末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法

申请号 JP2015151011 申请日 2015-07-30 公开(公告)号 JP2016108529A 公开(公告)日 2016-06-20
申请人 信越化学工業株式会社; 发明人 須賀 祐輝; 原田 裕次; 渡辺 武; 野中 汐里;
摘要 【課題】重金属を用いず簡便に末端にアミノ基を有する狭分散かつ高純度なポリアルキレングリコール誘導体を製造する方法。 【解決手段】一般式(V)で表される化合物とアルキレンオキシドとを反応させ、反応生成物と一般式(I)で表される求電子剤とを反応させて、得られた生成物を重金属を用いず脱保護する、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。 R A 3 O(R A 4 O) k−1 R A 4 O − M + (V) (R A 3 は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の炭化 水 素基;R A 4 は炭素数2〜8のアルキレン基;kは2〜5の整数;Mはアルカリ金属) 【化1】 (R A 1a 及びR A 1b は、互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方がHで他方がアミノ基の保護基を示すか、又は互いに結合して環状保護基を形成し、かつ前記保護基は重金属を用いず脱保護できる;R A 2 は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基;Xは脱離基) 【選択図】なし
权利要求

(a)下記一般式(V)で表される化合物とアルキレンオキシドとを重合溶媒中で反応させる工程と、 RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表し、Mはアルカリ金属を表す) (b)前記工程(a)で得られた反応生成物と下記一般式(I)で表される求電子剤とを反応させる工程と、 (一般式(I)中、RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、Xは脱離基を表す) (c)前記工程(b)で得られた反応生成物を重金属触媒を用いることなく脱保護する工程と を含む、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。[工程1]〜[工程4]を含む、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法: (一般式(I)〜(III)中、 RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、 RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、 RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、 RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、 Xは脱離基を表し、 nは3〜450の整数である) [工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3及びRA4は前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3及びRA4と同一であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3、RA4及びnは、前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3、RA4及びnと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程3]前記一般式(VI)で表される化合物を、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させることにより、前記一般式(II)で表される化合物を得る工程;及び [工程4]前記一般式(II)で表される化合物を、重金属触媒を用いることなく脱保護し、前記一般式(III)で表される化合物を得る工程。前記[工程3]において使用する前記一般式(I)で表される求電子剤が、下記(I−I)〜(I−IV)の少なくともいずれかである、請求項2に記載の方法: (I−I)前記一般式(I)中、RA1a及び/又はRA1bが、Si(R1)3(式中、R1は独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基であり、R1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成していてもよい)で表される構造の保護基を示す求電子剤; (I−II)前記一般式(I)中、RA1a及び/又はRA1bが、RA6OCO(式中、RA6は炭素数1〜20の炭化水素の残基であり、該残基はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ケイ素原子、リン原子又はホウ素原子を含んでいてもよい)で表される構造の保護基を示す求電子剤; (I−III)前記一般式(I)中、RA1a及びRA1bが、互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示す求電子剤;及び (I−IV)前記一般式(I)中、RA1a及び/又はRA1bが、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、(2−トリメチルシリル)エタンスルホニル基、アリル基、ピバロイル基、メトキシメチル基、ジ(4−メトキシフェニル)メチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリニルメチル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル基、9−フェニルフルオレニル基、[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル基、及びN−3−アセトキシプロピル基からなる群から選択される保護基を示す求電子剤。前記[工程3]において使用する前記一般式(I)で表される求電子剤が、下記一般式(I−I−I)で表される求電子剤である、請求項2又は3に記載の方法。 (一般式(I−I−I)中、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基であり、或いはR1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成することもでき、RA2及びXは前記一般式(I)中のRA2及びXと同一である)前記[工程3]において、前記[工程2]で得られた前記一般式(VI)で表される化合物を、精製することなく、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。前記[工程1]において、一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を合成した後の、一般式(V)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物との物質量比率が100:0〜80:20となるように、一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを反応させる、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。前記[工程1]において、一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を合成した後、一般式(IV)で表される化合物を減圧留去することにより、一般式(V)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物との物質量比率を100:0〜98:2とする、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。前記[工程2]が、前記[工程1]において得られた反応生成物を前記重合溶媒に溶解させることを含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。前記[工程2]の反応が、30〜60℃の反応温度で行われる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。前記[工程3]において、前記一般式(I)で表される求電子剤の使用量が、前記一般式(VI)で表される化合物のモル数に対して1〜20当量である、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。前記[工程3]が、前記[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を酸性化合物又はプロトン性化合物で反応停止させて下記一般式(IX)で表される化合物を得ることと、得られた前記一般式(IX)で表される化合物を精製することとをさらに含み、かつ、前記[工程3]における前記一般式(VI)で表される化合物と前記一般式(I)で表される求電子剤との反応が、精製後の前記一般式(IX)で表される化合物を、塩基性化合物の存在下で、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させる操作によって実施される、請求項2〜4及び6〜10のいずれか1項に記載の方法。 (一般式(IX)中、RA3、RA4、及びnは前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3、RA4、及びnと同一である)前記[工程4]で得られた前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物中の、下記一般式(VII)で表される化合物及び下記一般式(VIII)で表される化合物のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された面積含有率が3%以下であり、かつ、前記反応生成物中の、下記一般式(IX)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴により測定された組成比含有率が2mol%以下である、請求項2〜11のいずれか1項に記載の方法。 (一般式(VII)〜(IX)中、RA2、RA3、RA4及びnは前記一般式(I)〜(III)について定義したとおりであって、前記一般式(I)〜(III)のRA2、RA3、RA4及びnと同一である)前記[工程4]で得られた前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物中の重金属不純物含有量が100ppb以下であり、前記重金属不純物がCo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、及びCrからなる群から選択される1種以上である、請求項2〜12のいずれか1項に記載の方法。前記[工程4]が、前記一般式(III)で表される化合物を得た後に、前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物と塩基性化合物とを反応させて塩を生成させ、次いで生成した塩をろ過によって除去することを更に含む、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。前記[工程4]が、前記一般式(III)で表される化合物を得た後に、前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物と塩基性化合物とを反応させて塩を生成させ、次いで生成した塩を吸着材を用いて除去することを更に含む、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。前記[工程3]又は[工程4]の後に、[工程5]〜[工程8]をさらに含む、請求項2〜15のいずれか1項に記載の方法: [工程5]前記[工程3]又は[工程4]の生成物を強酸性陽イオン交換樹脂と反応させた後、該強酸性陽イオン交換樹脂を洗浄することにより、前記一般式(III)で表される化合物以外の物質を分離する工程; [工程6]前記強酸性陽イオン交換樹脂を塩基性化合物と反応させることにより、前記一般式(III)で表される化合物を分離する工程; [工程7]前記[工程6]で得られた反応液を濃縮する工程;及び [工程8]前記[工程7]で得られた濃縮液を前記一般式(III)で表される化合物の貧溶媒中に滴下し、析出させることにより前記一般式(III)で表される化合物を得る工程。[工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程と、 RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程 RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3及びRA4は、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3及びRA4と同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりであり、nは3〜450の整数である) とを含む、一般式(VI)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。[工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程と、 RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程 RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3及びRA4は、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3及びRA4と同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりであり、nは3〜450の整数である) とを含み、かつ、 前記[工程2]の後に、前記[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を酸性化合物又はプロトン性化合物で反応停止させて下記一般式(IX): (一般式(IX)中、RA3及びRA4は前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3及びRA4と同一であり、nは前記一般式(VI)について定義したとおりである) で表される化合物を得ることを更に含む、一般式(IX)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。前記[工程2]が、前記アルキレンオキシドとの反応前に、前記一般式(V)で表される化合物が前記重合溶媒に溶解されたことを確認することを更に含み、前記一般式(V)で表される化合物が前記重合溶媒に溶解されたことは、目視により前記重合溶媒中に白濁が見られないことによって確認する、請求項2〜18のいずれか1項に記載の方法。前記一般式(V)で表される化合物が前記重合溶媒に溶解されたことを確認する際の、前記一般式(V)で表される化合物の質量に対する前記重合溶媒の質量が10倍量以下である、請求項19に記載の方法。

(a)下記一般式(V)で表される化合物とアルキレンオキシドとを重合溶媒中で反応させる工程と、 RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表し、Mはアルカリ金属を表す) (b)前記工程(a)で得られた反応生成物と下記一般式(I)で表される求電子剤とを反応させる工程と、 (一般式(I)中、RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、Xは脱離基を表す) (c)前記工程(b)で得られた反応生成物を重金属触媒を用いることなく脱保護する工程と を含む、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。[工程1]〜[工程4]を含む、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法: (一般式(I)〜(III)中、 RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、 RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、 RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、 RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、 Xは脱離基を表し、 nは3〜450の整数である) [工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3及びRA4は前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3及びRA4と同一であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3、RA4及びnは、前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3、RA4及びnと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程3]前記一般式(VI)で表される化合物を、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させることにより、前記一般式(II)で表される化合物を得る工程;及び [工程4]前記一般式(II)で表される化合物を、重金属触媒を用いることなく脱保護し、前記一般式(III)で表される化合物を得る工程。前記[工程3]において使用する前記一般式(I)で表される求電子剤が、下記(I−I)〜(I−IV)の少なくともいずれかである、請求項2に記載の方法: (I−I)前記一般式(I)中、RA1a及び/又はRA1bが、Si(R1)3(式中、R1は独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基であり、R1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成していてもよい)で表される構造の保護基を示す求電子剤; (I−II)前記一般式(I)中、RA1a及び/又はRA1bが、RA6OCO(式中、RA6は炭素数1〜20の炭化水素の残基であり、該残基はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ケイ素原子、リン原子又はホウ素原子を含んでいてもよい)で表される構造の保護基を示す求電子剤; (I−III)前記一般式(I)中、RA1a及びRA1bが、互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示す求電子剤;及び (I−IV)前記一般式(I)中、RA1a及び/又はRA1bが、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、(2−トリメチルシリル)エタンスルホニル基、アリル基、ピバロイル基、メトキシメチル基、ジ(4−メトキシフェニル)メチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリニルメチル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル基、9−フェニルフルオレニル基、[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル基、及びN−3−アセトキシプロピル基からなる群から選択される保護基を示す求電子剤。前記[工程3]において使用する前記一般式(I)で表される求電子剤が、下記一般式(I−I−I)で表される求電子剤である、請求項2又は3に記載の方法。 (一般式(I−I−I)中、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基であり、或いはR1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成することもでき、RA2及びXは前記一般式(I)中のRA2及びXと同一である)前記[工程3]において、前記[工程2]で得られた前記一般式(VI)で表される化合物を、精製することなく、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。前記[工程1]において、一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を合成した後の、一般式(V)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物との物質量比率が100:0〜80:20となるように、一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを反応させる、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。前記[工程1]において、一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を合成した後、一般式(IV)で表される化合物を減圧留去することにより、一般式(V)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物との物質量比率を100:0〜98:2とする、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。前記[工程2]が、前記[工程1]において得られた反応生成物を前記重合溶媒に溶解させることを含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。前記[工程2]の反応が、30〜60℃の反応温度で行われる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。前記[工程3]において、前記一般式(I)で表される求電子剤の使用量が、前記一般式(VI)で表される化合物のモル数に対して1〜20当量である、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。前記[工程3]が、前記[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を酸性化合物又はプロトン性化合物で反応停止させて下記一般式(IX)で表される化合物を得ることと、得られた前記一般式(IX)で表される化合物を精製することとをさらに含み、かつ、前記[工程3]における前記一般式(VI)で表される化合物と前記一般式(I)で表される求電子剤との反応が、精製後の前記一般式(IX)で表される化合物を、塩基性化合物の存在下で、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させる操作によって実施される、請求項2〜4及び6〜10のいずれか1項に記載の方法。 (一般式(IX)中、RA3、RA4、及びnは前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3、RA4、及びnと同一である)前記[工程4]で得られた前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物中の、下記一般式(VII)で表される化合物及び下記一般式(VIII)で表される化合物のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された面積含有率が3%以下であり、かつ、前記反応生成物中の、下記一般式(IX)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴により測定された組成比含有率が2mol%以下である、請求項2〜11のいずれか1項に記載の方法。 (一般式(VII)〜(IX)中、RA2、RA3、RA4及びnは前記一般式(I)〜(III)について定義したとおりであって、前記一般式(I)〜(III)のRA2、RA3、RA4及びnと同一である)前記[工程4]で得られた前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物中の重金属不純物含有量が100ppb以下であり、前記重金属不純物がCo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、及びCrからなる群から選択される1種以上である、請求項2〜12のいずれか1項に記載の方法。前記[工程4]が、前記一般式(III)で表される化合物を得た後に、前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物と塩基性化合物とを反応させて塩を生成させ、次いで生成した塩をろ過によって除去することを更に含む、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。前記[工程4]が、前記一般式(III)で表される化合物を得た後に、前記一般式(III)で表される化合物を含む反応生成物と塩基性化合物とを反応させて塩を生成させ、次いで生成した塩を吸着材を用いて除去することを更に含む、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。前記[工程3]又は[工程4]の後に、[工程5]〜[工程8]をさらに含む、請求項2〜15のいずれか1項に記載の方法: [工程5]前記[工程3]又は[工程4]の生成物を強酸性陽イオン交換樹脂と反応させた後、該強酸性陽イオン交換樹脂を洗浄することにより、前記一般式(III)で表される化合物以外の物質を分離する工程; [工程6]前記強酸性陽イオン交換樹脂を塩基性化合物と反応させることにより、前記一般式(III)で表される化合物を分離する工程; [工程7]前記[工程6]で得られた反応液を濃縮する工程;及び [工程8]前記[工程7]で得られた濃縮液を前記一般式(III)で表される化合物の貧溶媒中に滴下し、析出させることにより前記一般式(III)で表される化合物を得る工程。[工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程と、 RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程 RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3及びRA4は、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3及びRA4と同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりであり、nは3〜450の整数である) とを含む、一般式(VI)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。[工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程と、 RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程 RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3及びRA4は、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3及びRA4と同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりであり、nは3〜450の整数である) とを含み、かつ、 前記[工程2]の後に、前記[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を酸性化合物又はプロトン性化合物で反応停止させて下記一般式(IX): (一般式(IX)中、RA3及びRA4は前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3及びRA4と同一であり、nは前記一般式(VI)について定義したとおりである) で表される化合物を得ることを更に含む、一般式(IX)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。前記[工程2]が、前記アルキレンオキシドとの反応前に、前記一般式(V)で表される化合物が前記重合溶媒に溶解されたことを確認することを更に含み、前記一般式(V)で表される化合物が前記重合溶媒に溶解されたことは、目視により前記重合溶媒中に白濁が見られないことによって確認する、請求項2〜18のいずれか1項に記載の方法。前記一般式(V)で表される化合物が前記重合溶媒に溶解されたことを確認する際の、前記一般式(V)で表される化合物の質量に対する前記重合溶媒の質量が10倍量以下である、請求項19に記載の方法。[工程1]〜[工程3]を含む、下記一般式(II)で表される末端に保護アミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法: (一般式(I)及び(II)中、 RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、 RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、 RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、 RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、 Xは脱離基を表し、 nは3〜450の整数である) [工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H−、RX−M+、[RY]・−M+、及びRZO−M+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3及びRA4は前記一般式(II)について定義したとおりであって、前記一般式(II)のRA3及びRA4と同一であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4O−M+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程;及び RA3O(RA4O)n−1RA4O−M+ (VI) (一般式(VI)中、RA3、RA4及びnは、前記一般式(II)について定義したとおりであって、前記一般式(II)のRA3、RA4及びnと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程3]前記一般式(VI)で表される化合物を、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させることにより、前記一般式(II)で表される化合物を得る工程。下記一般式(II−1)で表される、シリル保護アミノ基含有ポリアルキレン化合物誘導体。 (一般式(II−1)中、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基であり、或いはR1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成することもでき、RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、nは3〜450の整数である)

说明书全文

本発明は末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法に関する。

近年、ドラッグデリバリーシステムの分野において、親性セグメントと疎水性セグメントから形成されるブロック共重合体を用いて、高分子ミセルに薬物を封入する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。この方法を用いることにより、高分子ミセルが薬剤のキャリアとして機能し、生体内での薬剤の除放化や病変部位への集中的投与を含む様々な効果が得られる。

親水性セグメントとしては、ポリアルキレングリコール骨格を用いた例が多数提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。ポリアルキレングリコール骨格を有する化合物は、生体内での毒性が低いうえ、腎臓での排泄を遅延させることが可能である。その結果、ポリアルキレングリコール骨格を有さない化合物と比較して、血中での滞留時間を延ばすことができる。そのため、ポリアルキレングリコール誘導体で薬剤をミセル化して使用する場合、その投与量や投与回数の低減を実現することができる。

ポリアルキレングリコール誘導体のうち、末端にアミノ基を有する化合物は、α−アミノ酸−N−カルボキシ無水物との開環重合反応によりポリアルキレングリコール骨格とアミノ酸骨格から構成されるブロック共重合体へ誘導することが可能である。そして、得られたブロック共重合体を用いて高分子ミセル内に薬剤を封入する例が多数提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。

このような、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の合成方法も知られている(例えば、特許文献4、5を参照)。これらの方法では、一価アルコールの金属塩を重合開始剤に用いてアルキレンオキシドの重合を行った後、重合末端を水酸基、次いで2−シアノエトキシ基に変換し、シアノ基の水素還元を経て最終的にアミノ基含有置換基(3−アミノ−1−プロポキシ基)へと誘導する。

置換ジエチレングリコールのカリウム塩を用いたジグライム中におけるエチレンオキシドの重合例が知られており、この例においては金属塩を重合溶媒に溶解させるために金属塩合成時、開始剤原料であるアルコールを過剰量残してある。また、80〜140℃の反応温度を必要とすることが明記されている(特許文献6を参照)。

特許第2690276号公報

特許第2777530号公報

特開平11−335267号公報

特許第3050228号公報

特許第3562000号公報

特許第4987719号公報

重合開始剤として使用される一価アルコールの金属塩は、重合溶媒(例えばテトラヒドロフラン(以下THFと略す)などの有機溶媒)中に完全に溶解させることが難しい場合が多く、金属塩を重合溶媒に溶解させるためには金属塩合成時、開始剤原料であるアルコールを過剰量残しておく必要がある(例えば特許文献4では重合開始剤であるナトリウムメトキシド2molに対してメタノール13mol、特許文献6では重合開始剤であるジエチレングリコールモノメチルエーテルのカリウム塩0.024molに対して、ジエチレングリコールモノメチルエーテル0.209mol)。ところが、これらのアルコールが反応系中に存在すると、重合速度の低下が避けられず、重合速度を上げるためには高温や高圧などの厳しい反応条件が必要となる。(特許文献4、6を参照)。また、重合開始剤が重合溶媒に溶解しないと系内が均一にならないため、溶解した重合開始剤からのみ重合が進行し、得られるポリアルキレングリコール誘導体の分散度が広くなるという問題点がある。

また、一価アルコールは微量の水分を含む場合が多い。水分を含んだ状態で重合開始剤を調製してアルキレンオキシドとの重合を行うと両末端が水酸基の高分子化合物(以下、ジオールポリマーと略記)が副生する。一価アルコールの沸点が水より十分に高い場合は、減圧下で脱水することにより水分量を減らすことができるが、例えば末端がメチル基の場合に用いるメタノールは沸点が水よりも低いため、減圧下で脱水して水分を除去することは出来ない。そのため、メタノールを用いて金属塩を調製してアルキレンオキシドの重合を行うと、ジオールポリマーの生成が避けられない。ジオールポリマーは、構造や分子量などの諸物性が目的物と似ているため、分離精製することは極めて難しい。ジオールポリマーを不純物として含んだまま先の反応を進めた場合、適切な反応条件を選択しないと両末端にアミノ基を含むポリマーが生成する。このような不純物を含むポリマーをそのまま使用すると、ポリマーミセル化剤の設計上、目的の性能が得られなくなる可能性が生じるため、重合反応を行う際には水分を極低く抑えなければならない。

また、重金属は生体内に過剰に蓄積されると悪影響を及ぼすことが知られているが、特許文献4や特許文献5に記載の合成法では、ラネーニッケル触媒を用いた水素還元によりシアノ基をアミノメチル基へ変換しているため、最終生成物中に微量の金属が混入する可能性が懸念されている。さらに、この反応は一般に高温が必要とされ、それに伴いアクリロニトリルのβ脱離が進行し、目的物が収率よく得られないということや、ニトリル還元の中間体であるイミンへのアミン付加反応により生じる2級、3級アミンが生成するリスクがあるなどといった問題も残っていた。

本発明では、上記従来技術における諸問題を解決し、重金属触媒を用いず、温和な反応条件で簡便に、狭分散かつ高純度な末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。

本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、重合溶媒への十分な溶解性を有する化合物を重合開始剤に用いることにより、温和な条件でのアルキレンオキシドの重合を実現し、さらに得られた重合物をアミノ基が保護された求電子剤と反応させることにより、重金属触媒を用いず、簡便な工程で、最終的に末端にアミノ基を有する高純度な狭分散ポリアルキレングリコールへ誘導できることを見出した。

即ち、本発明は、下記(a)〜(c)の工程を含む、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法に関する。 (a)下記一般式(V)で表される化合物とアルキレンオキシドとを重合溶媒中で反応させる工程と; RA3O(RA4O)k−1RA4OM+ (V) (一般式(V)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、kは2〜5の整数を表し、Mはアルカリ金属を表す) (b)前記工程(a)で得られた反応生成物と下記一般式(I)で表される求電子剤とを反応させる工程と;

(一般式(I)中、RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、Xは脱離基を表す) (c)前記工程(b)で得られた反応生成物を重金属触媒を用いることなく脱保護する工程。

本発明は、また別の態様によれば、下記[工程1]〜[工程4]を含む、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法に関する。

(一般式(I)〜(III)中、RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基であり、RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基であり、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基であり、Xは脱離基を表し、nは3〜450の整数である) [工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H、RXM+、[RY]・−M+、及びRZOM+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)kH (IV) (一般式(IV)中、RA3及びRA4は前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3及びRA4と同一であり、kは2〜5の整数を表す) RA3O(RA4O)k−1RA4OM+ (V) (一般式(V)中、RA3、RA4、及びkは、前記一般式(IV)について定義したとおりであって、前記一般式(IV)のRA3、RA4、及びkと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程; RA3O(RA4O)n−1RA4OM+ (VI) (一般式(VI)中、RA3、RA4及びnは、前記一般式(II)及び(III)について定義したとおりであって、前記一般式(II)及び(III)のRA3、RA4及びnと同一であり、Mは前記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物について定義したとおりである) [工程3]前記一般式(VI)で表される化合物を、前記一般式(I)で表される求電子剤と反応させることにより、前記一般式(II)で表される化合物を得る工程;及び [工程4]前記一般式(II)で表される化合物を、重金属触媒を用いることなく脱保護し、前記一般式(III)で表される化合物を得る工程。

本発明によれば、医薬品や化粧品等の分野で用いられるブロック共重合体の原料として有用な、アミノ基含有ポリエチレングリコール誘導体の製造方法が提供される。本発明の製造方法を用いることにより、重合速度を低下させる原因である重合開始剤原料アルコールの実質的な存在なしに重合が可能となり、従来よりも温和な条件でアルキレンオキシドの重合を行うことができるとともに、微量の水分に起因するジオールポリマー等の不純物の生成を抑制して、簡便な工程で、高純度かつ狭分散のポリアルキレングリコール誘導体を製造することができる。また、この方法が精製工程も含む場合は、ポリアルキレングリコール誘導体の精製及び取り出しの際に凍結乾燥が不要のため、工業的な規模でポリアルキレングリコール誘導体を製造することができ、設備や工程の簡略化を実現することができるといったさらなる利点を有する。また、アミノ基が保護された求電子剤を用いることにより、重金属を用いた還元法を使わなくてすみ、それに伴う副生成物の混入を防ぐことができるため、医薬品において避けるべき重金属不純物と副生成物の混入というリスクを低減することが可能となる。さらに、本発明に係る製造方法により製造されたポリアルキレングリコール誘導体は、重合時に重合開始剤が系内に均一に溶解しているため狭分散性であり、ドラッグデリバリーシステムの分野において有用な親水性セグメントと疎水性セグメントから形成されるブロック共重合体へと誘導する際に、非常に有利に用いることができる。

本発明は、一実施形態によれば、下記一般式(III)で表される末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法であって、下記に示す[工程2]、[工程3]、及び[工程4]を含む方法である。また本発明は、好ましい実施形態によれば、下記一般式(III)で表される末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法であって、下記に示す[工程1]〜[工程4]を順次経る方法である。

[工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M+H、RXM+、[RY]・−M+、及びRZOM+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属を表し、Rxは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、RZは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を得る工程; [工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程; [工程3]前記一般式(VI)で表される化合物を、下記一般式(I)で表される求電子剤と反応させることにより、下記一般式(II)で表される化合物を得る工程;及び [工程4]前記一般式(II)で表される化合物を、重金属触媒を用いることなく脱保護し、下記一般式(III)で表される化合物を得る工程。

上記一般式(I)及び(II)中、RA1a及びRA1bは互いに独立にアミノ基の保護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はRA1a及びRA1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基である。RA1a及びRA1bの具体例は後述の[工程3]の説明中に記載するとおりである。

上記一般式(I)〜(III)中、RA2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基である。RA2の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のそれぞれから、水素原子が一つ脱離した基などが挙げられ、好ましくはエチル基、n−プロピル基のそれぞれから、水素原子が一つ脱離した基が挙げられる。

上記一般式(II)〜(VI)中、RA3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状もしくは環状の炭化水素基である。RA3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、0−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基が挙げられる。

上記一般式(II)〜(VI)中、RA4は炭素数2〜8のアルキレン基である。中でも、炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。即ち、エチレン基又はプロピレン基が好ましい。(RA4O)nは1種のオキシアルキレン基、例えばオキシエチレン基、又はオキシプロピレン基のみで構成されていてもよいし、二種以上のオキシアルキレン基が混在していてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が混在している場合、(RA4O)nは2種以上の異なるオキシアルキレン基がランダム重合したものであってもよいし、ブロック重合したものであってもよい。

上記一般式(I)中、Xは脱離基を表す。Xの脱離基の具体例としては、Cl、Br、I、トリフルオロメタンスルホナート(以下TfOと記す)、p−トルエンスルホナート(以下TsOと記す)、メタンスルホナート(以下MsOと記す)などが挙げられるが、これらに限定はされない。

上記一般式(II)、(III)及び(VI)中、nは3〜450の整数である。好ましくはn=10〜400、さらに好ましくはn=20〜350である。

上記一般式(IV)及び(V)中、k=2〜5である。一般式(V)における(RA4O)の繰り返し単位は重合溶媒への溶解性を高めるという効果を有しており、その観点からするとkは2以上であることが好ましい。また、前記一般式(IV)で表される化合物を、高純度で、かつ蒸留できる沸点とすることを考えると、k=2〜4とすることが好ましい。

上記一般式(V)及び(VI)中、Mはアルカリ金属である。Mのアルカリ金属の具体例としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ナトリウム−カリウム合金等を挙げることができる。

以下の実施形態の説明においては、時系列に沿って、[工程1]〜[工程4]の順に説明する。

[工程1]では、前記一般式(IV)で表される化合物を、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を合成する。 RA3O(RA4O)kH (IV) RA3O(RA4O)k−1RA4OM+ (V)

[工程1]において、一般式(IV)で表される化合物と反応させるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とは、Mで表されるアルカリ金属、M+Hで表されるアルカリ金属の水素化物、RXM+、[RY]・−M+で表される有機アルカリ金属(RXは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、RYは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表す)、及びRZOM+で表される1価アルコールのアルカリ金属塩(RZは、炭素数1〜6のアルキル基を表す)からなる群より選択される物質をいうものとする。

Mのアルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ナトリウム−カリウム合金等を挙げることができる。M+Hの具体例としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム等を挙げることができる。RXM+の具体例としては、エチルリチウム、エチルナトリウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルメチルカリウム、クミルナトリウム、クミルカリウム、クミルセシウム等を挙げることができる。[RY]・−M+の具体例としては、リチウムナフタレニド、ナトリウムナフタレニド、カリウムナフタレニド、アントラセンリチウム、アントラセンナトリウム、アントラセンカリウム、ビフェニルナトリウム、ナトリウム2−フェニルナフタレニド、フェナントレンナトリウム、ナトリウムアセナフチレニド、ナトリウムベンゾフェノンケチル、ナトリウム1−メチルナフタレニド、カリウム1−メチルナフタレニド、ナトリウム1−メトキシナフタレニド、カリウム1−メトキシナフタレニド等を挙げることができ、これらの化合物は1種単独で、または2種以上を混合して用いることもできる。RZOM+におけるRZの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定はされない。中でも、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物としては、副反応を抑制する観点から、ナトリウム、カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムが好ましく、また反応性の高さの観点から、ナトリウムナフタレニド、カリウムナフタレニド、アントラセンナトリウム、アントラセンカリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドが好ましい。

[工程1]において使用されるアルカリ金属、M+H、RXM+、[RY]・−M+、及び/又はRZOM+の使用量は、上記一般式(IV)で表される化合物のモル数に対し、0.5〜3.0当量、好ましくは0.8〜2.0当量、さらに好ましくは0.9〜1.0当量である。特に使用するアルカリ金属化合物が後の[工程2]で重合開始剤としても働きうる場合には、アルカリ金属化合物の使用量を1.0当量以下とする必要がある。また、例えばカリウムメトキシドのように開始剤原料アルコールと反応した後にアルコールを生成するアルカリ金属化合物を使用する場合には、[工程1]で生成するメタノールを一般式(V)で表される化合物の合成後に減圧留去する必要もあり、平衡反応により生成するカリウムメトキシドが後の[工程2]において重合開始剤として働かないようにする必要がある。

[工程1]において、前記一般式(V)で表される化合物を合成する際には、例えば適切な溶媒に、一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを添加し混合することにより反応させてもよいし、一般式(IV)で表される化合物中にアルカリ金属又はアルカリ金属化合物を適切な溶媒中に混合したものを滴下してもよいし、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物を適切な溶媒中に混合したものに一般式(IV)で表される化合物を滴下してもよい。[工程1]において使用する溶媒の具体例としては、THFや1、4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が例示できる。溶媒としては、金属ナトリウム等の脱水剤を用いて蒸留したものを使用することができる。溶媒の使用量は特に限定されないが、前記一般式(IV)で表される化合物の質量に対して、例えば1〜50倍量、好ましくは2〜10倍量、さらに好ましくは2〜5倍量である。また、[工程1]の反応は、例えば、−78〜150℃の温度、好ましくは0℃〜用いた溶媒の還流温度(例えば、0℃〜THFの還流温度である66℃)で行う。必要に応じて反応系の冷却や加熱を行ってもよい。

中でも、[工程1]において使用する溶媒としては、後の[工程2]で重合溶媒として用いる溶媒と同じものを使用することが好ましい。[工程1]で合成された重合開始剤が[工程2]で使用する重合溶媒に溶解するかどうかを、[工程1]の重合開始剤合成時に予め確認することができるためである。具体的には、例えば[工程1]の反応溶媒としてTHFを、アルカリ金属化合物として水素化カリウム(例えば上記一般式(IV)で表される化合物に対して1.0当量以下の水素化カリウム)を、[工程2]の重合溶媒としてTHFを使用する場合、重合開始剤の重合溶媒への溶解性を以下のように確認することができる。[工程1]における反応が進行し粉末状の水素化カリウムが減少するとともに水素が発生する。このとき生成する上記一般式(V)で表される重合開始剤が、[工程1]の反応溶媒であるTHFに析出せずに、また、最終的に水素化カリウムが全て反応したときに反応溶液中に塩の析出及び白濁がないかどうかを確認することで、後の[工程2]における重合開始剤の重合溶媒への溶解性を事前に確認することができる。

また、[工程2]で使用する重合溶媒への一般式(V)で表される重合開始剤の溶解性を予め確認する別法としては、下記方法が例示できるが、これに限定はされない。上記のように一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを反応させて一般式(V)で表される重合開始剤を合成し、その後一般式(V)で表される重合開始剤以外の溶媒や試薬を常法により除去して、一般式(V)で表される重合開始剤を取り出す。得られた一般式(V)で表される重合開始剤を、例えば20wt%の濃度で後の[工程2]で使用する重合溶媒に溶解させ、目視により塩の析出や白濁が見られないかを確認することができる。

上述の通り、重合開始剤の原料である一価アルコールが水分を含んだ状態で重合開始剤を調製し、その重合開始剤を用いてアルキレンオキシドとの重合を行うと、ジオールポリマーが副生する。ジオールポリマーは目的物から分離することが極めて難しく、また、ジオールポリマーやそれ由来の不純物を含むポリマーをそのまま使用すると、ポリマーミセル化剤の目的の性能が得られなくなる可能性が高い。そのため、後の[工程2]において重合反応を行う際には、一般式(V)で表される化合物(重合開始剤)を溶解させた反応系の水分を極力低く抑えることが好ましい。これに関して、一般式(V)で表される化合物の前駆体である前記一般式(IV)で表される化合物は、例えば、RA3=CH3、RA4=CH2CH2、k=2の場合、沸点が194℃と高く、水との沸点差が十分にあるため、減圧乾燥を行うことにより水を分離することが可能である。そのため、[工程1]における一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物との反応前には、前記一般式(IV)で表される化合物に対して、十分に減圧乾燥を行った後に蒸留を行うことが好ましい。その場合、蒸留後の一般式(IV)で表される化合物の含水率は、例えば50ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下となるようにする。このように重合開始剤の原料である一般式(IV)で表される化合物を水分を極力含まない状態とすることにより、得られた重合開始剤を用いて重合反応を行う際に、ジオールポリマーの副生をより良く抑えることができる。

なお、[工程1]で使用した一般式(IV)で表される原料アルコールの物質量と[工程1]終了後の反応溶液の全体の重さから、[工程1]終了後の反応溶液(重合開始剤合成後の反応溶液)中の、重合開始剤として働きうる物質の濃度(mmol/g)を求めることができる。すなわち、[工程1]終了後の反応溶液中の、重合開始剤として働きうる物質の濃度は、「使用した原料アルコール(IV)の物質量(mmol)/[工程1]終了後の反応溶液全体の重さ(g)」で求めることができる。[工程1]終了後の反応溶液中に一般式(IV)で表される原料アルコールが残っている場合には、その原料アルコールも重合開始剤として働くためである。(次工程2における反応は平衡反応であるため、一般式(V)で表される化合物が重合開始剤として反応し生成したポリマー末端アルコキシドが原料アルコール(IV)のプロトンを引き抜き、アルコキシド(重合開始剤)として働かせる。)ただし後述のように、[工程1]の終了後の反応溶液中の原料アルコール残量はできるだけ少ないことが望ましい。[工程1]の終了後の反応溶液は、そのまま後の[工程2]における重合開始剤溶液として用いることができる。

従来、一般的に用いられている重合開始剤は、THFなどの重合溶媒に単独では溶解しないことが多い。例えば、アルキレンオキシドの重合をTHF中で行う場合、重合末端をメチル基にしたい時に従来から一般的に用いられる重合開始剤のCH3OM+(Mはアルカリ金属)は、THFに単独では溶解しない。そのため、重合開始剤を重合溶媒に溶解させ、均一な重合を行うためには、開始剤原料アルコールであるメタノールを過剰量用いる必要がある。しかし、これらのアルコールが反応系中に過剰に存在すると、重合速度の低下が避けられず、重合速度を上げるためには高温や高圧などの厳しい反応条件が必要となる場合がある。これに対し、本発明の製造方法において重合開始剤として用いられる一般式(V)で表される化合物はTHF等の重合溶媒に易溶であり、開始剤原料アルコールの存在を必要としないため、温和な条件下での重合が可能である。

このように、次の[工程2]において温和な条件で十分な重合速度を得るためには、[工程1]において、開始剤原料アルコール残量が少ない状態の重合開始剤を合成することが好ましい。具体的には、一般式(IV)で表される開始剤原料アルコールから一般式(V)で表される重合開始剤を合成した後の、一般式(V)で表される重合開始剤と一般式(IV)で表される原料アルコールの物質量比率が、100:0〜80:20(mol%)であることが好ましく、さらに好ましくは100:0〜90:10(mol%)となるように反応させる。そのためには、[工程1]を、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物の使用モル数が一般式(IV)で表される化合物の0.8〜1.5、好ましくは0.9〜1.0となるような条件で行うことが好ましい。すなわち、[工程1]においては、開始剤原料アルコール残量が少ない反応物を得ることが好ましい。

また、上述の一般式(V)で表される重合開始剤を合成した後に、一般式(IV)で表される開始剤原料アルコールを反応系から減圧留去することも可能である。その場合、[工程1]の終了後の一般式(V)で表される重合開始剤と一般式(IV)で表される開始剤原料アルコールの物質量比率が100:0〜98:2(mol%)となるまで原料アルコールを除去することが好ましく、さらに好ましくは100:0〜99:1(mol%)となるまで原料アルコールを除去する。原料アルコール残量を少なくすることで次の[工程2]における重合速度をより高めることができる。

本発明の製造方法においては、上述の通り、重合開始剤の重合溶媒への溶解度向上要因であり、一方重合速度低下要因でもある、一般式(IV)で表される開始剤原料アルコール化合物が残っておらずとも、重合開始剤である一般式(V)で表される化合物を重合溶媒に溶解することができる。その役割を果たす構造が一般式(V)中の(RA4O)の繰り返し単位であり、上記構造を有することで重合開始剤と重合溶媒との相溶性が高まり、開始剤原料アルコールの実質的な存在なしに、重合開始剤を重合溶媒に溶解させることが出来る。その結果、均一な系での重合が可能となり、温和な条件での狭分散ポリアルキレングリコール誘導体の製造が可能となる。

[工程2]では、一般式(V)で表される化合物(重合開始剤)を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させ、下記一般式(VI)で表される化合物を合成する。 RA3O(RA4O)n−1RA4OM+ (VI)

[工程2]では、好ましくは一般式(V)で表される化合物を重合溶媒中に完全に溶解させた後、アルキレンオキシドと反応させる。上記のように、一般式(V)で表される化合物は、その原料アルコールである一般式(IV)で表される化合物が実質的に存在しなくとも重合溶媒に易溶である。一般式(V)で表される化合物が重合溶媒中に完全に溶解できたことは、例えば目視により重合溶媒中に塩の析出や白濁が見られないことで確認することができる。この際、一般式(V)で表される化合物の質量に対する重合溶媒の質量が10倍量以下(かつ1倍量以上)の状態で、塩の析出や白濁が見られないことが望ましい。すなわち、一般式(V)で表される化合物を含む重合溶媒溶液中の一般式(V)で表される化合物の濃度としては、9.1重量%以上(かつ50重量%以下)の状態で、塩の析出や白濁が見られないことが望ましい。上記のように一般式(V)で表される化合物が重合溶媒中に完全に溶解できたことを確認した後は、確認時の濃度のまま一般式(V)で表される化合物を含む重合溶媒溶液を重合反応に使用してもよいし、更に重合溶媒を加えて希釈した状態で重合反応に使用してもよい。なお、重合溶媒の量は、重合反応開始時において、使用するアルキレンオキシドの質量に対して、例えば1〜50倍量、好ましくは2〜25倍量となるように調整されればよい。

また、上記のように、原料アルコールの存在は重合速度の低下要因となるため、[工程2]では、原料アルコールが少ない状態で重合開始剤を用いることが好ましい。例えば、 [工程1]で得られた、好ましくは100:0〜80:20の物質量比率で一般式(V)で表される重合開始剤と一般式(IV)で表される原料アルコールとを含む反応混合物を、そのまま、重合溶媒に溶解させて用いることが好ましい。

[工程2]で使用する重合溶媒としては、重合開始剤との相溶性が高いという観点から、炭素数4〜10の環状エーテル化合物や直鎖状、もしくは分岐状のエーテル化合物が好ましく用いられる。環状エーテル化合物の具体例としては、フラン、2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフラン、2,3−ジメチルフラン、2,5−ジメチルフラン、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、1,4−ベンゾジオキサン、1,3,5−トリオキサン、オキセパン等が例示できるが、これらに限定はされない。直鎖状、もしくは分岐状のエーテル化合物の具体例としては、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示できるが、これらに限定はされない。特にTHFが好ましく用いられる。また、エーテル化合物以外の有機溶媒を使用することも可能であり、その具体例としてはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が例示出来るが、これらに限定はされない。用いる有機溶媒は、単体溶剤でも良いし、二種以上を組み合わせて用いても良く、組み合わせる場合の、化合物の組み合わせ、並びにその混合比は限定されない。

重合反応に使用する重合溶媒の量は特に限定されないが、使用するアルキレンオキシドの質量に対して、例えば1〜50倍量、好ましくは2〜30倍量、さらに好ましくは3〜20倍量である。重合溶媒は、金属ナトリウム等の脱水剤を用いて蒸留したものを使用することが好ましい。重合溶媒の含水率は、例えば50ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。

使用するアルキレンオキシドの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。中でも、重合しやすいエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。重合反応に使用する一般式(V)で表される化合物とアルキレンオキシドとの使用量比としては、特に限定されないが、一般式(V)で表される化合物:アルキレンオキシドの物質量比として、例えば1:1〜1:448、好ましくは1:10〜1:400である。

[工程2]では、一般式(V)で表される化合物を重合溶媒に溶解させた反応系にアルキレンオキシドを一括添加しても良いし、アルキレンオキシドを重合溶媒に溶解させた溶液を上記の反応系に滴下しても良い。重合反応は、例えば30〜60℃の温度で実施し、好ましくは40〜60℃、さらに好ましくは45〜60℃の温度で実施する。重合反応時の圧力は、例えば1.0MPa以下、好ましくは0.5MPa以下である。重合反応の進行度はGPCで追跡し、アルキレンオキシドの転化率に変化がなくなった時点を終点とすることができる。本発明で重合開始剤として用いる一般式(V)で表される化合物は、上記のように重合溶媒に易溶であり、開始剤原料アルコールの存在を必要としないため、重合に際しては高温や高圧などの厳しい反応条件を必要とせず、温和な条件下での重合が可能である。上記のように、一般式(V)で表される重合開始剤を用いることにより、温和な条件下で一般式(VI)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を得ることができる。よって、本発明は一般式(V)で表される重合開始剤を用いる(好ましくは[工程1]及び[工程2]を含む)、一般式(VI)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の製造方法にも関する。

[工程3]では、前の[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を、下記一般式(I)で表される求電子剤と反応させ、一般式(II)で表される化合物を合成する。

好ましくは、[工程3]では、[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を、精製することなく、そのまま一般式(I)で表される求電子剤との反応に使用する。このことにより、分離精製工程の簡略化に伴うコスト抑制が実現するだけでなく、精製作業に伴う収率の低下(ポリマーの製造設備への付着や貧溶媒への溶解などによる収率の低下)を抑えられるといった利点をもたらす。

すなわち、[工程3]では、一般式(VI)で表される化合物を含む[工程2]終了後の反応液をそのまま使用しても良いし、濃縮して使用することも可能である。反応液を濃縮する場合、一般式(VI)で表される化合物の濃度が、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40質量%となるまで濃縮する。[工程3]の反応では、[工程2]終了後の反応液もしくはその濃縮液中に一般式(I)で表される求電子剤を添加して反応させることが好ましい。一般式(I)で表される求電子剤の反応系への添加方法としては、反応系に一括添加しても良いし、適切な溶媒に一般式(I)で表される求電子剤を溶解させた溶液を反応系に滴下しても良い。この際に使用する溶媒としては、例えば、[工程2]で重合溶媒として例示した溶媒と同じ溶媒が挙げられる。この反応に使用する一般式(I)で表される求電子剤の量は、一般式(VI)で表される化合物のモル数に対して、例えば1〜20当量であり、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜3当量である。

[工程3]の反応は、触媒なしに進行するが、さらに反応を加速するために塩基性化合物を反応系に添加することができる。その場合、用いられる塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシドなどが挙げられるがこれらに限定はされない。塩基性化合物の添加量は、一般式(VI)で表される化合物のモル数に対して、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量である。

[工程3]の反応は、例えば30〜60℃、好ましくは30〜50℃、さらに好ましくは30〜45℃の温度で実施することができる。反応はNMRによって追跡し、転化率に変化がなくなった時点を終点とすることができる。

[工程3]では、上記のように、一般式(VI)で表される化合物との反応に、一般式(I)で表される求電子剤(本明細書中、「求電子剤(I)」と称することがある)を使用する。[工程3]では、求電子剤として一般式(I)で表される化合物を使用するために、比較的少量の求電子剤を使うだけで、一般式(VI)で表される化合物の求核反応が完結できるという利点がある。一方で、従来のように、求電子剤としてアクリロニトリルを使用する場合では、一般式(VI)で表される化合物の求核反応を100%進行させるために、大過剰量の求電子剤が必要となる場合があり、ポリアクリロニトリルが副生する可能性があるが、本発明の方法ではこのような副生成物は発生しない。

[工程3]で使用する求電子剤(I)は、上記のとおり、重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基でアミノ基が保護されている。求電子剤(I)は、一般式(I)中のRA1a及びRA1bで表される保護基の種類によって、例えば、以下の好ましい求電子剤(I−I)〜(I−IV)に分類して例示することができるが、これらに限定されるものではない。

求電子剤(I−I)は、上記一般式(I)中のRA1a及びRA1bが互いに独立にアミノ基の保護基を示す場合か、又は、一方が水素原子、他方がアミノ基の保護基を示す場合であって、RA1a及び/又はRA1bが、Si(R1)3で表される構造の保護基(トリアルキルシリル基)である場合の求電子剤である。

上記のSi(R1)3で表される構造中、R1は独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基である。或いは、R1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成していてもよい。R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。また、R1が互いに結合してケイ素原子と共に環を形成する場合はこれらの基から水素原子が一つ脱離した基が挙げられる。 Si(R1)3で表される構造の保護基の好ましい具体例としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が挙げられるが、これらに限定はされない。

求電子剤(I−II)は、上記一般式(I)中のRA1a及びRA1bが互いに独立にアミノ基の保護基を示す場合か、又は、一方が水素原子、他方がアミノ基の保護基を示す場合であって、RA1a及び/又はRA1bが、RA6OCOで表される構造の保護基である場合の求電子剤である。

上記のRA6OCOで表される構造中、RA6は炭素数1〜20の1価の炭化水素の残基であり、該残基はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ケイ素原子、リン原子又はホウ素原子を含んでいてもよい。 RA6OCOの構造で示される保護基の具体例としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、2−トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、フェニルエチルオキシカルボニル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−ハロエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2,2−ジブロモエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エチルオキシカルボニル基、1−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−1−メチルエチルオキシカルボニル基、2−(2'−ピリジル)エチルオキシカルボニル基、2−(4'−ピリジル)エチルオキシカルボニル基、2−(N,N−ジシクロヘキシルカルボキシアミド)エチルオキシカルボニル基、1−アダマンチルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1−イソプロピルアリルオキシカルボニル基、シンナミルオキシカルボニル基、4−ニトロシンナミルオキシカルボニル基、8−キノリルオキシカルボニル基、N−ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル基、アルキルジチオカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−ブロモベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基、4−メチルスルフィニルベンジルオキシカルボニル基、9−アントリルメチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、9−(2,7−ジブロモ)フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,7−ジ−t−ブチル−[9−(10,10−ジオキソ−チオキサンチル)]メチルオキシカルボニル基、4−メトキシフェナシルオキシカルボニル基、2−メチルチオエチルオキシカルボニル基、2−メチルスルホニルエチルオキシカルボニル基、2−(p−トルエンスルホニル)エチルオキシカルボニル基、[2−(1,3−ジチアニル)]メチルオキシカルボニル基、4−メチルチオフェニルオキシカルボニル基、2,4−ジメチルチオフェニルオキシカルボニル基、2−ホスホニオエチルオキシカルボニル基、2−トリフェニルホスホニオイソプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−シアノエチルオキシカルボニル基、m−クロロ−p−アシロキシベンジルオキシカルボニル基、p−(ジヒドロキシボリル)ベンジルオキシカルボニル基、5−ベンゾイソオキサゾリルメチルオキシカルボニル基、2−(トリフルオロメチル)−6−クロモニルメチルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、m−ニトロフェニルオキシカルボニル基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o−ニトロベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルオキシカルボニル基やフェニル(o−ニトロフェニル)メチルオキシカルボニル基等が例示できる。中でも、tert−ブチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基が好ましい。

求電子剤(I−III)は、上記一般式(I)中のRA1a及びRA1bが互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基である場合の求電子剤である。 このような求電子剤(I−III)における環状保護基としては、N−フタロイル基、N−テトラクロロフタロイル基、N−4−ニトロフタロイル基、N−ジチアスクシロイル基、N−2,3−ジフェニルマレオイル基、N−2,5−ジメチルピロリル基、N−2,5−ビス(トリイソプロピルシロキシ)ピロリル基、N−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドイル基、3,5−ジニトロ−4−ピリドニル基や1,3,5−ジオキサジニル基、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン等が例示できるが、これらに限定はされない。中でも、N−フタロイル基が好ましい。

求電子剤(I−IV)は、RA1a及び/又はRA1bが、上記求電子剤(I−I)の保護基(Si(R1)3で表される構造の保護基)、上記求電子剤(I−II)の保護基(RA6OCOで表される構造の保護基)、及び上記求電子剤(I−III)の保護基(RA1a及びRA1bが互いに結合して窒素原子と共に環を形成している環状保護基)以外の保護基である場合の求電子剤である。 このような求電子剤(I−IV)における保護基としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、(2−トリメチルシリル)エタンスルホニル基、アリル基、ピバロイル基、メトキシメチル基、ジ(4−メトキシフェニル)メチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリニルメチル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル基、9−フェニルフルオレニル基、[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル基、N−3−アセトキシプロピル基等が例示できるが、これらの保護基に限定はされない。中でも、ベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、アリル基が好ましい。

上記一般式(I)で表される求電子剤は、好ましくは上記した求電子剤(I−I)〜(I−IV)のいずれかであり、中でも下記一般式(I−I−I)で表される求電子剤がより好ましい。すなわち、一般式(I)中のRA1a及びRA1bが、互いに独立してトリアルキルシリル基である求電子剤がより好ましい。アミノ基の保護基がいずれもトリアルキルシリル基であるため、後の[工程4]での脱保護が容易であり、また[工程3]の塩基性の反応液中で安定であるという利点を有する。また、RA1a又はRA1bとしての水素原子を有しておらず、そのため不要な反応を生じにくいという利点もある。そのため、より簡便に、かつ安定して狭分散かつ高純度なポリアルキレングリコール誘導体の製造を行うことが可能となる。

(上記一般式(I−I−I)中、R1は上記求電子剤(I−I)におけるR1と同一であり、RA2及びXは上記一般式(I)中のRA2及びXと同一である。)

上記の求電子剤(I−I)〜(I−IV)は、従来公知の様々な方法で合成することができる。例えば、求電子剤(I−I)の合成方法としては、脱離基を持ったアミンに対して、シリル化剤を使いアミノ基の保護をすることが挙げられる。脱離基を持ったアミンの具体例としては、3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩、3−クロロプロピルアミン塩化水素酸塩などのハロゲン化アミンが挙げられるが、これらに限定はされない。シリル化剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(以下TESOTfと記す)などが挙げられるが、これらに限定はされない。

求電子剤(I−I)合成の別法としては、アミノ基をシリル保護したアルコールを、スルホン酸ハロゲン化物と反応させることにより、末端のヒドロキシ基を脱離基に変換する方法が挙げられる。アミノ基をシリル保護したアルコールの具体例としては、3−ビス(トリメチルシリル)アミノ−1−プロパノール、3−ビス(トリエチルシリル)アミノ−1−プロパノールなどが挙げられるが、これらに限定はされない。スルホン酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化パラトルエンスルホニル(以下TsClと記す)、塩化メタンスルホニル(以下MsClと記す)などが挙げられるが、これらに限定はされない。

求電子剤(I−II)の合成方法としては、脱離基を持ったアミンに対して、カルバメート化剤を使いアミノ基の保護をすることが挙げられるが、これに限定はされない。脱離基を持ったアミンの具体例としては、3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩、3−クロロプロピルアミン塩化水素酸塩などのハロゲン化アミンが挙げられるが、これらに限定はされない。カルバメート化剤の具体例としては、ジ−tert−ブチルジカルボネート、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸フルオレニルメチル、クロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル、クロロギ酸アリルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。

求電子剤(I−III)の合成方法としては、環状酸無水物にアミノアルコールを反応させて、得られた環状イミドアルコールをスルホン酸ハロゲン化物と反応させることにより、末端のヒドロキシ基を脱離基に変換する方法が挙げられるが、これに限定はされない。環状酸無水物の具体例としては、無水フタル酸などが挙げられ、アミノアルコールの具体例としては、3−アミノ−1−プロパノールなどが挙げられ、環状イミドアルコールの具体例としては、N−(3−ヒドロキシプロピル)フタルイミドなどが挙げられるが、これらに限定はされない。スルホン酸ハロゲン化物の具体例としては、TsCl、MsClなどが挙げられるが、これらに限定はされない。

求電子剤(I−IV)の合成方法としては、脱離基を持ったそれぞれ対応する保護基にアミノアルコールを反応させて、得られた保護アミノアルコールをスルホン酸ハロゲン化物と反応させることにより、末端のヒドロキシ基を脱離基に変換する方法が挙げられるが、これに限定はされない。脱離基を持った保護基の具体例としては、ベンジルブロマイド、TsCl、2−ニトロベンゼンスルホニルクロライド、アリルブロマイドなどが挙げられ、アミノアルコールの具体例としては、3−アミノ−1−プロパノールなどが挙げられ、保護アミノアルコールの具体例としては、3−ビスベンジルアミノ−1−プロパノ−ル、3−ビス(p−トルエンスルホニル)アミノ−1−プロパノ−ル、3−ビス(ニトロベンゼンスルホニル)アミノ−1−プロパノ−ル、3−ビスアリルアミノ−1−プロパノ−ルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。

[工程3]の反応生成物である一般式(II)で表される化合物は、次工程に移る前に、固体として反応系から取り出して使用することができる。その場合、[工程3]終了後の反応液をそのままで、又は濃縮後、貧溶媒に滴下して一般式(II)で表される化合物の晶析を行うことができる。濃縮する際は、一般式(II)で表される化合物の濃度が、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%となるように調製する。また、晶析を行う前にエーテル化反応で生じた塩をろ過により反応液から除去することにより、不純物混入を防いで、純度の高い一般式(II)で表される化合物を取り出すことができる。

[工程3]のエーテル化反応で生じた塩をろ過により反応溶液から除去する工程はそのまま反応溶媒で行ってもよいし、良溶媒に置換してから行ってもよい。その場合の良溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。塩が析出しやすい溶媒を用いるとポリマー中に残存する塩を減らすことができるため、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。

[工程3]で生じたポリマーはその構造に酸素原子を多量に含むため、エーテル化反応で生じた塩をポリマー内に取り込んでしまうことがある。その場合吸着材を用いて塩を除去することができる。吸着材としては水酸化アルミニウム(例えば、協和化学工業社製「キョーワード200」)、合成ハイドロタルサイド(例えば、協和化学工業社製「キョーワード500」)、合成珪酸マグネシウム(例えば、協和化学工業社製「キョーワード600」)、合成珪酸アルミニウム(例えば、協和化学工業社製「キョーワード700」、酸化アルミニウム・酸化マグネシウム固溶体(例えば、協和化学工業社製「KW−2000」)、富田製薬(株)製「トミタAD700NS」)等が用いられるが、塩を除去することができる性能を有するものであればこれらに限定はされない。中でもイオン捕捉能が高いことからKW−2000が好ましい。吸着剤の使用量は一般式(II)で表される化合物の質量に対して0.01〜10倍量、好ましくは0.1〜8倍量、さらに好ましくは0.3〜6倍量であるが特に限定はされない。吸着剤は、上記一般式(VI)で表される化合物と、一般式(I)で表される求電子剤との反応が終了した時点で、反応液に直接投入することもできるし、反応が終了し生成したアルカリ金属塩をろ過した後に反応液に投入してもよい。投入後0.5〜6時間反応させた後、ろ過により除去を行うことができるが反応時間は特に限定されない。吸着材を用いる時の方法としてはバッチ式として反応溶液中に吸着材を添加、撹拌してもよいし、カラム式として吸着材を充填したカラム上に反応溶液を通過させてもよい。吸着処理を行う場合の溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。塩の吸着能を高めるためにはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。

なお、上記のように、[工程3]では、工程簡略化の観点から、[工程2]で得られる一般式(VI)で表される化合物を、精製することなくそのまま求電子剤(I)との反応に使用することが好ましい(精製を経ない態様)。すなわち、[工程2]の後にアニオンを残したまま求電子剤(I)を反応させることが好ましい。この場合、(VI)→(II)というように、一般式(VI)で表される化合物から直接、一般式(II)で表される化合物を合成する。 或いは、[工程3]では、[工程2]で得られる一般式(VI)で表される化合物を酸性化合物等により反応停止させ、これにより得られた下記一般式(IX)で表される化合物を精製して、これを求電子剤(I)と反応させることによって一般式(II)で表される化合物を合成することもできる(精製を経る態様)。すなわち、[工程2]の後にアニオンをいったん酸等で反応停止させてから求電子剤(I)を反応させてもよい。具体的には、[工程2]終了後の反応液に酸性化合物等を添加して、一般式(VI)で表される化合物を反応停止させることによって、一般式(VI)で表される化合物を下記一般式(IX)で表される化合物へと変換する。次いで、得られた下記一般式(IX)で表される化合物を、例えば貧溶媒への滴下による晶析によって精製し、反応系から取り出す。次いで、取り出した精製後の下記一般式(IX)で表される化合物を、塩基性化合物存在下で、求電子剤(I)と反応させることにより、上記一般式(II)で表される化合物を得ることができる。なお、この場合は、下記一般式(IX)で表される化合物が、塩基性化合物との反応によって再び一般式(VI)で表される化合物に戻された後に、求電子剤(I)と反応することとなる。すなわち、(VI)→(IX)→(VI)→(II)というように、一般式(VI)で表される化合物から一般式(IX)で表される化合物を経由して一般式(II)で表される化合物を合成する。

(一般式(IX)中、RA3、RA4、及びnは上記一般式(II)及び(III)のRA3、RA4、及びnと同一である)

この精製を経る態様では、反応停止後、得られる一般式(IX)で表される化合物について、例えば1H−NMRによる分析を行い、[工程2]の重合により生成物が所望のとおりに合成できたかどうかを確認することができる。また、重合で生成した低分子化合物を貧溶媒への滴下による晶析により反応系から除去した後に求電子剤(I)との反応を行うため、低分子化合物が求電子剤(I)と反応してアミノ基を有する化合物へと変換されるのを防ぐことができる。

反応停止に使用される酸性化合物の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、塩酸、硫酸硝酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、オルガノ(株)製アンバーリストシリーズ等の固体酸等が例示できるがこれらに限定はされない。これらの酸性化合物の使用量としては、一般式(VI)で表される化合物のモル数の、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量である。これらの酸性化合物は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。

またアルコールや水などのプロトン性化合物と塩基吸着材を組み合わせて反応を停止することもできる。プロトン性化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、水等が例示できるがこれらに限定はされない。これらのプロトン性化合物の使用量としては、一般式(VI)で表される化合物のモル数の、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量である。これらのプロトン性化合物は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。吸着材としては上述の[工程3]に記載したような吸着材を使うことができるが特に限定はされない。吸着剤の使用量は一般式(VI)で表される化合物の質量に対して0.01〜10倍量、好ましくは0.02〜1倍量、さらに好ましくは0.03〜0.5倍量であるが特に限定はされない。

反応停止後、そのまま貧溶媒で晶析を行ってもよいし、良溶媒に置換してから晶析を行ってもよい。その場合の良溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の一般式(IX)で表される化合物の濃度は、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。

貧溶媒としては、一般式(IX)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる。貧溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭化水素やジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルなどのエーテル類が好適に用いられる。貧溶媒の使用量は特に限定されないが、一般式(IX)で表される化合物の質量に対して、例えば5〜100倍量、好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは5〜20倍量の溶媒を使用する。貧溶媒は単独で用いることもできる他、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。また、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合することができる、他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるがこれらに限定はされない。貧溶媒として二種以上の溶媒を混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。

晶析により、一般式(IX)で表される化合物の固体を析出させた後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精製を行っても良い。洗浄に用いる溶媒は、上述と同じ貧溶媒であることが望ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定はされない。得られた固体を減圧下で乾燥させることにより、一般式(IX)で表される化合物を固体として取り出すことができる。上記のように、[工程1]及び[工程2]、並びに[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を酸性化合物又はプロトン性化合物で反応停止させることによって、一般式(IX)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を得ることができる。すなわち本発明は、上記の工程を含む、一般式(IX)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の製造方法にも関する。

その後の一般式(IX)で表される化合物と求電子剤(I)との反応時に使用される塩基性化合物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシドなどが挙げられるがこれらに限定はされない。塩基性化合物の添加量は、一般式(IX)で表される化合物のモル数に対して、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量である。

一般式(IX)で表される化合物と求電子剤(I)との反応時の反応温度等の条件は、上記した精製を経ない態様における、一般式(VI)で表される化合物と求電子剤(I)との反応条件と同様である。また、一般式(IX)で表される化合物と求電子剤(I)との反応により得られる一般式(II)で表される化合物は、次工程に移る前に固体として反応系から取り出して使用することができるが、その方法も、上記した精製を経ない態様における、一般式(II)で表される化合物を取り出す方法と同様である。

[工程4]では、[工程3]で得られた上記一般式(II)で表される化合物における保護基の脱保護を行う。この脱保護は、重金属触媒を使用することなく行われる。なお、ここでいう重金属触媒は、例えばCo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Cr等の重金属を原料とした触媒である。

[工程4]において、重金属触媒を用いずに脱保護を行う際の方法は特に限定されないが、例えば上記一般式(II)中のRA1a及び/又はRA1bがシリル基の場合(求電子剤(I−I))は、酸触媒下で、水又はアルコール(R6OH:式中R6は炭素数1〜5の炭化水素基である)と上記一般式(II)で表される化合物とを反応させることにより、一般式(III)で表される化合物へと変換することができる。使用する酸触媒の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、オルガノ(株)製アンバーリストシリーズ等の固体酸等が例示できるが、これらに限定はされない。これらの酸性化合物の使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば0.01〜1000当量、好ましくは0.1〜100当量、さらに好ましくは1〜10当量である。これらの酸性化合物は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。

また、例えばRA1a及び/又はRA1bがtert−ブチルオキシカルボニル基の場合(求電子剤(I−II))は、トリフルオロ酢酸や塩酸などの強酸を上記一般式(II)で表される化合物に作用させることで脱保護できる。これらの強酸の使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば0.01〜1000当量、好ましくは0.1〜100当量、さらに好ましくは1〜10当量である。

例えばRA1a及びRA1bがN−フタロイル基の場合(求電子剤(I−III))は、アルコール中でヒドラジン水和物を上記一般式(II)で表される化合物と反応させることで、フタロイル基が脱離できる。使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが例示できる。アルコールの使用量としては、一般式(II)で表される化合物の質量に対して、例えば1〜100倍量、好ましくは3〜50倍量、さらに好ましくは5〜10倍量である。使用されるヒドラジン水和物の使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば1〜50当量、好ましくは2〜20当量、さらに好ましくは3〜10当量である。

例えばRA1a及び/又はRA1bがベンジル基やアリル基の場合(求電子剤(I−IV))は、液体アンモニウムと金属ナトリウムを使用するバーチ還元の条件で、上記一般式(II)で表される化合物の脱保護を行うことができる。使用される液体アンモニウムの使用量としては、一般式(II)で表される化合物の質量に対して、例えば1〜100倍量、好ましくは3〜50倍量、さらに好ましくは5〜10倍量である。使用される金属ナトリウムの使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば2〜50当量、好ましくは2〜10当量、さらに好ましくは2〜5当量である。以上の例のように重金属触媒を使用しない条件を適切に選択することにより、脱保護を行うことができ、その条件は限定されない。

酸触媒により脱保護した場合、生成した一般式(III)で表されるアミンと酸が塩を形成し酸を除去できないことがある。その際、生成した塩に塩基性化合物を添加して酸と反応させると、添加した塩基性化合物と酸の塩が形成し、一般式(III)で表されるアミンを取り出すことができる。このとき生成した塩はろ過により除去することができる。生じた塩がポリマー内に取り込まれてしまった場合、吸着材を用いて塩を除去することができる。そのときの吸着材としては上述の[工程3]に記載したような吸着材を使うことができるが特に限定はされない。吸着剤の使用量は一般式(III)で表される化合物の質量に対して0.01〜10倍量、好ましくは0.1〜8倍量、さらに好ましくは0.3〜6倍量であるが特に限定はされない。用いる塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどが挙げられるがこれらに限定はされない。塩基性化合物の添加量は、脱保護に使用した酸触媒のモル数に対して、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量である。ろ過を行う際の溶媒としては反応溶媒をそのまま用いてもよいし、塩が析出しやすい溶媒に置換してからろ過しても良い。塩が析出しやすい溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。ろ過性を高めるためにはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。

酸触媒を除去する際、塩基性化合物を加えずに直接吸着材を反応系に添加することもできるが、その場合ろ過性が低下する可能性があるため上述の塩基性化合物を添加した後に吸着材を使用することが好ましい。

脱保護後、そのまま貧溶媒で晶析を行ってもよいし、良溶媒に置換してから晶析を行ってもよく、また上述の塩基性化合物との反応と吸着材処理をしてから晶析を行ってもよい。良溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の濃度は、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。

貧溶媒としては、一般式(III)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる。貧溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭化水素やジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルなどのエーテル類が好適に用いられる。貧溶媒の使用量は特に限定されないが、一般式(III)で表される化合物の質量に対して、例えば5〜100倍量、好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは5〜20倍量の溶媒を使用する。貧溶媒は単独で用いることもできる他、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。また、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合することができる他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるがこれらに限定はされない。貧溶媒として二種以上の溶媒を混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。

[工程4]では、晶析により、一般式(III)で表される化合物の固体を析出させた後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精製を行っても良い。洗浄に用いる溶媒は、上述と同じ貧溶媒であることが望ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定はされない。得られた固体を減圧下で乾燥させることにより、一般式(III)で表される化合物を固体として取り出すことができる。

本発明においては、アミノ基は上記のような脱保護により得られるため、例えば特許文献5に記載の方法で生成しうる副生成物(下記(VII)〜(IX)で表される化合物)は実質的に生成せず、最終的に一般式(III)で表される末端にアミノ基を有する狭分散かつ高純度なポリアルキレングリコール誘導体を合成することができる。これに対し、例えば特許文献5に記載の方法でシアノエチル化物を水素還元してアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導体へ導く場合、アクリロニトリルのβ脱離を伴うため、下記一般式(IX)で示されるPEG誘導体およびポリアクリロニトリルの副生を防ぐことができない。また、上記水素還元工程ではニトリルの還元中間体であるイミンに生成物のアミンが付加することにより、下記一般式(VII)、(VIII)で表される2級、3級アミン化合物が副生する可能性がある。これらの副反応は反応系へのアンモニアや酢酸の添加により抑制することが出来るものの、従来の方法で完全に制御することは困難である。

(上記一般式(VII)〜(IX)中、RA2、RA3、RA4及びnは上記一般式(I)〜(III)のRA2、RA3、RA4及びnと同一である)

[工程4]の後に行う[工程5]〜[工程8]は任意選択的な精製工程である。また、[工程3]で得られた一般式(II)で表される化合物における保護基が酸で脱保護できる保護基である場合は、[工程3]の後に[工程5]〜[工程8]を行うことにより、脱保護も同時に行うことができ、さらに工程を簡略化することができる。すなわちこの場合は、[工程4](一般式(II)で表される化合物の脱保護により一般式(III)で表される化合物を得る工程)は、具体的には[工程5]〜[工程8]の操作により実施することができる。また、下記のように[工程5]〜[工程8]は一般式(III)で表される化合物の精製及び取り出しの際に凍結乾燥を必要としない。そのため[工程5]〜[工程8]を含む方法では、工業的な規模でポリアルキレングリコール誘導体を製造する際の設備や工程の簡略化を実現することができるといった利点を有する。

[工程5]では、[工程3]又は[工程4]で得られた反応生成物を、強酸性陽イオン交換樹脂と反応させた後、水又は炭素数1〜5の一価アルコールで強酸性陽イオン交換樹脂を洗浄することにより、一般式(III)で表される化合物以外の物質を分離する。

[工程5]で使用する強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、オルガノ(株)製アンバーライトシリーズ(IR120B、IR124B、200CT、252)、オルガノ(株)製アンバージェットシリーズ(1020、1024、1060、1220)、三菱化学(株)製ダイヤイオンシリーズ(例えば、SK104、SK1B、SK110、SK112、PK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228、UBK08、UBK10、UBK12、UBK510L、UBK530、UBK550)、ダウ・ケミカル(株)製DOWEXシリーズ(50W×2 50−100、50W×2 100−200、50W×4 100−200、50W×8 50−100、50W×8 100−200、50W×8 200−400、HCR−S、HCR−W2(H))などが挙げられるが、これらに限定はされない。強酸性陽イオン交換樹脂の使用量としては、一般式(III)で表される化合物の質量の、例えば1〜50倍量、好ましくは1〜30倍量、さらに好ましくは1〜20倍量である。

強酸性陽イオン交換樹脂を用いる場合、事前に強酸性陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理してから使用しても良い。強酸性陽イオン交換樹脂はスルホン酸のアルカリ金属塩の状態で販売されていることも多く、酸性化合物で事前に処理して用いることでスルホ基が再生され、反応効率を上げることが可能である。この場合、用いられる酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸類等が例示できるが、これらに限定はされない。これらの酸性化合物の使用量は、強酸性陽イオン交換樹脂の質量の、例えば1〜15倍量、好ましくは1〜10倍量、さらに好ましくは1〜8倍量である。強酸性陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理した後、水洗によって樹脂中から酸性化合物を分離し、必要に応じてメタノールやエタノールなどの水溶性有機溶媒で水を分離する。

[工程3]又は[工程4]で得られた反応生成物を強酸性陽イオン交換樹脂と反応させる方法としては、イオン交換樹脂を充填したカラムに、生成物溶液を流して吸着させる方法や樹脂が充填されたカートリッジと、[工程3]又は[工程4]を実施した反応槽との間で粗生成物溶液を循環させる方法などが挙げられるが、反応の方法については特に限定されない。[工程3]の後に[工程5]を行う場合は、強酸性陽イオン交換樹脂の触媒下で、一般式(II)で表される化合物と水又はアルコール(R3OH:式中R3は炭素数1〜5の炭化水素基である)とを反応させることで、脱保護の後に、一般式(III)で表される化合物を強酸性陽イオン交換樹脂に吸着させることができる。

次いで、一般式(III)で表される化合物を吸着させた強酸性陽イオン交換樹脂を、水又は、炭素数1〜5の一価アルコールで洗浄を行い、目的物以外の化合物を分離する。炭素数1〜5の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコールなどが例示できる。洗浄を行う際、水又は一価アルコールを単独で用いることもできるし、水と一種以上のアルコールとの混合物、又は二種以上のアルコールの混合物を用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。使用する水又は炭素数1〜5の一価アルコール、或いはそれらの混合物の使用量は特に限定されないが、使用した強酸性陽イオン交換樹脂の質量に対して、例えば1〜30倍量、好ましくは1〜20倍量、さらに好ましくは1〜10倍量である。

[工程6]では、一般式(III)で表される化合物を吸着させた強酸性陽イオン交換樹脂を、水又は炭素数1〜5の一価アルコール中で塩基性化合物と反応させることにより、一般式(III)で表される化合物を水又は一価アルコール中に抽出する。反応を行う際、水又は一価アルコールを単独で用いることもできるし、水と一種以上のアルコールとの混合物、又は二種以上のアルコールの混合物を用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。強酸性陽イオン交換樹脂を塩基性化合物と反応させる方法としては、[工程5]と同様、イオン交換樹脂を充填したカラムに塩基性化合物の溶液を流して反応させる方法や、イオン交換樹脂が充填されたカートリッジと[工程3]、[工程4]及び[工程5]を実施した反応槽との間で、塩基性化合物の溶液を循環させる方法等を挙げることができるが、反応の方法については特に限定されない。

[工程6]で使用する一価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコールなどが例示できる。水又は一価アルコールの使用量は特に限定されないが、使用した強酸性陽イオン交換樹脂の質量に対して、例えば1〜30倍量、好ましくは1〜20倍量、さらに好ましくは1〜10倍量である。

[工程6]で使用する塩基性化合物としては、水又は有機溶媒に溶解したアンモニア(例えば、アンモニア水やアンモニアのメタノール溶液など)が好適に用いられるが、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類等も使用することができる。第一級の脂肪族アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン等、第二級の脂肪族アミン類としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン等、第三級の脂肪族アミン類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン等、混成アミン類としては、例えばジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等、芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレンやピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、4−ピロリジノピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)等が例示できるが、これらに限定はされない。また、塩基性化合物として水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を使用することもできる。塩基性化合物の使用量は、使用した強酸性陽イオン交換樹脂の質量に対して、例えば0.1〜100倍量、好ましくは0.1〜10倍量、さらに好ましくは0.1〜5倍量である。

[工程7]では、[工程6]の反応液を濃縮後、反応液に含まれる一般式(III)で表される化合物の良溶媒に溶媒置換し、一般式(III)で表される化合物の濃度が10〜50質量%となるように調製する。

[工程7]で用いられる一般式(III)で表される化合物の良溶媒としては、THFのほか、[工程3]において例示した良溶媒と同様のものが挙げられるが、これらには限定されない。これらの良溶媒は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の濃度は、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。

[工程8]では、[工程7]で濃縮して得られた溶液を、一般式(III)で表される化合物の貧溶媒中に滴下し、析出させることにより一般式(III)で表される化合物を得る。

[工程8]で用いられる貧溶媒としては、一般式(III)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる。貧溶媒の具体例としては、[工程3]において例示した貧溶媒と同様のものが挙げられるが、これらには限定されない。貧溶媒の使用量は特に限定されないが、一般式(III)で表される化合物の質量に対して、例えば5〜100倍量、好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは5〜20倍量の溶媒を使用する。貧溶媒は、単独で用いることもできる他、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合することができる他の溶媒としては、[工程3]において例示した他の溶媒と同様のものが挙げられるが、これらには限定されない。また、混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。

[工程8]では、晶析により固体を析出させた後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精製を行っても良い。洗浄に用いる溶媒は上述と同じ貧溶媒であることが好ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定はされない。得られた固体を減圧下で乾燥させることにより、一般式(III)で表される化合物を固体として取り出すことができる。

なお、[工程6]以降の操作においては、一般式(III)で表される化合物を水溶液として取り出した場合、その水溶液を凍結乾燥させることにより一般式(III)で表される化合物を取り出してもよい。ただし、凍結乾燥を行うためには特殊な設備が必要であり、完全に水を除去するには長時間を必要とするため、工業的な規模で製造を行うことが難しい場合がある。本発明では、好ましくは上記のように有機溶媒を使用した精製を行うことにより、設備や工程の簡略化を実現することが出来る。

本発明の[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる一般式(III)で表される化合物は、重合時、開始反応が成長反応より十分に早く、また停止反応の要因である水分の混入が少なく、さらに重合開始剤が重合溶媒中に均一に溶解しているため、狭分散ポリマーを得ることができる。 すなわち、本発明の製造方法により製造される上記一般式(III)で表される化合物は、狭分散性であり、その分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、例えば1.0〜1.20であり、好ましくは1.0〜1.10であり、さらに好ましくは1.0〜1.06である。また、本発明の製造方法により製造される上記一般式(III)で表される化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)として、5,000〜25,000が好ましく、8,000〜15,000がより好ましい。なお、本明細書において、ポリマーの分子量及び分散度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて測定を行った場合の値をいうものとする。

[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物中の、副生成物(VII)及び(VIII)(上記一般式(VII)で表される化合物及び一般式(VIII)で表される化合物)の混入量は、GPCにより測定された面積含有率(%)で、一般式(III)、(VII)及び(VIII)で表される化合物の総面積に対して、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。最も好ましくは、得られる生成物は、一般式(VII)で表される化合物及び一般式(VIII)で表される化合物をいずれも含まないものである。なお、実際には、本実施形態によると、一般式(VII)で表される化合物及び一般式(VIII)で表される化合物はいずれも生成しない。

[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物中の、副生成物(IX)(上記一般式(IX)で表される化合物)の混入量は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)により測定された組成比含有率(mol%)で、一般式(III)で表される化合物及び一般式(IX)で表される化合物の総物質量に対して、2mol%以下であることが好ましく、1mol%以下であることがより好ましい。最も好ましくは、得られる生成物は一般式(IX)で表される化合物を含まないものである。なお、実際には、本実施形態によると、一般式(IX)で表される化合物は生成しない。

また、[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物は、上記したような副生成物(一般式(VII)〜(IX)で表される化合物)を実質的に含まないものである。好ましくは、上記したGPC及び1H−NMRによる測定結果から換算した、主生成物(一般式(III)で表される化合物)の総量をXA、副生成物の総量をXBとしたとき、XA/(XA+XB)が0.95以上であることが好ましい。最も好ましくは、得られる生成物は上記のような副生成物を含まないものである。

[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物中の、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)により測定された重金属不純物含有量としては100ppb以下が好ましく、さらに好ましくは10ppb以下である。生成物中の重金属不純物量測定は、上記のICP−MSを用いて行うのが一般的だが、この測定方法に限定はされない。ICP−MSにより分析を行う際はポリマーサンプルを溶媒で希釈して測定を行う。用いる溶媒はポリマーが溶解し、かつ金属を含まないものであることが必須である。超純水や電子工業用N−メチル−2−ピロリドンなどが特に好ましいが、これらに限定はされない。希釈率は特に限定されないが、好ましくは10〜100,000倍、さらに好ましくは50〜1,000倍である。

上述の通り、重金属が生体内に蓄積されると悪影響を及ぼすことが知られているが、例えば特許文献4や5に記載の従来の合成法ではラネーニッケル触媒を用いてシアノ基をアミノメチル基に変換しているため、生成物中への重金属の混入が懸念される。日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において報告された「ICH Q3D:医薬品の金属不純物ガイドライン(案)」によると、金属不純物のうちリスクアセスメントが必要な金属不純物としてクラス1にAs、Pb、Cd、Hg、クラス2AにV、Mo、Se、Co、クラス2BにAg、Au、Tl、Pd、Pt、Ir、Os、Rh、Ru、クラス3にSb、Ba、Li、Cr、Cu、Sn、Niが挙げられている。水素還元反応において使用される重金属としてはCo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Crなどが挙げられるが、これらはリスクアセスメントが必要な重金属として挙げられており、今後ますます混入低減が求められる。

これに対し、本発明の方法は重金属触媒の使用を必要としないため、生成物中に重金属が混入するという恐れがない。その結果、特に医薬品用途に使用する一般式(III)で表される化合物を得るのに適した製造方法と言える。

以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中における分子量の表記において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の数値はGPCによりポリエチレングリコール換算値として測定したものである。なお、GPCは下記条件で測定を行った。 カラム:TSKgel SuperAWM−H、SuperAW−3000 展開溶媒:DMF(臭化リチウム0.01mol/L溶液) カラムオーブン温度:60℃ サンプル濃度:0.20wt% サンプル注入量:25μl 流量:0.3ml/min

[合成例1]重合開始剤(Va)の合成 500mLの二口ナスフラスコ中に撹拌子を投入後、精留管、温度計、リービッヒ冷却器、分留管、50mLのナスフラスコ(2個)、300mL二口フラスコ(1個)を接続し、蒸留装置を組み立てた。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下でジエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株)製)を500mL二口ナスフラスコ内に投入し、減圧蒸留を行った。蒸留後の含水率を測定した結果、水分は、1ppm以下であった(含水率測定はカールフィッシャー水分計による、以下同様)。

3Lの二口ナスフラスコ中に撹拌子を投入後、精留管、温度計、ジムロート冷却器、分留管、200mLのナスフラスコと2L二口フラスコを接続し、蒸留装置を組み立てた。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で無水THF(関東化学(株)製)、金属ナトリウム片(関東化学(株)製)、ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)を3L二口ナスフラスコ内に投入し、常圧下で5時間還流を行った。3L二口ナスフラスコ内が青紫色になったことを確認後、2L二口フラスコ中に蒸留THFを取り出した。蒸留後の含水率を測定した結果、水分は1ppm以下であった。

窒素雰囲気下のグローブボックス内で水素化カリウム15.98g(関東化学(株)製、ミネラルオイル状)を秤量し、温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却器を接続した500mL四口フラスコ内に水素化カリウムを窒素気流下で投入した。ヘキサン洗浄によりミネラルオイルを分離後、約2時間真空乾燥し6.193g(154mmol)の水素化カリウムを得た。フラスコ内にシリンジで蒸留THF127.65gを添加した。滴下漏斗に蒸留ジエチレングリコールモノメチルエーテル18.737g(156mmol)を少量ずつ滴下した。熟成を2時間実施し、重合開始剤(Va)のTHF溶液148.62g(1.05mmol/g)を得た。このとき塩の析出及び白濁は観測されなかった((Va)質量/THF溶液質量=16.6重量%)。上記反応により合成された重合開始剤(Va)と開始剤原料アルコールの物質量比率は99:1(mol%)である。反応スキームを以下に示す。

[合成例1−1]重合開始剤(Va)の別法による合成 ジエチレングリコールモノメチルエーテルとTHFの蒸留は上記[合成例1]と同様の方法で行った。

窒素雰囲気下のグローブボックス内で100mL三口フラスコ内にナフタレン1.28g、カリウム0.43gを秤量し、1時間真空乾燥した。その後窒素雰囲気下に戻し、フラスコ内にシリンジで蒸留THF13.58gを添加した。1時間撹拌し、カリウムナフタレニドのTHF溶液を調整した(0.65mmol/g)。一方、窒素雰囲気下、50mL三口フラスコ内に蒸留ジエチレングリコールモノメチルエーテル1.00gをシリンジで秤量した。そこに上記調整したカリウムナフタレニドのTHF溶液を常温で12.33g滴下した。熟成を1時間実施し、重合開始剤(Va)のTHF溶液13.33g(0.64mmol/g)を得た。このとき塩の析出及び白濁は観測されなかった((Va)質量/THF溶液質量=9.9重量%)。上記反応により合成された重合開始剤(Va)と開始剤原料アルコールの物質量比率は96:4(mol%)である。反応スキームを以下に示す。

[合成例2]求電子剤(Ia)の合成 (2−1)シリル保護体(I−1)の合成 300ml三口フラスコに3−アミノ−1−プロパノール6.0g、トリエチルアミン28.74g、トルエン18.0gを仕込み、その後窒素雰囲気化でTESOTf75.0gを滴下した。その後80℃で25時間撹拌した。反応液を分液ロートに移し、下層を分離し、上層を減圧蒸留してシリル保護体(I−1)を31.47g(収率93.3%)得た。 シリル保護体(I−1) 無色液体 沸点 133−138℃/10Pa 1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.60(18H,q),0.94(27H,t),1.62(2H,m),2.83(2H,m),3.54(2H,t)

式中TESはトリエチルシリル基のことである。

(2−2)アミノ基シリル保護アルコール体(I−2)の合成 200ml一口フラスコにシリル保護体(I−1)30.98g、メタノール30.98g、ナトリウムメトキシド0.2gを仕込み、60℃で18時間撹拌した。その後、トリエチルメトキシシランを減圧留去し、再びメタノール30.98gを入れて60℃で撹拌した。同様の操作を繰り返し、反応が完結した後炭酸水素ナトリウムでクエンチし、トルエンに溶媒置換した後、塩をろ過で取り除いた。その後トルエンを減圧留去してアミノ基シリル保護アルコール体(I−2)を22.66g(粗収率96.4%)得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。 アミノ基シリル保護アルコール体(I−2) 無色液体 1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.60(12H,q),0.93(18H,t),1.67(2H,m),2.85(2H,m),3.59(2H,m)

(2−3)求電子剤(Ia)の合成 50ml三口フラスコにTsCl4.7g、塩化メチレン5g、トリエチルアミン5.0g仕込み、アミノ基シリル保護アルコール体(I−2)5.0gを塩化メチレン10.0gに溶解させた溶液を氷冷しながら滴下した。常温に戻して13時間撹拌後、水でクエンチしてトルエンで抽出した。その後トルエン溶液を濃縮して求電子剤(Ia)を7.6g(粗収率100%)得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。 求電子剤(Ia) 褐色液体 1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.54(12H,q),0.89(18H,t),1.68(2H,m),2.45(3H,s),2.71(2H,m),3.98(2H,t)

[合成例3]求電子剤(Ib)の合成 200ml三口フラスコに3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩15.93g、トリエチルアミン27.26g、トルエン47.79gを仕込み、その後窒素雰囲気化でTESOTf50.00gを滴下した。その後80℃で63時間撹拌した。反応液を分液ロートに移し、下層を分離し、上層を減圧蒸留して求電子剤(Ib)を8.00g(収率30.0%)得た。 求電子剤(Ib) 無色液体 沸点 108℃/30Pa 1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.61(12H,q),0.94(18H,t),1.92(2H,m),2.90(2H,m),3.31(2H,t)

[合成例4]求電子剤(Ic)〜(Ii)の合成 TESOTfをそれぞれ対応する保護化剤に変えた以外は[合成例3]と同様にして下記求電子剤(Ic)〜(Ii)を合成した。

上記一般式中、TMSはトリメチルシリル、TBSはtert−ブチルジメチルシリル、Bocはtert−ブトキシカルボニルのことである。

[ポリマー合成例1]ポリマー(VIa)の合成 温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却器を接続した2L四口フラスコ中に撹拌子を投入した。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で2L四口フラスコ内に上述の[合成例1]で得られた重合開始剤(Va)のTHF溶液4.96g(1.05mmol/g)と蒸留THF420gを添加した。

滴下漏斗にエチレンオキシド60gと蒸留THF120gを投入し、2L四口フラスコ内に少しずつ滴下した。2L四口フラスコ内の温度が安定したことを確認後、45℃に温度を保ったオイルバスに2L四口フラスコを浸し、8時間熟成を行った。反応終了後、オイルバスを外し、反応系を室温まで冷却した。反応スキームを以下に示す。

得られた反応系を少量サンプリングし、酢酸でクエンチしてGPC測定を行った結果、Mw=8,500、Mw/Mn=1.04であった。

[ポリマー合成例1−1]ポリマー(IXa)の合成 2Lの高圧ガス反応容器を窒素パージにより乾燥し、窒素雰囲気下上述の[合成例1]で得られた重合開始剤(Va)のTHF溶液8.30g(1.05mmol/g、8.72mmol)と蒸留THF1008gを添加した。反応容器を45℃まで昇温した後、エチレンオキシド112gを連続的に圧入した後、系内の圧力を窒素加圧により0.15MPaに調節した。45℃で撹拌すると系内の圧力は徐々に低下していき、6時間経過したところで0.11MPaで安定し反応の終点とした。続いてH2O 0.32gで反応停止させKW−2000(協和化学工業)10gを加えて2時間撹拌することで吸着処理し、ろ過によりKW−2000を除去した。反応溶液を濃縮し448gとした後、撹拌子の入った3Lビーカー中にヘキサン1120gを入れ、滴下漏斗を使って得られた反応液を10分かけて滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン560gで10分間洗浄を行ない、得られた白色粉末を真空乾燥した結果、107gのポリマー(IXa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12500、Mw/Mn=1.02であった。反応スキームを以下に示す。

[ポリマー合成例2]ポリマー(IIa)の合成 乾燥させた100ml三口フラスコに[ポリマー合成例1]で得られたポリマー(VIa)のTHF溶液26g(固形分換算で2.6g分)をシリンジで分取した。窒素気流下で求電子剤(Ia)0.298g、カリウムtert−ブトキシドのTHF溶液(1mol/L)0.43mlを添加し、40℃に保ちながら5時間熟成を行った。反応終了後、40℃のままろ過を行い析出した塩を取り除いた。撹拌子の入った200mLビーカー中にヘキサン26gを入れ、滴下漏斗を使って得られた反応液を5分かけて滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン13gで10分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。

得られた白色粉末を真空乾燥した結果、2.30gのポリマー(IIa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=8800、Mw/Mn=1.04であった。反応スキームを以下に示す。

なお、ポリマー(VIa)で精製することなく続いて求電子剤と反応を行うため、本合成例は大幅に工程が簡略化されていることがわかる。

[ポリマー合成例2−1]ポリマー(IIa)の合成 2Lの高圧ガス反応容器を窒素パージにより乾燥し、窒素雰囲気下、上述の[合成例1]で得られた重合開始剤(Va)のTHF溶液8.30g(1.05mmol/g、8.72mmol)と蒸留THF1008gを添加した。反応容器を45℃まで昇温した後、エチレンオキシド112gを連続的に圧入した後、系内の圧力を窒素加圧により0.15MPaに調節した。45℃で撹拌すると系内の圧力は徐々に低下していき、6時間経過したところで0.11MPaで安定し反応の終点とした。40℃まで冷却した後、求電子剤(Ia)8.14gをTHF81.4gに溶解させ系内に圧入し、さらにカリウムtert−ブトキシドのTHF溶液(1mol/L)8.9mlをTHF50gで希釈し系内に圧入した。続いて40℃に保ちながら5時間熟成を行った。析出した塩をろ過により分別し、ろ液に吸着材KW−2000を11g添加して2時間撹拌した後ろ過により吸着材を取り除いた。反応液を濃縮し448gとした後、撹拌子の入った3Lビーカー中にヘキサン1120gを入れ、滴下漏斗を使って得られた反応液を10分かけて滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン560gで10分間洗浄を行ない、さらにもう一度同様の洗浄を繰り返した後、得られた白色粉末を真空乾燥した。結果、109gのポリマー(IIa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12900、Mw/Mn=1.02であった。反応スキームを以下に示す。

なお、下記表1に示したようにポリマー合成例1−1、ポリマー合成例2−1では化学量論的にエチレンオキシドとの重合が進行していることがわかる。

[ポリマー合成例3]ポリマー(IIIa)の合成 50mL三口フラスコに[ポリマー合成例2]で得られたポリマー(IIa)1.0g、THF9.0g、1N HClaq.0.4mlを投入し40℃で4時間撹拌した。その後25wt%NaOHaq.0.2mlで反応を停止した。反応溶液を濃縮して水を飛ばした後、THF5.7gでポリマー溶液を調整し、析出した塩をろ過した。撹拌子の入った100mLビーカー中にヘキサン10gを入れ、得られた反応液を滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン5gで10分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。

得られた白色粉末を真空乾燥した結果、0.7gのポリマー(IIIa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=8500、Mw/Mn=1.05であった。反応スキームを以下に示す。

なお、[ポリマー合成例2]でポリマー(IIa)を反応後精製することなく続いて塩酸を加えて脱保護しても良く、その場合さらに工程を簡略化することができた。

[ポリマー合成例3−1]ポリマー(IIIa)の合成 1L三口フラスコに[ポリマー合成例2−1]で得られたポリマー(IIa)100g、MeOH400g、酢酸5.00gを投入し35℃で3時間撹拌した。その後ナトリウムメチラート28%メタノール溶液を24.12gで反応を停止した。反応溶液を濃縮してトルエンへと溶媒置換し450gのポリマー溶液を調整し、析出した塩をろ過した。得られたポリマー溶液に吸着材KW−2000を100g加え35℃で1時間処理をして微量の塩を除去した。撹拌子の入った3Lビーカー中にヘキサン1000g、酢酸エチル500gを入れ、得られた反応液を滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン600g、酢酸エチル300gで10分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。

得られた白色粉末を真空乾燥した結果、90gのポリマー(IIIa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=13,000、Mw/Mn=1.02であった。反応スキームを以下に示す。

[ポリマー合成例4]ポリマー(IIIa)の精製 陽イオン交換樹脂DIAION PK−208(三菱化学(株)製)50gを充填したカートリッジ内を1N塩酸300gで洗浄後、イオン交換水300gで3回、次いでメタノール300gで1回、カートリッジの洗浄を行った。500mL二口フラスコに[ポリマー合成例3]で得られたポリマー(IIIa)のメタノール5wt%溶液(ポリマー含有量10g)を投入し、ポリマー溶液を上述のカートリッジ内にポンプを使って移送した。カートリッジの排液口から出てきたメタノール溶液を元の500mLナスフラスコに合せ、この操作を2時間継続してポリマー(IIIa)を陽イオン交換樹脂に吸着させた。その後、カートリッジ内の樹脂をメタノール300gで1回洗浄した後、7Nアンモニア溶液(メタノール溶液、関東化学(株)製)を50g使ってポリマー(IIIa−2)を陽イオン交換樹脂から溶離させた。なお、陽イオン交換樹脂からの溶離工程以降の精製ポリマーを(IIIa−2)と示す。

なおポリマー(IIIa)の代わりにポリマー(IIa)を使用しても陽イオン交換樹脂触媒下、メタノール溶液で脱保護が進行するので、脱保護と精製を同時に行うことができ、工程をさらに簡略化することができた。

得られた溶離液を500mLナス形フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使ってアンモニアとメタノールを留去した。ほぼ乾固するまで減圧濃縮を実施後、トルエンに溶媒置換し、ポリマー(IIIa−2)の固形分濃度が25wt%になるように調製した。

撹拌子の入った500mLビーカー中にヘキサン100gと酢酸エチル50gを混合し、滴下漏斗を使って得られたポリマー(IIIa−2)の25wt%溶液を10分かけて滴下後、20分間撹拌を行い、熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン50gと酢酸エチル25gの混合溶媒で20分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。

得られた白色粉末を真空乾燥した結果、8.51gのポリマー(IIIa−2)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=8,500、Mw/Mn=1.05であった。

[ポリマー合成例5]ポリマー(VIb)〜(VIf)の合成 [ポリマー合成例1]において、重合開始剤(Va)(1.05mmol/gTHF溶液)の使用量を変えた以外はほぼ同様の操作を行うことにより、ポリマー(VIb)〜(VIf)を合成した。分析結果を表2に示す。

[ポリマー合成例6]ポリマー(IIb)〜(IIf)の合成 [ポリマー合成例2]において、出発原料のポリマー(VIa)を前記ポリマー(VIb)〜(VIf)に変えた以外はほぼ同様の操作を行うことにより、ポリマー(IIb)〜(IIf)を合成した。分析結果を表3に示す。

[ポリマー合成例7]ポリマー(IIIb)〜(IIIf)の合成 [ポリマー合成例3]及び[ポリマー合成例4]において、出発原料のポリマー(IIa)を前記ポリマー(IIb)〜(IIf)に変える以外はほぼ同様の操作を行うことにより、ポリマー(IIIb)〜(IIIf)を合成した。分析結果を表4に示す。

[ポリマー合成例8]ポリマー(IIIg)〜(IIIn)の合成 [ポリマー合成例2]における求電子剤(Ia)を、(Ib)〜(Ii)に変えて脱保護条件を変える以外は[ポリマー合成例1]〜[ポリマー合成例4]とほぼ同様の操作を行うことにより、ポリマー(IIIg)〜(IIIn)を合成した。求電子剤(Ib)〜(Ie)、(Ii)を使用した場合の脱保護はポリマー合成例3と同様にして行った。求電子剤(If)、(Ih)を使用した場合の脱保護は、液体アンモニウムと金属ナトリウムを使用するバーチ還元の条件で、脱保護を行った。求電子剤(Ig)を使用した場合の脱保護は、アルコール中でヒドラジン水和物を反応させることで、脱保護を行った。分析結果を表5に示す。

[比較ポリマー合成例1]ポリマー(IXa)の合成 温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却器を接続した500mLの四口ナスフラスコ中に撹拌子と重合開始剤として、カリウムメトキシド(関東化学(株)製)71mg(1.01mmol)を投入し、装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。

その後、窒素気流下で四口フラスコ内にメタノール(東京化成工業(株)製)40μL(1.00mmol)及び蒸留THF140gを投入し、カリウムメトキシドが完全に溶解するまで室温で撹拌を行った。上記方法により合成された重合開始剤カリウムメトキシドと開始剤原料アルコールであるメタノールの物質量比率は50:50(mol%)である。

滴下漏斗内にエチレンオキシド35gと蒸留THF60gの混合溶液を投入し、内温を35℃以下に保ちながら四口フラスコ内に少量ずつ滴下した。全量滴下後、内温を50℃以下に保ちながら80時間撹拌を行った。

エチレンオキシドの転化率に変化がなくなったことを確認後、フラスコ内に酢酸0.06gを添加した。窒素バブリングによりエチレンオキシドを除去後、反応液を500mLナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使って固体が析出するまで反応液を濃縮した。ポリマーの粗生成物23gをトルエン46gに再溶解後、滴下漏斗に移送した。

撹拌子の入った500mLビーカー中にイソプロピルエーテル138gを投入し、滴下漏斗を使ってポリマー溶液を10分かけて滴下後、20分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、イソプロピルエーテル69gの混合溶媒で20分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を2回実施した。反応スキームを以下に示す。

得られた白色粉末を真空乾燥した結果、18.54gの比較ポリマー(IXa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=7,200、Mw/Mn=1.16であった。

[比較ポリマー合成例2]ポリマー(Xa)の合成 温度計、ジムロート冷却器、分留管、300mLナスフラスコを接続した500mL四口フラスコ中に撹拌子を投入した。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。ポリマー(VIa)のTHF溶液(固形分換算で10g分)をシリンジで分取し、窒素気流下で500mL四口フラスコ内に投入した。500mL四口フラスコ内の温度を40℃以内に保ちながら、ポリマー溶液の濃縮を行い、固形分濃度が25wt%となるように調製した。

窒素気流下で500mL四口フラスコ内にアクリロニトリル1.0gを投入し、500mL四口フラスコ内の温度を40℃に保ちながら、3時間熟成を行った。反応終了後、オイルバスを外し、反応系を室温まで冷却した。系内に酢酸0.2gを添加してクエンチ後、アルカリ吸着剤「キョーワード700」(協和化学工業(株)製)を10g添加し、3時間反応を行った。アルカリ吸着剤をろ過後、ろ液を300mLナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使って比較ポリマー(Xa)の固形分濃度が25wt%になるまで濃縮した。

撹拌子の入った500mLビーカー中にヘキサン100gと酢酸エチル50gを混合し、滴下漏斗を使って得られた濃縮液を10分かけて滴下後、20分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン50gと酢酸エチル25gの混合溶媒で20分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。反応スキームを以下に示す。

得られた白色粉末を真空乾燥した結果、9.12gの比較ポリマー(Xa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=8,800、Mw/Mn=1.05であった。

[比較ポリマー合成例3]ポリマー(IIIo)の合成 500mLの水素還元用オートクレーブの中に5.0gのポリマー(Xa)、5.0gのラネーコバルト触媒R−400(日興リカ(株)製)、45.0gのメタノール、3.5mLのアンモニアの1Nメタノール溶液(アルドリッチ製)を室温で投入した。その後、水素ガス(圧力=10kg/cm2)を封入し、内温が120℃になるまで加温し、そのまま6時間反応を行った。室温まで冷却後、圧力を大気圧に戻した後、窒素を吹き込みながら系内のアンモニアを除去した。ろ過によりラネーコバルト触媒を除去後、ろ液を100mLナス形フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使ってアンモニアとメタノールを留去した。乾固するまで減圧濃縮を実施後、ポリマー(IIIo)と下記一般式(VIIo)〜(IXo)の混合物を4.5g得た。GPC測定を行った結果、Mw=8,900、Mw/Mn=1.11であった。 反応スキームと副生成物を以下に示す。

[ポリマー合成例3と比較ポリマー合成例3で得られた生成物の不純物含有量分析] [ポリマー合成例3]で得られた生成物と[比較ポリマー合成例3]で得られた生成物中の不純物含有量分析を行った。結果を下記表6に示す。 表6中mPEGと表した化合物とは[比較ポリマー合成例3]中、一般式(IXo)に相当する化合物であり、末端にシアノエチル基を有するポリマーからアクリロニトリルがβ脱離した化合物である。mPEGの組成比はH−NMR測定により算出した。まず、[ポリマー合成例3]と[比較ポリマー合成例3]で得られた生成物をそれぞれ10mg測り取り、0.75mlのCDCl3に溶解させた後、トリフルオロ酢酸無水物を50mg添加し、1日放置した後測定した。この処理によって生成する下記一般式(IX−1)で表される化合物のエステルα位メチレン由来のプロトンと下記一般式(III−1)で表される化合物のアミドα位メチレン由来のプロトンとの比によりmPEGの組成比を算出した。 表6中2、3級アミンと表した化合物とは[比較ポリマー合成例3]中、一般式(VIIo)、(VIIIo)に相当する化合物である。その混入量はGPCにより測定し、2倍、3倍分子量に相当するポリマーの面積パーセントより算出した。 これらの結果より、比較ポリマー(IIIo)では水素還元によるアクリロニトリルのβ脱離と2、3級アミンの生成が観測されたが、実施例ポリマー(IIIa)ではそれらの副生物が観測されなかった。

[ポリマー合成例3、4と比較ポリマー合成例3で得られた生成物の金属分析] [ポリマー合成例3]及び[ポリマー合成例4]の各々において得られた生成物と[比較ポリマー合成例3]で得られた生成物の高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS、Agilent Technologies 7500cs)による金属不純物分析を行った。測定はポリマーを超純水で100倍希釈したサンプルを用い、標準添加法により分析を行った。分析結果(固形分換算値)を表7に示す(単位はppb)。 金属分析の結果、比較ポリマー(IIIo)では還元時に使用した重金属が混入するのに対し、実施例のポリマー(IIIa)及びポリマー(IIIa−2)では合成過程で重金属触媒を使用しないため、重金属が含まれないことがわかる。

[合成例5]重合開始剤(Vb)〜(Vg)の合成 原料アルコールを下表のアルコールに変えた以外は[合成例1]に記載の方法と同様にして重合開始剤(Vb)〜(Vg)を合成した。

[比較合成例1]比較重合開始剤(Vh)〜(Vk)の合成 原料アルコールを下表のアルコールに変えた以外は[合成例1]に記載の方法と同様にして比較重合開始剤(Vh)〜(Vk)を合成した。

[合成例1、5及び比較合成例1で得られた重合開始剤の重合溶媒に対する溶解性比較] 次に重合開始剤(Va)〜(Vg)と比較重合開始剤(Vh)〜(Vk)の重合溶媒への溶解性の結果を示す。それぞれ重合溶媒であるTHFに20wt%の濃度で溶解させた結果を表に示す。目視による濁りが全く見られないものは「○」、濁りが見られたり全く溶けないものは「×」を記した。その結果、鎖長が長い開始剤(Va)〜(Vg)では開始剤が溶媒へ溶解した。一方、比較開始剤(Vh)〜(Vk)では溶媒へ溶解しなかった。

ポリマー合成例1及び比較ポリマー合成例1において、後者が開始剤原料アルコールの存在のため80時間もの重合時間を要しているのに対し、前者は開始剤原料アルコールの残量が少なくてもTHFに可溶である開始剤を用いることで8時間以内に重合反応が完結していることがわかる。すなわち、本発明の手法によって温和な条件下でのアルキレンオキシドの重合が実現した。また、ポリマー合成例2ではポリマー合成例1の反応液を直接反応に用いることにより、工程が大幅に簡略化出来た。さらにポリマー合成例4ではイオン交換樹脂を用いた樹脂の精製に有機溶媒を用いることにより、最終工程で凍結乾燥を使用せずに、簡便な方法でポリマーの精製を行うことが可能となった。

ポリマー合成例2、3及び比較ポリマー合成例2、3において、後者ではシアノ基の還元に重金属を触媒とした水素添加反応を要するのに対し、前者ではアミノ基が保護基で保護された求電子剤を用いているため、脱保護を行うだけで目的のポリマーを合成できた。比較ポリマー(IIIo)では水素還元によりアクリロニトリルのβ脱離と2、3級アミンの生成が起こっているが、実施例ポリマー(IIIa)ではいずれの生成も観測できなかった(表6)。

また、金属分析の結果から、ポリマー合成例3、4及び比較ポリマー合成例3において、比較ポリマー(IIIo)では還元時に使用した重金属が混入するのに対し、実施例ポリマー(IIIa、IIIa−2)では合成例3、4で重金属を使用していないために重金属が本質的に混入しないことがわかる(表7)。また強酸性陽イオン交換樹脂による精製によりK金属混入量を低減することができた。結果、本発明により、医薬品において悪影響を及ぼす可能性のある重金属の混入がないアミノ基含有狭分散ポリアルキレングリコール誘導体の合成を達成することができた。また、アルキレンオキシドの重合から求電子剤による末端停止反応、続く脱保護を、連続して行うことができ、工程の簡略化も達成された。

本発明に係るアミノ基含有狭分散かつ高純度ポリアルキレングリコール誘導体の製造方法は、医薬品や化粧品等の分野で用いられるブロック共重合体の原料を提供することができる。

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