性被覆剤、親水性被膜、及び親水性基材

申请号 JP2009536133 申请日 2008-10-06 公开(公告)号 JPWO2009044912A1 公开(公告)日 2011-02-17
申请人 ハリマ化成株式会社; 发明人 亮一 中井; 亮一 中井;
摘要 本発明は、高い親 水 性による防曇性と、硬度,耐水性,耐アルカリ性とを兼ね備えた親水性被膜を提供することを目的とする。本発明の一局面は、(A)コロイダルシリカゾルと、(B)活性水素を有する重量平均分子量5千〜20万のアクリルポリマーと、(C)反応性シランカップリング剤と、(D)アクリルポリマー(B)に対する硬化剤とを含有し、(A)成分と(B)成分との質量比[(A)/(B)]が5/95〜95/5であり、且つ、(A)成分及び(B)成分の合計と(C)成分との質量比[(A+B)/(C)]が30/70〜95/5であることを特徴とする親水性被覆剤である。
权利要求
  • (A)コロイダルシリカゾルと、(B)活性水素を有する重量平均分子量(M )5千〜20万のアクリルポリマーと、(C)反応性シランカップリング剤と、(D)アクリルポリマー(B)に対する硬化剤とを含有し、
    (A)成分と(B)成分との質量比[(A)/(B)]が5/95〜95/5であり、且つ、(A)成分及び(B)成分の合計と(C)成分との質量比[(A+B)/(C)]が30/70〜95/5であることを特徴とする親水性被覆剤。
  • (B)成分と(E)成分との合計量に対して、活性水素を有する界面活性剤(E)を30質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の親水性被覆剤。
  • (B)成分と(E)成分との合計量に対して、活性水素を有する界面活性剤(E)を5〜20質量%の割合で含有する請求項1に記載の親水性被覆剤。
  • アクリルポリマー(B)が、活性水素を有するラジカル反応性モノマー単位と活性水素を有しないラジカル反応性モノマー単位との共重合体であり、前記活性水素を有するラジカル反応性モノマー単位の構成割合が20質量%以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の親水性被覆剤。
  • アクリルポリマー(B)が、水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アミド基,スルホン酸基,及び,ホスフェート基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水性被覆剤。
  • コロイダルシリカゾル(A)が、平均粒子径1〜200nmの微粒子シリカを分散質として含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の親水性被覆剤。
  • シランカップリング剤(C)が、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、及びイソシアネートプロピルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の親水性被覆剤。
  • 硬化剤(D)が、ポリイソシアネート、及びメラミン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の親水性被覆剤。
  • 硬化金属触媒(F)をさらに含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の親水性被覆剤。
  • 請求項1〜9のいずれか1項に記載の親水性被覆剤を基材に塗布し、硬化させて得られることを特徴とする親水性被膜。
  • 請求項10に記載の親水性被膜で被覆されたことを特徴とする親水性基材。
  • 说明书全文

    本発明は眼鏡レンズ、窓材などに防曇性を付与するための親性被覆剤及び、該親水性被覆剤から得られる親水性被膜、及び該親水性被膜が形成された親水性基材に関する。

    従来から、ガラスやプラスチック材料などを基材とする、眼鏡レンズや窓材などに防曇性を付与するための親水性被覆剤が知られている。

    例えば、下記特許文献1には、耐擦傷性と防曇性とを両立する親水性被膜を形成するための親水性ハードコート用組成物が開示されている。 具体的には、1分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーと、カルボキシル基,スルホン酸基,リン酸基から選ばれる官能基を有する親水性モノマーと、無機コロイドゾルとを含有する親水性ハードコート用組成物が開示されている。

    また、下記特許文献2には、耐摩耗性に優れた防曇性被膜を形成するための塗布剤であって、レベリング工程の時間短縮を図れる塗布剤が開示されている。 具体的には、有機イソシアネート、吸水性ポリオール、アクリルポリオール、活性水素基含有界面活性剤、及び溶媒の混合物とからなる塗布剤が開示されている。

    また、下記特許文献3には、ハードコート層を形成した眼鏡用プラスチックレンズ基材上に、有機物及び無機物よりなる防曇コート層を形成した防曇性眼鏡レンズが開示されている。 前記防曇コート層の具体例としては、コロイダルシリカとポリビニルアルコールとポリアクリル酸と水含有有機溶媒とを含有するコーティング組成物を第1層として積層し、この第1層の上にメチルシリケートとアセチルアセトンアルミニウムと水含有有機溶媒とを含有する第2層を積層してなるものが開示されている。 さらに、前記防曇コート層の具体例としては、エチルシリケートとコロイダルシリカと水含有有機溶媒とを含有するコーティング組成物を第1層として積層し、この第1層の上に、ポリビニルアルコール部分ケン化物とメチルシリケートとアセチルアセトンアルミニウムとエポキシシリカ等を含有する第2層を積層してなるものが開示されている。

    また、下記特許文献4には、水分散性シリカ(A)と、アクリル共重合体等の水溶性又は水分散性重合体(B)と、必要に応じて反応性シラン化合物とからなり、特定の成分(A)と(B)の配合比を満たす有機−無機複合体反応物で金属表面を被覆することが記載されている。

    また、下記特許文献5には、防曇性能の寿命に優れる塗膜を形成するための防曇塗料が開示されている。 具体的には、コロイダルシリカゾルと親水性ポリマーとを必須成分として含有する防曇塗料が記載されている。 前記親水性ポリマーの具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、変性ポリビニルピロリドン、親水性アクリル系ポリマーなどが列挙されている。 また、防曇塗料にはポリイソシアネート化合物などの架橋剤をさらに含有しても良いことが記載されている。

    上記何れの文献に開示された被覆剤から形成される親水性被膜も、親水性は示す。 しかしながら、高い硬度、耐水性、耐アルカリ性の全てをさらに備えるものではなかった。

    特開2005−187576号公報

    特開2006−169440号公報

    特開2005−234066号公報

    特開昭55−99976号公報

    特開2005−314495号公報

    本発明は、高い親水性による防曇性と、硬度,耐水性,耐アルカリ性とを兼ね備えた親水性被膜を提供することを目的とする。

    本発明の一局面は、(A)コロイダルシリカゾルと、(B)活性水素を有する重量平均分子量5千〜20万のアクリルポリマーと、(C)反応性シランカップリング剤と、(D)アクリルポリマー(B)に対する硬化剤とを含有し、(A)成分と(B)成分との質量比[(A)/(B)]が5/95〜95/5であり、且つ、(A)成分及び(B)成分の合計と(C)成分との質量比[(A+B)/(C)]が30/70〜95/5であることを特徴とする親水性被覆剤である。

    本発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明によって、より明白となる。

    以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。 なお、本発明は、以下に説明する実施形態により、何ら限定されるものではない。

    本実施形態における親水性被覆剤は、(A)コロイダルシリカゾルと、(B)活性水素を有する重量平均分子量5千〜20万のアクリルポリマーと、(C)反応性シランカップリング剤と、(D)アクリルポリマー(B)に対する硬化剤とを含有し、(A)成分と(B)成分との質量比[(A)/(B)]が5/95〜95/5であり、且つ、(A)成分及び(B)成分の合計と(C)成分との質量比[(A+B)/(C)]が30/70〜95/5であることを特徴とする。

    コロイダルシリカゾル(A)は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、キシレン、ジメチルホルムアミド等を分散媒とする、シラノール基(−Si−OH)を有するシリカ系化合物のコロイドまたはゾルである。 コロイダルシリカゾルとしては、メチルシリケート、エチルシリケート及びそれらのオリゴマー等を原料として塩基性触媒を用いて製造される、シリカ微粒子や長鎖状の分子を分散質として含むものが挙げられる。

    分散質の平均粒子径としては、1〜200nm、さらには、10〜100nmであることが被覆剤の安定性、硬化後の透明性に優れる点から好ましい。 なお、前記平均粒子径は比表面積換算して算出された値である。

    また、コロイダルシリカゾル(A)中のシリカ系化合物の含有割合としては、5〜50質量%、さらには、10〜40質量%であることが粒子の安定性に優れる点から好ましい。

    コロイダルシリカゾル(A)の具体例としては、市販品である、MEK−ST、メタノールシリカゾルなどのスノーテックスシリーズ(共に日産化学(株)製);クォートロン(扶桑化学(株)製);カタロイドS(触媒化成工業(株)製);ルドックス(グレース社製);シリカドール(日本化学工業(株)製);アデライト(旭電化工業(株)製)などが挙げられる。

    本実施形態におけるアクリルポリマー(B)は、活性水素を有する重量平均分子量5千〜20万のアクリルポリマーである。 アクリルポリマーに含まれる活性水素により、アクリルポリマー(B)は、反応性シランカップリング剤(C)を介してコロイダルシリカゾル(A)と架橋構造を形成する。 また、アクリルポリマー(B)の活性水素は、硬化剤(D)による硬化点にもなる。

    活性水素を有するアクリルポリマー(B)は、活性水素を有する官能基を有するラジカル重合性モノマー(以下、単に活性水素含有モノマーとも称する)を含有するモノマー混合液を重合することにより得られる。 重合方法の具体例としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。 これらの中では、モノマー混合液を溶媒に溶解させ、必要に応じて重合開始剤の存在下で重合させる溶液重合を用いることが好ましい。

    活性水素を有する官能基の具体例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、ホスフェート基、メルカプト基などが挙げられる。 これらの中では水酸基が、カップリング剤との反応性に優れる点及び被覆剤の安定性に優れる点から好ましい。

    アクリルポリマー(B)は、活性水素含有モノマー単位を含有する重合体であれば特に限定されず、活性水素含有モノマーと該活性水素含有モノマーと共重合可能な活性水素を有しないラジカル重合性モノマー(以下、単に活性水素非含有モノマーとも称する)との共重合体であっても、活性水素含有モノマーの単独重合体であってもよい。

    アクリルポリマー(B)中の活性水素含有モノマー単位の含有割合としては、10質量%以上、さらには20質量%以上で、100質量%以下、さらには80質量%以下であることが好ましい。 前記活性水素含有モノマー単位の含有割合が低すぎる場合には得られる被膜の親水性が不充分になる傾向がある。

    アクリルポリマー(B)の重量平均分子量(M )は5千〜20万の範囲であり、好ましくは2万〜15万、さらに好ましくは4万〜10万の範囲である。 前記重量平均分子量が5千未満の場合には、形成される親水性被膜の表面の耐水性、耐アルカリ性が低下する。 一方、前記重量平均分子量が20万を超える場合には、(A)コロイダルシリカゾルとの相溶性が低下することにより、被覆剤中に凝集を生じて塗布が困難になったり、良好な塗膜が得られなくなったりする。

    本実施形態の親水性被覆剤においては、コロイダルシリカゾル(A)とアクリルポリマー(B)との質量比[(A)/(B)]は、5/95〜95/5であり、好ましくは、20/80〜80/20、さらに好ましくは25/75〜75/25である。 A/Bが5/95未満の場合には、高い表面硬度が得られず、また、耐溶剤性が低下し、A/Bが95/5よりも高い場合には、クラックが発生するなどして良好な塗膜が得られない。

    水酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、水酸基を有する、(メタ)アクリル酸エステル,ビニルエーテル,又は(メタ)アクリル酸エステルのグリコール系付加物などが挙げられる。

    水酸基を有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のポリアルキレンンポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるポリオールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレンポリオール� ��ε−カプロラクトンとの付加物などが挙げられる。 なお、ポリオールモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、市販品として、ブレンマーAETシリーズ、APTシリーズ、AEシリーズ、AEPシリーズ、ブレンマーAP−400、AP−550、AP−800、ブレンマーPEPシリーズ、PETシリーズ、PPTシリーズ、PPシリーズ(何れも日本油脂(株)製);日本乳化剤(株)製のMAシリーズ;第一工業製薬(株)製のニューフロンティアNFシリーズ;ダイセル化学(株)製のプラクセルFMシリーズ、FAシリーズ等が挙げられる。

    カルボキシル基を含有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸類が挙げられる。

    スルホン酸基を含有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。

    アミド基を含有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。

    アミノ基を含有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。

    ホスフェート基を含有するラジカル重合性のモノマーの具体例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェート類が挙げられる。

    一方、活性水素を有する官能基を有しないラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート;ポリシロキサン含有(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物な どが挙げられる。

    上記モノマーは何れも単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

    重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシビバレート等の有機過酸化物、2,2−アゾビス−iso−ブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。 重合開始剤は単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 重合開始剤の配合割合としては、ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらには0.5〜2質量部であることが好ましい。

    また、溶液重合における溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系有機溶剤、トルエン、キシレン、「ソルベッソ100」(エクソンケミカル社製)等の芳香族炭化水素系有機溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、「ロウス」、「ミネラルスピリット EC」(共にシェル社製)等の脂肪族炭化水素系/脂環族炭化水素系有機溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系有機溶剤、テ トラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、n−ブチルカルビトール、iso−アミルカルビトール等のカルビトール系有機溶剤が挙げられる。 これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

    アクリルポリマー(B)は、アクリル樹脂溶液、アクリルエマルジョン、アクリルサスペンジョン等の液体状態で配合される。 アクリル樹脂溶液、アクリルエマルジョン、またはアクリルサスペンジョン中のアクリルポリマー(B)の固形分濃度としては、10〜80質量%、さらには、20〜60質量%であることがアクリルポリマー製造時の安定製造及び作業性の点から好ましい。

    一方、本実施形態における反応性シランカップリング剤(C)は、コロイダルシリカゾル(A)とアクリルポリマー(B)との間に架橋構造を形成するために用いられる。 すなわち、反応性シランカップリング剤(C)は、その末端官能基によりアクリルポリマー(B)の活性水素と反応し、また、その末端のアルコキシシリル基により反応コロイダルシリカゾル(A)表面のシラノール基とシラノール結合を形成する。 そして、コロイダルシリカゾル(A)とアクリルポリマー(B)との間に架橋構造を形成することにより、得られる被膜表面に高い耐アルカリ性と高い親水性を付与しうると考えられる。

    反応性シランカップリング剤(C)の具体例としては、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBM403、チッソ(株)製のサイラプレーンS−510等)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBE403、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6041等)等のエポキシ基含有シランカップリング剤;アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBM903、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6610等)、アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBE903、チッソ(株)製のサイラプレーンS330等)等のアミノ基含有シランカップリング剤;メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBM803、東レ・� ��ウコーニング(株)製のZ−6062等)のメルカプト基含有シランカップリング剤;ウレイドプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBE585、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6676等)等のウレタン基含有シランカップリング剤;イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製のKBE9007等)のイソシアネート基含有シランカップリング剤、等が挙げられる。 これらの中では、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシランが被覆剤の安定性及び反応性に優れる点から好ましい。

    反応性シランカップリング剤(C)の配合割合としては、コロイダルシリカゾル(A)とアクリルポリマー(B)との合計量(A+B)とシランカップリング剤(C)との質量比[(A+B)/(C)]で、30/70〜95/5であり、好ましくは50/50〜90/10、さらに好ましくは、60/40〜80/20である。 質量比[(A+B)/(C)]が30/70未満の場合には成膜性が低下して、表面硬度及び耐水性が低下する。 また、質量比[(A+B)/(C)]が95/5を超える場合には、コロイダルシリカ(A)とアクリルポリマー(B)との架橋が少なくなることにより、コロイダルシリカゾル(A)とアクリルポリマー(B)との界面での結合が少なくなるために、親水性及び耐アルカリ性が低下する。

    本実施形態におけるアクリルポリマー(B)に対する硬化剤(D)は、アクリルポリマー(B)を硬化させることにより、形成される被膜に高い耐アルカリ性、耐水性、及び耐溶剤性等を付与する成分である。

    硬化剤(D)は、アクリルポリマー(B)が有する活性水素との反応性を具備する官能基を少なくとも2つ以上有する化合物であれば特に限定なく用いられる。

    硬化剤(D)の具体例としては、少なくとも2つ以上の反応性の官能基を有する、例えば、ポリイソシアネート、メラミン樹脂系硬化剤、エポキシ系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。 これらの中では、ポリイソシアネート、メラミン樹脂系硬化剤が、特には、ポリイソシアネートが比較的低温でも反応性に優れる点から好ましい。

    ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネ−ト等を出発原料としたビウレット、イソシアヌレート構造を有する3官能のポリイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製のNP1100(ビウレット構造)、D−170N(イソシアヌレート構造)等)、エチレンオキサイド等の親水基により変性された水分散型ポリイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製のWDシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製のデュラネートWB40−100)、または水分散ブロック型のイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製のWBシリーズ)等が挙げられる。

    また、メラミン樹脂系硬化剤の具体例としては、例えば、市販品として(株)三和ケミカル製のニカラックシリーズなどが挙げられる。

    また、エポキシ系硬化剤の具体例としては、例えば、市販品として、油化シェルエポキシ(株)製のエピコートシリーズ、共栄社化学(株)製のエポライトシリーズ等が挙げられる。

    また、カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、例えば、市販品として、日清紡(株)製のカルボジライトシリーズなどが挙げられる。

    また、オキサゾリン系硬化剤の具体例としては、例えば、市販品として、日本触媒(株)製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。

    硬化剤(D)の配合割合は、アクリルポリマー(B)を充分に硬化させる割合であれば特に限定されず、アクリルポリマー(B)の種類や、活性水素含有量等により適宜選択される。 具体的には、例えば、アクリルポリマー(B)が水酸基含有アクリルポリマーであり、硬化剤(D)がポリイソシアネートである場合には、水酸基含有アクリルポリマーの水酸基1当量に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.2〜3当量になるような配合割合であることが好ましい。

    本実施形態の被覆剤においては、活性水素を有する界面活性剤(E)をさらに配合してもよい。 活性水素を有する界面活性剤(E)を配合することにより、得られる被膜表面の親水性がさらに向上する。 また、界面活性剤が活性水素を有するために、反応性シランカップリング剤(C)や硬化剤(D)と反応することにより親水性の向上効果が長期間維持される。

    界面活性剤(E)としては、活性水素を有するものである限り特に限定されない。 具体的には、活性水素を有する官能基を有する、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。 活性水素を有する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。

    活性水素を含有するアニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ヒマシ油モノサルフェート、ヒマシ油モノホスフェート、ソルビタン脂肪酸エステルサルフェート、ソルビタン脂肪酸エステルホスフェート、ポリオキシアルキレングリセリンエーテルモノサルフェート、ポリオキシアルキレングリセリンエーテルモノホスフェート、パーフルオロアルキルエステルホスフェートなどが挙げられる。

    活性水素を含有するカチオン系界面活性剤の具体例としては、ジアルカノールアミン塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミンエーテル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンジアルカノールアミンエーテル塩などが挙げられる。

    活性水素を含有するノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。

    活性水素を含有する両性界面活性剤の具体例としては、N,N−ジ(β−ヒドロキシアルキル)N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシアルキルアンモニウムベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)−N−アルキル−N−スルホアルキルアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルベタインなどが挙げられる。

    界面活性剤(E)の配合割合としては、アクリルポリマー(B)と界面活性剤(E)との合計量[(B)+(E)]に対して、30質量%以下、さらには、20質量%以下であり、5質量%以上、さらには、10質量%以上であることが好ましい。 界面活性剤(E)の配合割合が30質量%を超える場合には、得られる被膜の硬度、耐水性、耐アルカリ性、及び耐溶剤性が低下する傾向がある。

    本実施形態の表面親水性被覆剤は、硬化金属触媒(F)をさらに含有することが好ましい。 硬化金属触媒(F)を配合することにより、コロイダルシリカゾル(A)と反応性シランカップリング剤(C)との縮合反応が促進されて得られる被膜の硬度及び耐アルカリ性をさらに向上させることができる。

    硬化金属触媒(F)の具体例としては、例えば、スズ、チタン、亜鉛、鉄、コバルト、アルミニウムの金属塩、アルコキシド、キレート化合物などが挙げられる。 具体的にはアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ−イソプロポキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテートなどが挙げられる。

    硬化金属触媒(F)の配合割合としては、表面親水性被覆剤の全量中、0.01〜0.2質量%、さらには、0.05〜0.1質量%の範囲であることが好ましい。 硬化金属触媒(F)の配合割合が高すぎる場合には、得られる被膜の硬度、耐アルカリ性は向上するが、親水性が低下する傾向がある。

    本実施形態の表面親水性被覆剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、消泡剤などの各種添加剤をさらに配合してもよい。

    本実施形態の表面親水性被覆剤は、コロイダルシリカゾル(A)、アクリルポリマー(B)の溶液、反応性シランカップリング剤(C)、硬化剤(D)とを、上述した配合割合になるように混合することにより調製される。 なお、硬化剤(D)をコロイダルシリカゾル(A)やアクリルポリマー(B)と混合すると、すぐに架橋反応が開始されるために、硬化剤(D)は塗布直前に配合することが好ましい。 具体的には、コロイダルシリカゾル(A)と反応性シランカップリング剤(C)、必要に応じて界面活性剤(E)及び硬化金属触媒(F)を予備混合した後、アクリルポリマー(B)の溶液を徐々に添加して均一混合して主剤を得る。 そして、基材に塗布する直前に主剤に硬化剤(D)を添加することにより表面親水性被覆剤が調製される。 さらに具体的には、例えば、コロイダルシリカ(A)、反応性シランカップリング剤(C)、界面活性剤(E)、及び硬化金属触媒(F)を容器に仕込み、40℃まで昇温する。 そして、前記容器にアクリルポリマー(B)を徐々に、具体的には30〜60分間程度かけて滴下する。 そして、滴下終了後、さらに40℃で30〜60分間程度撹拌することにより主剤を調整する。 そして、基材に塗布する直前に、主剤に硬化剤(D)を配合して撹拌混合することにより表面被覆剤が調製される。

    調製された表面親水性被覆剤は、反応が進行しすぎる前に基材に塗布することが好ましい。

    基材は特に限定されず、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル系樹脂、スチレン系樹脂などの各種樹脂基材、ステンレス、鋼、アルミニウムなどの各種金属基材、ガラスなどの無機基材等が特に限定なく用いられる。 また、基材の形態も、板、フィルム、成形品等特に限定されない。

    塗布方法は特に限定されず、ディッピング、ロールコート、スピンコート、バーコート等の各種塗布方法が特に限定なく用いられうる。

    塗布された表面被覆剤は60〜180℃、好ましくは80〜150℃程度の温度で15〜120分間、好ましくは30〜60分間程度加熱することにより熱硬化させる。 これにより、親水性被膜が形成される。 また、可能である限り、常温硬化や光硬化による硬化であってもよい。

    親水性被膜の膜厚は特に限定されないが、例えば、2〜90μm、さらには、5〜50μm程度であることが好ましい。

    このような、表面被覆剤は、眼鏡、ゴーグル等のレンズ、建築用、車両用、計器用の窓材等に親水性被覆を形成するために好ましく用いられる。

    以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。 なお、以下の「%」、「部」は質量基準を意味する。

    なお、本発明は下記実施例何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得る。

    《水酸基を有するアクリルポリマーの合成例》
    (合成例1)
    反応容器中に、メチルエチルケトン(MEK)224部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)56部とからなる混合溶媒を仕込み、60℃まで昇温した。

    一方、メチルメタクリレート(MMA)78部及びポリエチレングリコールのメタクリル酸エステル(MA−50A、日本乳化剤(株)製)42部からなる混合モノマーと、重合触媒としてt−ヘキシルパーオキシネオデカネート(パーヘキシルND、日本油脂(株)製)1.2部と、を撹拌混合することによりモノマー混合液を調製した。

    上記混合溶媒にモノマー混合液を60℃で3時間かけて滴下し、3時間後に反応を終了した。 このようにして、水酸基を有するM 80000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    (合成例2)
    モノマー混合液として、MA−50Aからなるモノマー120部とパーヘキシルND1.8部とを撹拌混合することにより調製したモノマー混合液を用いた以外は合成例1と同様にして、水酸基を有するM 40000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    (合成例3)
    混合モノマーとして、MMA 78部、MA−50A 36部、及びアクリル酸(AA)6部からなる混合モノマーを用いた以外は合成例1と同様にして、水酸基とカルボキシル基とを有するM 90000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    (合成例4)
    混合モノマーとして、MMA 102部、及び、MA−50A 18部からなる混合モノマーを用いた以外は合成例1と同様と同様にして、水酸基を有するM 85000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    (合成例5)
    混合モノマーとして、MMA60部、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEA)60部からなる混合モノマーを用いた以外は合成例1と同様にして、水酸基を有するM 100000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    (合成例6)
    モノマー混合液として、MA−50A 120部とパーヘキシルND6部と連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)2.4部とを撹拌混合することにより調製したモノマー混合液を用いた以外は合成例1と同様にして、水酸基を有するM 4000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    (合成例7)
    重合触媒(パーヘキシルND)の添加量を1.2部から0.6部に変更した以外は合成例1と同様にして、水酸基を有するM 250000のアクリルポリマーを含有する樹脂溶液を製造した。

    表1に、合成例1〜7におけるモノマー組成、溶媒の種類、および得られたアクリルポリマーの重量平均分子量(M )、樹脂溶液の粘度及び不揮発分、アクリルポリマーの水酸基価をまとめて示す。

    《実施例》
    合成例1〜7で得られた水酸基含有アクリルポリマーを用いて以下のように親水性被覆剤を製造した。

    なお、本実施例で用いたその他の原材料について、以下にまとめて説明する。
    (A)コロイダルシリカゾル・MEK−ST:分散粒径10〜15nmの日産化学(株)製、スノーテックシリーズ、不揮発分30%
    ・メタノール−シリカゾル:分散粒径10〜15nmの日産化学(株)製スノーテックシリーズ、不揮発分30%

    (C1)反応性シランカップリング剤・S−510溶液:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(サイラプレーンS−510、チッソ(株)製)のMEK溶液、不揮発分30%
    ・KBE−9007溶液:イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007、信越化学工業(株)製)のMEK溶液、不揮発分30%

    (C2)非反応性シランカップリング剤・メチルシリケート溶液:メチルシリケートのMEK溶液、不揮発分30%

    (D)硬化剤・WB40−100溶液:デュラネートWB40−100(旭化成ケミカルズ(株)製の親水基付与変性ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビュレット型水分散ポリウレタン樹脂)の溶液、不揮発分30%
    ・NP1100溶液:MT−オレスタ−NP1100(三井武田ケミカルズ(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビュレット型ポリレタン)のMEK溶液、不揮発分30%

    (E)界面活性剤・エバンU105溶液:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル(第一工業製薬(株)製エバンU105)のMEK溶液、不揮発分30%
    ・VISGARD−A:スルフォン酸アミン塩(67%)とオキシエチレン−オキシプロピレン(37%)との共重合体の溶液(Film Specialties社製)、不揮発分27%

    (F)硬化触媒・アルミキレートD:アルミニウムモノアセチルアセテート(川研ファインケミカル(株)製のアルミキレートD)のMEK溶液、不揮発分30%

    (G)吸水ポリオール・PEG−1000溶液:ポリエチレングリコール(第一工業製薬(株)製のPEG−1000)のMEK溶液、不揮発分30%

    (実施例1)
    表2に示すような組成により、以下の方法により親水性被覆剤を調製した。

    はじめに、反応容器中にMEK−ST40部及びS−510溶液 40部を仕込み、40℃まで昇温した。

    次に、合成例1で得られた水酸基含有アクリルポリマー溶液20部を上記反応容器内に45分間かけて滴下し、滴下終了後に40℃、30分間撹拌することにより主剤を調製した。

    そして、得られた主剤にWB40−100溶液 7.7部を撹拌混合することにより親水性被覆剤を得た。

    (実施例2〜14)
    表2の組成に従って調製した以外は、実施例1と同様にして親水性被覆剤を得た。

    (比較例1〜11)
    表3の組成に従って調製した以外は、実施例1と同様にして親水性被覆剤を得た。

    《親水性被覆剤の評価方法》
    上記実施例1〜14、及び比較例1〜11で得られた主剤に硬化剤(D)を撹拌混合して親水性被覆剤を調製した。 そして、アプリケーター4milで150mm×70mm×0.5mm(厚み)のガラス板に得られた被覆剤を塗布した後、120℃、20分の条件で乾燥して試験板を作成した。 そして、得られた試験板を用いて、下記評価試験に供した。

    但し、比較例1で得られた親水性被覆剤は塗膜表面に粉状のツブが多数発生し、また、比較例10で得られた親水性被覆剤は塗工液が凝集したため、共に試験できなかった。

    (外観評価)
    JIS K 5600−1−1の4.4「塗膜の外観」の試験法に準拠して、下記の基準により透明性及びクラックの有無を判定した。
    優:無色透明であり、クラックなし。
    劣:白濁し、またはクラックが発生した。

    (鉛筆硬度)
    JIS K 5600−5−4「引っ掻き硬度(鉛筆法)」の試験法に準拠して、鉛筆硬度試験を実施した。 鉛筆硬度試験においては、硬度が低い方から高いほうにB、HB、F、Hの順に並べられる。 また、「H」の前に付く数字が大きいほど硬度が高く、「B」の前に付く数字が大きいほど硬度が低い。

    (耐水性)
    試験板を23℃±2℃の水中に3日間浸漬した。 そして浸漬後の試験片の外観を観察して、JIS K 5600−1−1の4.4「塗膜の外観」の試験法に準拠して、耐水性を判定した。
    優:無色透明であった。
    普通:半透明であった 劣:白化或は溶解した。

    (耐アルカリ性)
    試験板を23℃±2℃の5%水酸化ナトリウム水溶液中に3日間浸漬した。 そして浸漬後の試験片の外観を観察して、JIS K 5600−1−1の4.4「塗膜の外観」の試験法に準拠して、耐アルカリ性を判定した。
    優:無色透明であった。
    普通:半透明であった 劣:白化或は溶解した。

    (耐溶剤性)
    試験板表面に形成された被膜の表面にアセトンを滴下した後、荷重100gをかけて50回ラビング試験を行った。 そして、JIS K 5600−1−1の4.4「塗膜の外観」の試験法に準拠して、耐溶剤性を判定した。
    優:無色透明であった。
    普通:半透明であった 劣:白化或は溶解した。

    (防曇性)
    50℃の温水の表面に1cmの間隔を空けて試験板の塗布面を対向させ、被膜の表面が曇り始めるまでの時間を測定した。
    優:曇り始めるまでの時間に2分以上を要した。
    普通:曇り始めるまでの時間が1分以上、2分未満であった。
    劣:曇り始めるまでの時間が1分未満であった。

    (表面親水性(水接触))
    試験板表面に0.4μLの水滴を垂らし、接触角計(協和界面科学社製、Drop Master500)により接触角を測定した。 結果を表4及び表5に示す。

    実施例1〜14で調製した表面被覆剤から得られる被膜の外観は何れも無色透明であり、クラックの発生の無い外観性に優れたものであった。 また、その鉛筆硬度は何れも2H以上であった。 さらに耐水性、耐アルカリ性、耐溶剤性、防曇性も優れていた。 また、何れの被膜も水に対する接触角が低く、親水性に優れていた。

    一方、比較例1で得られた親水性被覆剤は、コロイダルシリカゾル(A)の割合が多すぎるために、塗膜表面に粉状のツブが多数発生して正常な塗膜が得られなかった。 また、比較例2で得られた親水性被覆剤は、コロイダルシリカゾル(A)の割合が少なすぎるために、外観性には優れているが、硬度や耐溶剤性が低下した。

    また、比較例3で得られた親水性被覆剤は、反応性シランカップリング剤(C)が少なすぎるために、親水性が低くなって防曇性が低下した。 また、被膜の耐アルカリ性も低下した。 一方、比較例4で得られた親水性被覆剤は、反応性シランカップリング剤(C)が多過ぎるために、親水性が低下することにより防曇性が低下した。 また、被膜の硬度も大幅に低下し、耐水性、耐アルカリ性及び耐溶剤性が劣っていた。

    また、比較例5で得られた親水性被覆剤は、硬化剤(D)を含有しないために、アクリルポリマー(B)が架橋構造を形成しない。 従って、耐アルカリ性、耐水性、及び耐溶剤性が劣っていた。

    また、比較例6で得られた親水性被覆剤は、反応性シランカップリング剤(C)を含有しないために、コロイダルシリカゾル(A)に対するアクリルポリマー(B)の架橋形成が不充分になるために、耐アルカリ性や防曇性が劣っていた。

    また、比較例7で得られた親水性被覆剤は、コロイダルシリカゾル(A)を含有しないために、硬度及び耐溶剤性が劣っていた。

    また、比較例8で得られた親水性被覆剤は、末端官能基を有しないシランカップリング剤を含有するために、比較例6と同様に、コロイダルシリカゾル(A)に対するアクリルポリマー(B)の架橋形成が不充分になるために、耐アルカリ性や防曇性が劣っていた。

    また、比較例9で得られた親水性被覆剤は、アクリルポリマー(B)の分子量が低いために耐水性や耐アルカリ性が劣っていた。 また、比較例10で得られた親水性被覆剤は、アクリルポリマー(B)の分子量が高すぎるために、コロイダルシリカゾル(A)との相溶性が低下して、製造時に凝集して塗布が困難な状態になった。

    また、比較例11で得られた親水性被覆剤は特許文献2に記載された発明に属するものである。 比較例11で得られた親水性被覆剤はコロイダルシリカゾル(A)を含有せず、また、界面活性剤(E)の含有割合が高いために硬度が極めて低かった。

    以上詳述したように、本発明の一局面の親水性被覆剤は、(A)コロイダルシリカゾルと、(B)活性水素を有する重量平均分子量(M )5千〜20万のアクリルポリマーと、(C)反応性シランカップリング剤と、(D)アクリルポリマー(B)に対する硬化剤とを含有し、(A)成分と(B)成分との質量比[(A)/(B)]が5/95〜95/5であり、且つ、(A)成分及び(B)成分の合計と(C)成分との質量比[(A+B)/(C)]が30/70〜95/5であることを特徴とする。 このような親水性被覆剤によれば、高い親水性及び防曇性と、硬度,耐水性,耐アルカリ性とを兼ね備えた親水性被膜を形成することができる。

    また、上記親水性被覆剤は、(B)成分と(E)成分との合計量に対して、活性水素を有する界面活性剤(E)を30質量%以下の割合、より好ましくは5〜20質量%の範囲でさらに含有することが好ましい。 このような構成によれば、被膜の親水性をさらに向上させることができる。 また、界面活性剤が活性水素を有するために、反応性シランカップリング剤(C)や硬化剤(D)と反応することにより、親水性の向上効果が長時間維持される。

    また、前記アクリルポリマー(B)は、活性水素を有するラジカル反応性モノマー単位と活性水素を有しないラジカル反応性モノマー単位との共重合体であり、前記活性水素を有するラジカル反応性モノマー単位の構成割合が20質量%以上であることが、被膜により優れた親水性を付与できる点から好ましい。

    また、アクリルポリマー(B)は、水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アミド基,スルホン酸基,及び,ホスフェート基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することが活性水素を有する点から好ましい。

    また、コロイダルシリカゾル(A)が、平均粒子径1〜200nmの微粒子シリカを分散質として含有する場合には、被覆剤の安定性に優れ、硬化後の被膜の透明性に優れる点から好ましい。

    また、シランカップリング剤(C)としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、及びイソシアネートプロピルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも一種が被覆剤の安定性及び反応性に優れる点から好ましい。

    また、硬化剤(D)としては、ポリイソシアネート、及びメラミン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが比較的低い温度においても反応性が優れている点から好ましい。

    また、上記親水性被覆剤は、硬化金属触媒(F)をさらに含有することが、コロイダルシリカゾル(A)と反応性シランカップリング剤(C)との縮合反応が促進されることにより、得られる被膜の硬度及び耐アルカリ性をさらに向上させることができる点から好ましい。

    また、本発明の他の一局面の親水性被膜は、上記いずれかの親水性被覆剤を基材に塗布し、硬化させて得られることを特徴とする。 このような親水性被膜は、高い親水性及び防曇性と、硬度,耐水性,耐アルカリ性とを兼ね備えたものである。

    また、本発明の他の一局面の親水性基材は、上記親水性被膜で被覆されたことを特徴とする。 このような親水性基材は、高い親水性及び防曇性と、硬度,耐水性,耐アルカリ性とを兼ね備えた表面を有する。

    本発明の親水性被覆剤は、親水性ハードコート用材料、防曇用コーティング剤、帯電防止用コーティング剤、油汚れや指紋などの防汚コーティング剤などに広く利用される。

    QQ群二维码
    意见反馈