【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は断熱パネルに関する。 特に建材の壁、床、天井等の部位に使用される施工性に優れた断熱パネルに関する。

【０００２】

【従来の技術】住環境を改善するために、また省エネルギーの面からも、最近ではプレハブ建築物、在来工法である現地建築を問わず、断熱材が壁、天井、床その他に広く使用されるようになってきた。 それに応じて、断熱材の取り付け方も種々工夫され、施工性に優れた複合パネルの形態で断熱パネルが出現している。 特に木造住宅用としては木製の構造材への取り付けを考慮して、木製材料、例えば枠としての木材や面材としての合板等と組み合わせた断熱パネルが開発されている。

【０００３】実公平４-５２３３１号公報には、木造建築物の屋根に使用する断熱複合パネルとして、四周とひとつの面が紙で、他の一面が合板で構成された長方形箱型の空間に発泡断熱材が充填され、紙で構成された内底面に複数の横材が配列された複合断熱パネルが記載されている。 このパネルは表面の合板または横材によってたる木に固定できるため施工性が改善され、製品が美麗であることが特徴として挙げられている。 特許第２９５７
０３７号公報には、枠材と面材とで構成された空間内に断熱材を充填した断熱パネルであって、面材と断熱材との間に通気層を設けた通気層付き断熱パネルが記載されている。 また面材には通気層を外部と連通するための通気路が設けられ、これによって断熱材表面での結露を防止している。

【０００４】一方、断熱パネルの施工性を改良するためには、できるだけパネルの大きさが大きく、例えば間柱間および階高までのできるだけ広い面積を１枚のパネルでカバーできること、またこのような大きなパネルを容易に取り付けができることが必要である。 しかし、パネルが広幅、長尺となるにつれて面材、特に合板のような吸湿性のある面材の場合は反りが発生し易いこともあって、合板を面材として複合化した広幅の断熱パネルは得られていなかった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、施工性に優れ、面材の反りを生じない断熱パネルを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、表面材、縦枠材および横枠材からなる長方形空間に発泡断熱材を充填してなる断熱パネルであって、 ａ）縦枠材上面には、表面材が嵌合する切り欠き部を有し、 ｂ）表面材が前記切り欠き部に嵌合した状態で縦枠材上面、横枠材上面および表面材上面が大略平滑に形成されてなる断熱パネルに関する。 また、本発明は、表面材、
縦枠材、両端縦枠材の間に縦枠材に平行して配置された少なくとも１以上の中枠材および横枠材からなる長方形空間に発泡断熱材を充填してなる断熱パネルであって、 ａ）縦枠材上面および中枠材の上面には、表面材が嵌合する切り欠き部を有し、 ｂ）表面材が縦枠材および中枠材に嵌合した状態で、縦枠材、中枠材および表面材の上面が大略平滑に形成されてなる断熱パネルに関する。 更に、本発明は、上記いずれかの断熱パネルにおいて、縦枠材および横枠材で形成された空間の下面全面に裏面材が取り付けられた断熱パネルに関する。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の断熱パネルの構成上の特徴は、断熱パネルを形成する縦枠材および必要に応じて組み込まれる中枠材に表面材が嵌合する切り込みを設けていることであり、更に表面材が上記切り込みに嵌合して形成された断熱パネルの枠組みにおいて枠材（縦枠材、または中枠材が使用される場合は縦枠材と中枠材の両方を意味し、横枠材は含まない。以降、枠材という言葉を使用する場合、上記のことを意味する）上面および表面材上面が大略一平面を形成していることである。 このような構造を取ることによって本発明の断熱パネルは、表面材側が１枚の表面材で仕上げられていると同様な平面を形成し、しかも枠材の上面が切り込み以外の領域で表面に露出している。 したがって本発明の断熱パネルは機能上１枚のパネルでありながら、パネルを建築物躯体に取り付けるに際して利用される枠材の在り処が見えるため、釘等による取り付けを容易且つ確実に行うことができる。

【０００８】本発明では、中枠材は必ずしも必要とされないが、パネルの幅が大きい場合は、１またはそれ以上の数の中枠材を使用することが好ましい。 パネルの面積が大きくなると表面材の種類によっては表面材が反ってしまって外観が損なわれる場合がある。 特に表面材が合板のように吸湿性の材質の場合はこのような問題が生じ易い。 このような場合に中枠材を組み込んで表面材を反りが目立ちにくい程度の幅に分割して用いることができるという利点が生まれる。 なお、重要なことは、断熱パネルの表面には通常内装材等の仕上げ材を取り付ける必要があるが、そのためには下地に当たる断熱パネルの枠材の位置に取り付けることになる。 したがって、枠材の位置が内装面側から確認できることが施工を容易にするうえで重要である。 本発明の断熱パネルでは、枠材が内装面側に露出しているため、表面から枠材の位置を見分けることができ、断熱パネル上への内装材等の取り付けを確実容易に行うことができる。 これが本発明の断熱パネルの持つより重要な意義である。 一般には断熱パネルの幅が５００ｍｍくらいより大きくなると中枠材を組み込むことが好ましい。 しかし中枠材を組み込むためのパネルの幅はこの寸法に限定されるものではなく、工法、
断熱材の種類等によって自由に選ぶことができる。

【０００９】横枠材と枠材との接合は、枠材上部、横枠材上部および表面材の表面が大略一平面を形成しさえすれば、特にその方法に限定はない。 発泡断熱材の注入時における発泡圧に耐えることのできる接合であればよい。 このような接合方法としては、例えば図１に示すように枠材が横枠材に入れ子として嵌合して枠材と横枠材の上面の高さを同じにしてもよい。 この場合は表面材は（ａ）のように横枠材より内側に留めてもよいし、
（ｂ）に示すように横枠材に設けた切り欠き部に嵌合してもよい。 また、図１（ｃ）に示すように横枠材の面を小さくして、表面材が横枠材の上に載ってもよい。

【００１０】縦枠材、中枠材および横枠材は釘打ち性の面からも、また断熱施工における熱橋を形成しない点からも木材が最適である。 縦枠材、中枠材および横枠材の寸法は必要とする断熱パネルの寸法に応じて適切に選択すればよく特に限定されない。 しかし、枠材は、少なくとも、表面材を嵌合するための切り込み部および釘打ちのための非切り込み部に相当する幅を有することが必要である。 具体的には、非切り込み部の幅は１０ｍｍ以上、枠材の幅は、例えば１０ｍｍ以上、好ましくは２０
ｍｍ以上である。

【００１１】表面材としては、合板、コルク炭、インシュレーションボード等を用いることができる。 好ましくは合板である。 コルク炭は吸音性、放吸湿性、消臭性の面で優れており、本発明の断熱パネルを床材として使用する場合の表面材としては好適である。 表面材は枠材の切り込み部、または更に横枠材の切り込み部に接合されるが、接合は接着剤または釘によって行われる。

【００１２】本発明の断熱パネルには、表面材に対向する裏面側に裏面材を取り付けてもよい。 裏面材は縦枠材および横枠材によって囲まれた面全体を被覆するように取り付けることが好ましい。 裏面材はパネル裏面の平滑性を得るため、断熱材の表面を保護するため、および裏面に意匠性を与えるために好ましいものである。 また本発明の断熱パネルの製造方法として、枠材に囲まれた空間に発泡性の樹脂を注入する方法を採用することもできるが、その場合は発泡を規制するために裏面材が必須となる。 裏面材として使用できる材料としては、ポリエチレンフィルムラミネートしたクラフト紙、アルミニウム箔等のシート状物、合板、石膏ボード等の板状物が例示できる。 軽量性、防湿性および反りを生じない等の面からシート状物が好ましい。

【００１３】断熱材は発泡樹脂、グラスウール、ロックウールその他種々の断熱材を使用することができる。 好ましくは発泡樹脂である。 発泡樹脂は所定の大きさに発泡成形して、あるいは所定の大きさに切り出して使用することができ、例えば硬質発泡ウレタン、ポリスチレン樹脂発泡体、ポリ塩化ビニル樹脂発泡体等が使用できる。 好ましくは発泡ポリウレタンであり、例えば見かけ密度２０〜５０ｋｇ／ｍ ³程度のものが好適である。 しかし、最も好ましいのは硬質ポリウレタンの高圧注入発泡法を利用するものである。 この方法は生産性、製造の容易性、隙間のない充填性という優れた特徴を有するため本発明にとっては最適である。

【００１４】硬質ポリウレタン高圧注入発泡を利用する場合は、硬質ウレタン原液を注入するための注入孔を縦枠材または横枠材、特に横枠材にあけておく。 また縦枠材および／または横枠材には発泡体の充填をよくするための空気抜き孔をあけておくことが好ましい。 また発泡圧によって枠材、横枠材および表裏面材が変形しないように表裏面をプレス内にセットし、四周、即ち縦枠材と横枠材の外側を押え治具で押えておくことが好ましい。
硬質ポリウレタン原液は高圧発泡機によって注入する。

【００１５】本発明の断熱パネルの寸法は、特に限定されないが、木造住宅の外壁、天井、床等に使用する場合、幅は一般的な間柱中心間の距離３０３ｍｍ、４５５
ｍｍ、６０６ｍｍ、７５７ｍｍ、９１０ｍｍ、１０６０
ｍｍ、１２１２ｍｍ、１３６４ｍｍ、１８２０ｍｍ等に適合するようにそれぞれ１９６ｍｍ、３４７ｍｍ、４９
９ｍｍ、６５０ｍｍ、８０３ｍｍ、９５３ｍｍ、１１０
５ｍｍ、１２５７ｍｍ、１７１３ｍｍ等が一般的である。 また長さは、９１０ｍｍ、２８５０ｍｍ、３０００
ｍｍ等が一般的である。 一般的なパネルの厚さは７５ｍ
ｍ、１０５ｍｍ等である。

【００１６】

【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的、詳細に説明する。 実施例 １ 〔枠組みの構成〕厚さ１２ｍｍ、高さ１２０ｍｍの木製枠を図１（ａ）に示すように組み込んで長さ２８５０ｍ
ｍ、幅８０３ｍｍのパネル枠組みを構成した。 長さ方向に沿って等間隔に厚さ１２ｍｍの木製中枠材を１本取り付けた。 中枠材も図１（ａ）のように横枠材に入れ子に組み込んだ。 縦枠材および中枠材には表面材が嵌合する幅２０ｍｍの切り込みを設けた。 切り込みの深さは表面材の厚さと同じ２０ｍｍである。 表面材として厚さ２０
ｍｍのコルク炭板を枠材の切り込み部に嵌め込んだ。 表面材は釘を用いて枠組みへに取り付けた。 枠組みの反対側、即ち裏面には面全体にポリエチレンラミネートクラフト紙を取り付けた。 こうして縦枠材、横枠材、表面材および裏面材によった６面を囲まれた枠組みを形成した。 なお、横枠材の一方には断熱材を注入するためにウレタン注入口として径１０ｍｍの孔を１箇所、中枠材によって形成された区画に相当する数だけ穿けた。

【００１７】〔ウレタン発泡材の注入〕 １）５３℃に設定したプレス機〔有効サイズ２０００×
３７００ｍｍ〕内に上記枠組みを表面材側が上になるようにセットした。 コルク炭板である表面材側、即ち上側には離型紙をプレス機面との間に入れた。 枠組みの外側には四方には、枠組みの破損を防止するために、枠組みの高さと同じ厚さのアルミニウム製スペーサーを置いた。 ２）ウレタンの注入圧によって枠組みが横方向外側に広がらないようにアルミニウムスペーサーの外側から横方向押え治具をセットした。 ３）枠組みの横枠材に設けた注入口に、ウレタン高圧注入発泡機〔丸加加工機（株）製〕の注出口をセットし、
注入発泡機から２０℃に保持したポリウレタン原料であるレジンプレミックスとイソシアネートとを、発泡後の密度が２６ｋｇ／ｍ ³となる量を同時に混合注入した。 ４）注入後、注入発泡機の注出口を取り外し、直ちに注入口に木製の液止め栓を打ち込んだ。 ５）約１５分後、ウレタンフォームを注入した断熱パネルをプレス機から取り出した。

【００１８】得られた断熱パネルは、幅８０３ｍｍ、長さ２８６０ｍｍ、厚さ１２０ｍｍの大型パネルで、表面は表面材と枠材との間に実質的に段差がなく平坦であり、自然環境に置いた後も反りを発生しなかった。 このパネルを内装材に取り付けるに当たって、パネルの中枠材の在り処がわかるため釘打ちが容易であり、確実な取り付けができた。

【００１９】

【発明の効果】本発明の断熱パネルは、大型で、且つ大型に伴う反りやハンドリングの欠点がなく、優れた施工性を有するため、建築物、特に木造建築物の外壁、間仕切り、床材および天井材として利用価値が高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の断熱パネルの斜視図（ａ）横枠材のひとつの組み込み形態（ｂ）横枠材の別の組み込み形態（ｃ）横枠材のもうひとつの組み込み形態

【図２】 図１の断熱パネルのＡ−Ａ断面図

【符号の説明】

１：縦枠材、 １'：縦枠材上面の非切り込み部 １''：縦枠材端面 ２：横枠材、 ２'：横枠材上面の非切り込み部 ２''：横枠材端面 ３：中枠材、 ３'：中枠材上面の非切り込み部 ３''：中枠材端面 ４：表面材、 ４''：表面材端面 ５：裏面材 ６：断熱材。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 安利 大阪府大阪市中央区久太郎町２丁目４番31 号 倉敷紡績株式会社大阪本社内 (72)発明者 上村 好央 大阪府大阪市中央区久太郎町２丁目４番31 号 倉敷紡績株式会社大阪本社内 Ｆターム(参考） 2E001 DB03 DD01 DF04 DH21 EA08 FA03 FA11 FA14 GA07 GA22 GA23 GA24 GA63 HA03 HA32 HA33 HB04 HC01 HC02 HC06 HC08 HC14 HD01 HD03 HD07 HD09 HD11 LA04 LA12