン交換膜を得た。

    (13)プロトン交換膜(E-13)
    上記、E-12作成時のS-31(0.199g)をS-31(0.179g)及びK-18(0.015g)に置き換えた他は同様の方法にて、厚さ123μmのプロトン交換膜を得た。

    (14) プロトン交換膜(R−1)の作製 X−11(800 mg)とTEOS(200 mg)をエタノールに溶解し、25℃で2%塩酸水50μlを添加し、20分間攪拌した。 この溶液にリン酸イソプロパノール溶液(リン酸(H 3 PO 4 , 500 mg)/イソプロパノール1ml)を添加し、25℃で30分間攪拌した後、テフロンシート上にアプリケータを用いて塗布した。 室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに80℃で3時間加熱した。 その後テフロンシートから剥がし、厚さ85μmの比較用の透明シート状固体(R−1)を得た。

    (15)プロトン交換膜(E−14)の作製 前記(1)プロトン交換膜E-1の作製において、SOL-1の換わりに、T-3133%水溶液(1.1g)を用いた他は、(1)と同様の方法により厚さ110μmの透明な膜(E-14)を得た。

    2. メタノール水溶液に対する耐性 得られたプロトン交換膜(E-1〜13)、及び比較用のプロトン交換膜(R-1及びナフィオン117)を直径13mmの円形に打ち抜いたサンプルを、それぞれ10質量%メタノール水溶液5mlに、48時間浸漬した。 本発明のプロトン交換膜(E-1〜14)は、ほとんど膨潤が見られず、浸漬前と形状及び強度の変化が見られなかった。 それに対して、比較サンプルR-1はヒビ割れが生じた。 またメタノール水溶液に理論量の85質量%のリン酸が溶出した。 ナフィオン117では、約70質量%の膨潤が見られ、著しい膜の形状変化も観察された。 次に、本発明のプロトン交換膜(E-1〜13)を64質量%メタノール水溶液に48時間浸漬したところ、E-1〜6、E-10、E-12は脆くなり、ひび割れが生じたが、本発明の一般式(VIII)で表される化合物、K-10、K-6あるいはK-18を添加したプロトン交換膜E-7、8、11、13では形状変化が見られず十分な耐性を示した。
    以上から、本発明のプロトン交換膜は、直接メタノール型燃料電池に使用する燃料のメタノール水溶液に対して、十分な耐性を有することがわかった。

    3. メタノール透過性の測定 得られたプロトン交換膜(E-1、E-6、E-8、E-11)、及び比較用のプロトン交換膜(R-1及びナフィオン117)を直径13mmの円形に打ち抜いたサンプルを、円形の穴(直径5mm)が空いたテプロンテープで補強した。 当該補強膜を図3で示すステンレス製のセルに備え付け、上部にメタノール水溶液を注入し、下部ガス導入口より一定流速で水素ガスを流し、膜を透過するメタノール量を下部検出口に接続したガスクロマトグラフィーにより測定した。 結果を表1に示す。

    (結果)
    表1より、本発明のプロトン交換膜のメタノール透過性は、ナフィオン117の1/50以下であることがわかる。

    4. イオン伝導度の測定 実施例1で作成した本発明のプロトン交換膜(E-1)〜(E-13)と比較サンプル(R-1)及びナフィオン117を直径13mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板に挟み、交流インピーダンス法により、25℃、相対湿度95%におけるイオン伝導度を測定した。 結果を表2に示す。

    (結果)
    本発明のプロトン交換膜のイオン伝導度は、ナフィオン117には及ばないものの、光学異方性を示さないハイブリッド膜(比較例(R-1))に比べ、高いイオン伝導度を示すことがわかる。 また、(E-6)と(E-7)及び(E-8)、(E-9)と(E-10)、(E-12)と(E-13)を比較すると、本発明の一般式(VIII)で表される化合物(K-10,K-6,K-18)を添加した膜では、イオン伝導度が向上した。

    実施例4
    (1) 触媒膜の作製 白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50 wt%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15 gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。 分散物の平均粒子径は約500 nmであった。 得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜いた。

    (2)MEAの作製 実施例1で作製したプロトン交換膜(E-1、E-2、E-3、E-8)及びナフィオン117の両面に、上記で得た触媒膜を、塗布面がプロトン交換膜に接するように張り合わせ、80℃、3Mpa、2分間で熱圧着し、MEA-1〜5を作製した。

    (3)燃料電池特性
    (2)で得たMEAを図2に示す燃料電池にセットし、カソード側開口部15に46質量%のメタノール水溶液を注入した。 この時カソード側は開口部16は大気に開放されている。 アノード電極12とカソード電極13の間に、ガルバノスタットで5mA/cm 2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。 結果を表3に示す。

    また、図4aと図4bに、本発明の電池C-4と比較電池C-5の電流−電圧特性を示す。

    (結果)
    表3に示すように、ナフィオン117を用いた電池C-5の初期電圧は高いものの、経時で電圧が低下するが、本発明のプロトン交換膜を用いた電池C-1〜C-4では、電圧が安定していることがわかった。 また、図4aと図4bより、比較電池C-5では高濃度メタノールにおいて出力低下が著しいが、本発明の電池C-4では、メタノール濃度依存性が極めて小さく、特に高濃度メタノール(64質量%)においても十分な発電特性を示すことがわかった。

    以上の経時での電圧低下及び電圧−電流特性におけるメタノール濃度依存性は、アノード電極側に供給されたメタノールが、ナフィオン膜を通過してカソード電極側に漏れる、いわゆるクロスオーバー現象による。 以上より、本発明の電池においては、クロスオーバー現象が大きく改良されていることがわかる。

    本発明のプロトン交換膜を用いた電極膜複合体の構成を示す概略断面図である。

    本発明の燃料電池の構造の一例を示す概略断面図である。

    補強膜を打ち付けるステンレス製のセルの概略図である。

    本実施例で作成した燃料電池C-4及びC-5の電流-電圧特性を示す。

    符号の説明

    10・・・電極膜複合体(MEA)
    11・・・プロトン交換膜
    12・・・アノード電極
    12a・・・アノード極多孔質導電シート
    12b・・・アノード極触媒層
    13・・・カソード電極
    13a・・・カソード極多孔質導電シート
    13b・・・カソード極触媒層
    14・・・パッキン
    15・・・アノード極側開口部
    16・・・カソード極側開口部
    17・・・集電体
    21,22・・・セパレータ
    31 ・ ・ ・ プロトン交換膜
    32 ・ ・ ・ テフロンテープ補強材
    33 ・ ・ ・ メタノール水溶液注入部分
    34 ・ ・ ・ キャリアガス導入口
    35 ・ ・ ・ 検出口(ガスクロマトグラフィーに接続)
    36 ・ ・ ・ ゴムパッキン

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