Proton conductive film, its manufacturing method, and fuel cell using the same

申请号 JP2002034115 申请日 2002-02-12 公开(公告)号 JP2003242831A 公开(公告)日 2003-08-29
申请人 National Institute Of Advanced Industrial & Technology; Sekisui Chem Co Ltd; 独立行政法人産業技術総合研究所; 積水化学工業株式会社; 发明人 HONMA ITARU; SUGIMOTO TOSHIYA; NOMURA SHIGEKI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a proton conductive film having superior heat resistance, durability, dimensional stability, flexibility, mechanical strength and fuel barrier performance and showing superior proton conductivity even at high temperatures, its manufacturing method and a fuel cell using the same.
SOLUTION: The proton conductive film contains a three-dimensional crosslinked structure (A) having a silicon-oxygen bond, an organic structure (B), an amino group containing structure (C) and a proton conductive provider (D). The method of manufacturing the proton conductive film comprises a first step of preparing a mixture containing an organic silicon compound (E) having two or more hydrolytic silyl groups, an amino group containing organic silicon compound (F) having one or more hydrolytic silyl group and the proton conductive provider (D), a second step of filming the mixture, and a third step of forming the three-dimensional crosslinked structure (A) into a filed shape with hydrolysis and contraction.
COPYRIGHT: (C)2003,JPO
权利要求
  • 【特許請求の範囲】 【請求項1】 ケイ素−酸素結合を有する3次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)、アミノ基含有構造体(C)及びプロトン伝導性付与剤(D)を含有するプロトン伝導性膜であって、(i)有機構造体(B)は、主鎖に少なくとも4個の連結した炭素原子をもち、(i
    i)アミノ基含有構造体(C)は、少なくとも1個のアミノ基をもち、更に(iii)3次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)及びアミノ基含有構造体(C)は、互に共有結合により結合していることを特徴とするプロトン導電性膜。 【請求項2】 有機構造体(B)と3次元架橋構造体(A)とは、2つ以上の共有結合により結合していることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項3】 有機構造体(B)は、炭素と水素のみからなることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項4】 有機構造体(B)の主骨格部分は、下記の化学式(1)で示される構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 −(CH − (1) (式中、nは2〜20の整数である。) 【請求項5】 有機構造体(B)の主骨格部分は、下記の化学式(2)で示される構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 −(CH −{Ar}−(CH − (2) (式中、mは0〜10の整数であり、Arは炭素数6〜
    30のアリーレン構造を示す。 ) 【請求項6】 アミノ基含有構造体(C)と3次元架橋構造体(A)とは、1つ以上の共有結合により結合していることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項7】 アミノ基含有構造体(C)の主骨格部分は、少なくとも1個のアミノ基と、それ以外では炭素と水素のみからなる炭化水素構造体であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項8】 アミノ基含有構造体(C)は、下記の化学式(3)又は(4)から選ばれる少なくとも1つの式で示される構造を有していることを特徴とする請求項1
    に記載のプロトン伝導性膜。 −(CH )a−(NH−(CH )b)c−NH−(CH )a− (3) (式中、aは1〜12の整数、bは1〜12の整数、c
    は0〜5の整数である。 ) −(CH )a(NH−(CH )b)cNR (4) (式中、aは1〜12の整数、bは1〜12の整数、c
    は0〜5の整数であり、R 及びR は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアリール基から選ばれる基である。 ) 【請求項9】 プロトン伝導性付与剤(D)は、酸であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項10】 酸は、ヘテロポリ酸であることを特徴とする請求項9に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項11】 ヘテロポリ酸は、タングストリン酸、
    モリブトリン酸、又はタングスト珪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項10
    に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項12】 アミノ基含有構造体(C)の含有量は、有機構造体(B)1当量に対して0.01〜1当量であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項13】 プロトン伝導性付与剤(D)の含有量は、三次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)及びアミノ基含有構造体(C)の合計量1当量に対して0.0
    1〜3当量であり、かつアミノ基含有構造体(C)に対して等当量以上であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。 【請求項14】 加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)、加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)及びプロトン伝導性付与剤(D)を含有する混合物を調整する第1の工程と、該混合物を製膜する第2の工程と、該製膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解・縮合によりケイ素−酸素結合を有する3次元架橋構造体(A)を形成し膜状とする第3の工程とを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のプロトン伝導性膜の製造方法。 【請求項15】 加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)は、下記の化学式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項14に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。 【化1】 (式中、R は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、化学式(1)又は(2)
    から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。 また、x及びyは、0または1であり、同時に同じ数であっても、異なっていてもよい。 ) 【請求項16】 加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)は、下記の化学式(6)又は(7)から選択された少なくも1つの化合物であることを特徴とする請求項14に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。 【化2】 (式中、R は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Yは、化学式(3)で表される基である。また、x及びyは、0または1であり、同時に同じ数であっても、異なっていてもよい。) 【化3】 (式中、R は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Zは、化学式(4)で表される基である。また、xは、0または1である。) 【請求項17】 第1の工程において、混合物中に水(G)を含有させることを特徴とする請求項14に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。 【請求項18】 第3の工程の後、さらに、該製膜された混合物を100〜300℃の温度で養生する第4の工程を行うことを特徴とする請求項14に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。 【請求項19】 請求項1〜13のいずれかに記載のプロトン伝導性膜を用いてなることを特徴とする燃料電池。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、プロトン(素イオン)伝導性膜、その製造方法及びそれを用いた燃料電池に関し、さらに詳しくは、耐熱性、耐久性、寸法安定性、可撓性、機械的強度及び燃料バリア性に優れ、しかも高温でも優れたプロトン伝導性を示すプロトン伝導性膜、その製造方法及びそれを用いてなる燃料電池に関し、同時に、直接メタノール、メタン、プロパンなどの燃料を供給する直接燃料型燃料電池にも供されるプロトン伝導性膜、その製造方法及びそれを用いてなる燃料電池に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。 燃料電池は、一般に電解質の種類によりいくつかのタイプに分類されるが、この中でも固体高分子型燃料電池(以下、PEFC
    と略称する場合がある)は、他のいずれのタイプに比べても小型かつ高出であり、小規模オンサイト型、移動体(たとえば、車両のパワーソース)用、携帯用等の電源として次世代の主力とされている。 【0003】このように、PEFCは、原理的に優れた長所を有しており、実用化に向けた開発が盛んに行われている。 このPEFCでは、燃料として通常、水素を用いる。 水素は、PEFCのアノード側に設置された触媒によりプロトン(水素イオン)と電子に分解される。 このうち、電子は、外部に供給され、電気として使用され、PEFCのカソード側へと循環される。 一方、プロトンはプロトン伝導性膜(電解質膜)に供給され、プロトン伝導性膜を通じてカソード側へと移動する。 カソード側では、プロトン、循環されてきた電子、および外部から導入される酸素が触媒により結合され、水が生じる。 すなわち、PEFC単体で見れば、PEFCは、水素と酸素から水を作る際に電気を取り出す非常にクリーンなエネルギー源である。 【0004】燃料電池に供給される水素は、何らかの方法(たとえばメタノール改質による水素抽出)で得た水素を使うのが通常であるが、直接、メタノールなどを燃料電池に導入し、触媒によりメタノール(通常水を併用する)からプロトンと電子を取り出す、直接燃料型燃料電池も盛んに検討されつつある。 【0005】ここで、プロトン伝導性膜は、アノードで生じたプロトンをカソード側に伝える役目を持つ。 上記の通り、このプロトンの移動は、電子の流れと協奏的に起こるものである。 すなわち、PEFCにおいて、高い出力(すなわち高い電流密度)を得るためには、プロトン伝導を十分な量、高速に行う必要がある。 従って、プロトン伝導性膜の性能がPEFCの性能を決めてしまうキーマテリアルといっても過言ではない。 また、プロトン伝導性膜は、プロトンを伝導するだけではなく、アノードとカソードの電気絶縁をする絶縁膜としての役割と、アノード側に供給される燃料がカソード側に漏れないようにする燃料バリア膜としての役割も併せ持つ。 【0006】現在、PEFCにおいて使用されている主なプロトン伝導性膜は、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素樹脂系膜である。 このようなスルホン化フッ素樹脂系膜としては、例えば、Na
    fion(登録商標) R膜(Du Pont社、米国特許第4,330,654号)、Dow膜(Dow C
    hemical社、特開平4−366137号)、Ac
    iplex(登録商標) R膜(旭化成工業(株)社、
    特開平6−342665号)、Flemion(登録商標) R膜(旭硝子(株)社)等が知られている。 【0007】これらフッ素樹脂系膜は、燃料電池が使用される湿潤常態化において、130℃近辺にガラス転移温度(Tg)を有しているといわれ、この温度近辺より、いわゆるクリープ現象が起こり、その結果、膜中のプロトン伝導構造が変化し、安定的なプロトン伝導性能が発揮できず、さらには膜が膨潤形態に変成し、ゼリー状となって非常に破損しやすくなり、燃料電池の故障につながる。 また高温湿潤状態では、スルホン酸基の脱離が起こり、プロトン伝導性能が大きく低下する。 以上のような理由により、現在使用されている安定的に長期使用可能な最高温度は通常80℃とされている。 【0008】燃料電池は、その原理において化学反応を用いているため、高温で作動させる方がエネルギー効率が高くなる。 すなわち、同じ出力を考えれば、高温で作動可能な装置の方が、より小型で軽量にすることができる。 また、高温で作動させると、その排熱をも利用することができるため、いわゆるコジェネレーション(熱電併給)が可能となり、トータルエネルギー効率は飛躍的に向上する。 従って、燃料電池の作動温度は、ある程度高い方がよいとされ、通常、100℃以上、特に120
    ℃以上が好ましいとされている。 【0009】また、供給される水素が十分に精製されていない場合、アノード側に使用されている触媒が、燃料の不純物(たとえば一酸化炭素)により活性を失う場合があり(いわゆる触媒被毒)、PEFCの寿命を左右する大きな課題となっている。 この触媒被毒に関しても、
    高温で燃料電池を作動させることができれば回避できることが知られており、この点からも燃料電池はより高温で作動させることが好ましいといえる。 さらに、より高温での作動が可能となると、触媒自体も従来使用されている白金などの貴金属の純品を使用する必要がなく、種々金属の合金を使用することが可能となり、コストの面、あるいは資源の面からも非常に有利である。 【0010】また、直接燃料型燃料電池では、現在、燃料から直接、効率よくプロトンと電子を抽出する種々の検討が行われているが、十分な出力を得るためには、低温では困難であり、高温(たとえば150℃以上)では可能性があるとされている。 このように、PEFCは、
    種々の面からより高温で作動させることが好ましいとされているにもかかわらず、プロトン伝導性膜の耐熱性が前述の通り80℃までであるため、作動温度も80℃までに規制されているのが現状である。 【0011】また、燃料電池作動中に起こる反応は、発熱反応であり、作動させると、PEFC内の温度は自発的に上昇する。 しかしながら、プロトン伝導性膜は、8
    0℃程度までの耐熱性しか有しないため、80℃以上にならないようにPEFCを冷却する必要がある。 冷却は、通常水冷方式がとられ、PEFCのセパレータ部分にこのような冷却の工夫が入れられる。 このような冷却手段をとると、PEFCが装置全体として大きく、重くなり、PEFCの本来の特徴である小型、軽量という特徴を十分に生かすことができない。 特に、作動限界温度が80℃とすると、冷却手段として最も簡易な水冷方式では、効果的な冷却が困難である。 もし、100℃以上の作動が可能であると、水の蒸発熱として効果的に冷却することができ、更に水を還流させることにより、冷却時に用いる水の量を劇的に低減できるため、装置の小型化、軽量化が達成できる。 特に、車両のエネルギー源として用いる場合には、80℃で温度制御する場合と、1
    00℃以上で温度制御する場合とを比較すれば、ラジエータ、冷却水の容量が大きく低減できることから、10
    0℃以上で作動可能なPEFC、すなわち100℃以上の耐熱性があるプロトン伝導性膜が強く望まれている。 【0012】以上のように、発電効率、コジェネレーション効率、コスト・資源の面、冷却効率など、種々の面でPEFCの高温作動、すなわちプロトン伝導性膜の高温耐熱が望まれているにもかかわらず、十分なプロトン伝導性と耐熱性を併せ持つプロトン伝導性膜は存在していない。 【0013】このような背景のもと、PEFCの運転温度を上昇させるために、これまで、種々の耐熱性のあるプロトン伝導性材料が検討され、提案されている。 代表的なものとしては、従来のフッ素系膜の代わりとなる耐熱性の芳香族系高分子材料があり、例えば、ポリベンズイミダゾール(特開平9−110982号)、ポリエーテルスルホン(特開平10−21943号、特開平10
    −45913号)、ポリエーテルエーテルケトン(特開平9−87510号)等が挙げられる。 これらの芳香族系高分子材料は、高温時における構造変化が少ないという利点があるが、一方、芳香族に直接スルホン酸基、カルボン酸基などを導入したものが多く、この場合には、
    高温において顕著な脱スルホン、脱炭酸が起こる可能性が高く、高温作動膜としては好ましくない。 【0014】また、これらの芳香族系高分子材料は、フッ素樹脂系膜のように、イオンチャネル構造などをとらない場合が多く、その結果、水が存在すると膜全体が強く膨潤する傾向があり、この乾燥状態と湿潤状態での膜サイズの変化のため、膜−電極接合体の接合部に応力がかかり、膜と電極の接合部がはがれたり、膜が破れたりする可能性が高く、更に、膨潤による膜の強度低下で膜破損が起こる可能性があるという問題がある。 さらに、
    芳香族系高分子材料は、乾燥状態ではいずれも極めて剛直な高分子化合物であるため、膜−電極接合体形成の際、破損等の可能性が高いという問題がある。 【0015】一方、プロトン伝導性材料としては、次のような無機材料も提案されている。 例えば、南らは、加水分解性シリル化合物中に種々の酸を添加することにより、プロトン伝導性の無機材料を得ている(Solid
    State Ionics74(1994)、第10
    5頁)。 しかしながら、これらの無機材料は、高温でも安定的にプロトン伝導性を示すが、薄膜とした場合には、割れやすく、取り扱いや膜−電極接合体作製が困難であるという問題がある。 【0016】そして、こうした問題を克服するために、
    例えば、プロトン伝導性の無機材料を粉砕してエラストマーと混合する方法(特開平8−249923号)、スルホン酸基含有高分子と混合する方法(特開平10−6
    9817号)等が試みられているが、これらの方法は、
    いずれもバインダーの高分子物質が無機架橋体とが混合されただけであるため、基本的な熱物性は高分子物質単独と大きな差がなく、高温領域では高分子物質の構造変化が起こり、安定的なプロトン伝導性を示さず、しかも多くの場合、プロトン伝導性も高くない。 【0017】以上のように、従来の固体高分子型燃料電池における問題点を改善するために、種々の電解質膜材料についての研究開発が行われてきたにもかかわらず、
    これまでのところ、高温(例えば100℃以上)で充分な耐久性を有し、機械的性能等の諸物性を満足したプロトン伝導性膜は未だ存在しないのが現状であった。 【0018】他方、水素に代えてメタノールを燃料として用いる直接メタノール型燃料電池(以下、DMCFと略称する場合がある)では、メタノールが直接膜に接することになる。 現在用いられているNafion(登録商標)などのスルホン化フッ素樹脂系膜では、膜とメタノールの親和性が高く、膜がメタノールを吸収することにより極度に膨潤、場合によっては溶解し、燃料電池の故障の原因となる。 また、メタノールは酸素極側に漏れ出し、燃料電池の出力が大きく低下する。 これは芳香環含有の電解質膜でも共通した課題である。 このように、
    DMFCにおいても効率的かつ耐久性を有した膜が現在のところ存在していない。 【0019】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうした従来の固体高分子型燃料電池における問題点に鑑み、耐熱性、耐久性、寸法安定性、可撓性、機械的強度及び燃料バリア性などに優れ、しかも高温でも優れたプロトン伝導性を示し、同時に、直接メタノール、メタン、プロパンなどの燃料を供給する直接燃料型燃料電池にも供されるプロトン伝導性膜、その製造方法及びそれを用いた燃料電池を提供することを課題とする。 【0020】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題に鑑み種々の電解質膜材料について鋭意研究を重ねたところ、プロトン伝導性膜を構成する必須成分として、特定の有機物質と、それに結合したケイ素−酸素結合の3
    次元架橋構造体と、プロトン伝導性付与剤の組合せを選定することにより、プロトン伝導性膜のネットワーク構造が形成され、その結果、従来に例を見られない耐熱性や耐久性に優れ、しかも高温でも優れたプロトン伝導性を示し、可撓性のような機械的性能といった諸物性を満足する画期的な有機無機複合膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0021】すなわち、本発明の第1の発明によれば、
    ケイ素−酸素結合を有する3次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)、アミノ基含有構造体(C)及びプロトン伝導性付与剤(D)を含有するプロトン伝導性膜であって、(i)有機構造体(B)は、主鎖に少なくとも4
    個の連結した炭素原子をもち、(ii)アミノ基含有構造体(C)は、少なくとも1個のアミノ基をもち、更に(iii)3次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)
    及びアミノ基含有構造体(C)は、互に共有結合により結合していることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0022】また、本発明の第2の発明によれば、第1
    の発明において、有機構造体(B)と3次元架橋構造体(A)とは、2つ以上の共有結合により結合していることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0023】さらに、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、有機構造体(B)は、炭素と水素のみからなることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0024】また、本発明の第4の発明によれば、第1
    の発明において、有機構造体(B)の主骨格部分は、下記の化学式(1)で示される構造を有していることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 。 【0025】−(CH − (1) (式中、nは2〜20の整数である。) 【0026】また、本発明の第5の発明によれば、第1
    の発明において、有機構造体(B)の主骨格部分は、下記の化学式(2)で示される構造を有していることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0027】 −(CH −{Ar}−(CH − (2) (式中、mは0〜10の整数であり、Arは炭素数6〜
    30のアリーレン構造を示す。 ) 【0028】さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、アミノ基含有構造体(C)と3次元架橋構造体(A)とは、1つ以上の共有結合により結合していることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0029】また、本発明の第7の発明によれば、第1
    の発明において、アミノ基含有構造体(C)の主骨格部分は、少なくとも1個のアミノ基と、それ以外では炭素と水素のみからなる炭化水素構造体であることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0030】また、本発明の第8の発明によれば、第1
    の発明において、アミノ基含有構造体(C)は、下記の化学式(3)又は(4)から選ばれる少なくとも1つの式で示される構造を有していることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0031】 −(CH )a−(NH−(CH )b)c−NH−(CH )a− (3) (式中、aは1〜12の整数、bは1〜12の整数、c
    は0〜5の整数である。 ) 【0032】 −(CH )a(NH−(CH )b)cNR (4) (式中、aは1〜12の整数、bは1〜12の整数、c
    は0〜5の整数であり、R 及びR は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアリール基から選ばれる基である。 ) 【0033】また、本発明の第9の発明によれば、第1
    の発明において、プロトン伝導性付与剤(D)が、酸であることを特徴とするのプロトン伝導性膜が提供される。 【0034】さらに、本発明の第10の発明によれば、
    第9の発明において、プロトン伝導性付与剤(D)が、
    ヘテロポリ酸であることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0035】さらに、本発明の第11の発明によれば、
    第10の発明において、前記ヘテロポリ酸が、タングストリン酸、モリブトリン酸、またはタングスト珪酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0036】さらにまた、本発明の第12の発明によれば、第1の発明において、アミノ基含有構造体(C)の含有量は、有機構造体(B)1当量に対して0.01〜
    1当量であることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0037】また、本発明の第13の発明によれば、第1の発明において、プロトン伝導性付与剤(D)の含有量は、三次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)及びアミノ基含有構造体(C)の合計量1当量に対して0.
    01〜3当量であり、かつアミノ基含有構造体(C)に対して等当量以上であることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。 【0038】また、本発明の第14の発明によれば、加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)、加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)及びプロトン伝導性付与剤(D)を含有する混合物を調整する第1の工程と、該混合物を製膜する第2の工程と、該製膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解・縮合によりケイ素−酸素結合を有する3次元架橋構造体(A)を形成し膜状とする第3の工程とを含むことを特徴とする第1〜
    13のいずれかの発明に記載のプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。 【0039】また、本発明の第15の発明によれば、第14の発明において、加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)は、下記の化学式(5)で表される化合物であることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。 【0040】 【化4】

    (式中、R

    は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、化学式(1)又は(2)


    から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。 また、x及びyは、0または1であり、同時に同じ数であっても、異なっていてもよい。 ) 【0041】また、本発明の第16の発明によれば、第14発明において、加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)は、下記の化学式(6)又は(7)から選択された少なくも1つの化合物であることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。 【0042】 【化5】 (式中、R

    は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Yは、化学式(3)で表される基である。また、x及びyは、0または1であり、同時に同じ数であっても、異なっていてもよい。) 【0043】 【化6】 (式中、R

    は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Zは、化学式(4)で表される基である。また、xは、0または1である。) 【0044】さらにまた、本発明の第17の発明によれば、第14の発明において、混合物中に水(G)を含有させることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。 【0045】さらにまた、本発明の第18の発明によれば、第14の発明の第3の工程の後、さらに、該製膜された混合物を100〜300℃の温度で養生する第4の工程を行うことを特徴とする第14の発明に記載のプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。 【0046】さらにまた、本発明の第19の発明によれば、、第1〜13のいずれかに記載のプロトン伝導性膜を用いてなることを特徴とする燃料電池が提供される。 【0047】 【発明の実施の形態】以下、本発明のプロトン伝導性膜、その製造方法及びそれを用いた燃料電池について、


    各項目毎に詳細に説明する。 【0048】1.3次元架橋構造体(A) 本発明において、3次元架橋構造体(A)とは、本発明のプロトン伝導性膜の主要な骨格構造体となる成分であって、多数のケイ素−酸素結合単位が3次元的に結合して高分子架橋体となっており、緻密な網目構造により、


    また、ケイ素と酸素の結合エネルギーは非常に大きいので、耐熱性、耐久性、寸法安定性及び燃料バリア性を発現し、本発明のプロトン伝導性膜が燃料電池の望まれる高温の作動温度である100から150℃の温度において優れた性能を発揮する原因となっている。 従来の非硬化型樹脂を用いたプロトン伝導性膜は、熱可塑性を有するフッ素系樹脂等を用いており、いずれも非架橋樹脂を用いている限り、軟化やクリープ現象が生じ、高温で使用すると樹脂が変性や構造変化を起こし、性能が低下する。 【0049】一方、本発明のケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)を有している熱硬化材料を用いたプロトン伝導性膜は、これらの軟化、クリープ等が起こらず、


    耐熱性が大きく向上する。 また、メタノールを改質せず、そのまま燃料として用いる直接メタノール型燃料電池においては、例えば最も一般的に用いられているスルホン化フッ素系樹脂膜では、高温で作動させると、高温のメタノールにより、樹脂が膨潤あるいは溶解し、性能が低下するばかりではなく、燃料電池の故障につながるが、ケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)を有している本発明のプロトン伝導性膜の場合には、膨潤は比較的少なく溶解しないことから良好に用いることが出来る。 【0050】このようなケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)は、下記に詳細に説明する加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)を原料とし、ゾル−ゲル反応により形成させることができる。 ケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)は、加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)の、アルコキシ基含有ケイ素部分が相互に隣接する他の分子のアルコキシ基含有ケイ素部分と脱水縮合反応により3次元的に架橋し形成される。 【0051】2. 有機構造体(B) 本発明において、有機構造体(B)とは、本発明のプロトン伝導性膜の一部を構成する成分であり、ケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)と他のケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)との間に存在し、少なくとも4


    個の連結した炭素原子を持ち、下記の化学式(1)又は(2)の構造を有している。 【0052】−(CH

    − (1) (但し、nは2以上から20以下の整数である。) 上記式(1)の化合物は、メチレン鎖の両端で3次元架橋構造体(A)と結合している。 ここで、メチレン鎖の数nは、1〜20が好ましいが、4〜14が特に好ましく用いられる。 nが1では膜がもろくなり、一方、20


    より多くなると3次元架橋構造体(A)による耐熱性向上の効果が減少する。 一方、(A)と(B)との結合数が2で、主骨格部分として不飽和炭化水素を用いた場合には式(2)に代表される化合物が好ましい。 具体例としては、CH2の連鎖構造を持つパラフィン類、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサンなど、直鎖状のもの、その異性体あるいは分岐したもの等が挙げられる。 【0053】 −(CH

    −{Ar}−(CH

    − (2) (但し、mは0以上から10以下の整数である。Arは炭素数6〜30のアリーレン構造を示す。)また、上記式(2)の化合物は、芳香環を含有するアリーレン構造を有し、3次元架橋構造体(A)と連結する部分にはアルキレン構造を有していてもよいし(mは1〜10が好ましいが、1〜6が特に好ましい)、直接結合してもよい(m=0)。 ここで、芳香環に対する置換位置は、特に限定が無く、オルト、メタ、パラ、いずれでも良く、


    混合体でもかまわない。 アリーレン構造の具体例としては、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、クオーターフェニル、あるいはナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、アセナフチレン誘導体、フルオレン誘導体、フェナントレン誘導体、ペリレン誘導体およびこれらの置換体などが挙げられる。 本発明のプロトン伝導性膜は、膜単独での取り扱いや、膜−電極接合体の作成を容易にし、燃料電池の高温作動時の膨張に追随できるようにするため、柔軟性や可撓性を有することが必要であり、本発明の有機構造体(B)部分が上記の特性を発現する。 【0054】有機構造体(B)の長さは、分子鎖の分岐、結合の屈曲性、環構造の有無などに左右されるため、限定できないが、炭素−炭素メチレン鎖結合の場合には、炭素数1〜20程度が好ましく、特に4〜14の結合が好ましい。 炭素結合が1〜3の場合には、使用可能であるが脆い膜なり、一方、長すぎるとイオン伝導経路を塞いでしまうため、伝導度が低下し、好ましくない。 有機構造体(B)は、本発明のプロトン伝導性膜を構成するケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)やアミノ基含有構造体(C)等と結合しないで遊離の状態であると、低分子量の炭化水素であるから、ガス状、液体状、


    あるいは高温で溶解するパラフィン状等であるので、燃料電池の作動温度で系外に逸散し、高温で使用するプロトン伝導膜しては成り立たない。 ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)と有機構造体(B)との結合は、1つだけでは架橋が不十分であり、十分な膜の強度は得られず、相分離構造も容易に崩れるため、2つ以上の結合を有していることが好ましい。 一方、3つ以上の結合を有しているものは、材料の入手が困難であり、また、架橋密度が上がり硬くなり、柔軟性が損なわれるため好ましくなく、結合数が2が好ましい。 【0055】3. アミノ基含有構造体(C) 本発明において、アミノ基含有構造体(C)とは、少なくとも1個のアミノ基と、それ以外では炭素と水素のみからなる炭化水素構造体であり、本発明のプロトン伝導性膜の一部を構成する成分であり、ケイ素−酸素結合3


    次元架橋構造体(A)と他のケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)との間や、ケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)と有機構造体(B)の間に結合しているか、又はケイ素−酸素結合3次元架橋構造体(A)に直接結合して存在し、下記の化学式(3)又は(4)で表される構造体から選択される少なくとも一種の構造を有していることが必要である。 【0056】 −(CH

    )a−(NH−(CH

    )b)c−NH−(CH

    )a− (3) (式中、aは1〜12の整数、bは1〜12の整数、c


    は0〜5の整数である。 ) 【0057】 −(CH

    )a(NH−(CH

    )b)cNR

    (4) (式中、aは1〜12の整数、bは1〜12の整数、c


    は0〜5の整数であり、R

    及びR

    は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアリール基から選ばれる基である。 ) 【0058】上記式(3)で示されるアミノ基含有構造体としては、下記の化学式(8)及び(9)の構造体が例示される。 【0059】 −(CH

    −NH−(CH

    − (8) 【0060】 −(CH

    −NH−(CH

    −NH−(CH

    − (9) 【0061】上記式(4)で示されるアミノ基含有構造体としては、下記の化学式(10)〜(12)の構造体が例示される。 【0062】−(CH

    NH

    (10) 【0063】 −(CH

    NH(CH

    NH

    (11) 【0064】 −(CH

    NH(CH

    NH(CH

    NH

    (12) 【0065】本発明においてアミノ基含有構造体(C)


    は、プロトン伝導性膜内において、そのアミノ基が後述のプロトン伝導性付与剤(D)と相互作用することでプロトン伝導性を発現する目的で使用される。 また、本発明においてアミノ基含有構造体(C)は、有機構造体(B)と同様な構造を併せ持つことも可能であるので柔軟性や可撓性を有し、膜の取り扱いや、膜−電極接合体の作成を容易にし、燃料電池の高温作動時の膨張に追随できる。 アミノ基含有構造体(C)の長さは、分子鎖の分岐、結合の屈曲性、環構造の有無などに左右されるため、限定できないが、炭素−炭素メチレン鎖結合の場合には、炭素数1〜20程度が好ましく、特に4〜14の結合が好ましい。 炭素結合が1〜3の場合には、使用可能であるが脆い膜なり、一方、長すぎるとイオン伝導経路を塞いでしまうため、伝導度が低下し、好ましくない。 【0066】アミノ基含有構造体(C)は、本発明のプロトン導電性膜を構成するケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)や有機構造体(B)等と結合しないで遊離の状態であると、低分子量のアミノ基またはアミノ基含有炭化水素であるから、ガス状、液体状、あるいは高温で溶解するパラフィン状等であるので、燃料電池の作動温度で系外に逸散し、高温で使用するプロトン伝導膜しては成り立たない。 ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)とアミノ基含有構造体(C)との結合は、1つだけでは架橋が不十分であり、十分な膜の強度は得られず、相分離構造も容易に崩れるため、2つ以上の結合を有していることが好ましい。 一方、3つ以上の結合を有しているものは、材料の入手が困難であり、また、架橋密度が上がり硬くなり、柔軟性が損なわれるため好ましくなく、結合数が2が好ましい。 しかしながら、有機構造体(B)


    の比率が高い場合は、アミノ基含有構造体(C)は、プロトン伝導性付与剤(D)と相互作用することでプロトン伝導性を発現する目的でのみ使用すればよいので、ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)と1つだけの結合であってもよい。 アミノ基含有構造体(C)は、有機構造体(B)1当量に対して、0.01〜1当量含むことが好ましい。 アミノ基含有構造体(C)の比率が0.01


    等量以下であると、プロトン伝導性付与剤(D)との相互作用する能力を失い、1等量を超えると、プロトン伝導性膜の耐熱性や機械的強度が不十分となり、また水やメタノールにより膜が膨潤し好ましくなく、極性基ゆえの長期信頼性不足が顕在化する。 【0067】4. プロトン伝導性付与剤(D) 本発明のプロトン伝導性付与剤(D)は、プロトン伝導性膜中のプロトン濃度を上昇させる役目を担うものであるが、プロトン伝導性がプロトンの濃度とプロトンを伝達する媒体(通常は、別途に供給される水を用いることが一般的)の濃度に比例することからみて、プロトン濃度の上昇は、本発明の高プロトン伝導性を実現する上で必須である。 【0068】プロトン伝導性付与剤(D)としては、プロトンを放出するいわゆる酸化合物が用いられる。 ここで、プロトン伝導性付与剤(D)として加える酸化合物の種類としては、リン酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、ホウ酸、ヘテロポリ酸、及びそれらの誘導体等が挙げられる。 本発明においては、これらの酸又はその誘導体を2種以上併用してもよい。 これらの中でも、ヘテロポリ酸を用いることが好ましい。 ここで、ヘテロポリ酸とは、無機オキソ酸を指し、その中でも、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングスト珪酸等のケギン構造、ドーソン構造を有するものが好ましく用いられる。 【0069】これらのヘテロポリ酸は、分子サイズが充分に大きく、水等の存在下でも膜からの酸の溶出がかなり抑制される。 さらに、ヘテロポリ酸は、アミノ基含有構造体(C)の相互作用が効率的に起こし、伝導度が高まると同時に、膜中に保持されて酸の溶出を防ぐことも可能となるため、長期にわたって高温で使用されるプロトン伝導性膜においては特に好ましく用いることができる。 無機固体酸の中でも、酸性度が大きく、分子サイズやアミノ基との極性相互作用の大きさを勘案すると、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングスト珪酸が特に好ましく用いられる。 本発明においては、プロトン伝導性付与剤(D)として、これらヘテロポリ酸と他の酸を併用してもよく、また、その他複数の有機酸や無機酸を併用してもよい。 【0070】プロトン伝導性付与剤(D)は、アミノ基含有構造体(C)と等当量以上含むことが好ましい。 プロトン伝導性付与剤(D)は後述の硬化反応を利用した製造工程において、硬化触媒の働きも兼ね備えることが期待されているため、アミノ基含有構造体(C)と等当量以下の場合は、相互作用にすべて消費されてしまい、


    硬化に支障をきたす。 その上で、プロトン伝導性付与剤(D)は、ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)及びアミノ基含有構造体(C)の合計量1


    当量に対して0.01〜3当量含むことが好ましい。 この比率が0.01以下では十分なプロトン伝導性を発現できず、1以上では膜物性が損なわれ、ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)及びアミノ基含有構造体(C)により十分保持できなくなるため、プロトン伝導性付与剤(D)の膜外への散逸が起こる。 【0071】5. 加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E) 本発明において、加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)とは、本発明のプロトン伝導性膜の原料の一つであり、ゾル−ゲル反応により架橋し、


    ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)及び有機構造体(B)となる。 加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)は、下記の化学式(5)で表される化合物である。 【0072】 【化7】 (R

    は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、化学式(1)又は(2)から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。また、x及びyは、0または1であり、同時に同じ数であっても、異なっていてもよい。)この化合物はビス(アルキルアルコキシシラン)ヒドロカーボンであり、分子内に−(CH

    −や、−(CH


    −{Ar}−(CH

    −で表される2価の有機構造体を有しており、これが適度な可とう性と適度なガスやイオンの透過性を本発明のプロトン伝導性膜に付与することができる。 【0073】化学式(5)であらわされる化合物の具体例としては、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリル)ドデカン、ビス(トリメエキシシリル)テトラドデカン、


    ビス(トリメトキシシリル)エタン。 【0074】ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリル)ドデカン、ビス(トリメトキシシリル)


    テトラドデカン、ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、ビス(メチルジエトキシシリル)ブタン、ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、ビス(メチルジエトキシシリル)オクタン、ビス(メチルジエトキシシリル)ノナン、ビス(メチルジエトキシシリル)デカン。 【0075】ビス(メチルジエトキシシリル)ドデカン、ビス(メチルジエトキシシリル)テトラドデカン、


    ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、ビス(メチルジメトキシシリル)オクタン、ビス(メチルジメトキシシリル)ノナン、ビス(メチルジメトキシシリル)デカン、ビス(メチルジメトキシシリル)ドデカン、ビス(メチルジメトキシシリル)テトラドデカン、ビス(ジメチルエトキシシリル)


    エタン、ビス(ジメチルエトキシシリル)ブタン、ビス(ジメチルエトキシシリル)ヘキサン、ビス(ジメチルエトキシシリル)オクタン。 【0076】ビス(ジメチルエトキシシリル)ノナン、


    ビス(ジメチルエトキシシリル)デカン、ビス(ジメチルエトキシシリル)ドデカン、ビス(ジメチルエトキシシリル)テトラドデカン、ビス(ジメチルメトキシシリル)エタン、ビス(ジメチルメトキシシリル)ブタン、


    ビス(ジメチルメトキシシリル)ヘキサン、ビス(ジメチルメトキシシリル)オクタン、ビス(ジメチルメトキシシリル)ノナン、ビス(ジメチルメトキシシリル)デカン、ビス(ジメチルメトキシシリル)ドデカン、ビス(ジメチルメトキシシリル)テトラドデカン、ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、ビス(メチルジエトキシシリル)ベンゼン、ビス(エチルジメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(エチルジエトキシシリル)ベンゼン、ビス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン、ビス(ジメチルエトキシシリル)ベンゼン、ビス(ジエチルメトキシシリル)ベンゼン、ビス(ジエチルエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン。 【0077】6. 加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F) 本発明において、加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)とは、本発明のプロトン伝導性膜の原料の一つであり、ゾル−ゲル反応により架橋し、ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)及びアミノ基含有構造体(C)となる。 加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)


    は、下記の化学式(6)又は(7)から選択された少なくも1つの化合物であり、分子内に−(CH

    )a−


    (NH−(CH

    )b)c−NH−(CH

    )a−で表される2価の基、又は−(CH

    )a(NH(CH


    )bNR

    で表される1価の基を有しており、アミノ基がプロトン伝導性付与剤(D)と相互作用することでプロトン伝導性を発現し、ヒドロカーボン部分が適度な可撓性と適度なガスやイオンの透過性を本発明のプロトン伝導性膜に付与することができる。 【0078】 【化8】 (R

    は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Yは、化学式(3)で表される基である。また、x及びyは、0または1であり、同時に同じ数であっても、異なっていてもよい。) 【0079】 【化9】 (R

    は、メチル、エチル、プロピル又はフェニル基から選択されたいずれかの基であり、同一であっても異なっていてもよい。Zは、化学式(4)で表される基である。また、xは、0または1である。) 【0080】化学式(6)であらわされる化合物の具体例としては、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)


    アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、


    ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N

    ´ −ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラメチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン。 【0081】ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタメチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ノナメチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)デカメチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリル)ドデカメチレンジアミン、ビス(トリメエキシシリルプロピル)テトラドデカメチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラメチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタメチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ノナメチレンジアミン。 【0082】ビス(トリメトキシシリルプロピル)デカメチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ドデカメチレンジアミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラドデカメチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)トリメチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)オクタメチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ノナメチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)デカメチレンジアミン。 【0083】ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)


    ドデカメチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)テトラドデカメチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)トリメチルジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)オクタメチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)ノナメチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)デカメチレンジアミン。 【0084】ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)


    ドデカメチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)テトラドデカメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)トリメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)オクタメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ノナメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)デカメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ドデカメチレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)テトラドデカメチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)トリメチレンジアミン。 【0085】ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)


    ヘキサメチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)オクタメチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ノナメチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)デカメチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ドデカメチレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)テトラドデカメチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)p−フェニレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)p−フェニレンジアミン、ビス(エチルジメトキシシリルエチル)p−


    フェニレンジアミン、ビス(エチルジエトキシシリルプロピル)p−フェニレンジアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)p−フェニレンジアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)p−フェニレンジアミン。 【0086】ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)


    4、4'−ジアミノジフェニルアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルアミン、ビス(エチルジメトキシシリルエチル)4、


    4'−ジアミノジフェニルアミン、ビス(エチルジエトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルアミン、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)4、


    4'−ジアミノジフェニルアミン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)4、


    4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(エチルジメトキシシリルエチルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(エチルジエトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)4、4'−ジアミノジフェニルエーテル。 【0087】化学式(7)であらわされる化合物の具体例としては、下記のものが例示される。 本発明においては、化学式(7)で表される化合物は、化学式(7)に限定されるものではなく、一部が不飽和体や、異性体、


    ヒドロキシ置換体、官能基置換体等となっている化合物も包含する。 3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−


    アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、


    N−(6−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、o−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−


    (3−アミノプロピル)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン。 【0088】3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3


    −アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−


    アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N


    −フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、(3−


    トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン。 【0089】7. プロトン伝導性膜の製造方法本発明のプロトン伝導性膜は、例えば、次の1)〜3)


    に述べる幾つかの製造方法により作製することができる。 【0090】1)ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を形成する置換基(例えば、加水分解性シリル化合物)を有する加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)とを、プロトン伝導性付与剤(D)と混合した混合物を調製する第一の工程、それを公知の手段で製膜する第二の工程、製膜された材料に含まれるケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を形成する置換基(例えば加水分解性シリル化合物)を加水分解、縮合反応により3次元架橋構造体(A)を形成する、いわゆるゾルゲル(sol−gel)反応を行う第三の工程を経ることで3次元架橋構造体(A)を形成し、目的とするプロトン伝導性膜を得る方法。 【0091】2)ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を形成する置換基(例えば、加水分解性シリル化合物)を有する加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)を含む反応系を調製し、それを公知の手段で製膜した後、


    水蒸気または水を存在させることにより、ゾルゲル(s


    ol−gel)反応を行い3次元架橋構造体(A)を形成し、そのようにして得られた膜と、プロトン伝導性付与剤(D)を含む溶液とを接触させ、膜中にプロトン伝導性付与剤(D)を導入することにより、目的とするプロトン伝導性膜を得る方法。 【0092】3)有機構造体(B)及びアミノ基含有構造体(C)と共有結合可能な基(例えば、ビニル基等の不飽和結合、水酸基、アミノ基、イソシアネート基などの共有結合可能な官能基)を有するケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を膜状に形成、これに上記共有結合可能な基と反応する置換基を有する炭素原子含有化合物及びプロトン伝導性付与剤(D)を含浸させ、(A)と(B)及び(C)に共有結合を形成させることにより、目的とするプロトン伝導性膜を得る方法。 【0093】本発明の製法については、上記製造方法に何ら限定されるものではないが、これらの中でも、操作の簡便さ、信頼性、製造設備等の面から、特に前記1)


    の方法が好ましい。 【0094】次に、本発明のプロトン伝導性膜の製造方法についてさらに詳記するため、前記1)又は2)の方法を各工程の順に沿って説明する。 本発明のプロトン伝導性付与剤の好適な製造方法においては、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を形成する置換基(例えば、加水分解性シリル化合物)を有する加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)とを、プロトン伝導性付与剤(D)との混合物に調製する第一工程を含む。 【0095】ここで、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を形成する置換基としては、加水分解性シリル基が好ましい。 加水分解性シリル基としては、


    例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリフェノキシシランなどのトリアルコキシシラン類、トリクロロシラン等のトリハロゲン化シラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシランなどのジアルコキシまたはジハロゲン化シリル基、


    ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルクロロシランなどのモノアルコキシまたはモノハロゲン化シリル基、あるいは、ヒドロキシシリル基などを用いることができる。 これら加水分解性シリル基は、


    種々の化合物が市販されており、容易にかつ安価に入手可能であり、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋体を形成するsol−gel反応を制御することも容易である。 【0096】また、その際、これらにチタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの他の金属酸化物を与える加水分解性金属化合物、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウムの(モノ、ジ、トリ)アルコキシド、あるいは、アセチルアセトンなどとの錯体などの置換基を含む炭素原子含有化合物を加えても良い。 これらケイ素以外の加水分解性金属化合物は、添加量に制限はないが、コストや反応制御の容易性から、加水分解性シリル基に対して50mol%以下の添加量とすることが好ましい。 【0097】さらに、これらに、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体の前駆体として、加水分解性無機化合物を加えても良い。 こうした加水分解性無機化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−イソプロポキシシラン、テトラ−


    n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、又は、これらのモノアルキル、ジアルキル等のアルコキシシリケート、フェニルトリエトキシシラン、ハロゲン化シラン、テトラエトキシチタン、テトラ−イソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−


    ブトキシチタン、又は、これらのモノアルキル、ジアルキル体、アセチルアセトン等の架橋反応速度制御基置換体を含むアルコキシチタネートやそのオリゴマー、及びアルコキシジルコネート等が挙げられる。 加水分解性金属化合物の添加比率は、加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)


    の合計量に対して、30mol%以下とすることが望ましい。 30mol%以上にすると、炭素原子含有相と無機相の相分離構造が不明確になり、高いプロトン伝導性が発揮できない。 【0098】加水分解性シリル基は、ケイ素−酸素からなる三次元架橋構造体の前駆体であり、より強靱かつプロトン伝導性の膜を得るためには、加水分解性シリル基を2つ有するものが好ましく用いられる。 加水分解性シリル基が1つだけではsol−gel反応の後の架橋が不十分であり、十分な膜の強度は得られず、また相分離構造も容易に崩れるために伝導度が確保できないので、


    2つ以上の結合を有していることが好ましい。 一方、3


    つ以上の結合を有しているものは、材料の入手が困難であり、また、架橋密度が上がり硬くなり、柔軟性が損なわれるため、結合数としては2が特に好ましい。 ただし、(A)と(B)との結合を十分に有しており、膜の柔軟性と伝導安定性が確保できれば、(C)と(A)及び(B)の結合は、1つのみであっても、2つ以上結合しているものを含有していてもよい。 【0099】プロトン伝導性付与剤(D)については、


    上述のものを使用するが、第一の工程では、適当な溶媒を用いてもよい。 かかる有機溶剤としては、プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテルのようなエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルのようなエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、


    イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールのようなアルコール系溶剤、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジフェニルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンなどの鎖状シロキサン系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘプタメチルビニルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シクロシロキサン系溶剤等が例示が、これらに限定されるものではなく、有機物質や金属アルコキシド等の溶解、混合に使用可能なものであれば何でもよい。 【0100】溶媒の比率については、特に限定はないが、通常、固形分濃度が80〜10wt%程度の濃度が好ましく用いることができる。 また、第一の工程において、前述した種々の添加剤を加えても良い。 【0101】次いで、第一の工程では、プロトン伝導性付与剤(D)を加水分解性シリル基を2つ以上有する有機ケイ素化合物(E)及び加水分解性シリル基を1つ以上有するアミノ基含有有機ケイ素化合物(F)と混合し、前駆溶液(膜形成用原料混合物を含む反応系)を得る。 なお、(D)を含む溶液と(E)及び(F)を含む溶液を別途調製した後に混合しても良いし、工程を簡略化するため、これらの原料を同時に混合してもよい。 加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物(E)及び(F)の合計量1当量に対して、0.1〜3当量が好ましく用いることができる。 0.1当量未満では十分なプロトン伝導性は得られず、3当量より多ければ、膜がもろくなったり、プロトン伝導性付与剤(D)が膜から脱落したりする。 【0102】本発明のプロトン伝導性膜の好適な製造方法においては、第一の工程で得られた前駆溶液を、キャスト、コート等の公知の方法により膜状とする第二の工程を含む。 膜状にする方法としては、均一な膜を得ることができる方法であれば、特に限定はない。 膜の厚みは、10μmから1mmの間で任意の厚みをとることができるが、プロトン伝導性と燃料の透過性、膜の機械的強度から、適宜決定される。 膜の厚みは、特に限定されないが、通常、乾燥厚みが30〜300μmのものが好ましく用いることができる。 【0103】本発明のプロトン伝導性膜の好適な製造方法においては、製膜された材料に含まれるケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造体(A)を形成する置換基(例えば、加水分解性シリル化合物)を加水分解、縮合反応により3次元架橋構造体(A)を形成する、いわゆるゾルゲル(sol−gel)反応を行う第三の工程を含む。 第三の工程では、室温から300℃程度までの任意の温度で加温するいわゆるsol−gelプロセスを経ることにより、目的とする膜を得ることができる。 第三の工程における加温の際には、通常のオーブンによる加熱、オートクレーブによる加圧加熱等、公知の方法が使用できる。 【0104】また、第三の工程の際には、加水分解・縮合を効率的に行うため、あらかじめ前駆体溶液に水(G)を加えても良いし、水蒸気下で加熱をしても良い。 水(G)を加える場合には、前駆体溶液が分離などしない範囲であれば、特に限定はないが、通常、加水分解性シリル基に対して0.1〜50mol等量添加することが好ましい。 また、プロトン伝導性付与剤(D)


    は、通常、結晶水を有しているため、敢えて水を加えずに、(D)の結晶水を用いることもできる。 一方、水蒸気下で行う際には、相対湿度60%以上で行うことが好ましく、特に、飽和水蒸気下で行うことが好ましい。 このように水(G)を添加するか、または水蒸気雰囲気で加熱を行うと、加水分解及び縮合が効率的に起こり、熱に対してより安定な膜となる。 【0105】また、この際、3次元架橋構造体の生成を加速するために、あらかじめ反応系内に触媒として塩酸、硫酸、リン酸等の酸を加えておいてもよい。 3次元架橋構造は、塩基によっても加速されるため、例えば、


    アンモニア等の塩基触媒を用いてもよいが、塩基触媒を用いるとプロトン伝導性付与剤と反応する可能性が高く、好ましくは酸を用いる。 【0106】さらに、第三の工程を100〜300℃で行うか、あるいは、第三の工程の後、100〜300℃


    でエージング(養生)を行うことが好ましい。 本発明のプロトン伝導性膜を、100℃以上の高温で用いる場合には、使用温度以上の温度条件で加熱することが好ましい。 この加熱は、第三の工程をそのまま100〜300


    ℃で行っても良いし、第三の工程を例えば5〜40℃で2時間以上かけてsol−gel硬化し、その後に10


    0℃〜300℃の工程を行っても良い。 これら第一から第三の工程を経て得られた膜は、必要に応じて水洗しても良い。 用いる水は、蒸留水、イオン交換水など金属イオンを含まないものが好ましい。 また、膜を得た後に、


    紫外線や電子線を照射し、さらに架橋させてもよい。 【0107】このようにして得られたプロトン伝導性膜は、従来に例を見ない耐熱性や耐久性に優れしかも高温でも優れたプロトン伝導性を示す画期的な有機無機複合膜であり、燃料電池の膜として好適に用いることができる。 本発明のプロトン伝導性膜を用いて燃料電池とするためには、膜と触媒担持電極を接合した、いわゆる膜−


    電極接合体を作製する。 この膜−電極接合体の製造方法は、特に限定されないが、熱プレスする方法、プロトン伝導性を有する組成物を膜及び/又は電極に塗布する方法等を適宜用いることができる。 そして、本発明のプロトン伝導性膜は、固体高分子型燃料電池の電解膜にとどまらず、化学センサー、イオン交換膜などにも利用できる。 【0108】また、上記のアルコキシ基を有する液状化合物を加水分解し、3次元架橋構造体(A)を得るために、必要に応じて、触媒を用いてもよい。 かかる触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸のような無機酸、無水酢酸、氷酢酸、プロピオン酸、クエン酸、安息香酸、


    ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシランのようなクロロシラン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン、ジメチルヒドロキシアミン、ジメチルヒドロキシアミン、ジエチルヒドロキシアミンのような有機塩類、


    オクタン酸鉄、ナフテン酸鉄、オクタン酸コバルト、オクタン酸マンガン、ナフテン酸スズ、オクタン酸鉛のような有機酸金属塩、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズモノオレエート、ジブチルスズジメトキシド、酸化ジブチルスズのような有機スズ化合物、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテートなどのような第4


    級アンモニウム塩等が例示される。 【0109】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づき説明するが、


    本発明は、これにより何ら限定されるものではない。 なお、実施例や比較例で使用する化合物、溶媒等は、全て市販品をそのまま用いた。 また、作製されたプロトン伝導性膜の評価物性値は、それぞれ以下にまとめた評価法によるものである。 【0110】評価法【0111】(1)膜強度評価プロトン伝導性膜の曲げ官能試験を実施した。 評価基準は次のとおりである。 ○ … 曲げ可能、可撓性有り。 × … 曲げ不可能。 【0112】(2)低温プロトン伝導性評価本発明のプロトン伝導性膜の両面にカーボンペースト(ConductingGraphite Pain


    t:LADO RESEACH INDUSTRIE


    S,INC. )を塗り、白金板と密着させた。 この白金板に、電気化学インピーダンス測定装置(ソラトロン社製、1260型)を用いて周波数0.1Hz〜100k


    Hzの領域でインピーダンス測定し、イオン伝導性膜のプロトン伝導度を評価した。 なお、上記測定では、サンプルは、電気的に絶縁された密閉容器中に支持され、水蒸気雰囲気(95〜100%RH)で、温度コントローラーによりセル温度を室温から160℃まで変化させ、


    それぞれの温度でプロトン伝導度の測定を行った。 代表値として、60℃の測定値を示した。 また、代表的な実施例については、140℃のみ、あるいは60℃、16


    0℃の評価結果を示した。 100℃の測定においては、


    測定槽内を加圧(5気圧)して測定を行った。 【0113】(3)耐熱性評価プロトン伝導性膜を、飽和水蒸気下、140℃オートクレーブ中にて5時間加熱した。 加熱後の評価は、目視、


    及び、曲げ官能試験を実施した。 ○ … 実施前と変わらない。 × … 膜の脆化・分解・変色・変形が起こる。 【0114】実施例1 1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gel


    est社製)0.79g及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(Gelest社製)0.07gをイソプロピルアルコール1.5gに溶解した。 これとは別に、リンタングステン酸・n水和物(和光純薬社製)


    0.69gにイソプロピルアルコール1.5gを加えた。 この両者を併せ、数分間撹拌した後、内径8.4c


    mのポリスチレンシャーレ(山本製作所製)にそそぎ込み、室温(20℃)にて15時間、80℃飽和水蒸気下にて10時間加熱し、更に100℃オーブンにて加熱して、透明で可撓性のある膜を得た。 評価、測定前に、6


    0℃流水にて2時間洗浄した。 評価結果を表1に示す。 【0115】[実施例2]1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製)0.79g、


    (トリメトキシシリルプロピル)アミン(Gelest


    社製)0.05g、及びリンタングステン酸・n水和物(和光純薬社製)0.68gを用いたこと以外は、実施例1同様にして膜を得た。 評価結果を表1に示す。 【0116】[実施例3]1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製)0.79g及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(Gele


    st社製)0.07gをイソプロピルアルコール1.5


    gに溶解し、これに対し、0.1N塩酸0.40gを用いたこと以外は、実施例1同様にして膜を得た。 評価結果を表1に示す。 【0117】比較例1 1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gel


    est社製)0.89g及び0.1N塩酸0.20gを用いたこと以外は、実施例1同様にして膜を得た。 評価結果を表1に示す。 【0118】[比較例2]1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製)0.79g、


    (トリメトキシシリルプロピル)アミン(Gelest


    社製)0.05g、及び0.1N塩酸0.20gを用いたこと以外は、実施例1同様にして膜を得た。 評価結果を表1に示す。 【0119】[比較例3]1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製)0.79g、


    (トリメトキシシリルプロピル)アミン(Gelest


    社製)0.05g、及び0.1N水酸化ナトリウム0.


    20gを用いたこと以外は、実施例1同様にして膜を得た。 評価結果を表1に示す。 【0120】 【表1】 【0121】表1の結果より明らかのように、膜中に、


    ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)、アミノ基含有構造体(C)及びプロトン伝導性付与剤(D)とを有するプロトン伝導性膜(実施例1〜


    3)においては、高い伝導性と耐熱性を両立することができる。 またアミノ基含有構造体(C)を有しない場合(比較例1)、アミノ基含有構造体(C)を有する場合もプロトン伝導性付与剤(D)の量が十分でない場合(比較例2)、またプロトン伝導性付与剤(D)の代わりに塩基性硬化触媒を用いた場合(比較例1)のいずれもプロトン伝導性を確保することはできない。 【0122】 【発明の効果】本発明によれば、ケイ素−酸素結合による架橋構造を有する架橋性のプロトン伝導性膜であって、該プロトン伝導性膜中に、ケイ素−酸素三次元架橋構造体(A)、有機構造体(B)、アミノ基含有構造体(C)及びプロトン伝導性付与剤(D)とを有することを要件とするプロトン伝導性膜を作成することにより、


    高温においても良好に使用可能な、耐熱性、耐久性、寸法安定性、可撓性、機械的強度及び燃料バリア性に優れたプロトン伝導性膜を得ることができた。 これにより、


    近年注目を集めている高分子固体電解質型燃料電池の動作温度を100℃以上に上げることができ、その結果、


    発電効率の向上、触媒のCO非毒の低減を達成することが期待できる。 また、動作温度の向上は、熱利用によるコジェネシステムへの展開も考えられ、劇的なエネルギー効率の向上へとつながる。

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 3/24 C08K 3/24 C08L 83/04 C08L 83/04 H01B 13/00 H01B 13/00 Z H01M 8/02 H01M 8/02 P 8/10 8/10 (72)発明者 杉本 俊哉 茨城県つくば市和台32 積水化学工業株式 会社内(72)発明者 野村 茂樹 茨城県つくば市和台32 積水化学工業株式 会社内Fターム(参考) 4D006 GA41 JA01C MB04 MB15 MB16 MB19 MC66 MC66X MC78 MC78X NA14 NA41 NA62 PA01 PA05 PB18 PB66 PC80 4F071 AA67C AB19C AE22C AF36C AH15 BB02 BC01 4J002 CP031 CP091 DE166 DE186 FD206 GQ00 5G301 CA30 CD01 5H026 AA06 BB00 CX05 EE18 HH05

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