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膜電極接合体、燃料電池、及び電解質膜の製造方法

阅读:343发布:2024-01-11

专利汇可以提供膜電極接合体、燃料電池、及び電解質膜の製造方法专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且,下面是膜電極接合体、燃料電池、及び電解質膜の製造方法专利的具体信息内容。

燃料が供給されるアノード電極と、 酸化剤としての酸素が無加湿で供給されるカソード電極と、 前記アノード電極と前記カソード電極間に設けられた電解質膜と を備える燃料電池に用いられる膜電極接合体であって、 前記電解質膜において、 少なくとも固体高分子膜を基材とする膜本体を備え、 前記膜本体は、 プロトンを電導するイオン交換基を含む親部と、疎水性材料で形成された疎水部とを有し、 前記親水部は、前記膜本体の前記アノード電極側表面から前記カソード電極側表面に連通して前記アノード電極側表面から前記カソード電極側表面に向かって先細形状に形成されている ことを特徴とする膜電極接合体。燃料が供給されるアノード電極と、 酸化剤としての酸素が加湿して供給されるカソード電極と、 前記アノード電極と前記カソード電極間に設けられた電解質膜と を備える燃料電池に用いられる膜電極接合体であって、 前記電解質膜において、 少なくとも固体高分子膜を基材とする膜本体を備え、 前記膜本体は、 プロトンを電導するイオン交換基を含む親水部と、疎水性材料で形成された疎水部とを有し、 前記親水部は、前記膜本体の前記カソード電極側表面から前記アノード電極側表面に連通して前記カソード電極側表面から前記アノード電極側表面に向かって先細形状に形成されている ことを特徴とする膜電極接合体。前記疎水部は前記親水部を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の膜電極接合体。前記疎水部は、格子状に形成されていることを特徴とする請求項3記載の膜電極接合体。前記膜本体の前記アノード電極側表面及び前記カソード電極側表面の少なくともいずれか一方の少なくとも疎水部の表面にイオン交換基を含む表面層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜電極接合体を備えたことを特徴とする燃料電池。燃料電池に用いられる電解質膜の製造方法において、 疎水性材料で形成された膜本体の一部に加速電圧90kV〜200kVで電子ビームを照射する工程と、 前記膜本体の一側表面の少なくともいずれか一方の表面に加速電圧40kV〜50kVで電子ビームを照射する工程と、 前記膜本体にスチレンモノマーをグラフト重合する工程と、 プロトンを電導するイオン交換基を導入する工程と を備え、 前記イオン交換基を含む親水部を前記膜本体に形成することを特徴とする電解質膜の製造方法。

说明书全文

本発明は、電解質膜、膜電極接合体、燃料電池、及び電解質膜の製造方法に関する。

燃料電池は、素と酸素を化学反応させて電気を発電する装置であり、エネルギー効率が高く、環境汚染物質をほとんど排出しないので、地球環境に配慮した新しい発電システムとして、さらなる普及が期待されている。燃料電池としては、燃料ガスが供給されるアノード電極と、酸化剤ガスが供給されるカソード電極と、各電極間に設けられ、アノード電極からカソード電極へプロトンを電導するイオン交換基を含む導電性高分子材料からなる電解質膜とを備えた燃料電池が開示されている(例えば、特許文献1)。なお、燃料及び酸化剤は、ガスに限らず液体で供給される場合もある。

上記特許文献1に係る燃料電池の場合、電解質膜はカソード電極側のイオン交換基の濃度がアノード電極側よりも高く設定されている。これにより、特許文献1に係る燃料電池は、フラッディングを抑制することができる、という効果が得られる。フラッディングとは、発電能を高めようとすると、カソード電極側の水が過剰に生成され、結果的に発電性能が低下してしまう現象をいう。特許文献1に係る燃料電池は、カソード電極側に生成されプロトンの移動を阻害する自由水をカソード電極側のイオン交換基に結合水として取り込むことにより、プロトンの電導経路をより多く確保することができる。

特開2010−108886号公報

しかしながら上記特許文献1では、カソード電極側のイオン交換基が自由水を結合水として取り込むことにより、膨潤により変形するので、電解質膜がカソード電極から剥離してしまい、結果として燃料電池の性能を低下させてしまうという問題があった。

そこで本発明は、膨潤による変形を防止することができる電解質膜、膜電極接合体、燃料電池、及び電解質膜の製造方法を提供することを目的とする。

本発明の電解質膜は、少なくとも固体高分子膜を基材とする膜本体を備え、前記膜本体は、プロトンを電導するイオン交換基を含む親水部と、疎水性材料で形成された疎水部とを有することを特徴とする。

本発明によれば、電解質膜は、親水部が水を含んでも疎水部が親水部の変形を抑制するので、膨潤による変形を防止することができる。

第1実施形態に係る燃料電池の全体構成を示す模式図である。

第1実施形態に係る電解質膜の構成を示す図であり、図2Aは斜視図、図2Bは中央における横断面図である。

第1実施形態に係る電解質膜の製造方法を段階的に示す模式図であり、図3Aは量子ビームを照射する前、図3Bは量子ビームを照射してラジカルを生成した状態、図3Cはグラフト鎖を生成した状態、図3Dはスルホン酸基を導入した状態を示す図である。

実際に生成した電解質膜の表面のレーザー顕微鏡写真であり、図4Aは膜本体の一側表面、図4Bは膜本体の他側表面である。

第1実施形態の変形例に係る電解質膜の構成を示す図であり、図5Aは斜視図、図5Bは中央における横断面図である。

第2実施形態に係る電解質膜の構成を示す図であり、図6Aは斜視図、図6Bは中央における横断面図である。

本発明に係る実施例1の電流密度と出力電圧の関係、及び電流密度と出力密度の関係を調べた結果を示すグラフである。

本発明に係る実施例2の電流密度と出力電圧の関係、及び電流密度と出力密度の関係を調べた結果を示すグラフである。

本発明に係る実施例3の電流密度と出力電圧の関係、及び電流密度と出力密度の関係を調べた結果を示すグラフである。

本発明に係る実施例1の電解質膜におけるメタノール透過度を調べる実験装置を模式的に示す斜視図である。

計算により得られたエネルギー付与分布曲線(ブラッグカーブ)であり、図11AはHe、図11BはC,N,Ne,Si,Ar,Fe,Kr,Xeの曲線である。

各種イオン照射によって生じたラジカル収量と深さ方向の関係を示すグラフであり、図12AはHe、図12BはC,N,Ne,Si,Ar,Fe,Kr,Xeのグラフである。

本発明に係る実施例4及び実施例5の電解質膜においてガスクロスオーバーを測定した結果を示すグラフである。

本発明に係る実施例4及び実施例5の電解質膜において発電性能の評価を行った結果を示すグラフである。

電子ビームのエネルギー吸収特性を示すグラフである。

本発明に係る実施例6の電解質膜のレーザー顕微鏡像であり、図16Aは斜視像、図16Bは平面像である。

本発明に係る実施例7の電解質膜のレーザー顕微鏡像であり、図17Aは斜視像、図17Bは平面像である。

本発明に係る実施例8の電解質膜のレーザー顕微鏡像であり、図18Aは斜視像、図18Bは平面像である。

本発明に係る実施例6の電解質膜の平面顕微鏡像であり、図19AはSEM像、図19BはカリウムマッピングのSEM−EDX像、図19Cは硫黄マッピングのSEM−EDX像、図19Dはフッ素マッピングのSEM−EDX像である。

本発明に係る実施例7の電解質膜の平面顕微鏡像であり、図20AはSEM像、図20BはカリウムマッピングのSEM−EDX像、図20Cは硫黄マッピングのSEM−EDX像、図20Dはフッ素マッピングのSEM−EDX像である。

本発明に係る実施例6の電解質膜の断面顕微鏡像であり、図21AはSEM像、図21BはカリウムマッピングのSEM−EDX像、図21Cは硫黄マッピングのSEM−EDX像、図21Dはフッ素マッピングのSEM−EDX像である。

本発明に係る実施例6の電解質膜の平面SEM像である。

本発明に係る実施例6の電解質膜の線分析を行った結果を示す図であり、図23Aは図22における直線123A、図23Bは図22における直線123B、図23Cは図22における直線123Cにおける分析結果である。

本発明に係る実施例7の電解質膜の断面顕微鏡像であり、図24AはSEM像、図24BはカリウムマッピングのSEM−EDX像、図24Cは硫黄マッピングのSEM−EDX像、図24Dはフッ素マッピングのSEM−EDX像である。

本発明に係る実施例7の電解質膜の平面SEM像である。

本発明に係る実施例7の電解質膜の線分析を行った結果を示す図であり、図26Aは図25における直線126A、図26Bは図25における直線126B、図26Cは図25における直線126Cにおける分析結果である。

本発明に係る実施例7の電流密度と出力電圧の関係、及び電流密度と出力密度の関係を調べた結果を示すグラフである。

本発明に係る実施例9の電解質膜のレーザー顕微鏡像であり、図28Aは斜視像、図28Bは平面像である。

本発明に係る実施例10の電解質膜のレーザー顕微鏡像であり、図29Aは斜視像、図29Bは平面像である。

本発明の電解質膜の製造に用いる量子ビームを照射する照射装置の変形例を示す模式図である。

以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。 (1)第1実施形態 図1に示す燃料電池1は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)2と、当該膜電極接合体2の両側に配置される一対のセパレータ6、7とを有するセルSを1個、又はセルSを複数個、例えば数10〜数百個直列に接続した積層体(スタック)を備える。

膜電極接合体2は、アノード電極3と、カソード電極4と、アノード電極3とカソード電極4間に設けられた電解質膜5とを有する。アノード電極3とカソード電極4とは、図示しないが、電解質膜5側に配置された触媒層と、当該触媒層に積層されたガス拡散層とからなる。触媒層としては、例えばカーボン粒子に白金を担持させたものやその合金材料などを用いることができる。ガス拡散層としては、カーボンクロスや、カーボンペーパーを用いることができる。

一方のセパレータ6はアノード電極3に燃料を供給し、他方のセパレータ7はカソード電極4に酸化剤を供給する。燃料としては、水素やメタノール、エタノール、グルコースなどを用いることができる。酸化剤としては、酸素を用いることができる。アノード電極3とカソード電極4とは、外部回路9を通じて外部負荷8(例えば、電球などの照明器具)に電気的に接続している。燃料及び酸化剤は、両方が液体又は気体のいずれでもよいし、いずれか一方が液体、他方が気体であってもよい。

電解質膜5は、図2に示すように、少なくとも疎水性を有する材料で構成された膜本体11を備え、当該膜本体11内に形成された親水部12と、親水部12を囲むように配置された疎水部13とを有する。膜本体11は、少なくとも固体高分子膜を基材とし、特に限定されるものではないが、例えば、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PVdF(Polyvinylidenefluoride)、FEP(Tetrafluoroethylene - Hexafluoropropylene Copolymer)、PFA(Tetrafluoroethylene - Perfluoroalkylvinylether Copolymer)、ETFE(Tetrafluoroethylene - Ethylene Copolymer)などのフッ素系高分子材料及びそれらの架橋体を用いることができる。また、膜本体11は、構造異性体を含む、ポリスチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルイミドなどの炭化水素系高分子材料及びそれらの架橋体を用いることができる。さらに膜本体11は、フッ素系高分子や炭化水素系高分子のブレンド体、分子複合体、それぞれの高分子のブレンド体、分子複合体で形成してもよい。

親水部12は、プロトンを電導するイオン交換基で構成され、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通するように形成されている。膜本体11は、一側表面11Aをアノード電極3に接着させ、他側表面11Bをカソード電極4に接着させてもよいし、一側表面11Aをカソード電極4に接着させ、他側表面11Bをアノード電極3に接着させてもよい。

本実施形態の場合、親水部12は、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに伸びる柱状に形成されている。この場合、親水部12は一側表面11A及び他側表面11Bに平行な断面において四角形状に形成されている。また、膜本体11には、複数の親水部12が縦横に規則的に配置され、各親水部12同士の間には疎水部13が形成されている。膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにおいて、疎水部13は格子状に形成されている。親水部12の大きさは、適宜、設定することができるが、例えば、四角形とした場合、1辺が10nm又はそれ以下とすることが好ましい。また、単位面積(1μm2)あたりの親水部12の数は、数百個程度とすることもでき、1辺が10nm以下の親水部を単位面積(cm2)あたり、数十万個(X*105個)程度形成することが膜本体11の強度維持の観点からも好ましい。

本図において親水部12は一側表面11A及び他側表面11Bに平行な断面における断面形状が四角形状である場合について例示したが、本発明はこれに限らず、上記断面形状が円形状や三角形、五角形以上の多角形状に形成してもよい。

次に、電解質膜5の製造方法について、図3を参照して説明する。まず、図3Aに示す高分子材料で構成された膜本体11の高分子鎖22に量子ビームを照射し、高分子鎖22の一部を切断しラジカル23を生成する(図3B)。次いでスチレンモノマーを含有する反応液に膜本体11を浸漬させることにより、ラジカル23が反応の活性種となりスチレンモノマーとラジカル23が結合し、グラフト鎖24を生成する(図3C)。なお、反応液は、スチレンモノマーに加え、ジビニルベンゼンを含有させ、共重合とすることもできる。その後、イオン交換基としてのスルホン酸基25を導入することにより、親水部12を形成して電解質膜5を得ることができる(図3D)。

本実施形態の場合、親水部12を規則的に配置し、疎水部13を格子状に形成するには、量子ビームを膜本体11に対し選択的に照射すればよい。例えば、貫通孔を複数有するマスク(図示しない)を膜本体11の一側表面11Aと量子ビームの光源の間に配置し、当該マスクを通じて量子ビームを膜本体11の一側表面11Aから照射する。そうすると当該マスクを通じて量子ビームが照射された膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bへ連通する部分に選択的にラジカル23が生じる。貫通孔を例えば縦横に規則的に配置したマスクを用いることにより、膜本体11の一側表面11Aに縦横に規則的にラジカル23を生成すると共に、ラジカル23が生成されない領域(疎水部13)を格子状に形成することができる。マスクは、例えば、SUSやNi等で形成された、目の粗さが200メッシュ〜500メッシュの網を用いることができる。このようにして縦横に規則的に生成されたラジカル23に対し、上記した手順でグラフト重合することにより、膜本体11に親水部12を縦横に規則的に形成すると共に、当該親水部12を囲むように格子状に疎水部13を形成することができる。

量子ビームとしては、例えば、電子ビーム、イオンビーム、中性子ビーム、γ線を用いることができる。電子ビームの照射条件は、特に限定されるものではないが、例えば、加速電圧90kV〜200kV、電流値100μA、1pass、ステージ移動速度5cm/sec、照射線量 20uC/cm2、N2雰囲気とすることができる。イオンビームの照射条件は、特に限定されるものではないが、例えば、エネルギー 6MeV/u、照射線量 1.0×1010ions/cm2、フラックス2.45×108[ions/sec・cm2]、真空中(5×10-4Pa以下)とすることができる。

上記した手順で製造された電解質膜5を図4に示す。この電解質膜5は、フッ素系高分子のFEPで形成された膜本体11に、量子ビームとして電子ビーム(EB-ENGINE)を用い、加速電圧90kV、電流値100μA、1pass、ステージ移動速度5cm/sec、照射線量20uC/cm2、N2雰囲気で、400メッシュのマスク(SUS316)を用いて照射した。本図から、親水部12が膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bへ連通して形成されていることが確認できる。なお親水部12は、量子ビームを少なくとも2回に分けて、すなわち膜本体11の一側表面11Aから、及び他側表面11Bから照射することにより、形成することとしてもよい。

上記のように構成された燃料電池1において、アノード電極3に燃料を供給すると、燃料に含まれる水素原子は、プロトン(H+)と電子(e)に分離される。プロトンは電解質膜5を通ってカソード電極4へ移動する。一方、電子は、セパレータ6、外部回路9(外部負荷8)、セパレータ7を通じてカソード電極4へ移動する。カソード電極4では、供給された酸化剤に含まれる酸素と、アノード電極3から移動したプロトン及び電子とが結合して水が生成される。

これらの反応を電気化学式で表すと、アノード電極3ではH2→2H++2e、カソード電極4では2H++1/2O2+2e→H2O、全体としてH2+1/2O2→H2Oとなる。

電解質膜5は、親水部12が水を含んでも疎水部が親水部の変形を抑制するので、膨潤による変形を防止することができる。 本実施形態に係る電解質膜5は、親水部12の周囲が疎水性材料で構成された疎水部13で囲まれているので、親水部12の変形をより確実に抑制することができる。そうすると、当該電解質膜5を設けた膜電極接合体2は、アノード電極3と電解質膜5、及び、カソード電極4と電解質膜5の間において剥離が生じるのを防ぐことができる。したがって、当該電解質膜5を設けた膜電極接合体2を備えた燃料電池1は、継続的に高い発電性能を得ることができる。

(変形例) 上記実施形態では、親水部12は、柱状である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図5に示すように、電解質膜50は、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに向かって先細形状となるように親水部51を形成してもよい。本変形例の場合、親水部51は、一側表面11A及び他側表面11Bに直角な断面における断面形状が台形状に形成されている。この場合、一側表面11A及び他側表面11Bに平行な断面における親水部51の断面形状は円形状である。

このように膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに向かって先細形状となるように親水部51を形成することにより、膜本体11の膜厚方向にイオン交換基の濃度を制御することができるので、電気化学反応により生成された水を効率的に取り込み、より確実にプロトンの電導経路を確保することができる。膜本体11の親水部51の周囲には疎水部52が形成されている。本明細書においては、プロトンの移動方向に対しイオン交換基の濃度が勾配を有する親水部51が形成された電解質膜50を、以下、傾斜機能付電解質膜と呼ぶ場合もある。

このような先細形状の親水部51は、例えば、量子ビームとして電子ビームやイオンビームを用いることにより形成することができる。すなわち、電子ビームの場合、加速電圧や照射線量などを制御することにより、電子ビームの到達点を膜本体11の深さ方向に制御することができるので、所望の形状に親水部51を形成することができる。

また、親水部51は、本図に示すように一側表面11A及び他側表面11Bに平行な断面における親水部51の断面形状が円形状である必要はなく、三角形や四角形以上の多角形でもよい。

また、親水部51は、一側表面11A及び他側表面11Bに直角な断面における断面形状が台形状に形成されている必要はなく、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに向かって、外径がステップ状に変化するように形成してもよい。

なお、図5に示す電解質膜50において、カソード電極4に酸素を無加湿で供給する場合は、膜本体11の一側表面11Aをアノード電極3側とし親水部51が先細となっている他側表面11Bをカソード電極4側に配置するのが好ましく、カソード電極4に酸素を加湿して供給する場合は逆に一側表面11Aをカソード電極4側とし親水部51が先細となっている他側表面11Bをアノード電極3側に配置するのが好ましい。

(2)第2実施形態 次に第2実施形態に係る電解質膜について図面を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に係る電解質膜と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。本実施形態に係る電解質膜は、図1に示す燃料電池に適用することができる。燃料電池の構成については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。

図6に示す電解質膜55は、膜本体11内に形成された親水部12と、親水部12を囲むように配置された疎水部13とを有する。さらに電解質膜55は、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにそれぞれイオン交換基を含む表面層56A、56Bが設けられている。

上記第1実施形態に係る電解質膜5の場合、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにおいて親水部12は、親水部にあたる高分子の自由体積がイオン交換基を導入した分子により増加するため、疎水部13より表面から出ている。親水部12を形成するために膜本体11に照射する量子ビームの線量を多くすると、親水部12と疎水部13の間の高低差も大きくなる。親水部12と疎水部13の間の高低差が大きいと、アノード電極3及びカソード電極4との接着性が悪化するため、結果として発電性能が低下するおそれがある。

これに対し本実施形態に係る電解質膜55は、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにそれぞれイオン交換基を含む表面層56A、56Bを設けた。これにより、疎水部13にあたる高分子の自由体積が、イオン交換基を導入した分子により強制的に増加するため、親水部12と疎水部13の間の高低差を小さくすることができる。表面層56A、56Bは膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bから深さ方向に数ミクロン程度の厚さを有する。

表面層56A、56Bは、上記第1実施形態に係る電解質膜5の膜本体11の一側表面11A及び他側表面11B全体を改質することにより形成することができる。表面改質の方法としては、まず、親水部12が形成された電解質膜5の膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bに量子ビームを照射し、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bから深さ方向へ数ミクロンの領域における高分子鎖の一部を切断しラジカルを生成する。

この場合、量子ビームとして低エネルギーのビーム、例えば電子ビームやイオンビームを用いることができる。このように低エネルギーのビームを照射することにより、膜本体11の表面から深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成することができる。また、膜本体11の表面にラジカルを生成する方法として、コロナ処理やプラズマ処理を用いることができる。

次いでスチレンモノマーを含有する反応液に膜本体11を浸漬させることにより、グラフト鎖を生成する。その後、スルホン酸基を導入することにより、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにそれぞれ表面層56A、56Bを形成して、本実施形態に係る電解質膜55を得ることができる。

表面改質の方法として電子ビームを用いる場合の電子ビームの照射条件は、特に限定されるものではないが、例えば、加速電圧40kV〜50kV、電流値100μA、1pass、ステージ移動速度5cm/sec、照射線量 20uC/cm2、N2雰囲気とすることができる。

上記のように本実施形態に係る電解質膜55は、一側表面11A及び他側表面11Bにそれぞれイオン交換基を含む表面層56A、56Bを設けたことにより、親水部12と疎水部13の間の高低差を数ミクロン、具体的には5.0μm程度に小さくすることができる。したがって電解質膜55は、アノード電極及びカソード電極により確実に接着することができるので、燃料電池の発電性能をより向上することができる。

上記製造方法では、膜本体11に親水部12を形成した後に表面層56A、56Bを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにそれぞれ表面層56A、56Bを形成した後に、親水部12を形成することとしてもよい。

また本実施形態に係る電解質膜55は、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する工程、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する工程、スチレンモノマーを含有する反応液に膜本体11を浸漬させる工程、スルホン酸基を導入する工程を順に行うこととしてもよい。さらに、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する工程、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する工程は、順序を逆にしてもよい。

量子ビームを用いてラジカルを生成する場合、筒状の領域にラジカルを生成する工程、膜本体11の一側表面11Aから深さ方向へ数ミクロンの領域にラジカルを生成する工程、及び膜本体11の他側表面11Bから深さ方向へ数ミクロンの領域にラジカルを生成する工程の、合計3回量子ビームを照射する。ラジカルを生成する順序は特に限定されない。

またプラズマ処理を用いて一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する場合、一側表面11A及び他側表面11Bを同時に処理することができる。

本実施形態の場合、表面層56A、56Bは一側表面11A及び他側表面11Bに形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、一側表面11A及び他側表面11Bのうちいずれか一方の表面にのみ形成することとしてもよい。

また表面層56A、56Bは一側表面11A及び他側表面11B全体を改質することにより形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、一側表面11A及び/又は他側表面11Bの少なくとも疎水部13の表面を改質することにより形成してもよい。この場合、親水部12を形成する際に用いるマスクに対し開き目と線を反転させたマスクを用いて、親水部12が形成された電解質膜5の膜本体11の一側表面11A及び/又は他側表面11Bに量子ビームを照射する。そうすると膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bから深さ方向へ数ミクロンの領域における高分子鎖の一部を切断しラジカルを生成することにより、疎水部13のみに表面層を形成することができる。これにより、疎水部13にあたる高分子の自由体積が、イオン交換基を導入した分子により強制的に増加するため、親水部12と疎水部13の間の高低差を小さくすることができる。

本実施形態に係る電解質膜55は、膜本体11内に形成された親水部12と、親水部12を囲むように配置された疎水部13とを有するから、燃料電池に適用した場合、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。

さらに、本実施形態に係る電解質膜55は、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bにそれぞれイオン交換基を含む表面層56A、56Bを設けたことにより、親水部12と疎水部13の間の高低差を小さくすることができる。これにより、電解質膜55は、アノード電極3及びカソード電極4との接着性が向上するので、燃料電池の発電性能をより向上することができる。

(3)実施例 (3−1)実施例1〜実施例3 次に、本発明に係る実施例について説明する。以下において、グラフト率(X[%])は、100(W2−W1)/W1で表される。ここでW1は親水部形成前の乾燥状態の電解質膜の重量、W2は親水部形成後の乾燥状態の電解質膜の重量である。

グラフト膜厚は、グラフト後、24時間真空乾燥後の膜厚をマイクロメータで測定した。含水膜厚は、超純水に24時間浸漬後の膜厚をマイクロメータで測定した。

イオン交換容量(Ion Exchange Capacity, IEC[meq/g])は、IEC=[n(酸性基)obs]/Wdで表される。ここで[n(酸性基)obs]は電解質膜の酸性基量(mM)、Wdは電解質膜の乾燥状態の重量である。[n(酸性基)obs]は、中和滴定法により算出した。

実施例1は、厚さが50μmのFEPで形成された膜本体11に、量子ビームとしてSiイオンビーム(HIMAC施設)を用い、エネルギー6MeV/unit、照射線量1.0×1010[ions/cm2]、フラックス2.68×108[ions/S・cm2]、使用領域0-50μm、真空中(5×10-4Pa以下)で、200メッシュのマスク(Ni)を用いて照射した。なお、200メッシュのマスクは、開き目77.0μm、線幅50μm、平織を用いた。実施例1に対し、マスクを用いずに同じ条件で照射した試料を比較例1とした。グラフト条件は、全ての実施例においてスチレンモノマーを利用し、液相法により60℃、24時間とした。

実施例2は、厚さが25μmのFEPで形成された膜本体11に、量子ビームとして電子ビーム(EB-ENGINE)を用い、加速電圧90kV、電流値100μA、1pass、ステージ移動速度5cm/sec、照射線量20uC/cm2、使用領域0-25μm、N2雰囲気で、500メッシュのマスク(SUS316)を用いて照射した。なお、500メッシュのマスクは、開き目25.8μm、線幅25μm、綾織を用いた。実施例2に対し、マスクを用いずに同じ条件で照射した試料を比較例2とした。

実施例3は、厚さが25μmのFEPで形成された膜本体11に、量子ビームとしてArイオンビーム(HIMAC施設)を用い、エネルギー 6MeV/u、照射線量1.0×1010ions/cm2、フラックス2.45×108[ions/sec・cm2]、使用領域0-50μm、真空中(5×10-4Pa以下)で、200メッシュのマスク(Ni)を用いて照射した。なお、200メッシュのマスクは、開き目77.0μm、線幅50μm、平織を用いた。実施例3に対し、マスクを用いずに同じ条件で照射した試料を比較例3とした。

本実施例において得られた電解質膜のグラフト率、グラフト膜厚、含水膜厚、及び理論IECを表1に示す。表1に示す通り、電解質膜5の膜本体11におけるグラフト率は、実施例が比較例より40〜60%程度少ない。実施例ではマスクを通じて量子ビームを膜本体11表面に照射して、選択的に親水部12を形成したのに対し、比較例ではマスクを用いずに量子ビームを照射して膜本体11表面全体に親水部12を形成したので、グラフト率に差が生じている。

(発電特性) 得られた電解質膜5に対し、電流密度と出力電圧の関係、及び電流密度と出力密度の関係を調べた結果を示す。実施例1及び比較例1における発電条件は、温度30℃、燃料としてメタノール、酸化剤として酸素を用いた。メタノールは濃度5%wt、3ml/minにてアノード電極3に供給した。酸素は50sccm(8.45×10-2 Pa・m3/s)、0.2MPaにてカソード電極4に供給した。アノード電極3の触媒層は、Ptが1mg/cm2、Ruが0.5mg/cm2、Pt/Cが20wt%、Ru/Cが10wt%となるようにカーボンペーパーにPt及びRuを塗布して形成した。カソード電極4の触媒層は、Ptが1mg/cm2、Pt/Cが20wt%となるようにカーボンペーパーにPtを塗布して形成した。

実施例2、3及び比較例2、3における発電条件は、温度60℃、燃料として水素、酸化剤として酸素を用いた。水素は16%加湿、酸素は無加湿とし、50sccm(8.45×10-2 Pa・m3/s)、0.2MPaにて供給した。アノード電極3及びカソード電極4は、実施例1及び比較例1と同じとした。

実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を、図7〜9に示す。図7〜図9は、横軸が電流密度(mA/cm2)、縦軸が電圧(V)及び出力密度(mW/cm2)を示している。図7において、32Aが実施例1における出力電圧、31Aが比較例1における出力電圧、32Bが実施例1における出力密度、31Bが比較例1における出力密度の結果である。図8において、36Aが実施例2における出力電圧、35Aが比較例2における出力電圧、36Bが実施例2における出力密度、35Bが比較例2における出力密度の結果である。図9において、42Aが実施例3における出力電圧、41Aが比較例3における出力電圧、42Bが実施例3における出力密度、41Bが比較例3における出力密度の結果である。

上記の結果から、実施例及び比較例において出力電圧、出力密度の差が小さいことが確認できた。このことから、本発明に係る実施例は、比較例に比べグラフト率が小さいにも関わらず、グラフト率の高い比較例と同等の発電性能を得られることが確認できた。したがって、本発明に係る実施例では、グラフト率を比較例と同等とした場合、比較例と同等以上の発電性能が得られると予測される。

(メタノール透過度) 次に、電解質膜5に対するメタノールの透過度を調べた結果を示す。電解質膜5は、実施例1及び比較例1と同じもの、及び比較例4としてNafion(登録商標)117の3種を用いた。電解質膜5を図10に示すように、メタノール(5wt%)45と純水46との間に挟み、24時間経過後、及び48時間経過後の純水におけるメタノール濃度を測定した。測定したメタノール濃度は、電解質膜5の膜厚を100μmに換算した。その結果を表2に示す。実施例1に係る電解質膜5では、比較例4(Nafion(登録商標)117)に比べ、透過度が約1/10に低減していることが確認できた。因みに、メタノールが電解質膜5を容易に透過してしまう(以下、「クロスオーバー」という。)と、発電性能が低下するため、クロスオーバーの抑制は、重要な開発課題である。

(3−2)実施例4及び実施例5(傾斜機能付電解質膜) 次にイオンビームによって所定の分布にラジカルを誘起する方法とそれらを利用した傾斜機能付電解質膜50の合成を試みた結果を示す。フッ素系高分子(FEP)に対して、He,C,N,Ne,Si,Ar,Fe,Kr,Xeの各種イオン(6MeV/u)を中エネルギー照射室にて室温真空中(2×10−4Pa以下)照射した。ビームサイズは典型的な場合でφ25mm程度であった。照射対象としての膜本体11は、厚さ25μmのFEPフィルムをSRIM(The Stopping and Range of Ions in Matter)コードによる各種イオンの飛程分の膜厚になるように重ね合わせて、スタック構造とした。SRIM(The Stopping and Range of Ions in Matter)とは、Zielgerが開発したイオンビームの阻止能と飛程を計算する計算ソフトである。

イオンビームを照射した後、電子スピン共鳴(ESR; Electron Spin Resonance)法により、25μm毎のラジカル収量を大気中で測定すると共に、イオンの飛跡方向での空間的なエネルギー付与を利用して生成したラジカルを用いてグラフト反応を行い、傾斜機能付電解質膜50を形成した。図11は、SRIM2011-codeによって計算したエネルギー付与分布曲線(ブッラグカーブ)である。各種イオン照射によって生じたラジカル収量と深さ方向の関係を図12に示す。

図12に示す通り、深さ方向に対するラジカル濃度は、ブラッグ曲線(図11)に概ね従いながら増加し、エネルギーが最も高くなるブラッピーク付近では計算値よりも減少する傾向になることが分かった。これはラジカルの高濃度化による対消滅が原因であると考えられる。また他のイオンに比べて低LET(Linear Energy Transfer)のHe2+を照射した場合は、フルエンスの増加(〜1.0×1011n/cm2)と共にラジカル濃度は比例的に増加するのに対し、Ne10+よりも高LETのイオンを照射した場合はあるフルエンスまでは比例的に、それ以上のフルエンスではラジカル濃度が飽和傾向を示しながら増加することが分かった。なおLETとは、放射線が単位長さあたりに平均して失うエネルギーのことをいう。

次に、傾斜機能付電解質膜50の評価を行った。評価に用いた傾斜機能付電解質膜50は、膜本体11として厚さ12.5μmのFEPフィルム(フロン工業)の薄膜を使用した。モンテカルロシミュレーションにより算出された電子ビームの深度線量分布を基に、超低エネルギー電子線加速器(EB-ENGINE(登録商標), 浜松ホトニクス、大阪大学設置)を利用して、60kVの加速電圧により電子線を照射し、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成した。グラフト条件は、スチレンモノマーを利用し、液相法により60℃、24時間とし、傾斜機能付電解質膜50(実施例4)を作製した。また、加速電圧を110kVとした以外は全て実施例4と同じ条件で、深さ方向にイオン交換基の濃度が勾配を有さない電解質膜5(実施例5)を作製した。

得られた電解質膜5、50に対して、X線光電子分光法(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)による傾斜機能の評価、ガスクロマトグラフィによるガス透過性の評価、及びそれぞれの発電性能の評価を行った。

(XPS測定) XPSによって膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bの化学構造を測定した。その結果、加速電圧が60 kVの電子ビームを照射した電解質膜(実施例4)50は、一側表面11Aにおけるスルホン酸基の付加量が他側表面11Bにおけるスルホン酸基の付加量に対し約4倍であった。このことから電子ビームの線量を変えることにより、一側表面11Aから他側表面11Bに向かってスルホン酸基の付加量が勾配を有する傾斜機能付電解質膜50を形成できることが確認できた。

一方、加速電圧が110kVの電子ビームを照射した電解質膜(実施例5)5は、一側表面11A及び他側表面11Bのスルホン酸基の付加量がほぼ等しいことが確認された。

(ガスクロスオーバー特性) 実施例4及び実施例5に係る電解質膜50、5に対し、酸素ガスを用いてガスクロスオーバーの測定を行った。酸素ガスは、流量200 ml/min、圧力0.2MPaで電解質膜50、5の一側表面11Aに流入させ、他側表面11Bから透過した酸素の濃度を、熱伝導度検出器を用いたガスクロマトグラフィ(TCD−GC;Thermal Conductivity Detector-Gas Chromatography)により測定した。その結果を図13に示す。本図は横軸に経過時間(分)、縦軸に酸素濃度(%)を示し、黒線が実施例4、白線が実施例5の結果を示す。本図から明らかなように、実施例4に係る傾斜機能付電解質膜50の方が、実施例5に係る電解質膜5に比べ高いガスバリア性を有することが確認できた。これは傾斜機能付電解質膜50が、ガスの透過を抑制するより密度の高いアモルファス部を有するためであると考えられる。

(発電特性) 実施例4及び実施例5に係る電解質膜50、5の発電性能の評価を行った。実施例4に係る傾斜機能付電解質膜50は、膜本体11の一側表面11Aをアノード側とし、アノード側からカソード側へイオン交換基としてのスルホン酸基が減少するように配置した場合(以下、「Decrease」という。)、膜本体11の他側表面11Bをアノード側とし、アノード側からカソード側へスルホン酸基が増加するように配置した場合(以下、「Increase」という。)の二通りで評価を行った。発電条件は、温度60℃、燃料として水素、酸化剤として酸素を用いた。水素は16%加湿、酸素は無加湿とし、50sccm(8.45×10-2 Pa・m3/s)、0.2MPaにて供給した。その結果を図14に示す。

本図は横軸が電流密度(mA/cm2)、縦軸が電圧(V)、及び出力密度(mW/cm2)を示し、実線が実施例4のDecrease、白線が実施例4のIncrease、破線が実施例5の結果を示す。本図から明らかなように、実施例4に係る傾斜機能付電解質膜50は、実施例5に係る電解質膜5に比べ高い電力密度が得られることが確認できた。これは先に示したように、傾斜機能付電解質膜50が高いガスバリア性を有することにより、開回路電圧(OCV;Open Circuit Voltage)が増加し、効率的に発電することができるためであると考えられる。また、Decrease構造では、高電流密度で高い発電性能が得られることを確認できた。Decrease構造の場合、カソード側においてスルホン酸基の量が少ないので疎水性が強く、反応によって生じる水が溜まりにくい。したがってDecrease構造では、高電流密度でもフラッディングが抑制され高い発電性能が得られたものと考えられる。

(3−3)実施例6〜実施例8(表面層を備えた電解質膜) 次に表面層56A、56Bを有する電解質膜55の特性を確認した結果を示す。まず、表面層56A、56Bが形成されていない電解質膜(実施例6)5、表面層56A、56Bが形成された電解質膜(実施例7、実施例8)55を準備した。

実施例6は、厚さ50μmのFEPで形成された膜本体11に、量子ビームとしてSiイオンビーム(HIMAC施設)を用い、エネルギー6MeV/unit、フラックス2.68×108[ions/S・cm2]、使用領域0-50μm、真空中(5×10-4Pa以下)で、200メッシュのマスク(Ni)を用いて照射し、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成した。照射線量は比較例1のグラフト率と合わせるため1.0×1011[ions/cm2]とした。グラフト条件は、スチレンモノマーを利用し、液相法により60℃、24時間とした。

また、実施例7及び実施例8は、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する工程、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する工程、スチレンモノマーを含有する反応液に膜本体11を浸漬させる工程、スルホン酸基を導入する工程を順に行い、製造した。

実施例7及び実施例8において膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域にラジカルを生成する際、超低エネルギー電子ビーム(浜松ホトニクスEBエンジン)を用いた。照射条件は電流値100μA、1pass、ステージ移動速度5cm/secとした。

因みに超低エネルギー電子ビームのエネルギー吸収特性を図15に示す。本図は横軸が電子ビームの到達深度(μm)、縦軸が吸収線量(KeV*cm2/g)を示し、加速電圧40kV、 60kV、 70kV、 90kV、 110kVのシミュレーション結果を示す。シミュレーションは「EGS5」を用いた。本図から電子ビームの到達深度を数ミクロン程度に抑えるには、加速電圧が40〜50kV程度であることが好ましいことが予測できる。このことから膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する際の加速電圧は、実施例7の場合50kV、実施例8の場合40kVとした。

実施例7及び実施例8における膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する工程は、実施例6と同様の条件で行った。グラフト条件は、全ての実施例においてスチレンモノマーを利用し、液相法により60℃、24時間とした。上記のように製造された実施例6〜実施例8に係る電解質膜のグラフト率、グラフト膜厚、含水膜厚、及び理論IECを表3に示す。

(レーザー顕微鏡観察) 実施例6〜8に係る電解質膜の表面をレーザー顕微鏡(キーエンスVK9500、倍率:1000倍)にて測定した結果を図16〜図18に示す。

実施例6に係る電解質膜5は、図16に示す通り、親水部12が疎水部13よりも表面から出ており、親水部12と疎水部13の高低差が37.5μmであることが確認できた。

これに対し実施例7及び実施例8に係る電解質膜55は、図17及び図18に示す通り、表面層56A、56Bが形成されていることにより、親水部12と疎水部13の高低差を低減できることが確認できた。

(表面分析) 次に実施例6及び実施例7に係る電解質膜5、55の表面を走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)及びSEM−EDX(EDX;Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、エネルギー分散型X線分光法)を用いて分析を行った結果を示す。その結果を図19及び図20に示す。同図(A)はSEM像であり、同図(B)、(C)、(D)は同図(A)と同じ位置におけるSEM−EDXによるカリウムマッピング、硫黄マッピング、フッ素マッピングを示した結果である。カリウムは水素に置換される元素であり、硫黄はイオン交換基であるスルホン酸を構成する元素そのものである。したがって、カリウムマッピング、硫黄マッピングにおいてはイオン交換基が存在する箇所が明るく示される。フッ素は疎水基に含まれる元素であるから、フッ素マッピングにおいてはイオン交換基が存在しない箇所が明るく示される。

図19(B)、(C)においては親水部12が明るく示され疎水部13が暗く示されているのに対し、図19(D)では明暗が反転している。このことから明らかなように、実施例6に係る電解質膜5は、膜本体11の表面に親水部12と、当該親水部12を囲むように疎水部13とが形成されていることが確認できる。

一方、図20(B)、(C)から明らかなように、実施例7に係る電解質膜55は、表面全体が明るく示されていることから、表面全体にイオン交換基が存在していることが確認できる。このことは、表面にイオン交換基を含む表面層56A、56Bが形成されていることを示している。

(実施例6の断面分析) 次に実施例6に係る電解質膜5の断面をSEM及SEM−EDXを用いて分析を行った結果を示す。分析にあたり、図21に示す通り、電解質膜5の一側表面11A及び他側表面11Bに塩化ビニルシート60を貼り付けて、電解質膜5を塩化ビニルシート60で挟んだ状態で厚さ方向に切断した。同図(A)はSEM像であり、同図(B)、(C)、(D)は同図(A)と同じ位置におけるSEM−EDXによるカリウムマッピング、硫黄マッピング、フッ素マッピングをした結果である。

図21(B)、(C)においては親水部12が明るく示され疎水部13が暗く示されているのに対し、図21(D)では明暗が反転している。このことから明らかなように、実施例6に係る電解質膜5は、親水部12と、疎水部13とが交互に形成されていることが確認できる。

(実施例6の線分析) 次に実施例6に係る電解質膜5の断面についてSEM−EDXを用いて線分析を行った結果を示す。図23Aは図22における直線123A部分、図23Bは図22における直線123B部分、図23Cは図22における直線123C部分の分析結果である。図23Aより、カリウム及び硫黄のいずれも検出されていないので、直線123Aの箇所は疎水部13であることが分かる。図23Bより、カリウム及び硫黄の両方が検出されているので、直線123Bの箇所は親水部12であることが分かる。図23Cより、カリウム及び硫黄の両方が検出された箇所と、検出されない箇所とを有することから、電解質膜5の厚さの中央部分は直線123C方向において親水部12と疎水部13とに分かれていることが分かる。

(実施例7の断面分析) 次に実施例7に係る電解質膜55の断面をSEM及びSEM−EDXを用いて分析を行った結果を示す。分析にあたっては、上記実施例6と同様に電解質膜55を塩化ビニルシート60で挟んだ状態で厚さ方向に切断した。その結果を図24に示す。同図(A)はSEM像であり、同図(B)、(C)、(D)は同図(A)と同じ位置におけるSEM−EDXによるカリウムマッピング、硫黄マッピング、フッ素マッピングをした結果である。

図24(B)、(C)においては親水部12が明るく示され疎水部13が暗く示されていると共に、疎水部13の表面にも薄く明るい部分が示されているのに対し、図24(D)では明暗が反転している。このことから明らかなように、実施例7に係る電解質膜55は、親水部12と、疎水部13とが交互に形成されており、さらに一側表面11A及び他側表面11Bに薄い表面層56A、56Bが形成されていることが確認できる。

(実施例7の線分析) 次に実施例7に係る電解質膜55の断面についてSEM−EDXを用いて線分析を行った結果を示す。図26Aは図25における直線126A部分、図26Bは図25における直線126B部分、図26Cは図25における直線126C部分の分析結果である。図26Aより、表面部分においてカリウム及び硫黄の両方が検出されているので、疎水部13の表面にイオン交換基を有する表面層56A、56Bが形成されていることが分かる。図26Bより、カリウム及び硫黄の両方が検出されているので、直線126Bの箇所は親水部12であることが分かる。図26Cより、カリウム及び硫黄の両方が検出された箇所と、検出されない箇所とを有することから、電解質膜の厚さの中央部分は直線126C方向において親水部12と疎水部13とに分かれていることが分かる。

(発電特性) 実施例7に係る電解質膜55について、電流密度と出力電圧の関係、及び電流密度と出力密度の関係を調べた。発電条件は、温度30℃、燃料としてメタノール、酸化剤として酸素を用いた。メタノールは濃度5%wt、3ml/minにてアノード電極3に供給した。酸素は50sccm(8.45×10-2 Pa・m3/s)、0.2MPaにてカソード電極4に供給した。アノード電極3の触媒層は、Ptが1mg/cm2、Ruが0.5mg/cm2、Pt/Cが20wt%、Ru/Cが10wt%となるようにカーボンペーパーにPt及びRuを塗布して形成した。カソード電極4の触媒層は、Ptが1mg/cm2、Pt/Cが20wt%となるようにカーボンペーパーにPtを塗布して形成した。

その結果を図27に示す。本図は横軸が電流密度(mA/cm2)、縦軸が電圧(V)及び出力密度(mW/cm2)を示している。本図には比較として、イオン交換基を電解質膜全面に導入した比較例1、及び、本願の実施例のうちグラフト率が小さい実施例1の測定結果を合わせて示す。この結果から、実施例7に係る電解質膜は、比較例1に比べ1.5倍の出力が得られることが確認できた。

(メタノール透過度) 次に、実施例7に係る電解質膜55に対するメタノールの透過度を調べた。実施例1に係る電解質膜5、実施例7に係る電解質膜55及び比較例1と同じ電解質膜の3種にて測定した。電解質膜を図10に示すように、メタノール(5wt%)と純水との間に挟み、40℃に保持した状態で3時間経過後の純水におけるメタノール濃度をガスクロマトグラフィにより測定した。測定したメタノール濃度は、実施例1に係る電解質膜5及び比較例1の膜厚を100μmに換算した。その結果を表4に示す。実施例7に係る電解質膜55は、透過度が実施例1に係る電解質膜5に比べ2倍強であるが、比較例1と比べると小さいことが確認できた。

(3−4)実施例9及び実施例10(表面層を備えた電解質膜) 次に量子ビームとしてNeイオンビームを用いた電解質膜として実施例9及び実施例10を製造し、表面をレーザー顕微鏡にて測定した。

実施例9に係る電解質膜5は、厚さ50μmのFEPで形成された膜本体11に、量子ビームとしてNeイオンビーム(HIMAC施設)を用い、エネルギー6MeV/unit、フラックス2.68×108[ions/S・cm2]、使用領域0-50μm、真空中(5×10-4Pa以下)で、200メッシュのマスク(Ni)を用いて照射し、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成した。実施例9は照射線量を1.0×1011[ions/cm2]とした。グラフト条件は、スチレンモノマーを利用し、液相法により60℃、24時間とした。

また、実施例10に係る電解質膜55は、膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する工程、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する工程、スチレンモノマーを含有する反応液に膜本体11を浸漬させる工程、スルホン酸基を導入する工程を順に行い、製造した。

膜本体11の一側表面11A及び他側表面11Bからそれぞれ深さ方向へ数ミクロンの領域においてラジカルを生成する際、超低エネルギー電子ビーム(浜松ホトニクスEBエンジン)を用いた。照射条件は電流値100μA、1pass、ステージ移動速度5cm/sec、加速電圧50kVとした。

実施例10における膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する工程は、実施例9と同じ条件で行った。グラフト条件は、スチレンモノマーを利用し、液相法により60℃、24時間とした。上記のように製造された実施例9に係る電解質膜5及び実施例10に係る電解質膜55のグラフト率、グラフト膜厚、含水膜厚、及び理論IECを表5に示す。

(レーザー顕微鏡観察) 実施例9に係る電解質膜5及び実施例10に係る電解質膜55の表面をレーザー顕微鏡(キーエンスVK9500、倍率:1000倍)にて測定した結果を図28及び図29に示す。

実施例9に係る電解質膜5は、親水部12が疎水部13よりも表面から出ており、親水部12と疎水部13の高低差が40.2μmであることが確認できた。

これに対し実施例10に係る電解質膜55は、表面層56A、56Bが形成されていることにより、親水部12と疎水部13の高低差が7.9μmであり、実施例9に対し高低差が減少したことが確認できた。

(4)変形例 本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。

上記実施形態の場合、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成する手段として量子ビームと膜本体11との間にマスクを配置し、格子状にラジカルを生成する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、電子ビームリソグラフィ装置を用い、1箇所毎に照射を繰り返して膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成してもよい。

また、シャワー状に電子ビームを照射する照射装置を用い、膜本体11上にステンシルマスクを配置して照射することにより、筒状の領域にラジカルを生成することとしてもよい。

また、熱電子銃を照射する照射装置を用い、フィラメントから放出された電子をアパーチャでアレイ状にし、当該電子を加速して電子ビームを生成することにより、膜本体11の一側表面11Aから他側表面11Bに連通する筒状の領域にラジカルを生成してもよい。

さらに光電子銃を用いることもできる。図30に示す照射装置59は、真空容器61と、光入射窓62と、光源63と、光学ガイド64と、カソード65と、整流電極66と、電子取出窓67とを備える。光源63から出射された紫外光70は、光学ガイド64に導かれ光入射窓62に入射する。光入射窓62には格子状のマスク(図示しない)が設けられている。当該格子を通過した紫外光71はカソード65においてアレイ状の光電子72を生成する。当該光電子72は整流電極66によって電子取出窓67の方向へ整流される(図中符号73)。そして電子取出窓67の外側に設けられた図示しない静電場によって光電子72を100〜200keVに加速することにより電子ビームを生成する。このようにして、照射装置59はドット状の電子ビームを生成することにより、筒状の領域にラジカルを生成することができる。

上記実施形態の場合、親水部を規則的に配置し、疎水部を格子状に形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、親水部と疎水部とを板状に形成し、交互に積層して形成してもよい。この場合、親水部と疎水部の積層数は特に限定されるものではなく、例えば親水部同士の間に疎水部を設けた3層構造を1セルとし、1又は2以上のセルで構成することとしてもよい。

1 :燃料電池 2 :膜電極接合体 3 :アノード電極 4 :カソード電極 5 :電解質膜 11 :膜本体 11A :一側表面 11B :他側表面 12 :親水部 13 :疎水部 56A,56B :表面層

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