【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ビニル芳香族化合物とポリスチレンから成る新規のグラフト共重合体に関する。 【0002】本発明は、さらに、このようなグラフト共重合体の製造方法、ファイバー、フィルムおよび成形体を製造するためのその用途、ならびにこれにより得られるファイバー、フィルムおよび成形体に関する。 【0003】 【従来の技術】メタロセン触媒組成物の存在下においてスチレンを重合させることにより、高度の立体規則性を有する重合体が得られ、このことは、例えば欧州特願公開210615号公報に包括的に記載されている。 シンジオタクチック構造を有するポリスチレンは、その高い結晶度の故に、約270℃に及ぶ極めて高い融点、高度の剛性および引張り強さ、良好な寸法安定性、低い誘電率及び高い化学品耐性を有する。 また機械的諸特性は、 ガラス転移温度以上の高温においてすら維持される。 【0004】しかしながら、スチレンのこのシンジオタクチック重合体は、脆いという欠点を有する。 【0005】欧州特願公開559108号公報には、このようなシンジオタクチックポリスチレンを、側鎖にC =C二重結合を有する重合体にグラフトさせることが記載されている。 【0006】しかしながら、この方法の欠点は、グラフトされるべき化合物が、チーグラー/ナッタ触媒を使用して、ランダム重合法によってのみ製造され得るに止まることである。 フリーラジカル重合ないしイオン重合は、この場合に使用され得ない。 第2工程においてシンジオタクチックポリスチレンをグラフトさせるべき重合体のアルケン単位は、チーグラー/ナッタ触媒作用の場合においてのみグラフトされるべき重合体を製造する場合に使用される第2アルケン単位よりも反応が遅いからである。 【0007】また、欧州特願公開490269号公報には、スチレン単量体を、不飽和結合含有炭化水素基を有するスチレン単量体と共重合させ、ついでエチレン性不飽和単量体と重合させることにより、スチレングラフト共重合体を製造する方法が記載されている。 しかしながら、このグラフト反応の欠点は、不溶性のシンジオタクチックポリスチレンが、フリーラジカル重合メカニズムによりグラフトされることである。 この不溶性の故に、 極めて低度のグラフトが達成され得るに過ぎない。 さらに、この方法では、シンジオタクチックポリスチレンがグラフトコアを形成するために、充分な球状ラバー形態が達成され得ない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】そこで、この分野における技術的課題ないし本発明の目的は、上述した欠点を持たず、ことに、高度の剛性、引張り強さ、寸法安定性および靱性を示す重合体、及びその製造のために、フリーラジカル重合か、またはイオン重合により製造されたグラフト共重合体を使用して行われ得る方法を提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】しかるに上述の課題ないし目的は、(a) ビニル芳香族化合物を共役ジエンと反応させて、C=C二重結合を有する重合体(A)を形成し、(b) 重合体(A)のC=C二重結合を、一酸化炭素、水素およびヒドロホルミル化触媒の存在下において、ヒドロホルミル化して重合体(B)を形成し、 (c) 部分的もしくは完全にヒドロホルミル化された重合体(B)を単離し、(d) 重合体(B)のホルミル基において、ビニル芳香族単位を取り込むためのC− Cカップリング反応を行って重合体(C)を形成し、 (e) この重合体(C)を、メタロセン触媒組成物の存在下に、ビニル芳香族化合物と反応させることにより得られることを特徴とするグラフト共重合体により解決され得ることが本発明者らにより見出された。 工程(a)において、ビニル芳香族化合物を共役ジエンと反応させてC=C二重結合を有する重合体(A)を形成する。 【0010】ことに適当なビニル芳香族化合物は、下式(I) 【0011】 【化2】 で表され、かつ式中のR1が水素またはC 1 −C 4アルキルであり、R 2からR 6が、相互に関係なく、それぞれ水素、C 1 −C 12アルキル、C 6 −C 18アリール、ハロゲンであるか、あるいは隣接する2個の基が合体して、炭素原子数4から15の環式基を形成する場合の化合物である。 【0012】式中のR 1が水素である場合のビニル芳香族化合物(I)を使用するのが好ましい。 【0013】R 2からR 6は、ことに水素、C 1 −C 4 アルキル、塩素またはフェニル、ビフェニル、ナフタレンもしくはアントラセンであるのが好ましい。 あるいはまた、これらのうちの隣接する2個の基が合体して、炭素原子数4から12の環式基を形成してもよい。 その例としては、式(I)の化合物のようなナフタレン誘導体もしくはアントラセン誘導体も挙げられる。 【0014】好ましい化合物の例としては、スチレン、 p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−ビニルビフェニル、2−ビニルナフタレンまたは9−ビニルアントラセンである。 【0015】種々の芳香族化合物の混合物であって、そのうちの1種類の化合物が、さらに他の炭化水素基、例えばビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基またはペンテニル基、ことにビニル基をフェニル環に持っていてもよい混合物を使用することも可能である。 また、 1,1−ジフェニルエチレンのようなビニル芳香族化合物も使用され得る。 【0016】しかしながら、単独のビニル芳香族化合物、ことにスチレンおよびp−メチルスチレンを使用するのが特に好ましい。 【0017】ビニル芳香族化合物(I)の製造方法は、 それ自体公知であり、例えば「バイルシュタイン」5、 367、474、485に記載されている。 【0018】適当な共役ジエンは、例えばブタジエン、 イソプレン、ジメチルブタジエン、フェニルブタジエンであるが、ことにブタジエンが好ましい。 【0019】ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重合反応は、公知であり、例えば1996年、デッカー社刊、H. L. スィーおよびR. P. クワークの「アニオニック、ポリメライゼイション」に記載されている。 重合体(A)は、溶液、懸濁液、乳濁液中で、または塊状で、アニオン重合、カチオン重合またはフリーラジカル重合で製造され得る。 必要に応じて、少量のオレフィンのようなさらに他の単量体を、ビニル芳香族化合物および共役ジエンと共に共重合させ得る。 【0020】共重合体(A)は、3から97、ことに5 から95重量%のビニル芳香族化合物と、97から3、 ことに95から5重量%の共役ジエンとを重合含有するのが好ましい。 【0021】工程(b)において、上記重合体(A) を、一酸化炭素、水素およびヒドロホルミル化触媒の存在下にヒドロホルミル化処理に附して、重合体(B)を形成する。 【0022】このヒドロホルミル化方法自体も同様に公知であり、例えば1988年、トイプナー社刊、Ch. エシェンブロイヒ/A. ザルツァー「オルガノメタルヘミー」に記載されている。 この本工程における材料、重合体(A)は、溶液、膨潤形態または溶融体として使用され得る。 適当な溶媒は、飽和、芳香族炭化水素、例えばヘキサン、オクタン、ドデカン、デカリン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル類、スルホンのような不活性有機溶媒またはこれらの混合溶媒である。 【0023】適当なヒドロホルミル化触媒は、公知のこの種の触媒のいずれでもよいが、ことに元素周期表の遷移VIII族元素、なかんずくロジウム、コバルト、パラジウムの化合物が好ましい。 ことに塩、例えばヒドリド、ハロゲニド、ニトラート、スルファート、オキシドまたはスルフィド、ならびにカルボニル、アミン、トリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィンさらには、カルボキシラートまたはアセチルアセトナートとの錯化合物が好ましい。 これらの触媒および製造方法は、例えば米国特許4914157号明細書に記載されている。 ことにRh(CO) 2 acac(アセチルアセトナートに対応)およびCo(CO) 8を使用するのが好ましい。 触媒使用量は、通常、重合体(A)に対して0.01から2.0重量%である。 【0024】ヒドロホルミル化反応は、広い温度範囲において行われ得るが、通常20から200℃の範囲の温度で行われる。 また適当な圧力は、選択される触媒の種類により相違するが、1から1000バール、ことに1 0から600バールが好ましい。 【0025】一酸化炭素対水素の量割合も広い範囲にわたって変え得るが、一般的に0.2:1から5:1、ことに0.5:1から2:1の割合が好ましい。 【0026】ヒドロホルミル化は、形式的に、重合体(A)のオレフィン性二重結合に対する1個のホルミル基と、1個の水素原子の付加である。 スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(A)の場合、これは下式により示され得る。 【0027】 【化3】 【0028】部分的もしくは完全にヒドロホルミル化された重合体(B)は、次の工程(c)において単離される。 この触媒除去は、メタノールのような極性溶媒を、 所望の純度が達成されるまで添加することにより、重合体(B)をトルエンのような非極性溶媒中の溶液から反覆して析出沈殿させて行われ得る。 ヒドロホルミル化重合体からのコバルト触媒の除去は、例えば、米国特許3 513130号明細書に記載されている。 【0029】工程(d)において、ビニル芳香族単位を取り込んで、重合体(B)のホルミル基におけるC−C カップリング反応を行わせ、重合体(C)を形成する。 この反応は、ウィティッヒ反応として行わせるのが好ましい。 この反応もそれ自体は公知であり、例えば198 5年刊、「アドバーンスト、オーガニック、ケミストリィ」、6−47章、845−854頁に記載されている。 通常、燐イリドが使用される。 【0030】ウィティッヒ塩の製造方法は、例えば、 J. Org. Chem. 54、(1989)4808− 4812(カトリッキィらの報文)に記載されている。 この場合、適当なハロゲン化アルキル、ことに臭化アルキルが、一般的にトリフェニルホスフィンと反応せしめられる。 【0031】好ましいのは、p−ブロモアルキルスチレン、ことにp−ブロモメチルスチレンであって、トリフェニルホスフィンと、この臭化物を、オートクレーブ中において、圧力下に加熱し、これにより直接的にトリフェニルホスフィンブロミドが得られる。 【0032】これにより、前述の反応式に続いて、下式構造の重合体(C)がもたらされる。 【0033】 【化4】 【0034】次工程(e)において、この重合体(C) は、メタロセン触媒組成物の存在下において、ビニル芳香族化合物と反応せしめられる。 【0035】この場合の適当なビニル芳香族化合物は、 前述した式(I)の化合物であって、上記工程(a)の説明を参照されたい。 【0036】適当なメタロセン触媒組成物は、メタロセン錯体、メタロセニウムイオンを形成し得る化合物、および必要に応じてさらにアルミニウム化合物から得られる。 【0037】メタロセン錯体としては、下式(II)で表されるものが好ましい。 【0038】 【化5】 ただし、式中のR7からR 11は、水素、C 1 −C 10アルキル、5から7員のシクロアルキル(この環式基は置換基としてC 1 −C 6アルキルを持っていてもよい)、C
6 −C 15アリールまたはアリールアルキルを意味するか、あるいはこれらの隣接する2個の基が合体して、炭素原子数4から15の環式基、例えば縮合環基を形成してもよく、またはさらにSi(R 12 ) 3を意味する。 【0039】このR 12は、C 1 −C 10アルキル、C 6 − C 15アリールまたはC 3 −C 10シクロアルキルである。 【0040】上記式中のMは、元素周期表の遷移III からVI族の金属またはランタニド系列金属を意味する。 【0041】またZ 1からZ 5は、水素、ハロゲン、C 1 −C 10アルキル、C 6 −C 15アリール、C 1 −C 15アルコキシまたはC 1 −C 15アリールオキシを意味し、z 1からz 5は、それぞれ0、1、2、3、4または5であるが、これらの合計、z 1 +z 2 +z 3 +z 4 +z 5 は金属Mの原子価−1に対応する。 【0042】ことに好ましいメタロセン錯体(II) は、Mが元素周期表の遷移IV族金属、すなわちチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ことにチタンを意味し、Z 1からZ 5がC 1 −C 10アルキル、C 1 −C 10アルコキシまたはハロゲンを意味する場合の化合物である。 【0043】このようなメタロセン錯体の具体例としては、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルメチルチタンおよびペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリメトキシドが挙げられる。 【0044】さらに、欧州特願公開584646号公報に記載されているようなメトロセン錯体も使用可能であり、さらに異なるメタロセン錯体の混合物も使用され得る。 このようなメタロセン錯体の合成は、それ自体公知の方法で行われ得るが、適宜置換されている環式炭化水素アニオンを、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブまたはタンタルのハロゲン化物と反応させる方法が好ましい。 この種の方法は、例えばJ. O rgmet. Chem. (1989)359−370に記載されている。 【0045】触媒組成物中のメタロセニウムイオン形成化合物としては、開鎖式または環式アルモキサン化合物が使用され得る。 このメタロセニウムイオンを形成し得る化合物としては、下式(III)または(IV)のアルミノキサン化合物が適当である。 【0046】 【化6】 ただし、式中のR13は、C 1 −C 4アルキル、ことにメチルまたはエチルを、kは5から30、ことに10から25の整数を意味する。 【0047】これらのアルミノキサンオリゴマー化合物の製造は、トリアルキルアルミニウムと水の反応により行われ、ことに欧州特願公開284708号公報および米国特許4794096号明細書に記載されている。 【0048】このようにして得られるアルミノキサンオリゴマー化合物は、一般的に異なる鎖長の直鎖および環式鎖分子の混合形態であり、従って、kは平均値として考えられるべきである。 アルミノキサンは、また他の金属アルキル、例えばアルミニウムアルキルとの混合物としても使用され得る。 【0049】メタロセン錯体とアルミノキサンオリゴマー化合物は、このアルミノキサンオリゴマー化合物由来のアルミニウムと、メタロセン錯体由来の遷移金属の原子量割合が、10:1から10 4 :1、ことに20:1 から9000:1となるような量割合で使用されるのが好ましい。 【0050】メタロセニウムイオン形成化合物としては、非荷電強ルイス酸、ルイス酸含有イオン結合化合物、ブレンステッド酸をカチオンとして含有するイオン結合化合物のいずれかの配位化合物を使用することもできる。 【0051】非荷電強ルイス酸としては、下式(V)で表される化合物が好ましい。 【0052】 【化7】 ただし、M1は周期表III主族元素、ことにB、Al またはGa、ことにBを意味し、X
1 、X 2 、X 3はC
1 −C 10アルキル、C 6 −C 15アリール、それぞれアルキル基部分に1から10個、アリール基部分に6から2 0個の炭素原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、弗素、塩素、臭素、沃素、好ましくはハロアリール、ことにペンタフルオロフェニルを意味する。
【0053】ことに好ましいのは、式中のX 1 、X 2 、 X 3が相互に同じであって、ことにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを意味する場合の化合物(VI) であって、この化合物およびその製造方法はそれ自体公知であり、例えばWO93/3067号公報に記載されている。 【0054】ルイス酸含有イオン結合化合物としては、 下式(VI)の化合物が適当である。 【0055】 【化8】 ただし、Yは周期表IからVI主族またはIからVII I遷移族元素を意味し、Q
1からQ zは、単一負荷電基、例えばC 1 −C 28アルキル、C 6 −C 15アリール、 それぞれアリール基部分に6から10個、アルキル基部分に1から28個の炭素原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、
置換基としてC
1 −C 10アルキルを持っていてもよいC
1 −C 10シクロアルキル、ハロゲン、C 1 −C 28アルコキシ、C 6 −C 15アリールオキシ、シリルまたはメルカプチル、例えばトリメチルシリルを意味し、aは1から6の整数、zは0から5の整数、dは差a−zを意味するが、dは1であるかまたはこれより大きい。 【0056】ことに好ましいルイス酸カチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオンおよびスホニウムカチオンであるが、遷移金属錯体カチオンも好ましい。 ことにトリフェニルメチルカチオン、銀カチオンおよび1,1′−ジメチルフェロセニウムカチオンは言及に価する。 【0057】カチオンとしてブレンステッド酸を含有するイオン結合化合物としては、上述WO93/3067 号公報に言及されている非配位対イオンであって、ことに好ましいカチオンはN,N−ジメチルアニリニウムである。 【0058】メタロセニウムイオン形成化合物に由来する硼素と、メタロセン錯体に由来する遷移金属のモル割合は、0.1:1から10:1、ことに1:1から5: 1の範囲にあるのがことに好ましいことが判明している。 【0059】本発明において使用されるメタロセン触媒組成物は、さらにアルミニウム化合物を含有していてもよい。 この化合物は例えば下式(VII)で表され得る。 【0060】 【化9】 R14からR 16は水素、弗素、塩素、臭素、沃素、C 1 − C
12アルキル、ことにC 1 −C 8アルキルを意味する。 【0061】R 14からR 16は、相互に同じで、メチル、 エチル、イソブチル、n−ヘキシルのようなC 1 −C 6 アルキルを意味するのが好ましく、R 16は水素を意味するのが好ましい。 【0062】このアルミニウム化合物は、触媒組成物中において、1:2000から1:1、ことに1:800 から1:10の量で存在するのが好ましい(II族遷移金属体対Alモル割合)。 【0063】メタロセン錯体とアルミノキサン化合物用の溶媒としては、ことに炭素原子数6から20の芳香族炭化水素、ことにキシレン、トルエン、エチルベンゼン、これらの混合溶媒を使用するのが好ましい。 アルミニウム化合物(VII)は、非極性の脂肪族もしくは芳香族溶媒、例えばエチルベンゼン、シクロヘキサンに溶解させることができる。 【0064】メタロセン錯体は、担持触媒としても、また非担持触媒としても使用され得る。 適当な担持材料は、シリカゲル、ことに式SiO 2・bAl 2 O 3 (b は0から2、ことに0から0.5の数値を意味する)で表される化合物、従って珪酸アルミニウムまたは二酸化珪素である。 担体は1から200μm、ことに30から80μmの粒径を有するのが好ましい。 このような担体は、例えばグレイス社のSilica Gel332のように商業的に入手可能である。 【0065】さらに他の担体材料として、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレンの微細粉、さらにポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカルボナート、これらの共重合体の微細粉も使用され得る。 【0066】メタロセン錯体(II)対ビニル芳香族単量体のモル割合は、1:1000から1:100000 00、ことに1:2000から1:1000000の範囲である。 また、ビニル芳香族化合物対重合体(C)のモル割合は、10 8 :1から1:1、ことに10 7 :1 から10:1の範囲である。 【0067】反応は−78℃から+150℃、ことに0 ℃から120℃の温度で行われる。 反応の間に、例えば0℃から120℃に反応温度を変えることもできる。 【0068】重合は、反応媒体としてビニル芳香族化合物中において、従って塊状重合法で行うのが好ましい。 しかしながら、溶液重合法、懸濁重合法、気相重合法も可能である。 【0069】ことに有利であることが実証されている方法においては、まずビニル芳香族化合物と重合体(C) を重合反応器に装填し、次いでこれにメタロセニウムイオン形成化合物とアルミニウム化合物を添加し、次いでメタロセン錯体(II)を添加して、0.1から10時間、ことに0.5から5時間重合させる。 重合反応はプロトン化合物、例えばメタノールの添加により停止され得る。 【0070】スチレンとの重合反応において、重合体(C)にシンジオタクチックポリスチレンがグラフトされる。 【0071】本発明のグラフト共重合体は、高度の剛性、引張り強さ、良好な寸法安定性、靱性、ことに衝撃靱性を有する。 従って、ファイバー、フィルム、成形体の製造に適する。 本発明によるグラフト共重合体の製造においては、フリーラジカル重合法またはイオン重合法により製造されたグラフト重合体を使用することが可能である。 さらに、シンジオタクチック構造のポリスチレンが、使用されるグラフト共重合体の機能として、可溶性ゴムおよび球状ラメラ構造ゴム重合体にグラフトされ得る。 【0072】 【実施例】実施例1−3(ヒドロホルミル化) 実施例1ロジウムを使用するS/B共重合体のヒドロホルミル化 100gの重合体を900gのトルエンに溶解させることにより、Styrolux2691(登録商標)(ブタジエン含有分約26重量%、1,2−ビニル含有分約9%、分子量Mn約91000の対称スチレン/ブタジエン/スチレン3ブロック共重合体)のトルエン溶液を調製した。 溶液中にアルゴンを導通して空気を除去した。 他方において、Schlenk管中において、5m lのトルエン中、0.02gのRh(CO) 2 acac (0.08ミリモル)の溶液を調製し、この溶液に同じくアルゴンを導通することにより脱気した。 この両溶液を混合し、撹拌器を具備する2000ml内容積の、窒素充満オートクレーブ中に導入した。 オートクレーブを150℃に加熱すると共に、一酸化炭素/水素混合気(モル割合1:1)の圧入により圧力は280バールまで上昇した。 反応の経過と共にガス圧が低下するので、 さらに一酸化炭素/水素混合気(モル割合1:1)の圧入を反覆して、上記ガス圧を維持し、5時間後に、加熱、ガス圧入を停止した。 オートクレーブの冷却と共に、ライザーチューブを経て、内容物をアルゴン充満貯槽中に移送した。 回転エバポレータを使用して、減圧下に、トルエンの一部(50%)を除去してから、これをメタノール(2000ml)中に滴下、導入した。 これによりヒドロホルミル化重合体の沈殿がもたらされる。 アルデヒド基の形成は、IR分光学的分析により、確認し得た。 分析データは、このヒドロホルミル化重合体のオレフィン性二重結合の転化度およびアルデヒド基含有分の測定を可能ならしめた。 ヒドロホルミル化の開始前における被処理重合体は、DIN53241により測定して、重合体100g当たり118gの沃素量であったが、ヒドロホルミル化後は13gに低下した。 またDI N51558によるカルボニル量は、ヒドロホルミル化前、重合体1g当たり1mgKOH以下であったが、ヒドロホルミル化後、これは180mgKOHに増大した。 【0073】 実施例2ロジウムを使用するS/B共重合体のヒドロホルミル化 ヒドロホルミル化を、0.005gのRh(CO) 2 a cac(0.02ミリモル)を使用し、反応を1時間後に停止したほかは、実施例1の処理を反覆し、ヒドロホルミル化重合体を同様にして後処理した。 反応生成物の分析データ、沃素数=沃素105g/重合体100g、 CO数=20mgKOH/重合体1g。 【0074】 実施例3 S/B共重合体のコバルト触媒によるヒドロホルミル化 ロジウム触媒の代わりに、コバルトカルボニルCo 2 (CO) 8 (0.4g、2.2ミリモル)を使用したほかは、実施例1の処理を反覆した。 反応は180℃、2 80バールにおいて2時間行わせた。 アセタールの形成を抑制するため、重合体のトルエン溶液に100gの水を添加した。 反応終了後、ヒドロホルミル化重合体のコバルト含有溶液を、10%濃度の酢酸溶液(約400m l)と混合し、空気を導通しながら、約70℃において撹拌した。 淡いピンク色への変色が、コバルトカルボニルの酸化完了を示した。 撹拌、加熱を停止し、重合体含有トルエン相を、水/酢酸相から分離し、重合体含有相を中性となるまで水で洗浄した。 トルエンの除去により、以下の分析データを示す無色生成物が得られた。 沃素数=沃素40g/重合体100g、カルボニル数=2 0mgKOH/重合体1g。 【0075】 実施例4ウィティッヒ塩の調製 Tropsch Bull Soc. Chim. Bel g. 1987、96、719頁に記載の方法に類似する方法により、ピリジンとp−クロロメチルスチレンを反応させて、N−(1−クロロ−p−スチルメチレン)ピリジニウムクロリドを形成した。 50ミリモルのこの化合物を、無水クロロホルム(300ml)に溶解させ、 0℃において50ミリモルのトリフェニルホスフィンと混合した。 1時間後、この混合物をジエチルエーテル(約600ml)で処理し、複数回(5−6回)抽出した。 再結晶により、N−[(トリフェニルホスフィノ) (4−ビニルフェニル)メチル]ピリミジニウムジクロリドを87%の収率で得た。 融点186−187℃。 【0076】実施例5−7(C−Cカップリング反応) 実施例5実施例1の重合体とのウィティッヒ反応 実施例4のウィティッヒ塩100ミリモルを400ml のエタノールに溶解させ、これに実施例1の重合体を添加した。 室温において30mlの1Mナトリウムエトキシド溶液を、温度が30℃を上回らないようにしてこれに滴下、添加した。 この混合物を4時間撹拌し、水の添加により重合体を析出、沈殿した。 反応前の沃素数=沃素13g/重合体100g 反応後の沃素数=沃素221g/重合体100g (生成物=実施例5重合体) 【0077】 実施例6実施例2の重合体を使用したウィティッヒ反応 実施例4のウィティッヒ塩60ミリモルを400mlのエタノールに溶解させ、実施例2の重合体10gをこれに添加した。 室温において、30mlの1Mナトリウムエトキシド溶液を、温度が30℃を越えないようにしてこれに滴下、添加した。 混合物を4時間撹拌し、水の添加により重合体を析出、沈殿させた。 反応前の沃素数=沃素105g/重合体100g 反応後の沃素数=沃素129g/重合体100g (生成物=実施例6重合体) 【0078】 実施例7実施例3の重合体を使用したウィティッヒ反応 実施例4のウィティッヒ塩75ミリモルを、400ml のエタノールに溶解させ、実施例3の重合体10gをこれに添加した。 室温において、30mlの1Mナトリウムエトキシド溶液を、温度が30℃を越えないようにして、これに滴下、添加した。 混合物を4時間撹拌し、水の添加により重合体を析出、沈殿させた。 反応前の沃素数=沃素40g/重合体100g 反応後の沃素数=沃素178g/重合体100g (生成物=実施例7重合体) 実施例8−10(スチレンとの反応) 【0079】 実施例8窒素で不活性化した丸底フラスコに、1.0モルのスチレン(104.2g)と、15gの実施例5重合体を装填し、この混合物を60℃に加熱し、ウィトコ社のメチルアルミノキサン(MAO)(1.53Mトルエン溶液)8.16mlおよびアルドリッチ社のジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(1.0Mシクロヘキサン溶液)と混合した。 次いで、この混合物を9. 5mg(4.16 * 10 -5モル)のCp * TiMe 3 (ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメチルチタン)で処理した。 内温を60℃に調整して、2時間重合させた。 わずかに10分の反応時間後、生成重合体が沈殿し、混合物は不均質となった。 2時間後にメタノールを添加して反応を停止させた。 得られた重合体をメタノールで洗浄し、50℃、減圧下に乾燥した。 分子量および分子量分布を、溶媒として、1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、高温GPCで測定した。 狭い分子量分布ポリスチレン標準の使用により較正を行った。 分子量Mwは467300であり、その多分散性Mw/Mn は2.6であった。 13 C−NMRにより測定されたシンジオタクチック分は90%以上であった。 使用された単量体に対する転化度は86%であった。 射出成形テスト試料の衝撃靱性は、DIN53453−nによる測定で、38kJ/m 2を示した。 破損応力28.2MPa (DIN53455)、破断時伸び(DIN5345 5)は2.7%であった。 【0080】 実施例9窒素で不活性化した丸底フラスコに、1.0モルのスチレン(104.2g)と、15gの実施例6重合体を装填し、この混合物を60℃に加熱し、ウィトコ社のメチルアルミノキサン(MAO)(1.53Mトルエン溶液)8.16mlおよびアルドリッチ社のジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(1.0Mシクロヘキサン溶液)と混合した。 次いで、この混合物を9. 5mg(4.16 * 10 -5モル)のCp * TiMe 3 (ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメチルチタン)で処理した。 内温を60℃に調整して、2時間重合させた。 わずかに10分の反応時間後、生成重合体が沈殿し、混合物は不均質となった。 2時間後にメタノールを添加して反応を停止させた。 得られた重合体をメタノールで洗浄し、50℃、減圧下に乾燥した。 分子量および分子量分布を、溶媒として、1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、高温GPCで測定した。 狭い分子量分布ポリスチレン標準の使用により較正を行った。 分子量Mwは212700であり、その多分散性Mw/Mn は2.4であった。 13 C−NMRにより測定されたシンジオタクチック分は90%以上であった。 使用された単量体に対する転化度は54%であった。 射出成形テスト試料の衝撃靱性は、DIN53453−nによる測定で、17kJ/m 2を示した。 破損応力34.4MPa (DIN53455)、破断時伸び(DIN5345 5)は2.1%であった。 【0081】 実施例10窒素で不活性化した丸底フラスコに、1.0モルのスチレン(104.2g)と、15gの実施例6重合体を装填し、この混合物を60℃に加熱し、ウィトコ社のメチルアルミノキサン(MAO)(1.53Mトルエン溶液)8.16mlおよびアルドリッチ社のジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(1.0Mシクロヘキサン溶液)と混合した。 次いで、この混合物を9. 5mg(4.16 * 10 -5モル)のCp * TiMe 3 (ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメチルチタン)で処理した。 内温を60℃に調整して、2時間重合させた。 わずかに10分の反応時間後、生成重合体が沈殿し、混合物は不均質となった。 2時間後にメタノールを添加して反応を停止させた。 得られた重合体をメタノールで洗浄し、50℃、減圧下に乾燥した。 分子量および分子量分布を、溶媒として、1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、高温GPCで測定した。 狭い分子量分布ポリスチレン標準の使用により較正を行った。 分子量Mwは243800であり、その多分散性Mw/Mn は2.3であった。 13 C−NMRにより測定されたシンジオタクチック分は90%以上であった。 使用された単量体に対する転化度は71%であった。 射出成形テスト試料の衝撃靱性は、DIN53453−nによる測定で、26kJ/m 2を示した。 破損応力32.1MPa (DIN53455)、破断時伸び(DIN5345 5)は2.2%であった。 【0082】対比例11および12 対比例11窒素で不活性化した丸底フラスコに、1.0モルのスチレン(104.2g)を装填し、この混合物を60℃に加熱し、ウィトコ社のメチルアルミノキサン(MAO) (1.53Mトルエン溶液)8.16mlおよびアルドリッチ社のジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIB AH)(1.0Mシクロヘキサン溶液)と混合した。 次いで、この混合物を9.5mg(4.16 * 10 -5モル)のCp * TiMe 3 (ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメチルチタン)で処理した。 内温を60℃に調整して、2時間重合させた。 わずかに10分の反応時間後、生成重合体が沈殿し、混合物は不均質となった。 2時間後にメタノールを添加して反応を停止させた。 得られた重合体をメタノールで洗浄し、50℃、減圧下に乾燥した。 分子量および分子量分布を、溶媒として、 1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、高温GPC で測定した。 狭い分子量分布ポリスチレン標準の使用により較正を行った。 分子量Mwは320800であり、 その多分散性Mw/Mnは2.1であった。 13 C−NM Rにより測定されたシンジオタクチック分は90%以上であった。 使用された単量体に対する転化度は73%であった。 射出成形テスト試料の衝撃靱性は、DIN53 453−nによる測定で、2kJ/m 2を示した。 破損応力48.7MPa(DIN53455)、破断時伸び(DIN53455)は1.4%であった。 【0083】 対比例12対比例11の純シンジオタクチックポリスチレン(10 0g)を、実施例7重合体15gとともに、ハーケ社の混練機(Rheomex)において、290℃で5分間混練し、得られたブレンドをテストした。 DIN534 53−nによる射出成形テスト試料の衝撃靱性は3kJ /m 2 、破損応力は47.5MPa(DIN5345 5)、破断時伸び(DIN53455)は1.2%であった。 |