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電池用非電解液、新規化合物、高分子電解質、及びリチウム二次電池

申请号 JP2015513753 申请日 2014-04-21 公开(公告)号 JPWO2014175225A1 公开(公告)日 2017-02-23
申请人 三井化学株式会社; 发明人 将敬 宮里; 聡子 藤山; 剛史 林; 剛史 小林;
摘要 式(1)で表される化合物を含有する電池用非 水 電解液である〔Aは、PまたはP=Oを表し;Rは、H、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシ、またはアリールオキシを表し;Xは、H、アルキル、アリール、アルカリ金属、または式(2)を表し;Yは、H、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、または式(3)を表し;Zは、H、アルキル、アリール、またはOZ1を表し;Z1は、H、アルキル、アリール、アルカリ金属、式(2)、または式(4)を表し;Mは、アルカリ金属を表し;nは1以上であり;mは1以上であり;lは1以上であり;一分子中におけるn、m、及びlの合計は1〜200であり;*は結合 位置 を表す〕。
权利要求

下記一般式(1)で表される化合物を含有する電池用非電解液。 〔前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。〕前記一般式(1)中のA、前記一般式(3)中のA、及び前記一般式(4)中のAが、いずれもP=Oである請求項1に記載の電池用非水電解液。前記一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計が、1〜30の整数である請求項1または請求項2に記載の電池用非水電解液。前記一般式(1)中のnが、1〜10の整数であり、 前記一般式(1)及び前記一般式(2)中のYが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、 前記一般式(1)中のZが、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1が、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。前記一般式(1)中のZ、前記一般式(3)中のZ、及び前記一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。下記一般式(1)で表される化合物。 〔前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。〕前記一般式(1)中のA、前記一般式(3)中のA、及び前記一般式(4)中のAが、いずれもP=Oである請求項6に記載の化合物。一分子中における、n、m、及びlの合計が、1〜30である請求項6または請求項7に記載の化合物。前記一般式(1)中のnが、1〜10の整数であり、 前記一般式(1)及び前記一般式(2)中のYが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、 前記一般式(1)中のZが、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1が、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基である請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の化合物。前記一般式(1)中のZ、前記一般式(3)中のZ、及び前記一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基である請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の化合物。下記一般式(1)で表される化合物を含有する高分子電解質。 〔前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。〕前記一般式(1)中のA、前記一般式(3)中のA、及び前記一般式(4)中のAが、いずれもP=Oである請求項11に記載の高分子電解質。前記一般式(1)中のZ、前記一般式(3)中のZ、及び前記一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基である請求項11または請求項12に記載の高分子電解質。正極と、 金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電池用非水電解液または請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の高分子電解質と、 を含むリチウム二次電池。正極と、 金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電池用非水電解液または請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の高分子電解質と、 を含むリチウム二次電池を、充放電させて得られたリチウム二次電池。

说明书全文

本発明は、電池用非電解液、新規化合物、高分子電解質、並びに、携帯電子機器の電源、車載、及び電貯蔵などに利用される充放電可能なリチウム二次電池に関する。

近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。 リチウム二次電池は、主に、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、並びに、リチウム塩と非水溶媒とを含む非水電解液から構成される。 正極に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiFePO4のようなリチウム金属酸化物が用いられる。 また、非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルカーボネートなどカーボネート類の混合溶媒(非水溶媒)に、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2のようなLi電解質を混合した溶液が用いられている。 一方、負極に用いられる負極用活物質としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金など)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵、放出が可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛を採用したリチウム二次電池が実用化されている。

電池性能を改善する試みとして、例えば、リン(P)およびホウ素(B)を構成元素とする化合物を非水電解液に含有させることが提案されている(例えば、特開2010−257616号公報参照)。 また、リン元素を含むホウ酸塩化合物を用いた電解コンデンサが提案されている(例えば、特許第2966451号公報参照)。

しかし、特開2010−257616号公報においては充放電サイクル後の特性について記載されているものの、電池の初期抵抗特性については改善がなされておらず、更なる改良が必要である。また、特許第2966451号公報では、リン元素を含むホウ酸塩化合物の電池(例えばリチウム二次電池)への適用についてはなんら検討がなされていない。

本発明は、前記課題に応えるためになされたものであり、本発明の目的は、電池の初期抵抗特性を改善できる電池用非水電解液、新規化合物、及び高分子電解質、並びに初期抵抗特性が改善されたリチウム二次電池を提供することである。

本発明者は、上記課題に対し、鋭意検討した結果、電池用の非水電解液に対し、特定の化合物を加えることにより、電池の初期抵抗特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。

<1> 下記一般式(1)で表される化合物を含有する電池用非水電解液。

〔前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。〕

<2> 前記一般式(1)中のA、前記一般式(3)中のA、及び前記一般式(4)中のAが、いずれもP=Oである<1>に記載の電池用非水電解液。 <3> 前記一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計が、1〜30の整数である<1>または<2>に記載の電池用非水電解液。 <4> 前記一般式(1)中のnが、1〜10の整数であり、 前記一般式(1)及び前記一般式(2)中のYが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、 前記一般式(1)中のZが、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1が、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。 <5> 前記一般式(1)中のZ、前記一般式(3)中のZ、及び前記一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。

<6> 下記一般式(1)で表される化合物。

〔前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。〕

<7> 前記一般式(1)中のA、前記一般式(3)中のA、及び前記一般式(4)中のAが、いずれもP=Oである<6>に記載の化合物。 <8> 一分子中における、n、m、及びlの合計が、1〜30である<6>または<7>に記載の化合物。 <9> 前記一般式(1)中のnが、1〜10の整数であり、 前記一般式(1)及び前記一般式(2)中のYが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、 前記一般式(1)中のZが、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1が、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基である<6>〜<8>のいずれか1項に記載の化合物。 <10> 前記一般式(1)中のZ、前記一般式(3)中のZ、及び前記一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基である<6>〜<9>のいずれか1項に記載の化合物。

<11> 下記一般式(1)で表される化合物を含有する高分子電解質。

〔前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。〕

<12> 前記一般式(1)中のA、前記一般式(3)中のA、及び前記一般式(4)中のAが、いずれもP=Oである<11>に記載の高分子電解質。 <13> 前記一般式(1)中のZ、前記一般式(3)中のZ、及び前記一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基である<11>または<12>に記載の高分子電解質。

<14> 正極と、 金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、 <1>〜<5>のいずれか1項に記載の電池用非水電解液または<11>〜<13>のいずれか1項に記載の高分子電解質と、 を含むリチウム二次電池。 <15> 正極と、 金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、 <1>〜<5>のいずれか1項に記載の電池用非水電解液または<11>〜<13>のいずれか1項に記載の高分子電解質と、 を含むリチウム二次電池を、充放電させて得られたリチウム二次電池。

本発明によれば、電池の初期抵抗特性を改善できる電池用非水電解液、新規化合物、及び高分子電解質、並びに初期抵抗特性が改善されたリチウム二次電池を提供することができる。

本発明のリチウム二次電池の一例を示すコイン型電池の模式的断面図である。

本発明の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)及び高分子電解質は、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する。 本発明の非水電解液及び高分子電解質は、上記構成とすることにより、電池の初期抵抗特性を改善できる。 かかる効果が得られる理由は明らかではないが、一般式(1)で表される化合物が還元され易い性質を有し、その結果、負極表面に一般式(1)で表される化合物由来の成分の皮膜が形成され、これにより抵抗上昇を抑制することが可能となるため、と推測される。特に、電池に溶媒が含まれる場合には、一般式(1)で表される化合物が溶媒よりも還元されやすく、その結果、負極表面に一般式(1)で表される化合物由来成分の皮膜が先行して形成され、この皮膜により、負極と溶媒との接触や溶媒の分解を抑制することで、抵抗上昇を抑制することが可能となるため、と推測される。

また、近年、(特に自動車用途のリチウム二次電池に関し、)電池性能の中で、高出力化及び長寿命化が求められている。より具体的には、電池の抵抗を種々の作動条件において最小化することと、電池の寿命性能を向上することとの両立が求められている。 電池の抵抗が上昇する要因のひとつとして、負極表面に形成される、溶媒の分解物や無機塩による皮膜が挙げられる。負極表面では、充電条件で負極活物質中にリチウム金属が存在することから、電解液の還元分解反応が起こると考えられる。このような還元分解反応が継続的に起これば、電池の抵抗が上昇し、充放電効率が低下し、電池のエネルギー密度が低下することになる。また一方で、正極においても、経時的な劣化反応が起こり、抵抗が継続的に上昇して電池性能の低下をまねくことがある。 この点に関し、本発明の非水電解液及び高分子電解質は、電池の寿命性能(保存特性)をも改善することができる。この理由は、本発明の非水電解液及び高分子電解質が下記一般式(1)で表される化合物を含有することにより、上述した継続的な還元分解反応や、経時的な劣化反応が抑制されるためと推測される。

以下、一般式(1)で表される化合物について説明する。

〔一般式(1)で表される化合物〕

前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、Aは、リン原子またはP=Oを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または前記一般式(2)で表される基を表し、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または前記一般式(3)で表される基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表し、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、前記一般式(2)で表される基、または前記一般式(4)で表される基を表し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。前記一般式(2)〜前記一般式(4)中、*は、結合位置を表す。 なお、言うまでもないが、前記一般式(1)〜前記一般式(4)中、B、O、F、及びPは、それぞれ、ホウ素原子、酸素原子、フッ素原子、及びリン原子である。

一般式(1)で表される化合物に、Aが2つ以上含まれる場合には、2つ以上のAは、同一であっても異なっていてもよい。R、X、Y、M、Z、及びZ1についても同様である。 例えば、一般式(1)のnが2以上である場合、2以上のAは、同一であっても異なっていてもよい。また、一般式(1)中のA、一般式(3)中のA、及び一般式(4)中のAは、同一であっても異なっていてもよい。

また、一般式(1)で表される化合物に、一般式(2)で表される基が2つ以上含まれる場合には、2つ以上の一般式(2)で表される基は、同一であっても異なっていてもよい。一般式(3)で表される基及び一般式(4)で表される基についても同様である

一般式(1)〜一般式(4)中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が具体例として挙げられる。 ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。

一般式(1)〜一般式(4)中、「アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を指す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基などが挙げられる。 アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。

一般式(1)〜一般式(4)中、「アリール基」とは、構造中に、置換基又はヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基を指す。アリール基としては、フッ素原子で置換されたアリール基が好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,3,5−トリフルオロフェニル基、2,3,6−トリフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、2,3,4,5−テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。 アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましい。 アリール基としては、フェニル基(好ましくは、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されたフェニル基)が特に好ましい。

一般式(1)〜一般式(4)中、「アルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を指す。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基などが挙げられる。 アルコキシ基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。

一般式(1)〜一般式(4)中、「アリールオキシ基」の構造に含まれるアリール基は、前述のアリール基と同義である。 アリールオキシ基としては、無置換のフェノキシ基またはフッ素原子で置換されたフェノキシ基が好ましい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、2,3−ジフルオロフェノキシ基、2,4−ジフルオロフェノキシ基、2,5−ジフルオロフェノキシ基、2,6−ジフルオロフェノキシ基、3,4−ジフルオロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基、2,3,4−トリフルオロフェノキシ基、2,3,5−トリフルオロフェノキシ基、2,3,6−トリフルオロフェノキシ基、2,4,5−トリフルオロフェノキシ基、2,4,6−トリフルオロフェノキシ基、3,4,5−トリフルオロフェノキシ基、2,3,4,5−テトラフルオロフェノキシ基、2,3,4,6−テトラフルオロフェノキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基などが挙げられる。

一般式(1)〜一般式(4)中、「アルカリ金属原子」としては、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。このうち、リチウム原子が特に好ましい。

一般式(1)〜一般式(4)中、nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、lは1以上の整数を表す。但し、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。上記合計は、1〜100の整数が好ましい。 上記のとおり、n、m、及びlは、それぞれ1以上の整数であるが、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、必ずしも3以上の整数とは限らず、1又は2であってもよい。例えば、一般式(1)で表される化合物中に一般式(3)で表される基及び一般式(4)で表される基が含まれず、かつ、一般式(1)中のnが1である場合には、上記合計は1となる。 また、一般式(1)で表される化合物一分子中には、mが複数存在する場合があるが、この場合、「一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計」は、nと、複数のm、及びlの合計を意味することは言うまでもない。 また、一般式(1)で表される化合物一分子中には、lが複数存在する場合があるが、この場合、「一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計」は、nと、m、及び複数のlの合計を意味することは言うまでもない。

一般式(1)で表される化合物一分子中に一般式(2)で表される基が1つ以上含まれる場合、上記一分子の末端に位置する一般式(2)で表される基中のYは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基である。 また、一般式(1)で表される化合物一分子中に一般式(3)で表される基が1つ以上含まれる場合、上記一分子の末端に位置する一般式(3)で表される基中のYは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、上記一分子の末端に位置する一般式(3)で表される基中のZは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルカリ金属原子である。 また、一般式(1)で表される化合物一分子中に一般式(4)で表される基が1つ以上含まれる場合、上記一分子の末端に位置する一般式(4)で表される基中のYは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、上記一分子の末端に位置する一般式(4)で表される基中のZは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルカリ金属原子である。

一般式(1)で表される化合物を非水電解液の成分として用いる場合には、溶解性の観点から、一般式(1)〜一般式(4)中のn、m、及びlは、それぞれ独立に、1〜30の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、さらに好ましくは1〜5の整数である。

また、一般式(1)で表される化合物を非水電解液の成分として用いる場合には、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜30の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、さらに好ましくは1〜5の整数である。

また、一般式(1)で表される化合物を高分子電解質の少なくとも一部(例えば、高分子電解質の高分子成分を形成する骨格の少なくとも一部)として用いる場合には、一般式(1)〜一般式(4)中のn、m、及びlは、それぞれ独立に、5以上の整数であることが好ましく、より好ましくは10以上の整数である。一般式(1)で表される化合物を高分子電解質の少なくとも一部として用いる場合のn、m、及びlの上限は、一分子中におけるn、m、及びlの合計が200以下の整数となるように適宜設定される。 但し、高分子電解質には、一分子中におけるn、m、及びlの合計が1〜200の整数である化合物に加えて、一分子中におけるn、m、及びlの合計が200を超える化合物が含まれていてもよい。

また、一般式(1)で表される化合物を高分子電解質の少なくとも一部(例えば、高分子電解質の高分子成分を形成する骨格の少なくとも一部)として用いる場合には、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、5以上の整数であることが好ましく、より好ましくは10以上の整数である。一般式(1)で表される化合物を高分子電解質の少なくとも一部として用いる場合の上記合計の上限は200の整数であるが、この場合の上記合計は、100以下の整数が好ましい。 但し、高分子電解質には、一分子中におけるn、m、及びlの合計が1〜200の整数である化合物に加えて、一分子中におけるn、m、及びlの合計が200を超える化合物が含まれていてもよい。

また、前述のとおり、前記一般式(1)〜一般式(4)中、nが2以上の場合、2以上のAはそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。Y、Z、Z1、Mについても同様である。

また、一般式(1)中のAは、P=Oであることが好ましい。 より好ましくは、一般式(1)中のA、一般式(3)中のA、及び一般式(4)中のAが、いずれもP=Oであることである。

なお、一般式(1)中のAがP=Oである化合物は、下記一般式(5)で表される化合物である。

一般式(5)中、R、X、Y、Z、M、及びnは、それぞれ、前述の一般式(1)中のR、X、Y、Z、M、及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。

次に、一般式(1)で表される化合物(一般式(5)で表される化合物である場合を含む。以下同じ。)の好ましい形態について説明する。

一般式(1)中、Aは、前述のとおり、リン原子またはP=Oを表すが、P=Oが特に好ましい。

一般式(1)中、Rは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表すが、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基がより好ましい。

一般式(1)中、Xは、前述のとおり、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または一般式(2)で表される基を表すが、アルカリ金属原子または一般式(2)で表される基が好ましい。

一般式(1)中、Yは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または一般式(3)で表される基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基が特に好ましい。

一般式(1)中、Zは、前述のとおり、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表すが、アルキル基、アリール基、またはOZ1基が好ましく、OZ1基がより好ましい。

一般式(1)中、Z1は、前述のとおり、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、一般式(2)で表される基、または一般式(4)で表される基を表すが、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または一般式(2)で表される基が好ましく、アルカリ金属原子または一般式(2)で表される基が好ましい。

一般式(1)中、Mは、前述のとおり、アルカリ金属原子を表すが、リチウム原子、ナトリウム原子、またはカリウム原子が好ましく、リチウム原子が特に好ましい。

一般式(1)中、nは、前述のとおり、1以上の整数を表すが、具体的には1〜200の整数であり、1〜100の整数が好ましく、1〜30の整数が更に好ましく、1〜10の整数が更に好ましく、1〜5の整数が特に好ましい。

次に、一般式(2)で表される基の好ましい形態について説明する。

一般式(2)中、Rは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表すが、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基がより好ましい。

一般式(2)中、Yは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または一般式(3)で表される基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基が特に好ましい。

一般式(2)中、Mは、前述のとおり、アルカリ金属原子を表すが、リチウム原子、ナトリウム原子、またはカリウム原子が好ましく、リチウム原子が特に好ましい。

次に、一般式(3)で表される基の好ましい形態について説明する。

一般式(3)中、Aは、前述のとおり、リン原子またはP=Oを表すが、P=Oが特に好ましい。

一般式(3)中、Rは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表すが、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基がより好ましい。

一般式(3)中、Yは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または一般式(3)で表される基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基が特に好ましい。

一般式(3)中、Zは、前述のとおり、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表すが、アルキル基、アリール基、またはOZ1基が好ましく、OZ1基がより好ましい。

一般式(3)中、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、一般式(2)で表される基、または一般式(4)で表される基を表すが、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または一般式(2)で表される基が好ましく、アルカリ金属原子または一般式(2)で表される基が好ましい。

一般式(3)中、Mは、前述のとおり、アルカリ金属原子を表すが、リチウム原子、ナトリウム原子、またはカリウム原子が好ましく、リチウム原子が特に好ましい。

一般式(3)中、mは、前述のとおり、1以上の整数を表すが、1〜199の整数が好ましく、1〜100の整数がより好ましく、1〜30の整数が更に好ましく、1〜10の整数が更に好ましく、1〜5の整数が特に好ましい。

次に、一般式(4)で表される基の好ましい形態について説明する。

一般式(4)中、Aは、前述のとおり、リン原子またはP=Oを表すが、P=Oが特に好ましい。

一般式(4)中、Xは、前述のとおり、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または一般式(2)で表される基を表すが、アルカリ金属原子または一般式(2)で表される基が好ましい。

一般式(4)中、Yは、前述のとおり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または一般式(3)で表される基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子またはアルコキシ基が特に好ましい。

一般式(4)中、Zは、前述のとおり、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基を表すが、アルキル基、アリール基、またはOZ1基が好ましく、OZ1基がより好ましい。

一般式(1)で表される化合物において、一般式(1)中のZ、一般式(3)中のZ、及び一般式(4)中のZが、いずれもOZ1基であることが特に好ましい。

一般式(4)中、Z1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、一般式(2)で表される基、または一般式(4)で表される基を表すが、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または一般式(2)で表される基が好ましく、アルカリ金属原子または一般式(2)で表される基が好ましい。

一般式(4)中、Mは、前述のとおり、アルカリ金属原子を表すが、リチウム原子、ナトリウム原子、またはカリウム原子が好ましく、リチウム原子が特に好ましい。

一般式(4)中、lは、前述のとおり、1以上の整数を表すが、1〜199の整数が好ましく、1〜100の整数がより好ましく、1〜30の整数が更に好ましく、1〜10の整数が更に好ましく、1〜5の整数が特に好ましい。

また、一般式(1)で表される化合物の特に好ましい形態の一例として、一般式(1)中のnが、1〜30の整数(好ましくは1〜10の整数)であり、一般式(1)及び一般式(2)中のYが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、一般式(1)中のZが、水素原子、アルキル基、アリール基、またはOZ1基であり、Z1が、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、一般式(2)で表される基である形態が挙げられる。この形態の中でも、一般式(1)中のZが、OZ1基である形態がより好ましい。

また、上述した一般式(1)で表される化合物の一分子中には、下記一般式(1A)で表される構造単位が含まれる。 一般式(1)で表される化合物全体の構造の中で、下記一般式(1A)で表される構造単位が、本発明の効果(電池の初期抵抗特性の改善)を奏する上で重要である。

一般式(1A)中、*は、結合位置を表す。 一般式(1A)中、A及びMは、上述した一般式(1)中のA及びMと同義であり、好ましい範囲も同様である。 一般式(1A)の末端に位置するOは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルカリ金属原子、または、上記一般式(2A)で表される構造単位と結合する。但し、一般式(1)で表される化合物中(一分子中)に一般式(1A)で表される構造単位が2つ以上含まれる場合には、特定の一般式(1A)で表される構造単位中のOと、他の一般式(1A)で表される構造単位中のBと、が結合していてもよい。 一般式(2A)中、*は、結合位置を表す。 一般式(2A)中、Mは、一般式(1)中のMと同義であり、好ましい範囲も同様である。 一般式(2A)中のBは、一般式(1A)で表される構造単位、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基と結合する。 ここで、一般式(1)で表される化合物中に、一般式(1A)で表される構造単位が2つ以上含まれる場合には、一般式(2A)中のBは、2つ以上の一般式(1A)で表される構造単位と結合していてもよい。

ところで、前述のとおり、一般式(1)で表される化合物一分子中における、n、m、及びlの合計は、1〜200の整数である。即ち、一般式(1)で表される化合物中に含まれる、一般式(1A)で表される構造単位(以下、「構造単位(1A)」ともいう)の数は、1〜200である。 一般式(1)で表される化合物では、この構造単位(1A)が複数連結し(例えば、網目状に連結し)、複数の分岐を有する架橋構造を形成してもよい。 一般式(1)で表される化合物中に含まれる構造単位(1A)の数は、1〜100が好ましく、1〜30がより好ましく、1〜10がさらに好ましく、1〜5が特に好ましい。

一般式(1)で表される化合物中に構造単位(1A)が2つ以上含まれる場合、2つ以上のAは、同一であっても異なっていてもよい。同様に、この場合、2つ以上のMは、同一であっても異なっていてもよい。

特に、一般式(1)で表される化合物を非水電解液の成分として用いる場合には、一般式(1)で表される化合物中に含まれる構造単位(1A)の数は、1〜30が好ましく、1〜10がより好ましく、特に好ましくは1〜5である。

また、一般式(1)で表される化合物を高分子電解質の少なくとも一部(例えば、高分子電解質の高分子成分を形成する骨格の少なくとも一部)として用いる場合には、一般式(1)で表される化合物中に含まれる構造単位(1A)の数は、5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上である。 この場合においても、一般式(1)で表される化合物中に含まれる構造単位(1A)の数の上限は200であるが、この構造単位(1A)の数は、100以下が好ましい。 但し、高分子電解質には、構造単位(1A)の数が1〜200の整数である、一般式(1)で表される化合物に加えて、構造単位(1A)の数が200を超える化合物が含まれていてもよい。

上述した一般式(1)で表される化合物の分子量は、100〜100000が好ましく、100〜10000がより好ましく、100〜5000が特に好ましい。 ここで、分子量は、重量平均分子量を指す。

以下、一般式(1)で表される化合物の具体例(例1〜例33)を示すが、本発明はこれらによって制限されるものではない。 以下の具体例において、「C6H5」は、フェニル基を表し、「C6F5」は、パーフルオロフェニル基を表す。

一般式(1)で表される化合物の合成方法には特に制限はないが、一般式(1)で表される化合物は、例えば、少なくとも、リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、ホスホン酸のアルカリ金属塩、アルキルホスホン酸のアルカリ金属塩、及びアリールホスホン酸のアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種と、フッ素原子とホウ素原子との結合を少なくとも1つ含むホウ素化合物(好ましくは三フッ化ホウ素)の少なくとも1種と、(更に必要に応じフッ化アルカリ金属(好ましくはフッ化リチウム)の少なくとも1種と、)を反応させることにより合成できる。 以下、リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、ホスホン酸のアルカリ金属塩、アルキルホスホン酸のアルカリ金属塩、及びアリールホスホン酸のアルカリ金属塩を総称して、単に「リン化合物」ということがある。

〔非水電解液〕 本発明の非水電解液は、上述した一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する。 本発明の非水電解液中における一般式(1)で表される化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、非水電解液総量に対し、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましく、0.1質量%〜2質量%が特に好ましい。

次に、非水電解液の他の成分について説明する。 非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒とを含有する。

<非水溶媒> 本発明に係る非水溶媒は、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。 電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。

(環状の非プロトン性溶媒) 環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。 環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。 環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。 環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。

環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。 環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、前記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。 また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。

環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3—メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。 環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。

(鎖状の非プロトン性溶媒) 本発明の鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。 鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。 鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。

鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。 鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。 鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。

(溶媒の組み合わせ) 本発明に係る非水電解液で使用する非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。 さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。

環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。 環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95〜80〜20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。

環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。

(その他の溶媒) 本発明に係る非水電解液は、非水溶媒として、上記以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N−メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。 HO(CH2CH2O)aH HO[CH2CH(CH3)O]bH CH3O(CH2CH2O)cH CH3O[CH2CH(CH3)O]dH CH3O(CH2CH2O)eCH3 CH3O[CH2CH(CH3)O]fCH3 C9H19PhO(CH2CH2O)g[CH(CH3)O]hCH3 (Phはフェニル基) CH3O[CH2CH(CH3)O]iCO[OCH(CH3)CH2]jOCH3 前記式中、a〜fは、5〜250の整数、g〜jは2〜249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。

〔電解質〕 本発明の非水電解液は、種々公知の電解質を使用することができ、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。 本発明の非水電解液における電解質の具体例としては、(C2H5)4NPF6、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NAsF6、(C2H5)4N2SiF6、(C2H5)4NOSO2CkF(2k+1)(k=1〜8の整数)、(C2H5)4NPFn[CkF(2k+1)](6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。

LiC(SO2R27)(SO2R28)(SO2R29)、LiN(SO2OR30)(SO2OR31)、LiN(SO2R32)(SO2R33)(ここでR27〜R33は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。 これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF6、LiBF4、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiClO4、LiAsF6、LiNSO2[CkF(2k+1)]2(k=1〜8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)が好ましい。 本発明に係る電解質は、通常は、非水電解液中に0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。

本発明の非水電解液において、非水溶媒として、γ−ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを併用する場合には、特にLiPF6を含有することが望ましい。LiPF6は、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPF6は単独で使用してもよいし、LiPF6とそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF6以外のリチウム塩が好ましい。 具体例としては、LiPF6とLiBF4、LiPF6とLiN[SO2CkF(2k+1)]2(k=1〜8の整数)、LiPF6とLiBF4とLiN[SO2CkF(2k+1)](k=1〜8の整数)などが例示される。

リチウム塩中に占めるLiPF6の比率は、1質量%〜100質量%、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは50質量%〜100質量%が望ましい。このような電解質は、0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。

本発明に係る非水電解液は、本発明の目的を妨げない範囲で、上述した一般式(1)で表される化合物以外の他の化合物を添加剤として少なくとも1種含有していてもよい。 他の化合物として具体的には、ビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジビニルカーボネート等の炭素炭素不飽和結合を有する炭酸エステル類;フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、メチル−2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート等のフッ素基を有する炭酸エステル類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロパ−1−エンスルトン、1−メチル−1,3−プロパ−1−エンスルトン、2−メチル−1,3−プロパ−1−エンスルトン、3−メチル−1,3−プロパ−1−エンスルトン等のスルトン類;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテン、硫酸ビニレン等の硫酸エステル類;並びにスルホラン、3−スルホレン、ジビニルスルホン等のイオウ系化合物、を挙げることができる。 これらの化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。 これらのうち、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,3−プロパ−1−エンスルトン、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテンが好ましい。

本発明の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。

〔高分子電解質〕 本発明の高分子電解質は、上述した一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する。 本発明の高分子電解質の形態は特に制限されず、固体状高分子化合物と非水電解液とを含むゲル型高分子電解質(好ましくは、非水電解液が固体状高分子化合物に含浸されてなるゲル型高分子電解質)の形態であってもよいし、固体状高分子化合物のみからなる全固体型高分子電解質の形態であってもよい。 このうち、イオン伝導度がより高い点で、ゲル型高分子電解質の形態が好ましい。

いずれの形態においても、上述した一般式(1)で表される化合物は、本発明の高分子電解質のどこかに含まれていればよい。 例えば、本発明の高分子電解質がゲル型高分子電解質の形態である場合、一般式(1)で表される化合物は、固体状高分子化合物の少なくとも一部(例えば、固体状高分子電解質の高分子骨格の少なくとも一部)に含まれていてもよいし、ゲル型高分子電解質の成分としての非水電解液に含まれていてもよい。 上記ゲル型高分子電解質において、一般式(1)で表される化合物が固体状高分子化合物の少なくとも一部に含まれている場合、ゲル型高分子電解質の成分としての非水電解液は、本発明の非水電解液であってもよいし、本発明の非水電解液以外の一般的な非水電解液であってもよい。 また、上記ゲル型高分子電解質において、一般式(1)で表される化合物がゲル型高分子電解質の成分としての非水電解液に含まれている場合、固体状高分子化合物としては一般的な高分子電解質(例えば、後述のセパレータとして用いられることがある高分子電解質)を特に制限無く用いることができる。

上記ゲル型高分子電解質は、例えば、一般式(1)で表される化合物を含む非水電解液を加熱処理してゲル化させる方法によって製造することができる。 上記ゲル化させる方法では、加熱処理によって非水電解液中の一般式(1)で表される化合物が縮合し、一般式(1)で表される化合物の縮合物として、高分子化合物(即ち、高分子電解質。以下同じ。)が生成されると考えられる。高分子化合物の生成は、非水電解液がゲル化したことによって確認できると考えられる。 上記ゲル化させる方法において、加熱処理の温度としては、40℃以上が挙げられ、40℃〜80℃が挙げられ、50℃〜70℃が好ましい。 上記ゲル化させる方法において、加熱処理の時間としては、1時間以上が挙げられ、1時間〜10時間が好ましく、2時間〜5時間がより好ましい。 上記ゲル化させる方法において、例えば、一般式(1)で表される化合物を合成する際に、上述したリン化合物と、上述したフッ素原子とホウ素原子との結合を少なくとも1つ含むホウ素化合物と、の量論比を、好ましくは10/1〜1/10の範囲で適宜選択することで、n、m、及びlの合計の数値を調整できる。 高分子化合物の生成においては、一般式(1)で表される化合物の特定の分子におけるXまたはZと、一般式(1)で表される化合物の別の分子におけるRまたはYと、が反応し、この反応が繰り返されることによって高分子化が進行する。例えば、一般式(1)で表される化合物の具体例(例1)の2分子において、一方の分子のXと他方の分子のRとの反応が進行することにより、1分子の具体例(例2)と1分子のLiBF4とが生成する。また、具体例(例1)のZと具体例(例2)のYとの反応が進行することにより、1分子の具体例(例7)と1分子のLiBF4とが生成する。上記ゲル化させる方法では、これらのような反応が繰り返されることで高分子化合物が得られると考えられる。

また、全固体型高分子電解質は、上記ゲル化させる方法において、加熱処理の時間を長くすること、及び、加熱処理の温度を高くすることの少なくとも一方により、加熱処理の対象である非水電解液から非水溶媒を完全に除去することによって製造することができる。

本発明の高分子電解質中における一般式(1)で表される化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、高分子電解質の形態によっても異なるが、高分子電解質総量に対し、0.01質量%〜100質量%が好ましく、0.01質量%〜90質量%がより好ましく、0.01質量%〜80質量%が更に好ましく、0.05質量%〜50質量%が更に好ましく、0.1質量%〜20質量%が特に好ましい。

一般式(1)で表される化合物が、固体状高分子化合物の少なくとも一部に含まれる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、固体状高分子化合物の総量に対し、0.1質量%〜100質量%が好ましく、0.1質量%〜90質量%がより好ましく、0.1質量%〜80質量%が更に好ましく、0.5質量%〜50質量%が更に好ましく、1質量%〜20質量%が特に好ましい。

一般式(1)で表される化合物が、ゲル型高分子電解質の成分としての非水電解液に含まれる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、非水電解液の総量に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.05質量%〜5質量%が更に好ましく、0.1質量%〜2質量%が特に好ましい。

〔リチウム二次電池〕 本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液及び前記本発明の高分子電解質の少なくとも一方と、を含んで構成されている。 通常、負極と正極との間にセパレータが設けられている。

(負極) 前記負極を構成する負極活物質は、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。 リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。 これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。前記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。

前記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。 前記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。

これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。 前記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。

(正極) 前記正極を構成する正極活物質としては、MoS2、TiS2、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNiXCo(1−X)O2〔0

4などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。 上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。

(セパレータ) 前記セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。 前記多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。 特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。 前記高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。 本発明の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。この目的で本発明の非水電解液が使用されると、上述したゲル型高分子電解質の形態の、本発明の高分子電解質が得られる。

(電池の構成) 本発明の実施形態に係るリチウム二次電池は、前記の負極活物質、正極活物質及びセパレータを含む。 本発明のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。 本発明のリチウム二次電池(非水電解液二次電池)の例として、図1に示すコイン型電池が挙げられる。 図1に示すコイン型電池では、円盤状負極2、非水電解液を注入したセパレータ5、円盤状正極1、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板7、8が、この順序に積層された状態で、正極缶3(以下、「電池缶」ともいう)と封口板4(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶3と封口板4とはガスケット6を介してかしめ密封する。 この一例では、セパレータ5に注入される非水電解液として、本発明の非水電解液を用いることができる。 また、この一例では、セパレータ5自体の少なくとも一部として、本発明の高分子電解質を用いることができる。

なお、本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液及び前記本発明の高分子電解質の少なくとも一方と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。 即ち、本発明のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液及び前記本発明の高分子電解質の少なくとも一方と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、該充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。

本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノートパソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。

以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、以下の実施例において、「%」及び「wt%」はいずれも質量%を表す。

〔合成例1〕 リン酸リチウム(2.0g)と三フッ化ホウ素の炭酸ジエチル溶液(12.5%、56.0g)とを混合し室温にて1時間撹拌した。得られた溶液を重アセトニトリル(CD3CN)と混合し、19F NMR及び31P NMRにて分析した。分析結果は下記のとおりである。 19F NMRスペクトルにおいて、架橋部分に相当するBF2のシグナルと末端部分に相当するBF3のシグナルとが観測され、これらの積分比から成分比を算出するとBF2:BF3=1:1.2であった。 以上の分析結果より、一般式(1)で表される化合物として、下記式(a)におけるnが1〜5である混合物(以下、「化合物(a)」ともいう)が生成されたことが確認された。

19F NMR(CFCl3=0ppm、溶媒CD3CN):δ -143〜-147(br)、-149〜-151(br) 31P NMR(H3PO4=0ppm、溶媒CD3CN):δ -18〜-24(br)、-26〜-32(br)

〔合成例2〕 リン酸リチウム(2.0g)と、フッ化リチウム(1.3g)と、三フッ化ホウ素の炭酸ジエチル溶液(12.5%、56.0g)と、を混合し室温にて1時間撹拌した。得られた溶液を重アセトニトリル(CD3CN)と混合し、19F NMR及び31P NMRにて分析した。分析結果は下記のとおりである。 19F NMRスペクトルにおいて、架橋部分に相当するBF2のシグナルと末端部分に相当するBF3のシグナルとが観測され、これらの積分比から成分比を算出するとBF2:BF3=1:2.0であった。 以上の分析結果より、一般式(1)で表される化合物として、下記式(b)におけるnが1〜5である混合物(以下、「化合物(b)」ともいう)が生成されたことが確認された。

19F NMR(CFCl3=0ppm、溶媒CD3CN):δ -144〜-146(m)、-149〜-151(m) 31P NMR(H3PO4=0ppm、溶媒CD3CN):δ -18(m)、-21〜-24(m)、-27〜-32(m)

〔合成例3〕 リン酸リチウム(2.0g)と三フッ化ホウ素の炭酸ジエチル溶液(12.5%、28.0g)とホウ酸トリメチル(10.7g)とを混合し室温にて1時間撹拌した。得られた溶液を、重アセトニトリル(CD3CN)と混合し、1H NMR、19F NMR、及び31P NMRにて分析した。分析結果は下記のとおりである。 19F NMRスペクトルにおいて、架橋部分に相当するBF2のシグナルと末端部分に相当するBF3のシグナルとが観測され、これらの積分比から成分比を算出するとBF2:BF3=1:0.6であった。 以上の分析結果より、一般式(1)で表される化合物として、下記式(c)におけるnが1〜3である混合物(以下、「化合物(c)」ともいう)が生成されたことが確認された。

1H NMR(TMS=0ppm、溶媒CD3CN):δ 3.4〜3.5(br) 19F NMR(CFCl3=0ppm、溶媒CD3CN):δ -144〜-146(m)、-149〜-151(m) 31P NMR(H3PO4=0ppm、溶媒CD3CN):δ -18〜-24(br)、-26〜-32(br)

〔合成例4〕 メチルホスホン酸リチウム(2.0g)と三フッ化ホウ素の炭酸ジエチル溶液(12.5%、60.0g)とを混合し室温にて1時間撹拌した。得られた溶液を、重アセトニトリル(CD3CN)と混合し、1H NMR、19F NMR、及び31P NMRにて分析した。分析結果は下記のとおりである。 19F NMRスペクトルにおいて、架橋部分に相当するBF2のシグナルと末端部分に相当するBF3のシグナルとが観測され、これらの積分比から成分比を算出するとBF2:BF3=1:1.3であった。 以上の分析結果より、一般式(1)で表される化合物として、下記式(d)におけるnが1〜5である混合物(以下、「化合物(d)」ともいう)が生成されたことが確認された。

1H NMR(TMS=0ppm、溶媒CD3CN):δ 1.4〜1.5(m) 19F NMR(CFCl3=0ppm、溶媒CD3CN):δ -144〜-146(m)、-149〜-151(m) 31P NMR(H3PO4=0ppm、溶媒CD3CN):δ -25〜-28(br)

〔実施例1〕 以下の手順にて、リチウム二次電池を作製した。 <負極の作製> 人造黒鉛20質量部、天然黒鉛系黒鉛80質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス2質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。 次に、この負極合剤スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層とからなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cm2であり、充填密度は1.5g/mlであった。

<正極の作製> LiCoO2を90質量部、アセチレンブラック5質量部及びポリフッ化ビニリデン5質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。 次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cm2であり、充填密度は2.5g/mlであった。

<非水電解液の調製> 非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ1:1:1(体積比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。 得られた混合溶媒中に、電解質であるLiPF6を、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。 前記で得られた溶液に対して、添加剤として化合物(a)を、最終的に得られる非水電解液中における含有量が0.5wt%となるように添加して、非水電解液を得た。

<コイン型電池の作製> 上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いて、コイン状の電極(負極及び正極)を得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜きセパレータを得た。 得られたコイン状の負極、セパレータ及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、上記非水電解液20μlを注入してセパレータと正極と負極に含漬させた。 さらに、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封し、直径20mm、高さ3.2mmの図1で示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、試験用電池と称する)を作製した。 得られたコイン型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。

[評価方法] <電池の初期特性:初期電池抵抗測定> 上記コイン型電池を定電圧4.0Vで充電し、次いで、該充電後のコイン型電池を恒温槽内で−20℃に冷却し、−20℃において0.2mA定電流で放電し、放電開始から10秒間における電位低下を測定することにより、コイン型電池の直流抵抗[Ω]を測定し、得られた値を初期抵抗値[Ω](−20℃)とした。 後述の比較例1のコイン型電池についても同様にして、初期抵抗値[Ω](−20℃)を測定した。 これらの結果から、下記式により、比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での初期抵抗値(相対値;%)として、「初期電池抵抗[%]」を求めた。 得られた結果を表1に示す。

初期電池抵抗[%] =(実施例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)/比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃))×100[%]

<電池の初期特性:初期放電容量及び初回効率の測定> 上記コイン型電池を、1mA定電流かつ4.2V定電圧で充電し、1mA定電流で2.85Vまで放電するサイクルを、10サイクル行った。その際、1サイクル目の充電容量[mAh]、及び、1サイクル目の放電容量[mAh](初期放電容量)から、初回の充放電効率(初回効率)を下記式にて計算を行った。

初回効率[%] =(1サイクル目の放電容量[mAh]/1サイクル目の充電容量[mAh])×100[%]

後述の比較例1のコイン型電池についても同様の測定を行い、測定結果に基づき初回効率[%]を求めた。 これらの結果から、比較例1での初期放電容量を100%としたときの実施例1での初期放電容量(相対値;%)、及び、比較例1での初回効率を100%としたときの実施例1での初回効率(相対値;%)をそれぞれ求めた。 得られた結果を表1に示す。

〔実施例2〕 実施例1において、化合物(a)を同質量の化合物(b)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製及び評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。

〔実施例3〕 実施例1において、化合物(a)に代えて化合物(b)を、最終的に得られる非水電解液中における含有量が1.0wt%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製及び評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。

〔実施例4〕 実施例1において、化合物(a)を同質量の化合物(c)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製、評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。

〔実施例5〕 実施例1において、化合物(a)を同質量の化合物(d)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製、評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。

〔実施例6〕 実施例1において、化合物(a)の添加量を、最終的に得られる非水電解液中における含有量が10wt%となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製についても実施例1と同様に実施した。 次に、上記で作製された電池を60℃にて3時間加熱することにより、非水電解液のゲル化処理を実施した。 上記ゲル化処理後の電池について、実施例1と同様の評価を実施した。 得られた結果を表1に示す。 なお、評価後の電池を解体したところ、非水電解液のゲル化が確認された。このゲル化の原因は、上記加熱(60℃、3時間)により、化合物(a)の縮合物として、高分子化合物(高分子電解質)が形成されたためと考えられる。

〔実施例7〕 実施例5において、化合物(d)の添加量を、最終的に得られる非水電解液中における含有量が10wt%となるように変更したこと以外は、実施例5と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製についても実施例5と同様に実施した。 次に、上記で作製された電池を60℃にて3時間加熱することにより、非水電解液のゲル化処理を実施した。 上記ゲル化処理後の電池について、実施例5と同様の評価を実施した。 得られた結果を表1に示す。 なお、評価後の電池を解体したところ、非水電解液のゲル化が確認された。このゲル化の原因は、上記加熱(60℃、3時間)により、化合物(d)の縮合物として、高分子化合物(高分子電解質)が形成されたためと考えられる。

〔比較例1〕 化合物(a)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製、評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。

表1に示す結果から、一般式(1)で表される化合物を、添加剤として(実施例1〜5)または高分子電解質として(実施例6及び7)用いることで、初回効率及び初期放電容量を維持したまま、初期電池抵抗を低減できること(即ち、初期抵抗特性を改善できること)が確認された。

2013年4月25日に出願された日本国特許出願2013−092924の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。 本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

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