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固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材、およびそれを用いたセパレータ

阅读:471发布:2024-02-12

专利汇可以提供固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材、およびそれを用いたセパレータ专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】初期の 接触 抵抗が低く、固体高分子形 燃料 電池内でセパレータとして用いたときの環境において良好な耐食性を有し、それゆえに、低い接触抵抗が維持され、かつ安価である、固体高分子形燃料電池セパレータ用のチタン材を提供する。 【解決手段】このチタン材は、質量%で、白金族元素:0.005〜0.15%、および希土類元素:0.001〜0.1%を含有し、残部がTi、および不純物からなる 母材 11と、母材11の表面に形成されたチタン 酸化 皮膜12と、チタン酸化皮膜12の少なくとも一部を覆うように形成された白金族元素部12Aと、チタン酸化皮膜12および白金族元素部12Aの上に形成され、炭素含有率が95質量%以上であり、導電性を有する炭素層13とを含む。チタン酸化皮膜12の表面上で、白金族元素部12Aの占める面積の割合は、5%以上である。 【選択図】図2B,下面是固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材、およびそれを用いたセパレータ专利的具体信息内容。

固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材であって、 質量%で、白金族元素:0.005〜0.15%、および希土類元素:0.001〜0.1%を含有し、残部がTi、および不純物からなる母材と、 前記母材の表面に形成されたチタン酸化皮膜と、 前記チタン酸化皮膜の少なくとも一部を覆うように形成された白金族元素部と、 前記チタン酸化皮膜および前記白金族元素部の上に形成され、炭素含有率が95質量%以上であり、導電性を有する炭素層と、 を含み、 前記チタン酸化皮膜の表面上で、前記白金族元素部の占める面積の割合が、5%以上である、チタン材。請求項1に記載の固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材であって、 前記炭素層が、黒鉛、およびダイヤモンドライクカーボンの少なくとも1種を含む、チタン材。請求項1または2に記載のチタン材を含む、固体高分子形燃料電池のセパレータ。

说明书全文

本発明は、固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材、およびそれを用いたセパレータに関する。

燃料電池は、素と酸素との結合反応の際に発生するエネルギーを利用するため、省エネルギーと環境対策との両面から、その導入および普及が期待されている次世代の発電システムである。燃料電池には、固体電解質形、溶融炭酸塩形、リン酸形、および固体高分子形などの種類がある。

これらのうち、固体高分子形燃料電池は、出密度が高く小型化が可能であり、また、他のタイプの燃料電池より低温で作動し、起動・停止が容易である。このような利点から、固体高分子形燃料電池は、自動車、家庭用の小型コジェネレーション等への利用が期待されており、近年、特に注目を集めている。

図1Aは、固体高分子形燃料電池(以下、単に「燃料電池」ともいう。)の斜視図であり、図1Bは、燃料電池に用いられる単セルの分解斜視図である。

図1Aに示すように、燃料電池1は、単セルの集合体(スタック)である。単セルでは、図1Bに示すように、固体高分子電解質膜2の一面に、アノード側ガス拡散電極膜(「燃料電極膜」とも呼ばれる;以下、「アノード」という。)3が、他面に、カソード側ガス拡散電極膜(「酸化剤電極膜」とも呼ばれる;以下、「カソード」という。)4が、それぞれ積層されており、その積層体の両面に、セパレータ(バイポーラプレート)5a、5bが重ねられている。

燃料電池には、隣接する2つの単セルの間、または数個の単セルごとに、冷却水の流通路を持つセパレータを配したものがある。本発明は、そのような水冷型燃料電池のセパレータ、およびそのセパレータに用いるチタン材も対象とする。

固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という。)2としては、水素イオン(プロトン)交換基を有するふっ素系プロトン伝導膜が主として使われている。

アノード3、およびカソード4は、いずれも、導電性を有する炭素繊維をシート状にしたカーボンシート(または、カーボンシートより薄いカーボンペーパー、もしくはさらに薄いカーボンクロス)を主体とする。アノード3およびカソード4には、粒子状の白金触媒、黒鉛粉、および必要に応じて水素イオン(プロトン)交換基を有するふっ素樹脂からなる触媒層が設けられている場合もある。この場合には、燃料ガスまたは酸化性ガスとこの触媒層とが接触して反応が促進される。

セパレータ5aには、アノード3側の面に、溝状の流路6aが形成されている。流路6aには、燃料ガス(水素または水素含有ガス)Aが流されて、アノード3に水素が供給される。また、セパレータ5bには、カソード4側の面に、溝状の流路6bが形成されている。流路6bには、空気等の酸化性ガスBが流され、カソード4に酸素が供給される。これらガスの供給により、電気化学反応が生じて直流電力が発生する。

固体高分子形燃料電池のセパレータに求められる主な機能は、次の通りである。 (1)燃料ガス、または酸化性ガスを、電池面内に均一に供給する「流路」としての機能(2)カソード側で生成した水を、反応後の空気、酸素等のキャリアガスとともに、燃料電池から効率的に系外に排出する「流路」としての機能 (3)電極膜(アノード3、カソード4)と接触して電気の通り道となり、さらに、隣接する2つの単セル間の電気的「コネクタ」となる機能 (4)隣り合うセル間で、一方のセルのアノード室と隣接するセルのカソード室との「隔壁」としての機能 (5)水冷型燃料電池では、冷却水流路と隣接するセルとの「隔壁」としての機能

固体高分子形燃料電池に用いられるセパレータ(以下、単に「セパレータ」という。)の基材材料は、このような機能を果たすことができるものである必要がある。基材材料には、大きく分けて、金属系材料と炭素系材料とがある。

炭素系材料からなるセパレータは、黒鉛基板にフェノール系、フラン系などの熱硬化性樹脂を含浸し硬化して焼成する方法、炭素粉末をフェノール樹脂、フラン樹脂、またはタールピッチなどと混練して、板状に、プレス成形、または射出成形して焼成し、ガラス状カーボンにする方法などにより製造される。炭素系材料を用いると、軽量なセパレータが得られる利点があるが、セパレータがガス透過性を有するという問題、および機械的強度が低いという問題がある。

金属系材料としては、チタン、ステンレス、炭素鋼などが用いられる。これらの金属系材料からなるセパレータは、プレス加工等により製造される。金属系材料は、金属特有の性質として、加工性に優れ、セパレータの厚みを薄くすることができ、セパレータの軽量化が図れるという利点を有するが、金属表面の酸化により電気伝導性が低下し得る。このため、金属系材料からなるセパレータと電極膜との接触抵抗が上昇する可能性があることが問題となっている。この問題に対して、以下の方策が提案されている。

特許文献1では、チタン製セパレータの基材において、電極と接するべき表面から不動態皮膜を除去した後に、その表面に金などの貴金属のめっきを施すことが提案されている。特許文献2では、白金族元素を1種または2種以上含有するチタン合金酸洗し、表面に白金族元素を濃化させることにより接触抵抗の上昇が抑制されたチタン合金が提案されている。特許文献3では、酸洗により白金族元素を表面濃化させた後に、表面に濃化した白金族元素とマトリックスとの密着性向上を目的として、低酸素濃度雰囲気で熱処理を施したチタン製セパレータが提案されている。

特許文献4では、貴金属を用いることなく、セパレータと電極膜との接触抵抗の上昇を抑制するための試みの一つとして、表面がチタン製の金属セパレータに対して、当該表面に、蒸着により、炭素からなる導電性接点層を形成する方法が提案されている。

特許文献5では、セパレータ表面に導電性セラミックスを分散させて、接触抵抗を低減する方法が提案されている。

特開2003−105523号公報

特開2006−190643号公報

特許第4032068号公報

特許第4367062号公報

特開平11−162479号公報

固体高分子形燃料電池は、移動体用燃料電池、および定置用燃料電池として広く用いられることが期待されており、貴金属を多量に使用することは、経済性、および資源量の観点から問題がある。このため、特許文献1の技術は普及していない。特許文献2および3のセパレータは、白金族元素を含み、また、製造時の工数が多いため、大幅なコスト上昇を避けることができない。

特許文献4の技術に関しては、通常、チタンの表面には、導電性を有しないチタン酸化皮膜が形成されており、導電性接点層を形成しても、接触抵抗は低下しない。接触抵抗を低下させるためには、このチタン酸化皮膜を除去した直後に導電性接点層を形成する必要がある。このような処理を行うためには、処理を行う際の雰囲気制御等が必要になるため、大幅なコストアップを避けることができない。

特許文献5の方法では、得られた材料を、板材からセパレータ形状へとプレス成形する際に、分散したセラミックスが成形を阻害し、ときには、加工の際に、セパレータに、割れまたは貫通孔が発生する。また、セラミックスがプレス金型を摩耗させるので、プレス金型を超硬合金のような高価な材質のものに変更せざるを得ないという問題も生じる。このため、特許文献5の方法は、実用化には至っていない。

また、燃料電池において、電解質膜からふっ化物イオンが生じ、一方、燃料電池の反応により水が生じる。これにより、ふっ化水素水が生じ、この状態で、電解質膜とセパレータとの間に電圧が印加されることにより、セパレータ表面にふっ化物が形成される。このようなふっ化物が形成されることによっても、セパレータと電極膜との接触抵抗は増大する。

本発明は、従来技術の上述の問題を解消し、初期の接触抵抗が低く、固体高分子形燃料電池内でセパレータとして用いたときの環境において良好な耐食性を有し、それゆえに、低い接触抵抗が維持され、かつ安価である、固体高分子形燃料電池セパレータ用のチタン材、およびこのチタン材を用いたセパレータを提供することを目的とする。

本発明は、下記(A)および(B)のチタン材、ならびに下記(C)のセパレータを要旨とする。 (A)固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材であって、 質量%で、白金族元素:0.005〜0.15%、および希土類元素:0.001〜0.1%を含有し、残部がTi、および不純物からなる母材と、 前記母材の表面に形成されたチタン酸化皮膜と、 前記チタン酸化皮膜の少なくとも一部を覆うように形成された白金族元素部と、 前記チタン酸化皮膜および前記白金族元素部の上に形成され、炭素含有率が95質量%以上であり、導電性を有する炭素層と、 を含み、 前記チタン酸化皮膜の表面上で、前記白金族元素部の占める面積の割合が、5%以上である、チタン材。

(B)上記(A)の固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材であって、 前記炭素層が、黒鉛、およびダイヤモンドライクカーボンの少なくとも1種を含む、チタン材。 (C)上記(A)または(B)のチタン材を含む、固体高分子形燃料電池用のセパレータ。

本発明のチタン材は、チタン酸化皮膜を被覆し導電性を有する炭素層を有する。炭素層の電極膜に対する接触抵抗は低い。チタン酸化皮膜は、導電性を有するものとするか、導電性を有しない場合は、極めて薄いものとすることができる。この場合、電極膜と母材との間の電気抵抗を低くすることができ、電極膜に対するこのチタン材の接触抵抗を低くすることができる。

また、炭素層は、燃料電池内の環境では、実質的に腐食しない。そして、チタン酸化皮膜の表面が炭素層で被覆されていることにより、チタン酸化皮膜の表面にふっ化物等の腐食生成物は形成されにくい。チタン酸化皮膜の表面上で白金族元素部の占める面積の割合が5%以上であることにより、白金族元素部およびチタン酸化皮膜に対する炭素層の密着性は高くなる。このため、このチタン材は、電極膜に対して低い接触抵抗を維持することができる。したがって、このチタン材を含むセパレータを用いた固体高分子形燃料電池は、発電性能に優れ、発電性能の劣化が少ない。

母材の白金族元素の含有率は、本発明のチタン材では、0.005〜0.15質量%である。母材に白金族元素が含まれていることにより、母材自体が耐食性を有し、母材の表面付近で抵抗値が上昇することを抑制できる。母材は、白金族元素に加えて、希土類元素を、0.001〜0.1質量%含有する。詳細な機構は不明であるが、この希土類元素は、白金族元素により母材に付与される耐食性を高める役割を果たす。このため、本発明のチタン材では、白金族元素(貴金属)を用いた従来のチタン材に比して、白金族元素の含有率を低減して、コストを低減することができる。

図1Aは、固体高分子形燃料電池の構造を模式的に示す斜視図である。

図1Bは、固体高分子形燃料電池を構成する単セルの構造を示す分解斜視図である。

図2Aは、本発明の一実施形態に係るチタン材の模式的な断面図である。

図2Bは、図2Aに示すチタン材において、母材表面の突起の近傍を拡大して示す断面図である。

図3は、接触抵抗の測定方法を説明するための図である。

本発明者らは、セパレータと、セパレータの表面に接触し、炭素繊維からなるカーボンシートとを備えた燃料電池について検討した。セパレータとして、白金族元素を含有する母材と、母材の表面に形成されたチタン酸化皮膜と、チタン酸化皮膜を被覆し導電性の炭素系物質を主体とする炭素層とを備えたものを対象とした。

チタン酸化皮膜は、導電性を有することが好ましい。チタン材の表面には、一般に、チタン酸化皮膜である不動態皮膜が形成されていることが知られており、この不動態皮膜により周囲の環境に対する耐食性が得られる。しかし、一般に、酸化物の電気抵抗は高く、チタン酸化皮膜として、電気抵抗が高い不動態皮膜が形成されていると、その表面に炭素層を形成しても、母材と電極膜との間の電気抵抗を低くすることができない。したがって、チタン酸化皮膜は、導電性を有するものとするか、導電性を有さない場合は、極めて薄いものとする必要がある。導電性を有さないチタン酸化皮膜が極めて薄いものである場合は、このチタン酸化皮膜におけるトンネル効果により、母材と炭素層との間の電気的導通が得られる。

発明者らは、白金族元素を含有するチタン材を、特定の組成を有する酸溶液で不動態化処理することにより、導電性を有するチタン酸化皮膜を形成できることを明らかにした。ここで、「不動態化処理することにより、導電性を有するチタン酸化皮膜を形成」するとは、不動態皮膜が実質的に形成されていないチタン材に対して、導電性を有する不動態皮膜を形成することのみならず、すでに形成されていた不動態皮膜に対して導電性を付与することを含む。

このようなチタン酸化皮膜が導電性を有する理由は必ずしも明らかではないが、チタン材表面の酸化物中にTiOとTiO2とが混在しており、TiOとTiO2との間で電子の授受が行われる(電子伝導性が発現する)ためと考えられる。この場合、チタン材の母材とチタン酸化皮膜との間の導電経路は、燃料電池の使用を開始してから、少なくとも初期の段階では、無数に存在すると考えられる。

一方、アノード3、およびカソード4を構成するカーボンシートの炭素繊維の直径は数μmであるため、これらの炭素繊維が直接チタン酸化皮膜に接触している場合は、炭素繊維とチタン酸化皮膜表面との接触は、点接触または線接触となる。燃料電池を長時間稼働させた場合、腐食等により、チタン酸化皮膜の表面に、ふっ化物等の導電性を有しない腐食生成物を主体とする層が生じる。これにより、チタン酸化皮膜とカーボンシートとの間の導電経路が遮断され、長時間の稼働中に、カーボンシートとの接触抵抗は徐々に上昇してゆく。

そこで、本発明者らは、チタン酸化皮膜の表面を、炭素を主成分とする炭素層で被覆することによって、チタン酸化皮膜と炭素繊維との間の導電経路を維持できると考えた。 また、本発明者らは、上述の特定の組成を有する酸溶液を用いた不動態化処理により、チタン酸化皮膜の上に、白金族元素を主成分とする白金族元素部が形成されることを見出した。さらに、本発明者らは、チタン酸化皮膜の表面上で白金族元素部の占める面積の割合が5%以上であれば、チタン酸化皮膜および白金族元素部に対する炭素層の密着性が十分に高くなることを見出した。

本発明のチタン材は、上述のように、固体高分子形燃料電池のセパレータ用チタン材であって、母材と、母材の表面に形成されたチタン酸化皮膜と、チタン酸化皮膜の少なくとも一部を覆うように形成された白金族元素部と、チタン酸化皮膜および白金族元素部の上に形成された炭素層とを含む。炭素層の炭素含有率は、95質量%以上である。炭素層は、導電性を有する。チタン酸化皮膜の表面上で、白金族元素部の占める面積の割合は、5%以上である。

本発明のセパレータは、上記本発明のチタン材を含む。本発明者らは、このセパレータを燃料電池に用いたときに、燃料電池を長時間稼働しても、電極膜に対する接触抵抗を低く維持できることを確認した。

図2Aは、本発明の一実施形態に係るチタン材の模式的な断面図である。母材11の表面には、導電性を有するチタン酸化皮膜12が形成されている。チタン酸化皮膜12の上には、導電性炭素材14を主体とする炭素層13が形成されている。この実施形態では、母材11の表面は、凹凸を有する。この凹凸により、高さが、たとえば、1.5μm以下の突起が形成されている。チタン酸化皮膜12は、母材11の表面に沿って形成されている。導電性炭素材14は、たとえば、黒鉛の鱗状粒子である。

図2Bは、図2Aに示すチタン材において、母材11表面の突起の近傍を拡大して示す断面図である。チタン酸化皮膜12の一部を覆うように、白金族元素部12Aが形成されている。白金族元素部12Aは、この実施形態では、母材11表面の突起の先端部近傍に対応する領域に形成されている。

[母材の化学組成] 〈白金族元素〉 ここで、「白金族元素」とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、および白金(Pt)をいうものとする。白金族元素は、チタンより低い電気抵抗率を有し、固体高分子形燃料電池の動作環境において、酸化および腐食せず、電気抵抗が上昇しない元素である。

母材の白金族元素含有率は、質量%で、0.005〜0.15%である。以下、化学組成についての「%」は、「質量%」である。母材は、実質的に1種のみの白金族元素を含有してもよく、複数種の白金族元素を含有してもよい。母材が複数種の白金族元素を含有する場合は、これら複数種の白金族元素について含有率の合計が、0.005〜0.15%である。

母材が白金族元素を含有することにより、母材自体の耐食性が増す。さらに、母材の表層部が酸化して母材の表面にチタン酸化皮膜が形成された場合、チタン酸化皮膜の導電性が得られやすくなる。白金族元素の含有率が0.005%未満であれば、母材の耐食性を高くする効果、およびチタン酸化皮膜の導電性を得る効果が十分に得られない。一方、白金族元素の含有率が0.15%より高くなると、原料コストが高くなり、白金族元素を含有する従来のチタン材に比して、経済的な優位性を保つのが困難になる。

経済性と耐食性とのバランスを考慮すると、白金族元素の含有率を0.02〜0.1%とすることが好ましい。本発明のチタン材における母材は、白金族元素の含有率がこの範囲であっても、白金族元素の含有率が0.1%よりも高いチタン合金と同等の低い接触抵抗を有する。

〈希土類元素〉 本発明のチタン材の母材は、白金族元素に加えて、希土類元素を含有する。希土類元素は、原子番号21番のスカンジウム(Sc)、原子番号39番のイットリウム(Y)、およびランタノイドである原子番号57番のランタン(La)〜原子番号71番のルテチウム(Lu)からなる群から選択される1種以上の元素をいう。母材の製造工程で、希土類元素は、ミッシュメタルとして、原料に添加してもよい。ミッシュメタルは、複数種の希土類元素を含有する合金であり、La、セリウム(Ce)等を含有することが多い。単一種の希土類元素を製造する場合にかかる分離費用が、ミッシュメタルではかからないため、ミッシュメタルを用いることにより、安価に希土類元素を含有させることができる。

母材の希土類元素含有率は、0.001〜0.1%である。母材は、実質的に1種のみの希土類元素を含有してもよく、複数種の希土類元素を含有してもよい。母材が、複数種の希土類元素を含有する場合は、これらの複数種の希土類元素について、含有率の合計が、0.001〜0.1%である。

母材が希土類元素を含有することによって、母材の白金族元素の含有率を少なくしても、導電性を有するチタン酸化皮膜を形成しやすくなる。さらに、白金族元素により母材に付与される耐食性を高められる。希土類元素の含有率が0.001%未満であれば、白金族元素の含有率を少なくすると、導電性を有するチタン酸化皮膜を形成し難くなる。希土類元素の含有率が0.1%を超えると、希土類元素としてミッシュメタルを用いたとしても、原料コストが高くなる。母材の希土類元素含有率の上限は、好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.05%である。母材の希土類元素含有率の下限は、好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。

〈Fe〉 一般に、チタン合金は、不純物として、Feを含有する。Feは、耐食性を劣化させる作用を有する。セパレータとして十分な耐食性を確保するためには、母材のFe含有率は、0.1%以下であることが好ましい。

[チタン酸化皮膜] チタン材の表面には、通常、自然に酸化皮膜が形成される。耐食性を高めるために、大気中、または硝酸等の酸化力のある酸を含有する溶液中で、陽極酸化を行って、酸化皮膜を厚くすることが可能である。しかし、この場合、チタン酸化皮膜に導電性を付与することはできない。

本発明者らは、特定の酸溶液中でチタン母材を処理(不動態化処理)した場合、チタン酸化皮膜に導電性が発現することを見出した。特定の酸溶液としては、ふっ化物イオンまたは塩化物イオンを含む酸溶液を用いることができる。ふっ化物イオンを含む酸溶液を用いた処理の一例として、HFを0.2質量%含有する20〜40℃の水溶液中に、5〜30分浸漬する処理を挙げることができる。塩化物イオンを含む酸溶液を用いた処理の一例として、HClを30質量%含有する60〜80℃の水溶液中に、5〜45分浸漬する処理を挙げることができる。このように、特定の酸溶液で処理することにより、チタンの酸化皮膜に導電性を付与できる。

さらに、チタン酸化皮膜を安定化させるために、260〜550℃の温度範囲で、1〜15分の加熱処理を施すことが好ましい。これにより、チタン酸化皮膜が緻密化し、皮膜そのものが強化されるだけでなく、ふっ化物イオンもしくは塩化物イオンが存在する環境、または電圧が印加された環境におけるチタン材の耐食性が高まる。

上述の酸溶液で処理してチタン酸化皮膜に導電性を付与する効果は、白金族元素と希土類元素とを含有するチタン材において、特に顕著に現れる。これは、非酸化性の酸溶液で母材を処理する際に、チタンの溶解が希土類元素により促進され、チタンとともに溶解した白金族元素が、母材の表面で、白金族元素部として再析出するためと考えられる。

チタン酸化皮膜の厚さは、3nm以上であることが好ましく、4nm以上であることがより好ましい。この場合、ふっ化物イオンまたは塩化物イオンの存在下におけるチタン酸化皮膜の十分な耐食性が得られる。また、チタン酸化皮膜の厚さは、10nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましい。この場合、チタン酸化皮膜による電気抵抗が低くなり、電極膜に対するチタン材の接触抵抗を低くすることができる。

チタン酸化皮膜の表面には、凹凸、すなわち、多数の突起(高さが、たとえば、1.5μm以下のもの)が形成されていることが好ましい。この場合、仮に、導電性を有するチタン酸化皮膜の上に、腐食生成物等の導電性を有しない層が形成されたとしても、このような突起により、電極膜の炭素繊維との電気的接触を得やすい。このような効果を十分に得るためには、チタン酸化皮膜の表面のRa(算術平均粗さ)が0.5μmより大きいことが好ましい。

このような突起は、たとえば、チタンの酸化皮膜に導電性を付与するための酸処理の前に、下記(a)〜(c)のいずれかに示す酸処理を施すことにより形成できる。 (a)HFを3〜8質量%およびHNO3を0.5〜4.5質量%含有する20〜45℃の水溶液中に、0.5〜5分浸漬 (b)HClを5〜15質量%含有する60〜85℃の水溶液中に、3〜10分浸漬 (c)H2SO4を20〜40質量%含有する、50〜70℃の水溶液中に、5〜10分浸漬

突起を形成するために用いる酸溶液と、導電性を有するチタン酸化皮膜を形成するための酸溶液とは、同種の酸を用いたものであってもよく、互いに異なる種類の酸を用いたものであってもよい。

[白金族元素部] 白金族元素部は、後述の炭素層を形成する前に、チタン酸化皮膜の表面について、反射電子組成像を観察することにより、確認することができる。反射電子組成像は、たとえば、FE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)により得ることができる。

反射電子組成像では、存在する原子の原子量の違いにより、明度が異なる。白金族元素部の明度は、他の部分、たとえば、チタン酸化皮膜の明度に比して、著しく高い。この特性を利用することにより、白金族元素部を、他の部分から識別でき、チタン酸化皮膜の表面上で白金族元素部の占める面積の割合(以下、「白金族元素部の面積率」という。)を求めることができる。ここで、「面積率」は、チタン材(チタン酸化皮膜)の表面を、チタン材の表面にほぼ垂直な方向から撮影した像における面積に基づくものであり、母材表面の凹凸を考慮した面積に基づくものではない。

炭素層が形成されたチタン材に対しては、以下のようにして、白金族元素部の面積率を求めることができる。すなわち、チタン材を、その表面に垂直に切断し、その断面の反射電子組成像を得る。そして、この像において、チタン材の表面に平行な所定長さの線分を引き、その線分に垂直に白金族元素部を投射する。その線分の長さに占める、投射された白金族元素部の長さの合計の割合を二乗して、白金族元素部の面積率とすることができる。投射された白金族元素部の長さは、白金族元素部をチタン材表面に平行な方向に測定した長さということもできる。

面積率を正確に求めるためには、1つの断面について、上記線分の長さを10μm以上とし、互いに異なる3つの断面について上記割合を求めて、平均することが好ましい。炭素層を形成する前に測定した白金族元素部の面積率と、炭素層が形成されたチタン材について上述の方法により測定した白金族元素部の面積率とは、ほぼ同じになる。

上述の通り、白金族元素部は、酸溶液を用いた不動態化処理により、導電性を有するチタン酸化皮膜を形成させる際に、チタン酸化皮膜に形成される。酸溶液を用いた処理の条件によって、白金族元素の析出状態は異なり、白金族元素部の面積率も異なる。本発明のチタン材では、白金族元素部の面積率は5%以上である。白金族元素部の面積率を5%以上とすることにより、チタン酸化皮膜および白金族元素部と炭素層との密着性が著しく向上する。これは、析出した白金族元素が、炭素層との密着性に影響を与えているためと考えられる。

白金族元素部の面積率を5%以上とするためには、母材の酸溶液処理を長時間(たとえば15分以上)行うことが好ましい。母材に希土類元素が存在することにより、希土類元素が存在しない場合に比して短時間で、白金族元素が再析出し、それに伴い、母材表面近傍の白金族元素の濃度は高くなる。ただし、白金族元素部の面積率を高くするためには、析出サイトが多いことが必要であるので、反応が長く続き、経時的に析出サイトが増えることが好ましい。

酸溶液中で、白金族元素が再析出する反応が停止する場合は、反応を継続させるために、電解を行う、すなわち、強制的に電流を流してもよい。母材の表面に凹凸が形成されている場合、強制的に電流を流すことにより、図2Bに示すように、母材の突起先端部に対応する領域に、白金族元素部を形成することができる。ただし、反応が急激に進むと、気泡が発生し、白金族元素の再析出を阻害するため、電流は、反応を維持できる限り微弱にすることが好ましい。

[炭素層] 炭素層のC(炭素)含有率、すなわち、炭素層を構成する物質に占めるCの割合は、95質量%以上である。これにより、炭素層の電気抵抗を低くすることができる。炭素層のC含有率は、たとえば、チタン材の断面をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により定量分析することによって求めることができる。また、炭素層から採取した試料について、TEM−EDS(Transmission Electron Microscope Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により定量分析することによっても、炭素層のC含有率を求めることができる。

チタン酸化皮膜および白金族元素部において、炭素層に覆われている部分には、腐食生成物は形成され難い。このため、燃料電池内環境で、この部分を介した電気的接続は維持されやすい。これにより、チタン材全体としての電極膜に対する接触抵抗は、低く維持されやすい。

炭素層の被覆率、すなわち、チタン酸化皮膜の表面積に対する、炭素層を構成する炭素材で覆われている部分の面積の割合は、100%であることが理想的であるが、30%程度でも、接触抵抗を低く維持する上述の効果が得られることが確認された。炭素層の被覆率は、50%以上であれば、この効果が安定して得られる。

この効果を得るため、炭素層の厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。炭素層の厚さは、たとえば、FE−SEM等により、チタン材の断面を観察して測定することができる。FE−SEMの像では、炭素層は、母材、チタン酸化皮膜、および白金族元素部とは異なる明度を有するので、炭素層と、母材、チタン酸化皮膜、および白金族元素部とを、容易に区別することができる。このとき、炭素層の厚さは、たとえば、5視野を観察して視野毎の炭素層の厚さを平均したものとする。

母材が白金族元素を含有することにより、チタン酸化皮膜も白金族元素を含有する。チタン酸化皮膜が白金族元素を含有することにより、チタン酸化皮膜と炭素層との密着性が向上する。

セパレータは、通常、平板状のチタン材をプレス加工することにより、溝状の流路を形成して得られる。セパレータが本発明のチタン材を用いたものである場合は、成形加工の後、炭素系の物質を付加する表面処理により、チタン材の表面に炭素層を形成して、燃料電池に用いることができる。母材が白金族元素を実質的に含有しない(白金族元素部も形成されていない)場合は、燃料電池へのセパレータの組付け時に、チタン材のチタン酸化皮膜から、炭素層が、剥離するか、局部的に浮き上がることがあった。この場合、ふっ化物イオンを有する燃料電池内環境において、チタン材の耐食性が低下し、接触抵抗が増大する。

チタン酸化皮膜が白金族元素を含有し、白金族元素部の面積率が5%以上である場合は、チタン酸化皮膜および白金族元素部に対して炭素層が強固に密着する。これにより、セパレータを燃料電池に組み付ける際に、炭素層の剥離または局部的な浮き上がりを抑制することができる。したがって、チタン材の耐食性を高く維持し、接触抵抗を低く維持することができる。

チタン酸化皮膜および白金族元素部(以下、「チタン酸化皮膜等」ともいう。)の表面に対する導電性炭素材の被覆は、たとえば、下記(1)〜(3)のいずれかの方法により行うことができる。 (1)塊状(ブロック状等)の導電性炭素材をチタン酸化皮膜等に対して擦り付ける。 (2)粉末の形態の導電性炭素材を溶媒に分散させてチタン酸化皮膜等の表面に塗布する。 (3)真空蒸着により、炭素をチタン酸化皮膜等の表面に供給する。

導電性炭素は、黒鉛(グラファイト)、およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)の少なくとも1種を含むことが好ましい。黒鉛の粉末では、炭素原子からなる六員環の面が層状をなし、面間の結合は弱い。このため、黒鉛の粒子は鱗状(平板状)の形態になりやすい。このような形態の粒子は、チタン酸化皮膜等の表面にほぼ平行に配向して、チタン酸化皮膜等の表面を効率的に覆うことができる。特に、上述の擦り付けによる方法では、チタン酸化皮膜等の表面に平行に、鱗状の黒鉛粒子が配向しやすい。

炭素層を構成する黒鉛のC面間隔は、d002で、3.38Å以下であることが好ましい。チタン酸化皮膜等をこのような黒鉛で被覆すると、黒鉛は、チタン酸化皮膜等に対して、良好な密着性を有するとともに、特に低い接触抵抗を示す。より詳細には、黒鉛のC面間隔をd002≦3.38Åとすることにより、下記(i)〜(iv)の効果が得られる。

(i)黒鉛の可塑性は、C面間隔d002が小さくなり理想的な結晶状態における3.354Åに近づくほど、高くなる。d002≦3.38Åであれば、可塑性は十分に高いため、チタン酸化皮膜等の表面の被覆が容易である。

(ii)結晶性の高い黒鉛の電気抵抗値には、異方性がある。a軸方向の体積抵抗率は4〜7×10-5Ω・cmと低く、c軸方向の体積抵抗率は1〜5×10-1Ω・cmと高い。このa軸方向の電気伝導は、sp2結合におけるπ結合が共役することによってもたらされているので、結晶性が高いほど体積抵抗率も低くなる。このため、d002≦3.38Åである黒鉛、すなわち、結晶性が高い黒鉛では、a軸方向の体積抵抗率は特に低く、黒鉛全体の体積抵抗率は低く、接触抵抗が低下する。結晶の向きがランダムであり、全体として方向性のない炭素の体積抵抗率は、平均1375×10-6Ω・cmである。これに対して、黒鉛のa軸方向の低い体積抵抗率(4〜7×10-5Ω・cm)を効果的に寄与させることにより、接触抵抗を低減することができる。

(iii)黒鉛の腐食は、結晶性が低い部分において発生しやすく、結晶性が高い部分ほど発生しにくい。d002≦3.38Åの黒鉛を主成分とする炭素層は、腐食しにくいため、この炭素層の下に存在するチタン酸化皮膜の導電性劣化を効果的に防止することができる。このため、チタン材と電極膜との間の接触抵抗の経時変化を生じにくくすることができる。

(iv)結晶性の高い黒鉛は層状の結晶構造を有するので、このような黒鉛を、チタン材に対して擦り付けると、黒鉛は、層間(具体的には、炭素原子からなる六員環の面同士の間)で剥離され、鱗状の粒子となって、チタン酸化皮膜等に固着する。この際、黒鉛が鱗状であることにより、電気抵抗の低いa軸方向がチタン酸化皮膜等の表面に平行となるように、粒子が配向する。このため、電流は、黒鉛層(炭素層)では、チタン酸化皮膜の表面と平行な方向に流れやすくなる。ここで、チタン酸化皮膜等の表面に無数の凹凸が存在れば、その突起の先端部が黒鉛の粒子に接触する。これにより、黒鉛層とチタン酸化皮膜等との間の導電性は、黒鉛のa軸がチタン酸化皮膜の表面に平行に配向した状態でも十分に確保される。

チタン酸化皮膜の表面において、黒鉛の粒子に覆われていない部分では、燃料電池の稼働時に、腐食生成物が形成され、当該表面に垂直な方向に導通が得られない部分が生じることがある。しかし、黒鉛の粒子に覆われている部分には腐食生成物は形成されにくく、この部分では、燃料電池を稼働する前の状態がほぼ維持される。したがって、この場合、黒鉛層とチタン材の母材との間の導電性が確保される。

炭素層を構成する炭素材としては、黒鉛に代えて、または黒鉛に加えて、ダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」という。)、カーボンブラック等を採用することができる。ダイヤモンドライクカーボンには、結晶質のものと、非晶質のものとがある。通常のDLCは、電気的絶縁体であるが、導電性を有するDLCも存在する。本発明のチタン材における炭素層に、ダイヤモンドライクカーボンを用いる場合は、導電性を有するものを用いる。上述のように、黒鉛は、層状の結晶構造を有することにより、応力を受けると層間で剥離し得る。これに対して、DLCは、機械特性が等方的であるため、特に強い力がかからない限り、粒子内での剥離は生じにくい。

本発明の効果を確認するため、以下の方法によりチタン材の試料を作製し、評価した。1.チタン材の作製 チタン材を製造するための素材として、実験室レベルで原料を融解および凝固して得たチタンインゴット、および市販のチタンインゴットを用意した。これらのチタンインゴットは、製造するべきチタン材の母材に対応する。表1に、用意したチタン材の化学組成を示す。素材A〜Cは、本発明のチタン材における母材の要件を満たす。素材D〜Fは、本発明のチタン材における母材の要件を満たさない。

これらのインゴットに対して、熱間圧延、冷間圧延、および焼鈍を施し、さらに、冷間圧延により、0.1mmの厚さを有するチタン板に仕上げた。このチタン板の両面(セパレータ5a、5bのアノード側、およびカソード側に対応)に、幅2mm、深さ1mmの溝状のガス流路を、プレス加工により形成し、セパレータとして用いることができる形態にした。このチタン板に対して、以下に説明する各種の表面処理を施した。

まず、すべてのチタン板について、表面に突起を形成する目的で酸洗をした。表2に、酸洗の条件を示す。その後、このチタン板表面のRaを測定した。

続いて、チタン酸化皮膜に導電性を付与するため酸溶液による処理(以下、「導電性表面処理」という。)を行った。表3に、導電性表面処理の条件を示す。条件(1)の導電性表面処理時のみ、電解を行った。表3に示す電流密度は、この電解時のものである。条件(1)〜(4)のいずれの導電性表面処理によっても、チタン板表面のチタン酸化皮膜が導電性を有することが確認された。その後、白金族元素部の面積率を、後述の方法により、測定した。

続いて、チタン酸化皮膜を安定化するための処理として、これらのチタン板に対して、大気中400℃で、5分間の加熱処理を施した。その後、一部のチタン板を除き、チタン酸化皮膜の表面に、種々の方法により、導電性炭素材を被覆して、炭素層を形成した。

このようにして得られたチタン材について、初期の接触抵抗、発電運転後の接触抵抗、およびチタン酸化皮膜に対する炭素層の密着性を評価した。表4に、チタン材の作製条件、および評価結果を示す。

表4を参照して、各チタン材について、炭素層の形成方法を説明する。 本発明例1では、ブロック状の黒鉛(新日本テクノカーボン(株)製 直径10mm d002=3.365Å)を、チタン材の表面に機械的に擦り付けて、黒鉛層を形成した。

本発明例2および7、ならびに比較例8では、結着剤として、PTFEディスパージョン溶液(ダイキン(株)製 PTFEディスパージョン D1)を純水で1/15に希釈したものを、チタン材の表面に塗布し、乾燥することにより、結着剤の塗膜を形成し、この塗膜の上に、上述のブロック状の黒鉛を機械的に擦り付けて、黒鉛層を形成した。

本発明例3、5、6および9、ならびに比較例4、5および7では、神港精機(株)製の真空蒸着装置AAH−C1080SBを用いて、チタン材の表面に対して、20分間、炭素の真空蒸着を行った。これにより、厚さ150nmの炭素皮膜を得た。

本発明例4および8、ならびに比較例6および9では、表面に、(株)プラズマイオンアシストによる低エネルギープラズマ処理により、導電性DLC(LR−DLC)を、約200nmの厚さで形成した。

比較例1〜3では、炭素層を形成しなかった。したがって、比較例1〜3のチタン材の最表層部は、導電性を有するチタン酸化皮膜、または白金族元素部であった。

2.チタン材の評価 (1)白金族元素部の面積率の測定方法 導電性表面処理を行った後のチタン板の表面について、FE−SEMを用いた反射電子組成像を得た。この反射電子組成像を、画像処理(二値化)によりモノクロ化し、白の部分(二値化する前の像で、明るく観察された部分)を、白金族元素部として、その面積率(%)を算出した。

(2)接触抵抗の測定方法 図3に模式的に示す装置を用いて、接触抵抗を測定した。具体的には、まず、作製したチタン材(以下、「チタンセパレータ」という。)を、ガス拡散層(図1Bのアノード3、およびカソード4)に使用される面積1cm2のカーボンペーパー(東レ(株)製 TGP−H−90)で狭持し、これを金めっきした電極で挟んだ。

次に、この金めっき電極の両端に荷重を加え、この状態で、電極間に一定の電流を流して、このとき生じるカーボンペーパーとチタンセパレータとの間の電圧降下を測定し、この結果に基づいて抵抗値を求めた。抵抗値は、荷重を5kgf/cm2(4.9×105Pa)としたときと、荷重を20kgf/cm2(2.0×106Pa)としたときとのそれぞれについて測定した。得られた抵抗値は、チタンセパレータの両面の接触抵抗を合算した値となるため、これを2で除して、チタンセパレータの片面あたりの接触抵抗値(初期接触抵抗)とした。

次に、初期接触抵抗を測定済みのチタンセパレータを用いて、単セルの固体高分子形燃料電池を作製した。固体高分子形燃料電池を単セルとした理由は、多セルを積層した状態では、積層の状態が評価結果に反映されるためである。固体高分子電解質膜を含む膜電極接合体(MEA)として、(株)東陽テクニカ製PFEC用スタンダードMEAであるFC50−MEA(イオン交換膜として、ナフィオン(登録商標)−1135を使用)を用いた。

この燃料電池に、アノード側燃料用ガスとして、99.9999%の水素ガスを流し、カソード側ガスとして、空気を流した。水素ガス、および空気の燃料電池への導入ガス圧は0.04〜0.20bar(4000〜20000Pa)とした。燃料電池本体は、全体を70±2℃に保温すると共に、燃料電池内部の湿度制御は、入り側露点を70℃とすることで調整した。電池内部の圧力は、約1気圧であった。

この燃料電池を、0.5A/cm2の電流密度で運転した。出力電圧は、運転開始から20〜50時間で最も高くなった。この最も高い電圧に達した後に、1500時間運転を続け、その後、上述した方法により接触抵抗を測定し、発電運転後の接触抵抗とした。

接触抵抗の測定、ならびに燃料電池の運転時における電流および電圧の測定には、デジタルマルチメータ((株)東陽テクニカ製 KEITHLEY 2001)を使用した。

(3)炭素層の密着性の評価 炭素層の密着性を評価するため、ラビング試験、すなわち、チタン板表面を擦ることで皮膜の密着性を評価する試験を行った。一般に、ラビング試験では、溶剤を含浸させた脱脂綿等を試料に接触させることにより、試料の耐溶剤性が評価される。本試験では、溶剤は使用せず、脱脂綿のみで、チタン材の表面を擦った。試験片は、一辺の長さが50mmである正方形の平板とし、試験の荷重を500gf(4.9×104Pa)として10回擦った後に、脱脂綿を観察して炭素層の剥離の有無および程度を目視判定した。

判定基準は以下の通りとした。剥離が顕著なチタン材(表4で「×」としたもの)の表面を観察すると、炭素層が剥離している部分が認められた。 ○(優):剥離なし △(良):剥離わずか ×(不可):剥離顕著

3.評価結果 母材の組成、および炭素層の有無に関して、比較例1〜5のチタン材は、下記の点で、本発明の要件を満たさなかった。比較例1のチタン材は、母材が白金族元素および希土類元素を実質的に含有しない点と、炭素層が形成されていない点とにおいて、本発明の要件を満たさなかった。比較例2のチタン材は、母材が希土類元素を実質的に含有しない点と、炭素層が形成されていない点とにおいて、本発明の要件を満たさなかった。比較例3のチタン材は、母材の白金族元素の含有率が本発明で規定する範囲より低い点と、炭素層が形成されていない点とにおいて、本発明の要件を満たさなかった。比較例4のチタン材は、母材が白金族元素および希土類元素を実質的に含有しない点において、本発明の要件を満たさなかった。比較例5のチタン材は、母材が希土類元素を実質的に含有しない点において、本発明の要件を満たさなかった。

比較例のチタン材は、いずれも、白金族元素部の面積率が5%未満であり、本発明の要件を満たさなかった。

比較例1〜9のチタン材では、初期の接触抵抗は低かったが、発電運転後の接触抵抗は、初期の接触抵抗に比して大幅に高くなっていた。比較例1〜3のチタン材は、炭素層を有しないことにより、発電運転によりチタン酸化皮膜の表面が腐食して、接触抵抗が上昇したものと考えられる。

比較例4〜9のチタン材は、チタン酸化皮膜に対する炭素層の密着性が低く、これにより、燃料電池のセルにセパレータとして組み付ける際の応力により、炭素層に欠損が生じて、発電運転によるチタン酸化皮膜表面の腐食を十分に抑制できなかったと考えられる。

比較例4と本発明例3、5および6とを対比すると、比較例4のチタン材で炭素層の密着性が低いのは、母材である素材Dが、実質的に白金族元素を含有していないことに関係していることがわかる。換言すれば、母材に含有される白金族元素は、チタン酸化皮膜に対する炭素層の密着性を高くする効果を有することがわかる。

比較例5と本発明例3、5および6とを対比すると、比較例5のチタン材で炭素層の密着性が低いのは、母材である素材Eが、実質的に希土類元素を含有していないことに関係していることがわかる。これらの密着性の差から、母材に含有される希土類元素は、白金族元素がチタン酸化皮膜に対する炭素層の密着性を高くする効果を高める役割を果たすと考えられる。また、比較例5のチタン材で、発電運転後の接触抵抗が高くなったのは、母材が希土類元素を含有していないことにより、白金族元素が母材に耐食性を付与する効果が十分に高められなかったことにもよると考えられる。

比較例6と本発明例4とを対比すると、比較例6のチタン材で炭素層との密着性が低いのは、白金族元素部の面積率が5%未満であることに関係していることがわかる。これらのチタン材では、いずれも、同じ方法によりDLCが形成されており、炭素層の形成方法に差はない。これは、母材が白金族元素と希土類元素を十分含有していても、導電性表面処理の方法により、白金族元素の析出量が少なくなると、密着性を高めることができないことを意味する。

比較例7と本発明例6とを対比すると、比較例7のチタン材で炭素層との密着性が低いのは、白金族元素部の面積率が5%未満であることに関係していることがわかる。これらのチタン材では、いずれも、同じ条件の真空蒸着により炭素皮膜が形成されており、炭素層の形成方法に差はない。比較例6と本発明例4との対比結果を併せると、炭素層の形成方法が異なっても、白金族元素部の面積率が5%未満になると密着性が低くなるという傾向があるといえる。

比較例6と比較例9とを対比すると、比較例9のチタン材で発電後の接触抵抗が高いのは、酸洗後のRaが0.1μmと低いことに関係していることがわかる。比較例8のチタン材でも、酸洗後のRaは0.3μmと低く、発電後の接触抵抗は高い。発電後の接触抵抗を高くするためには、酸洗後のRaが高いことが有利であるといえる。

本発明例1〜9のチタン材では、いずれも、初期および発電運転後ともに、低い接触抵抗を示し、チタン酸化皮膜に対する炭素層の密着性は高かった。

本発明例1のチタン材では、密着性試験の結果、炭素層のわずかな剥離が認められ、本発明例2〜6のチタン材に比して、炭素層の密着性がわずかに劣っていた。すなわち、結着剤を用いずに黒鉛を擦り付けて得た黒鉛層(炭素層)は、結着剤を用いて黒鉛を擦り付けて得た黒鉛層、真空蒸着により得た炭素層、および低エネルギープラズマ処理により得たDLC層に比して、密着性が劣っていた。しかし、本発明例1〜9の接触抵抗の値は、互いにほぼ同じであり、本発明例1と本発明例2〜9との密着性の差は、接触抵抗の値に影響を与えていないといえる。

表4の総合評価の欄に示す符号の意味は、以下の通りである。 ○(優):燃料電池のセパレータとして使用可能な特性を有する。 ×(不可):燃料電池のセパレータとして使用可能な特性を有さない。 本発明例の1〜9のチタン材は、いずれも、燃料電池のセパレータとして使用可能な特性を有していたが、比較例1〜9のチタン材は、いずれも、このような特性を有していなかった。

5a、5b:セパレータ、 11:母材、 12:チタン酸化皮膜、 12A:白金族元素部、 13:炭素層、 14導電性炭素材

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