【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、放電により発光する蛍光体層を設けることにより、カラー表示を可能としたプラズマディスプレイパネル（ＰＤＰ）に関し、特に画面表示のコントラストを高め、鮮明なカラー表示を可能とするＰＤＰに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、マトリクス表示をＰＤＰにおいて蛍光体による所定の色の表示に適した３電極構造の面放電型のＡＣ（交流）駆動方式のＰＤＰが知られている。 ３電極構造の面放電型ＡＣＰＤＰは、放電空間を介して対向する表示面側の一対の基板の表示面側の基板の内面に水平方向に互いに平行に伸長する複数のサスティン電極対を設け、ＭｇＯ層で被覆する一方背面側の基板の内面に垂直方向に伸長する複数のアドレス電極を配置し、このアドレス電極間に帯（ストライプ）状に隔壁（リブ）を設け、更に隔壁の側面及びアドレス電極上を覆うように蛍光体層を形成し、表示面側及び背面側の一対の基板を一体封止した構造となっていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、ＰＤＰでは、外光（周囲光）の反射により表示のコントラストが悪化するという問題があり、これに対して次のような手段が考えられる。 （１）ＰＤＰの表示面側の基板の外表面の全面に、特定の波長領域の光を吸収しそれ以外の波長領域の光を透過させるフィルタを被着させる。 （２）ＰＤＰの赤、緑、青の３色の蛍光体層に対応させて赤色光透過フィルタ、緑色光透過フィルタ、青色光透過フィルタの３色のフィルタを形成する。

【０００４】しかしながら、（１）の外付けフィルタの使用は、表示面の反射率を低下させてコントラストを向上させる効果が十分でない。 また、（２）の３色フィルタの使用は、表示面のコントラストを十分向上させるが形成工程が複雑となる。 本発明は、上記の事情に鑑み、
低コストで表示のコントラストを高め、表示の視認性の向上を図ることを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明による請求項１に記載のプラズマディスプレイパネルは、放電空間を介して対向配置された表示面側及び背面側の一対の基板と、
背面側の基板の内面に設けられた赤、緑、青の３色の蛍光体層を有し、放電により蛍光体層の発光させるように構成されたプラズマディスプレイパネルであって、表示面側の基板の外表面に緑色光吸収フィルタを設けると共に表示面側の基板の内面に、放電空間を介して対向する赤、青の蛍光体層の少なくとも１つに対応する単色光透過フィルタを設けたことを特徴とする。

【０００６】また、請求項２に記載の発明は、請求項１
記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、緑色光吸収フィルタは、５５５ｎｍ付近の透過率が４０〜８０％
でかつ赤色光及び青色光の波長域で透過率が５５５ｎｍ
付近の透過率より１０％以上高い透過特性を有することを特徴とする。 また、請求項３に記載の発明は、請求項１記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、表示面側の基板の内面に、放電空間を介して対向する赤、青の蛍光体層に対応する単色光透過フィルタを設け、緑の蛍光体層は、緑色光以外の波長域の光を吸収するよう着色された蛍光体層からなることを特徴とする。

【０００７】また、請求項４に記載の発明は、請求項１
記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、表示面側の基板の内面に、放電空間を介して対向する赤の蛍光体層に対応する赤色光透過フィルタを設け、緑、青の蛍光体層の内の少なくとも１つは、対応する単色光以外の波長域の光を吸収するよう着色された蛍光体層からなることを特徴とする。 また、請求項５に記載の発明は、請求項１記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、表示面側の基板の内面に、放電空間を介して対向する青の蛍光体層に対応する青色光透過フィルタを設け、赤、緑の蛍光体層の内の少なくとも１つは、対応する単色光以外の波長域の光を吸収するよう着色された蛍光体層からなることを特徴とする。

【０００８】また、本発明による請求項６に記載のプラズマディスプレイパネルは、放電空間を介して対向配置された表示面側及び背面側の一対の基板と、前記背面側の基板の内面に設けられた赤、緑、青の３色の蛍光体層を有し、放電により蛍光体層の発光させるように構成されたプラズマディスプレイパネルであって、表示面側の基板の外表面に緑色光吸収フィルタを設けると共に赤、
青の蛍光体層の少なくとも１つの蛍光体層は、対応する単色光以外の波長域の光を吸収するよう着色された蛍光体層からなることを特徴とする。 また、請求項７に記載の発明は、請求項６記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、緑色光吸収フィルタは、５５５ｎｍ付近の透過率が４０〜８０％でかつ赤色光及び青色光の波長域で透過率が５５５ｎｍ付近の透過率より１０％以上高い透過特性を有することを特徴とする。 また、請求項８に記載の発明は、請求項６記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、表示面側の基板の内面に、放電空間を介して対向する緑の蛍光体層に対応する緑色光透過フィルタを設けたことを特徴とする。

【０００９】

【作用】本発明によれば、表示面側の基板の外表面に緑色光吸収フィルタを設けると共に表示面側の基板の内面に、放電空間を介して対向する赤、青の蛍光体層の少なくとも１つに対応する単色光透過フィルタ（対応する単色光以外の波長域の光を吸収するフィルタ）を設けたので、低コストで表示のコントラストを高め、表示の視認性の向上させたプラズマディスプレイパネルを提供することができる。 また、着色蛍光体層を用いることにより、製造工程が簡単で実用に耐え得る外光反射低減が可能となる。

【００１０】

【発明の実施の形態】

（第１の実施の形態）以下に本発明の第１の実施の形態を図１〜図４を参照して説明する。 図１は、本発明におけるＰＤＰの斜視図である。 ＰＤＰは、放電空間１３を介して対向配置された一対の基板、前面ガラス基板１１
及び背面ガラス基板１２の表示面側の前面ガラス基板１
１の内面に透明導電膜からなる透明電極１４と、透明導電膜の導電性を補うための金属膜からなるバス電極１５
とで構成されるサスティン電極対、サスティン電極対を覆う誘電体層１７及び誘電体層を覆うＭｇＯ層１８が形成され、背面側の背面ガラス基板１２上にサスティン電極対と面交する方向に配置されたアドレス電極２１、赤色（Ｒ）、緑色（Ｇ）、青色（Ｂ）の３原色の蛍光体層２２、及び放電空間１３を区画する帯状の隔壁（リブ）
２０が設けられている。 放電空間１３には、ネオンにキセノンを混合した放電ガスが封入されている。

【００１１】前面ガラス基板１１の外側全面には、緑色光を吸収する顔料、色素等を混入させたアクリル板等からなる緑色光吸収フィルタ１９が取り付けられており、
前面ガラス基板１１の内面の蛍光体層２２に対応する面、図１では赤色蛍光体層に対向する面に赤色光透過フィルタ１６がスクリーン印刷等で形成されている。

【００１２】バス電極１５は、クロム（Ｃｒ）／アルミニウム（Ａｌ）の２層金属膜からなり、例えば、クロム、アルミニウムを順にスパッタリング又は蒸着し、フォトリソグラフィ法を用いてパターンニングすることにより形成される。

【００１３】図２は、赤、緑、青の前面ガラス基板内面用各フィルタと外付け緑色光吸収フィルタの光波長に対する透過率を示したものであり、外付けフィルタ以外は基板の透過率を含んでいる。 図２のａは赤、ｂは緑、ｃ
は青、ｄは外付け緑色光吸収フィルタの特性を示す。

【００１４】図２のｄの外付け緑色光吸収フィルタは、
視感度の最も高い５５５ｎｍ付近の透過率が７０％程度で、且つ、赤及び青色領域の透過率が５５５ｎｍ付近の透過率よりも１０％以上高い。

【００１５】図３は、図２で用いた各フィルタを使用して、ａは基板内面に赤色光透過フィルタ、外側に緑色光吸収フィルタを設けた場合、ｂは基板内面に青色光透過フィルタ、外側に緑色光吸収フィルタを設けた場合、ｃ
は基板内面の赤、緑、青の各蛍光体層に対応して赤、
緑、青の各フィルタを設けた場合、ｄは外側に緑色光吸収フィルタのみを設けた場合の各外光反射率を、フィルタ無しの外光反射量を１として示している。

【００１６】図３からわかるように、視感度が最も高い波長５５５ｎｍ付近において、外付けフィルタのみのｄ
に比べ、ａ，ｂ，ｃ共に外光反射率が低下しており、赤色光透過フィルタのａ、及び青色光透過フィルタのｂ
は、３色のフィルタを設けた場合のｃに近い外光反射率を示している。

【００１７】図４は、図３に視感度を考慮した場合の外光反射率を示しており、ａ，ｂ，ｃ，ｄは各々図３の場合と同じ組み合わせを示している。 この場合も、フィルタ無しの外光反射量を１として示している。 図４からわかるように、可視光の範囲では、十分に外光反射を低減する効果が示されている。

【００１８】上述したように、前面ガラス基板１１の内面には、赤又は青色光透過フィルタを少なくとも１色パターン形成することにより効果的に外光反射を低減することができる。 従って、赤色光透過フィルタの代わりに、青色蛍光体層に対応する表示面側基板の内面に青色光透過フィルタを設けても良い。

【００１９】前述した赤色光透過フィルタは、ステインによる（イオン交換）着色ガラス薄膜金属または金属酸化物によりガラス素材中のアルカリイオンを置換した状態もしくは置換した後にコロイドを作って発色させたものである。 また、赤色光透過フィルタは赤色顔料とガラス又は赤色顔料のみを塗布して形成しても良い。

【００２０】青色光透過フィルタは、酸化コバルトを含む青色用ガラスペーストや、青色顔料とガラス粉末とを混合した青色ガラスペーストを用い、透明ガラスペーストを前面ガラス基板に印刷して得られる。 また、青色光透過フィルタは青色顔料のみを塗布して形成しても良い。

【００２１】上記第１の実施の形態では前面ガラス基板１１の内面に赤又は青色光透過フィルタのいずれか１つを形成する例を示したが、赤色光透過フィルタ及び青色光透過フィルタの２つのフィルタを形成するようにしても良いことはもちろんである。

【００２２】（第２の実施の形態）次に、表示面側の基板の外表面、表示面側の基板の内面、背面側の基板の蛍光体についての第２の実施の形態について説明する。 第２の実施の形態として、表示面側の基板の外表面に緑色光吸収フィルタを、表示面側の基板の内面に青及び赤の蛍光体層にそれぞれ対応する青及び赤色光透過フィルタを設け、さらに背面側の基板の緑の蛍光体層を緑色光を透過する、すなわち、緑色光以外の波長域の光を吸収する着色蛍光体層とすることにより、実用に耐え得るよう外光反射を低減することが可能となる。 また、緑色光吸収フィルタは、視感度の最も高い５５５ｎｍ付近の透過率が７０％程度で、且つ、赤及び青色領域の透過率が５
５５ｎｍ付近の透過率よりも１０％以上高い。

【００２３】（第３の実施の形態）第３の実施の形態として、表示面側の基板の外表面に緑色光吸収フィルタを、表示面側の基板の内面に青（又は赤）の蛍光体層に対応する青（又は赤）色光透過フィルタを設け、さらに背面側の基板の青（又は赤）の蛍光体層以外の少なくとも１つの蛍光体層を対応する単色光を透過する、すなわち、対応する単色光以外の波長域の光を吸収する着色蛍光体層とすることにより、実用に耐え得るよう外光反射を低減することが可能となる。 （第４の実施の形態）第４の実施の形態として、表示面側の基板の外表面に緑色光吸収フィルタを設けると共に、背面側の基板の対応する単色光以外の波長域の光を吸収する着色蛍光体層とすることにより、実用に耐え得るよう外光反射を低減することが可能となる。 尚、表示面側の基板の内面に緑の蛍光体層に対応して緑色光透過フィルタ設けるようにしても良い。

【００２４】このように、上述の第２〜第４の実施の形態では、着色蛍光体層を用いるため、前面側の基板の製造工程数の増加を抑えることができる。 着色蛍光体層の形成は、従来の蛍光体層と同様に塗布及び焼成が可能であり背面側の基板の工程を増加させることはない。 従って、表示面側の基板の外表面のフィルタ、表示面側の基板の内面のフィルタ、背面側の基板の蛍光体のそれぞれの組み合わせの中からパネル構造、パネル生産ラインの構成に適合する組み合わせが選択可能となる。

【００２５】

【発明の効果】パネル内部に赤色光透過フィルタ、青色光透過フィルタの内の少なくとも１つを形成し、パネル外側に緑色光吸収フィルタを取り付けることで、実用に耐え得る外光反射低減が可能となる。 合わせて、内部に形成するフィルタを２色以内に限定することで、コストアップを押さえることができる。 また、着色蛍光体層を用いることにより、製造工程が簡単で実用に耐え得る外光反射低減が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のＰＤＰの構造を示す図である。

【図２】本発明のＰＤＰの各フィルタの透過率を示すグラフである。

【図３】本発明のＰＤＰの各フィルタの外光反射率を示すグラフである。

【図４】本発明のＰＤＰの各フィルタの視感度を考慮した外光反射率を示すグラフである。

【符号の説明】

１１ ・・・・・ 前面ガラス基板 １２ ・・・・・ 背面ガラス基板 １３ ・・・・・ 放電空間 １４ ・・・・・ 透明電極 １５ ・・・・・ バス電極 １６ ・・・・・ 赤色光透過フィルタ １７ ・・・・・ 誘電体層 １８ ・・・・・ ＭｇＯ層 １９ ・・・・・ 緑色光吸収フィルタ ２０ ・・・・・ リブ ２１ ・・・・・ アドレス電極 ２２ ・・・・・ 蛍光体層