【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、電場の強弱に応じて流体抵抗が変化する電気粘性流体に電場を印加するための電極の構造の改良に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、例えば実開昭60−1423 34号公報に開示されるように、電気粘性流体(d)で満たされたシリンダ(c)内に、電気粘性流体(d)が内部を通過可能に形成されたピストン(e)を配置し、 このピストン(e)内に多数の同心の筒状電極板(b),(b),…を互いに所定の微小間隔を隔てるように配置し、両端で電極ホルダー(a),(a)により保持して、この電極板(b),(b),…に印加する電圧を変化させることにより、電気粘性流体(d)の粘性を変化させて、ピストン(e)及びシリンダ(c)に接続される部材、例えば自動車のエンジンマウンティング,サスペンション等の振動を防止しようとするものは公知の技術である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ここで、上記従来のような電極の構造では、各電極板(b),(b),…の微小間隔を一定に保つ必要があり、そのためにスリット溝が刻設された電極ホルダー(a),(a)に各電極板(b),(b),…の端部を嵌合させるようになされている。 【0004】その場合、上述のごとく、電気粘性流体(d)自体は非導電性であるが、電極板(b), (b),…端部の電極ホルダー(a),(a)との接続部付近つまり電極ホルダー(a),(a)の壁面付近には電気粘性流体(d)中の分散粒子が溜りやすく、この分散粒子が堆積した部分では電気抵抗が低下するため、 電極ホルダー(a),(a)の端部付近で電気のリークが生じることがある。 この原因は、分散粒子の堆積によって各粒子が油を介さずに直接接触する結果、電極板(b),(b),…間に比較的電気抵抗の低い導通路が形成されるためと解される。 そして、この電気のリークが生じるために電気粘性流体(d)の寿命が著しく短くなり、実用化が阻害されているという問題があった。 【0005】本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気粘性流体用電極の構造として、 電極ホルダーの壁面付近で分散粒子が堆積しても、その部分に対する電圧の印加を回避しうる構造とすることにより、電気のリークを防止し、もって、電気粘性流体の寿命の向上を図ることにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明が講じた手段は、図1に示すように、電場の強弱に応じて流動抵抗が変化する特性を有する電気粘性流体(3)に電場を印加するための電極の構造を前提とする。 【0007】そして、導電性材料からなり、互いに一定の微小間隔をもって配置される複数の板状電極板(2),(2),…と、該電極板(2),(2),…の端部が嵌合する嵌合溝(5),(5),…を有する電気絶縁体材料からなる電極ホルダー(1)とを設ける。 【0008】さらに、上記電極板(2),(2),…の端部に電気絶縁体材料からなる接続部材(4), (4),…を取り付け、該接続部材(4),(4),… の先端部を上記電極ホルダー(1)の嵌合溝(5), (5),…に嵌合し、かつ接続部材(4),(4),… の長さを嵌合溝(5),(5),…の深さよりも大きく形成するようにしたものである。 【0009】 【作用】以上の構成により、本発明では、電極ホルダー(1)の各嵌合溝(5),(5)に嵌合する接続部材(4),(4),…の長さが嵌合溝(5),(5)の深さよりも長く設定されているので、電気絶縁材料である接続部材(4),(4)が嵌合溝(5),(5)の外方まで突出しており、電極板(2),(2),…に高電圧が印加されても、電極ホルダー(1)の壁面付近には高電圧が印加されない。 したがって、電気粘性流体(3) 中の分散粒子が電極ホルダー(1)の壁面付近に堆積しても、分散粒子を介して電気が流れることはない。 したがって、電気のリークが防止されることになる。 【0010】 【実施例】以下、本発明の実施例について、図面に基づき説明する。 【0011】図1は本発明の実施例に係る電極構造を示し、空気調和装置の圧縮機の防振装置に付設されるものである。 図中、(1),(1)は互いに平行となるように配置された非導電性材料からなる電極ホルダー、 (2),(2),…は該電極ホルダー(1),(1)間に架設される金属製の平板状電極板であって、上記電極ホルダー(1),(1)及び電極板(2),(2),… は、図示しないが所定のケーシング内に配置されており、このケーシング内は電気粘性流体(以下ER流体という)(3)で満たされている。 上記各電極板(2), (2),…は、互いに平行に、かつ微小間隔(例えば1 mm程度)を保持するように配置されており、各電極板(2),(2),…は、電気配線(図示せず)を介して高電圧電源に接続されている。 すなわち、各電極板(2),(2),…に印加される高電圧によって、ER 流体(3)内に略均一な電場を生ぜしめるようになされている。 さらに、このケーシングは、空気調和装置の圧縮機の防振装置に組み込まれており、上記電極板(2),(2),…間に印加する高電圧(例えば5kV 程度)の値を変化させることにより、ER流体の粘性を変化させ、圧縮機の振動周波数に対応した防振作用を生ぜしめるようにしている。 【0012】ここで、本発明の特徴として、上記各電極板(2)の両端には、電気絶縁体材料であるベークライトからなる接続部材(4),(4)が貼付けられ、一方、上記各電極ホルダー(1)には、電極板(2), (2),…の数に対応した多数のスリット溝(5), (5),…が刻設されており、各スリット溝(5), (5),…に各電極板(2),(2),…の両端の接続部材(4),(4),…が嵌合されている。 また、各接続部材(4)の長さはスリット溝(5)の深さよりも大きくなるように設定されており、各接続部材(4)がスリット溝(5)の外方まで突出して、電極ホルダー(1)の壁面付近には電圧が印加されないようになされている。 【0013】したがって、上記実施例では、各電極板(2)の両端に電気絶縁体材料からなる接続部材(4),(4)が取り付けられ、この接続部材(4), (4)が電極ホルダー(1),(1)の各スリット溝(5),(5)に嵌合するとともに、その長さがスリット溝(5),(5)の深さよりも長く設定されているので、接続部材(4),(4)がスリット溝(5), (5)の外方まで突出し、電極ホルダー(1),(1) の壁面付近には高電圧が印加されない。 そのためER流体(3)中の分散粒子が電極ホルダー(1),(1)の壁面付近に堆積しても(図1のA部参照)、分散粒子を介して電気が流れることはない。 すなわち、電気のリークを生じることがなく、よって、ER流体(3)の劣化を抑制し、その寿命の延長を図ることができるのである。 【0014】なお、上記接続部材(4)を構成する材料としては、ベークライト,フロン樹脂等のいわゆるエンジニアリングプラスチックが適当であるが、それに限定されるものではなく、他の電気絶縁体材料を使用することもできる。 【0015】また、上記電極板(2)を構成する材料としては、ステンレス,黄銅等の金属があるが、金属だけでなく他の導電性材料も使用することができる。 【0016】さらに、本発明の電極の構造は上記実施例のような平板状の電極板(2),(2),…を有するものに限定されるものではなく、上記従来の公報に示される(図2参照)ような、筒状の電極板(b),(b), …を、両端の電極ホルダー(a)間に配設したものについても適用し得ることはいうまでもない。 【0017】ただし、電極ホルダー(1)は必ずしも電極板(2),(2),…の両端に設けるとは限らず、一端だけでも各電極板(2),(2),…間の間隔精度が維持される限り構わないものとする。 【0018】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、 電場の強弱に応じて流動抵抗が変化する特性を有する電気粘性流体に電場を印加するための電極の構造として、 一定の微小間隔で複数の板状電極板を配置し、各電極板の端部を電極ホルダーの嵌合溝に嵌合させるとともに、 各電極板の端部に電気絶縁体材料からなる接続部材を取り付けて、接続部材の先端部を電極ホルダーの嵌合溝に嵌合し、かつ接続部材の長さを嵌合溝の深さよりも大きくしておくようにしたので、接続部材が嵌合溝の外方まで突出し、電気粘性流体が電極ホルダーの壁面付近に堆積しても、各分散粒子を介した電気のリークの発生を有効に防止することができ、よって、電気粘性流体の劣化を抑制して寿命の延長を図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例に係る電気粘性流体用電極の構造を示す縦断面図である。 【図2】従来の電気粘性流体用電極の構造を示す縦断面図である。 【符号の説明】 1 電極ホルダー 2 電極板 3 ER流体(電気粘性流体) 4 接続部材 5 スリット溝(嵌合溝) ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−57741(JP,A) 特開 平4−262135(JP,A) 特開 平4−175534(JP,A) 特開 平4−370433(JP,A) 実開 昭60−142334(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) G05D 24/02 F16F 9/53 |