【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールに基づく新規な水性ポリウレタン−ポリ尿素分散体、それらの製造方法及びコーティング組成物としてのそれらの使用、特に織物及び革等の可撓性の(又は柔軟な)基材に用いられるコーティング組成物としてのそれらの使用に関する。 【背景技術】 【0002】 可撓性の基材、特に織物及び革をコーティングする際、溶剤含有系は、低溶剤系又は無溶剤系によって、ますます置き換えられつつある。 今日まで、織物及び革のコーティング系に要求される特性は、とりわけ、高い耐薬品性及び耐水性、高い力学抵抗及び高い引張強さ及び伸張性にあった。 これらの要求は、従来技術のポリウレタン−ポリ尿素分散体によって、主に満足されており、それらは、例えば、ドイツ国特許明細書 DE-A 24 46 440、DE-A 25 51 094、DE-A 26 51 505、DE-A 26 51 506、DE-A 26 59 617 及び DE-A 28 16 815 に記載されている。 これらに記載されている系は、親水基によって自己乳化しており、外部乳化剤を用いることなく水中に分散することができる。 【0003】 ポリウレタン−ポリ尿素分散体(以下「PUR分散体(又はディスパージョン):PUR dispersion」ともいう)は、今日成長しつつある多数の分野で使用されており、このことは、得られたコーティングが、極めて多様な要求を満足しなければならないということを意味する。 従って、例えば、織物及び革等の可撓性の基材のコーティング用には、上述した特性に加えて、例えば、一回の塗工で厚い層(又は被覆)を形成すること又は安定なフォームを形成すること等の特性も要求される。 このようにすることで、全体のコーティング方法の工程を合理化することができ、関連する製造コストを減らすことができる。 更に、例えば、耐折強さ、耐引掻き性及び耐磨耗性とともに良好な耐加水分解性等の特性も達成されるべきである。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従って、本発明の目的は、可撓性の(又は柔軟な)基材用コーティング組成物として、別のポリウレタン−ポリ尿素分散体(又はPUR分散体)を提供することであり、それは、従来技術のPUR分散体の要求に合致するのみならず、上述の特性も示す。 【課題を解決するための手段】 【0005】 ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールに基づく、イオン的及び/もしくは非イオン的に親水化されている水性PUR分散体は、上述した範囲の特性を有するコーティングを基材に形成する(又はもたらす)ことを可能にすることが見出された。 本発明に基づくコーティングは、向上した発泡特性、高い耐磨耗性、極めて高い耐折強さ、耐引掻き性及び耐加水分解性を示す。 【0006】 本発明は、 A1. ポリイソシアネート、 A2. ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物、 A3. 場合により、モノアルコールもしくはモノアミン、 A4. ポリオール、アミノポリオールもしくはポリアミン、 A5. 場合により、少なくとも一つの水酸基もしくはアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル並びにA6. 場合により、酸化防止剤及び/もしくは光安定剤及び/もしくは他の助剤及び添加剤を含む、イオン的及び/もしくは非イオン的に親水化されている水性ポリウレタン−ポリ尿素分散体を提供する。 【0007】 本発明に基づくポリウレタン−ポリ尿素分散体は、イオン的及び非イオン的に親水化されていることが好ましい。 本発明に基づくポリウレタン−ポリ尿素分散体の特に好ましい態様は、陰イオン的及び非イオン的に親水化されていることである。 【0008】 A1. 5〜30重量%のポリイソシアネート、 A2. 55〜87重量%の、ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物、 A3. 0〜10重量%のモノアルコールもしくはモノアミン、 A4. 1〜20重量%のポリオール、アミノポリオールもしくはポリアミン、 A5. 0〜10重量%の、少なくとも一つの水酸基もしくはアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル並びにA6. 0〜10重量%の、酸化防止剤及び/もしくは光安定剤及び/もしくは他の助剤及び添加剤を含み、成分A1〜A6の重量%の合計は100重量%である本発明の水性ポリウレタン−ポリ尿素分散体が好ましい。 【0009】 A1. 10〜25重量%のポリイソシアネート、 A2. 60〜85重量%の、ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物、 A3. 0〜10重量%のモノアルコールもしくはモノアミン、 A4. 1〜15重量%のポリオール、アミノポリオールもしくはポリアミン、 A5. 1〜10重量%の、少なくとも一つの水酸基もしくはアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル並びにA6. 0.5〜8重量%の、酸化防止剤及び/もしくは光安定剤及び/もしくは他の助剤及び添加剤を含み、成分A1〜A6の重量%の合計は100重量%である本発明の水性ポリウレタン−ポリ尿素分散体が特に好ましい。 【0010】 A1. 13〜20重量%のポリイソシアネート、 A2. 70〜82重量%の、ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物、 A3. 0〜10重量%のモノアルコールもしくはモノアミン、 A4. 1〜10重量%のポリオール、アミノポリオールもしくはポリアミン、 A5. 1〜5重量%の、少なくとも一つの水酸基もしくはアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル並びにA6. 1〜6重量%の、酸化防止剤及び/もしくは光安定剤及び/もしくは他の助剤及び添加剤を含み、成分A1〜A6の重量%の合計は100重量%である本発明の水性ポリウレタン−ポリ尿素分散体が最も特に好ましい。 【0011】 適当なジイソシアネート(A1)は、主に、脂肪族、脂環族、芳香脂肪族及び/もしくは芳香族に結合したイソシアネート基を有し、分子量の範囲が140〜400のものであって、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−及び1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3−及び1,4−ビス(2−イソシアナトプロパン−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4−及び2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'−及び4,4'−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ジイソシアナトナフタレン又はそのようなジイソシアネートのいずれかの混合物を例示できる。 【0012】 脂肪族及び脂環族に結合したイソシアネート基のみを有する上述したポリイソシアネート又はポリイソシアネートの混合物が好ましい。 最も特に好ましい出発成分(A1)は、HDI、IPDI及び/もしくは4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づくポリイソシアネート又はポリイソシアネートの混合物である。 【0013】 ポリイソシアネート(A1)として、簡単な脂肪族、脂環族、芳香脂肪族及び/もしくは芳香族ジイソシアネートの変性によって、少なくとも二つのジイソシアネートに基づいて製造された、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン及び/もしくはオキサジアジントリオン構造を有するいずれかのポリイソシアネートも適当であり、それらは、例えば、J. Prakt. Chem. 336 (1994) 185-200、ドイツ国特許明細書 DE-A-1 670 666、DE-A-1 954 093、DE-A-2 414 413、DE-A-2 452 532、DE-A-2 641 380、DE-A-3 700 209、DE-A-3 900 053、DE-A-3 928 503、欧州特許明細書 EP-A-0 336 205、EP-A-0 339 396、EP-A-0 798 299 に例示されているものである。 【0014】 本発明に係るPUR分散体は、成分(A2)として、ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物を含む。 混合物中のポリカーボネートポリオールの割合は、20〜80重量%の間であり、ポリテトラメチレングリコールポリオールの割合は、80〜20重量%の間である。 ポリテトラメチレングリコールポリオールの割合は、30〜75重量%の間であり、ポリカーボネートポリオールの割合は、25〜70重量%の間であることが好ましい。 ポリテトラメチレングリコールポリオールの割合は、35〜70重量%の間であり、ポリカーボネートポリオールの割合は、30〜65重量%の間であることが好ましい。 但し、各々の場合、ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールポリオールの重量%の合計は、100重量%である。 【0015】 ポリメリックなポリオール(A2)の平均分子量の範囲は、400〜6000であることが好ましい。 適当なポリメリックポリオール(A2)は、例えば、少なくとも1.8〜4の水酸基官能価を示すポリエーテル、ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートである。 2〜3の水酸基官能価を有し、600〜4000の範囲の平均分子量のポリオールを使用することが好ましい。 800〜2500の範囲の平均分子量を有するポリオールが特に好ましい。 【0016】 水酸基を有する適当なポリカーボネートは、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートもしくはホスゲン等の炭酸誘導体とジオールとの反応で得ることができる。 そのようなジオールの適当な例として、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA及びラクトン変性ジオールを例示できる。 ジオール成分は、40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくは1,6−ヘキサンジオール及び/もしくはヘキサンジオール誘導体を含むことが好ましく、例えば、ドイツ国特許明細書 DE-A 1770245 に基づいて、1モルのヘキサンジオールと少なくとも1モル、好ましくは1〜2モルのカプロラクトンとの反応によって得られる生成物、又はジヘキシレングリコールもしくはトリヘキシレングリコールを形成するヘキサンジオールとそれ自身とのエーテル化反応によって得られる生成物のような、末端水酸基に加えてエーテル基もしくはエステル基が認められるものを好ましく例示できる。 そのような誘導体の製造は、例えば、ドイツ国特許明細書 DE-A 15 70 540から既知である。 ドイツ国特許明細書 DE-A 3717060 に記載されているポリエーテルポリカーボネートジオールも使用できる。 【0017】 ヒドロキシポリカーボネートは、実質的に直鎖状であるべきである。 しかし、それらは、場合により、多官能成分、特に低分子量ポリオールと組み合わせることで、わずかに分枝状であってよい。 適当な例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール−1,2,6、ブタントリオール−1,2,4、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール(qunitol)、マンニトール、及びソルビトール、メチルグルコシド、1,3,4,6−ジアンヒドロヘキシトール(1,3,4,6-anhydrohexitol)を含む。 【0018】 適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタンの化学で自体既知のポリテトラメチレングリコールポリエーテルであり、それらは、例えば、ドイツ国特許明細書 DE-A 741 476 に例示されているように、カチオン開環反応により、テトラヒドロフランの重合によって製造することができる。 【0019】 単官能アルコールとモノアミン(A3)は、ポリウレタンプレポリマーの停止のために使用することができる。 好ましいモノアルコール(A3)は、例えば、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール等の1〜18のC原子を有する脂肪族モノアルコールである。 好ましいモノアミン(A3)は、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンである。 【0020】 本発明のPUR分散体に含まれるポリオール、アミノポリオール又は脂肪族、脂環族及び芳香脂肪族ポリアミン(A4)は、400以下の分子量を有し、鎖延長剤として使用することができる。 【0021】 好ましい成分(A4)は、例えば、 a)アルカンジオール、例えば、エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,4−及び2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ジメチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等、 b)エーテルジオール、例えば、ジエチレンジグリコール、トリエチレングリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル等、 c)一般式(I)を有するエステルジオールと一般式(II)を有するエステルジオール、 【化1】
【化2】 [式中、
Rは、1〜10のC原子、好ましくは2〜6のC原子を有するアルキレンもしくはアリーレン残基、
xは、2〜6、並びにyは、3〜5]であって、
例えば、δ−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシヘキサン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシブタン酸エステル、アジピン酸(β−ヒドロキシエチル)エステル及びテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステル等、並びに、
d)ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、1,2−及び1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体の混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−及び1,4−キシリレンジアミン、α,α,α',α'−テトラメチル−1,3−及び−1,4−キシリレンジアミンと、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンを例示できる。 本発明の意味のジアミンとして、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、並びに、例えば、N−メチルヒドラジン、N,N'−ジメチルヒドラジン及びそれらの同族体等の置換されたヒドラジン、更に、例えば、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、セバシン酸、ヒドロアクリル酸(Hydracrylic acid)及びテレフタル酸等の酸のジヒドラジド、例えば、β−セミカルバジドプロパン酸ヒドラジド等のセミカルバジドアルキレンヒドラジド(ドイツ国特許明細書 DE-A 17 70 591)、例えば、2−セミカルバジドエチルカルバジン酸エステル等のセミカルバジドアルキレンカルバジン酸エステル(ドイツ国特許明細書 DE-A 1918504)、例えば、β−アミノエチルセミカルバジドカーボネート等のアミノセミカルバジド化合物(ドイツ国特許明細書 DE-A 19 02 931)も考慮される。
【0022】
400以上の平均分子量を有するポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールも、ポリオール、アミノポリオール又は脂肪族、脂環族及び芳香脂肪族ポリアミン(A4)として、使用することができる。
【0023】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタンの化学で、それ自体既知のポリエーテルであって、例えば、スチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はエピクロロヒドリン等、特に、プロピレンオキサイドの、開始剤分子を用いて製造されたポリオールである。
【0024】
適当なポリエステルポリオールの例は、多価アルコール、好ましくは二価アルコール、場合により更に三価アルコールと、多価カルボン酸、好ましくは二価カルボン酸との反応生成物である。 対応する多価カルボン酸無水物又は対応する多価カルボン酸と低級アルコールもしくはその混合物とのエステルも、遊離の多価カルボン酸の代わりに用いることができ、ポリエステルを製造することができる。 多価カルボン酸は、脂肪族性、脂環族性、芳香族性及び/もしくは複素環族性であってよく、場合により、例えば、ハロゲン原子により置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0025】
ヒドロキシ成分(A3)及び(A4)は、二重結合を含むことができ、それらは、例えば、長鎖脂肪族カルボン酸又は脂肪アルコールから誘導することができる。 オレフィン性二重結合を用いて、例えば、アリル基又はアクリル酸もしくはメタクリル酸及びそれらのエステルを組み込むことによって、官能化が可能である。
【0026】
成分(A3)と(A4)は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシスルホン酸、ジアミノスルホン酸及びそれらの塩等のイオン基を含むもの又はイオン基を形成することができるものであって、そのようなものとして、例えば、ジメチロールプロパン酸、ヒドロキシピバリン酸、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルもしくはブチルスルホン酸、1,2−もしくは1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸並びにそれらのアルカリ及び/もしくはアンモニウム塩;ブテン−2−ジオール−1,4への硫酸水素ナトリウムの付加物、ポリエーテルスルホネート、2−ブテンジオールとNaHSO
3とのプロポキシル化された付加物(ドイツ国特許明細書 DE-A 24 46 440)及び例えば、N−メチルジエタノールアミン等のカチオン基に変換できる構造単位を例示できる。 成分(A3)及び(A4)は、カルボキシル基、カルボン酸塩基及び/もしくはスルホン酸塩基を有するものが好ましく使用される。 【0027】
イオン基を有するか、イオン基を形成することができる、一もしくはそれ以上の化合物(A3)及び/もしくは(A4)を含む本発明のPUR分散体が好ましい。
【0028】
本発明のPUR分散体は、少なくとも一つの水酸基もしくはアミノ基を有する親水性のポリオキシアルキレンエーテル(A5)を、PUR分散体の固形分を基準として、0〜10重量%の量で、分散を支援するために含むことができる。 これらのポリエーテルは、例えば、エトキシ化された一価のアルコールもしくはエトキシ化されたフェノール等のエチレンオキサイドから誘導される構造要素を高い割合(約30重量%〜100重量%)で含むことが好ましい。 適当な例は、1〜3の間の官能価を有する直鎖状のポリエーテルを含み、更に、一般式(III)を有する化合物も含む。
【化3】
[ここで、
R
1とR 2は、相互に独立して、1〜18の炭素原子を有する二価の脂肪族、脂環族もしくは芳香族残基を示し、それらに、酸素及び/もしくは窒素原子が割り込んでいてもよく、 R
3は、水酸基を末端に有さないポリエステルもしくはポリエーテルであって、ポリエーテルであることが好ましく、特に、好ましくはアルコキシ末端のポリエチレンオキサイド残基である。 ] 【0029】
ポリウレタンとポリウレタン分散体について既知であり、「Lichtschutzmittel fuer Lacke(又は塗料用光安定剤)」(A. Valet, Vincentz Verlag、Hanover、1996)と「Stabilization of Polymeric Materials(又はポリマー材料の安定化)」(H. Zweifel、Springer Verlag、Berlin、1997)に例示されている全ての添加剤を、光安定剤及び酸化防止剤として、場合により使用できる(A6)。 好ましい安定剤は、立体障害の有る(sterically hindered)フェノール(フェノール系酸化防止剤)及び/もしくは2,2,6,6−テトラメチレンピペリジンに基づく立体障害の有るアミン(ヒンダードアミン光安定剤、HALS光安定剤)である。 イルガノックス(Irganox)(登録商標)1010(Ciba Spezialitaeten GmbH, Lampertheim, DE)及び/もしくはティヌビン(Tinuvin)(登録商標)765(Ciba Spezialitaeten GmbH, Lampertheim, DE)が特に好ましい。 本発明に基づくPUR分散体は、例えば、乳化剤、脱泡剤、増粘剤等の、PUR分散体について既知の全ての助剤及び添加剤も含むことができる。 最後に、充填剤、可塑剤、顔料、カーボンブラックゾル、シリカゾル、アルミニウム分散体、クレー分散体、アスベスト分散体も、本発明のPUR分散体中に組み合わせることができる。
【0030】
本発明に基づくPUR分散体の固形分は、10〜70重量%の間である。 固形分は、35〜70重量%を示すことが好ましく、50〜60重量%であることが特に好ましい。
【0031】
本発明は、本発明に基づく、イオン的及び/もしくは非イオン的に親水化されている水性ポリウレタン分散体の製造方法であって、成分A1及びA2並びに場合により成分A3〜A6を最初に反応させてポリウレタンプレポリマーを形成した後、ポリウレタンプレポリマーを水中に分散させ、又は水を加えることで分散させ、更に、場合によりA3〜A6と反応させることを特徴とする製造方法を提供する。
【0032】
本発明に基づく水性ポリウレタン分散体は、従来技術の方法(例えば、Houben-Weyl,Erweiterungs- und Folgebaende zur 4. Auflage, Vol. E20, H. Bartl and J. Falb, Stuttgart, New York, Thieme 1987, p. 1659-1693 又は D. Dieterich, Prog. Org. Coatings 9, 281 (1981))を用いて製造することができる。
【0033】
プレポリマーを製造する際のNCO/OH比は、1.2〜2.8/1の間であることが好ましく、1.4〜2.5/1の間であることがより好ましく、1.6〜2.3/1の間であることが特に好ましく、1.7〜2.2/1の間であることが極めて特に好ましい。
【0034】
本発明の製造方法の第一段階において、成分A1及びA2並びに場合により成分A3〜A6を反応させ、場合により有機溶剤を使用して、PUR分散体を形成する。
【0035】
適当な溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、1−メトキシプロピル−2−アセテート、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はホワイトスピリット等の自体既知の常套の塗料用の溶媒である。 例えば、Solvesso (登録商標)(Exxon Chemicals, Houston, USA)、Cypar(登録商標)(Shell Chemicals, Eschborn, DE)、Cyclo Sol(登録商標)(Shell Chemicals, Eschborn, DE)、Tolu Sol(登録商標)(Shell Chemicals, Eschborn, DE)、Shellsol(登録商標)(Shell Chemicals, Eschborn, DE)等の溶媒ナフサの商品名で市販されているもの、とりわけより置換された芳香族を含む混合物は、同様に適当である。 他の溶媒は、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−エチレンカーボネート及び1,2−プロピレンカーボネート等の炭酸エステル、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−メチルカプロラクトン等のラクトン、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン及びN−メチルカプロラクトン又はそのような溶剤のいずれかの混合物を例示できる。
【0036】
次の工程において、中和可能な基は、塩の形態に換えられ、水を有する分散体が製造される。 中和度とイオン基の含有量に応じて、分散体は、それが実質的に溶液の外見を有するように、極めて細かい粒子の性状を有するように配合することができる。 しかし、同様に十分に安定な、粗い粒子の配合も可能である。 場合により使用する溶媒は、蒸留によって、除去して、分散体を得ることができる。
【0037】
例えば、乳化剤せん断力法(emulsifier shear force method)、アセトン法(acetone method)、プレポリマー混合法(prepolymer mixing method)、溶融乳化法(melt emulsification method)、ケチミン法(ketimine method)、自発固体分散法(spontaneous solids dispersion method)及びそれからの派生法等の従来技術で既知の全ての方法を、本発明のポリウレタン分散体を製造するために使用することができる。 これらの方法の概要は、Methoden der organischen Chemie (Houben-Weyl, Erweiterungs- und Folgebaende zur 4. Auflage, Vol.E20, H. Bartl and J. Falbe, Stuttgart, New York, Thieme 1987, p. 1671-1682)に記載されている。 溶融乳化法とアセトン法が好ましい。 アセトン法が特に好ましい。
【0038】
過剰のイソシアネート基は、多官能イソシアネート反応性化合物(鎖延長)と反応させる。 (A4)で既に引用した水又はポリアミンは、この目的のために好ましく使用でき、ジアミン、トリアミン、ヒドラジン及び2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩が特に好ましい。 例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミンもしくはN,N−ジエタノールアミン等のモノアミンもしくはモノアルコール(A3)を用いて停止(又はターミネイション)してもよい。
【0039】
本発明のPUR分散体については、ポリアクリレートを用いて変性することもできる。 これは、例えば、ドイツ国特許明細書 DE-A-1 953 348、欧州特許明細書 EP-A-0 167 188、EP-A-0 189 945 及び EP-A-0 308 115 等に記載されているように、例えば、1〜18の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸とアルコールのエステル、スチレン、ビニルエステルもしくはブタジエン等のオレフィン性不飽和単量体を、ポリウレタン分散体の存在下、乳化重合することで、達成される。 単量体は、一又はそれ以上のオレフィン性二重結合を含む。 単量体は、例えば、水酸基、エポキシ基、メチロール基又はアセトアセトキシ基等の官能基も含むことができる。
【0040】
本発明は、コートされた基材を製造するためのコーティング組成物として、本発明に基づく親水化された水性PUR分散体の使用を提供する【0041】
本発明は、本発明に基づくPUR分散体を含むコーティング組成物も提供する。
【0042】
コーティング配合物として本発明に基づくPUR分散体を使用するために、本発明に基づくポリウレタン分散体は、単独で又は他の水性バインダーと組み合わせて使用することができる。 そのような水性バインダーを、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエポキシ又はポリウレタンポリマーから製造することができる。 例えば、欧州特許明細書 EP-A-0 753 531 に記載されているように、放射線硬化性バインダーと組み合わせることもできる。 同様に、本発明に基づくPUR分散体は、例えば、ポリ酢酸ビニル分散体、ポリエチレン分散体、ポリスチレン分散体、ポリブタジエン分散体、ポリ塩化ビニル分散体、ポリアクリレート分散体及びコポリマーの分散体等の他のアニオン又は非イオン分散体と混合することもできる。
【0043】
本発明に基づくポリウレタン分散体は、安定であり、保管し、輸送することができ、いずれか後日、使用することができる。 選択した化学組成及びウレタン基の含有量に応じて、種々の特性を有するコーティングが得られる。 従って、可撓性(又は柔軟)で、タックのあるコーティング、熱可塑性で、ゴム状可撓性生成物を得ることができる。 生成物の親水性は、ある範囲で同様に変化し得る。 可撓性生成物は、それらが化学的に架橋されていないという条件で、例えば、100〜180℃の高温で溶融加工できる。
【0044】
オリゴマーのポリシロキサンセグメントを含み、イソシアネートに対して反応性を有する少なくとも二つの基を有し、300〜6000、好ましくは500〜1500の分子量を有する化合物を本発明に基づく水性PUR樹脂に加えて、触感や表面の平滑さ等のコーティングのある特性を変性することができる。 有機官能末端基を有する二官能ポリシロキサンを用いることが好ましい。 これらの化合物は、例えば、構造単位−O−Si−(R)
2 −[但し、Rは、C1〜C4アルキル残基又はフェニル残基である]を意味する。 【0045】
織物のコーティング技術において用いられる常套の助剤と添加剤、例えば、顔料、流動調整剤、UV安定剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、カーボンブラックゾル、シリカゾル、アルミニウム分散体、クレー分散体、アスベスト分散体もしくはチクソトロープ剤も本発明のPUR分散体に加えることができる。 このようにして、室温で実質的に寿命が制限されず、120〜150℃の相当低い温度で、2〜3分以内で硬化して、特に、極めて良好な湿潤接着特性を有する、すぐ使用できる水性コーティング組成物を得ることができる。
【0046】
本発明に基づくコーティング化合物の所望の特性と意図する使用に応じて、全固形分を基準として、そのような充填剤を70重量%まで、最終生成物に含むことができる。
【0047】
優れた発泡特性と良好な耐磨耗性、耐引掻き性、耐折強さ及び耐加水分解性のために、本発明に基づくPUR分散体、特に50重量%より大きい固形分をものは、布(もしくは革)張りの家具、産業上の安全(もしくは労災防止)及び自動車の内装トリムの分野で塗工するために、特に適当であり、また、一回の塗工で大変安定な厚い発泡体層を製造するために特に適当であり、さもなくば、コーティング組成物の固形分が高い場合のみ達成される。
【0048】
従って、本発明は、布(もしくは革)張りの家具、産業上の安全及び自動車の内装トリムの分野において、並びに一回の塗工で厚い発泡体層を製造するための本発明に基づくポリウレタン分散体の使用を提供する【0049】
本発明は、同様に、本発明に基づくPUR分散体を含むコーティングを、一方の面に表示する基材を含んで成るコートされた基材を提供する。
【0050】
適当な基材は、例えば、織物、不織布、革、紙、ハードファイバー(もしくは硬毛)、藁、紙製の材料、木、ガラス、あらゆるタイプのプラスチック、セラミック、石、コンクリート、瀝青(もしくはビチューメン)、磁器、金属又はガラス繊維である。 好ましい基材は、可撓性の基材であり、織物と革が特に好ましい。
【0051】
コーティング組成物として、本発明に基づくPUR分散体又はそれらから製造されるペーストは、最終生成物に接着した状態で実質的に留まる多孔質基材、例えば、織物、不織布もしくは繊維質のマット、フェルトもしくは接着したファブリック、紙の織物、発泡したフィルムもしくはそぎ革に適用(又は塗布)され、吸引することにより、コーティングの迅速な硬化を行ってもよい。 その後、コーティングを加熱して乾燥して、場合により成型してもよい。 しかし、乾燥は、滑らかな、多孔質のもしくは多孔質ではない材料、例えば、ガラス、紙、カード、セラミック材料、金属、シリコーンゴム、アルミニウムホイル等の上で行うこともできる。 完成した平坦な材料は、その後離されて、そのまま使用されるか、リバースコーティング法(reverse coating method)を用いて、接着、火炎貼り合せもしくはカレンダーにかけることによって、基材に適用される。
【0052】
本発明のPUR分散体は、接着したファブリック用のバインダーとして、接着剤、結合剤、ラミネート剤、防水加工剤(撥水剤)、可塑剤、バインダーとして、織物のプリントと紙の産業において助剤として、ポリマー用の添加剤として、例えば、ガラス繊維用及び革の仕上げ用のサイジングとして、例えば、帯電防止性及び耐折性を付与する等の種々の機能を果たす。
【0053】
本発明のコーティング組成物を、ドクターブレード、ロール又はワイヤーブレード等を用いて基材上に直接広げることで適用することができる。 複数の層、好ましくは二つの層を、一般的に連続して適用する。 次に塗工されたトップコートは、機械的な負荷及び磨耗から複合物全体を保護する。 ベースコートとトップコートを含んで成るコーティング複合物の適用を、いわゆるリバースコーティング方法を用いて行うこともできる。 しかし、この方法では、トップコートを初めに剥離担体に適用し、乾燥する。 第二のベースコート又はアンカーコートの適用後、まだ湿った状態で、織物の基材を穏やかにコートに押し付ける。 乾燥後、コーティングと基材を含んで成る永久的な複合物が形成され、それは剥離担体から剥離し、その構造の点からいうと、上述した直接コーティング方法によって製造されたものとほぼ対応する。
【0054】
種々の塗工方法によって得られた生成物は、室温又は加熱して乾燥することができる。 個々の場合で選択すべき乾燥温度は、材料の化学的な組成に加えて主に水分量、乾燥時間及び膜厚に依存するが、予備試験を行うことで容易に決めることができる。 所定の加熱時間の間、乾燥温度は、常に結晶化温度以下でなければならない。
【0055】
平坦な材料は、その後、仕上げ剤を用いてコートして、その表面の耐性を増加させることができる。 水性分散体又は溶液もこの目的のために好ましく使用することができる。
【実施例】
【0056】
織物被覆(又はコーティング)用PUR分散体の特性は、下記のように製造した独立フィルム(又はフリーフィルム:free film)で評価した。
【0057】
正確な離間距離に設定できる二つの磨きロールを含んで成るフィルム(又は膜)流延機において、剥離紙を後方ロール(又はリアロール)の前面に挿入した。 剥離紙と前方ロール(又はフロントロール)との間の距離は、隙間ゲージを用いて調整した。 この距離は、得られるコーティングの(湿った)膜厚に対応し、各コート用の所望の被覆(又は堆積)に適用することができる。 複数のコートについて、コーティングを連続的に行うこともできる。
【0058】
紙と前方ロールとの間の隙間に、生成物(水系の配合物は、まずアンモニア/ポリアクリル酸を加えることで、4500mPasの粘度にセットした)を流し込むこと、剥離紙を垂直に引き下げることによって、個々のコートを適用し、それによって、対応する膜を紙に形成した。 複数のコートを適用する場合、各々のコートを乾燥して紙を再び挿入した。
【0059】
100%モジュラス(伸張)をDIN53504に基づいて100μmより膜厚が厚いフィルムについて測定した。
【0060】
PUR分散体の平均粒度(数平均である)を、レーザーコレレーションスペクトロスコピー(又はレーザー相関分光法:laser correlation spectroscopy)(装置:Malvern Zetasizer 1000、Malvern Instr. Limited)を用いて測定した。
【0061】
上述の粘度は、4mmのDINのカップ中でDIN53211に基づいて測定した流出時間である。
【0062】
使用した出発材料ジオールI:112の水酸基価、1000g/molの分子量を有するポリテトラメチレングリコールポリオール。 例えば、PolyTHF 1000(BASF AG, Ludwigshafen)。
ジオールII:62の水酸基価、1800g/molの分子量を有するポリテトラメチレングリコールポリオール。 例えば、PolyTHF 1800(BASF AG, Ludwigshafen)。
ジオールIII:56の水酸基価、2000g/molの分子量を有するポリテトラメチレングリコールポリオール。 例えば、PolyTHF 2000(BASF AG, Ludwigshafen)。
ジオールIV:56の水酸基価、2000g/molの分子量を有し、1,6−ヘキサンジオールに基づくポリカーボネート。 例えば、Desmophen 2020(Bayer AG、Leverkusen)。
ジオールV:56の水酸基価、2000g/molの分子量を有するポリプロピレンオキサイドポリエーテル。 例えば、Desmophen 3600(Bayer AG、Leverkusen)。
ジオールVI:200の水酸基価、560g/molの分子量を有するポリプロピレンオキサイドポリエーテル。 例えば、Desmophen L400(Bayer AG、Leverkusen)。
【0063】
EOXポリエーテル:25の水酸基価、2250g/molの単官能ポリエチレングリコール。 例えば、Desmophen LB 25(Bayer AG、Leverkusen)。
ジアミノスルホネート:NH
2 −CH 2 CH 2 −NH−CH 2 CH 2 −SO 3 Na(水中45%) ジアミノカルボキシレート:NH
2 −CH 2 CH 2 −NH−CH 2 CH 2 −COOH(水中40%)。 例えば、KV 1386(BASF AG, Ludwigshafen)。 親水化剤:欧州特許明細書 EP-A 916647, page 3 の例1に基づく。
【0064】
PURI:
アニオン/非イオン脂肪族C
3ポリエーテルポリカーボネートポリウレタン分散体であって、40重量%の固形分と下記物性を有する:100%モジュラス(DIN53504)=2.4MPa、引張強さ(DIN53504)=25.9MPa、破断点伸び(DIN53504)=840%、23℃の流出時間(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)=25±15秒。 例えば、Impranil DLV(Bayer AG、Leverkusen)である。 【0065】
PURII:
アニオン脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体であって、50重量%の固形分と下記物性を有する:100%モジュラス(DIN53504)=2.1MPa、引張強さ(DIN53504)=25.0MPa、破断点伸び(DIN53504)=600%、23℃の流出時間(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)≦70秒。 例えば、Impranil DLS(Bayer AG、Leverkusen)である。
【0066】
PURIII:
アニオン脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体であって、40重量%の固形分と下記物性を有する:100%モジュラス(DIN53504)=2.0MPa、引張強さ(DIN53504)=20.0MPa、破断点伸び(DIN53504)=700%、23℃の流出時間(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)≦70秒。 例えば、Impranil DLN(Bayer AG、Leverkusen)である。
【0067】
塗工例例1
方法:
120℃で脱水したパート1の混合物を70℃でパート2と混合し、90℃に加熱し、一定のNCO価が達成されるまで90℃で撹拌した。 プレポリマーを60℃でパート3に溶かして、15分間撹拌した。 パート4を48℃で15分間かけて加え、15分間撹拌した。 パート5を10分間かけて加え、蒸留でアセトンを除き、固形分を60重量%に調整した。
固形分60.4重量%、23℃で27秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0068】
例2
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った(固形分40重量%に調節した)。
固形分41.0重量%、23℃で20秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0069】
例3
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った。
固形分59.5重量%、23℃で29秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0070】
例4
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った(固形分40重量%に調節した)。
固形分40.4重量%、23℃で15秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0071】
例5
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った(固形分40重量%に調節した)。
固形分40.0重量%、23℃で19秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0072】
例6
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った(固形分40重量%に調節した)。
固形分40.3重量%、23℃で16秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0073】
比較例例7
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った(固形分40重量%に調節した)。
固形分40.9重量%、23℃で17秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0074】
例8
方法:
例1に記載した方法と同様の方法で行った(固形分40重量%に調節した)。
固形分39.0重量%、23℃で15秒の流出粘度(AFAM2008/1050304−00 Dに基づく4mmカップ)を有する分散体が得られた。
【0075】
塗工例1〜6並びに比較例7及び8の試験結果【表1】
【0076】
例1〜6の本発明に基づくPUR分散体は、従来技術のPUR分散体(PURI/II)並びに比較例7及び8より、実質的により良好な耐加水分解性を示す。
【0077】
例9
フォーム製造用の本発明に基づくPUR分散体の使用0.4kg/dm
3の密度まで曇りの無い機械発泡フォーム用出発配合物: 例1のPUR分散体 1000g
Isoversal WL 顔料(ISL Chemie) 30〜100g
Levapon TH 5g
Stokal SR(Stockhausen) 10g
Mirox AM(Stockhausen) 20g
濃アンモニア水 5g
Acrafix 10g
【0078】
機械発泡フォームを、例えば、Hansa Mix等の市販の発泡機を用いて製造した。
この操作法を用いて例1から製造された発泡可能ペーストを、一回の塗工で塗工して、少なくとも2.0〜2.5mmの膜厚を有するフォームを製造することができた。 言い換えれば、乾燥機の能率に応じて、ほぼ800g/m
2及びそれ以上の固体被覆を製造することができる。 同じ条件下で、PURIIから製造されたフォームは、およそ200〜250g/m 2のフォームの被覆を生ずる。 言い換えれば、膜厚は0.6〜0.8mmである。 厚い被覆は、フォームの表面に深いクラックを生じ得る。 例1のPUR分散体の代わりに、PURIIIを用いた場合、70〜100g/m
2の固形分被覆を有し0.3〜0.4mmのフォームの層を達成することができる。 これらの値を超えると、直ちにクラッキングを生じ得る。 例1のPUR分散体から製造されるフォームも、従来技術の常套のPUR分散体(PURI及びII)から製造されるフォームより、相当良好な耐引掻き性及び耐磨耗性を示す。
【0079】
例10
革用コーティング組成物としての、本発明に基づくPUR分散体の使用使用した材料及び配合A)バインダー1)アニオン脂肪族直鎖状PUR分散体であって、イソホロンジイソシアネート/ブタンジオールのリジッドセグメント(rigid segment)、ポリプロピレンオキサイドのソフトセグメント(soft segment)を有し、カルボキシル基により親水化されており、固形分37重量%と下記の性質を有する:ショアーA(Shore-A)=85、100%モジュラス=18MPa、引張強さ=30MPa、破断点伸び=400%。
【0080】
2)アニオン脂肪族分枝状PUR分散体であって、ポリエステルのソフトセグメント、カルバジドのリジッドセグメントを有し、スルホネートにより親水化されており、固形分40重量%と下記の性質を有する:ショアーA硬度(Shore-A hardness)=95、100%モジュラス=20MPa、引張強さ=40MPa、破断点伸び=300%。
【0081】
3)アニオン脂肪族直鎖状PUR分散体であって、ポリカーボネートのソフトセグメント、カルバジドとポリ尿素のリジッドセグメントを有し、ポリエーテル/スルホネート/カルボキシによって共同で親水化されておりし、固形分40重量%と下記の性質を有する:ショアーA硬度=85、100%モジュラス=4.1MPa、引張強さ=43MPa、破断点伸び=530%。
【0082】
4)本発明に基づくPUR分散体(例1)
5)脂肪族ポリウレタンとアクリレートとの市販の混合物であって、固形分49重量%と下記の性質を有する:100%モジュラス=2.2MPa、引張強さ=11.5MPa、破断点伸び=670%。
【0083】
B)NCOプレポリマー酢酸エチル中、80重量%のプレポリマー溶液であって、三官能価ポリエーテル(MN=4800)、直鎖状ポリアジペート(MN=1700)及びジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物から製造された。 生成物のNCO含有量は、3.6重量%である。
【0084】
C)プレポリマー用硬化剤ブタノン中、助剤及び添加剤を含む脂肪族ジアミンの配合物である。 配合物400gは、NH
2の1g当量に対応する。 【0085】
D)他の成分a)プロピレングリコールジアセテート中の親水化されたHDI三量体の配合物であって、活性成分の含有量は50重量%であり、NCO含有量は8.6重量%である、水性バインダー用の架橋剤である。
b)水性カーボンブラック調整品であって、カーボンブラック含有量は14重量%である。
c)会合性PUR増粘剤の水相溶性配合物であって、活性成分の含有量は8重量%である。
d)水分散性シリコーン配合物であって、剛化剤である。
e)水溶性ポリエーテルトリシロキサンであって、流れ調整剤である。
【0086】
革のコーティング剥離用担体上のコーティングの製造トップコート330重量部のPUR1、330重量部のPUR2、330重量部のPUR3、20重量部のシリコーン(d)、40重量部のカーボンブラック調整品(b)、20重量部のシロキサン(e)及び60重量部のPUR増粘剤(c)から製造される混合物。 この混合物を、市販の剥離紙(ULTRACAST Soave)上に、産業用コーティング装置を用いて、1平方メートル当たり固形分被覆物25gと成るように(ニップは、0.08mm)広げた。 コーティングを5分以内で乾燥した(温度プログラムは80〜150℃)。
【0087】
中間コート1000重量部の本発明に基づくバインダー4、40重量部のカーボンブラックの調整品(b)、15重量部のシロキサン(e)及び80重量部の増粘剤(c)を含んで成る混合物を製造した。 この混合物を、乾燥したトップコートの上に、一平方メート当たり45gの固体被覆物45gと成るように(ニップは、0.12mm)広げた。 中間コートをトップコートと同様の方法で乾燥した。
トップコートと中間コートとが供給された剥離担体を、このようにして得た。 その後、二種類の異なる方法で、そぎ革(又はローン革:split leather)と結合した。 結合した剥離紙から剥離した後、得られたコートされた革について、物理的耐性を試験し、評価した。
【0088】
A)水系による接着1000重量部の混合物5、50重量部の架橋剤(a)及び60重量部の増粘剤(c)を含んで成る混合物を製造した。 トップコートと中間コートとが設けられた剥離紙の上に、一平方メートル当たり50gの固体被覆物を得られるように(ニップは0.18mm)、この混合物を広げた。 接着剤層を80〜105℃の温度プログラムを用いて、温やかに乾燥し、その結果、それが乾燥のトンネルから出てきたときもまだタックを有していた。 一片のそぎ革を、この接着剤層の上に配置し、適当な圧力を用いてローラーで押し付けた。 15分後、剥離紙を剥離した(革A)。
【0089】
B)有機系による接着産業用2成分噴霧装置を用いて、1000:318の混合比でプレポリマーCと硬化剤Dを含んで成る混合物を、トップコートと中間コートとが設けられた剥離担体に、一平方メートル当たり固体堆積物が100gと成るように、噴霧した。 一片のそぎ革を、反応物に配置し、適当な圧力を用いてローラーで押し付けた。 その後、80℃で5分間乾燥した後、剥離紙を剥離した(革B)。
【0090】
革Aと革Bの両者は、良好なコーティングの充填と被覆によって特徴付けられる。 それらは共に、極めてしっかり粒起していた。
【0091】
二つの革の物理的耐性は、下記の通りである:
【0092】
70℃、95%の相対湿度で7日間保管後、コートした革の両者とも、外観に変化は無かった。 この老化試験後の耐折強さ試験(乾燥折り)は、下記の結果となった:
革A:極めてわずかの損傷を生じたが、100,000回の折り曲げができた。
革B:損傷無く100,000回の折り曲げができた。
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