【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、蛍光体の粘度を制御する蛍光体の粘度制御方法およびその装置に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、陰極線管の製造工程には、パネル内面に青、緑および赤の3色蛍光体を塗布する工程がある。 この工程では、図5および図6で示すように、パネル11を構成するガラス曲面のパネル内面11a に、まず、図7で示すような所定のパターンで黒色膜12を形成する。 この黒色膜12の形状は、図示のように、たとえば円形の孔13を多数、規則性をもって配置したもので、レジスト塗布工程、シャドウマスクを用いた露光工程、シャドウマスクを外しての現像工程、ダグの塗布工程を経て、パネル11のパネル内面11a に形成される。 【0003】このようにして、黒色膜12を形成した後、 前述の青・緑・赤の3色蛍光体を順次塗布して最終的に蛍光面を形成する。 この場合、それぞれの蛍光体膜の形成に際しては、まず、パネル11のパネル内面11a に蛍光体を所定量供給し、パネルを高速回転させて回転塗布される。 この後、塗布された蛍光体を乾燥し、さらにシャドウマスクを用いての露光工程、シャドウマスクを外しての現像工程がそれぞれ行なわれ、第1色目の蛍光膜を形成する。 同様のプロセスで、第2色目、第3色目の蛍光膜が順次形成される。 【0004】また、パネル内面11a への蛍光体の塗布に際しては、前述のようにパネル内面11a に所定量の蛍光体を供給した後、パネル11を高速回転させ、蛍光体を遠心力によってパネル内面11a に引き伸ばすスピン法による塗布が主流になっている。 このようにして蛍光膜を形成する場合、蛍光膜の粘度や密度がばらつくと、蛍光膜が所望の品位で形成されなくなる。 【0005】すなわち、蛍光膜の厚さが不均一になり、 この厚さの不均一によるむら不良や、ドット落ちといわれる蛍光膜の一部が剥がれ落ちる欠陥などが発生する。 また、塗布された蛍光膜が厚すぎると現像によって所望の色が現像できず、他の色に異なる蛍光体の色が混ざる混色不良が発生する。 【0006】このように、蛍光体の粘度や密度は膜を形成する際の重要な因子であり、粘度や密度を安定させることが品位の良い膜を形成するための一つの条件になっている。 たとえば蛍光体の粘度が高いとむらになり易く、陰極線管として組立てた後、WU(White Uniformi ty)が悪くなる。 また、密度が小さいと蛍光体の充填量が減少し、十分な輝度が得られなくなる。 【0007】従来、パネル内面11a への蛍光体の塗布工程では、パネル内面11a に供給される蛍光体の量は、実際にパネル内面11a に付着する蛍光体の量より多めに設定されている。 塗布に際しては、パネル11を回転させて、所望の膜厚の蛍光体膜を形成する。 この際、余剰な蛍光体は回収され、再び塗布タンク内に戻される。 この回収される蛍光体の密度は、塗布タンク内の蛍光体の密度に対して低いため、塗布タンク内の蛍光体の密度は次第に低下する。 一方、時間の経過とともに蛍光体に含まれる水分が蒸発するため、粘度は僅かながら上昇する。 【0008】したがって、塗布タンク内の蛍光体の粘度や密度を一定に保つためには、塗布タンクから定期的にサンプルを抜き取ってこれらをオフラインで計測し、所望の密度になるように希釈液を投入して調整していた。 このため、作業効率が極めて悪く、かつ、ばらつきの原因にもなっている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】このように、従来、蛍光体の粘度や密度をオフラインで計測し、その値に基づいて希釈液を投入して調整していたため、作業効率が悪くばらつきの原因にもなっている。 【0010】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、蛍光体の粘度や密度を制御できる蛍光体の粘度制御方法およびその装置を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明は、塗布タンク内の蛍光体を塗布対象面に供給して塗布し、余剰分は塗布タンクに回収する蛍光体塗布装置の蛍光体の粘度制御方法であって、塗布タンク内に蛍光体を補充し、塗布タンクから塗布対象面に供給される蛍光体の粘度および密度を測定し、これら粘度および密度の測定結果に応じて粘度の異なる複数の希釈液のいずれか一つ以上を選択して前記塗布タンク内に投入するものである。 【0012】そして、蛍光体の塗布により回収した余剰分は蛍光体の密度が低下するため塗布タンク内の蛍光体の密度は次第に低下し、時間の経過とともに蛍光体に含まれる水分が蒸発するため粘度は僅かながら上昇するが、粘度および密度の測定結果に応じて粘度の異なる複数の希釈液のいずれか一つ以上を選択して前記塗布タンク内に投入することにより、蛍光体の粘度および密度を一定にできる。 【0013】また、複数の希釈液は、比較的粘度の高い第1の希釈液と、比較的粘度の低い第2の希釈液とを有し、蛍光体の密度が予定値より高くなった場合に、蛍光体の粘度が予定値より高い場合は比較的粘度の低い第2 の希釈液を投入し、蛍光体の粘度が低い場合は比較的粘度の高い第1の希釈液を投入して密度や粘度を一定に保持する。 【0014】さらに、第2の希釈液は、純水であるもので、純水により粘度を低下させる。 【0015】またさらに、補充タンクからは密度の高い蛍光体を補充することにより回収によって低下した密度を上昇させ、希釈液を投入することにより過度な密度の上昇を抑制すれば任意の密度および粘度が容易に制御できる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態の蛍光体塗布装置を図面を参照して説明する。 【0017】図1は蛍光体塗布装置で、図1において、 20は塗布タンクで、この塗布タンク20は電磁弁21を有する管路22によって補充タンク23と連結されており、電磁弁21の開閉動作に伴って、所望量の蛍光体24が補充タンク23から補充される。 また、塗布タンク20は、ポンプ2 6、フィルタ27、蛍光体測定手段としての蛍光体測定装置28、電磁弁29を有する蛍光体供給管路30によってノズル31と連結されており、ポンプ26によって圧送された蛍光体24は、電磁弁29の開動作時、ノズル31から陰極線管パネル11の塗布対象面としてのパネル内面11a に供給、 すなわちチャージされる。 なお、電磁弁29が閉じているときは、ポンプ26によって圧送されている蛍光体24はバイパスライン32により塗布タンク20に戻るように構成されている。 【0018】ここで、補充タンク23内には、塗布タンク 20内の塗布に適した密度の蛍光体24より、高い密度の蛍光体24をストレージしておくことが好ましい。 【0019】塗布対象のパネル11は、実際には図2で示すように、塗布システムを構成する主機のキャリアヘッド33に、パネル内面11a が斜め上向きの状態で保持されている。 また、キャリアヘッド33は、前述のようにパネル内面11a に蛍光体24がチャージされた状態で高速回転し、遠心力によって蛍光体24を所望の膜厚で均一に塗布する。 さらに、キャリアヘッド33に保持されたパネル11 の周囲には回収装置34が設けられており、パネル内面11 a にチャージされた蛍光体24のうち余剰分を回収し、回収ライン35を経て図1で示す塗布タンク20内に戻すように構成している。 【0020】また、塗布タンク20に対しては、粘度の異なる2種類の希釈液を供給する第1および第2の希釈液供給手段37,38が設けられている。 この第1の希釈液供給手段37は、比較的粘度の高い第1の希釈液39を有し、 対応する電磁弁40の開動作に伴って、第1の希釈液39を塗布タンク20内に供給する。 第2の希釈液供給手段38 は、比較的粘度の低い第2の希釈液41を有し、対応する電磁弁42の開動作に伴って、第2の希釈液41を塗布タンク20内に供給する。 【0021】ここで、比較的粘度の高い第1の希釈液39 としては、たとえば塗布される蛍光体24の液から、蛍光体を除いた成分を用いる。 すなわち、粘度が塗布される蛍光体24とほぼ同じで、密度を低くした液体を用いる。 また、比較的粘度の低い第2の希釈液41としては、たとえば純水を用いる。 【0022】また、塗布タンク20に対してレベル計44を設け、このレベル計44は塗布タンク20内における蛍光体 24の液位が、予め設定した上限レベル44H および下限レベル44L に達するとそれぞれ検出信号を制御手段45に出力する。 【0023】なお、蛍光体測定装置28としては、たとえば英国ソラトロン社製の測定器が適している。 この測定器は、蛍光体24の密度、粘度、動粘度=粘度/密度および温度を同時に測定することができる。 一般に、蛍光体 24のような粒子混合の懸濁液では、単に粘度を管理すると密度の因子が含まれず、暴走のおそれがあるため、粘度は動粘度で管理することが好ましく、動粘度を測定できる測定器を用いる。 【0024】また、制御手段45には、SCADA(Supe rvisory Control And Data Acquisition)といわれるデータ収集および制御機能を備えたものを用いており、蛍光体測定装置28の測定値およびレベル計44の検出信号が入力される。 また、各電磁弁21,29,40,42やポンプ26 等に制御信号を出力するとともに、モニタ装置46には表示信号を出力する。 モニタ装置46は蛍光体測定装置28の測定値や各電磁弁の開閉状態等を表示する。 【0025】次に、上述の塗布装置の動作について説明する。 【0026】図2で示すように、塗布システムを構成する主機のキャリアヘッド33に搭載されたパネル11は、パネル内面11a を上向きにして所定の塗布ポジションまで搬送されてくる。 その後、塗布ポジションにおいて図示しない位置決め装置により所定の角度でパネルが位置決めされ、図1で示したノズル31から蛍光体24がチャージされる。 このチャージされる蛍光体24の量は、パネル内面11a への付着量より多めに設定する。 【0027】このようにパネル内面11a に蛍光体24をチャージすることによって塗布タンク20内の蛍光体24の量は次第に少なくなってくる。 そして、レベル計44が下限レベル44L を検出すると電磁弁21が開制御され、補充タンク23から比較的高密度の蛍光体24が塗布タンク20に補充される。 この補充は、レベル計44が上限レベル44Hを検出するまで行なわれる。 このため、塗布タンク20内における蛍光体24の密度は次第に上昇する。 【0028】パネル内面11a にチャージされた蛍光体24 は、キャリアヘッド33によるパネル11の高速回転により均一な膜厚に塗布されるとともに、余剰分の蛍光体24 は、図2で示した回収装置34によって回収され、回収ライン35を経て塗布タンク20に戻される。 このため、塗布タンク20内の蛍光体24の密度は時間とともに低下し、粘度は水分の蒸発によって次第に高くなる。 すなわち、パネル内面11a にチャージされた蛍光体24は、密度の高いものがパネル内面11a に沈降し、上澄みの密度の低いものが回収されるため、回収蛍光体の密度が低下する。 また、塗布途中で水分が蒸発するため、回収蛍光体の粘度は上昇する。 これらにより、回収蛍光体が戻される塗布タンク20内の蛍光体の密度は低下し、粘度は上昇する。 【0029】この塗布タンク20内の蛍光体24の粘度および密度は蛍光体測定装置28によって測定されており、その測定結果に応じて電磁弁40または電磁弁42を開制御して第1の希釈液39または第2の希釈液41のいずれかを塗布タンク20に供給して蛍光体の粘度及び密度を調整する。 【0030】図3は実際に塗布タンク20内の蛍光体24の粘度を制御した場合の特性図で、図3に示されるように、塗布タンク20内に補充タンク23から比較的高密度の蛍光体24が補充されると、塗布タンク20内の蛍光体24の密度が上昇するため、比較的粘度の高い第1の希釈液39 が供給され密度を適正範囲に調整する。 【0031】また、蛍光体24がパネル内面11a に供給されると塗布タンク20内の蛍光体量が低下するため、補充タンク23から蛍光体24が補充されて高密度になり、再び第1の希釈液39が供給される。 この状態をしばらく繰り返していると、回収した蛍光体24により塗布タンク20内の蛍光体24の粘度が上昇し、上限値を越えると粘度の低い純水の第2の希釈液41が供給されて粘度を適正範囲に調整する。 以後、蛍光体24が供給される毎に、塗布タンク20内の蛍光体の粘度および密度に応じて第1の希釈液 39または第2の希釈液41を供給して蛍光体24の粘度および密度を適正な状態に保持する。 【0032】図4は図3で示した特性と基本的に同じ特性で、密度と動粘度制御をより詳細に説明している。 【0033】図4において、蛍光体24の密度は上限値H1 を越えているが、粘度が上限値H2を越えていない場合は、比較的粘度の高い第1の希釈液39が供給され密度を調整する。 この第1の希釈液39の供給は、密度がLレベルを下回ることにより停止する。 そして、蛍光体24がパネル内面11a にチャージされ、余剰の蛍光体24が回収されることにより、塗布タンク20内の蛍光体24の密度が低下すると、高密度の蛍光体24が補充され、塗布タンク20 内の蛍光体密度は再び上昇する。 【0034】そして、密度が上限値H1を越たときに動粘度を測定し、粘度が上限値H2を越えていると、純水である粘度の低い第2の希釈液41を供給して粘度を適正な状態に調整する。 この第2の希釈液41の供給も、密度がL レベルを下回ることにより停止する。 【0035】これらの動作により、塗布タンク20内の蛍光体24の密度および粘度は常に適正な範囲に維持される。 【0036】 【発明の効果】本発明によれば、塗布対象面に供給される蛍光体の粘度と密度を測定し、その結果に応じて粘度の異なる希釈液を選択して蛍光体に投入することにより、この蛍光体の粘度および密度を適正な範囲に制御でき、作業効率が大幅に向上し、塗布状態を高品位にできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施の形態の蛍光体塗布装置を示す構成図である。 【図2】同上塗布対象である陰極線管パネルの保持状態を示す拡大図である。 【図3】同上動作を説明するための特性図である。 【図4】同上動作を詳細に説明するための特性図である。 【図5】蛍光体の塗布対象である陰極線管パネルを示す平面図である。 【図6】同上正面図である。 【図7】陰極線管パネルに形成される黒色膜を示す説明図である。 【符号の説明】 11a 塗布対象面としてのパネル内面 20 塗布タンク 23 補充タンク 24 蛍光体 28 蛍光体測定手段としての蛍光体測定装置 37 第1の希釈液供給手段 38 第2の希釈液供給手段 39 第1の希釈液 41 第2の希釈液 45 制御手段 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 寛之 埼玉県深谷市幡羅町一丁目9番2号 株式 会社東芝深谷電子工場内 (72)発明者 平山 和成 兵庫県姫路市余部区上余部50番地 株式会 社東芝姫路工場内 Fターム(参考) 5C028 HH03 5H309 AA20 CC06 CC10 DD02 DD12 DD30 EE04 FF03 GG03 JJ02 |