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Magnetic element, magnetic memory and magneto-optic element

阅读:317发布:2021-10-28

专利汇可以提供Magnetic element, magnetic memory and magneto-optic element专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且PROBLEM TO BE SOLVED: To obtain a magnetic element that can be used as a magnetic memory which enables good formation of a tunnel barrier layer, has a ferromagnetic tunnel junction not deteriorated in performance even when finely thinned and can perform multi-value memory, a highly sensitive magnetic sensor, and a nonlinear magneto-optic element or the like. SOLUTION: This magnetic element is provided with a plurality of M perovskite layers formed of perovskite oxides in a thickness of two or more unit cells each of which is substantially represented by a formula R1-x Ax MO3 wherein R=Y, a rare earth; A=Ca, Sr, Ba; M=Mn, Cr, Fe, Co, Ni; and 0,下面是Magnetic element, magnetic memory and magneto-optic element专利的具体信息内容。

【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 一般式:R 1-xx MO 3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した複数のMペロブスカイト層を有し、かつ厚さが異なる少なくとも 2層の前記Mペロブスカイト層を有する強磁性層と、 少なくとも前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層間に配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック層からなる絶縁層とを具備し、 前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層と前記絶縁性のブロック層とにより形成された強磁性トンネル接合を有することを特徴とする磁気素子。
  • 【請求項2】 一般式:R 1-xx MO 3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した 3層以上のMペロブスカイト層を有する強磁性層と、 前記 3層以上のMペロブスカイト層間にそれぞれ配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る 2層以上の絶縁性のブロック層を有する絶縁層とを具備し、 前記 3層以上のMペロブスカイト層とそれらの間に配置された前記 2層以上の絶縁性のブロック層とにより形成された 2つ以上の強磁性トンネル接合を有することを特徴とする磁気素子。
  • 【請求項3】 一般式:R 1-xx MO 3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した 2層のMペロブスカイト層を有する強磁性層と、 前記 2層のMペロブスカイト層間に配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック層からなる絶縁層と、 前記 2層のMペロブスカイト層の一方と隣接して配置されると共に、前記Mペロブスカイト層に一方向磁気異方性を付与するLaMnO 3層からなる反強磁性層とを具備することを特徴とする磁気素子。
  • 【請求項4】 請求項1、請求項2または請求項3記載の磁気素子において、前記絶縁性のブロック層は、AO
    −HgO−AOブロック層、AO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−(Pb,Cu)O−(A,R)O
    ブロック層、R 2-xx2岩塩型ブロック層、AO−
    TlO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−Pb
    O−Cu−PbO−(A,R)Oブロック層、AO−B
    iO−BiO−AOブロック層、[A 1-xx Ti
    3mで表される m重のTiペロブスカイトブロック層、および[Ce 1-xx2mで表される m重の螢石型ブロック層(ただし、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を示す)から選ばれる少なくとも 1種からなることを特徴とする磁気素子。
  • 【請求項5】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の磁気素子を具備する磁気メモリであって、 前記複数のMペロブスカイト層間の磁化の向きが反平行の場合と平行の場合との抵抗値の差により情報を読み取ることを特徴とする磁気メモリ。
  • 【請求項6】 一般式:R 1-xx MO 3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した 2層以上のMペロブスカイト層を有する強磁性層と、 前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る1層以上の絶縁性のブロック層を有する絶縁層とを、空間的に非対称となるように積層した積層構造を具備し、前記積層構造への磁界の印加の有無により偶数次の非線形光学定数を変化させることを特徴とする光磁気素子。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【発明の属する技術分野】本発明は、Mnなどを含む層状ペロブスカイト酸化物からなる強磁性層を有する磁気素子と、それを用いた磁気メモリおよび非線形光磁気素子に関する。

    【0002】

    【従来の技術】最近、強磁性層/絶縁層/強磁性層の 3
    層積層構造からなる強磁性トンネル接合において巨大磁気抵抗効果が見出されており、磁気センサ、磁気へッド、磁気メモリなどへの応用が期待されている。

    【0003】主に研究されてきた強磁性トンネル接合としては、強磁性層としてFe、Co、Niを主成分とする金属膜を用い、かつ絶縁層としてAl 23などの金属酸化膜を用いたものが挙げられる。 しかしこの場合には、厚さ 1〜 2nmと非常に薄いトンネルバリヤ層(Al
    23膜など)をピンホールやショートなしに均一にかつ再現性よく作製することが困難であった。 トンネルバリヤ層に欠陥があったり、また絶縁層/強磁性層界面に凹凸があると、上下の強磁性層の磁化が反平行を向くときの磁化の方向にばらつきが生じる。 その結果、磁気抵抗値が本来の値よりも小さくなるという問題がある(T,
    Miyazaki et al., J.Appl. Phys. 81 , 3753(1997))。 従って、感度の高い磁気センサや磁気ヘッドを作製するために、ピンホールやショートなどのない非常に薄いトンネルバリヤ層を、均一にかつ平坦に再現性よく作製する技術が求められている。

    【0004】ところで、磁気抵抗効果を用いた磁気メモリの場合、他の半導体メモリなどに対して競争を持つためにはサブミクロンの大きさに作製しなけれはならない。 しかし、例えば金属磁性膜を用いた強磁性層(磁化固定層)/金属非磁性層/強磁性層(磁化フリー層)の
    3層積層構造からなる磁気メモリは、0.75μm 未満に加工すると以下に示す 2点((1),(2))の問題が発生し、磁気抵抗が低下すると共にメモリ動作しなくなるという問題を有している(EYChen et al., J.Appl.Phys. 81 , 3
    992(1997))。 強磁性層(磁化固定層)/絶縁層/強磁性層(磁化フリー層)の 3層積層構造からなる磁気メモリについても、以下に示す 2点の問題が発生している。

    【0005】すなわち、 (1)幅が小さくなるほど、金属膜の端面からの腐食や酸化が特性に顕著な影響を与える。 一方向磁気異方性を与えるために、FeMnなどの反強磁性層を積層するが、FeMnは特に腐食や酸化に弱い。 その結果、幅が小さくなるほど磁化固定層のピン止め磁界が弱くなる。 (2)幅が小さくなるほど反磁界が増大し、その結果磁化フリー層の磁化反転に要する磁界が大きくなり、上記のピン止め磁界と同程度の大きさになる。 磁化フリ一層の厚さを薄くすればこの問題は回避できるが、Fe、Co、Niを主成分とする金属磁性膜の場合、トンネル絶縁膜に接して良好な強磁性特性を保ったまま 3nm以下の厚さにすることは困難である。 トンネル絶縁膜と金属磁性膜の界面に凹凸や変成層(絶縁膜が酸化物であるため金属磁性膜が酸化されるなど)が生じるためである。

    【0006】上記したような金属磁性膜を用いた強磁性トンネル接合からなる磁気メモリにおいては、接合を多層に積層することによって、多値メモリとなる可能性が指摘されている。 しかし、その具体的な構造や情報の記録再生方法はまだ明確になっていない。 単一接合でさえ非常に薄いトンネルバリヤ層をピンホールやショートなしに均一にかつ再現性よく作製することが困難であるため、それを多重に積層して作製することは従来の技術では極めて困難である。

    【0007】ところで、La 1-x Sr x MnO 3 (x=0.3
    〜0.5)などのペロブスカイト型のMn酸化物強磁性体はスピン偏極率が100%に近いことから、これを用いて強磁性トンネル接合を作製すれば大きな磁気抵抗効果が得られることが期待されている。 3〜 6nmの厚さのSrTi
    3層をトンネルバリヤ層として用いた、La 0.67 Sr
    0.33 MnO 3 (50nm)/SrTiO 3 /La 0.67 Sr 0.33
    MnO 3 (50nm)の 3層構造において、強磁性トンネル効果に起因する巨大磁気抵抗効果が観測されている(Y.Lu
    et al., Phys.Rev. B 54 , R8357(1996))。 しかしながら、巨大磁気抵抗効果が観測されるのは200K以下の低温域のみである。 本来磁気抵抗効果が観測されるべきキュリー点(T c =347K)以下200Kまでの実用領域で観測されない理由は以下のように考えられる。

    【0008】高温域では以下に述べる 2点により、強磁性層から強磁性層へのスピンを保存したトンネル過程以外の過程が主になるため、磁気抵抗効果が小さくなる。
    (1)絶縁層/強磁性層界面が不完全なために、高温域では界面でスピンフリップ散乱が起きる。 (2)高温域ではバリヤ層内の局在準位を介したトンネルが主となる。 従って、Mnペロブスカイト酸化物を用いる場合にも、トンネルバリヤ層をショートや局在準位の形成なしに平坦にかつ再現性よく作製する技術が必要とされている。

    【0009】さらに、最近、Mnを含んだ層状ペロブスカイト酸化物・La 2-2x Sr 1+2x Mn 27 (x=0.3)において、結晶構造中に天然に強磁性トンネル素子ができている現象が報告された(T.Kimura et al., Science 2
    74 , 1698(1996))。 c軸方向の電気抵抗の測定結果として、1kOe 以下の低磁場で大きな磁気抵抗効果が得られている。 これは、MnO 2面に挟まれた岩塩型ブロック層・(La,Sr) 22がトンネルバリヤとして働き、ペロブスカイト 2単位胞分の厚さの(La,Sr)
    1 Mn 25が強磁性金属層として働いたものである。
    この層状酸化物の結晶構造の単位胞中にトンネル接合が内在されている現象は、銅酸化物超電導体の固有ジョセフソン効果と類似している。 しかしながら、上記した物質は同じ強磁性トンネル接合が多重に積層された状態であり、このままでは実用的な素子にはならない。

    【0010】また、特開平8-259393号公報には、Mnペロブスカイト酸化物・(La x Sr 1-xy+1 Mn y
    3y+1を用いたメモリスイッチング型磁気抵抗素子が記載されている。 ここに記載されているメモリスイッチング型磁気抵抗素子は、バルクの単結晶体における大きな磁気抵抗効果を利用するものである。 しかし、これは外部磁界として1Tオーダーの大きな磁界をかけなければならないという欠点を有している。 さらに、外部磁界に対して可逆的な磁気抵抗効果しか見出されておらず、不揮発性メモリ素子としては動作しないという欠点を有している。 上記公報に記載されている発明は以下の 4点で本発明とは異なるものである。

    【0011】すなわち、 (1)層状Mnペロブスカイト酸化物の単位胞に内在された強磁性トンネル現象を利用していない。 (2)不揮発性メモリ素子として動作しない。
    (3)物質中に含まれているMnペロブスカイト層部分は全て同じであり、ブロック層部分も全て同じである。
    (4)磁気素子として実用的な基板上に薄膜として形成することや、一方向磁気異方性を与えるための反強磁性物質との組み合わせなどに関して言及していない。

    【0012】

    【発明が解決しようとする課題】従来の強磁性トンネル接合においては、ピンホール、ショート、局在準位などのないトンネルバリヤ層を、均一にかつ平坦に再現性よく作製することが困難であった。 さらに、サブミクロンの大きさに微細化すると、磁気抵抗が低下すると共に動作不良になるという問題があった。 多値メモリを構成するためには強磁性トンネル接合を多重に積層する必要があるが、従来の技術および構造では多重トンネル接合を再現性よく得ることは極めて困難であった。

    【0013】本発明は、このような課題に対処するためになされたものであり、トンネルバリヤ層をピンホール、ショート、局在準位の形成なしに均一にかつ平坦に再現性よく形成し得る強磁性トンネル接合、またサブミクロンの大きさに微細化しても特性の劣化しない強磁性トンネル接合を提供することを目的としている。 さらに、このような強磁性トンネル接合を利用することによって、多値記憶が可能な磁気メモリ、高感度な磁気センサ、非線形光磁気素子などとして使用することが可能な磁気素子、さらにはそのような磁気素子を利用した磁気メモリおよび光磁気素子を提供することを目的としている。

    【0014】

    【課題を解決するための手段】本発明においては、トンネルバリヤ層をピンホールやショートなしに均一にかつ平坦に再現性よく形成し得る強磁性トンネル接合を提供ために、例えばMnを含む層状ペロブスカイト酸化物を利用すると共に、層状酸化物に内在されたトンネル接合の機能を制御して利用している。 例えば、結晶構造中のMnペロブスカイト層の部分が強磁性層として働き、M
    nO 2面に挟まれたブロック層の部分がトンネルバリヤ層として働く。 層状酸化物には、導電性部分と絶縁性部分(ブロック層)とが原子レベルで平坦な界面を自己組織的に形成する特徴があるため、理想的なトンネルバリヤ層が得られる。 そして、厚さが異なる少なくとも 2層のMnペロブスカイト層などを強磁性層として使用することによって、実用的な磁気素子を構成することが可能となる。

    【0015】本発明では、さらにサブミクロンの大きさに微細化しても特性の劣化しない強磁性トンネル接合を提供するために、例えばMnを含む層状ペロブスカイト酸化物を利用する。 元来が酸化物であるため、サブミクロンサイズに加工しても膜端面からの腐食や酸化による特性劣化の問題が少ない。 この物質に含まれる強磁性導電層はペロブスカイト 2単位胞分と薄くても十分な特性を発揮する。 これは導電性部分と絶縁性部分(ブロック層)とが、原子レベルで理想的な界面を自己組織的に形成する層状酸化物の特徴故である。 すなわち、サブミクロンサイズに加工しても、反磁界が問題にならない程度に薄い強磁性導電層を形成することができる。

    【0016】さらに本発明では、強磁性トンネル接合を多重に積層して多値メモリや非線型光学素子として働く磁気素子を提供するために、各々の層状酸化物において例えばMnペロブスカイト層部分の厚さが異なる物質を積層して多重トンネル接合を作製する。 Mnペロブスカイト層部分の厚さが異なることにより反磁界が異なり、
    その結果として各Mnペロブスカイト層部分で磁化を反転させるのに要する外部磁界の大きさを異ならせることができる。 この原理により例えば多値の情報の記録が可能となる。 また、例えばMnペロブスカイト層部分の厚さが異なることによって、トンネルバリヤ層の上下の強磁性金属電極の磁化の向きが反平行の場合と平行の場合の電気抵抗の差が各トンネル接合で異なる。 この原理により多値の情報の再生が可能となる。 さらには、例えばMnペロブスカイト層部分の厚さが異なる層状酸化物を空間反転対称性を持たないように積層することにより、
    伝導電子の運動の非対称性に基づく非線形光学効果が生まれる。 ブロック層部分が異なる物質を積層して多重トンネル接合を作製しても同様な効果が得られる。

    【0017】すなわち、本発明における第1の磁気素子は、請求項1に記載したように、 一般式:R 1-xx MO 3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である。 以下同じ)で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した複数のMペロブスカイト層を有し、かつ厚さが異なる少なくとも 2層の前記Mペロブスカイト層を有する強磁性層と、少なくとも前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層間に配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック層からなる絶縁層とを具備し、前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層と前記絶縁性のブロック層とにより形成された強磁性トンネル接合を有することを特徴としている。

    【0018】本発明における第2の磁気素子は、請求項2に記載したように、 一般式:R 1-xx MO 3で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した 3層以上のMペロブスカイト層を有する強磁性層と、前記 3層以上のMペロブスカイト層間にそれぞれ配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る 2層以上の絶縁性のブロック層を有する絶縁層とを具備し、前記 3層以上のMペロブスカイト層とそれらの間に配置された前記2層以上の絶縁性のブロック層とにより形成された 2つ以上の強磁性トンネル接合を有することを特徴としている。

    【0019】本発明の他の磁気素子は、請求項3に記載したように、 一般式:R 1-xx MO 3で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した 2層のMペロブスカイト層を有する強磁性層と、前記 2層のMペロブスカイト層間に配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック層からなる絶縁層と、前記 2層のMペロブスカイト層の一方と隣接して配置されると共に、前記Mペロブスカイト層に一方向磁気異方性を付与するLaMnO 3層からなる反強磁性層とを具備することを特徴としている。

    【0020】本発明の磁気素子において、前記絶縁性のブロック層は請求項4に記載したように、例えばAO−
    HgO−AOブロック層、AO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−(Pb,Cu)O−(A,R)Oブロック層,R 2-xx2岩塩型ブロック層、AO−T
    lO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−PbO
    −Cu−PbO−(A,R)Oブロック層、AO−Bi
    O−BiO−AOブロック層、[A 1-xx TiO 3
    mで表される m重のTiペロブスカイトブロック層、および[Ce 1-xx2mで表される m重の螢石型ブロック層(ただし、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBa
    から選ばれる少なくとも 1種の元素を示す)から選ばれる少なくとも 1種が用いられる。

    【0021】さらに、本発明の磁気メモリは、請求項5
    に記載したように、上記した本発明の磁気素子を具備する磁気メモリであって、前記複数のMペロブスカイト層間の磁化の向きが反平行の場合と平行の場合との抵抗値の差により情報を読み取ることを特徴としている。

    【0022】本発明の光磁気素子は、請求項6に記載したように、 一般式:R 1-xx MO 3で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した 2層以上のMペロブスカイト層を有する強磁性層と、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る 1層以上の絶縁性のブロック層を有する絶縁層とを、空間的に非対称となるように積層した積層構造を具備し、前記積層構造への磁界の印加の有無により偶数次の非線形光学定数を変化させることを特徴としている。

    【0023】

    【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形態について説明する。

    【0024】まず、層状酸化物について説明する。 本発明に用いる物質に近い物質として高温超電導体がある。
    層状銅酸化物超電導体は、超電導を担う 2次元的なCu
    2面と、CuO 2面間に挟まれたブロック層と呼ばれる部分からなり、ブロック層の選択と組み合わせ方によって物質設計ができる(Y.Tokura and T.Arima, Jpn.J.
    Appl. Phys. 29 , 2388(1990))。 この考え方は超電導の分野で広く受け入れられている。 Mnを含んだ層状酸化物も、伝導を担う 2次元的なMnO 2面と、MnO 2面間に挟まれたブロック層と呼ばれる部分からなり、ブロック層の選択と組み合わせ方によって物質設計ができる。

    【0025】Mnを含む層状酸化物を形成し得るブロック層の例としては、AO−HgO−AOブロック層、A
    O−TlO−AOブロック層、(A,R)O−(Pb,
    Cu)O−(A,R)Oブロック層、R 2-xx2岩塩型ブロック層、AO−TlO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−PbO−Cu−PbO−(A,R)
    Oブロック層、AO−BiO−BiO−AOブロック層、[A 1-xx TiO 3mで表される m重のTiペロブスカイトブロック層(m=1〜7)、[Ce 1-x
    x2mで表される m重の螢石型ブロック層(m=2〜1
    0) などが挙げられる。 ここで、RはLa、Pr、N
    d、Smなどの希土類元素およびYから選ばれる少なくとも 1種の元素であり、AはCa、SrおよびBaから選ばれる少なくとも 1種の元素である。

    【0026】本発明におけるMnを含む層状酸化物としては、例えば下記の化学式で実質的に組成が表されるものか考えられる。 なお、下記の式中において、 nはMn
    ペロブスカイト層の部分の厚さを表す。 本発明におけるMnペロブスカイト層は nが2以上であり、さらに反磁界の値などを考慮して nが 2〜23の範囲となる厚さを選択することが好ましい。

    【0027】 化学式:Hg(A,R) n+1 Mn ny …(1) {AO−HgO−AOブロック層} :Tl(A,R) n+1 Mn ny …(2) {AO−TlO−AOブロック層} :(Pb,Cu)(A,R) n+1 Mn ny …(3) {(A,R)O−(Pb,Cu)O−(A,R)Oブロック層} :R n-nx Sr 1+nx Mn n3n+1 …(4) {R 2-xx2岩塩型ブロック層} :Tl 2n+1 Mn ny …(5) {AO−TlO−TlO−AOブロック層} :(Pb 2 Cu)(A,R) n+1 Mn ny …(6) {(A,R)O−PbO−Cu−PbO(A,R)Oブロック層} :Bi 2n+1 Mn ny …(7) {AO−BiO−BiO−AOブロック層} :Ti m (A,R) n+m Mn ny (m=1〜7) …(8) {[A 1-xx TiO 3m , m重Tiペロブスカイトブロック層} :(Ce,R) mn-1 Mn ny (m=2〜10) …(9) {[Ce 1-xx2m , m重螢石型ブロック層} なお、 { }内にはそれぞれの物質に含まれるブロック層を記した。 ここで、ブロック層には、ブロック層とMn
    ペロブスカイト層部分の境界にある、Mnペロブスカイトの頂点酸素を含んだ(A,R)O面を含めた。 従って、Mnペロブスカイト層部分は(R,A) n-1 Mn n
    3n-1と記述する。

    【0028】(1)〜(9) 式に例示した本発明の出発点となる層状酸化物においては、ブロック層がトンネノレバリヤとなるとき障壁の高さが低いものから順に高いものへと並べてある。 これらの物質の選択により、多重トンネル接合の障壁高さを自由に設計できる。 電子のトンネル確率は、障壁高さのみならずバリヤの厚さにも依存する。 また、ブロック層を挟むことによって、平方向の原子位置が (a/2,b/2)だけずれる場合がある。 ここで、
    aおよび bは0.38nmの方向にとったa軸長とb軸長である。 この原子位置がずれるかずれないかに依存して、トンネル確率が変化する。

    【0029】ところで、Mnペロブスカイト酸化物の場合は、その組成、キャリア濃度、温度、磁気構造に依存して3d電子の軌道分極・整列の現象が起きる。 強磁性金属伝導状態においては軌道整列が起きなくとも、軌道の自由度が量子液体状態にある。 これら3d軌道の状態はトンネル確率に大きな影響を与える。 従って、Mnペロブスカイト層部分の組成、キヤリア濃度、温度、磁気構造、軌道状態も考慮してトンネルバリヤ層を選択する必要がある。

    【0030】上記の種々の要因を考慮して、 (1)〜 (9)
    式に例示した種々のブロック層から絶縁層を選択すると共に、強磁性層としてのMnペロブスカイト層の厚さを変えることにより、例えば多重強磁性トンネル接合を精密に設計することができる。 あるいは、 (1)〜 (9)式に例示した種々のブロック層から組み合わせを選択することによっても、多重強磁性トンネル接合を精密に設計することができる。

    【0031】以下では結晶構造のc軸方向への原子面の繰り返しの最小単位を“擬単位胞”と呼び,擬単位胞を基準に考える。 (1)式、 (2)式、 (3)式、 (6)式、 (8)
    式の各物質の場合と (9)式で mが奇数の場合は、結晶構造の単位胞が“擬単位胞”と一致している。 (4)式、
    (5)式、 (7)式の各物質と (9)式で mが偶数の場合は、
    ブロック層を挟むことにより水平方向の原子位置が (a/
    2,b/2)だけずれるため、結晶構造の単位胞は“擬単位胞”の 2倍となる. これらの物質の結晶構造の例を図1、図2および図3に示す。 図中の八面体がペロブスカイト構造内のMnO 6八面体を表している。 Bがトンネルバリヤとして働くブロック層の部分、Mが強磁性金属伝導層として働く部分である。 破線は擬単位胞を表しており、図1では擬単位胞として、Mnペロブスカイト層部分の中央からMnペロブスカイト層部分の中央までをとっている。 その結果、擬単位胞の中央にブロック層が位置している。 図1は (4)式の n=2の物質の例、例えばLa 2-2x Sr 1+2x Mn 27である。 図2は (7)式の n
    =2の物質の例、例えばBi 2 Sr 3 Mn 29+δである。 図3は (8)式の n=2の物質の例、例えばTi 34
    1 Mn 215である。

    【0032】Mnペロブスカイト層部分の磁性と伝導はキャリア濃度に強く依存する。 本発明において、Mnペロブスカイト層は強磁性金属伝導層として使用する。 M
    nの平均価数が+3.2以上+3.5以下となるようにすれば、
    二重交換相互作用が働いて強磁性金属伝導層となる。 M
    nの平均価数が+3.5を超えると電荷整列の現象が起きるなど、強磁性金属伝導層ではなくなる。 さらには、Mn
    の平均価数が+3.3以上+3.4以下であるとキュリー温度が高いことから望ましい。 そのためには各物質において、
    AとRとCeの組成比と酸素含有量を調整する必要がある。 La n-nx Sr 1+nx Mn n3n+1の場合、Mnの平均価数を+3.3以上+3.4以下とするにはx=0.3〜 0.4とすればよい。 この xのことをホール濃度と呼ぶ。

    【0033】ここまでは、ペロブスカイト層部分のBサイトがMnである物質について説明したが、本発明では各層に必要な磁気秩序状態を実現できるならば、ペロブスカイト層部分のBサイトはMn以外の元素、例えばC
    r、Fe、Co、Niなどであってもよい。 BサイトにCr、Fe、Co、Niを含んだ反強磁性体としてはL
    aCrO 3 、LaFeO 3など多数知られており、これらは一方向磁気異方性を付与するための反強磁性層として使用することができる。

    【0034】一方、強磁性金属伝導層として使用し得る候補としては、La 2-x Sr x CoO 4 (x〜0.8)、Bi
    2-x Pb x Sr 3-δ Co 29 (x=0.2〜0.8)、(La,
    Sr) 3 Co 27などが挙げられる。 BサイトにMn
    を用いた場合には、図4(a)に模式的に示した二重交換相互作用によって、強磁性でかつ金属伝導の性質を持たせることができる。 二重交換相互作用とは、Mnのe
    g軌道に導入されたホールの運動エネルギーの利得を図るために、ホールが各Mnサイトのt 2g局在スピンを揃えて強磁性状態になると共に、ホールが動き回ることにより金属伝導を示すものである。

    【0035】BサイトにCoを用いても二重交換相互作用と類似の効果を生むことができ、その結果強磁性金属伝導層として好適な性質を持たせることができる。 Co
    2+とCo 3+との混合状態の場合には、Co 2+がhigh-spi
    n state(HS) 、Co 3+がintermediate-spin state(IS)
    となるよう組成や結晶構造を調節すれば、図4(b)に示すように、e gホールが動き回ると共にt 2g局在スピンが揃う。 この状態は、例えばLa 2-x Sr x CoO 4
    (x〜0.8)で実現できる。 他方、Co 3+とCo 4+との混合状態の場合に、Co 3+がintermediate-spin state(IS)
    、Co 4+がlow-spin state(LS)となるよう組成や結晶構造を調節すれば、図4(c)に示すように、e gホールが動き回ると共にt 2g局在スピンが揃う。 この状態はBi 2- x Pb x Sr 3-δ Co 29で実現できる。

    【0036】また、BサイトにCr、Fe、Niを用いた場合についても、同様な組成制御や結晶構造の調節を行うことによって、強磁性金属伝導層として使用することができる。

    【0037】上述したようなMnを含む層状酸化物を用いた本発明の磁気素子の一実施形態の構成を図5に示す。 図5は本発明の磁気素子の一実施形態の構成の断面を模式的に示す図であり、 (4)式で表される物質群を使った例である。 図中の菱形はペロブスカイト構造のMn
    6八面体の断面を表し、中央の黒丸はMnイオンを表している。 これは(La,Sr) 3 Mn 27の 1擬単位胞、(La,Sr) 4 Mn 310の 1擬単位胞、(L
    a,Sr) 5 Mn 413の 1擬単位胞、(La,Sr)
    6 Mn 516の 1擬単位胞を積層した構造である。 ただし、図5では擬単位胞として、岩塩型ブロック層の中央から岩塩型ブロック層の中央までをとっている。 Mで示したMnペロブスカイト層部分が強磁性金属伝導層として働き、Bで示した岩塩型ブロック層がトンネルバリヤ層として働く。 これらによって、 3重の強磁性トンネル接合が積層された構造になっている。

    【0038】Mの厚さが数原子層と薄いために反磁界が小さいという利点がある。 ただし、反磁界を小さくするためには、磁化容易軸が面内に向いている必要がある。
    層状酸化物を用いることにより、Mの厚さが数原子層と薄くても強磁性金属伝導層として十分な機能を発揮する。 これは従来のFe、Co、Niを主成分とした金属磁性膜では実現できなかった利点である。 それぞれのM
    層の厚さが異なることから、各層の磁化反転に要する磁界強度が異なる、各トンネル接合で磁気抵抗効果の大きさが異なるなどの効果が生まれ、多値メモリとしての動作が可能になる。 本発明の磁気メモリは、少なくとも 1
    つの強磁性トンネル接合を有する本発明の磁気素子を利用したものであればよいが、特に 2つ以上の強磁性トンネル接合を有する磁気素子を利用することで多値メモリとしての動作が可能になる。 具体的には、 2つ以上の強磁性トンネル接合を有する磁気素子を具備する磁気メモリであって、複数のMnペロブスカイト層(Mペロブスカイト層)の各々のスピン偏極率が異なることに起因して、複数の強磁性トンネル接合において絶縁層の上下の強磁性金属電極の磁化の向きが反平行の場合と平行の場合の抵抗値の差が異なることを利用するものである。

    【0039】次に、強磁性トンネル接合における磁気抵抗効果の原理について述べる。 図6はこの原理を説明するための模式図である。 磁性層Aにおいてフェルミ面での状態密度のうち多数スピンの占める割合をaとし、磁性層Bにおいてフェルミ面での状態密度のうち多数スピンの占める割合をbとする。 aおよびbは 1以下である。 各層のスピン偏極率Pは、P A = 2a-1、P B = 2
    b-1と表される。 AとBの磁化が平行な場合を図6
    (a)に示してあるが、この場合のトンネルコンダクタンスは、

    【数1】

    で表される。 ただし、 x=a+b− 2ab …(11) と置いた。 G

    0はAとBのスピン偏極率がゼロの場合のトンネルコンダクタンスである。 AとBの磁化が反平行な場合を図3(b)に示してあるが、この場合のトンネルコンダクタンスは、

    【数2】

    で表される。 (10)〜(12)式を用いて、磁化が反平行の場合と平行の場合の電気抵抗の差△Rを求めると、

    【数3】

    となる。 ここで、R

    0はAとBのスピン偏極率がゼロの場合のトンネル抵抗である。 以上より、aおよびbが大きいほどxが小さく、その結果(13)式で表される磁気抵抗効果が大となることが分かる。 Mnペロブスカイト酸化物はaやbが1に近く、スピン偏極率が従来よく用いられてきたFe、Co、Niなどに比べて非常に大きい。 従って、大きな磁気抵抗効果が発現し、感度の高い磁場センサや読み取り誤差の少ない磁気メモリが得られる。

    【0040】一方、(13)式から分かることは、多重強磁性トンネル接合において各磁性層のスピン偏極率を少しづつ変えれば、各トンネル接合における磁化が反平行の場合と平行の場合の電気抵抗の差、すなわち

    【数4】

    を変えることができることである。 その結果、多重トンネル接合全体の抵抗を測定することによって、内部のどのトンネル接合で磁化が反平行になっているかが分かり、多値の情報を読み取ることができる。 各磁性層のスピン偏極率を変える方法には 2つある。 第1の方法はM


    nペロブスカイト層部分の厚さn を変えることである。


    nが変化するとキュリー温度T

    cが変化する。 薄いほど低次元の揺らぎのために強磁性転移しにくくなり、T

    c


    が下がる。 従って、ある一定温度で見た場合、 nが小さいほど実質的なスピン偏極率は小さい。 n=1 の場合は低温まで強磁性にならないため、本発明の強磁性層には使用することはできない。

    【0041】La n-nx Sr 1+nx Mn n3n+1 (x=0.3〜0.
    4)の場合のT cの n依存性を図7に示す。 ここで、△印で示した点は面内でショートレンジの強磁性オーダーをする温度T c SRである。 第1の方法だけではスピン偏極率が所望の値に調節できない場合は、第2の方法としてMnイオンの一部をFeイオン、Coイオン、Niイオンなどで置換することによりスピン偏極率を低下させる。 Mnペロブスカイト酸化物を用いると、元来スピン偏極率が高いために、元素置換で若干スピン偏極率を低下させても十分に実用し得るという利点がある。

    【0042】他に、トンネルバリヤ層を変えることによっても、各トンネル接合における△Rを変えることができる。 強磁性トンネル接合の磁気抵抗比は、より厳密に考慮すると以下の式で表される(T.Miyazaki et al.,
    J.Appl. Phys. 81 , 3753(1997))。

    【0043】

    【数5】

    ここで、k

    A ↑は磁性層Aの中の↑スピンのフェルミ波数を、κは障壁中の波数を表す。 Uは障壁でのポテンシャルエネルギー、E

    Fは強磁性体のフェルミエネルギーである。 (14)〜(17)式より、スピン偏極率以外にバリヤ層の障壁の高さを変えることにより△Rを変えることができ、多重トンネル接合における多値の情報の読み取りを容易にする。

    【0044】次に、反磁界に関して説明する。 本発明ではペロブスカイト n単位胞(n>2,さらには n=2〜23)の厚さの磁性層を用いる。 実際のMnペロブスカイト層部分の厚さtは、頂点酸素から頂点酸素までを測ると nの関数として以下の式で表される。

    【0045】t=0.39n(nm) …(18) 本発明の磁気素子は、磁性膜を幅w、長さLに加工する。 この際、L> 5wとすることが好ましく、さらに望ましくはLが10w程度の細長い形状に加工し、長手方向に磁化する。 その場合の反磁界H dは近似的に、

    【数6】

    で表される。 Mnペロブスカイトの場合、M

    s = 622em


    u/cm

    3である。 この反磁界のエネルギーを考慮して、磁化反転に必要な外部磁場H

    a (以下ではスイッチングフィールドと呼ぶ)は、

    【数7】

    で表される(EYChen et al., J.Appl. Phys.

    81 , 3992


    (1997))。 厚いほど反磁界が大きく、大きな外部磁場をかけないと磁化反転が起きない。 (18)式〜(20)式より、


    nの異なる強磁性層が積層されていることによって、 n


    に比例してスイッチングフィールドが変わり、多値の情報の記録が可能となる。 w= 0.5μm に加工することを考えると、 n=2の場合はH

    a =8.6Oe 、n=23の場合はH


    a =99.1Oe であり、この範囲内であれば実用上差し支えない。 nが24以上ではH

    aが100Oe を超えるため、


    実用上は好ましくない。 さらには、H

    aが50Oe 程度以下になり、厚さも 5nm以下になる、n=12以下が外部磁界に関する感度が高く望ましい。

    【0046】強磁性トンネル接合を磁気メモリとして使用する場合、接合特性に望ましい範囲がある。 接合抵抗Rは、あまり高すぎると寄生容量CとRの積で表される時定数が長くなり、読み出し速度が遅くなってしまう。
    従って、接合抵抗Rは1MΩ以下が望ましい。 読み出しに必要な電圧を考えると、 1つのトンネル接合に 0.05V以上の電圧をかけることが望ましい。 トンネルバリヤ層があまり薄すぎるとバリヤ層での電界が大きくなりすぎ、
    絶縁破壊を起こしてしまう。 そこで、トンネルバリヤ層での電界は10 6 V/cm以下が望ましい。 従って、トンネルバリヤ層の厚さは 0.5nm以上であることが望ましい。

    【0047】接合面積が0.25μm × 2.5μm のトンネル接合を作製して、その特性を測定した。 La 2-x Sr x
    2岩塩型ブロック層をトンネルバリヤとした場合は、
    接合抵抗が 5〜30Ω、バリヤ層の厚さがMnO 2面からMnO 2面までの距離にして0.62nmであった。 SrO−
    BiO−BiO−SrOブロック層をトンネルバリヤとした場合は、接合抵抗が 1.6〜4.2kΩ、バリヤ層の厚さがMnO 2面からMnO 2面までの距離にして 1.2nmであった。 どちらのバリヤ層も磁気メモリとして使用し得る範囲に入っているが、後者のSrO−BiO−BiO
    −SrOブロック層の方がより適している。

    【0048】本発明の磁気素子を作製するためには、分子線エピタキシー法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、CVD法、多元蒸着法などの薄膜形成手段を用いる。 特に、逐次堆積法を用いることが好ましい。 逐次堆積法とは、層状酸化物を合成する際に、結晶構造に応じて各元素を供給する方法である。 逐次蒸着法とも呼ばれる。 これは、層状化合物であることに着目して、構成化合物毎あるいは構成元素毎に積層して所望の結晶構造を得ようという方法である。 酸化物を作製する際、酸素原子も断続的に供給してもよいが、通常は酸素原子は連続的に供給する。 金属元素は 1元素ずつ供給してもよいが、同じ原子面に属する原子や隣の面に属する原子を同時に供給してもよい。 また場合によっては結晶構造中の特定の面に関して隣の面と順序を逆にして供給してもよい。 その方が不純物の生成を抑制して所望の結晶構造を作りやすい場合があるからである。 すなわち、
    全体として原子供給シークエンスが結晶構造の原子面の並びに準じていればよい。

    【0049】結晶性がよく表面・界面が平坦な酸化物薄膜を作製するには、上記した原子供給シークエンスに加えて、基板温度や酸化条件等の薄膜作製条件が重要である。 従来例のようなLa 0.67 Sr 0.33 MnO 3 /SrT
    iO 3 /La 0.67 Sr 0.33 MnO 3の 3層積層構造を単に同時蒸着でヘテロ積層した場合は、界面の凹凸や界面での変成層の発生を抑制できない。 本発明では、 (1)〜
    (9)式で表される層状物質の単一相薄膜が層状に成長する薄膜作製条件を予め見出し、その条件を用いて磁気素子を作製する。 そうすると、層状化合物が本来持っている層状成長しやすい性質を最大限利用することができる。 この時、結晶成長の外見が層状になるだけでなく、
    物質内部の原子の並び方も層状化合物を形成するべく並ぶ。 従って、層状酸化物には導電性部分と絶縁性部分(ブロック層)とが、原子レベルで理想的な界面を自己組織的に形成する特徴がある。 そのため、理想的なトンネルバリヤ層が得られる。 導電性部分と絶縁性部分との界面が原子レベルで平坦になるのは、そのような原子配列で層状化合物を形成した方が自由エネルギーが低くなるためである。 つまり、所望の層状化合物が安定に形成される成膜条件を予め見出すことが重要である。

    【0050】本発明の磁気素子は、単結晶基板の上に全ての膜をエピタキシャルに成長することにより、その特性を最大限に発揮する。 実用的な磁気素子を形成するには、少なくとも 1つの磁性層の磁化方向を固定するために、一方向磁気異方性を付与するための反強磁性層があることが望ましい。 本発明の磁気素子においては、反強磁性層としてLaMnO 3が適している。

    【0051】LaMnO 3はT N =150K以下でAタイプと呼ばれる層状反強磁性秩序状態になる。 これは、磁化容易軸がb軸方向で、ab面内で強磁性であり、面間方向(c軸方向)には反強磁性となっている。 ab面が基板面に平行になるように、かつ表面が原子レベルで平坦になるようエピタキシャル成長させれば、この層の最表面のスピンは全て同一方向(基板面内方向)を向くことになる。 これに接した強磁性層に一方向磁気異方性を与えるのに理想的なスピン構造である。 同時に、Mnを含んだ層状酸化物と格子整合がよいため、基板と層状酸化物の間のバッファ層としても働く。

    【0052】次に、基板材質について述べる。 La 2-2x
    Sr 1+2x Mn 27 (x=0.3〜0.4)を直接基板上に成長させる場合、この物質のa軸長が 0.386〜 0.388nmであることから、LaSrGaO 4 (a=0.3843nm)、SrT
    iO 3 (a=0.3905nm)、LaGaO 3 (a=0.5482n
    m,b=0.5526nm)、NdGaO 3 (a=0.5428nm,b
    =0.5499nm)が格子マッチングに優れた基板であり、その使用が望ましい。 しかし、基板上に反強磁性層としてLaMnO 3を堆積する場合は、別の基板を選択した方がよい。 一方向磁気異方性をより完全にするためには、
    基板面内でLaMnO 3のb軸(磁化容易軸)がなるべく一方向に揃っている方がよい。 LaMnO 3の格子定数はa=0.5541nm、b=0.5751nmであり、これと格子整合のよい基板の例を表1に掲げる。 REScO 3 (RE
    =Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy)を代表例として、表1に◎をつけた基板材料がLaMnO 3のa軸およびb軸と格子マッチングがよく、磁化容易軸を基板面内で一方向に揃えることができる。

    【0053】

    【表1】

    本発明の磁気素子は室温においても使えないことはないが、室温以下で使うことでより大きな効果を発揮する。


    図7に示したように、 n=2の強磁性層を使う場合は、T


    c

    SR =270K未満で使う必要がある。 低温で使うことと、


    本発明の磁気素子はペロブスカイト酸化物単結晶基板上にエピタキシャル成長させることを考えると、高温超電導体と組み合わせることが容易である。 本発明の多値の不揮発メモリは、高温超電導体を用いた高速デバイスと組み合わせて同一基板上に作製することによって、さらに大きな効果を発揮する。 メモリセル周辺の配線やトランジスタなどを超電導体で形成することにより、低消費電力が達成できる。

    【0054】本発明の磁気素子を室温において使用するためには、強磁性金属伝導層のキュリー温度が室温よりも十分高いことが望ましい。 そのためには、Mnペロブスカイト層部分のAサイトのイオン半径をなるべく大きくし、ペロブスカイトのprimitive unit cell の体積が大きい方がよい。 そのためにはAサイトイオンとしてL
    aとBa、またはLaとSrが望ましい。 またLaの代わりにアクチノイド元素、Baの代わりにRaがイオン半径が大きく使い得る。 さらに、Mnペロブスカイト層の厚さn があまり薄くなるとキュリー温度が下がってしまうため、nは 4以上が望ましい。

    【0055】

    【実施例】次に,本発明の具体的な実施例について説明する. ここで、本発明の磁気素子の実施例について述べる前に、以下の実施例で使用した成膜装置について図8
    を参照して説明する。

    【0056】図8に示すMBE装置の成長室11には、
    5本のクヌーセン・セル12が装着され、各々にMnを含んだ層状酸化物を作製するための元素(例えばMn、
    Sr、Ca、Bi、La)が入っている。 各クヌーセン・セル12の前方には、それぞれシャッタ13が配置されている。

    【0057】酸素の供給源としては、ECRプラズマによる活性酸素源(ECRガン)14を用いており、成長室11に酸素ガスを 0.7〜 3.3sccmで流す。 プラズマへの入射電力は 100〜200Wである。 成長室11は排気速度
    2000L/sの図示しないクライオポンプで排気可能とされている。 成長室11の圧力は、イオンゲージ(VG)1
    5で測定しており、以下の実施例の成膜では 1〜 6×10
    -3 Paであった。 活性酸素源としてはECRガンの他に、
    3を 70%以上の高濃度に含み、残りがO 2であるガスも用いた。 その場合の成長室11の圧力は 8×10 -5 〜 5
    ×10 -4 Paであった。

    【0058】このMBE装置には、ガスソース16が装着されている。 このガスソース16は、蒸気庄が高すぎるか、あるいは蒸気圧が低くクヌーセン・セルでは蒸発させにくい金属元素、例えはTi、La、Pr、Y、C
    eなどを有機金属やハロゲン化物の形で基板に供給するために用いる。 有機金属原料には、例えばそれぞれの金属元素のβ−ジケトン錯体を用いる。 これらβ−ジケトン錯体は 373〜573Kの間で十分な蒸気圧をもち、かつ酸素ガスが存在する中で573K以上で分解して金属元素が堆積することから、ガスソースMBE法の原料に適している。 原料の輸送経路のパイプは原料ガスの凝集を避けるために加熱してある。

    【0059】これらの原料供給装置を用いて、作りたい結晶構造に応じで各元素を逐次蒸着した。 成長速度は 1
    原子層当たり約30秒とした。

    【0060】また、このMBE装置は差動排気した電子銃17と蛍光スクリーン18を持ち、成長過程を反射型高速電子線回折(RHEED)で観察することが可能とされている。 以下の実施例では、電子加速電圧は25〜30
    kVとした。 基板19にはSrTiO 3単結晶の (100)面やGdScO 3単結晶のab面を用い、 923〜 1123Kに加熱した。 図示を省略したが、基板19の直下には水晶振動子式膜厚計がセット可能であり、クヌーセン・セル12やガスソース・ノズル20からの分子線強度をモニターできるようになっている。 作製した薄膜試料は、C
    u−Kα線を用いたX線回折を行い、組成はICP発光分光法で測定した。

    【0061】実施例1 層状酸化物としてLa n-nx Sr 1+nx Mn n3n+1 (x=0.3
    〜0.4,n=2,3,4,5)の薄膜を作製した。 n=2の場合は図1
    に示した結晶構造に応じて逐次蒸着を行った。 種々に成膜条件を変化させて詳細な実験を繰り返した結果、この物質群は基板温度 923〜 1073KにてSrTiO 3基板上にエピタキシャル成長させることができた。 成長させながらRHEED観察した結果、擬単位胞を成長単位として層状成長することが確認された。 またX線回折の結果、c軸長が2.02nm(n=2の場合)、2.78nm(n=3の場合)、3.54nm(n=4の場合)、4.31nm(n=5の場合)のc軸配向膜であることが確認された。 すなわち、所望の結晶構造が得られた。

    【0062】実施例2 図9に断面構造を示す磁気素子、すなわち多値の記憶ができるメモリセルを作製した。 GdScO 3単結晶基板11上にLaMnO 3反強磁性絶縁体AF1を堆積し、
    その上に強磁性層であるM6層としてLa 1-x Sr x
    nO 3を堆積すると、M6層は磁化固定層として働く。
    同様に強磁性層としてのM2層、M3層、M4層およびM5層はフリー磁性層であり、図5に示した磁気素子と同様に、上からLa 2-2x Sr 1+2x Mn 27の 1擬単位胞、La 3-3x Sr 1+3x Mn 310の 1擬単位胞、La
    4-4x Sr 1+4x Mn 413の 1擬単位胞、La 5-5x Sr
    1+5x Mn 516の 1擬単位胞を積層した構造である。 ただし、必要に応じてMnの一部(15%未満)をCoで置換した。

    【0063】B1層、B2層、B3層、B4層およびB
    5層は、La 2-x Sr x2岩塩型ブロック層となるようにシャッターコントロールで逐次蒸着した。 これらの層はトンネルバリヤ層(絶縁層)として働く。 各B層を介してトンネル接合1〜5が形成されている。 M2層〜
    M5層とB1層〜B5層の部分の堆積に際しては、実施例1で見出した各層状化合物が層状成長する成膜条件を用いた。

    【0064】M1層〜M6層は少なくとも短距離的な、
    望ましくは長距離的な強磁性秩序状態である必要がある。 小さな外部磁界でフリー磁性層の磁化を反転させるためには、全ての強磁性層で磁化容易軸が面内方向であることが望ましい。 そのような状態を実現するためには組成x と動作温度を選択する。 例えば、 x=0.4の場合にT c =126K以下で実現できる。 また、 x=0.3の場合に90
    〜270Kの温度範囲で実現できる。

    【0065】M1層はLa 1-x Sr x MnO 3であり、
    その上に堆積したLaMnO 3反強磁性絶縁体AF2のために磁化固定層として働く。 成膜後の着磁によって固定層の磁化は左向きとした。 その上に絶縁膜12を介してAu等の金属からなる書き込みライン13が設置されている。 書き込みライン13に紙面に垂直に電流を流すことによって、M2層〜M5層の磁化反転のための外部磁場を発生させる。 w= 0.5μm に加工した後、スイッチングフィールドを測定した結果、M2層ではH c2 =1
    1.6Oe 、M3層ではH c3 =15.9Oe 、M4層ではH c4
    =20.2Oe 、M5層ではH c5 =24.6Oe であった。 これらは、反磁界を考慮した(20)式の値に、材料本来の保磁力が加わった値となっていた。 M1層と電気的に接触してAu等の金属からなる読み出しライン14が設置されている。 読み出しライン14から直列多重トンネル接合を通ってアースライン15ヘ電流を流し、M1層とM6
    層間の電気抵抗R totalを測定することにより情報を読み出す。

    【0066】次に、磁化反転による電気抵抗の変化を計算で求めた。 磁性層M1におけるフェルミ面での状態密度のうち多数スピンの占める割合をa1 と書くと、a1
    =0.95に調節した。 同様にして、a2 =0.8 、a3 =0.
    85、a4 =0.9 、a5 =0.95、a6 =0.95に調節した。
    これらの値を(13)式に代入すると、トンネル接合1での磁化が反平行の場合と平行の場合の電気抵抗の差・△R
    1 は、△R1 =1.52R 0と計算された。 同様にして、△
    R2 =1.02R 0 、△R3 =1.63R 0 、△R4 =2.99
    0 、△R5 =4.71R 0と計算された。 ここで、R 0
    1つのトンネル接合において、上下の導電性層のスピン偏極率がゼロの場合のトンネル抵抗である。 この実施例ではB1層〜B5層が同じバリヤ層であるため、トンネル接合1〜5においてR 0は同じ値である。 a1 〜a6
    を0.95〜 0.8に調節することによって、各接合での磁気抵抗の出力信号が十分識別できる程度に異なることが分かった。

    【0067】次に、特定のフリー磁性層の磁化が反転したときのM1層およびM6層間の電気抵抗R totalの変化を計算した。 図9に示した全ての磁化が左を向いている状態から、H c2 <H ex <H c3の外部磁界H exをかけてM2層だけ右向きに反転したとする。 △R1 +△R2 =
    2.54R 0だけR totalが増大するはずである。 さらに、
    c3 <H ex <H c4の外部磁界H exをかけてM3層が右向きに反転したとする。 このとき、M2層とM3層は平行になるために△R2 だけ抵抗減少し、M3層とM4層は反平行になるために△R3 だけ抵抗が増大する。 差し引き△R3 −△R2 =0.61R 0だけR totalが増大するはずである。 さらに、M4層を右向きに反転したとすると、△R4 +△R3 =1.36R 0だけR totalが増大するはずである。 このようにして、どの強磁性層の磁化が反転しているかは電気抵抗の測定により十分識別できることが分かった。

    【0068】この磁気素子のR totalのH ex依存性を測定した結果を図10に示す。 ±30Oe の磁界をかけてヒステリシス曲線を描いた。 円内に示した 4つの矢印は、
    M2層、M3層、M4層、M5層のフリー磁性層の磁化の向きを表す。 それぞれの磁化の配置にしたがって、R
    totalが変化している様子がよく分かる。 途中の磁界強度H exで止めて磁界を取り去ればH exでの磁化配置が保存され、不揮発メモリとなる。

    【0069】このメモリセルでは 4つのフリー磁性層に対応しで4bit(=16状態)のメモリとなる。 しかし図9には 8状態しか示されていない。 他の磁化配置の状態は、
    もっと小さなヒステリシスループを描くことによって実現できる。 例えば図11に示したヒステリシスループを描くと、最後のE点のゼロ磁場状態ではM3層の磁化だけ右向きになった状態が実現できる。

    【0070】実施例3 実施例2と同様のメモリセルで、バリヤ層の異なるメモリセルを作製した。 GdScO 3単結晶基板上にLaM
    nO 3反強磁性絶縁体を堆積し、その上にM6層の一部としてLa 1-x Sr x MnO 3を堆積した。 次いで、M
    6層の一部からB5層とM5層の下部を形成する物質として、Ti 3 (La,Sr) 9 Mn 6yを 1擬単位胞堆積した。 この実施例では擬単位胞として、Mnペロフスカイ卜層部分の中央からMnペロブスカイト層部分の中央までをとる。

    【0071】次に、M5層の上部、B4層、M4層、B
    3層およびM3層の下部を形成する物質として、Bi 2
    (La,Sr) 5 Mn 4yを 2擬単位胞堆積した。 次いで、M3層の上部、B2層、M2層、B1層およびM
    1層の下部を形成する物質として、La 2-2x Sr 1+2x
    27を 2擬単位胞堆積した。 さらに、M1層の上部としてLa 1-x Sr x MnO 3 、その上にLaMnO 3
    反強磁性絶縁体を堆積した。

    【0072】結果として、図9と同じ構造のメモリセルで,B5層が[(La,Sr)TiO 33で表される
    3重のTiペロブスカイトブロック層、B4層とB3層がSrO−BiO−BiO−SrOブロック層、B2層とB1層がLa 2-x Sr x2岩塩型ブロック層となった。 また、M5層は n=5のMnペロブスカイト層、M4
    は n=4、M3層は n=3、M2層は n=2の各Mnペロブスカイト層となった。 B3層〜B5層のトンネルバリヤ層は、B2層〜B1層よりも厚く障壁が高いため、トンネル接合3、4、5ではトンネル接合1、2よりもトンネル確率が低く、かつ△R=R ↑↓ −R ↑↑が大きくなった。 それ以外は実施例2と同様の多値メモリ動作が確認された。

    【0073】実施例4 実施例2のメモリセルまたは実施例3のメモリセルを多数並べて、メモリアレイを作製した。

    【0074】図12にその書き込み線の例を示す。 各ワード線A、B、Cには、H c2の磁界を発生する電流より小さな電流を流す。 例えば 6Oe の磁場を発生する程度の電流を流す。 ワード線AとBに電流を流すと、中央のメモリセルでのみH c2を超える磁界を発生し、M2層の磁化を反転できる。 ワード線AとBとCに電流を流すと、中央のメモリセルでのみH c3を超える磁界を発生し、M3層の磁化を反転できる。 このように、 3層の平行なワード線群を作製すれば、 2枚のフリー磁性層までは書き込みができる。 さらに多数枚のフリー磁性層の書き込みを制御するには、さらにワード線群を多層化すれはよい。 しかしそれには限度がある。

    【0075】そこで、図13に示すように書き込み線にトランジスタを設けてスイッチングすればよい。 図13
    の水平方向に走っている電流線には比較的大きな電流が流れるので、この線の作る磁界がメモリセルの磁化容易軸方向に向かないよう配慮する必要がある。 トランジスタとして例えばMOS−FETを用い、図13の信号線Wからの信号でFETがONとなり、特定の 1つのメモリセルにのみ記録用の磁界がかかる。 H c2からH c5まで任意の磁界をかけることができる。 情報の読み出しに際しては、電流線に読み出し用微少電流を流し、図13の信号線Rからの信号でFETがONとなり、特定の 1つのメモリセルの電気抵抗が測定される。 図13において、それぞれの配線は金属膜、FETはSiのMOS−
    FETとすればよい。 しかし、120K以下の低温で使う場合は、配線を高温超電導体薄膜、FETを高温超電導体の電界効果素子で構成することで、より低消費電力のメモリが実現できる。 Mnを含む層状ペロブスカイト酸化物と高温超電導体とは、同じ単結晶基板上にエピタキシャル成長させることができる上に、成膜技術と加工プロセス技術が類似するため、両者を組み合わさせることは製造上のメリットもある。

    【0076】図14に、本発明の不揮発性磁気メモリと高温超電導体の高速論理回路とを組み合わせたシステムの概念図を示す。 従来、高温超電導体だけで大容量メモリや不揮発メモリを構成することは困難であった。 本発明のMnを含む層状酸化物を用いた磁気メモリを同一基板上に形成することにより、その欠点を克服することができる。 図14においては、ペロブスカイト単結晶基板21上にMnを含む層状酸化物を利用した本発明の不揮発性多値メモリアレイ(超電導配線と超電導電界効果トランジスタを含む)22と高温超電導体高速論理回路(単一磁束量子論理回路など)23とが形成されており、これらは例えばGM型冷凍機24で20〜80Kの低温に保持されている。

    【0077】実施例5 実施例2と似た構造で、しかし磁化容易軸の方向が異なるメモリセルを作製した。 図15に断面構造を示す。 S
    rTiO 3単結晶基板11上にPr 0.5 Sr 0.5 MnO
    3反強磁性絶縁体AFを堆積し、その上にM6層としてLa 1-x Sr x MnO 3を堆積すると、M6層は磁化固定層として働く。 M2層、M3層、M4層およびM5層はフリー磁性層であり、図2と同様だがペロブスカイト部分の層数を変えて、La 2-2x Sr 1+2x MnO 7の 1擬単位胞、La 4-4x Sr 1+4x Mn 413の 1擬単位胞、L
    8-8x Sr 1+8x Mn 833の 1擬単位胞、La 16-16x
    1+16x Mn 1649の 1擬単位胞を積層した構造である。

    【0078】ここでは、磁化容易軸が基板面に垂直方向である磁気素子を作製した。 そのような状態を実現するためには組成x と動作温度を選択する。 例えば、 x=0.3
    の場合に 0〜 90Kの温度範囲で実現できる。 この組成、
    温度範囲、磁化配置を選ぶことの利点は、大きな磁気抵抗比が容易に再現性よく得られる点である。 例えば、温度 60Kでc軸方向に 100Oe の外部磁界をかけた場合に、MR比=(R ↑↓ −R ↑↑ )/R ↑↑ = 22%が得られた。 その理由は、この組成、温度範囲、磁化配置で伝導を担う3d電子の軌道状態が強磁性トンネル接合に好適な状態であるためと考えられる。

    【0079】磁化容易軸が基板面に垂直方向であることの利点は、情報の読み出し方法として電気抵抗測定以外に、光学的にファラデー効果あるいは極カー効果で行える点である。 膜面に垂直に直線偏光を入射すると、透過光あるいは反射光の偏光面が磁性層の磁化状態に応じて回転するため、その回転を測定して情報を読み出すことができる。 M2層、M3層、M4層およびM5層の厚さがn2=2、n3=4、n4=8、n5=16 と異なるため、各層での回転角が異なり、どの層の磁化が反転しているかが識別できる。 Mnペロブスカイト酸化物のファラデー回転角は、波長 830nmで 10000度/cm 、波長 400nmで 60000度
    /cm と大きい。 前者の波長領域では3d状態間の遷移に起因し、後者の波長領域ではO2p軌道からMn3d軌道への電荷移動励起に起因する。 ファラデー回転角は光のエネルギーが電荷移動エネルギー(4.5eV)に近付くほど増大するので、光源としては波長 400nmから 300nmの短波長レーザを用いることが望ましい。 このような短波長レーザーは、ZnO(バンドギャップ 3.37eV)やGaN(バンドギャップ 3.4eV)を用いて実現できる。

    【0080】このメモリセルへの情報の書き込みは、書き込みライン13に電流を流して膜面に垂直方向に磁場をかけて行う。 磁性層が厚いほど反磁界が小さいために、多値の情報の記録が可能である。 この実施例の組成、温度範囲、磁化配置においては、B1層、B2層、
    B3層、B4層およびB5層のLa 2-x Sr x2岩塩型ブロック層を介して磁性層間に弱い反強磁性相互作用が働くことが、記録磁界の低減に役立つ。

    【0081】Mnペロブスカイト酸化物を磁性層としたメモリにおいて、情報を光で記録することも可能である。 図16に示すように、磁化固定層(Hard)の上にバリヤ層BとしてPr 1-x Ca x MnO 3 (x=0.3〜0.5)またはNd 0.5 Sr 0.5 MnO 3を堆積する。 これらの物質はおおよそ200K以下の低温域で電荷整列した反強磁性絶縁体である。 図16で斜線部は絶縁体を表している。 この上に磁性層Mを堆積する。 M層の磁化は予め磁化固定層と反平行の向きに磁化しておく。 このノモリに光を照射すると、下記のプロセスによって、被照射部分のみ磁性層Mの磁化が反転して情報が書き込まれる。 光の波長は2000〜 300nmの範囲でよい。

    【0082】上記した電荷整列反強磁性絶縁体に光を照射すると、光誘起キャリアが発生して強磁性金属伝導状態になる(K.Miyano et al., Phys. Rev. Lett. 78 4257
    (1997))。 その結果、磁化固定層(Hard)と磁性層Mの間に強磁性的交換相互作用(主に二重交換相互作用による)が生じ、磁性層Mの磁化が磁化固定層と平行になる。 電荷整列反強磁性絶縁体から光誘起キャリアによる強磁性金属伝導状態への相転移は 1次相転移である。 従って、光照射により発生した強磁性金属状態のembryoはある臨界核の大きさ以上にならないと相転移にならない。

    【0083】図16(a)は弱い光を照射した場合を示しており、発生した強磁性金属状態のembryoは臨界核より小さいために光照射を止めると消失してしまう。 光が照射されている間に filamentaryな強磁性金属伝導状態が磁化固定層から磁性層Mにつながり、M層の磁化を反転して情報が記録される。 光照射を止めるとバリヤ層B
    の全体が元の絶縁体に戻る。 このように記録された情報は、M層の保磁力以上の磁界を下向きにかけることにより消去される。

    【0084】一方、図16(b)に示すように、強い光を照射した場合には、強磁性金属状態のembryoは臨界核より大きくなり、被照射部全体が強磁性金属状態に相転移する。 光照射を止めた後もこの強磁性金属状態は残る。 こうしてM層に記録された情報は、磁化固定層の保磁力以上の非常に大きな磁界をかけない限り消去できない。 情報を消去するには、B層の温度を電荷整列が融解し常磁性になる温度以上まで上昇させ、再び動作温度まで冷却してB層全体を絶縁体にする必要がある。 このように、記録時の光の強度を変えることによって、消去可能な情報と消去不可能な情報を区別して記録することができる。 すなわち、 1つのメモリセルに1bitのROMの機能と多bit のRAMの機能の両方を持たせることができる。 ここで、記録動作すなわちB層での光誘起キャリアによる強磁性金属伝導状態への相転移が容易に起きるようにするには、同時にB層に電圧または磁場をかけることが有効である。

    【0085】以上の光照射による情報書き込み方法と、
    ファラデー効果やカー効果による情報再生方法とを組み合わせると、Mnペロブスカイト酸化物を利用した光磁気記録媒体が構成できる。

    【0086】実施例6 この実施例では高感度な磁場センサーを作製した。 図1
    7にその構造を示す。 図中の菱形はペロブスカイト構造のMnO 6八面体の断面を表し、中央の丸はMnイオンを表している。 CaZrO 3単結晶基板(斜方晶ペロブスカイト単結晶基板)11上にLaMnO 3反強磁性絶縁体AF2を堆積し、その上にM3層の下部としてLa
    0.67 Sr 0.33 MnO 3を堆積した。

    【0087】次に、M3層の上部、B2層、M2層、B
    1層およびM1層の下部を形成する物質として、(Pb
    2 Cu)Sr 3 LaMn 312+δを 2擬単位胞堆積した。 この実施例では擬単位胞として、Mnペロブスカイト層部分の中央からMnペロブスカイト層部分の中央までをとる。 さらに、M1層の上部としてLa 0.67 Sr
    0.33 MnO 3を、その上にLaMnO 3反強磁性絶縁体AF1を堆積した。 B2層とB3層はSrO−PbO−
    Cu−PbO−SrOブロック層からなり、トンネルバリヤ層として働く。 M1層とM3層は磁化固定層である。 M2はペロブスカイト 3単位胞分の厚さを持つMn
    ペロブスカイト層からなり、フリー磁性層である。

    【0088】Mnを含む層状酸化物を利用することにより、これほど薄くとも強磁性金属伝導層として働く。 トンネル絶縁膜の間にこれほど薄い強磁性金属伝導層を作製することは、Fe、Co、Niを主成分とした従来の金属磁性膜では成し得なかったことである。 フリー磁性層が薄いことから反磁界の影響が小さく、小さな外部磁界でもその方向にフリー磁性層の磁化が向く。 すなわち、敏感なセンサーとなる。 M1層からM3層までの 2
    重トンネル接合の抵抗を測定することにより、外部磁界の磁化容易軸方向の成分が分かる。 一般に、従来の金属人工格子からなるGMR素子や金属積層膜からなるスピンバルブよりも、強磁性トンネル接合の方が磁気抵抗効果は大きい。 この実施例の磁気素子は、その強磁性トンネル接合を2重に含むことにより、さらに磁気抵抗効果が大きく、従来にない高感度な磁気センサーとなる。

    【0089】この実施例の磁気素子は、高感度な磁気センサーとして、例えば磁気ディスク装置の読み出しヘッドとして使用することができる。 他に、磁気メモリとしても使用し得るものである。

    【0090】実施例7 この実施例では、他の構成による高感度な磁場センサーを作製した。 図18にその構造を示す。 NdScO 3単結晶基板(斜方晶ペロブスカイト単結晶基板)11上にLaMnO 3反強磁性絶縁体AFを堆積し、その上にM
    2層の下部としてLa 0.67 Ba 0.33 MnO 3を堆積した。

    【0091】次に、M2層の上部、B層およびM1層の下部を形成する物質として、Bi 2 Sr 3 Mn 29+δ
    (δ〜0.3)を 1擬単位胞堆積した。 この実施例では擬単位胞として、Mnペロブスカイト層部分の中央からMn
    ペロブスカイト層部分の中央までをとる。 さらに、M1
    層の上部としてLa 0.67 Ba 0.33 MnO 3を 8単位胞分の厚さ堆積した。 B層はSrO−BiO−BiO−Sr
    Oブロック層からなり、トンネルバリヤ層として働く。
    M2層は磁化固定層である。 M1層はペロブスカイト 9
    単位胞分の厚さを持つMnペロブスカイト層からなり、
    フリー磁性層である。 フリー磁性層のキュリー温度は室温より高かった。 室温において、小さな外部磁界でもその方向にフリー磁性層の磁化が向く。 このトンネル接合の抵抗を測定することにより、外部磁界の磁化容易軸方向の成分が分かる。

    【0092】作製した素子の薄膜の方位関係をX線回折で調べたところ、NdScO 3 a軸(a=0.5574nm)/
    /LaMnO 3 a軸(a=0.5541nm)、NdScO 3
    軸(b=0.5771nm)//LaMnO 3 b軸(b=0.5551
    nm)であり、格子が整合するようにLaMnO 3のb軸が一方向に揃ってエピタキシャル成長していた。 この素子は、成膜後室温にてLaMnO 3のb軸方向に1Tの磁場をかけて、磁化固定層M2の磁化方向を一方向に揃えて固定した。 磁化固定層の磁化を一方向に揃える他の方法として、成膜しながら磁場をかけてもよい。

    【0093】この素子はフォトリソグラフィーにより、
    LaMnO 3のa軸方向に 1μm 、LaMnO 3のb軸方向に10μm の大きさに加工し、その後に磁気特性を測定した。 フリー磁性層のキュリー温度は350Kであった。
    また、293Kでの磁気抵抗比(=(R ↑↓ −R ↑↑ )/R
    ↑↑ )は 30%であった。 図19に293Kでの抵抗の磁場依存性を示す。 室温において高い感度を示す磁気センサーが得られていることが分かる。 一方、±1kOe の磁場をかけても磁場固定層M2の磁化方向に変化はなかった。
    一軸磁気異方性を付与するための反強磁性層としてLa
    MnO 3を用いることによって、特性の優れた磁化固定層が得られた。

    【0094】実施例8 層状Mnペロブスカイト酸化物を利用した非線形光磁気素子の実施例を図20に示す。 これは、(La,Sr)
    3 Mn 27の 1擬単位胞と(La,Sr) 4 Mn 3
    10の 1擬単位胞を積層して作製したものであり、金属層(M1)/絶縁層(B)/金属層(M2)の構造を有する。

    【0095】この実施例において、金属層M1はぺロフスカイト 2単位胞分の厚さを持つMnペロブスカイト層・(La 1-x Sr x )Mn 25 (x=0.3) であり、金属層M2はぺロフスカイト 3単位胞分の厚さを持つMnぺロフスカイト層・(La 1-x Sr x2 Mn 38 (x=
    0.3) である。 絶縁層BはLa 2-x Sr x2岩塩型ブロック層であり、トンネルバリヤ層として機能する。 従って、この非線形光磁気素子全体を(La 1-x Sr x
    7 Mn 517の組成の酸化物が 1単位胞分の厚さで形成された薄膜であると見なすことができる。 この非線形光磁気素子において、金属層M1、M2の厚さが互いに異なり、しかも絶縁層Bの厚さが金属層の伝導電子がトンネルできるような厚さであることが特徴である。

    【0096】図21に示すように、まず金属層M1と金属層M2の磁化が反平行な状態の超薄膜を 20Kまで冷却し、偏光方向が金属層と絶縁層の面に垂直な方向に一致するような 1〜 30THzの周波数(f 1 )である遠赤外光を入射したが、 2〜 60THz付近の周波数(f 2 = 2
    1 )の倍高調波の赤外光の発生は観測することができなかった。

    【0097】次に、この実施例の超薄膜に金属層と絶縁層の面に垂直な方向に 40kA/m(約500Oe)の磁場をかけて 20Kに冷却し、金属層M1と金属層M2の磁化を平行にした状態の下で、偏光方向が金属層と絶縁層の面に垂直な方向に一致するような1〜 30THzの周波数(f 1
    である遠赤外光および赤外光を入射したところ、金属層M1と金属層M2の間に、その倍高調波である 2〜 60T
    Hz付近の周波数(f 2 = 2f 1 )の遠赤外光や赤外光を発生させることができた。 このとき、 2次非線形光学定数χ (2) (2f 1 )の大きさは、f 2 = 2f 1 =30.2THz
    のときに最も大きな値を得ることができた。 すなわち磁場を加えることにより、 2次非線形光学定数χ (2) (2f
    1 )を 0でない値に変えることができた。 また、磁場の変化に対して 2次非線形光学定数χ (2) (2f 1 )の周波数依存性は可逆的に変化した。 以上述べたように、金属層(M1)/絶縁層(B)/金属層(M2)の構造の素子において、磁場を加えることにより 2次の非線形光学効果を発揮する。 以下に、その原理の概略を説明する。

    【0098】Mnペロブスカイト酸化物La 1-x Sr x
    MnO 3におけるMnの d軌道の電子状態は、d ε軌道に局在スピンを担う電子が 3個占有し、d γ軌道に局在スピンと同じ向きのスピンを持つ伝導電子が 1-x個占有している状態となっている(図4(a)参照)。

    【0099】x=0.3の場合、 90K以下の低温で磁化容易軸は層に垂直な方向と考えられる。 この実施例の組成、
    温度範囲、磁化配置においては、B層のLa 2-x Sr x
    2岩塩型ブロック層を介して磁性層M1、M2間に弱い反強磁性相互作用が働く。 磁場のない状態では、金属層M1と金属層M2の磁化は平行に揃う。 そうすると、
    絶縁層Bを挟んだ最近接Mnサイト間のトランスファー積分t 1がおよそ 20meVとなる。

    【0100】図22(a)に示すように、金属層M1と金属層M2の磁化が反平行になっている場合、金属層M
    1の局在スピンと同じ向きの伝導電子は、金属層M2の領域では大きなポテンシャルを感じるため、伝導電子は金属層M1の領域に閉じ込められ、単一量子井戸を形成する。 一方、金属層M1と金属層M2の磁化を平行にした場合、金属層M1の局在スピンと同じ向きの伝導電子は、金属層M2の領域にも存在することができる。 その結果、図22(b)に示すように、非対称な2重量子井戸を形成する。

    【0101】このように、空間的に非対称なポテンシャル井戸が形成されていると、その井戸中を運動する電子によって、偶数次特に 2次の非線形光学効果を発生させることができる。 例えば、半導体超格子により作製した非対称量子井戸(asymmetricquantum wells)での 2次非線形光学効果の例がPhysical Review Letters 72 , 2183
    (1994)、Physical Review B 44 , 11315(1991) に示されている。 IEEE Jour-nal of Quantum Electronics, Vo
    l.QE-19 , No.5, pp791-794 の (1)式に示されているように、一般にこのような非対称量子井戸において、どの周波数において最も大きな非線形効果が現れるかは、
    伝導電子のエネルギー準位の差に依存している。 基底状態(エネルギーE 0 )と、次にエネルギーの低い励起状態(エネルギーE 1 )とのエネルギー準位差(E 1 −E
    0 )をプランク定数hで除した周波数が、入射光の周波数のf 1の 2倍に等しいとき、言い換えると 2f 1 =(E 1 −E 0 )/h, …(21) が成り立つとき、大きな非線形光学効果が現れる。

    【0102】この実施例の素子においては、金属層M1
    と金属層M2の磁化が平行になっている場合のエネルギー準位は、次のようなtight binding 近似のハミルトニアンによって見積もることができる。

    【0103】

    【数8】

    ただし、

    【数9】

    ここで、金属層M1および金属層M2それぞれの面内における金属層に垂直方向に隣接するMn原子間の実効的なトランスファー積分t

    0は約300meVである。 また、絶縁層Bを挟んで隣接する金属層M1と金属層M2のMn


    原子間の実効的なトランスファー積分t

    1は約 20meVである。 (23)式の行列の固有値を求めると、エネルギーの大きい順に、E

    4 =424.7meV、E

    3 =300.0meV、E

    2


    0meV、E

    1 =-300meV 、E

    0 =-424.7meV となる。

    【0104】基底状態(エネルギーE 0 )と、次にエネルギーの低い励起状態(エネルギーE 1 )とのエネルギー準位差(E 1 −E 0 )は、124.7meVであることが分かる。 このことから、をプランク定数hで除した周波数が、入射光の周波数のf 1の 2倍に等しいとき、 2f 1
    =(E 1 −E 0 )/hの関係により、 2f 1 =30.1THzのときに 2次非線形光学定数χ (2) (2f 1 )が大きな値をとることが理解される。

    【0105】また、この実施例に記載した素子において、 2次非線形効果が生じる効果を、f 1とf 2の周波数の入射光からf 3 =f 2 −f 1の周波数の差周波数の光を出力光として得るパラメトリック増幅に適用可能であることは、容易に類推できる。 40kA/m(約 500Oe)以上の磁場を加えた場合、f 3が30.1THz のときにf 3の周波数の出力光は最大の振幅を得た。

    【0106】この実施例で示した(La 1-x Sr x7
    Mn 517 1単位胞分の厚さの超薄膜では、入射光と非線形素子とが相互作用する領域が小さいため、相互作用する体積を大きくするために、上記した金属層/絶縁層/金属層の構造を周期的に積層することが望ましい。 このとき、周期構造の単位胞において、空間反転対称性を失うように積層することが必要である。 言い換えると、
    空間的に非対称となるように積層することが必要である。 具体的には、金属層M1/絶縁層B/金属層M2/
    絶縁層B/の構造を周期的に積層した、(La,Sr)
    3 Mn 27 /(La,Sr) 4 Mn 310の場合には、空間反転中心が存在するので、偶数次の非線形光学効果は存在しない。 このような構造ではなく、例えば図23に示すように、金属層M1/絶縁層B/金属層M2
    /絶縁層B′のように、絶縁層Bと絶縁層B′の厚さが異なるように結晶構造を構成して、繰り返し積層した素子を作製すると、偶数次の非線形光学効果が生じる。

    【0107】また、超周期構造の単位胞中に金属層が 3
    層以上存在する場合にも、金属層や絶縁層の厚さを変えて積層することにより、空間対称性を失わせることができる。 図24は金属層M1、M2、M3の厚さを互いに異なるように積層して反転対称性を失わせた、例えば(La,Sr) 3 Mn 27 /(La,Sr) 4 Mn 3
    10 /(La,Sr) 5 Mn 413を単位胞とする超周期構造の例である。 図25はトンネルバリヤ層B、
    B′、B″の厚さを互いに異なるように積層して反転対称性を失わせた、例えば(La,Sr) 3 Mn 27
    Bi 2 Sr 3 Mn 29 /Ti 341 Mn 215を単位胞とする超周期構造の例である。

    【0108】上述したように、本発明の磁気素子を用いると共に、Mnペロブスカイト層からなる金属層と絶縁性のブロック層からなる絶縁層とを、空間反転対称性を失うように、言い換えると空間的に非対称となるように積層することによって、偶数次の非線形光学効果を発現する光磁気素子を構成することができる。

    【0109】なお、上記した各実施例においては、Mn
    を含む層状酸化物を適用した場合について説明したが、
    Mnに限らずCr、Fe、Co、Niなどを含む層状酸化物を用いた場合においても同様な磁気素子を構成することができる。

    【0110】

    【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、トンネルバリヤ層をピンホール、ショート、局在準位の形成なしに均一にかつ平坦に再現性よく形成することができ、またサブミクロンの大きさに微細化しても特性劣化しない強磁性トンネル接合、さらには従来の金属磁性膜を用いたものよりも大きな磁気抵抗効果を発現する強磁性トンネル接合を得ることができる。 従って、このような強磁性トンネル接合を用いた本発明の磁気素子によれば、例えば高感度な磁気センサ、多値記憶のできる磁気メモリ、非線形光磁気素子などを提供することが可能となる。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】 本発明に用いる層状酸化物の結晶構造の一例を摸式的に示す図である。

    【図2】 本発明に用いる層状酸化物の結晶構造の他の例を摸式的に示す図である。

    【図3】 本発明に用いる層状酸化物の結晶構造のさらに他の例を摸式的に示す図である。

    【図4】 MnペロブスカイトやCoペロブスカイトにおいて強磁性金属伝導状態になる原理を説明するための図である。

    【図5】 本発明の磁気素子の基本構造を模式的に示す図である。

    【図6】 本発明の磁気素子が磁気抵抗効果を発現することを説明するための図である。

    【図7】 Mnペロブスカイトのnとキュリー温度との関係の一例を示す図である。

    【図8】 本発明の実施例で用いた成膜装置の概略構成を示す図である。

    【図9】 本発明による磁気メモリの一実施例の構造を模式的に示す断面図である。

    【図10】 本発明の実施例2による磁気素子の特性を示す図である。

    【図11】 本発明の実施例2において任意の磁化配置を取れることを説明するための図である。

    【図12】 本発明の磁気メモリをメモリアレイに適用した一構造例を摸式的に示す図である。

    【図13】 本発明の磁気メモリをメモリアレイに適用した他の構造例を摸式的に示す図である。

    【図14】 本発明の磁気メモリを高温超電導体高速論理回路を組み合わせて使用する場合の一構造例を模式的に示す図である。

    【図15】 本発明の磁気メモリの他の実施例の構造を摸式的に示す断面図である。

    【図16】 本発明の磁気メモリに光で記録する原理を示す図である。

    【図17】 本発明の磁気素子を磁気センサに適用した一実施例の構造を模式的に示す断面図である。

    【図18】 本発明の磁気素子を磁気センサに適用した他の実施例の構造を模式的に示す断面図である。

    【図19】 本発明の実施例7による磁気センサの特性を示す図である。

    【図20】 本発明の磁気素子を非線形光磁気素子に適用した一実施例の構造を模式的に示す断面図である。

    【図21】 非線形光学効果を持つ本発明の磁気素子からの透過光に入射光の倍高調波が含まれることを説明するための図である。

    【図22】 非線形光学効果を持つ本発明の磁気素子のポテンシャル分布を説明するための図である。

    【図23】 本発明の磁気素子における反転対称性を持たない超周期構造の例を示す図である。

    【図24】 本発明の磁気素子における反転対称性を持たない超周期構造の他の例を示す図である。

    【図25】 本発明の磁気素子における反転対称性を持たない超周期構造のさらに他の例を示す図である。

    【符号の説明】

    M………強磁性金属伝導層 B………絶縁層 AF……反強磁性体 1、2、3、4、5……トンネル接合

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